霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第八章 放棄(はうき)〔一四一六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第2篇 縁三寵望 よみ:えんさんちょうぼう
章:第8章 第55巻 よみ:ほうき 通し章番号:1416
口述日:1923(大正12)年03月03日(旧01月16日) 口述場所:竜宮館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5508
愛善世界社版:99頁 八幡書店版:第10輯 69頁 修補版: 校定版:101頁 普及版:42頁 初版: ページ備考:
001 アヅモスはフエルと(とも)炊事場(すゐじば)(かへ)り、002下女(げぢよ)のお(たみ)(つか)まへてそろそろ小言(こごと)()(はじ)めた。
003アヅモス『オイ、004(たみ)005貴様(きさま)(しつか)りしないものだから大変(たいへん)(はぢ)()いたぢやないか。006(なん)(ため)炊事(すゐじ)御用(ごよう)をして()るのだ。007(をんな)()ふものは飯焚(めした)きが肝腎(かんじん)だ。008折角(せつかく)珍客(ちんかく)さまに(はひ)まぶれの(めし)()はさうとしたぢやないか、009ちと心得(こころえ)ないと当家(ここ)には()(こと)出来(でき)ぬぞ』
010(たみ)『アヅモスの番頭(ばんとう)さま、011さう注文通(ちうもんどほり)御飯(ごはん)()けるものぢやありませぬよ、012今日(こんにち)日天様(につてんさま)でも()つたり(くも)つたり(あそ)ばすぢやありませぬか、013…………
014朝夕(あさゆふ)(めし)さへこわし(やはら)かし
015兎角(とかく)ままにはならぬ()(なか)……
016()(うた)さへあるぢやありませぬか。017さう小言(こごと)仰有(おつしや)ると此方(こちら)(はう)から(しり)をからげて「左様(さやう)なら」と()かけませうか。018(この)(ごろ)彼方(あちら)此方(こちら)沢山(たくさん)工場(こうぢやう)出来(でき)(をんな)払底(ふつてい)ですよ。019こんな月給(げつきふ)(やす)下女(げぢよ)になるものは滅多(めつた)にありませぬよ。020(わたし)此家(ここ)下女(げぢよ)()()げたのは、021恩恵的(おんけいてき)社会奉仕(しやくわいほうし)一端(いつたん)だと(おも)うて()()るのですよ。022万公別(まんこうわけ)()ひ、023(まへ)さまと()全然(まるきり)(をんな)(くさ)つた(やう)(をとこ)だな。024(をんな)(こと)(かま)腰抜(こしぬ)けは()なつと()んで()んだがよろしいわいなア、025これでも家政学校(かせいがくかう)卒業(そつげふ)したシヤンですからねえ、026ヘン(あま)(かま)うて(もら)ひますまいかい』
027アヅモス『(えら)さうに()うて()るが、028今朝(けさ)料理(れうり)仕方(しかた)一体(いつたい)(なん)だ。029あんな加減(かげん)(わる)いものが()へると(おも)ふか、030(えら)さうに()ふない』
031(たみ)()へなけりや()はいでもよいぢやないか。032前達(まへたち)料理法(れうりはふ)()らないものだからゴテゴテ()ふのだらう、033下司口(げすぐち)だからなア。034松魚節(かつを)煮汁(だし)か、035昆布(こぶ)煮汁(だし)か、036雑魚(ざこ)煮汁(だし)か、037(あぢ)(もと)使(つか)つたか弁別(べんべつ)のつかないやうな下司口(げすぐち)が、038料理(れうり)小言(こごと)()資格(しかく)がありますか』
039アヅモス『(えら)さうに()ふない、040(なん)だその(ふう)は、041のめのめと売女(ばいた)出来損(できぞこな)()たやうな(ふう)をしやがつて、042そんな(こと)立派(りつぱ)料理(れうり)出来(でき)ると(おも)ふか。043(そもそも)料理(れうり)()りかかるには(たすき)をかけるか、044エプロンを()けるかして身仕度(みじたく)をきちんとして(かみ)()もバラバラせぬやうに、045そして(こけ)()えたやうな()を、046曹達(さうだ)ででも(あら)つて清潔(せいけつ)にしなければ、047折角(せつかく)御馳走(ごちそう)黴菌(ばいきん)伝染(うつ)るぢやないか。048そして(こめ)()ぐにも(すな)注意(ちうい)して()るのだ、049クレクレと(ゆす)つて()ると(すな)(そこ)にイサルから容易(ようい)なものだ。050今朝(けさ)のやうに(はひ)(すな)(まじ)つた(めし)(たれ)だつて()はれぬぢやないか。051さうして(あら)ふにもお(こめ)(くだ)かないやうにして、052(みづ)()みきり白水(しろみづ)がないとこ(まで)(あら)ふのだぞ』
053(たみ)『エエ八釜(やかま)しい番頭(ばんとう)ぢやな。054(まへ)さまは何処(どこか)でボーイでもやつて()たのかな、055()うこせこせと(かま)(した)までゴテづく吝嗇坊(けちんばう)だなア』
056アヅモス『(べつ)(かま)ひたい(こと)()いけれど、057(あま)貴様(きさま)(わか)らぬから、058一応(いちおう)料理法(れうりはふ)(をし)へて()くのだ。059(すべ)小鳥(ことり)(さかな)(くし)にさして()(とき)()(とほ)くし、060そして強火(つよび)にした(はう)が、061美味(おい)しう()けるものだ。062(さかな)()(はう)から、063小鳥(ことり)(かは)(はう)から()くのだよ。064(むかし)から魚身鳥皮(ぎよしんてうひ)といふからなア、065充分(じゆうぶん)()いてから(うら)がへさないと不味(まづく)なる。066さうして(あみ)(くし)()けた(あと)(にく)()せるのだ。067それから()(とき)には醤油(しやうゆ)(みづ)十分(じふぶん)煮立(にた)たして()いて、068(その)(あと)()れないと(うま)(しる)()仕舞(しま)ふのだ。069野菜(やさい)真青(まつさを)(ゆで)るには()(しほ)(すこ)()れて(ふた)をせずに(ゆで)ると(その)(まま)(いろ)(たも)つて()る。070さうして(ゆだ)つたら(すぐ)(つめ)たい(みづ)()れるのだ。071牛蒡(ごばう)や、072(ふき)や、073(たけのこ)や、074百合根(ゆりね)(など)灰汁(あく)(つよ)いものは(いつ)たん湯掻(ゆが)いてから()くのだ。075さうして使(つか)うた道具(だうぐ)はいつも(きま)つた場所(ばしよ)へキチンと()いて()くのだ、076清潔(きれい)(みが)いて(もと)(ところ)へちやんと(もど)して()かぬとまさかの(とき)()()はぬぞ。077(たな)(うへ)(ちり)(たま)つて()るか()らぬかそれも(かんが)へて(あみ)(くし)や、078薄鍋(うすなべ)()いて()くのだ。079そして(あま)つた食物(たべもの)蠅不入(はいいらず)()れるか、080布巾(ふきん)をかけて()くのだぞ』
081(たみ)『エエ矢釜(やかま)しい、082(まへ)さまは土方(どかた)飯焚(めした)きでも()()たのだらう。083(あま)(しやべ)るとお(さと)()えますぞや』
084アヅモス『これやお(たみ)085土方(どかた)飯焚(めした)きとは(なん)だ。086(をんな)(おも)うて容赦(ようしや)をすれば(なに)(ぬか)すか(わか)つたものぢやない、087不調法(ぶてうはふ)しておきやがつて(なに)口答(くちごた)へをするのぢや、088これでも一家(いつか)総理大臣(そうりだいじん)だぞ』
089(たみ)『ホホホホ。090総理大臣(そうりだいじん)なんて(けつ)(あき)れますわい。091当家(たうけ)総理大臣(そうりだいじん)はシーナさまぢやありませぬか、092(まへ)さまは()番頭(ばんとう)だ。093そこらの(すみ)くたを掃除大臣(さうぢだいじん)だ。094ごたごた()はずと(はうき)なともつて(つぎ)()()いて()なさい。095万公山(まんこうやま)破裂(はれつ)して大変(たいへん)(はひ)()つて()ますぞよ。096(はうき)使(つか)つたらチヤンと(くぎ)にかけて()くのですよ。097其処辺(そこら)()てて()くと(はうき)(さき)がサツパリ薙刀(なぎなた)のやうになつて仕舞(しま)ひますぞや。098そしてハタキは手首(てくび)()げて、099天井裏(てんじやううら)から障子(しやうじ)(さん)(うへ)から(した)へパタパタとはたくのですよ。100どうしても(うご)かせない道具(だうぐ)被物(おほひ)をしておいて(すみ)から()いて()るのです。101そして(たたみ)()(さか)らうと、102塵埃(ほこり)(みんな)(たたみ)()(にじ)んで仕舞(しま)ひますよ。103(はうき)(さき)()ねんやうにしてソツソツと()くのですよ、104それが()んだら椽側(えんがは)掃除(さうぢ)をしなさい。105雑巾(ざふきん)(ゆる)(かた)(しぼ)つて、106(いた)()なりに(ちから)()れて()くのだよ。107(すみ)(ところ)雑巾(ざふきん)三角(さんかく)にして()けば綺麗(きれい)になりますわ。108(それ)からニス、109(うるし)や、110(ひのき)(はしら)乾布巾(からぶきん)念入(ねんい)れに()くのですよ。111きつと()れた雑巾(ざふきん)()いてはなりませぬぞえ』
112アヅモス『これお(たみ)113(なん)下女(げぢよ)(くせ)番頭(ばんとう)指揮(さしづ)すると()(こと)があるか』
114(たみ)『ヘン(わたし)下女(げぢよ)なら、115(まへ)下男(げなん)ぢや、116(あま)(えら)さうに()うて(もら)ひますまいか。117これこれフエルさま お(まへ)灰撒(はひまき)発頭人(ほつとうにん)だ。118(なに)をグヅグヅして()るのだ、119(はや)くアヅモスの下男(げなん)一緒(いつしよ)掃除(さうぢ)をしなさらぬかいなア』
120フエル『さう矢釜(やかま)しゆ()ふない。121(おれ)だつて今朝(けさ)(まで)(くら)(なか)罪人(ざいにん)同様(どうやう)突込(つつこ)まれて()たのだから、122(ちつ)とは休養(きうやう)しなければやりきれぬぢやないか』
123 お(たみ)は、
124『エエこの女郎男(めらうをとこ)腰抜(こしぬけ)()
125()ふより(はや)柄杓(ひしやく)(みづ)()んで二人(ふたり)にぶツかけた。126アヅモス、127フエルは真赤(まつか)になつて、
128『これやお(たみ)129馬鹿(ばか)にしやがるな、130これを(くら)へ』
131双方(さうはう)から鉄拳(てつけん)(ふる)つて一人(ひとり)(をんな)(たた)()けて()る。132(たみ)荒男(あらをとこ)二人(ふたり)(たた)きつけられ、133悲鳴(ひめい)()げて『人殺(ひとごろし)人殺(ひとごろし)ー』と(さけ)()した。134(この)(こゑ)(おどろ)いてアーシスは(はし)(きた)り、135いきなりアヅモスの(くび)手拭(てぬぐ)ひを(うしろ)からパツと()つかけグツと()(たふ)した。136フエルはこの権幕(けんまく)(おどろ)いて裏口(うらぐち)から(ほそ)くなつて()()しけり。
137(たみ)『アーシスさま()()(くだ)さいました。138此奴(こいつ)(えら)さうに()やがつて仕方(しかた)がないので(みづ)をかけてやりましたら、139(をとこ)らしうもない、140(をんな)一人(ひとり)二人(ふたり)荒男(あらをとこ)鉄拳(てつけん)(ふる)つて喧嘩(けんくわ)()ひに()よつたのですよ』
141アーシス『本当(ほんたう)無茶(むちや)(こと)をする(をとこ)ですね。142オイ、143アヅモス(なん)だ、144下女(げぢよ)(つか)まへて(あま)大人気(おとなげ)ないぢやないか』
145アヅモス『エーチヨツ、146横合(よこあひ)から()んで()やがつてちよつかい()しやがるものだから、147折角(せつかく)折檻(せつかん)がワヤになつて仕舞(しま)つた。148コリヤ、149アーシス、150(おれ)(のど)()めてどうするのだ、151これ()よ、152(かた)がついて()るぢやないか』
153アーシス『喧嘩(けんくわ)結末(かた)がついたらそれでよいぢやないか。154アー(えら)畳中(たたみぢう)(はひ)だらけだ。155ちと(はうき)なと()つて其処辺(そこら)(ぢう)掃除(さうぢ)して()い。156これだけお(きやく)さまで(いそが)しいのに、157(をんな)相手(あひて)にして()(どころ)かい』
158アヅモス『此奴(こいつ)もお(たみ)感染(かんせん)したと()えて箒持(はうきも)箒持(はうきも)てと(ぬか)しやがるな。159(はうき)(はばか)りさまだ』
160アーシス『貴様(きさま)何時(いつ)ほうき(かみ)だといつて威張(ゐば)つて()たぢやないか。161箒持(はうきも)つのは貴様(きさま)(しやう)()うて()るわ。162サア(はや)()いたり()いたり』
163 アヅモスは庭箒(にははうき)()るより(はや)く、164アーシスの(かしら)目蒐(めが)けて、
165アヅモス『コリヤ、166伯耆(はうき)(かみ)さまが、167貴様(きさま)(かしら)播磨(はりま)(かみ)さまだ』
168()(なが)らピシヤピシヤと(なぐ)りつけ(しり)()をかけて(この)()()()つた。169アーシスは(いか)つてアヅモスの(あと)()()けようとするのを、170(たみ)はグツと()()(こゑ)(ふる)はして、
171(たみ)『もしもし貴方(あなた)172一寸(ちよつと)()つて(くだ)さいませ、173これだけ沢山(たくさん)のお(きやく)さまでお()()みでもあり、174病人(びやうにん)さまもあるのに、175番頭(ばんとう)同士(どうし)喧嘩(けんくわ)なさつては(うち)親方(おやかた)()みませぬ。176(また)スガールさまやスミエルさまの病気(びやうき)(さは)るといけませぬからなア』
177アーシス『さうだと()つて(この)(まま)にする(わけ)には()かぬぢやないか、178(のち)(ため)にならぬからなア』
179(たみ)『まアまア今日(けふ)辛抱(しんばう)して(くだ)さいませ、180親方(おやかた)(むすめ)さまが心配(しんぱい)なさいますからな』
181アーシス『ウンそれもさうだ。182そんならお(まへ)意見(いけん)(したが)つて今日(けふ)(わす)れる(こと)にせう。183(しか)しお(まへ)(この)(うち)()たらチツと言葉(ことば)(あらた)めて()れぬと(こま)るよ。184御主人様(ごしゆじんさま)親方(おやかた)()つたり、185嬢様(ぢやうさま)()()んだりすると()(こと)があるか』
186(たみ)『そんなら(なん)()つたらよいのですか』
187アーシス『お(かみ)(かた)をお()びするには御主人様(ごしゆじんさま)旦那様(だんなさま)()ふのだ。188奥様(おくさま)はお部屋様(へやさま)とか奥様(おくさま)とか()つてよい。189さうして御老人(ごらうじん)御隠居様(ごいんきよさま)とか、190大旦那様(おほだんなさま)とか申上(まをしあげ)るのだよ。191(をとこ)のお子様(こさま)なれば坊様(ばうさま)192(をんな)のお()はお嬢様(ぢやうさま)193(あるひ)(ばう)ちやま、194(ぢやう)さまなど()つたらよい。195二人(ふたり)以上(いじやう)(とき)(おほ)きな(ばう)ちやま、196(ちひ)さいお嬢様(ぢやうさま)()ふのだ。197そして自分(じぶん)(こと)(わたくし)()ひ、198ウチだとか、199アテだとか、200ワタシなどは()つともないから()はぬがいい。201さうして()(ごた)へはヘエなんと()つてはいけない、202ハイ()ふのだよ。203(あさ)()きたらお(かみ)御挨拶(ごあいさつ)をするのに「お(はや)(ござ)います」と()ひ、204(ばん)は「お(やす)(あそ)ばせ」、205外出(ぐわいしゆつ)(とき)には「()つて(まゐ)ります」、206自分(じぶん)用事(ようじ)外出(ぐわいしゆつ)する(とき)は「一寸(ちよつと)やつて(いただ)きます」と()ふのだ。207帰宅(きたく)(とき)は「唯今(ただいま)(かへ)りました」、208御飯(ごはん)(とき)は「(いただ)きます」とか、209頂戴(ちやうだい)(いた)します」とか()ふのだ。210そして旦那様(だんなさま)外出(ぐわいしゆつ)(とき)は「()つていらつしやいませ」、211(かへ)りになつた(とき)には「お(かへ)(あそ)ばしませ」と、212かう叮嚀(ていねい)()ふのだよ。213(すべ)言葉使(ことばづかひ)はハツキリと叮嚀(ていねい)にさうして(やさ)しみのあるやうに注意(ちゆうい)するのだ。214使(つかひ)()つて()たら、215(かなら)直様(すぐさま)復命(ふくめい)しなくてはならない。216(あと)から(ついで)申上(まをしあげ)ますと()ふやうな懶惰事(ずるいこと)をやつて()ると何時(いつ)()にか肝腎(かんじん)(よう)(わす)れて仕舞(しま)ふからなア』
217(たみ)(なん)とまア此処(ここ)(うち)男衆(をとこしう)俄旦那様(にはかだんなさま)(はじ)め、218誰人(たれ)()れも(をんな)みたやうな(こと)()(ひと)()つたものだ、219オホホホホ、220これで(わたし)大分(だいぶん)勉強(べんきやう)(いた)しました』
221アーシス『お(たみ)さま、222(まへ)はどこともなしに下女(げぢよ)似合(にあ)はぬ垢抜(あかぬけ)がして()るが、223実際(じつさい)何処(どこ)から()たのだ。224一寸(ちよつと)()かして(もら)()いものだな』
225(たみ)(わたし)はビクの城下(じやうか)(うま)れた(もの)(ござ)いますが、226一寸(ちよつと)様子(やうす)があつて(おや)()名乗(なの)(こと)出来(でき)ないのですよ』
227アーシス『ウンさうすると(てて)なし()だな』
228(たみ)『まアそんなものでせう。229(しか)父親(てておや)なしに出来(でき)()(ひろ)世界(せかい)一人(ひとり)もありますまいから何処(どこ)かにあるでせう』
230アーシス『お(まへ)父親(てておや)()ふのは一体(いつたい)(たれ)だ』
231(たみ)(わたし)血沼(ちぬ)(むら)卓助(たくすけ)()(ひと)(そだ)てられた(もの)ですが、232(わたし)のお(とう)さまは立派(りつぱ)(かた)だと()(こと)です。233(わたし)(はは)奉公(ほうこう)()つて()つて(おなか)(ふく)れ、234奥様(おくさま)八釜(やかま)しいので(ちち)(かね)をつけて卓助(たくすけ)(うち)にやつたのださうですが、235養家(やうか)両親(りやうしん)(すで)()くなつて仕舞(しま)ひ、236(ただ)一人(ひとり)ぼつちで仕方(しかた)がないので其処辺(そこら)(ぢう)奉公(ほうこう)(ある)き、237二三日前(にさんにちまへ)此処(ここ)(やと)はれたのです』
238アーシス『(じつ)(こと)(おれ)もビクトリア城下(じやうか)(うま)れだが、239そいつは(めう)だなア』
240(たみ)『ヘエ貴方(あなた)もビクトリア城下(じやうか)ですか、241さうしてお(とう)さまは(なん)()(かた)です』
242アーシス『これは秘密(ひみつ)だから()はれないのだが、243(ひと)()はなければ()らしてやらう。244(おれ)(じつ)はこの(むら)へ、245そつと里子(さとご)にやられたのだ。246(おれ)(ちち)といふのは左守(さもり)(かみ)のキユービツトと()ふお(かた)だ。247(なん)でも下女(げぢよ)との(なか)(おれ)(うま)れたので、248(わら)(うへ)から(この)(むら)首陀(しゆだ)(うち)へやつて仕舞(しま)つたと()(こと)だ。249どうかして一遍(いつぺん)()ひたいのだけれど、250名乗(なの)(わけ)にもゆかず(こま)つたものだよ。251さうして一体(いつたい)(まへ)(たれ)()だい』
252(たみ)(わたし)のお(かあ)さまは皐月(さつき)()ひました。253ビクトリア城内(じやうない)御奉公(ごほうこう)(あが)つて()(とき)254刹帝利様(せつていりさま)のお()()かつて(おなか)(ふく)れ、255それが(ため)にそつと卓助(たくすけ)(うち)(くだ)されたのださうです。256こんな(こと)()つて(もら)うと(わたし)(いのち)()くなりますから、257どうぞ秘密(ひみつ)(たの)みますよ』
258アーシス『成程(なるほど)道理(だうり)でどこともなしに気品(きひん)(たか)(ところ)がある。259ヤア(おそ)()りました』
260(たみ)()双方(さうはう)から何事(なにごと)()()けた以上(いじやう)は、261一層(いつそ)(こと)貴方(あなた)夫婦(ふうふ)になつたらどうでせう、262さうすれば(たがひ)秘密(ひみつ)(まも)れますからなア』
263アーシス『そりや有難(ありがた)いが(なん)だか勿体(もつたい)()いやうな()がしてならないわ、264()()ならお(まへ)立派(りつぱ)王女様(わうぢよさま)だ。265(わたし)(けらい)身分(みぶん)だからなア』
266(たみ)『そんな斟酌(しんしやく)()りますか、267サア()()(ばや)相談(さうだん)()めやうぢやありませぬか』
268 ()二人(ふたり)(はなし)して()(つぎ)()何人(なにびと)とも()れず足音(あしおと)がスウスウと次第(しだい)(ほそ)()えてゆく。269これはアヅモスが二人(ふたり)(はなし)()()きして()たのである。
270大正一二・三・三 旧一・一六 於竜宮館 加藤明子録)