霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 霊婚(れいこん)〔一四二〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第3篇 玉置長蛇 よみ(新仮名遣い):たまきちょうだ
章:第12章 霊婚 よみ(新仮名遣い):れいこん 通し章番号:1420
口述日:1923(大正12)年03月04日(旧01月17日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
真っ暗な寒風吹きすさぶ険しい隧道を、一人の男が杖を力にとぼとぼと下ってゆく。野中に建っている大邸宅を見つけ、一夜の宿をと立ち寄ってみれば、柱や壁は破れて傾き、異様な臭気が漂う中、悪虫・悪獣が屋内を往来している。
この男はテームスであった。テームスはどこからともなく現れた山犬の群れに取り囲まれそうになり、恐怖にかられて逃げ出した。
薄暗い野路を行くと、前方から夜叉・悪鬼が二人の女を追いかけてくる。よくみれば吾が子スミエルとスガールが追われていた。夜叉と悪鬼は二人に追いつき、娘たちを喰らった。
後ろより幾百万ともなく悪鬼の唸り声が聞こえてくる。テームスは苦しさと恐ろしさに体がうまく動かなかった。空中から悪鬼がテームスの名を呼んで害そうとする。見ればベリシナが悪鬼に掴まれて助けを求めている。
テームスは煩悶苦悩やるせなく進退窮まった。空中の悪鬼は自ら兇党界の大魔王も使役する羅刹だと名乗った。
羅刹によれば、代々の悪業によってテームスの祖先たちは悪鬼となってここに悲惨な境涯を送っているという。テームスは、三五教の宣伝使治国別たちのお蔭で一度は改心を誓ったものの、鬼春別たち赦された人々に悪心を起こしたために極寒地獄に突き落されるところだという。
テームスが羅刹に引かれていく間、テームスの祖先の成れの果てという夜叉、悪鬼はいやらしい声を上げて追っかけてくる。テームスは目の前で妻のベリシナが猛獣たちに食い殺される有様を見、また羅刹によって娘の肉を無理矢理口にねじこまれた。テームスの口はしびれ、苦い毒薬を飲まされたような苦しさを味わった。
羅刹は、それがテームスとテームスの祖先たちが玉置村の人民に対してやってきたことだとののしり、今度はテームスがばらばらにされる番だとして突き倒した。
そこへ天の一方から霊光が輝き来たり、テームスの前に落下した。羅刹たちはこの火団に驚いて姿を隠した。火団は一柱の神人と化した。よくよく見れば、鬼春別が円満具足なる霊衣を身に着し、莞爾として立っている。
鬼春別は、自分は治国別の命によってテームスを救いに来たのだと告げ、自分にならって神の御前に犯してきた罪悪を陳謝すれば、神の恵みに家族ともども救われると諭した。鬼春別は紫の雲に乗って去って行った。テームスはいつの間にか高山の上に救い上げられていた。そして鬼春別を見送りながら合掌啼泣し、悔悟の念に暮れていた。
テームスが阿鼻叫喚の声を聞きつけ谷底を見ると、山の麓は火に囲まれ、妖怪毒蛇が焼き滅ぼされていた。テームスは天津祝詞を奏上して神の救いひたすら祈っていた。
そこへ雲に乗って勢いよく降り来た神人を見れば、万公であった。万公は、焼き滅ぼされている妖怪毒蛇は、テームス家の祖先が造った罪業によって生まれた悪魔たちであると説明した。万公は、テームス家の祖先に苦しめられた人民の霊が凝結して人の世に生まれて来たものだと明かした。
そこでどうしてもテームス家の後を継ぎ、家の財産を人民に平等に分配して罪を滅ぼすのが自分の役割だと明かした。テームスは得心し、万公に追われて山を降る。万公は火焔の中でも火傷もせずに矢のように山を下って行く。
万公に負われていくと、際限も無き原野に行き当たった。原野の中、水晶の水をたたえた沼に行き当たった。万公はここまで来て息を休め、沼を首尾よく渡れるよう神に祈る宣伝歌を歌った。
沼はたちまち変じて青畳となった。テームスが目を開いてよくよく見れば、治国別、鬼春別、松彦、竜彦その他の人々が枕頭に集まって、テームスを懇切に介抱し天の数歌を奏上していた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5512
愛善世界社版:155頁 八幡書店版:第10輯 90頁 修補版: 校定版:159頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 四辺(しへん)暗澹(あんたん)として日月(じつげつ)星辰(せいしん)(ひかり)もなく(はだ)(つんざ)(ごと)寒風(かんぷう)上下(じやうげ)左右(さいう)より吹雪(ふぶき)となつて()(きた)る。002魑魅(ちみ)魍魎(まうりやう)(さけ)(こゑ)003(やま)()()(かは)(そこ)より(いや)らしく(きこ)()る。004身体(しんたい)兀立(こつりつ)し、005()(おとろ)へた一人(ひとり)(をとこ)006(つゑ)(ちから)にトボトボと崎嶇(きく)たる隧道(ずいだう)当途(あてど)もなしに(くだ)()く。007ややホンノリと(あか)るくなつたと()れば野中(のなか)()てる(だい)なる家屋(かをく)(まへ)008何処(いづく)(はて)かは()らねども、009かかる(さび)しき一人旅(ひとりたび)010(なに)()もあれ、011立寄(たちよ)つて一夜(いちや)宿(やど)()はむものと(もん)(くぐ)つて()()れば、012(はしら)(むし)()ひ、013処々(ところどころ)(かべ)(やぶ)れ、014(たか)堂舎(だうしや)柱根(ちうこん)(くだ)()ち、015梁棟(りやうとう)(かたむ)(ゆが)み、016垂木梠(たるきこまい)017()()ち、018()()はれぬ臭気(しうき)四辺(しへん)()()ちたり。019(くま)020(たか)021(わし)022蚖蛇(からすへび)023(うはばみ)024(まむし)025蜈蚣(むかで)026蚰蜒(げじげじ)027百虫(おさむし)028(むじな)(はじ)()()れぬ悪虫(あくちう)(ともがら)029屋内(をくない)前後(ぜんご)左右(さいう)往来(わうらい)し、030屎尿(しねう)(にほひ)(はな)をつき、031蛆虫(うじむし)032糞虫(くそむし)033足許(あしもと)(あつ)まり(きた)(その)(いや)らしさ。034テームスは途方(とはう)()れて(この)()立去(たちさ)らむと(おも)(をり)しも山犬(やまいぬ)(むれ)035幾百(いくひやく)ともなく(あら)はれ(きた)りて、036左右(さいう)よりテームスを取囲(とりかこ)み、037(うゑ)(つか)れたる(さま)にてテームスを()()らはむと吠猛(ほえたけ)る。038テームスは(いのち)(かぎ)りに(この)()立出(たちい)(すく)ひを()べど如何(いかが)はしけむ、039声調(せいてう)(みだ)れて(われ)(なが)(その)(なに)()へるやを(べん)(がた)(まで)になつて()た。040されど恐怖心(きようふしん)()られて萱草(かやくさ)()えたる薄暗(うすぐら)野路(のぢ)を、041(つゑ)(ちから)()けつ(まろ)びつ()()せば前方(ぜんぱう)より夜叉(やしや)042悪鬼(あくき)043二人(ふたり)(をんな)()()(きた)る。044(をんな)はテームスが(まへ)(つまづ)(たふ)れた。045よくよく()れば(わが)()のスミエル、046スガールの二人(ふたり)である。047夜叉(やしや)048悪鬼(あくき)(たちま)(おつ)つき、049(くる)しむ二人(ふたり)(むすめ)(たちま)四肢(しし)()きちぎりテームスが面前(めんぜん)にて()()らう、050その(いや)らしさ。051()(あたり)(わが)()危難(きなん)()る、052()()もあられぬ(こころ)(くるし)み、053(かみ)(ねん)じ、054せめては(わが)()なりと(すく)はれむと合掌(がつしやう)せむと(あせ)れども如何(いかが)はしけむ身体(しんたい)強直(きやうちよく)し、055自由(じいう)()かぬ浅間(あさま)しさ。056こりやかうしては()られぬと八九分(はちくぶ)(まで)()(つく)された(むすめ)(くび)(なが)め、057これ今生(こんじやう)()おさめと()けつ(まろ)びつ、058(きた)(きた)へと(はし)れども、059何者(なにもの)(あし)にまつばる心地(ここち)して、060(あせ)れば(あせ)(ほど)(すす)()ざるぞ(かな)しけれ。061(うしろ)(かた)より幾百万(いくひやくまん)とも(かぞ)(がた)(ほど)夜叉(やしや)062悪鬼(あくき)(さけ)(ごゑ)
063悪鬼(あくき)『ヤアヤアそれへ()()くテームスの(おやじ)064(いち)()(はや)引捉(ひつとら)(われ)()(しよく)(きよう)せむ』
065()ばはる(こゑ)(おどろ)いて(そら)打仰(うちあふ)げば空中(くうちう)六面(ろくめん)八臂(はつぴ)妖怪(えうくわい)066(つま)のベリシナの頭髪(とうはつ)(つか)空中(くうちう)にブラ()げてゐる。067ベリシナは悲鳴(ひめい)をあげて、
068ベリシナ『テームス殿(どの)069(たす)けておくれ』
070()(こゑ)071五臓(ござう)六腑(ろつぷ)()(わた)り、072煩悶(はんもん)苦悩(くなう)やるせなく進退(しんたい)ここに(きは)まつて、073因果(いんぐわ)(さだ)(たたず)(をり)しも、074以前(いぜん)妖怪(えうくわい)数千(すうせん)(にん)曲鬼(まがおに)(ひき)ゐて、075テームスが(まへ)(あら)はれ(きた)り、076(らい)(ごと)(こゑ)(はな)つて言葉(ことば)(するど)く、
077妖怪(えうくわい)(われ)兇党界(きようたうかい)大魔王(だいまわう)078妖幻坊(えうげんばう)使役(しえき)せる羅刹(らせつ)なり。079(なんぢ)(いへ)祖先(そせん)代々(だいだい)より(たみ)膏血(かうけつ)(しぼ)り、080巨万(きよまん)(ざい)()(なが)ら、081饑餓(きが)凍餒(とうたい)(たみ)(すく)(こと)()らず、082貪婪(どんらん)悪徳(あくとく)()(つき)(かさ)なり罪障(ざいしやう)(めつ)する(とき)なく、083ここに(なんぢ)祖先(そせん)冥罰(めいばつ)(かうむ)り、084かくの(ごと)夜叉(やしや)悪鬼(あくき)となり、085屎尿(しねう)飲食(おんじき)し、086悪獣(あくじう)悪虫(あくちう)餌食(ゑじき)となし、087極熱(ごくねつ)極寒(ごくかん)(くるし)みに()幾回(いくくわい)となく(なや)められ悲惨(ひさん)生涯(しやうがい)(おく)りつつあり。088(しか)るに(なんぢ)089(この)(たび)弥勒(みろく)神政(しんせい)太柱(ふとばしら)(かみ)090大国常立(おほくにとこたちの)大神(おほかみ)(まも)らせ(たま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)(たす)けにより最愛(さいあい)(むすめ)危難(きなん)(すく)はれ、091(いち)()(いのち)(おや)(よろこ)(あが)め、092三五教(あななひけう)信者(しんじや)とならむとまで(ちか)ひたりしに、093(なんぢ)精霊(せいれい)頑愚(ぐわんぐ)鈍慳(どんけん)にして心中(しんちう)(すで)三五教(あななひけう)忌避(きひ)()るに(あら)ずや。094(また)バラモン(けう)宣伝(せんでん)将軍(しやうぐん)鬼春別(おにはるわけ)以下(いか)(かみ)(すく)はれ(ゆる)されたる真人(まびと)(たい)し、095その言葉(ことば)に、096(おこな)ひに無限(むげん)悔蔑(ぶべつ)(あら)はし人々(ひとびと)精霊(せいれい)(なや)ます(つみ)097万死(ばんし)(なほ)(およ)ぶべからず。098(なんぢ)(いま)(あひだ)(こころ)(あらた)めざれば、099これより極寒(ごくかん)地獄(ぢごく)突堕(つきおと)し、100無限(むげん)永苦(えいく)(あた)ふべし。101(はや)(きた)れ』
102()()つて(きた)(きた)無理(むり)無体(むたい)引摺(ひきず)()く。
103 テームスが祖先(そせん)(きこ)えたる夜叉(やしや)104悪鬼(あくき)数々(かずかず)(あと)より(いや)らしき(こゑ)一斉(いつせい)(はな)ちて(おつ)かけ(きた)浅間(あさま)しさ。105骨肉(こつにく)相食(あひは)地獄道(ぢごくだう)(この)惨状(さんじやう)にテームスは人心地(ひとごこち)もせず、106魔王(まわう)がなす(まま)()(さけ)(なが)ら、107際限(さいげん)もなき枯野(かれの)(はら)石道(いしみち)真裸足(まつぱだし)のまま、108(あし)(やぶ)()路上(ろじやう)(そめ)つつ無我(むが)夢中(むちう)になつて()かれ()く。
109 何時(いつ)とはなしにテームスは薄暗(うすぐら)険峻(けんしゆん)(やま)(ふもと)()いてゐた。110以前(いぜん)悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)(かげ)(けぶり)(ごと)()え、111四方(よも)(やま)()(かな)しげな(さけ)(ごゑ)が、112間歇(かんけつ)(てき)(かぜ)のまにまに(きこ)えてゐる。113()(やう)(かぜ)()いて(からだ)(こが)すかと(おも)へば、114()てつく(やう)寒風(かんぷう)(たちま)()(かへ)し、115氷柱(つらら)(あめ)()(あめ)(かは)(がは)頭上(づじやう)集中(しふちう)(くだ)()る。116(やうや)くにして()(ひら)四辺(しへん)(なが)むれば(とら)117(おほかみ)118(くま)119獅子(しし)(など)食物(しよくもつ)(うゑ)たる(ごと)様子(やうす)にて幾百(いくひやく)とも(かぎ)りなく一人(ひとり)のテームスの(にく)()まむと()めつけて()(おそ)ろしさ。120(たちま)ち『キヤツ』と(をんな)(さけ)(ごゑ)121よくよく()れば(つま)のベリシナが獅子(しし)122(とら)(むれ)両方(りやうはう)より(あし)(くは)へられ(わが)()(まへ)にて青竹割(あをだけわ)れにされ、123群獣(ぐんじう)(たちま)()(たか)つてバリバリと(おと)()て、124(のこ)らずいがみ()(なが)()つて(しま)つた。
125 テームスは進退(しんたい)(きは)まつて(うん)(てん)(まか)せ、126観念(くわんねん)(まなこ)()ぢて()る。127(あつ)さと(さむ)さに(ほとん)人心地(ひとごごち)もなかつた。128(たちま)雷鳴(らいめい)(とどろ)電光(でんくわう)(ひらめ)(わた)り、129テームスの身体(からだ)空中(くうちう)()()げられ、130フワリフワリと幾百(いくひやく)()とも()れぬ山河(さんか)(した)(なが)め、131火焔(くわえん)濛々(もうもう)立上(たちのぼ)(やま)(いただき)落下(らくか)した。132黒煙(こくえん)異様(いやう)臭気(しうき)(はな)つて(またた)(うち)(かれ)身体(しんたい)(つつ)んで(しま)つた。133何処(どこ)ともなく、
134()(ひら)け!』
135大声(おほごゑ)(よば)はるものがある。136怖々(こはごは)(なが)()(ひら)けば(さき)空中(くうちう)より(くだ)(きた)りし妖怪(えうくわい)羅刹(らせつ)(かれ)(まへ)二人(ふたり)(をんな)両足(りやうあし)をグツと左右(さいう)()(にぎ)り、137(あたま)逆様(さかしま)にして崎嶇(きく)たる(いは)(うへ)にコツリコツリと(つゑ)をつく(やう)臼搗(うすづ)いて()る。138二人(ふたり)(むすめ)はキヤーキヤーと悲鳴(ひめい)をあげ(くる)しげに()(さけ)ぶ。139テームスは一言(いちごん)(はつ)せむとすれども、140(いき)(ふさ)がり(した)つりあがり、141ウの(こゑ)()なかつた。142羅刹(らせつ)巨眼(きよがん)(ひら)き、143(こゑ)(あら)らげて()ふ、
144羅刹(らせつ)(なんぢ)145宿世(すぐせ)罪業(ざいごふ)によつて、146現在(げんざい)愛児(あいじ)()をすすり、147(にく)()(ほね)(こな)にして(しよく)すべし。148(しか)らざれば(なんぢ)(また)かくの(ごと)くなすべし』
149()ふより(はや)く、150二人(ふたり)(をんな)頭部(とうぶ)(ちから)(かぎ)りに(いは)()ちつけメヂヤ メヂヤに(くだ)いて(しま)つた。
151 テームスは()むを()(うな)づいた。152羅刹(らせつ)(ひめ)頭肉(とうにく)断片(だんぺん)竹篦(たけべら)(さき)(すく)うてはテームスの(くち)()()む。153テームスは()むを()ず、154(これ)()はざるを()なかつた。155(くち)(しび)(えぐ)(にが)毒薬(どくやく)()(ごと)(くる)しさを(かん)じた。156羅刹(らせつ)大口(おほぐち)()けて高笑(たかわら)ひ、
157羅刹(らせつ)『アハハハハ、158その(はう)(いま)(むすめ)(にく)一口(ひとくち)()つて(あぢ)()つたであらう。159(なんぢ)祖先(そせん)玉置村(たまきむら)里庄(りしやう)として人民(じんみん)(くる)しめ数多(あまた)貧者(ひんじや)膏血(かうけつ)(しぼ)り、160(なんぢ)(だい)になつては益々(ますます)(はなは)だしく、161(その)(とみ)巨万(きよまん)(かさ)玉木(たまき)(むら)巍然(ぎぜん)たる邸宅(ていたく)(かま)へ、162天地(てんち)(おそ)れず、163驕慢(けうまん)(かぎ)りを(つく)不届者(ふとどきもの)164(われ)人民(じんみん)怨霊(をんりやう)団結(だんけつ)してここに羅刹(らせつ)として(あら)はれしものぞ。165いざ(これ)よりは(なんぢ)精霊(せいれい)肉体(にくたい)ともに(いし)(もつ)(たた)きつけ、166幾百(いくひやく)肉団(にくだん)となし、167(なんぢ)(ため)生前(せいぜん)(くる)しめられたる精霊(せいれい)分与(ぶんよ)すべし。168さア(はや)(この)岩上(がんじやう)(よこた)はれ』
169(ののし)(なが)ら、170その()()(たふ)した。
171 かかる(ところ)(てん)一方(いつぱう)より霊光(れいくわう)(かがや)(きた)り、172テームスが(まへ)落下(らくか)した。173羅刹(らせつ)(この)火団(くわだん)(おどろ)いて何処(いづこ)ともなく姿(すがた)(かく)した。174火団(くわだん)(たちま)一柱(いつこ)神人(しんじん)(くわ)した。175よくよく()れば鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)円満(ゑんまん)具足(ぐそく)なる霊衣(れいい)()(ちやく)し、176莞爾(くわんじ)として()つてゐる。177テームスは打驚(うちおどろ)(はじ)めて(くち)(ひら)き、
178テームス『ああ貴方(あなた)鬼春別(おにはるわけ)(さま)(ござ)いましたか。179(まこと)失礼(しつれい)(こと)ばかり(こころ)(うち)(おも)ひました。180それ(ゆゑ)祖先(そせん)(つみ)自分(じぶん)とで斯様(かやう)(ところ)(おと)されたので(ござ)いませう。181何卒(なにとぞ)(わたし)(つみ)をお(ゆる)(くだ)さいませ』
182()(あは)(なみだ)(なが)して(たの)()る。
183鬼春(おにはる)拙者(せつしや)御存(ごぞん)じの(とほ)りバラモン(けう)のゼネラル、184鬼春別(おにはるわけ)(ござ)る。185三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)霊光(れいくわう)(つつ)まれ自我(じが)自愛(じあい)(ゆめ)()翻然(ほんぜん)として(かみ)(みち)(さと)り、186()(なが)地獄道(ぢごくだう)陥落(かんらく)せし()(すく)はれ、187(わが)精霊(せいれい)神界(しんかい)(めい)によつてエンゼルとなり、188(いま)ここに治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)(めい)によつて(なんぢ)(すく)ふべく(くだ)(きた)れり。189(なんぢ)(いま)より(われ)(なら)つて前非(ぜんぴ)()い、190(かみ)御前(みまへ)(おか)(きた)りし罪悪(ざいあく)陳謝(ちんしや)せよ。191(しか)らば(なんぢ)(むすめ)(つま)(かみ)(めぐ)みに(すく)はるべし。192夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ』
193()(はな)(むらさき)(くも)()つて嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)(ひびき)(とも)中天(ちうてん)(たか)(かへ)()く。194(あと)見送(みおく)つてテームスは()()れぬ高山(かうざん)(うへ)(ひざまづ)(その)勇姿(ゆうし)のかくるる(まで)涕泣(ていきふ)(なが)合掌(がつしやう)悔悟(くわいご)(ねん)()られつつあつた。
195 (にはか)(きこ)ゆる阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)(こゑ)196テームスは何心(なにごころ)なく谷底(たにそこ)()れば焔々(えんえん)たる猛火(まうくわ)(つつ)まれ、197(いや)らしき妖怪(えうくわい)黒蛇(くろへび)(かず)(かぎ)りなく猛火(まうくわ)()かれ、198(もだ)(くる)しみ()(さけ)(こゑ)であつた。199(この)(やま)(ふもと)空地(あきち)もなく()(つつ)まれ、200妖怪(えうくわい)毒蛇(どくじや)()(ほろ)ぼされつつあつた。201(つばさ)なき()空中(くうちう)(かけ)(この)()(のが)るる(わけ)にも()かず、202(しき)りに天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(かみ)(すく)ひを(いの)りゐる。
203 かかる(ところ)(くも)()つて(いきほひ)よく(くだ)()一人(ひとり)神人(しんじん)がある。204よくよく()れば(わが)()逗留(とうりう)したる万公(まんこう)である。205万公(まんこう)莞爾(くわんじ)として、206その(まへ)立現(たちあら)はれ(かる)目礼(もくれい)(なが)ら、
207万公(まんこう)舅殿(しうとどの)208(この)谷底(たにそこ)御覧(ごらん)なさいませ。209沢山(たくさん)妖怪(えうくわい)毒蛇(どくじや)()(ほろ)ぼされてゐるでせう。210これは(みな)テームス()祖先(そせん)(つく)つた罪業(ざいごふ)化生(けしやう)した悪魔(あくま)(ござ)いますよ。211(また)(この)万公(まんこう)貴方(あなた)祖先(そせん)代々(だいだい)(くる)しめられた(あは)れな人民(じんみん)(みたま)凝結(ぎようけつ)して万公(まんこう)となり、212(この)()(うま)()たものです。213(わたし)はそれ(ゆゑ)どうしてもテームス()(あと)()いで(この)テームス()財産(ざいさん)人民(じんみん)平等(べうどう)分配(ぶんぱい)(つみ)(ほろ)ぼさねば、214舅殿(しうとどの)(はじ)祖先(そせん)(つみ)(ゆる)されますまい。215()がつきましたかな。216万民(ばんみん)精霊(せいれい)(あつ)まつて万公(まんこう)()()現界(げんかい)(うま)れたのですよ』
217テームス『いや、218どうも有難(ありがた)(ござ)ります。219因果(いんぐわ)応報(おうはう)道理(だうり)によつて先祖(せんぞ)代々(だいだい)地獄(ぢごく)(くるし)みを()けるのも()むを()ませぬが、220三五教(あななひけう)(ほう)(たま)貴方(あなた)(わが)()養子(やうし)となり、221祖先(そせん)(つみ)(ゆる)して(くだ)さるのなら、222(この)(くらゐ)有難(ありがた)(こと)(ござ)いませぬ。223(しか)(なが)ら、224スミエル、225スガールの両人(りやうにん)悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)(ため)肉体(にくたい)粉砕(ふんさい)され、226もはや現界(げんかい)には()りませぬ。227どうして(いへ)()(こと)出来(でき)ませうか。228(むすめ)がなくても養子(やうし)になつて(くだ)さるでせうか』
229万公(まんこう)()心配(しんぱい)なさいますな。230治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)がお(まも)りあればスミエル、231スガール両人(りやうにん)(きは)めて安全(あんぜん)肉体(にくたい)(たも)つてゐられます。232さアこんな(ところ)何時(いつ)(まで)()つても(たま)りませぬ。233(わたし)一緒(いつしよ)(かへ)りませう』
234テームス『()れて(かへ)つて(くだ)さるか。235あ、236それは有難(ありがた)い。237(しか)(つみ)(おほ)吾々(われわれ)238どうして(この)火焔(くわえん)(やま)(くだ)(こと)出来(でき)ませう』
239万公(まんこう)『いや(よろ)しい。240貴方(あなた)大変(たいへん)(あし)(つか)れて()りまする。241(わたし)(せな)()うて(かへ)りませう。242(わづ)三千(さんぜん)()ばかり(はし)れば玉置村(たまきむら)(たく)(かへ)れますから』
243テームス『(なに)244三千(さんぜん)()245大変(たいへん)(とほ)(ところ)(まで)何時(いつ)()()たのだらうな』
246万公(まんこう)精霊(せいれい)世界(せかい)では三千(さんぜん)()五千(ごせん)()現界(げんかい)一丁(いつちやう)(あゆ)する(ひま)もかかりませぬ。247さア(はや)(せな)をお(かか)(くだ)さい』
248()をつき()せばテームスは小児(せうに)(やう)()になり、
249テームス『ああ()いては()(したが)へだ。250そんなら婿殿(むこどの)251(よろ)しく(たの)みます』
252万公(まんこう)(おや)()(れい)なんか()つたり、253(たの)必要(ひつえう)はありませぬ』
254()(なが)甲斐(かひ)々々(がひ)しく(せな)()ひ、255猛々(まうまう)たる火焔(くわえん)(なか)をドンドンと火傷(やけど)もせず、256()()(ごと)くに(くだ)()く。
257 万公(まんこう)()はれて(やま)(くだ)れば、258際限(さいげん)もなき青草(あをぐさ)(しげ)原野(げんや)があつた。259原野(げんや)真只中(まつただなか)一瀉(いつしや)千里(せんり)(いきほひ)でトントントンと()()せば、260水晶(すいしやう)(みづ)(たた)へた(ぬま)()きあたつた。261流石(さすが)万公(まんこう)(これ)には辟易(へきえき)して(いき)(やす)め、262思案(しあん)()らさむとテームスを青芝(あをしば)(うへ)にソツと(おろ)双手(もろて)(あは)せて、
263万公(まんこう)三千(さんぜん)世界(せかい)(うめ)(はな)
264一度(いちど)(ひら)常磐木(ときはぎ)
265(まつ)神世(かみよ)となりにけり
266顕幽神(けんいうしん)三界(さんかい)
267(すく)はせ(たま)三五(あななひ)
268(すく)ひの(かみ)()れませる
269国治立(くにはるたち)大御神(おほみかみ)
270豊国姫(とよくにひめ)大御神(おほみかみ)
271(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
272(みづ)御魂(みたま)(つか)へたる
273治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)
274松彦(まつひこ)竜彦(たつひこ)神司(かむつかさ)
275万公別(まんこうわけ)真心(まごころ)
276(あは)れみ(たま)(いま)ここに
277(あら)はれまして(この)(ぬま)
278首尾(しゆび)()(わた)らせ(たま)へかし
279朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
280(つき)()つとも()くるとも
281仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
282(かみ)(めぐ)みは常久(とこしへ)
283(かは)らせ(たま)(こと)あらじ
284(まも)らせ(たま)惟神(かむながら)
285玉置(たまき)(さと)のテームスが
286世継(よつぎ)となりし万公別(まんこうわけ)
287真心(まごころ)こめて神々(かみがみ)
288御前(みまへ)(つつし)()(まつ)
289(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
290(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
291(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
292直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
293()(あやま)ちを()(なほ)
294(めぐみ)(ふか)神勅(みことのり)
295(あふ)(うやま)今日(けふ)(そら)
296(すく)はせ(たま)惟神(かむながら)
297(たふと)(かみ)(おん)(まへ)
298親子(おやこ)二人(ふたり)(つつし)みて
299(すく)ひを(ねが)(たてまつ)
300ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
301御霊(みたま)恩頼(ふゆ)(たま)へかし』
302 かく(うた)(をは)るや際限(さいげん)もなき(ぬま)(たちま)(へん)じて青畳(あをだたみ)となつた。303テームスは()(ひら)きよくよく()れば、304鬼春別(おにはるわけ)読経(どきやう)せし隣室(りんしつ)()(まわ)して(たふ)れてゐたのである。305治国別(はるくにわけ)306鬼春別(おにはるわけ)307松彦(まつひこ)308竜彦(たつひこ)(その)()人々(ひとびと)枕頭(ちんとう)(あつ)まつて懇切(こんせつ)介抱(かいほう)をし、309(あま)数歌(かずうた)(しき)りに奏上(そうじやう)してゐた。310ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
311大正一二・三・四 旧一・一七 於竜宮館 北村隆光録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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