霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 霊婚(れいこん)〔一四二〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第3篇 玉置長蛇 よみ:たまきちょうだ
章:第12章 霊婚 よみ:れいこん 通し章番号:1420
口述日:1923(大正12)年03月04日(旧01月17日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:155頁 八幡書店版:第10輯 90頁 修補版: 校定版:159頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 四辺暗澹(しへんあんたん)として日月星辰(じつげつせいしん)(ひかり)もなく(はだ)(つんざ)(ごと)寒風(かんぷう)上下(じやうげ)左右(さいう)より吹雪(ふぶき)となつて()(きた)る。002魑魅魍魎(ちみまうりやう)(さけ)(こゑ)003(やま)()()(かは)(そこ)より(いや)らしく(きこ)()る。004身体(しんたい)兀立(こつりつ)し、005()(おとろ)へた一人(ひとり)(をとこ)006(つゑ)(ちから)にトボトボと崎嶇(きく)たる隧道(ずいだう)当途(あてど)もなしに(くだ)()く。007ややホンノリと(あか)るくなつたと()れば野中(のなか)()てる(だい)なる家屋(かをく)(まへ)008何処(いづく)(はて)かは()らねども、009かかる(さび)しき一人旅(ひとりたび)010(なに)()もあれ、011立寄(たちよ)つて一夜(いちや)宿(やど)()はむものと(もん)(くぐ)つて()()れば、012(はしら)(むし)()ひ、013処々(ところどころ)(かべ)(やぶ)れ、014(たか)堂舎(だうしや)柱根(ちうこん)(くだ)()ち、015梁棟(りやうとう)(かたむ)(ゆが)み、016垂木梠(たるきこまい)017()()ち、018()()はれぬ臭気(しうき)四辺(しへん)()()ちたり。019(くま)020(たか)021(わし)022蚖蛇(からすへび)023(うはばみ)024(まむし)025蜈蚣(むかで)026蚰蜒(げじげじ)027百虫(おさむし)028(むじな)(はじ)()()れぬ悪虫(あくちう)(ともがら)029屋内(をくない)前後左右(ぜんごさいう)往来(わうらい)し、030屎尿(しねう)(にほひ)(はな)をつき、031蛆虫(うじむし)032糞虫(くそむし)033足許(あしもと)(あつ)まり(きた)(その)(いや)らしさ。034テームスは途方(とはう)()れて(この)()立去(たちさ)らむと(おも)(をり)しも山犬(やまいぬ)(むれ)035幾百(いくひやく)ともなく(あら)はれ(きた)りて、036左右(さいう)よりテームスを取囲(とりかこ)み、037(うゑ)(つか)れたる(さま)にてテームスを()()らはむと吠猛(ほえたけ)る。038テームスは(いのち)(かぎ)りに(この)()立出(たちい)(すく)ひを()べど如何(いかが)はしけむ、039声調(せいてう)(みだ)れて(われ)(なが)(その)(なに)()へるやを(べん)(がた)(まで)になつて()た。040されど恐怖心(きようふしん)()られて萱草(かやくさ)()えたる薄暗(うすぐら)野路(のぢ)を、041(つゑ)(ちから)()けつ(まろ)びつ()()せば前方(ぜんぱう)より夜叉(やしや)042悪鬼(あくき)043二人(ふたり)(をんな)()()(きた)る。044(をんな)はテームスが(まへ)(つまづ)(たふ)れた。045よくよく()れば(わが)()のスミエル、046スガールの二人(ふたり)である。047夜叉(やしや)048悪鬼(あくき)(たちま)(おつ)つき、049(くる)しむ二人(ふたり)(むすめ)(たちま)四肢(しし)()きちぎりテームスが面前(めんぜん)にて()()らう、050その(いや)らしさ。051()(あたり)(わが)()危難(きなん)()る、052()()もあられぬ(こころ)(くるし)み、053(かみ)(ねん)じ、054せめては(わが)()なりと(すく)はれむと合掌(がつしやう)せむと(あせ)れども如何(いかが)はしけむ身体(しんたい)強直(きやうちよく)し、055自由(じいう)()かぬ浅間(あさま)しさ。056こりやかうしては()られぬと八九分(はちくぶ)(まで)()(つく)された(むすめ)(くび)(なが)め、057これ今生(こんじやう)()おさめと()けつ(まろ)びつ、058(きた)(きた)へと(はし)れども、059何者(なにもの)(あし)にまつばる心地(ここち)して、060(あせ)れば(あせ)(ほど)(すす)()ざるぞ(かな)しけれ。061(うしろ)(かた)より幾百万(いくひやくまん)とも(かぞ)(がた)(ほど)夜叉(やしや)062悪鬼(あくき)(さけ)(ごゑ)
063悪鬼(あくき)『ヤアヤアそれへ()()くテームスの(おやじ)064一時(いちじ)(はや)引捉(ひつとら)吾等(われら)(しよく)(きよう)せむ』
065()ばはる(こゑ)(おどろ)いて(そら)打仰(うちあふ)げば空中(くうちう)六面八臂(ろくめんはつぴ)妖怪(えうくわい)066(つま)のベリシナの頭髪(とうはつ)(つか)空中(くうちう)にブラ()げてゐる。067ベリシナは悲鳴(ひめい)をあげて、
068ベリシナ『テームス殿(どの)069(たす)けておくれ』
070()(こゑ)071五臓六腑(ござうろつぷ)()(わた)り、072煩悶(はんもん)苦悩(くなう)やるせなく進退(しんたい)ここに(きは)まつて、073因果(いんぐわ)(さだ)(たたず)(をり)しも、074以前(いぜん)妖怪(えうくわい)数千人(すうせんにん)曲鬼(まがおに)(ひき)ゐて、075テームスが(まへ)(あら)はれ(きた)り、076(らい)(ごと)(こゑ)(はな)つて言葉(ことば)(するど)く、
077妖怪(えうくわい)(われ)兇党界(きようたうかい)大魔王(だいまわう)078妖幻坊(えうげんばう)使役(しえき)せる羅刹(らせつ)なり。079(なんぢ)(いへ)祖先代々(そせんだいだい)より(たみ)膏血(かうけつ)(しぼ)り、080巨万(きよまん)(ざい)()(なが)ら、081饑餓凍餒(きがとうたい)(たみ)(すく)(こと)()らず、082貪婪悪徳(どんらんあくとく)()(つき)(かさ)なり罪障(ざいしやう)(めつ)する(とき)なく、083ここに(なんぢ)祖先(そせん)冥罰(めいばつ)(かうむ)り、084かくの(ごと)夜叉(やしや)悪鬼(あくき)となり、085屎尿(しねう)飲食(おんじき)し、086悪獣(あくじう)悪虫(あくちう)餌食(ゑじき)となし、087極熱(ごくねつ)極寒(ごくかん)(くるし)みに()幾回(いくくわい)となく(なや)められ悲惨(ひさん)生涯(しやうがい)(おく)りつつあり。088(しか)るに(なんぢ)089(この)(たび)弥勒神政(みろくしんせい)太柱神(ふとばしらかみ)090大国常立大神(おほくにとこたちのおほかみ)(まも)らせ(たま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)(たす)けにより最愛(さいあい)(むすめ)危難(きなん)(すく)はれ、091一時(いちじ)(いのち)(おや)(よろこ)(あが)め、092三五教(あななひけう)信者(しんじや)とならむとまで(ちか)ひたりしに、093(なんぢ)精霊(せいれい)頑愚鈍慳(ぐわんぐどんけん)にして心中(しんちう)(すで)三五教(あななひけう)忌避(きひ)()るに(あら)ずや。094(また)バラモン(けう)宣伝将軍(せんでんしやうぐん)鬼春別(おにはるわけ)以下(いか)(かみ)(すく)はれ(ゆる)されたる真人(まびと)(たい)し、095その言葉(ことば)に、096(おこな)ひに無限(むげん)悔蔑(ぶべつ)(あら)はし人々(ひとびと)精霊(せいれい)(なや)ます(つみ)097万死(ばんし)(なほ)(およ)ぶべからず。098(なんぢ)(いま)(あひだ)(こころ)(あらた)めざれば、099これより極寒地獄(ごくかんぢごく)突堕(つきおと)し、100無限(むげん)永苦(えいく)(あた)ふべし。101(はや)(きた)れ』
102()()つて(きた)(きた)無理(むり)無体(むたい)引摺(ひきず)()く。
103 テームスが祖先(そせん)(きこ)えたる夜叉(やしや)104悪鬼(あくき)数々(かずかず)(あと)より(いや)らしき(こゑ)一斉(いつせい)(はな)ちて(おつ)かけ(きた)浅間(あさま)しさ。105骨肉(こつにく)相食(あひは)地獄道(ぢごくだう)(この)惨状(さんじやう)にテームスは人心地(ひとごこち)もせず、106魔王(まわう)がなす(まま)()(さけ)(なが)ら、107際限(さいげん)もなき枯野ケ原(かれのがはら)石道(いしみち)真裸足(まつぱだし)のまま、108(あし)(やぶ)()路上(ろじやう)(そめ)つつ無我夢中(むがむちう)になつて()かれ()く。
109 何時(いつ)とはなしにテームスは薄暗(うすぐら)険峻(けんしゆん)(やま)(ふもと)()いてゐた。110以前(いぜん)悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)(かげ)(けぶり)(ごと)()え、111四方(よも)(やま)()(かな)しげな(さけ)(ごゑ)が、112間歇的(かんけつてき)(かぜ)のまにまに(きこ)えてゐる。113()(やう)(かぜ)()いて(からだ)(こが)すかと(おも)へば、114()てつく(やう)寒風(かんぷう)(たちま)()(かへ)し、115氷柱(つらら)(あめ)()(あめ)(かは)(がは)頭上(づじやう)集中(しふちう)(くだ)()る。116(やうや)くにして()(ひら)四辺(しへん)(なが)むれば(とら)117(おほかみ)118(くま)119獅子(しし)(など)食物(しよくもつ)(うゑ)たる(ごと)様子(やうす)にて幾百(いくひやく)とも(かぎ)りなく一人(ひとり)のテームスの(にく)()まむと()めつけて()(おそ)ろしさ。120(たちま)ち『キヤツ』と(をんな)(さけ)(ごゑ)121よくよく()れば(つま)のベリシナが獅子(しし)122(とら)(むれ)両方(りやうはう)より(あし)(くは)へられ(わが)()(まへ)にて青竹割(あをだけわ)れにされ、123群獣(ぐんじう)(たちま)()(たか)つてバリバリと(おと)()て、124(のこ)らずいがみ()(なが)()つて(しま)つた。
125 テームスは進退(しんたい)(きは)まつて(うん)(てん)(まか)せ、126観念(くわんねん)(まなこ)()ぢて()る。127(あつ)さと(さむ)さに(ほとん)人心地(ひとごごち)もなかつた。128(たちま)雷鳴(らいめい)(とどろ)電光(でんくわう)(ひらめ)(わた)り、129テームスの身体(からだ)空中(くうちう)()()げられ、130フワリフワリと幾百里(いくひやくり)とも()れぬ山河(さんか)(した)(なが)め、131火焔(くわえん)濛々(もうもう)立上(たちのぼ)(やま)(いただき)落下(らくか)した。132黒煙(こくえん)異様(いやう)臭気(しうき)(はな)つて(またた)(うち)(かれ)身体(しんたい)(つつ)んで(しま)つた。133何処(どこ)ともなく、
134()(ひら)け!』
135大声(おほごゑ)(よば)はるものがある。136怖々(こはごは)(なが)()(ひら)けば(さき)空中(くうちう)より(くだ)(きた)りし妖怪(えうくわい)羅刹(らせつ)(かれ)(まへ)二人(ふたり)(をんな)両足(りやうあし)をグツと左右(さいう)()(にぎ)り、137(あたま)逆様(さかしま)にして崎嶇(きく)たる(いは)(うへ)にコツリコツリと(つゑ)をつく(やう)臼搗(うすづ)いて()る。138二人(ふたり)(むすめ)はキヤーキヤーと悲鳴(ひめい)をあげ(くる)しげに()(さけ)ぶ。139テームスは一言(いちごん)(はつ)せむとすれども、140(いき)(ふさ)がり(した)つりあがり、141ウの(こゑ)()なかつた。142羅刹(らせつ)巨眼(きよがん)(ひら)き、143(こゑ)(あら)らげて()ふ、
144羅刹(らせつ)(なんぢ)145宿世(すぐせ)罪業(ざいごふ)によつて、146現在(げんざい)愛児(あいじ)()をすすり、147(にく)()(ほね)(こな)にして(しよく)すべし。148(しか)らざれば(なんぢ)(また)かくの(ごと)くなすべし』
149()ふより(はや)く、150二人(ふたり)(をんな)頭部(とうぶ)(ちから)(かぎ)りに(いは)()ちつけメヂヤ メヂヤに(くだ)いて(しま)つた。
151 テームスは()むを()(うな)づいた。152羅刹(らせつ)(ひめ)頭肉(とうにく)断片(だんぺん)竹篦(たけべら)(さき)(すく)うてはテームスの(くち)()()む。153テームスは()むを()ず、154(これ)()はざるを()なかつた。155(くち)(しび)(えぐ)(にが)毒薬(どくやく)()(ごと)(くる)しさを(かん)じた。156羅刹(らせつ)大口(おほぐち)()けて高笑(たかわら)ひ、
157羅刹(らせつ)『アハハハハ、158その(はう)(いま)(むすめ)(にく)一口(ひとくち)()つて(あぢ)()つたであらう。159(なんぢ)祖先(そせん)玉置村(たまきむら)里庄(りしやう)として人民(じんみん)(くる)しめ数多(あまた)貧者(ひんじや)膏血(かうけつ)(しぼ)り、160(なんぢ)(だい)になつては益々(ますます)(はなは)だしく、161(その)(とみ)巨万(きよまん)(かさ)玉木(たまき)(むら)巍然(ぎぜん)たる邸宅(ていたく)(かま)へ、162天地(てんち)(おそ)れず、163驕慢(けうまん)(かぎ)りを(つく)不届者(ふとどきもの)164(われ)人民(じんみん)怨霊(をんりやう)団結(だんけつ)してここに羅刹(らせつ)として(あら)はれしものぞ。165いざ(これ)よりは(なんぢ)精霊(せいれい)肉体(にくたい)ともに(いし)(もつ)(たた)きつけ、166幾百(いくひやく)肉団(にくだん)となし、167(なんぢ)(ため)生前(せいぜん)(くる)しめられたる精霊(せいれい)分与(ぶんよ)すべし。168さア(はや)(この)岩上(がんじやう)(よこた)はれ』
169(ののし)(なが)ら、170その()()(たふ)した。
171 かかる(ところ)(てん)一方(いつぱう)より霊光(れいくわう)(かがや)(きた)り、172テームスが(まへ)落下(らくか)した。173羅刹(らせつ)(この)火団(くわだん)(おどろ)いて何処(いづこ)ともなく姿(すがた)(かく)した。174火団(くわだん)(たちま)一柱(いつこ)神人(しんじん)(くわ)した。175よくよく()れば鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)円満具足(ゑんまんぐそく)なる霊衣(れいい)()(ちやく)し、176莞爾(くわんじ)として()つてゐる。177テームスは打驚(うちおどろ)(はじ)めて(くち)(ひら)き、
178テームス『ああ貴方(あなた)鬼春別(おにはるわけ)(さま)(ござ)いましたか。179(まこと)失礼(しつれい)(こと)ばかり(こころ)(うち)(おも)ひました。180それ(ゆゑ)祖先(そせん)(つみ)自分(じぶん)とで斯様(かやう)(ところ)(おと)されたので(ござ)いませう。181何卒(なにとぞ)(わたし)(つみ)をお(ゆる)(くだ)さいませ』
182()(あは)(なみだ)(なが)して(たの)()る。
183鬼春(おにはる)拙者(せつしや)御存(ごぞん)じの(とほ)りバラモン(けう)のゼネラル、184鬼春別(おにはるわけ)(ござ)る。185三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)霊光(れいくわう)(つつ)まれ自我(じが)自愛(じあい)(ゆめ)()翻然(ほんぜん)として(かみ)(みち)(さと)り、186()(なが)地獄道(ぢごくだう)陥落(かんらく)せし()(すく)はれ、187(わが)精霊(せいれい)神界(しんかい)(めい)によつてエンゼルとなり、188(いま)ここに治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)(めい)によつて(なんぢ)(すく)ふべく(くだ)(きた)れり。189(なんぢ)(いま)より(われ)(なら)つて前非(ぜんぴ)()い、190(かみ)御前(みまへ)(おか)(きた)りし罪悪(ざいあく)陳謝(ちんしや)せよ。191(しか)らば(なんぢ)(むすめ)(つま)(かみ)(めぐ)みに(すく)はるべし。192夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ』
193()(はな)(むらさき)(くも)()つて嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)(ひびき)(とも)中天(ちうてん)(たか)(かへ)()く。194(あと)見送(みおく)つてテームスは()()れぬ高山(かうざん)(うへ)(ひざまづ)(その)勇姿(ゆうし)のかくるる(まで)涕泣(ていきふ)(なが)合掌(がつしやう)悔悟(くわいご)(ねん)()られつつあつた。
195 (にはか)(きこ)ゆる阿鼻叫喚(あびけうくわん)(こゑ)196テームスは何心(なにごころ)なく谷底(たにそこ)()れば焔々(えんえん)たる猛火(まうくわ)(つつ)まれ、197(いや)らしき妖怪(えうくわい)黒蛇(くろへび)(かず)(かぎ)りなく猛火(まうくわ)()かれ、198(もだ)(くる)しみ()(さけ)(こゑ)であつた。199(この)(やま)(ふもと)空地(あきち)もなく()(つつ)まれ、200妖怪(えうくわい)毒蛇(どくじや)()(ほろ)ぼされつつあつた。201(つばさ)なき()空中(くうちう)(かけ)(この)()(のが)るる(わけ)にも()かず、202(しき)りに天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)(かみ)(すく)ひを(いの)りゐる。
203 かかる(ところ)(くも)()つて(いきほひ)よく(くだ)()一人(ひとり)神人(しんじん)がある。204よくよく()れば(わが)()逗留(とうりう)したる万公(まんこう)である。205万公(まんこう)莞爾(くわんじ)として、206その(まへ)立現(たちあら)はれ(かる)目礼(もくれい)(なが)ら、
207万公(まんこう)舅殿(しうとどの)208(この)谷底(たにそこ)御覧(ごらん)なさいませ。209沢山(たくさん)妖怪(えうくわい)毒蛇(どくじや)()(ほろ)ぼされてゐるでせう。210これは(みな)テームス()祖先(そせん)(つく)つた罪業(ざいごふ)化生(けしやう)した悪魔(あくま)(ござ)いますよ。211(また)(この)万公(まんこう)貴方(あなた)祖先代々(そせんだいだい)(くる)しめられた(あは)れな人民(じんみん)(みたま)凝結(ぎようけつ)して万公(まんこう)となり、212(この)()(うま)()たものです。213(わたし)はそれ(ゆゑ)どうしてもテームス()(あと)()いで(この)テームス()財産(ざいさん)人民(じんみん)平等(べうどう)分配(ぶんぱい)(つみ)(ほろ)ぼさねば、214舅殿(しうとどの)(はじ)祖先(そせん)(つみ)(ゆる)されますまい。215()がつきましたかな。216万民(ばんみん)精霊(せいれい)(あつ)まつて万公(まんこう)()()現界(げんかい)(うま)れたのですよ』
217テームス『いや、218どうも有難(ありがた)(ござ)ります。219因果応報(いんぐわおうはう)道理(だうり)によつて先祖代々(せんぞだいだい)地獄(ぢごく)(くるし)みを()けるのも()むを()ませぬが、220三五教(あななひけう)(ほう)(たま)貴方(あなた)(わが)()養子(やうし)となり、221祖先(そせん)(つみ)(ゆる)して(くだ)さるのなら、222(この)(くらゐ)有難(ありがた)(こと)(ござ)いませぬ。223(しか)(なが)ら、224スミエル、225スガールの両人(りやうにん)悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)(ため)肉体(にくたい)粉砕(ふんさい)され、226もはや現界(げんかい)には()りませぬ。227どうして(いへ)()(こと)出来(でき)ませうか。228(むすめ)がなくても養子(やうし)になつて(くだ)さるでせうか』
229万公(まんこう)御心配(ごしんぱい)なさいますな。230治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)がお(まも)りあればスミエル、231スガール両人(りやうにん)(きは)めて安全(あんぜん)肉体(にくたい)(たも)つてゐられます。232さアこんな(ところ)何時(いつ)(まで)()つても(たま)りませぬ。233(わたし)一緒(いつしよ)(かへ)りませう』
234テームス『()れて(かへ)つて(くだ)さるか。235あ、236それは有難(ありがた)い。237(しか)(つみ)(おほ)吾々(われわれ)238どうして(この)火焔(くわえん)(やま)(くだ)(こと)出来(でき)ませう』
239万公(まんこう)『いや(よろ)しい。240貴方(あなた)大変(たいへん)(あし)(つか)れて()りまする。241(わたし)(せな)()うて(かへ)りませう。242(わづ)三千里(さんぜんり)ばかり(はし)れば玉置村(たまきむら)(たく)(かへ)れますから』
243テームス『(なに)244三千里(さんぜんり)245大変(たいへん)(とほ)(ところ)(まで)何時(いつ)()()たのだらうな』
246万公(まんこう)精霊(せいれい)世界(せかい)では三千里(さんぜんり)五千里(ごせんり)現界(げんかい)一丁(いつちやう)(あゆ)する(ひま)もかかりませぬ。247さア(はや)(せな)をお(かか)(くだ)さい』
248()をつき()せばテームスは小児(せうに)(やう)()になり、
249テームス『ああ()いては()(したが)へだ。250そんなら婿殿(むこどの)251(よろ)しく(たの)みます』
252万公(まんこう)(おや)()(れい)なんか()つたり、253(たの)必要(ひつえう)はありませぬ』
254()(なが)甲斐々々(かひがひ)しく(せな)()ひ、255猛々(まうまう)たる火焔(くわえん)(なか)をドンドンと火傷(やけど)もせず、256()()(ごと)くに(くだ)()く。
257 万公(まんこう)()はれて(やま)(くだ)れば、258際限(さいげん)もなき青草(あをぐさ)(しげ)原野(げんや)があつた。259原野(げんや)真只中(まつただなか)一瀉千里(いつしやせんり)(いきほひ)でトントントンと()()せば、260水晶(すいしやう)(みづ)(たた)へた(ぬま)()きあたつた。261流石(さすが)万公(まんこう)(これ)には辟易(へきえき)して(いき)(やす)め、262思案(しあん)()らさむとテームスを青芝(あをしば)(うへ)にソツと(おろ)双手(もろて)(あは)せて、
263万公(まんこう)三千世界(さんぜんせかい)(うめ)(はな)
264一度(いちど)(ひら)常磐木(ときはぎ)
265(まつ)神世(かみよ)となりにけり
266顕幽神(けんいうしん)三界(さんかい)
267(すく)はせ(たま)三五(あななひ)
268(すく)ひの(かみ)()れませる
269国治立(くにはるたち)大御神(おほみかみ)
270豊国姫(とよくにひめ)大御神(おほみかみ)
271神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)
272(みづ)御魂(みたま)(つか)へたる
273治国別(はるくにわけ)宣伝使(せんでんし)
274松彦(まつひこ)竜彦神司(たつひこかむつかさ)
275万公別(まんこうわけ)真心(まごころ)
276(あは)れみ(たま)(いま)ここに
277(あら)はれまして(この)(ぬま)
278首尾(しゆび)()(わた)らせ(たま)へかし
279朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
280(つき)()つとも()くるとも
281仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
282(かみ)(めぐ)みは常久(とこしへ)
283(かは)らせ(たま)(こと)あらじ
284(まも)らせ(たま)惟神(かむながら)
285玉置(たまき)(さと)のテームスが
286世継(よつぎ)となりし万公別(まんこうわけ)
287真心(まごころ)こめて神々(かみがみ)
288御前(みまへ)(つつし)()(まつ)
289(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
290(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
291(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
292直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
293()(あやま)ちを()(なほ)
294(めぐみ)(ふか)神勅(みことのり)
295(あふ)(うやま)今日(けふ)(そら)
296(すく)はせ(たま)惟神(かむながら)
297(たふと)(かみ)御前(おんまへ)
298親子(おやこ)二人(ふたり)(つつし)みて
299(すく)ひを(ねが)(たてまつ)
300ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
301御霊(みたま)恩頼(ふゆ)(たま)へかし』
302 かく(うた)(をは)るや際限(さいげん)もなき(ぬま)(たちま)(へん)じて青畳(あをだたみ)となつた。303テームスは()(ひら)きよくよく()れば、304鬼春別(おにはるわけ)読経(どきやう)せし隣室(りんしつ)()(まわ)して(たふ)れてゐたのである。305治国別(はるくにわけ)306鬼春別(おにはるわけ)307松彦(まつひこ)308竜彦(たつひこ)(その)()人々(ひとびと)枕頭(ちんとう)(あつ)まつて懇切(こんせつ)介抱(かいほう)をし、309(あま)数歌(かずうた)(しき)りに奏上(そうじやう)してゐた。310ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
311大正一二・三・四 旧一・一七 於竜宮館 北村隆光録)