霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 清滝(きよたき)〔一四二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第4篇 法念舞詩 よみ:ほうねんぶし
章:第19章 清滝 よみ:きよたき 通し章番号:1427
口述日:1923(大正12)年03月05日(旧01月18日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:248頁 八幡書店版:第10輯 123頁 修補版: 校定版:261頁 普及版:105頁 初版: ページ備考:
001火熱(くわねつ)(はげ)しき太陽(たいやう)
002天津御空(あまつみそら)晃々(くわうくわう)
003照国岳(てるくにだけ)谷間(たにあひ)
004(たか)くかかれる大瀑布(だいばくふ)
005(きよ)めの(たき)片辺(かたほとり)
006(ちひ)さき(いほり)(むす)びつつ
007二人(ふたり)(をとこ)朝夕(あさゆふ)
008(はだか)となりて何事(なにごと)
009(こゑ)(かぎ)りに(いの)()る。
010 (この)両人(りやうにん)はベルツ、011シエールの主従(しゆじゆう)である。012左守(さもり)(かみ)(ならび)にタルマンの(ため)右守(うもり)(しよく)剥奪(はくだつ)され、013百日(ひやくにち)閉門(へいもん)申付(まをしつ)けられ、014(うら)骨髄(こつずい)(てつ)し、015妖幻坊(えうげんばう)魔法(まはふ)(なら)つて、016ビクトリア(じやう)転覆(てんぷく)し、017(ふたた)勢力(せいりよく)()(かへ)し、018自分(じぶん)刹帝利(せつていり)となり、019シエールを左守司(さもりのかみ)(にん)じ、020一国(いつこく)主権(しゆけん)(にぎ)らむと、021一心不乱(いつしんふらん)水垢離(みづごり)をとつてゐたのである。022七日目(なぬかめ)(よる)023二人(ふたり)一生懸命(いつしやうけんめい)水垢離(みづごり)をとつてゐると、024山岳(さんがく)(くづ)るる(ばか)りの大音響(だいおんきやう)(とも)に、025白馬(はくば)(またが)り、026宙空(ちうくう)より(ひづめ)(おと)戞々(かつかつ)(くだ)つて()たのは緋衣(ひごろも)()坊主姿(ばうずすがた)なりける。027これは妖幻坊(えうげんばう)兄弟分(きやうだいぶん)(きこ)えたる妖沢坊(えうたくばう)といふ魔神(まがみ)なり。028妖沢坊(えうたくばう)二人(ふたり)(むか)ひ、
029妖沢(えうたく)(なんぢ)はビクの(くに)右守司(うもりのかみ)(つと)めたるベルツ(ならび)家令(かれい)のシエールであらう。030(なんぢ)(ねがひ)(すみやか)聞届(ききとど)()させむ。031()いては百日(ひやくにち)百夜(ひやくや)水行(すいぎやう)をなし、032食物(しよくもつ)(この)谷川(たにがは)棲息(せいそく)する(かに)033蠑螈(いもり)034(かはづ)餌食(ゑじき)となし、035(その)()(もの)一切(いつさい)(くら)()からず。036()(あやま)つて()(しよく)()(とき)は、037(なんぢ)(ぎやう)(まつた)水泡(すゐほう)()すべし。038(また)百日(ひやくにち)修業中(しうぎやうちう)039(ひと)発見(はつけん)されたる(とき)折角(せつかく)修業(しうぎやう)無効(むかう)となるべし、040(かなら)用心(ようじん)(おこた)(なか)れ。041(この)荒行(あらぎやう)()めば、042(なんぢ)空中飛行(くうちうひかう)(じゆつ)(さづ)け、043(かつ)千変万化(せんぺんばんくわ)化身(けしん)(はふ)(をし)ゆべし、044ゆめゆめ(うたが)(なか)れ』
045(おごそ)かに(つた)へ、046山岳(さんがく)(ゆる)がし(なが)ら、047(ふたた)(こま)(かしら)立直(たてなほ)し、048空中(くうちう)(たか)姿(すがた)()した。049二人(ふたり)有難涙(ありがたなみだ)にくれて妖沢坊(えうたくばう)後姿(うしろすがた)合掌(がつしやう)し、050呪文(じゆもん)(とな)へてゐた。051三十日(さんじふにち)(ばか)修業(しうぎやう)をした(とき)052ベルツは(かはづ)053蠑螈(いもり)(どく)(あた)つたのか、054(にはか)腹痛(ふくつう)(おこ)し、055手足(てあし)藻掻(もが)き、056(あわ)()()しける。057シエールは一生懸命(いつしやうけんめい)に、
058シエール『ウラル彦命(ひこのみこと)妖沢坊様(えうたくばうさま)059何卒(どうぞ)主人(しゆじん)病気(びやうき)をお(なほ)(くだ)さいませ』
060滝壺(たきつぼ)()たれて、061(また)もや一心不乱(いつしんふらん)荒行(あらぎやう)にかかつてゐる。062ベルツは虚空(こくう)(つか)んで(くるし)(もだ)える。063(この)(てい)()てシエールは(いのち)(かぎ)りに滝壺(たきつぼ)()()み、064祈念(きねん)()らしてゐた。065そこへ十一二才(じふいちにさい)(うる)はしき(をんな)066()(しげ)みを()けてスタスタと(のぼ)(きた)り、067(たちま)赤裸(まつぱだか)となつて滝壺(たきつぼ)飛込(とびこ)んだ。068シエールはエンゼルが自分(じぶん)(いの)りを()いて、069(たす)けに()()れたものと(おも)ひ、070一生懸命(いつしやうけんめい)乙女(をとめ)姿(すがた)伏拝(ふしをが)み、071感謝(かんしや)(なみだ)にくれてゐる。072乙女(をとめ)二人(ふたり)(をとこ)()もかけず、073滝壺(たきつぼ)飛込(とびこ)一心不乱(いつしんふらん)に、
074乙女(をとめ)大国常立(おほくにとこたち)大神(おほかみ)075何卒々々(なにとぞなにとぞ)076(ちち)病気(びやうき)(すく)はせ(たま)へ、077仮令(たとへ)(わが)()(いのち)()られませう(とも)078(すこ)しも(くる)しうは(ぞん)じませぬ。079(いま)(ちち)()くなつては、080(また)もや右守司(うもりのかみ)ベルツ主従(しゆじゆう)が、081如何(いか)なる(こと)(いた)すか()れませぬ。082ビクの(くに)一大事(いちだいじ)(ござ)います』
083神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、084(いの)(はじ)めた。085されど瀑布(ばくふ)轟々(がうがう)たる水音(みなおと)(さへぎ)られて、086乙女(をとめ)何事(なにごと)(ねが)()るやは、087両人(りやうにん)(みみ)()らなかつた。088シエールはベルツの(そば)(すす)()り、089(かしら)()(なが)ら、
090シエール『モシ旦那様(だんなさま)091御安心(ごあんしん)なされませ。092(いま)(わたくし)妖沢坊(えうたくばう)をお(ねが)(いた)しましたら、093アレあの(とほ)り、094天女(てんによ)天降(あまくだ)られて、095貴方(あなた)病気(びやうき)平癒(へいゆ)(ため)滝壺(たきつぼ)にかかつて祈念(きねん)をして(くだ)さいます。096キツと御病気(ごびやうき)(なほ)瑞祥(ずゐしやう)(ござ)いませう。097(かなら)(かなら)御心配(ごしんぱい)(くだ)さいますな。098南無(なむ)妖沢坊大明神(えうたくばうだいみやうじん)(まも)(たま)(さきは)(たま)へ』
099涙交(なみだまじ)りに(ねが)ひゐる。100ベルツは不思議(ふしぎ)にも(この)言葉(ことば)()くより、101神経作用(しんけいさよう)()らね(ども)102(にはか)気分(きぶん)がよくなり、103(かしら)をあげて滝壺(たきつぼ)()れば、104(はな)(あざむ)(うる)はしき乙女(をとめ)滝壺(たきつぼ)()たれて、105(しろ)(からだ)(さら)(なが)ら、106一心不乱(いつしんふらん)(ねん)じて()る。107ベルツは(わが)()苦痛(くつう)(わす)立上(たちあが)り、
108ベルツ『掛巻(かけまく)(かしこ)天津御国(あまつみくに)より(くだ)らせ(たま)うた天津乙女様(あまつをとめさま)109何卒々々(なにとぞなにとぞ)拙者(せつしや)願望(ぐわんまう)御聞届(おききとど)(くだ)さいますやうに、110(これ)()いては(からだ)資本(しほん)(ござ)いますから、111(この)病気(びやうき)一時(いちじ)(はや)全快(ぜんくわい)(いた)し、112百日(ひやくにち)百夜(ひやくや)修業(しうぎやう)無事(ぶじ)(をは)ります(やう)113御願(おねが)(まを)します』
114両手(りやうて)(あは)せて(たの)()る。115乙女(をとめ)一生懸命(いつしやうけんめい)に、
116乙女(をとめ)(ちち)(やまひ)(なほ)させ(たま)へ』
117祈願(きぐわん)するのみであつた。118(やや)あつて乙女(をとめ)滝壺(たきつぼ)(あが)り、119身体(からだ)(みづ)()()り、120キチンと衣服(いふく)着替(きか)へた。121四辺(あたり)()れば二人(ふたり)(をとこ)(まはし)(ひと)つになつて、122一生懸命(いつしやうけんめい)滝壺(たきつぼ)(をが)んでゐる。123乙女(をとめ)はスタスタと(かへ)()かうとするを、124二人(ふたり)(あわ)てて行手(ゆくて)(ひざま)づき、
125ベルツ『天津乙女様(あまつをとめさま)126如何(いかが)(ござ)いませうか、127妖沢坊様(えうたくばうさま)命令(めいれい)()つて、128百日(ひやくにち)百夜(ひやくや)荒行(あらぎやう)(いた)し、129大望(たいまう)(たつ)せむと(ねが)つて()りますが、130神様(かみさま)のお(かげ)成就(じやうじゆ)するものとは(ぞん)じますが、131かやうに病気(びやうき)になつては、132如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ませぬ。133何卒(なにとぞ)御指図(おさしづ)をお(ねが)(いた)します』
134乙女(をとめ)(その)(はう)願望(ぐわんまう)とは如何(いか)なる(こと)か、135(くは)しく陳述(ちんじゆつ)せよ』
136ベルツ『ハイ、137(わたし)はビクの(くに)右守司(うもりのかみ)ベルツと(まを)(もの)138(これ)なる(をとこ)家令(かれい)のシエールと(まを)(もの)(ござ)います。139ビクトリア城内(じやうない)には悪人(あくにん)はびこり、140左守司(さもりのかみ)一味(いちみ)(もの)141三五教(あななひけう)悪宣伝使(あくせんでんし)城内(じやうない)(ひき)ずり()み、142拙者(せつしや)軍職(ぐんしよく)()き、143専横(せんわう)(かぎ)りを(つく)()りますれば、144国家(こくか)害賊(がいぞく)(のぞ)(ため)に、145両人(りやうにん)此処(ここ)にて荒行(あらげう)(いた)して()(ところ)(ござ)います』
146乙女(をとめ)(なんぢ)(てき)()なすは左守(さもり)一人(ひとり)であるか』
147ベルツ『左守(さもり)(まを)すに(およ)ばず、148刹帝利(せつていり)老耄(おいぼれ)149(その)(ほか)アール、150ハルナ(など)悪人(あくにん)征伐(せいばつ)(いた)さねば到底(たうてい)天下(てんか)無事(ぶじ)(をさ)まりませぬ』
151乙女(をとめ)『ホホホホホ、152(その)(はう)(うはさ)()いた悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)のベルツ主従(しゆじゆう)であつたか。153左様(さやう)悪企(わるだく)みを(いた)(とも)154到底(たうてい)成功(せいこう)(のぞ)みはあるまい。155どうぢや(いま)(うち)()(あらた)めて真人間(まにんげん)になる()はないか』
156ベルツ『ヘー、157それは(なん)(ござ)います、158(けつ)して私欲(しよく)(ため)(いた)すのでは(ござ)いませぬ。159天下(てんか)公共(こうきよう)(ため)に、160(たみ)(くる)しみを(たす)くる慈愛心(じあいしん)より、161()犠牲(ぎせい)にして、162かかる荒行(あらぎやう)(いた)して()るので(ござ)います』
163シエール『天津乙女様(あまつをとめさま)164何卒々々(なにとぞなにとぞ)165吾々(われわれ)(みたま)をよくよくお(しら)(くだ)さいまして、166正邪(せいじや)御裁判(ごさいばん)(ねが)ひます』
167悪人(あくにん)自分(じぶん)のやつた(こと)(すこ)しも(あく)(おも)うて()ない。168天下(てんか)国家(こくか)(ため)最善(さいぜん)努力(どりよく)(つく)してゐると(かんが)へてゐるらしい。
169乙女(をとめ)(わらは)(なんぢ)()(ごと)天津乙女(あまつをとめ)ではない。170ビクの(くに)刹帝利(せつていり)ビクトリア(わう)(むすめ)ダイヤ(ひめ)であるぞよ。171左様(さやう)悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)(たく)みを(いた)すよりも惟神(かむながら)本心(ほんしん)立返(たちかへ)り、172忠良(ちうりやう)なる臣民(しんみん)として、173国家(こくか)(つく)したら()うだ』
174ベルツ『ナニ、175(その)(はう)(てき)付狙(つけねら)ふビクトリア(わう)(むすめ)であつたか。176エー、177天津乙女(あまつをとめ)見誤(みあやま)り、178(たふと)(あたま)をメツタ矢鱈(やたら)()げたのが残念(ざんねん)だ。179妖沢坊(えうたくばう)のお(しめ)しには、180(この)行中(ぎやうちう)人間(にんげん)見付(みつ)けられては、181折角(せつかく)荒行(あらぎやう)水泡(すいはう)()するとの(こと)であつた。182エー、183モウ(やぶ)れかぶれだ。184(わが)願望(ぐわんまう)(とど)かぬとあれば、185(かたき)片割(かたわ)れ、186嬲殺(なぶりごろし)(いた)して(うら)みを()らしてくれむ。187オイ、188シエール、189荒縄(あらなは)(もつ)(この)(をんな)(しば)()げよ』
190(きび)しく(めい)ずれば、191シエールは、
192『ハイ(かしこ)まりました』
193棕櫚縄(しゆろなは)()つて、194後手(うしろで)(くく)り、195(かし)(えだ)(ひつ)かけて、196宙空(ちうくう)()()げる。197乙女(をとめ)(うで)もむしれむ(ばか)りの(いた)さを、198()をくひしばり()(ふさ)いで一言(ひとこと)(はつ)せず、199(こら)えて()る。
200 ベルツは(これ)(なが)めて心地(ここち)よげに打笑(うちわら)ひ、
201ベルツ『アハハハハ、202()ちつぺ()が、203こんな(ところ)俺等(おれら)行方(ゆくへ)嗅付(かぎつ)けてやつて()やがつたのだな、204此奴(こいつ)大変(たいへん)だ。205此奴(こいつ)()なせば、206キツと(あと)から左守(さもり)のハルナ()207軍隊(ぐんたい)(ひき)ゐて俺達(おれたち)召捕(めしとり)()算段(さんだん)であらう。208王女(わうぢよ)()として、209かやうな(ところ)()()るとは大胆(だいたん)至極(しごく)210(これ)には(なに)仔細(しさい)があるであらう。211一度(いちど)()(おろ)し、212拷問(がうもん)にかけて()はしてみよう、213サア(おろ)せ』
214厳命(げんめい)すれば、215シエールは(また)もや(つな)(ゆる)めて地上(ちじやう)(おろ)した。216ダイヤは(すで)()()かし()をくひしばつてゐる。
217シエール『ヤア、218チヨロ(くさ)い、219モウうたひあがつたとみえる。220モシ旦那様(だんなさま)221此奴(こいつ)駄目(だめ)ですよ、222(もの)()ひませぬがなー』
223ベルツ『ナアニ、224(いま)()()かした(ところ)だから、225滝壺(たきつぼ)一遍(いつぺん)つつ()め。226(へび)(たた)(ころ)した(やつ)でさへも、227(みづ)()ければすぐに蘇生(いきかへ)るものだ。228サ、229(はや)()()んでみよ』
230 『ハイ』と(こた)へてシエールはダイヤ(ひめ)身体(からだ)引抱(ひつかか)へ、231(つな)(ほど)いて、232滝壺(たきつぼ)へザンブと(ばか)投込(なげこ)んだ。233ダイヤはハツと()がつき、234滝壺(たきつぼ)()(あが)り、235其処辺(そこら)をキヨロキヨロ見廻(みまは)し、236赤裸(まつぱだか)のまま()げむとするを、237シエールはグツと細腕(ほそうで)(にぎ)り、238以前(いぜん)(かし)根本(ねもと)引摺(ひきず)(きた)り、
239シエール『コリヤ、240ダイヤ(ひめ)241(をさな)(をんな)分際(ぶんざい)として、242斯様(かやう)(ところ)(ただ)一人(ひとり)修業(しうぎやう)()るとは大胆(だいたん)至極(しごく)243(これ)には(なに)仔細(しさい)があるであらう。244吾々(われわれ)両人(りやうにん)照国山(てるくにやま)に、245王家(わうけ)転覆(てんぷく)祈願(きぐわん)()らし()(こと)()ぎつけ、246やつてうせたのであらう。247サ、248逐一(ちくいち)白状(はくじやう)(いた)せ。249(つつ)(かく)すに(おい)ては、250(その)(はう)水責(みづぜめ)251火責(ひぜめ)252剣責(つるぎぜめ)(いた)すが、253それでも()いか』
254ダイヤ『無礼千万(ぶれいせんばん)な、255主人(しゆじん)(むすめ)(とら)へて左様(さやう)脅迫(けふはく)(いた)すといふ(こと)があるか。256チツと天地(てんち)道理(だうり)(かんが)へて()よ』
257ベルツ『エー、258(やかま)しい、259天地(てんち)道理(だうり)(かんが)へるやうな(もの)が、260ビクトリア(じやう)転覆(てんぷく)修業(しうぎやう)(いた)すものかい。261サ、262(はや)事実(じじつ)白状(はくじやう)(いた)せ。263(なに)(ねが)ひに()たのだ。264(その)(ねがひ)(すぢ)から第一(だいいち)()いてやらう』
265ダイヤ『(この)照国山(てるくにやま)(わらは)兄妹(きやうだい)六人(ろくにん)(なが)らく住居(ぢうきよ)してゐた馴染(なじみ)のある(ところ)だ。266(ちち)御病気(ごびやうき)平癒(へいゆ)させむが(ため)に、267(きよ)めの(たき)水垢離(みづごり)をとりに()たのだよ。268臣下(しんか)身分(みぶん)として主人(しゆじん)のする(こと)をゴテゴテいふ権利(けんり)があるか、269(ひか)えて()れ。270(とし)(わか)(とも)271ビクの(くに)刹帝利(せつていり)(むすめ)だ。272エエ(けが)らはしい、273一時(いつとき)(はや)くどつかへ姿(すがた)(かく)せ。274執拗(しつこう)(かへ)らぬに(おい)ては線香(せんかう)()てて(くす)べてやらうか』
275シエール『丸切(まるき)青大将(あをだいしやう)座敷(ざしき)這上(はひあが)つた(とき)のやうに()つてゐやがる。276こんな(あま)つちよに脅迫(けうはく)されて、277(この)荒男(あらをとこ)(かほ)()つものか、278地異(ちい)天変(てんぺん)もここ(まで)()けば極端(きよくたん)だ。279地震(ぢしん)ゴロゴロ(かみなり)ビリビリとやつて()たやうだ。280(しか)(なが)らどう(かんが)へても、281こんな(うつく)しい(をんな)をムザムザ(ころ)すのは勿体(もつたい)ない(やう)だ。282オイ、283ダイヤさま、284(もの)(ひと)相談(さうだん)だが、285何程(なにほど)(まへ)王女(わうぢよ)だといつても、286(くらゐ)(たか)いのは実地(じつち)(とき)()()ふものでない。287荒男(あらをとこ)二人(ふたり)格闘(かくとう)すれば、288到底(たうてい)(まへ)(ころ)されねばなるまい。289(へび)(かはづ)のやうなものだから、290(ここ)(ひと)思案(しあん)をし(なほ)して、291旦那様(だんなさま)奥方(おくがた)となり、292ビクの(くに)女王(ぢよわう)となつて(くら)(かんが)へはないか』
293ダイヤ『悪逆無道(あくぎやくぶだう)謀叛人(むほんにん)()294エエ(けが)らはしい、295(さが)りおらう』
296ベルツ『(なん)()つても(うつく)しい(もの)だ。297そしてこれ(だけ)胆力(たんりよく)があれば、298(この)(をんな)女房(にようばう)にすればどんな(こと)でも出来(でき)るだらう。299イヤ、300ダイヤ(ひめ)(さま)301(ここ)(ひと)つお(かんが)(なほ)しを(ねが)ひます。302左守(さもり)といふ(やつ)表面(へうめん)忠義(ちうぎ)らしく()せて()りますが、303(あれ)こそ心中(しんちう)(ふか)野心(やしん)包蔵(はうざう)する曲者(くせもの)(ござ)いますぞ。304刹帝利様(せつていりさま)左守(さもり)(あやま)られ、305ビクの国家(こくか)(ぼう)()らうとして(ござ)る。306危険(きけん)至極(しごく)今日(こんにち)場合(ばあひ)307(しん)忠臣(ちうしん)(あら)はれて(ささ)へなくては、308万代不易(ばんだいふえき)王家(わうけ)(つづ)きますまい……大忠(たいちう)不忠(ふちう)()たり、309大孝(たいかう)不孝(ふかう)()たり、310大信(たいしん)(いつは)りに()たり、311大善(だいぜん)大悪(だいあく)()たり……といふ(こと)がありませう。312表面(へうめん)大悪人(だいあくにん)見做(みな)されたる(この)ベルツ(ぐらゐ)313王家(わうけ)国家(こくか)(うれ)ひて()(もの)(ござ)いませぬぞ。314チツと冷静(れいせい)(むね)()()てて、315王家(わうけ)国家(こくか)(ため)にお(かんが)へを(ねが)()いものです。316よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。317貴女(あなた)父上(ちちうへ)左右(さいう)奸臣(かんしん)(あやま)られ、318大切(たいせつ)五人(ごにん)王子(わうじ)(まで)悉皆(しつかい)(ころ)さうとなさつたぢやありませぬか。319何処(どこ)(くに)(おや)()(あい)せない(もの)がありませう。320(なに)(たから)だと()つても、321(わが)()(ぐらゐ)(たから)はない。322(その)(たから)(ころ)さうとなさるのだから、323(けつ)して(これ)はお父上(ちちうへ)(こころ)から()たのでは(ござ)いませぬ、324(みな)左守(さもり)やタルマンの()知恵(ぢゑ)(ござ)りまするぞ。325かやうな悪人(あくにん)重用(ぢうよう)するは(じつ)危険千万(きけんせんばん)(ござ)りまする。326貴方(あなた)はお(わか)いので、327城内(じやうない)様子(やうす)御存(ごぞん)(ござ)いますまいが、328それはそれはタルマン、329キユービツトの両人(りやうにん)天地(てんち)()れざる大悪人(だいあくにん)(ござ)いますよ。330何卒(どうか)(この)急場(きふば)(すく)(ため)に、331(さいはひ)貴方(あなた)王家(わうけ)のお血筋(ちすぢ)332(この)右守(うもり)夫婦(ふうふ)になり、333国家(こくか)大難(だいなん)未然(みぜん)(ふせ)ぐお(かんが)へはありませぬか』
334ダイヤ『エエつべこべと、335(なんぢ)邪智侫弁(じやちねいべん)()(みみ)()たぬ、336(けが)らはしい。337王家(わうけ)がどうならうが、338国家(こくか)()うならうが、339(かま)つてくれな。340何事(なにごと)(てん)時節(じせつ)だ。341汝等(なんぢら)(ごと)有苗輩(いうぺうはい)関知(くわんち)する(ところ)でない。342(おほ)きにお世話(せわ)だ、343さがり()らう』
344厳然(げんぜん)として()(はな)つた。345ベルツ、346シエールは、
347最早(もはや)駄目(だめ)だ、348両人(りやうにん)左右(さいう)より()つてかかつて、349可哀相(かあいさう)(なが)ら、350殺害(さつがい)しくれむ』
351大剣(たいけん)引抜(ひきぬ)き、352左右(さいう)より()つてかかるを、353ダイヤは()をかはし、354飛鳥(ひてう)(ごと)(やいば)(くぐ)り、355(かし)大木(たいぼく)木楯(こだて)()つて(ふせ)(たたか)ひゐる。
356 ()かる(ところ)へブウブウブウと法螺貝(ほらがひ)()(なが)ら、357四人(よにん)山伏(やまぶし)
358衆生被困厄(しうじやうひこんやく)359無量苦逼身(むりやうくひつしん)360観音妙智力(くわんのんめうちりき)361能救世間苦(のうぐせけんく)362具足神通力(ぐそくじんつうりき)363広修智方便(くわうしゆうちはうべん)364十方諸国土(じつぱうしよこくど)365無刹不現身(むせつぶげんしん)366種々諸悪趣(しゆじゆしよあくしゆ)367地獄鬼畜生(ぢごくきちくしやう)368生老病死苦(せいらうびやうしく)369以漸悉令滅(いぜんしつりやうめつ)
370観音経(くわんのんきやう)(とな)(なが)(のぼ)つて()る。371ベルツ、372シエールの両人(りやうにん)四人(よにん)姿(すがた)(おどろ)いて、373ダイヤを()て、374着物(きもの)をかかへ、375山上(さんじやう)()がけて、376荊棘(けいきよく)(しげ)(なか)(くも)(かすみ)()げて()く。377(この)山伏(やまぶし)治道(ちだう)378道貫(だうくわん)379素道(そだう)380求道(きうだう)381四人(よにん)修験者(しうげんじや)なりけり。
382大正一二・三・五 旧一・一八 於竜宮館 松村真澄録)