霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第八章 愛米(あいまい)〔一四三八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第2篇 宿縁妄執 よみ(新仮名遣い):しゅくえんもうしゅう
章:第8章 愛米 よみ(新仮名遣い):あいまい 通し章番号:1438
口述日:1923(大正12)年03月16日(旧01月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一同は突然のほら貝の音に驚いている。高姫はほら貝の音が止まったのでまた元の座に戻ってきて、五人に対して理屈をこねはじめた。
そして反抗するベルに霊縛をかけ、見せしめとして肝玉をえぐりだして交換してやると凄み、槍をもってきてひと突きに突こうとした。
高姫とベルがにらみ合っていると、またほら貝の音が間近に聞こえてきた。高姫はこれを聞くと身体動揺し、槍をその場に落としてしまった。シャルは高姫の槍を拾って裏口から草の中へ隠してしまった。
入り口の戸が開いて求道居士が声をかけ、四人の男女を迎えに来たという。高姫は下手に出て求道居士に言い訳をした。みな高姫の魔法で縛られていたので、求道居士は呪文を唱えて魔法を解いた。高姫はこれを見て家の隅に突っ立ったまま震えている。
求道居士はヘル、シャル、ベルに小言を言うと、ここは冥途の八衢であり、まだ命数が残っているヘル、シャル、ベル、ケリナの四人を現界へ迎えに来たのだと説明した。
求道が三人と話している間に高姫は落ち着いたと見えて、今度は求道に対して自説を説きはじめ論戦を仕掛けた。求道は、高姫の言う千騎一騎のはたらきとは、他人の賞賛に依存し、自分のみ良きことを希求する地獄的な世間愛から一歩も出ていないと喝破した。
高姫は、自分は今まで相手のレベルに合わせて下根の教えを説いていたのだ、とにわかに求道を賞揚し、舌鋒をベルたちに向けてしまった。そしてまた求道を説き伏せようとする。
求道は笑ってほら貝を吹きたてた。それと同時に高姫の館は次第に影うすくなり、ついに陽炎のごとく消滅してしまった。
ベル、ヘル、ケリナの三人が気が付いてあたりを見ると、エルシナ側の川べりに一人の山伏に救い上げられていた。そしてシャルはなにほど介抱をし魂返しをしても生き返らなかった。他の三人は高姫に籠絡されず、精神を取られなかったから甦ることができたのである。
シャルは、ベルに比べれば善人でありまだ現界に生命が残っていたが、高姫の教えに信従して固着してしまったのである。
求道居士はケリナをテルモン山の小国別の館に送ってゆくことになり、ベルとヘルも従うことになった。ベルは、途中でヘルと争論を起こし、一時山林に姿を隠すことになる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5608
愛善世界社版:93頁 八幡書店版:第10輯 179頁 修補版: 校定版:99頁 普及版:42頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎全集 > 第一巻 皇道編 > 第七篇 高天原 > 第十三章 神愛と自愛
001()んでから語呂(ごろ)つき()した法螺(ほら)(かひ)
002(こゑ)高姫(たかひめ)(しづ)伏家(ふせや)に』
003内外(うちそと)にうなり()したる法螺(ほら)(かひ)
004おどろきケリナ、ベル、シャル、ヘル』
005法螺(ほら)()()いて高姫(たかひめ)立上(たちあが)
006(むね)(とどろ)かす茅屋(あばらや)戸口(とぐち)
007法螺(ほら)()(ちか)くに(きこ)(また)(とほ)
008(きこ)えぬわいなと(かみ)(うら)めつ』
009『あの(こゑ)矢張(やつぱ)(ゆめ)(まぼろし)
010高姫司(たかひめつかさ)法螺(ほら)(ふき)()か』
011口々(くちぐち)(うた)(なが)ら、012()(にん)(かほ)見合(みあ)はして、013不審(ふしん)(くも)(つつ)まれてゐる。014高姫(たかひめ)法螺(ほら)(こゑ)(ふたたび)()まつたので、015(また)(もと)()引返(ひきかへ)(きた)り、
016高姫(たかひめ)『あああ皆々(みなみな)017()たしました。018(しか)(なが)らシャルは(わたし)知己(ちき)だ。019(これ)から大事(だいじ)にして(わたし)片腕(かたうで)使(つか)うて()げますぞや。020()(にん)(かた)はモウ、021トツトと(かへ)つて(もら)ひませう。022結構(けつこう)日出(ひのでの)(かみ)()託宣(たくせん)を、023ツベコベと小理窟(こりくつ)(ばか)りひねるやうなお(かた)は、024到底(たうてい)(たす)けやうが()りませぬ。025第一(だいいち)霊魂(みたま)位置(ゐち)天地(てんち)相違(さうゐ)があるのだから、026(この)高姫(たかひめ)(あい)徹底(てつてい)しないと()えます、027(まこと)()(どく)なものだ。028(これ)自業(じごう)自得(じとく)(あきら)めて(かへ)つて(もら)ひませう。029エーエ(けが)らはしい、030(いま)(きこ)えた法螺貝(ほらがひ)(やう)(はら)(なか)空洞(うつろ)のクセに、031(おほ)きな法螺(ほら)()(ばか)りで、032仕方(しかた)のないカラ霊魂(みたま)だ。033サアサア、034(この)(やかた)()()えても矢張(やつぱ)高姫(たかひめ)御殿(ごてん)だ。035(まへ)(ちひ)さい(くす)ぼつた茅屋(あばらや)(おも)つてゐるだらうが、036(これ)でも活眼(くわつがん)(ひら)いて()()れば、037金殿(きんでん)玉楼(ぎよくろう)038精霊(みたま)(くもり)()れぬと、039こんな立派(りつぱ)御殿(ごてん)が、040(まへ)には茅屋(ばうをく)()えませうがな、041心次第(こころしだい)何事(なにごと)(うつ)るのだから()(どく)なものだよ。042イツヒヒヒヒヒ』
043ベル『(なん)とマア、044自我心(じがしん)(つよ)(ばば)アだなア。045(めう)なインクリネーションを()つてゐるスフヰンクスだ。046どつか精神(せいしん)(じやう)大変(たいへん)なラシャナリストがあると()えるワイ。047オイ、048ヘル、049ケリナ、050モウ(かへ)らうぢやないか。051何時(いつ)(まで)()つた(ところ)面白(おもしろ)くも(なん)ともない、052諄々(じゆんじゆん)口角(こうかく)(あわ)()ばし、053仰有(おつしや)つて(くだ)さつても、054(こころ)(まこと)がないのだから、055サツパリ無味(むみ)乾燥(かんさう)で、056ドライアスダストの(やう)だ。057サア、058シャルの馬鹿者(ばかもの)(だけ)(あと)(のこ)して出立(しゆつたつ)々々(しゆつたつ)059(いち)060()061(さん)
062高姫(たかひめ)『エー、063ツベコベとベルの()うに(さへづ)(をとこ)だなア。064(しか)(なが)らここへ()以上(いじやう)()ねと()つたものの、065中々(なかなか)066(じつ)(ところ)()なす()はないぞや。067()にたけりや()なしてやるが、068(まへ)肝玉(きもだま)(えぐ)()し、069結構(けつこう)結構(けつこう)(みたま)()()へた(うへ)解放(かいはう)してやる。070此処(ここ)出刃(でば)用意(ようい)してあるから、071暫時(しばらく)()つたがよからう、072(うご)かうと()つたつて、073ビクとも出来(でき)ぬやうに、074曲輪(まがわ)(はふ)使(つか)うてあるから(うご)いてみなさい。075(まへ)たちは余程(よつぽど)よい野呂作(のろさく)だから、076()らぬ()霊縛(れいばく)をかけておいたのだよ。077イツヒヒヒヒ』
078ベル『ナアニッ、079チヨン猪口才(ちよこざい)な、080(きさま)()(きも)(わた)してたまるかい。081()るなら()つてみよ』
082高姫(たかひめ)()らいでかい。083(なん)でも(かん)でもスツカリ取上(とりあ)()アさまだよ』
084ヘル『コレ、085もし、086高姫(たかひめ)さま、087(わたし)(こら)へて()れるでせうな。088(じつ)(ところ)はベルよりもお(まへ)さまの(はう)がどこともなしに(かみ)さまらしい(ところ)がある(やう)(おも)ひます、089(おな)(もの)()るにも肝玉(きもだま)()るとは(ふる)つてゐる。090(わたし)(その)一言(いちごん)にサツパリ共鳴(きようめい)して(しま)ひました』
091高姫(たかひめ)『ウン、092(まへ)(この)ベルからみれば、093チツと(ばか)りホロましな人足(にんそく)だ。094(しか)(なが)底津(そこつ)岩根(いはね)大神(おほかみ)(さま)生宮(いきみや)(たい)し、095共鳴(きようめい)するなんて、096(なん)()傲慢(がふまん)不遜(ふそん)()(かた)だい、097チツとは言霊(ことたま)(つつし)みなさい』
098ヘル『何分(なにぶん)バラモン(ぐん)()つて(すこ)(ばか)青表紙(あをべうし)をかぢつたものだから、099比較(ひかく)(てき)スピリットが発達(はつたつ)してゐるものだから、100(まへ)さまのメデヲカチックなお(はなし)直接(ちよくせつ)ハートに(をさ)まりませぬ。101それが(ため)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)してゐるのですよ』
102高姫(たかひめ)『スピリットだの、103ハートだの、104メデヲカチックだのと、105そんな()(たい)四足語(よつあしご)使(つか)つたつて(わか)りませぬぞや。106(この)高姫(たかひめ)(かみ)さまだから、107(とり)(けもの)(やう)(こゑ)(みみ)(とほ)りませぬ(わい)108なぜハツキリとしたスパルタ()申上(まをしあ)げぬのかい』
109ヘル『何分(なにぶん)霊魂(みたま)性来(しやうらい)(わる)いものだから、110満足(まんぞく)言霊(ことたま)()ませぬワ。111マア(こら)えて(もら)ひませうかい』
112ベル『コリヤ、113ヘルの大将(たいしやう)114(きさま)(おれ)反対(はんたい)(てき)態度(たいど)()(つもり)か。115ヨーシ、116それならそれで(おれ)にも(かんが)へがある』
117ヘル『(かんが)へがあるとは()うすると()ふのだい』
118ベル『当家(たうけ)主人(あるじ)高姫(たかひめ)第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として、119バラモン(けう)とやり、120(その)(つぎ)高姫(たかひめ)のパラドックスに共鳴(きようめい)する(きさま)をバラモンとやり、121ケリナをうまく懐柔(くわいじう)して、122ヘヘヘ、123あとは推量(すいりやう)せい。124それ以上(いじやう)()ふのも野暮(やぼ)だし、125()くのも野暮(やぼ)だから……』
126ヘル『アハハハハ、127ケリナが(さぞ)(よろこ)んで()いて()(こと)だらう、128本当(ほんたう)馬鹿(ばか)だなア』
129高姫(たかひめ)『エー、130(やかま)しい、131サア(これ)からこつちの計画通(けいくわくどほ)実行(じつかう)だ。132オイ、133ヘル、134シャル、135(まへ)表口(おもてぐち)裏口(うらぐち)立番(たちばん)をしてゐなさい。136そしてケリナは(をんな)(こと)でもあり、137反対(はんたい)すると()つた(ところ)で、138(あま)(おほ)きな(こと)()うせうまいから、139ここに()()るがよい、140サア、141ベル、142覚悟(かくご)はよいか』
143()(なが)ら、144懐中(ふところ)から赤錆(あかさび)になつた出刃(でば)をニユツと()()した。
145 ベルはビク(とも)(さわ)がず、
146ベル『アハハハハハ、147そら(なん)だ。148蟷螂(かまきり)(をの)をふり()げたやうな格好(かくかう)しやがつて、149そんな威喝(ゐかつ)()ふベルぢやないぞ。150(これ)でも(もと)はバラモン(ぐん)のサアジャント(さま)だ。151斬合(きりあひ)(ころ)(あひ)はお()(もの)だ。152(みづか)()うた(なは)(みづか)(しば)られるやうなものだぞ』
153 高姫(たかひめ)(なん)(おも)つたか、154出刃(でば)をパタリと投付(なげつ)けた。155ベルは魔法(まはふ)にかかつて(こし)から(した)がビク(とも)(うご)かなくなつてゐた。156(しか)(なが)()(くち)自由(じいう)自在(じざい)(うご)くので、157自分(じぶん)(まへ)()ちた出刃(でば)手早(てばや)(ひろ)ひ、158逆手(さかて)(にぎ)り、159最早(もはや)大丈夫(だいぢやうぶ)高姫(たかひめ)()()(なが)ら、
160ベル『アハハハハ、161面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、162ベルの言霊(ことたま)辟易(へきえき)して(ふる)(をのの)き、163出刃(でば)(おと)しよつたな。164エヘヘヘヘ、165最早(もはや)大丈夫(だいぢやうぶ)だ。166サア(やり)でも鉄砲(てつぱう)でも()つて()い、167(これ)から高姫館(たかひめやかた)道場破(だうぢやうやぶ)りだ。168コリヤ、169ヘル、170シャル、171(きさま)(ついで)にバラしてやらう、172有難(ありがた)(おも)へ』
173高姫(たかひめ)『イヒヒヒヒ、174何程(なにほど)出刃(でば)()()げて、175山蟹(やまがに)のやうなスタイルで目玉(めだま)飛出(とびだ)し、176頑張(ぐわんば)つて()つても駄目(だめ)だ。177こつちには二間(にけん)大身槍(おほみやり)がある。178(とほ)(ところ)からグサリと()いて(きも)をぬいてやるのだ。179オホホホホ。180テモさてもいぢらしいものだな。181(かみ)(そむ)いた天罰(てんばつ)()ふものはこんなものだ。182(いま)にみせしめの(ため)(この)高姫(たかひめ)成敗(せいばい)(いた)すから、183ヘル、184シャル、185ケリナも(これ)()改心(かいしん)なされや』
186ヘル『ハイ、187改心(かいしん)(いた)します、188何卒(どうぞ)(いのち)(ばか)りは(たす)けて(くだ)さいませ。189どんな(こと)でも(いた)しますから』
190高姫(たかひめ)『ウン、191よしよし、192それに間違(まちが)ひなくば、193(いのち)(だけ)(ゆる)してやる。194(その)(かは)高姫(たかひめ)(しり)()けと()つても()くのだよ』
195ヘル『ヘーエ、196(よろ)しあす。197……(なん)とか()つて、198(この)()(のが)れなくちや仕方(しかた)がないからな』
199小声(こごゑ)(つぶや)く。200ベルは依然(いぜん)として出刃(でば)振上(ふりあ)げたまま、201高姫(たかひめ)兇手(きようしゆ)(ふせ)がむと身構(みがま)へしてゐる。202高姫(たかひめ)はツと()つて、203何処(どこ)からか大身槍(おほみやり)をひつさげ(きた)り、204ベルの(むね)目蒐(めが)けて(ただ)一突(ひとつき)につき(ころ)さうと(かま)へてゐる。205ベルは出刃(でば)をふりかざし、206(いき)をこらして()つてゐる。207(たちま)ちブーブーと法螺(ほら)(かひ)間近(まぢか)(きこ)えて()た。208高姫(たかひめ)(この)(こゑ)身体(しんたい)動揺(どうえう)し、209(おのづか)(やり)(その)()にパタリと(おと)した。210そして()()真青(まつさを)(かほ)になつて(しま)つた。211シャルは高姫(たかひめ)(やり)(ひろ)ひ、212手早(てばや)裏口(うらぐち)持出(もちだ)し、213(くさ)(なか)(かく)して(しま)つた。214ベルは依然(いぜん)として出刃(でば)をふりかざした(まま)215(かた)まつてゐる。216(この)(とき)門口(かどぐち)をがらりと()け、
217御免(ごめん)(くだ)さい、218拙者(せつしや)求道(きうだう)居士(こじ)()修験者(しうげんじや)(ござ)る。219()(にん)男女(なんによ)がお世話(せわ)になつてゐると(うけたま)はり、220(むか)ひに(まゐ)りました』
221 高姫(たかひめ)(とどろ)(むね)(おさ)へ、222ワザと素知(そし)らぬ(かほ)をして()(ひざ)(うへ)()み、
223高姫(たかひめ)『これはこれは、224どこの修験者(しうげんじや)()りませぬが、225マアよい(ところ)()(くだ)さつた。226(しか)(なが)()(にん)(もの)世話(せわ)になつてると、227(いま)仰有(おつしや)つたが、228()(しら)べて(くだ)さいませ。229どうにもかうにもならない悪党(あくたう)一人(ひとり)(まじ)つてゐます。230彼奴(あいつ)泥坊(どろばう)とみえまして、231(この)(ばば)一人(ひとり)(やかた)出刃(でば)をふり(かざ)して(をど)()み、232(かね)()せ、233衣類(いるゐ)()せと(まを)して、234(この)(ばば)アの(いのち)()らうと(いた)しました。235それ(ゆゑ)236あの(とほ)魔法(まはふ)……オツトドツコイ霊法(れいはふ)()つて(ふう)じておきました。237(まへ)もチツと、238修験者(しうげんじや)なれば()うて()かしてやつて(くだ)さい。239(かみ)人民(じんみん)一人(ひとり)だつて(くるし)めたい(こと)(ござ)いませぬからな。240日出(ひのでの)(かみ)義理(ぎり)天上(てんじやう)も、241こんな没分暁漢(わからずや)(かか)つては(まこと)迷惑(めいわく)(いた)します、242オホホホホホ』
243自分(じぶん)(こと)(たな)()げ、244(かつ)ベルを脅喝(けふかつ)した(その)非事(ひじ)をあばかれない(さき)に、245うまく予防線(よばうせん)()つてゐる。246求道(きうだう)居士(こじ)は「(なに)()もあれ御免(ごめん)(かうむ)りませう」と一間(ひとま)(とほ)り、247()れば()(にん)とも腰部(えうぶ)以下(いか)はビクとも(うご)かないやうに霊縛(れいばく)されてゐた。248求道(きうだう)居士(こじ)(たちま)ち、249呪文(じゆもん)(とな)へ、250(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)し、251()(にん)霊縛(れいばく)()いた。252高姫(たかひめ)()(まる)くし(した)()いて、253(いへ)小隅(こすみ)につツ()つた(まま)254(ふる)ふてゐる。
255求道(きうだう)『お(まへ)はベル、256ヘル、257シャルの(さん)(にん)ぢやないか。258(きた)(もり)でゼネラル(さま)から沢山(たくさん)のお(かね)(いただ)き、259(いち)()(はや)国許(くにもと)(かへ)つて正業(せいげふ)()くと()つたクセに、260まだ斯様(かやう)(ところ)にうろついて泥坊(どろばう)をやつてゐたのか、261(こま)つた代物(しろもの)だなア』
262ベル『ハイ、263申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬ、264キツト今後(こんご)(つつし)みます、265何卒(どうぞ)今日(けふ)見逃(みのが)して(くだ)さいませ』
266ヘル『カーネル(さま)267(この)(とほ)りで(ござ)います』
268()(あは)す。269シャルは(だま)つて(かしら)()げたなり、270(やや)微笑(びせう)()び、271高姫(たかひめ)片腕(かたうで)になつたと()(ほこ)りを(はな)(さき)にブラつかしてゐる。
272求道(きうだう)『お(まへ)(たち)(さん)(にん)此処(ここ)何処(どこ)だと(おも)ふてゐるのだ』
273ベル『ハイ、274どことも(おも)ふてをりませぬ、275此処(ここ)だと(おも)ふて()ります』
276求道(きうだう)此処(ここ)(わか)つてゐる。277現界(げんかい)幽界(いうかい)かどちらと(かんが)へて()るか』
278ベル『そんな(こと)(わか)(くらゐ)なら、279こんな(ところ)()(まよ)うては(まゐ)りませぬ、280実際(じつさい)何処(どこ)(ござ)いますか』
281求道(きうだう)(こま)つた(やつ)だなア、282ここは冥土(めいど)八衢(やちまた)だ。283(この)高姫(たかひめ)といふ()アさまは、284精霊界(せいれいかい)兇鬼(きようき)になつてゐるのだ。285サア(かへ)らう、286何時(いつ)(まで)もこんな(ところ)()つては()まらないぢやないか』
287 (さん)(にん)()うしても幽界(いうかい)(おも)(こと)出来(でき)なかつた。
288ヘル『モシ、289カーネル(さま)290ここが幽界(いうかい)なれば、291貴方(あなた)もヤツパリ肉体(にくたい)()くなり、292冥土(めいど)(たび)をしてゐるのですか』
293求道(きうだう)『イヤ(おれ)現界(げんかい)にゐるのだ。294(まへ)こそ(ほとん)幽界(いうかい)()てゐるのだよ。295一度(いちど)現界(げんかい)()(こころ)取直(とりなほ)し、296(まこと)人間(にんげん)になつて、297(あらた)めて霊界(れいかい)()るのだ。298(この)(まま)霊界(れいかい)()かうものなら、299どうで地獄(ぢごく)()かねばならぬから(たす)けに()たのだ』
300 『ヘーエ』と()つたきり、301(さん)(にん)求道(きうだう)(かほ)(いぶ)かし()見守(みまも)つてゐる。302高姫(たかひめ)はソロソロと恐怖心(きようふしん)(のぞ)かれたと()え、303求道(きうだう)(まへ)にドツカと(すわ)り、
304高姫(たかひめ)『ホツホホホホ、305(まへ)もヤツパリ気違(きちがひ)だな、306最前(さいぜん)から()いて()れば此処(ここ)幽界(いうかい)ぢやと()つたが、307それがテンで間違(まちが)つて()るぢやないか』
308求道(きうだう)現界(げんかい)なれば太陽(たいやう)(あが)り、309(つき)(かがや)き、310(よる)になれば(ほし)もきらめく(はず)だが、311昼夜(ちうや)区別(くべつ)もなく、312こんなうす(ぐら)()(なか)を、313(まへ)さまは現界(げんかい)(おも)ふてゐるのか、314よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい』
315高姫(たかひめ)『ホホホホ、316(なん)とマア(わか)らぬ(めくら)だこと、317(あま)人民(じんみん)精神(せいしん)(くも)()つて()るので、318邪気(じやき)濛々(もうもう)立上(たちのぼ)り、319日月(じつげつ)星辰(せいしん)(かげ)()えない(とこ)まで(くも)つてゐるのだよ。320それだから系統(ひつぽう)(みたま)321義理(ぎり)天上(てんじやう)生宮(いきみや)底津(そこつ)岩根(いはね)(おほ)ミロクさまの神柱(かむばしら)として、322(この)()光明(くわうみやう)世界(せかい)(いた)さうと苦労(くらう)(いた)して()るのぢやぞえ。323(まへ)修験者(しうげんじや)()えるが、324(なに)修行(しゆげふ)してゐるのだい。325一時(いつとき)(はや)(この)生宮(いきみや)(まを)(こと)()いて、326(かみ)(さま)御用(ごよう)(つと)()げ、327天晴(あつぱれ)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はして、328()しては(かみ)(まつ)られ、329()きては世界(せかい)太柱(ふとばしら)となり、330()末代(まつだい)(のこ)御用(ごよう)(いた)したら()うだい。331()()えても(この)高姫(たかひめ)天地(てんち)一切(いつさい)(こと)(こころ)(かがみ)(うつ)つてゐるのだから、332(まを)(こと)にチツとも間違(まちが)ひはありませぬぞや』
333求道(きうだう)『ああ(こま)つた(をんな)だなア、334自分(じぶん)冥土(めいど)()八衢(やちまた)彷徨(さまよ)(なが)ら、335まだ()()めぬと()えるワイ。336自愛心(じあいしん)(つよ)(をんな)だなア、337どうかして(すく)ふてやる工夫(くふう)はあるまいか、338惟神(かむながら)(たま)()はひませ惟神(かむながら)(たま)()はひませ』
339高姫(たかひめ)『ホホホホ、340(なん)とまア没分暁漢(わからずや)(ばか)りが(そろ)ふたものだこと、341これでは(かみ)さまの()(こころ)がおいとしいワイの。342人間(にんげん)(かみ)分霊(わけみたま)だ。343それにも(かかは)らず現界(げんかい)幽界(いうかい)見当(けんたう)のつかぬ(とこ)(まで)344(みたま)(くも)らし、345どうして(これ)(もと)(かへ)るであらうか、346何程(なにほど)結構(けつこう)(かみ)(さま)()(まへ)(あら)はれて()つても、347(こころ)(まなこ)(くら)んだ(もの)仕方(しかた)がないワイ。348ああ何処(どこ)修験者(しうげんじや)()らぬが、349此奴(こいつ)(たす)けてやらねばなるまい。350(また)(ひと)苦労(くらう)()えて()た。351コレ、352シャル、353(まへ)(わし)弟子(でし)になつたのだから、354チツと加勢(かせい)をしておくれ、355何程(なにほど)結構(けつこう)(をしへ)をしても(うつは)(ちひ)さいと這入(はい)らぬとみえる、356(まへ)(ぐらゐ)程度(ていど)丁度(ちやうど)()(ところ)だ。357サア、358高姫(たかひめ)代理権(だいりけん)を、359(この)修験者(しうげんじや)(たい)して委任(ゐにん)する、360(しつか)りやりなされや』
361シャル『モシ、362カーネルさま、363ウラナイ(けう)高姫(たかひめ)先生(せんせい)仰有(おつしや)(こと)を、364よツく()落付(おちつ)けて()いて(くだ)さいませ。365(かみ)(さま)信仰(しんかう)理窟(りくつ)があつては駄目(だめ)です。366(すべ)無条件(むでうけん)でなくては信仰(しんかう)出来(でき)るものぢや(ござ)いませぬ』
367求道(きうだう)泥坊(どろばう)改心(かいしん)出来(でき)(うへ)368真人間(まにんげん)になつてから(なん)なと(をしへ)()かしてくれ、369それ(まで)()うも()(わけ)には()かぬからなア。370……コレ高姫(たかひめ)さま、371(まへ)さまは(この)求道(きうだう)居士(こじ)(はた)()いたとみえるなア。372それでは生宮(いきみや)とは(まを)されますまい』
373 高姫(たかひめ)(この)言葉(ことば)()くや(いな)や、374非常(ひじやう)侮辱(ぶじよく)(あた)へられたやうに(かん)じ、375(まゆ)逆立(さかだ)て、376(また)もや求道(きうだう)(まへ)()めよつて鼻息(はないき)(あら)く、
377高姫(たかひめ)『コレ(しう)チヤン、378(まへ)(もの)(わか)らぬ(ひと)だな。379人間(にんげん)天地(てんち)(はな)380ミクロコスモスノぢやぞえ。381何事(なにごと)宇宙(うちう)一切(いつさい)(はら)()()んで()らなくてはならぬ(はず)人間(にんげん)が、382サツパリ精霊(みたま)(くも)らして、383癲狂(てんきやう)痴呆(ちはう)となり、384日月(じつげつ)(ひかり)()られぬ(とこ)(まで)堕落(だらく)し、385(あはれ)状態(じやうたい)(おちい)つて()るのだから、386せめて(かみ)(みち)目醒(めざ)めた(もの)が、387(この)惨状(さんじやう)(すく)はねばなりますまい。388(まへ)修験者(しうげんじや)だと()つて法螺(ほら)()(まは)つて(ござ)るが、389底津(そこつ)岩根(いはね)(おほ)ミロク(さま)一厘(いちりん)仕組(しぐみ)(わか)つて()りますかい。390人間(にんげん)()うしても(かみ)()いでの(もの)だから天晴(あつぱれ)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はして、391天下(てんか)国家(こくか)(ため)392(みち)(ため)千騎(せんき)一騎(いつき)大活動(だいくわつどう)をなし、393芳名(はうめい)天下(てんか)(かがや)かし、394()末代(まつだい)(つた)へるべき(もの)だ。395それが出来(でき)ぬやうな(こと)では人間(にんげん)とは(まを)しませぬぞや。396チツと(むね)()()てて(かんが)へてみなさい』
397求道(きうだう)人間(にんげん)(ただ)(かみ)(さま)()道具(だうぐ)になれば()いのだ。398世間愛(せけんあい)自愛(じあい)(こころ)払拭(ふつしき)し、399何事(なにごと)惟神(かむながら)のまにまに活動(くわつどう)するのが、400人間(にんげん)(うま)れた所以(ゆゑん)だ。401(まへ)さまの()(こと)何処(どこ)とはなしに、402ファラシーがあるやうだ』
403高姫(たかひめ)『お(まへ)義理(ぎり)天上(てんじやう)生宮(いきみや)(たい)し、404自愛心(じあいしん)だの、405世間愛(せけんあい)だのと(わけ)(わか)らぬ屁理窟(へりくつ)をツベコベ仰有(おつしや)るが、406よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。407人間(にんげん)(この)()(かみ)(さま)()余光(よくわう)(いただ)いて生存(せいぞん)する(かぎ)りは自愛心(じあいしん)がなくては、408(いち)(にち)だつて生存(せいぞん)する(こと)出来(でき)ますまい。409(ひと)には肉体(にくたい)維持(ゐぢ)責任(せきにん)がありますよ。410(いち)(にち)でも結構(けつこう)月日(つきひ)(おく)らして(いただ)き、411(かみ)(さま)生宮(いきみや)として、412千騎(せんき)一騎(いつき)活動(くわつどう)をせなくては、413()まぬぢやありませぬか。414どうしても人間(にんげん)天地(てんち)経綸(けいりん)司宰者(しさいしや)ですよ。415何故(なぜ)自愛心(じあいしん)世間愛(せけんあい)が、416それ(ほど)(まへ)は、417怪悪(くわいあく)なものの(やう)に、418(また)兇鬼(きようき)所作(しよさ)(やう)()ふのですか。419本当(ほんたう)にお(まへ)()(こと)人間界(にんげんかい)には通用(つうよう)せない。420屁理窟(へりくつ)だ』
421求道(きうだう)人間(にんげん)()()(とき)自愛(じあい)(つい)ては(がう)顧慮(こりよ)する(ところ)がない。422(ただ)(その)外分(ぐわいぶん)(あら)はれた矜高(きんかう)(じやう)423所謂(いはゆる)自愛(じあい)なる(もの)が、424何人(なにびと)(いへど)も、425(これ)外面(ぐわいめん)から明瞭(はつきり)(うかが)()らるるが(ゆゑ)に、426(ただ)(これ)(もつ)て、427自愛(じあい)(ねん)としてゐるものだ。428そして(また)自愛(じあい)(ねん)(みぎ)(ごと)判然(はんぜん)(おもて)(あら)はれる(こと)がなければ、429世間(せけん)人間(にんげん)(これ)生命(せいめい)()(しん)じ、430(この)(ねん)()られて種々(いろいろ)職業(しよくげふ)(もと)め、431(また)諸多(しよた)(よう)成就(じやうじゆ)するものと(しん)じてゐる(もの)だ。432(しか)(なが)人間(にんげん)()(その)(うち)(おい)て、433名誉(めいよ)光栄(くわうえい)とを(もと)める(こと)出来(でき)なければ、434(たちま)(こころ)萎靡(いび)(をは)るものと(おも)つてゐる。435(ゆゑ)にかかる自愛心(じあいしん)(ふか)人間(にんげん)他人(たにん)()つて、436(また)他人(たにん)(こころ)(うち)にて尊重(そんちよう)せられ、437賞讃(しやうさん)される(こと)がなければ、438誰人(たれ)()(あたひ)あり(よう)ある行為(かうゐ)をなし、439(みづか)(しう)(すぐ)れむとするものがあらうか。440そして人間(にんげん)をして(かく)(ごと)(はたら)かしむるのは(その)光栄(くわうえい)尊貴(そんき)とを熱望(ねつばう)する(こころ)441所謂(いはゆる)自愛(じあい)()るものではないかと()つてゐる(もの)(ばか)りだ。442かくて世間(せけん)には(もつぱ)地獄(ぢごく)(おこな)はれる(あい)と、443(ひと)をして地獄(ぢごく)(つく)らしむる(もの)愛我(あいが)自体(じたい)なる(こと)()らない(もの)(おほ)いのだ。444(まへ)さまの仰有(おつしや)(こと)(えう)するに、445(いま)()つた(やう)(かんが)へより一歩(いつぽ)(そと)()づる(こと)出来(でき)ないのだから、446ヤツパリお(まへ)さまの仰有(おつしや)(こと)()うしても(かみ)言葉(ことば)とは(きこ)えませぬよ。447第一(だいいち)(かみ)(をしへ)(ほう)ずる(もの)(まを)すに(およ)ばず、448人間(にんげん)(うま)れた以上(いじやう)はどうしても愛我(あいが)(こころ)放擲(はうてき)しなくては天下(てんか)救済(きうさい)神業(しんげふ)(つと)まりますまい。449自愛心(じあいしん)のある(うち)は、450如何(いか)善事(ぜんじ)(おこな)ふとも、451それはヤツパリ偽善(ぎぜん)ですよ。452(この)求道(きうだう)名利(めいり)(ちまた)奔走(ほんそう)し、453バラモン(けう)のカーネルとして尊貴(そんき)名誉(めいよ)(ゆめ)みて()つた(もの)ですが、454三五教(あななひけう)(をしへ)(さと)ると(とも)に、455自愛(じあい)世間愛(せけんあい)(はな)れ、456()うして(かみ)(ため)(はたら)かして(いただ)いて()ります。457高姫(たかひめ)さまも(かみ)(ため)(つく)して、458出世(しゆつせ)をせうとか、459(あるひ)出世(しゆつせ)をさしてやらうとか、460(おも)つたり仰有(おつしや)(うち)真正(しんせい)信仰(しんかう)とは(まを)せますまい。461(また)(しん)(あい)()(こと)出来(でき)ますまい。462()(むね)()()てて貴女(あなた)(こころ)(かがみ)をマ一度(いちど)(のぞ)いて御覧(ごらん)なさい』
463高姫(たかひめ)『ホホホホ、464(なん)とまア、465ツベコベと理窟(りくつ)(うま)いものですな。466何程(なにほど)(くに)(ため)467()(ため)だと()つても、468自分(じぶん)()てて国家(こくか)のため世人(よびと)(ため)(つく)(もの)は、469実際(じつさい)(とこ)はありますまい、470(また)()()(べか)らざる(こと)でせう。471(この)高姫(たかひめ)(あきら)かな(こころ)(かがみ)には(うそ)(いつは)りは(ひと)つも(うつ)りませぬぞや。472愛我心(あいがしん)がいけないと、473(まへ)さんは(いま)()つたが、474自分(じぶん)(からだ)(けつ)して自分(じぶん)(もの)でない、475(みな)(かみ)(さま)()(からだ)ぢやありませぬか。476三五教(あななひけう)(をしへ)にも(かみ)(あい)する(ごと)(ひと)(あい)し、477(わが)()敬愛(けいあい)すべしと()()るでせう。478(わが)()(あい)するのは所謂(いはゆる)(かみ)(さま)(あい)するのだ。479(この)(こころ)神愛(しんあい)ともなり、480自愛(じあい)ともなり愛我心(あいがしん)ともなるのだ。481それをお(まへ)(ただ)一口(ひとくち)愛我心(あいがしん)(わる)いと仰有(おつしや)るが、482今日(こんにち)()(なか)()(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。483日々(にちにち)往復(わうふく)文書(ぶんしよ)にも……気候(きこう)不順(ふじゆん)だから随分(ずいぶん)()自愛(じあい)専一(せんいつ)(いの)ります……と()くぢやありませぬか、484天下(てんか)国家(こくか)のために最善(さいぜん)(つく)し、485社会(しやくわい)(ため)努力(どりよく)して(かん)ばしき()万世(ばんせい)(つた)ふるのは、486人間(にんげん)としては最上(さいじやう)至善(しぜん)(おこな)ひで(ござ)いませう。487(まへ)だつて、488修験者(しうげんじや)(ある)いてゐるのはヤハリ愛我(あいが)(ため)だらう。489(くち)では立派(りつぱ)(こと)()つても、490言心行(げんしんかう)一致(いつち)中々(なかなか)出来(でき)ませぬぞや。491(からだ)資本(しほん)だと()(こと)がある。492如何(いか)なる善事(ぜんじ)をなすにも、493肉体(にくたい)がなくては出来(でき)ますまい、494さすれば(その)肉体(にくたい)をどこ(まで)可愛(かあい)がらねばなりますまい』
495求道(きうだう)(わたし)愛我(あいが)()ふのは自分(じぶん)のみよからむ(こと)希求(ききう)する意思(いし)()すのである。496愛我心(あいがしん)(つよ)人間(にんげん)は、497他人(たにん)のよくなる(こと)(ねが)ふのは(ただ)自分(じぶん)利益(りえき)をもたらす(とき)にのみ(かぎ)つてゐる。498(ゆゑ)自愛(じあい)(もつ)(しゆ)としてゐる(もの)(あるひ)はチヤーチ(あるひ)国家(こくか)499(また)如何(いか)なる人類(じんるゐ)団体(だんたい)(たい)しても、500(これ)(ため)利福(りふく)(ねが)(こと)もなく、501(また)自分(じぶん)名誉(めいよ)502尊貴(そんき)503光栄(くわうえい)(ため)(あら)ざれば、504()(むか)つて(けつ)して仁恵(じんけい)(ほどこ)(こと)をせない。505()(これ)()愛我(あいが)(てき)人間(にんげん)()(ため)(よう)()ぐるに(あた)つて、506(その)(なか)以上(いじやう)()べた(ごと)自利(じり)相反(あひはん)するものがあつた(とき)(ただ)ちに失望(しつばう)し、507自暴(じばう)自棄(じき)して……ああ吾々(われわれ)(これ)(だけ)努力(どりよく)しても、508(はた)して(なん)(えき)があるだらうか、509(なに)(ゆゑ)吾々(われわれ)(この)(やう)(こと)をなす()義務(ぎむ)があるか。510(また)(はた)して()(ため)(なん)()利得(りとく)(しやう)ずるであらうか……と()つて、511放棄(はうき)し、512自己(じこ)利益(りえき)以外(いぐわい)には何事(なにごと)もなさない。513()(ゆゑ)愛我(あいが)(ねん)(ふか)()する(もの)(かみ)(さま)のチヤーチを(あい)せず、514国家(こくか)社会(しやくわい)(しん)(あい)せず、515(また)御用(ごよう)(あい)する(こと)なく、516(ただ)自己(じこ)のみを(あい)するものである。517(たとへ)自分(じぶん)主張(しゆちやう)する(をしへ)無条件(むでうけん)聴従(ちやうじう)する(もの)(おほ)からむことを(ねが)ひ、518自分(じぶん)尊敬(そんけい)する人間(にんげん)のみを(あつ)め、519(すこ)しにても反抗(はんかう)(てき)態度(たいど)()(もの)(たい)し、520()をつり()げ、521顔色(がんしよく)(へん)じて憤怒(ふんぬ)(じやう)(あら)はす(ごと)きは、522自愛(じあい)(もつとも)(はなは)だしいもので(ござ)いませう。523(かく)(ごと)態度(たいど)()(ひと)は、524(いづ)れも()(なが)地獄(ぢごく)(せき)()いてゐる妖怪(えうくわい)(てき)人物(じんぶつ)です。525高姫(たかひめ)さまは生宮(いきみや)仰有(おつしや)以上(いじやう)は、526(けつ)して自分(じぶん)尊貴(そんき)しない(もの)威喝(ゐかつ)したり、527自分(じぶん)頤使(いし)盲従(まうじゆう)しない(もの)憎悪(ぞうを)したり嘲罵(てうば)するやうな地獄(ぢごく)(てき)行為(かうゐ)はなさいますまいと(しん)じて()ります。528愛我心(あいがしん)(つよ)人間(にんげん)(その)所主(しよしゆ)(あい)より起来(きらい)する歓喜(くわんき)悦楽(えつらく)は、529(すなは)(その)人間(にんげん)生涯(しやうがい)をなす所以(ゆゑん)のものだから、530(かく)(ごと)(もの)生涯(しやうがい)所謂(いはゆる)自愛(じあい)生涯(しやうがい)です。531自愛(じあい)生涯(しやうがい)とは(すなは)(その)人間(にんげん)我執(がしふ)(ねん)から発生(わい)てくる生涯(しやうがい)である。532(ゆゑ)(その)自体(じたい)から()(とき)は、533我執(がしふ)534愛我(あいが)念慮(ねんりよ)(けつ)して(ぜん)()(こと)出来(でき)ぬものだ。535自分(じぶん)盲従(まうじゆう)し、536隷属(れいぞく)する(もの)のみを(あい)する(もの)を、537(また)(とく)自分(じぶん)子孫(しそん)朋友(ほういう)知己(ちき)(かぎ)(あい)せむとする(もの)は、538結局(けつきよく)自愛(じあい)(こころ)です。539自分(じぶん)行動(かうどう)(いつ)にする朋友(ほういう)知己(ちき)意中(いちう)(ひと)のみを偏愛(へんあい)し、540自分(じぶん)行動(かうどう)(とも)にせざる(もの)(および)自分(じぶん)意志(いし)()はざる(もの)(あい)せないのも自愛(じあい)であつて、541(しん)神愛(しんあい)ではありますまい。542自分(じぶん)党派(たうは)(あい)し、543自分(じぶん)部下(ぶか)のみを(あい)する(こと)544(ほとん)自己(じこ)(ごと)くなし、545歓喜(くわんき)するのは、546自分(じぶん)をその(うち)包有(はういう)してゐるが(ゆゑ)である。547自愛心(じあいしん)人間(にんげん)所有(しよいう)(しよう)する(もの)(うち)には、548(すべ)(かれ)()賞揚(しやうやう)尊敬(そんけい)阿諛(あゆ)する(もの)をも(ふく)んで()るのだ。549(これ)所謂(いはゆる)地獄愛(ぢごくあい)だ。550高天原(たかあまはら)()ける(しん)(あい)(くら)ぶれば、551(じつ)天地(てんち)霄壌(せうぜう)差異(さい)がある、552自愛(じあい)世間愛(せけんあい)とは所謂(いはゆる)地獄(ぢごく)(あい)であつて、553高天原(たかあまはら)(あい)天国(てんごく)(あい)である。554天国(てんごく)(おい)ては(よう)(ため)(よう)(あい)し、555(ぜん)(ため)(ぜん)(あい)して聖団(せいだん)(ため)556国家(こくか)(ため)557同胞(どうはう)(ため)(その)()(むな)しうして、558実践(じつせん)躬行(きうかう)するものです。559(これ)(しよう)して(かみ)(あい)し、560隣人(りんじん)(あい)すると()ふのである。561貴女(あなた)(けつ)してさう()(やう)自愛心(じあいしん)をお()ちになつて()らうとは的確(てきかく)には(しん)じませぬが、562()(なか)沢山(たくさん)(あら)はれてゐる神柱(かむばしら)とか、563生宮(いきみや)とか、564予言者(よげんしや)とか(とな)へらるる人間(にんげん)(うち)には、565随分(ずいぶん)自愛心(じあいしん)(つよ)偽善家(ぎぜんか)(おほ)いものです。566(しん)(かみ)生宮(いきみや)567五六七(みろく)太柱(ふとばしら)たるプロパガンデストならば、568一切(いつさい)御用(ごよう)一切(いつさい)(ぜん)(みな)(かみ)より(きた)り、569そして(その)(なか)自分(じぶん)所愛(しよあい)対象(たいしやう)たるべき隣人(りんじん)あるが(ゆゑ)である。570され(ども)自分(じぶん)(ため)(ゆゑ)に、571(これ)()(こと)(あい)するは、572(これ)をして(おのれ)服従(ふくじゆう)せしめむが(ため)573(すなは)(これ)僕婢(ぼくひ)とし、574(あるひ)部下(ぶか)として(あい)するものである。575(ゆゑ)世間(せけん)沢山(たくさん)ある贋神柱(にせかむばしら)(いづ)れも愛我(あいが)のみに(ぢゆう)するが(ゆゑ)に、576自分(じぶん)のエビスコーバルしてゐるチヤーチの(ため)とか、577国家(こくか)同胞(どうはう)(ため)服事(ふくじ)せむ(こと)(ねが)ひ、578そして自分(じぶん)傲然(がうぜん)として尊貴(そんき)(ほこ)り、579(これ)服事(ふくじ)することを(ねが)はないものです。580(かみ)生宮(いきみや)581太柱(ふとばしら)などを真向(まつかう)(ふり)かざし、582教会(けうくわい)583国家(こくか)584同胞(どうはう)(など)(うへ)卓立(たくりつ)し、585(これ)をして(おの)脚下(きやくか)()らしめむと焦慮(せうりよ)するものです。586それ(ゆゑ)人間(にんげん)愛我心(あいがしん)()れない(かぎ)りは、587(おのづか)高天原(たかあまはら)天国(てんごく)遠離(ゑんり)するものだ。588何故(なにゆゑ)ならば高天原(たかあまはら)(あい)から(とほ)ざかるからである』
589高姫(たかひめ)『そら、590そうです(とも)591()(すゑ)になりますと、592(にせ)予言者(よげんしや)593贋救(にせすく)(ぬし)594種々(いろいろ)雑多(ざつた)のスフヰンクスが(あら)はれて、595世界(せかい)(おろか)人間(にんげん)魔道(まだう)引入(ひきい)れようと(いた)すものです。596(めくら)(つんぼ)(ひと)しき人間(にんげん)至粋(しすゐ)至純(しじゆん)なる五六七(みろく)神政(しんせい)太柱(ふとばしら)597義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)認識(にんしき)する(めい)なく、598玉石(ぎよくせき)混淆(こんかう)して正邪(せいじや)判別(はんべつ)を、599ようつけないのだから、600(じつ)(この)生宮(いきみや)迷惑(めいわく)(いた)します。601(まこと)(もの)目薬(めぐすり)(ほど)もないと、602(かみ)さまが仰有(おつしや)いますが()うしたものです。603(この)高姫(たかひめ)はお(まへ)眼力(がんりき)御覧(ごらん)になれば(わか)るでせうが、604自我(じが)のやうに()えても(けつ)して自愛(じあい)地獄愛(ぢごくあい)(よろこ)(もの)ぢや(ござ)いませぬ。605(あま)宏遠(くわうゑん)教理(けうり)(はじ)めから没分暁漢(わからずや)(さと)すと、606(かへ)つて取違(とりちが)ひを(いた)すに()つて、607最前(さいぜん)もあの(やう)自我心(じがしん)主張(しゆちやう)したのだが、608(まへ)さまの(やう)比較(ひかく)(てき)(わか)つた(ひと)なら、609()上根(じやうこん)()だ、610(いま)(まで)()うたのは小乗部(せうじやうぶ)だ。611(これ)からお(まへ)人格(じんかく)(みと)め、612紳士(しんし)(てき)態度(たいど)大乗部(だいじやうぶ)()いて()げませう。613コレ、614其処(そこ)()()(にん)連中(れんぢう)615(これ)から第一(だいいち)霊国(れいごく)(をしへ)()くのだから、616下根(げこん)精霊(みたま)には(かしら)(いた)(むね)(くる)しうなるかも()れないが、617そこを辛抱(しんばう)して()くのだよ。618そすりや結構(けつこう)()神徳(かげ)(いただ)けますぞや。619底津(そこつ)岩根(いはね)大弥勒(おほみろく)(さま)御用(ごよう)(いた)してゐる(この)高姫(たかひめ)は、620()(まで)もなく高天原(たかあまはら)愛善(あいぜん)(とく)()るのだから、621(よう)(ため)(よう)(あい)し、622(ぜん)(ため)(ぜん)(あい)して、623(こころ)(そこ)から(これ)(おこな)(こと)唯一(ゆゐいつ)(たのし)みとなし、624聖団(せいだん)のため、625国家(こくか)社会(しやくわい)同胞(どうはう)(ため)日夜(にちや)これを実践(じつせん)躬行(きうかう)してゐるのだ。626それだから五六七(みろくの)大神(おほかみ)自分(じぶん)至粋(しすゐ)至純(しじゆん)(おこな)ひを御覧(ごらん)(あそ)ばし、627(かみ)(さま)(はう)から、628生宮(いきみや)としてお(くだ)(あそ)ばしたのだ。629(しか)(なが)(あま)(れい)光明(くわうみやう)(はげ)しいので、630下根(げこん)人間(にんげん)にはチツと懸隔(けんかく)(とほ)すぎて、631正体(しやうたい)(あらは)さうものなら、632(たちま)栃麺棒(とちめんぼう)()り、633()げて(かへ)るに()つて、634精霊(みたま)相応(さうおう)変化(へぐれ)て、635説法(せつぱふ)をしてゐるのだよ。636(かみ)(さま)霊相応(みたまさうおう)仰有(おつしや)るのだから、637(ぶた)真珠(しんじゆ)(あた)へるやうな馬鹿(ばか)(こと)出来(でき)ませぬからなア。638高姫(たかひめ)所主(しよしゆ)(あい)(すなは)弥勒(みろくの)大神(おほかみ)所主(しよしゆ)(あい)だ。639(まへ)(たち)(やう)()れよしの精神(せいしん)で、640(よう)(おこな)ひ、641(ぜん)をした(ところ)が、642ヤツパリ駄目(だめ)だ。643それは(ある)一方(いつぱう)(なに)条件(でうけん)(もと)めてゐるのだから、644(しん)(あい)無条件(むでうけん)でなくては駄目(だめ)ですよ。645(これ)自愛心(じあいしん)(まを)しますぞや。646自愛心(じあいしん)(もの)(おのづか)大神(おほかみ)()神格(しんかく)より(とほ)(はな)れ、647(したが)つて高天原(たかあまはら)神国(しんこく)から(はな)れて(しま)ふものだ。648自分(じぶん)(はう)から(もと)める(ところ)(あい)我執(がしふ)(ねん)(みちび)かれて()るのだ。649(その)我執(がしふ)(ねん)といふのが、650所謂(いはゆる)(あく)といふのだ。651(あく)(また)一名(いちめい)地獄(ぢごく)といひますぞや。652三五教(あななひけう)変性(へんじやう)女子(によし)(みたま)世間悪(せけんあく)映像(えいざう)だと、653同教(どうけう)幹部(かんぶ)のお歴々(れきれき)主張(しゆちやう)してゐるだらうがな、654つまり(あく)といふのは自愛(じあい)世間愛(せけんあい)(しつ)する(もの)()ふのだよ。655(まへ)(これ)から(この)修験者(しうげんじや)仰有(おつしや)(こと)門口(かどぐち)として(みたま)(みが)き、656(おく)(おく)のドン(おく)(きは)めて天晴(あつぱれ)御用(ごよう)(ため)御用(ごよう)をしなさい。657(およ)ばず(なが)ら、658(この)高姫(たかひめ)(ちから)一杯(いつぱい)659(をし)へて()げるから……、660(しか)(なが)(をし)へて(もら)うてからの改心(かいしん)駄目(だめ)だぞえ、661(こころ)(そこ)から(この)高姫(たかひめ)生宮(いきみや)尊敬(そんけい)し、662(かつ)(ふか)(しん)じ、663大神(おほかみ)(せつ)する態度(たいど)(もつ)(つか)へなくてはお神徳(かげ)取外(とりはづ)しますよ』
664舌鋒(ぜつぽう)(うま)()(にん)(はう)()け、665(にはか)求道(きうだう)深遠(しんゑん)なる教理(けうり)自分(じぶん)(もの)となし、666得々(とくとく)として受売(うけうり)をやつてゐる。667(じつ)当意(たうい)即妙(そくめう)668()でも蒟蒻(こんにやく)でも()かぬ妖婆(えうば)である。
669ベル『オイ高姫(たかひめ)さま、670求道(きうだう)居士(こじ)の……(おれ)先生(せんせい)がお()でになつてから、671(にはか)心気(しんき)一転(いつてん)したぢやないか、672随分(ずいぶん)模倣(もはう)(めう)()てゐる()アさまだなア』
673高姫(たかひめ)『そら(なに)()ふのだ、674頑愚(ぐわんぐ)()(がた)代物(しろもの)だな。675(にん)()(ほふ)()けと()つて、676(まへ)(やう)ガラクタには(また)それ相応(さうおう)(をしへ)をするのだ、677(みみ)(いた)からう。678(この)高姫(たかひめ)求道(きうだう)さまに(をし)へてゐるのだ。679(まへ)(たち)彼此(かれこれ)()資格(しかく)はない、680スツ()んでゐなさい』
681ベル『ヘン、682馬鹿(ばか)にしてるわい、683イヒヒヒヒ』
684高姫(たかひめ)『コレ求道(きうだう)さま、685(まへ)法螺貝(ほらがひ)()(だけ)686どこ(とも)なしに()()いてる(ところ)がある。687高姫(たかひめ)()(こと)(みみ)(はい)るだらう。688サ、689(これ)から底津(そこつ)岩根(いはね)大弥勒(おほみろく)(さま)のお言葉(ことば)取次(とりつ)いで()げるから、690(うたが)はずに()きなされや。691第一(だいいち)()(なか)(なに)(わる)いと()つても、692自愛心(じあいしん)(すなは)愛我(あいが)念慮(ねんりよ)(くらゐ)(いや)しいものは(ござ)いませぬぞや。693(おのれ)(あい)すること、694(かみ)(あい)するに(まさ)り、695世間(せけん)(あい)する(こと)高天原(たかあまはら)(あい)するに(まさ)(やう)()(かた)駄目(だめ)ですよ。696何事(なにごと)神第一(かみだいいち)(いた)さねば、697人間(にんげん)(かみ)生宮(いきみや)(まを)(こと)出来(でき)ませぬぞや。698人間(にんげん)(ぜん)()すに(あた)つて、699(その)(なか)仮令(たとへ)毛筋(けすぢ)横巾(よこはば)でも、700自愛(じあい)(こころ)(こん)じてゐたならば、701(たちま)我執(がしふ)(ねん)(おちい)り、702諸悪(しよあく)地獄(ぢごく)突入(とつにふ)(いた)しますぞや。703何故(なぜ)なれば斯様(かやう)人間(にんげん)は、704(この)(とき)(ぜん)(はな)れて自分(じぶん)(むか)うて()(ども)705自分(じぶん)(はな)れて(ぜん)(むか)(こと)がないからだ。706さういふ人間(にんげん)如何(いか)なる(ぜん)をする(とも)707(その)(ぜん)(なか)には自我愛(じがあい)面影(おもかげ)のみを(とど)め、708神格(しんかく)面影(おもかげ)をチツとも(とど)めてゐないものだ。709それだから(この)高姫(たかひめ)(てん)命令(めいれい)()けて、710苦集(くしふ)滅道(めつだう)()き、711道法(だうほふ)礼節(れいせつ)開示(かいじ)してゐるのだから、712(みみ)(あな)()掃除(さうぢ)して真面目(まじめ)()きなさいや。713天地(てんち)(あひだ)(みな)不思議(ふしぎ)なものだ。714到底(たうてい)人間(にんげん)細工(さいく)知恵(ちゑ)解決(かいけつ)がつくものでない。715(ただ)(かみ)()(しん)()(あい)しさへすれば、716それで結構(けつこう)だよ。717求道(きうだう)さま、718どうです、719高姫(たかひめ)(みたま)因縁(いんねん)(これ)でチツと(わか)りましたかな』
720 求道(きうだう)は『アハハハハハ』と(わら)つたきり、721矢庭(やには)法螺(ほら)(くち)(あて)て、722ブウブウと吹立(ふきた)てた。723それと同時(どうじ)高姫(たかひめ)(やかた)次第(しだい)(かげ)うすくなり、724(つひ)陽炎(かげろふ)(ごと)消滅(せうめつ)したりける。
725 ベル、726ヘル、727ケリナの(さん)(にん)はフツと()がつき四辺(あたり)()れば、728エルシナ(がは)川縁(かはべり)一人(ひとり)山伏(やまぶし)(すく)()げられてゐた。729そしてシャルは何程(なにほど)人工(じんこう)呼吸(こきふ)(ほどこ)したり、730種々(いろいろ)魂返(たまがへ)しをやつてみたが駄目(だめ)であつた。731流石(さすが)悪党(あくたう)のベルも(この)(とき)現界(げんかい)(よみがへ)つたのは、732兇党界(きようたうかい)高姫(たかひめ)籠絡(らうらく)されず精神(せいしん)()られなかつたからである。733シャルはベルに(くら)ぶれば(やや)善人(ぜんにん)であるが、734現界(げんかい)()数十(すうじふ)(ねん)生命(せいめい)(のこ)つてゐるにも(かかは)らず、735蘇生(そせい)せなかつたのは、736()れの精霊(せいれい)(すで)高姫(たかひめ)(をしへ)信従(しんじゆう)し、737固着(こちやく)して(しま)つたからである。738(また)求道(きうだう)居士(こじ)(ただ)一人(ひとり)法螺貝(ほらがひ)()(なが)ら、739宣伝(せんでん)(ため)(この)川辺(かはべり)にふと(あら)はれ(きた)り、740(あさ)(はや)くから()(にん)死体(したい)(みと)めて()(おど)らし(ふち)()()み、741(すく)()げ、742魂返(たまがへ)しの神業(かむわざ)(しう)したのである。743(これ)より求道(きうだう)居士(こじ)はベル、744ヘルを(したが)へ、745ケリナを(おく)つてテルモン(ざん)小国別(をくにわけ)(やかた)(すす)()(こと)となつた。746ベルは中途(ちうと)にヘルと争論(そうろん)(おこ)し、747(いち)()姿(すがた)山林(さんりん)(かく)したのである。
748大正一二・三・一六 旧一・二九 於竜宮館 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→