霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 惚泥(でれどろ)〔一四四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第3篇 月照荒野 よみ:げっしょうこうや
章:第11章 惚泥 よみ:でれどろ 通し章番号:1441
口述日:1923(大正12)年03月16日(旧01月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:156頁 八幡書店版:第10輯 204頁 修補版: 校定版:164頁 普及版:76頁 初版: ページ備考:
001 求道居士(きうだうこじ)はヘル、002ケリナ(ひめ)(とも)に、003テルモン(ざん)小国別(をくにわけ)(やかた)をさして、004(くさ)茫々(ばうばう)たる原野(げんや)(すす)()く。005人通(ひとどほ)りも(すくな)く、006一面(いちめん)原野(げんや)には()(ぼつ)する(ばか)りの雑草(ざつさう)()(しげ)り、007所々(ところどころ)荊蕀(いばら)(むれ)点在(てんざい)し、008(おも)つたやうに(みち)(はかど)らない。009種々(いろいろ)(はな)原野(げんや)一面(いちめん)()(にほ)うて()る、010時々(ときどき)足許(あしもと)蚖蛇(ぐわんだ)(あら)はれ行歩(かうほ)(はなは)危険(きけん)である。
011 ()はずつぽりと()れて()た。012(つき)東方(とうはう)(くさむら)(なか)から(のぞ)(はじ)めた。013(きた)にはテルモン(ざん)高峰(かうほう)巍然(ぎぜん)として(ひか)へて()る。014(ゆふべ)(かぜ)(おく)られて晩鐘(ばんしよう)(こゑ)いと(さび)しげに諸行無常(しよぎやうむじやう)(ひび)()る。015白赤斑(しろあかまんだら)(からす)(そら)(ふう)じてテルモン(ざん)方面(はうめん)さしてガアガアと()(なが)(かへ)()(いそ)いで()る。016三人(さんにん)(つき)(ひかり)便(たよ)りに(すす)んで()つた。017(しか)(なが)足許(あしもと)匍匐(ほふく)してゐる蚖蛇(ぐわんだ)危険(きけん)(まぬが)るる(こと)到底(たうてい)出来(でき)ない。018何程(なにほど)(つき)(のぼ)りかけても長細(ながほそ)雑草(ざつさう)(へだ)てられ、019()(ひる)(ごと)くハツキリしない、020()(あやま)つて蚖蛇(ぐわんだ)()でも()まうものなら、021(たちま)()みつかれ、022即座(そくざ)(いのち)(おと)さねばならぬ危険(きけん)がある。023求道居士(きうだうこじ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)(とな)(また)024(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)(なが)(すす)んで()く、025ヘル(およ)びケリナ(ひめ)(いま)神徳(しんとく)()らずとして数歌(かずうた)(とな)ふる(こと)遠慮(ゑんりよ)し、026ヘルはバラモンの(きやう)(とな)(なが)二人(ふたり)(あと)()いて()く。
 
027 或遇悪羅刹(わくぐあくらせつ)  毒竜諸鬼等(どくりうしよきとう)
028 念彼観音力(ねんぴくわんのんりき)  時悉不敢害(じしつぶかんがい)
029 若悪獣囲繞(にやくあくじうゐねう)  利牙爪可怖(りげさうかふ)
030 念彼観音力(ねんぴくわんのんりき)  疾走無辺方(しつそうむへんぱう)
031 蚖蛇及蝮蠍(ぐわんじやぎうぶくかつ)  気毒焔火然(きどくえんくわねん)
032 念彼観音力(ねんぴくわんのんりき)  尋声自回去(じんじやうじゑこ)
033 雲雷鼓掣電(うんらいくせいでん)  降雹澍大雨(ごうばくじゆだいう)
034 念彼観音力(ねんぴくわんのんりき)  応時得消散(おうじとくせうさん)
 
035(とな)へながら(すす)んで()く。036(さいはひ)経文(きやうもん)(ちから)でもあらうか、037毒蛇(どくじや)(あら)はれず(やや)(ひろ)(くさ)(みじか)(ところ)()た。038まだこれからはテルモン(ざん)(ふもと)へは(わが)(こく)里程(りてい)換算(なほ)して二里(にり)以上(いじやう)もある。039さうして(やま)一里(いちり)(ばか)(あが)らねばならぬ。040そこが小国別(をくにわけ)(やかた)であつた。041三人(さんにん)はやつと危険区域(きけんくゐき)(のが)れ、042白楊樹(はくやうじゆ)(ふもと)に、043(をり)からさし(のぼ)(つき)(なが)めながら、044(こし)(おろ)して休息(きうそく)した。045(この)(とき)覆面頭巾(ふくめんづきん)黒装束(くろしやうぞく)をした(をとこ)046ノソリノソリと(はるか)(むか)ふの松林(まつばやし)(とほ)るのが()えた。047ヘルは目敏(めざと)(これ)()て、
048ヘル『もし先生(せんせい)049(いま)彼方(あちら)(あや)しの(かげ)(とほ)りましたが、050あれは一体(いつたい)(なん)でせうかな』
051求道(きうだう)『ウン、052あれは泥坊(どろばう)()える。053(なに)(わる)目的(もくてき)(もつ)旅人(たびびと)(かす)めようとやつて()たのだらうが、054先方(せんぱう)一人(ひとり)055此方(こちら)三人(さんにん)だから到底(たうてい)駄目(だめ)だと(おも)うて、056(みち)()れたのであらう。057アア可愛(かあい)さうな(をとこ)だなア。058(この)()(なか)()すべき事業(じげふ)沢山(たくさん)あるに、059どうして泥坊(どろばう)なんかするのか、060どうかして(たす)けてやりたいものだが、061もはや何処(どこ)かへ()つて(しま)つた』
062ヘル『もし先生(せんせい)063もう泥坊(どろばう)(たす)けるのはお()めなさい。064あのベルだつてあの(とほ)りですもの。065ゼネラルさまから沢山(たくさん)のお(かね)(いただ)き、066もう(これ)()泥坊(どろばう)はやらないと()うて()(なが)ら、067まだ精神(せいしん)(なほ)らないのですから、068駄目(だめ)ですよ』
069求道(きうだう)『それでもお(まへ)改心(かいしん)したぢやないか。070ベルのやうな(をとこ)のみはあるまい。071あれでも時節(じせつ)()たならば、072きつと改心(かいしん)するだらう』
073ヘル『そりやさうです。074(わたし)(じつ)はゼネラル(さま)からお(かね)(いただ)き、075これつきり泥坊(どろばう)()めて正業(せいげふ)()かうと(おも)ふて()ましたに、076つい悪友(あくいう)(ため)折角(せつかく)決心(けつしん)(にぶ)り、077益々(ますます)悪事(あくじ)増長(ぞうちよう)して(しまひ)には(ひと)(ころ)し、078(その)天罰(てんばつ)であの()関所(せきしよ)(まで)やられて()たやうな悪人(あくにん)が、079(いま)(やうや)改心(かいしん)して貴方(あなた)のお(とも)するやうになつたのですから、080泥坊(どろばう)だつて改心(かいしん)せないには(かぎ)つて()りませぬ。081(しか)(なが)今日(けふ)はケリナさまを(おく)つて()かねばなりませぬから、082途中(とちう)泥坊(どろばう)出会(であ)つても相手(あひて)にならないやうにして(くだ)さいませや』
083求道(きうだう)『ウン、084承知(しようち)した。085(しか)(なが)らベツタリ出会(であ)つた(とき)にや、086先方(むかふ)改心(かいしん)せうと、087しまいと、088一応(いちおう)訓戒(くんかい)(あた)へねばならぬ。089魔道(まだう)()ちたる人間(にんげん)を、090修験者(しゆげんじや)として見捨(みすて)(わけ)には()かぬからなア』
091ヘル『それもさうですなア。092()()くそんなものに出会(であ)はないやうに、093神様(かみさま)(ねが)つて(まゐ)りませうか』
094ケリナ『もしお二人様(ふたりさま)095あの(あや)しい(かげ)()うも(わたし)はベルのやうに(おも)ひますが、096(ちが)ひませうかな』
097求道(きうだう)『ケリナさまのお(さつ)しの(とほ)りだ。098間違(まちが)ひはありますまい』
099ヘル『エ、100あの(かげ)がベルぢやと仰有(おつしや)るのですか、101そいつは()しからぬ。102吾々(われわれ)疲労(くたぶ)れて野宿(のじゆく)でもせうものなら、103寝込(ねこみ)(かんが)へて先生(せんせい)のお(かね)()らうと()(かんが)へで()よつたのでせう。104仕方(しかた)()(やつ)ですなア』
105求道(きうだう)『ウン仕方(しかた)()(やつ)だ。106何程(なにほど)改心(かいしん)して()ても(かね)(かほ)()ると、107(すぐ)(また)(あく)(かへ)るのが小人(せうじん)(つね)だ。108(まへ)(おれ)(ふところ)()つて()一万両(いちまんりやう)(かね)()しい(こと)()いか』
109ヘル『(べつ)に……たつて()しいとは(まを)しませぬ。110(しか)貴方(あなた)()らうと仰有(おつしや)れば(いただ)きます。111これから修験者(しゆげんじや)になつて世界(せかい)(ある)かうと(おも)へば旅費(りよひ)()りますからなア』
112求道(きうだう)『さうすると矢張(やつぱ)りお(まへ)油断(ゆだん)のならない(をとこ)だ。113トコトンの改心(かいしん)中々(なかなか)出来(でき)ぬものと()えるのう』
114ヘル『人間(にんげん)如何(いか)神様(かみさま)御子(みこ)ぢやと()つても、115天国(てんごく)地獄(ぢごく)との(あひだ)介在(かいざい)して()以上(いじやう)は、116(ぜん)(ばか)りでは到底(たうてい)()()つていく(こと)出来(でき)ませぬ。117内的生活(ないてきせいくわつ)如何(いか)やうにも出来(でき)ませうが、118衣食住(いしよくぢゆう)(ため)(くる)しまねばならぬ肉体(にくたい)は、119多少(たせう)自愛心(じあいしん)必要(ひつえう)(ござ)いますからなア』
120求道(きうだう)刹帝利(せつていり)毘舎(びしや)や、121首陀(しゆだ)なれば、122多少(たせう)自愛(じあい)(こころ)生存中(せいぞんちゆう)必要(ひつえう)だらうが、123最早(もはや)修験者(しゆげんじや)となると(きま)つた以上(いじやう)(かね)などは必要(ひつえう)はない。124(かみ)のまにまに野山(のやま)()し、125(しよく)あれば(しよく)()り、126(しよく)なければ(みづ)()み、127(みづ)()ければ(くさ)でも()んで()くのが修験者(しゆげんじや)(つと)めだ。128一切(いつさい)物欲(ぶつよく)()てねば(かみ)使(つかひ)となる(こと)出来(でき)ないからのう』
129ヘル『成程(なるほど)130(おほ)御尤(ごもつと)もで(ござ)います。131(しか)(なが)貴方(あなた)修験者(しゆげんじや)身分(みぶん)であり(なが)ら、132一万両(いちまんりやう)(かね)()つて()ると仰有(おつしや)つたぢやありませぬか、133どうも仰有(おつしや)(こと)矛盾(ホコトン)して()るやうに(おも)はれてなりませぬがなア』
134求道(きうだう)『ハハハハハ、135(わたし)実際(じつさい)無一物(むいつぶつ)だ。136(しか)(なが)(こころ)(うち)一万両(いちまんりやう)()つて()るのだ。137どうかして(これ)()()したいと(おも)ふて()るが、138まだ罪業(ざいごふ)()たないと()えて除去(ぢよきよ)する(こと)出来(でき)ないのだ。139(おれ)一万両(いちまんりやう)()ふのは、140我慢(がまん)141高慢(かうまん)142自慢(じまん)143忿慢(ふんまん)144慢心(まんしん)()悪竜(あくりう)一匹(いつぴき)(のこ)つて()ると()(こと)なのだ。145(この)一万竜(いちまんりよう)(なん)とかして()()さなくては、146比丘(びく)になつても天地(てんち)(はづ)かしくて仕方(しかた)がないから、147宣伝使(せんでんし)でもなければ俗人(ぞくじん)でも()い、148半聖半俗(はんせいはんぞく)境遇(きやうぐう)彷徨(さまよ)ひ、149修験者(しゆげんじや)となつて()るのだ。150どうぞして御神徳(ごしんとく)(いただ)き、151宣伝使(せんでんし)候補者(こうほしや)にでもなりたいものだが、152仲々(なかなか)容易(ようい)(こと)ではない、153それがために(じつ)(こま)つて()るのだ』
154ヘル『(わたし)(また)本当(ほんたう)のお(かね)一万両(いちまんりやう)懐中(ぽつぽ)()つて(ござ)るのかと、155(かた)(しん)じて()りました。156先生(せんせい)(くち)でこそ恬淡無欲(てんたんむよく)らしう()せて(ござ)るが、157矢張(やつぱ)内心(ないしん)は、158マンモニストだと(おも)つて()たに、159(かたち)(うへ)(たから)(ちつと)()つて()られないのですか。160それで(わたし)疑団(ぎだん)()れました。161ベルの(やつ)本当(ほんたう)貴方(あなた)現金(げんきん)所持(しよぢ)して()ると(おも)ひ、162こんな(ところ)(まで)()いて()たかと(おも)へば可憐(かあい)さうぢやありませぬか』
163ケリナ『ホホホホホ、164ヘルも可憐(かあい)さうぢやありませぬか。165貴方(あなた)だつてベルと八百長喧嘩(やほちやうげんくわ)をして、166(うま)修験者(しゆげんじや)(たぶら)かし、167一万両(いちまんりやう)(かね)()らうと(おも)つて()たのでせう。168そんな(こと)はチヤンと、169(わたくし)先生(せんせい)看破(かんぱ)してゐたのですよ。170この(あたり)諜合(しめしあ)はし、171ボツタクル(かんが)へであつたのでせう』
172求道(きうだう)『アハハハハ、173オイ、174ヘル、175もう駄目(だめ)だ。176俺達(おれたち)(まへ)にはどんな(あく)(ほどこ)すの余地(よち)がないぞ。177本当(ほんたう)改心(かいしん)するか、178どうだ』
179ヘル『ヘン馬鹿(ばか)らしい、180素寒貧(すかんぴん)(もん)なしに()いて()たかと(おも)へば業腹(ごふはら)だ。181オーイ、182ベル一寸(ちよつと)()い、183此奴(こいつ)はあんな(こと)()やがつて一万両(いちまんりやう)()つてけつかるに(ちが)ひない、184(はや)()い、185ヤーイ』
186呶鳴(どな)()した。187(たちま)()けて()たベルは威猛高(ゐたけだか)になり、
188ベル『アハハハハ、189(いま)(まで)はバラモン(ぐん)上官(じやうくわん)で、190カーネル カーネルと尊敬(そんけい)して()たが、191もうそんな(ざま)になつて零落(おちぶれ)()以上(いじやう)一個(いつこ)修験者(しゆげんじや)だ。192サア綺麗(きれい)薩張(さつぱ)りと(ふところ)(かね)(わた)せばよし、193グヅグヅ(ぬか)すと肝腎要(かんじんかなめ)(いのち)(あぶ)ないぞ。194サアどうだ、195返答(へんたふ)()かう』
196求道(きうだう)『ハハハハハ、197(わか)らん(やつ)だなア、198(おれ)(からだ)何処(どこ)なりと調(しら)べて()よ、199一文(いちもん)()つて()やしないわ』
200ベル『そんなら(はや)裸体(はだか)になつて()せろ』
201 求道(きうだう)はムクムクと真裸体(まつぱだか)になり、202(うす)着物(きもの)をはたき(なが)ら、203二人(ふたり)(まへ)()()した。
204ヘル『ハハア、205矢張(やつぱ)駄目(だめ)だな。206(しか)(なが)らこのナイスをどうしても自分(じぶん)(もの)にせなくては(うそ)だ。207それについては(この)修験者(しゆげんじや)()ると何彼(なにか)邪魔(じやま)になる。208サア(ついで)バラさうぢやないか』
209 求道(きうだう)(しき)りに(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)(はじ)めた。210ヘル、211ベルの両人(りやうにん)(すこ)しも頓着(とんちやく)せず、212ベルの()つて()二本(にほん)棒千切(ぼうちぎれ)()つて双方(さうはう)より()つてかかる。213ケリナは白楊樹(はくやうじゆ)()きついて(ふる)うて()る。214求道居士(きうだうこじ)真裸体(まつぱだか)のまま一生懸命(いつしやうけんめい)(ふせ)(たたか)うた。215されど一本(いつぽん)木切(きぎれ)()つて()ない真裸体(まつぱだか)求道(きうだう)は、216二人(ふたり)(ため)()のめされ(その)()絶命(ことぎれ)となつて(しま)つた。217両人(りやうにん)(ひや)やかに(わら)(なが)ら、
218『アハハハハ、219どうやらこれで俺達(おれたち)にもハツピネスが見舞(みま)うて()たらしい。220サア(これ)からがナイスの(ばん)だ。221(なん)()つても()うなれば此方(こつち)自由(じいう)だ。222オイ、223ケリナとやら、224俺達(おれたち)二人(ふたり)意志(いし)(したが)ふかどうだ』
225ケリナ『肝腎(かんじん)修験者(しゆげんじや)(まで)が、226(この)(とほ)りなられたので(ござ)いますから、227(をんな)細腕(ほそうで)抵抗(ていかう)して()(ところ)仕様(しやう)(ござ)いませぬ。228御意見(ごいけん)(したが)ひませう、229(しか)しラマ(けう)のやうに多夫一妻主義(たふいつさいしゆぎ)はどうも面白(おもしろ)(ござ)いませぬ。230何方(どちら)かお一人(ひとり)(ねが)()いもので(ござ)いますなア』
231ベル『成程(なるほど)(まへ)()ふのも(もつと)もだ。232まだお(まへ)はバージン姿(すがた)だから到底(たうてい)(たれ)(すき)だの(きら)ひだのと()(こと)はよう()ふまいから、233(ひと)(ここ)俺達(おれたち)二人(ふたり)抽籤(ちうせん)をやつて、234(いち)()(はう)がお(まへ)女房(にようばう)にすると()(こと)()めようかなア』
235ケリナ『物品(ぶつぴん)(なに)かのやうに抽籤(ちうせん)とは(あま)りぢや(ござ)いませぬか、236どうか(わたくし)(えら)まして(いただ)(わけ)には()きますまいかなア』
237ベル『ウン、238それも一方法(いちはうはふ)だ。239善悪美醜(ぜんあくびしう)をトランセンドして、240(まへ)本守護神(ほんしゆごじん)得心(とくしん)した(はう)()いたが()からう。241スタイルは(みにく)うても(こころ)綺麗(きれい)(をとこ)らしい(をとこ)もあり、242何程(なにほど)スタイルは()くても、243(こころ)(きたな)卑劣(ひれつ)(をとこ)もあるからなア、244そこはそれ選択(せんたく)(あやま)らない(やう)にしたがよろしからうぞ』
245ケリナ『そりやさうで(ござ)いますな。246(なん)()つても(をとこ)らしい(をとこ)で、247何処(どこ)ともなしに同情心(どうじやうしん)のある(やさ)()のある(かた)()きですわ、248(ひと)(たた)(ころ)して()けてもやらないやうな(かた)絶対(ぜつたい)(きら)ひです』
249ベル『成程(なるほど)(おれ)最前(さいぜん)からヘルの(ぼう)(あた)つて()んだ修験者(しゆげんじや)同情(どうじやう)(なみだ)(そそ)いで、250どうか死骸(しがい)でも(かく)して()()いと(おも)うて()(ところ)だ。251(あま)(つま)選択(せんたく)()いて()()られて()つたものだからウツかりして()た。252(これ)もお(まへ)(あい)する(こころ)(ふか)いのだから、253(けつ)して(わる)くは(おも)うて(くだ)さるな』
254ケリナ『(をんな)美貌(びばう)(うつつ)()かして仮令(たとへ)ヘルが(ころ)したにもせよ、255死屍(しし)(よこ)たはつて()るのを()(かく)してやらうともせぬ(をとこ)(きら)ひですわ、256(まへ)(ぼう)(あた)つて()ななくても(おな)(こと)ですよ。257矢張(やつぱ)二人(ふたり)して(ころ)すといふ(かんが)へだつたのでせう。258(おな)悪人(あくにん)()(まか)(ほど)なら、259スタイルの(うつく)しいヘルさまに()(まか)しますわ』
260ヘル『エヘヘヘヘ、261オイ、262ベルどうだ、263(こひ)凱旋将軍様(がいせんしやうぐんさま)だ。264(おそ)()つたか』
265ベル『ヘン馬鹿(ばか)にするない、266(いろ)年増(としま)(とど)()す」と()つて最後(さいご)勝利(しようり)(おれ)()(にぎ)つて()るのだ』
267ヘル『馬鹿(ばか)()へ、268御本人(ごほんにん)承諾(しようだく)しない(こひ)(なん)になるか、269生憎様(あいにくさま)だ、270イヒヒヒヒ』
271ケリナ『ホホホホホ、272(そろ)ひも(そろ)ふたデレ(どろ)(こと)273(たれ)がお(まへ)のやうな馬鹿者(ばかもの)()(まか)すものがありますか、274よい加減(かげん)自惚(うぬぼれ)をして()きなさい』
275ベル『オイ、276何程(なにほど)美人(びじん)だと()つてもこれだけ侮辱(ぶじよく)せられては、277女房(にようばう)にする(わけ)にも馬鹿(ばか)らしくて出来(でき)ぬぢやないか、278(ついで)此奴(こいつ)一緒(いつしよ)にバラしてやらうかい』
279ヘル『ウンさうだ。280かう愛想(あいさう)()かしを()はれては()やうがない。281(をんな)世界(せかい)幾人(いくら)でもある。282(この)(をんな)()かして()いては修験者(しゆげんじや)(ころ)したのは俺達(おれたち)だと()つて(もら)うと、283(ちつと)(ばか)剣呑(けんのん)だから、284やつつけて仕舞(しま)はうよ』
285 ベルは、
286『よし合点(がつてん)だ』
287矢庭(やには)棒千切(ぼうちぎれ)をもつて()つてかかる。288ケリナは白楊樹(はくやうじゆ)(たて)()つて()(のが)れようとする。289ヘルは(また)もや棒千切(ぼうちぎれ)をもつて脳天(なうてん)目蒐(めが)けて()(おろ)した。290(あはれ)やケリナはキヤツと悲鳴(ひめい)()(その)()()(たふ)れた。291()(とき)(てん)(こが)して(くだ)()一大火光(いちだいくわくわう)があつた、292二人(ふたり)(おどろ)いて(くも)(かすみ)森林(しんりん)(なか)()げて()く。293火団(くわだん)(たちま)二人(ふたり)(たふ)れて()(まへ)降下(かうか)した。294(これ)第一霊国(だいいちれいごく)より月照彦命(つきてるひこのみこと)が、295二人(ふたり)危難(きなん)(すく)ふべく(かみ)(めい)()びて(くだ)られたのである。296二人(ふたり)(やうや)火団(くわだん)落下(らくか)した(おと)()()き、297四辺(あたり)()れば、298桃色(ももいろ)薄絹(うすぎぬ)(ちやく)した(うるは)しきエンゼルが()つて()る。299求道居士(きうだうこじ)拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)して救命(きうめい)(おん)感謝(かんしや)した。300ケリナも(また)エンゼルを(をが)一言(ひとこと)(はつ)せず、301(うれ)(なみだ)にかき()れて()る。302エンゼルは言葉(ことば)(しづか)両人(りやうにん)(むか)ひ、
303エンゼル『汝等(なんぢら)両人(りやうにん)304(かみ)大道(だいだう)(あやま)らず、305()をもつて(みち)(ため)(じゆん)じたる(その)(こころざし)見上(みあ)げたものだ。306(その)(はう)(こころざし)(めん)じ、307霊国(れいごく)より汝等(なんぢら)(すく)ふべく(くだ)つて()た。308(われ)月照彦神(つきてるひこのかみ)なり。309随分(ずいぶん)()をつけてテルモン(ざん)(かへ)つたがよからう。310それ(まで)に、311一度(いちど)(こころ)みに()(こと)があるだらう。312屹度(きつと)自分(じぶん)(いのち)(をし)むやうな(こと)では()(すく)(こと)出来(でき)ないから、313何事(なにごと)(かみ)(まか)して(すく)ひの(みち)(ひら)いたらよからう。314さらば』
315一言(ひとこと)(のこ)し、316(むらさき)(くも)()つて(ひがし)(そら)()して(かへ)らせたまふた。317二人(ふたり)後姿(うしろすがた)伏拝(ふしをが)み、318感謝(かんしや)(なみだ)()れつつ、319(あま)数歌(かずうた)(とな)へながらテルモン(ざん)()して(かへ)()く。
320赤心(まごころ)(つらぬ)(とほ)(くは)(ゆみ)
321(とど)かざらめや(かみ)御国(みくに)へ。
322大正一二・三・一六 旧一・二九 於竜宮館 加藤明子録)