霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 不動滝(ふどうたき)〔一四四三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第3篇 月照荒野 よみ:げっしょうこうや
章:第13章 不動滝 よみ:ふどうたき 通し章番号:1443
口述日:1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:184頁 八幡書店版:第10輯 214頁 修補版: 校定版:195頁 普及版:88頁 初版: ページ備考:
001テルモン(ざん)峰続(みねつづ)
002(やま)一面(いちめん)鬱蒼(うつさう)
003巨木(きよぼく)(しげ)れるスガの(やま)
004(てん)(ふう)じて谷間(たにあひ)
005(ひる)さへ(くら)濛々(もうもう)
006(なつ)(ふゆ)との区別(くべつ)なく
007(きり)()(のぼ)秘密郷(ひみつきやう)
008(てん)より(ぬの)(さら)したる
009(ごと)くに()ゆる大滝(おほたき)
010アン・ブラツク(だき)といひ
011物凄(ものすさま)じき(みづ)(おと)
012(もも)(いかづち)一時(いちどき)
013(とどろ)(ごと)(きこ)()
014かかる(ところ)へスタスタと
015()()(かよ)(をんな)あり
016バラモン(けう)神司(かむづかさ)
017テルモン(ざん)(やかた)をば
018(きづ)きて(をしへ)(ひら)()
019小国別(をくにわけ)愛娘(まなむすめ)
020デビスの(ひめ)(わが)(ちち)
021(おも)(やまひ)(すく)はむと
022一人(ひとり)(いもうと)(わか)れたる
023(その)(かな)しさに()(わす)
024(ちち)(やまひ)(いもうと)
025無事(ぶじ)(いの)りて(すす)()
026(つき)御空(みそら)皎々(かうかう)
027(かがや)(わた)下界(げかい)をば
028(くま)なく()らし(たま)へども
029(この)(たき)のみは老木(らうぼく)
030(えだ)(かげ)をば(さへぎ)られ
031(ただ)滝水(たきみづ)のうす(じろ)
032(わが)()にとまる(ばか)りなり
033デビスの(ひめ)(たちま)ちに
034(きぬ)()ぎすてて滝壺(たきつぼ)
035ザンブと(ばか)飛込(とびこ)んで
036一心不乱(いつしんふらん)にバラモンの
037呪文(じゆもん)(とな)(いの)()
038(その)心根(こころね)殊勝(しゆしよう)なれ
039かかる(ところ)へスタスタと
040(あわ)てふためき(はし)()
041(あや)しの(かげ)(ただ)(ふた)
042足音(あしおと)(しの)ばせ(しの)()
043(やみ)浮出(うきで)(しろ)(はだ)
044(なが)めて(たがひ)(ささや)きつ
045デビスの(ひめ)滝壺(たきつぼ)
046あがり(きた)るを()ちにける
047これぞベル、ヘル両人(りやうにん)
048月照彦(つきてるひこ)神霊(しんれい)
049御稜威(みいづ)(おそ)修験者(しゆげんじや)
050ケリナの(ひめ)振棄(ふりす)てて
051(いのち)カラガラ()(きた)
052(その)(みち)すがら何気(なにげ)なく
053(たに)水音(みなおと)たよりにて
054(たづ)(きた)りし(もの)ぞかし。
055 スガ(さん)谷間(たにあひ)(この)界隈(かいわい)にても目立(めだ)つて大木(たいぼく)繁茂(はんも)せる、056(あま)(たか)からざる密林(みつりん)であつて、057二十丈(にじふぢやう)三十丈(さんじふぢやう)(みき)のまわつた大木(たいぼく)(てん)(ふう)じ、058(ひる)さへ(くら)(すご)(やう)場所(ばしよ)である。059そしてテルモン(ざん)谷水(たにみづ)一切(いつさい)ここに(あつ)めて大瀑布(だいばくふ)をなし、060(たか)数百丈(すうひやくぢやう)(およ)び、061白布(しろぬの)(てん)から()(おろ)した(やう)になつてゐる。062(この)地点(ちてん)殺生(せつしやう)禁断(きんだん)場所(ばしよ)であり、063アン・ブラツク明王(みやうわう)(たき)(そば)(まつ)られてある。064されど国人(くにびと)(おそ)れて(この)滝壺(たきつぼ)(ちか)よつた(もの)はない。065種々(いろいろ)雑多(ざつた)猛獣(まうじう)蚖蛇(ぐわんだ)などが沢山(たくさん)棲息(せいそく)し、066一歩(いつぽ)たり(とも)067スガ(さん)森林(しんりん)(あし)()()れたる(もの)()きて(かへ)つた(もの)()いと()つて(おそ)れられてゐた。068雨傘(あまがさ)(ひろ)げた(やう)蝙蝠(かうもり)(たき)近辺(きんぺん)真黒(まつくろ)になつてバタバタと()()ひ、069(ひる)大木(たいぼく)朽穴(くちあな)()(かく)し、070()暮頃(くれごろ)から、071ソロソロ活動(くわつどう)(はじ)めるのである。
072 デビス(ひめ)浄行(じやうぎやう)(いへ)(うま)れた淑女(しゆくぢよ)なるにも(かかは)らず、073自分(じぶん)(いのち)(まと)()()(かよ)(きた)つて、074老病(らうびやう)(くるし)(ちち)全快(ぜんくわい)(いの)り、075(かつ)三歳前(みとせまへ)姿(すがた)(かく)した(いもうと)ケリナ(ひめ)無事(ぶじ)(かへ)(きた)らむことを、076アン・ブラツク明王(みやうわう)(まへ)(いの)るべく、077危険(きけん)(をか)して()()(かよ)(きた)り、078(ふか)滝壺(たきつぼ)()(とう)じて荒行(あらぎやう)をやつてゐたのである。079そこへ求道居士(きうだうこじ)080ケリナ(ひめ)(なぐ)(ころ)して姿(すがた)(かく)さうとしてゐる矢先(やさき)081(てん)一方(いつぱう)より大火光(だいくわくわう)となつて、082月照彦神(つきてるひこのかみ)のエンゼル(あら)はれ(きた)り、083求道居士(きうだうこじ)084ケリナ(ひめ)(よみがへ)らせ(たま)うた。085ベル、086ヘルの両人(りやうにん)(この)火団(くわだん)爆発(ばくはつ)した(おと)(きも)(つぶ)し、087スガ(さん)谷間(たにあひ)(おそ)ろしい(こと)承知(しようち)(なが)らも、088(あま)りの(おどろ)きに()()(うしな)ひ、089(やま)()(のぼ)つて、090(この)(たき)(ふもと)(やうや)()げて()たのである。091滝水(たきみづ)(おと)轟々(ぐわうぐわう)(さわ)がしく、092デビス(ひめ)(いの)(こゑ)()()(こと)出来(でき)なかつた。
093 ベル、094ヘルの両人(りやうにん)()かる深林(しんりん)夜中(やちう)095繊弱(かよわ)(をんな)荒行(あらぎやう)()()るとは(おも)ひもよらないので、096不審(ふしん)()へやらず、097(もし)妖怪(えうくわい)にはあらざるかと、098()()をガタガタさせ(なが)ら、099(たき)(ちか)くへ()つたものの、100気味悪(きみわる)(たがひ)()きついて(ふる)うてゐた。
101 デビス(ひめ)一生懸命(いつしやうけんめい)祈願(きぐわん)をしてゐたので、102二人(ふたり)(をとこ)(ちか)くに()()(こと)(ゆめ)にも()らず、103()れた(からだ)水気(すいき)()()り、104立派(りつぱ)衣類(いるゐ)着替(きか)へて、105(なれ)(みち)をスタスタと(かへ)つて()く。106(こは)(もの)()たさの(たとへ)()れず両人(りやうにん)は、107(あと)(した)うて十間(じつけん)(ばか)距離(きより)(たも)()いて()つた。108(をんな)(やうや)くにして(つき)()(わた)野原(のはら)()た。109此処(ここ)には天拝石(てんぱいせき)()つて、110一間四方(いつけんしはう)(ばか)りの長方形(ちやうはうけい)(けづ)つた(やう)天然岩(てんねんいは)がある。111デビス(ひめ)(その)(いは)真中(まんなか)にキチンと(すわ)り、112(ふたた)祈願(きぐわん)()めた。113ベル、114ヘルの両人(りやうにん)(こし)(かが)め、115茫々(ばうばう)たる草原(くさはら)(くぐ)(なが)ら、116ソツと(かたはら)()(くさ)(しげ)みに()(かく)して様子(やうす)(かんが)へてゐた。
117 デビス(ひめ)月光(げつくわう)(むか)つて双手(もろて)(あは)(いの)(はじ)めたり。
118南無(なむ)大自在天(だいじざいてん)バラモン大神様(おほかみさま)119(わたくし)丁度(ちやうど)今日(こんにち)にて三七廿一日(さんしちにじふいちにち)荒行(あらぎやう)無事(ぶじ)(をは)りました。120何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)大黒主(おほくろぬし)神司(かむつかさ)より(ちち)(あづ)かりました如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)が、121一日(いちにち)(はや)発見(はつけん)されまして、122大黒主(おほくろぬし)(さま)御勘気(ごかんき)(ゆる)されまする(やう)に、123(また)(ちち)(いもうと)行衛不明(ゆくゑふめい)となりしより心配(しんぱい)(いた)し、124それが()めに(おも)(やまひ)(とこ)()し、125(めい)旦夕(たんせき)(せま)つて()りまする。126何卒(どうぞ)(わたくし)(こころ)(あはれ)(くだ)さいまして、127(ちち)(やまひ)全快(ぜんくわい)させ、128(こひ)しき(いもうと)()はして(くだ)さいませ。129そして如意宝珠(によいほつしゆ)神宝(しんぱう)一時(いつとき)(はや)(やかた)へ、130何者(なにもの)かの()()(かへ)つて(まゐ)ります(やう)に、131御恵(みめぐみ)()(たま)はむことを、132(ひとへ)御願(おねがひ)(まをし)(たてまつ)ります。133(つき)大神様(おほかみさま)御姿(みすがた)(はい)するにつけ、134(その)円満(ゑんまん)なるお姿(すがた)にも(ひと)しき如意宝珠(によいほつしゆ)神宝(しんぽう)(おも)()されて(まゐ)ります。135あの神宝(しんぽう)()(とき)は、136テルモン(ざん)神館(かむやかた)暗夜(あんや)同様(どうやう)(ござ)います。137何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)(わたくし)(いのち)はお召取(めしとり)になつても(かま)ひませぬから、138何卒(どうぞ)(この)(みつ)つの(ねがひ)はお()(とど)(くだ)さいます(やう)に……』
139一心不乱(いつしんふらん)祈願(きぐわん)()めてゐる。140ベル、141ヘルの両人(りやうにん)(はじ)めて(この)(をんな)素性(すじやう)聞知(ききし)り、142(むね)()(おろ)し、143(また)もやソロソロ横着心(わうちやくしん)(おこ)し、144(をんな)赤裸(まつぱだか)にして多少(たせう)財産(ざいさん)()()れむと(かんが)()んだ。145デビスの(あたま)(からだ)には金剛石(こんごうせき)珊瑚珠(さんごじゆ)146瑠璃(るり)147瑪瑙(めなう)148硨磲(しやこ)(など)宝玉(はうぎよく)(かざ)られ、149折柄(をりから)月光(げつくわう)(えい)じて(はな)(ごと)(ひか)つてゐる。150(これ)(なが)めた両人(りやうにん)(ねこ)松魚節(かつをぶし)()せたやうに、151(のど)をゴロゴロならし、152よき獲物(えもの)(ござ)んなれと(みみ)(くち)()せ、
153ベル『オイ、154ヘル、155素的滅法界(すてきめつぱふかい)なナイスぢやないか。156そしてあの(あたま)から(からだ)(ひか)つてゐる宝石(はうせき)随分(ずいぶん)高価(かうか)(もの)だらうよ。157ここで(ひと)(あく)仕納(しをさ)めに、158彼奴(あいつ)赤裸(まつぱだか)にして、159持物(もちもの)一切(いつさい)(うば)()り、160それを()つて国許(くにもと)(かへ)り、161故郷(こきやう)(にしき)(かざ)らうぢやないか。162さうすればバラモン(ぐん)解散(かいさん)になり、163(はら)(ばこ)になつたと(わら)はれる(こと)もあるまい。164人間(にんげん)はどうでもよい、165成功(せいこう)さへすれば(ひと)()めるのだからなア。166こんな()機会(きくわい)(また)とあるまいぞ』
167ヘル『どうも(なん)だか、168(からだ)がビリビリと(うご)()して()た。169(おれ)やモウ泥坊(どろばう)廃業(はいげふ)する。170何程(なにほど)高価(かうか)(もの)でも()しくはないワ。171(あたま)(うへ)から皎々(かうかう)たる(つき)大神(おほかみ)が、172吾々(われわれ)行動(かうどう)看視(かんし)してゐられるやうに(おも)へて、173(おそ)ろしくなつて()たよ。174(まへ)()しけら、175あのナイスに事情(じじやう)をあけて、176(たの)んで(もら)つたら如何(どう)だ』
177ベル『エー、178腰抜(こしぬけ)だなア。179さうだから惚泥(でれどろ)()はれるのだ。180そんなら(きさま)181ここで(おれ)腕前(うでまへ)拝見(はいけん)してゐよ、182(その)(かは)りに、183(おれ)()つたら(ひと)つも(きさま)分配(ぶんぱい)せぬから、184承知(しようち)だらうな』
185ヘル『ウン承知(しようち)だ、186(しか)しベル、187余程(よつぽど)(かんが)へてやらないと、188どんな()()ふか()れぬぞ。189どこともなしに彼奴(あいつ)(からだ)から御光(ごくわう)がさして()るぢやないか、190(おれ)やどうしても(かみ)さまのやうに(おも)はれて、191(からだ)がすくむ(やう)だ』
192ベル『(ひか)つてゐるのが価値(ねうち)だ。193彼奴(あいつ)をスツカリ()()れやうものなら、194(なに)十万両(じふまんりやう)とも()れぬ価値(ねうち)(もの)だ。195(きさま)余程(よつぽど)()腰抜(こしぬ)けだなア。196()(まへ)にブラ(さが)つてる(たから)()()見捨(みすて)るのか。197冥加(みやうが)()らず()198そんなら、199そこに少時(しばらく)(まむし)のやうに蟄伏(ちつぷく)して()れ』
200()(なが)ら、201ツカツカとデビス(ひめ)祈願(きぐわん)してる(まへ)立現(たちあら)はれ、
202ベル『オイ、203どこの女中(ぢよちう)()らぬが、204(なが)(たび)(いた)(うち)205盗賊(たうぞく)出会(であ)ひ、206有金(ありがね)をスツカリと(うば)()られ、207(いま)是非(ぜひ)なく乞食(こじき)(やう)になつて道中(だうちう)をしてゐるのだ。208(これ)から(つき)(くに)(まで)(かへ)らなくてはならない。209どうかお(まへ)(あたま)(ひか)つてゐる(もの)(ふた)()ツつ此方(こちら)(わた)して(くだ)さるまいか』
210 デビスは(この)(こゑ)(おどろ)いて、211祈願(きぐわん)()をやめ、212月影(つきかげ)によくよく(すか)して()れば、213(あら)くれ(をとこ)一人(ひとり)214自分(じぶん)(すわ)つてゐる(すこ)横手(よこて)立塞(たちふさ)がつてゐる。
215デビス『お(まへ)はどこの旅人(たびびと)()らぬが、216(いま)(わたし)(あたま)(もの)をくれと()つたやうだが、217(これ)()うしても()げる(わけ)には()きませぬ。218体中(からだぢう)宝石(はうせき)をつけてゐるのは、219悪魔(あくま)(ふせ)禁厭(まじなひ)ですから、220まだ(これ)から(わが)()(かへ)るのには、221一寸(ちよつと)二里(にり)(ばか)りも道程(みちのり)がある。222(よる)(みち)(かへ)るのは危険(きけん)だから、223たつて()しいのなれば(あらた)めて()(くだ)さい。224(わたし)(うち)はテルモン(ざん)神館(かむやかた)(ござ)います』
225ベル『ナニツ、226(まへ)はあのテルモン(ざん)霊地(れいち)小国別(をくにわけ)(さま)(むすめ)といふのか、227ヤアそりや(めう)(えん)だ。228拙者(せつしや)()()えてもバラモン(ぐん)征夷大将軍(せいいたいしやうぐん)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(ござ)るぞ』
229デビス『ホホホホ鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)さまは沢山(たくさん)軍隊(ぐんたい)()れて堂々(だうだう)とお()(あそ)ばすぢやありませぬか。230最前(さいぜん)(なん)()ひました……長途(ちやうと)(たび)231泥坊(どろばう)出会(であ)ひ、232(かね)をスツカリ()られたから(あたま)(もの)でもくれい……と()つたでせう。233鬼春別(おにはるわけ)ともあらう(はう)が、234(ただ)一人(ひとり)(ある)いたり、235(ぞく)持物(もちもの)()られたりする(やう)(こと)がありませうか。236(まへ)胡麻(ごま)(はへ)だらう。237サア、238()るなら()つて御覧(ごらん)239(をんな)(なが)らも(うで)(おぼえ)がありますぞや』
240ベル『(じつ)(ところ)鬼春別(おにはるわけ)間違(まちが)ひは()いのだ。241三五教(あななひけう)軍勢(ぐんぜい)十万騎(じふまんき)(もつ)(わが)陣屋(ぢんや)押寄(おしよ)(きた)り、242味方(みかた)(わづか)三千余騎(さんぜんよき)243それも大部分(だいぶぶん)脚気(かつけ)(わづら)ひ、244(ほとん)戦場(せんぢやう)()(もの)二三百人(にさんびやくにん)(ばか)り、245如何(いか)勇猛(ゆうまう)なる鬼春別(おにはるわけ)(わづか)三百(さんびやく)手兵(しゆへい)(もつ)十万(じふまん)(てき)(たい)するのだから、246天地(てんち)道理上(だうりじやう)247()むを()味方(みかた)(のこ)らず討死(うちじに)し、248自分(じぶん)(かみ)(たす)けによつて、249(やうや)(いのち)(たす)かり、250此処(ここ)まで落伸(おちの)びて()たのだ。251鬼春別(おにはるわけ)間違(まちが)ひは(ござ)らぬぞや』
252デビス『鬼春別(おにはるわけ)(さま)間違(まちが)ひなければ、253何卒(どうぞ)(わたし)(やかた)(まで)()(くだ)さいませ、254自分(じぶん)(からだ)につけてる宝石(はうせき)(ぐらゐ)(もの)(かず)でも(ござ)いませぬ。255諸方(しよはう)から(みつ)いで()種々(いろいろ)宝物(はうもつ)(やま)(ほど)(ござ)いますから、256そして(また)(ちち)鬼春別(おにはるわけ)(さま)がお(いで)になれば(よろこ)(こと)でせう。257何卒(どうぞ)(わたし)一緒(いつしよ)()(もら)ひたいものですな』
258偽者(にせもの)とは()(なが)ら、259ワザと()()いて()た。260そしてデビスは自分(じぶん)(やかた)(ちか)くに()つた(とき)に、261部下(ぶか)(めい)じて(この)泥坊(どろばう)捕縛(ほばく)し、262()らしめて改心(かいしん)させむと刹那(せつな)(かんが)へた。263ベルは(やかた)()つては直様(すぐさま)バケが(あら)はれると(おも)ひ、264焼糞(やけくそ)になり、
265ベル『エー、266(じつ)(ところ)天下(てんか)()れての泥坊様(どろばうさま)だ。267サアここで(なに)もかもお(まへ)(からだ)附着(ふちやく)してゐる(もの)受取(うけと)らう。268ゴテゴテ(まを)すと大切(たいせつ)(いのち)(まで)()つて(しま)ふが()うだ』
269 ヘルは(おも)はず()らず(くさ)(なか)から、
270ヘル『オイ、271ベル、272そんな無茶(むちや)(こと)()ふない。273それ(ほど)()しけりや(ひと)(だけ)頂戴(ちやうだい)したらどうだ』
274()んでゐる。275ベルはハツとし(なが)ら、
276『アハン アハン』
277(おほ)きな咳払(せきばらひ)(まぎ)らし、278ヘルの(こゑ)()さうとした。279デビスは(はや)くもまだ(ほか)一人(ひとり)卑怯(ひけふ)泥坊(どろばう)(ひそ)んでゐる(こと)(さと)つた。
280デビス『ホツホホホホ、281腰抜泥坊(こしぬけどろばう)だこと、282(ひと)(だけ)頂戴(ちやうだい)せいなどと、283()した(なさけ)ないシミツタレた(こと)をいふのだらう。284(いのち)()しけりや(いのち)もやらう。285宝石(はうせき)()しければ()らぬ(こと)もない。286(しか)(なが)此方(こちら)生物(いきもの)だから、287チツと(ばか)(うご)きますから、288跳飛(はねと)ばされぬやうになさいませや』
289ベル『エー、290モウ駄目(だめ)だ。291コラ、292ヘルの(やつ)293(きさま)もやつて()んかい。294戦利品(せんりひん)山分(やまわ)けだ』
295ヘル『(おれ)モウそんな殺生(せつしやう)(こと)はしたくないワ、296(また)(てん)から(ひか)つて()たら()うする。297ダイヤモンドでも(なん)でも、298(おれ)モウ(ひか)るものには懲々(こりごり)だ』
299デビス『ホホホホ、300(こし)(よわ)泥坊(どろばう)(ばか)()つたものだなア。301(しか)(なが)其処辺(そこら)(ふる)つてる腰抜泥坊(こしぬけどろばう)302(まへ)可愛想(かあいさう)(やつ)だ。303こんな(やつ)にやるのは(をし)いが、304(まへ)になら宝石(はうせき)もやらうし、305(からだ)()しけら(からだ)(まか)してやるから、306そんな草原(くさはら)螽斯(ばつた)()うにスツ()んでをらずに、307トツトと此処(ここ)()()なさい』
308 ヘルは大胆不敵(だいたんふてき)(をんな)言葉(ことば)度肝(どぎも)()かれ、309(こし)をぬかしてバタリと平太(へたば)つたまま(ふる)うてゐる。
310ベル『エー、311腰抜(こしぬけ)()312()(よわ)(こと)(ばか)りぬかしやがつて、313(たす)けになる(どころ)商売(しやうばい)邪魔(じやま)(ばか)りする(やつ)だ。314タカが(をんな)一人(ひとり)315何程(なにほど)()()いてると()つても()れたものだ。316オイ(をんな)317(わた)すのが(いや)なら(おれ)直接(ちよくせつ)()つてやる、318神妙(しんめう)にしろ』
319()(なが)猿臂(ゑんぴ)()ばして、320(あたま)(ひか)宝石(はうせき)をグツと(つか)みかけた。321デビスは(その)()をグツと(にぎ)り、322日頃(ひごろ)(きた)えし柔術(じうじゆつ)()(もつ)て、323三間(さんげん)(ばか)(くさ)(ぱら)()()けた。324ベルは死武者(しにむしや)になつて、325(をんな)(くら)ひつき(のど)()めようとした。326ベルも(すこ)(ばか)()()いてゐたが、327到底(たうてい)デビスには(かな)はない。328(しか)(なが)宝石(はうせき)(まなこ)(くら)んで、329自分(じぶん)(あやふ)(こと)(わす)れ、330一生懸命(いつしやうけんめい)()られては()()()られては()()き、331(ほとん)十二三回(じふにさんくわい)()げられ、332グタグタになつた。333それでもまだ性懲(しやうこり)もなく、334(あたま)(からだ)宝石(はうせき)(ひかり)目当(めあて)(くら)ひつく。335デビスは『エー面倒(めんだう)』と(いは)飛下(とびお)り、336武者振(むしやぶ)りつくベルの胸倉(むなぐら)をグツと()り、337(いき)()めた。338ベルは手足(てあし)藻掻(もが)きヂタバタとやつてゐる。339流石(さすが)のヘルも何時(いつ)(まで)戦慄(せんりつ)して(くさ)(なか)伏艇(ふくてい)してる(わけ)にも()かず、340(かたはら)()ちてゐた(なかば)()ちたる棒杭(ぼうぐひ)(つき)()らされて(ひか)つてゐるのを()つけ()し、341デビスがベルの(くび)()めてゐる背後(うしろ)から、342脳天(なうてん)目蒐(めが)けて(ちから)一杯(いつぱい)打下(うちおろ)した。343手許(てもと)(はづ)れて(みみ)から(よこ)(つら)をウンと()(ほど)(なぐ)りつけた。344(あはれ)やデビスはアツと一声(ひとこゑ)(さけ)んで(もろ)くも(その)()(たふ)れて(しま)つた。345夜嵐(よあらし)遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく(おと)()てて(とほ)つて()く。
346大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 松村真澄録)