霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 猫背(ねこぜ)〔一四四五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第4篇 三五開道 よみ(新仮名遣い):あなないかいどう
章:第15章 猫背 よみ(新仮名遣い):ねこぜ 通し章番号:1445
口述日:1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玉国別の一行は、ライオン河を渡るやバラモン軍の残党に襲われ、伊太彦は槍に刺されて傷を負い生死のほどもわからなくなり、玉国別と真純彦もどこに行ったかわからなくなってしまった。三千彦は一人先に進み、テルモン山のアン・ブラック川までやってきた。
三千彦は師や仲間たちの無事を神様に祈っている。このときにわかに強い川風が吹いて、堤の上にいた三千彦は泥田の中に転げ込んでしまった。泥にはまって苦しむ三千彦を、霊犬スマートが救い上げた。これは初稚姫が三千彦の難儀を前知して、救援に向かわせたのであった。
三千彦の着物にはヒルが喰いついてはなれない。困っていると、スマートがバラモン教の宣伝使服をくわえてきた。三千彦はこれも神様の思し召しだろうと、服を着てバラモン教の宣伝使の格好になった。スマートはすでにはるか遠くの山を駆け上って行ってしまった。
三千彦はバラモンの経文を唱えながら進んで行く。するとテルモン山の神館を守る小国別の妻・小国姫と名乗る老婆の一行に出会った。小国姫は三千彦を館に招いた。
名を尋ねられた三千彦は、自分は鬼春別の軍に同行していた従軍宣伝使であったが、鬼春別敗北よりここまで逃げてきたと身の上を語り、とっさに名前を川から取ってアン・ブラックと名乗った。
小国姫は、アン・ブラック川の岸辺に行けば自分を助けてくれる真人に会える、という夢のお告げがあったことを語り、川と同じ名前の宣伝使に会えたことを喜んだ。
三千彦の背中にはいつのまにか、ブクブクとしたこぶができて猫背のようになっていた。案内されて館に入ると、いつの間にか猫背は元のとおりに直っていた。これはスマートの霊が三千彦を無事に館内に送り、かつその身辺を守るためであった。スマートは館の床下に隠れて守っている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5615
愛善世界社版:219頁 八幡書店版:第10輯 227頁 修補版: 校定版:231頁 普及版:104頁 初版: ページ備考:
001三千彦(みちひこ)(いづ)御霊(みたま)()れませる
002高皇(たかみ)産霊(むすび)大御神(おほみかみ)
003(みづ)御霊(みたま)()れませる
004神皇(かむみ)産霊(むすび)大御神(おほみかみ)
005(うづ)御水火(みいき)()れませる
006三五教(あななひけう)大神(おほかみ)
007埴安彦(はにやすひこ)埴安姫(はにやすひめ)
008(かみ)(みこと)()(くだ)
009天地(あめつち)(もも)神人(しんじん)
010(みたま)(きよ)天国(てんごく)
011(きよ)聖場(せいぢやう)(すく)はむと
012(こころ)(くば)らせ(たま)ひつつ
013(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
014(その)神業(しんげふ)()(たま)
015(ここ)(みづ)大神(おほかみ)
016神漏岐(かむろぎ)神漏美(かむろみ)二柱(ふたはしら)
017(かみ)御言(みこと)天地(あめつち)
018麻柱(あななひ)(まつ)常暗(とこやみ)
019()(たひら)けく(やす)らけく
020(をさ)めて(まつ)御世(みよ)となし
021日出(ひので)守護(しゆご)(かへ)さむと
022(もも)(つかさ)養成(やうせい)
023豊葦原(とよあしはら)中津国(なかつくに)
024(くに)八十国(やそくに)八十(やそ)(しま)
025(のこ)(くま)なく(めぐ)らせて
026天国(てんごく)浄土(じやうど)福音(ふくいん)
027拡充(かくじゆう)せしめ(たま)ひけり
028天足(あだる)(ひこ)胞場姫(えばひめ)
029(まが)のすさびにつけ()りて
030(この)()(みだ)曲津(まがつ)(かみ)
031八岐(やまた)大蛇(をろち)醜狐(しこぎつね)
032曲鬼(まがおに)(ども)(あめ)(した)
033(をさ)むる(くに)司人(つかさびと)
034(その)(ほか)(もも)人々(ひとびと)
035(うつ)りて所在(あらゆる)(まが)わざを
036縦横(じうわう)無尽(むじん)敢行(かんかう)
037()()世界(せかい)(けが)()
038(しこ)のすさびぞうたてけれ
039斎苑(いそ)(やかた)宣伝使(せんでんし)
040玉国別(たまくにわけ)弟子(でし)となり
041(かみ)(をしへ)四方(よも)(くに)
042(つた)へむものと真心(まごころ)
043(おも)ひは(むね)三千彦(みちひこ)
044ライオン(がは)(わた)りてゆ
045広野(ひろの)(なか)()をくらし
046やむなく(ねむ)(つゆ)宿(やど)
047暗路(やみぢ)辿(たど)折柄(をりから)
048バラモン(けう)落武者(おちむしや)
049幾百(いくひやく)(にん)とも(かぎ)りなく
050()()兇器(きやうき)(たづさ)へて
051三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
052鏖殺(あうさつ)せむといきり()
053(わが)一行(いつかう)身辺(しんぺん)
054十重(とへ)二十重(はたへ)取囲(とりかこ)
055(つるぎ)をかざし(いし)()
056(いきほひ)(たけ)()(きた)
057玉国別(たまくにわけ)()(きみ)
058真純(ますみ)(ひこ)言霊(ことたま)
059(ちから)(かぎ)りに打出(うちだ)して
060防戦(ばうせん)したる(をり)もあれ
061(てき)突出(つきだ)槍先(やりさき)
062(もも)をさされて伊太彦(いたひこ)
063(その)()にドツと(たふ)()
064()るより(おどろ)真純彦(ますみひこ)
065伊太彦(いたひこ)小脇(こわき)にかい()んで
066(てき)重囲(ぢうゐ)()りぬけつ
067何処(いづこ)ともなく()()きぬ
068(わが)()(きみ)大勢(おほぜい)
069取囲(とりかこ)まれて何処(どこ)となく
070姿(すがた)(かく)(たま)ひける
071(あと)(のこ)りし三千彦(みちひこ)
072(にはか)言霊(ことたま)(しぶ)りきて
073詮術(せんすべ)もなき(かな)しさに
074(いのち)カラガラ(かこみ)をば
075突破(とつぱ)(なが)(やうや)くに
076(わが)()(あと)(たづ)ねつつ
077此処(ここ)(まで)(すす)(きた)りけり
078ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
079(たふと)(かみ)(おん)(まもり)
080(わが)()(うへ)()れまして
081(かみ)()けたる使命(しめい)をば
082完全(うまら)委曲(つばら)(はた)すべく
083(めぐみ)(つゆ)(たま)へかし
084真純(ますみ)(ひこ)(いま)何処(いづこ)
085伊太彦(いたひこ)(つかさ)槍創(やりきづ)
086最早(もはや)()えしか(あるひ)(また)
087深手(ふかで)(なや)山奥(やまおく)
088(かく)れて(やまひ)(やしな)ふか
089()かまほしやと(おも)へども
090(くも)りし(たま)吾々(われわれ)
091(かみ)(うかが)(よし)もなく
092(みち)行手(ゆくて)気遣(きづか)ひつ
093バラモン(けう)()もりたる
094テルモン(ざん)(ちか)(まで)
095()らず()らずに()きにけり
096油断(ゆだん)のならぬ(てき)(まへ)
097(たく)みの(あな)陥穽(おとしあな)
098数多(あまた)(こしら)三五(あななひ)
099教司(をしへつかさ)(きた)るをば
100手具脛(てぐすね)ひいて()つと()
101ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
102(たふと)(かみ)(おん)(まへ)
103(わが)()(きみ)(はじ)めとし
104(われ)()一行(いつかう)幸運(かううん)
105(つつし)(うやま)()ぎまつる』
106密々(ひそびそ)(うた)(なが)ら、107テルモン(ざん)より(なが)()つるアン・ブラツク(がは)川辺(かはべり)()いた。108(ころ)しも(なつ)(なかば)にて(はん)(ゑん)(つき)西天(せいてん)にかかり、109利鎌(とがま)のやうな(するど)(ひかり)()げてゐる。110三千彦(みちひこ)()()れたのを(さいはひ)111川堤(かはどて)(こし)をおろし、112小声(こごゑ)になつて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、113(をは)つて(ひと)(ごと)
114三千(みち)『ああ、115(みづ)(なが)れと(ひと)行末(ゆくすゑ)116(かは)れば(かは)るものだなア。117玉国別(たまくにわけ)()(きみ)のお(とも)をなし、118去年(きよねん)(ふゆ)斎苑(いそ)(やかた)立出(たちい)でてより、119(うき)(しづ)みつ、120種々(いろいろ)雑多(ざつた)艱難(かんなん)苦労(くらう)121(その)(うち)にも(わが)()(きみ)は、122懐谷(ふところだに)(おい)(さる)()(やぶ)られ(たま)ひ、123()むを()(ほこら)(もり)()(こも)り、124()神勅(しんちよく)のまにまに、125(ほこら)(みや)建設(けんせつ)(あそ)ばし、126(われ)()(さん)(にん)弟子(でし)(とも)(いさぎよ)(つき)(くに)ハルナの(みやこ)へ、127(かみ)()さしのメツセージを()たさむと、128(いさ)(すす)んで(きた)(をり)しも(にはか)(あめ)にライオン(がは)大激流(だいげきりう)129()(とど)かぬ(ばか)りの川巾(かははば)水馬(すゐば)(またが)り、130(いのち)カラガラ此方(こちら)(わた)り、131()()らして、132広野(ひろの)(なか)一夜(いちや)(ねむ)(とき)しも、133バラモン(けう)残党(ざんたう)数多(あまた)(おそ)(きた)り、134(わが)(とも)伊太彦(いたひこ)(てき)(するど)手槍(てやり)()され、135生死(せいし)(ほど)もさだかならず、136()(きみ)(はじ)真純彦(ますみひこ)(いま)何処(どこ)()かれたか、137(なん)便(たよ)りも(なつ)()の、138(つき)(むか)つてなく(なみだ)139(かわ)(よし)なき(そで)(つゆ)140(あは)れみ(たま)月照彦(つきてるひこ)(かみ)
141述懐(じゆつくわい)()べ、142一生(いつしやう)懸命(けんめい)(いの)つて()る。
143 三千彦(みちひこ)(やうや)くにして、144(かは)(つつみ)青草(あをぐさ)(うへ)(ねむり)()いた。145沢山(たくさん)()人間(にんげん)(にほ)ひを()ぎつけて、146(めづ)らしげに(あつ)まり(きた)り、147ワンワンワンと(いや)らしい(こゑ)()て、148三千彦(みちひこ)(からだ)一面(いちめん)折重(をりかさ)なつて(くら)ひついてゐる。149(この)(とき)(にはか)にレコード(やぶ)りの川風(かはかぜ)()(きた)り、150堤上(ていじやう)(ねむ)つてゐた三千彦(みちひこ)(からだ)(まり)(ごと)(ころ)がして、151あたりの泥田(どろた)(なか)()()んで(しま)つた。152三千彦(みちひこ)(おどろ)いて()(あが)らうとすれ(ども)153(どろ)(ふか)くして(こし)のあたりまで(からだ)がにえこみ、154()うする(こと)出来(でき)ず、155チクチクと()泥田(どろた)(ぼつ)し、156最早(もはや)(くび)(だけ)になつて(しま)つた。157(この)(まま)にしておけば全身(ぜんしん)(どろ)(ぼつ)し、158三千彦(みちひこ)生命(せいめい)(すで)(あらし)(まへ)灯火(ともしび)(ごと)運命(うんめい)(おちい)つて(しま)つた。159三千彦(みちひこ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、160せめて肉体(にくたい)泥田(どろた)(なか)(うづ)めて()(とも)161(わが)精霊(せいれい)天国(てんごく)(すく)はせ(たま)へと、162(こゑ)(かぎ)りに(いの)つてゐる。163()かる(ところ)(くろ)()(あし)(かげ)164何処(いづく)ともなく(あら)はれ(きた)り、165三千彦(みちひこ)(からだ)(まわり)泥土(どろ)をかきのけ、166(どろ)のついた着物(きもの)()わへて、167自分(じぶん)(また)(からだ)半分(はんぶん)以上(いじやう)泥土(どろ)(ぼつ)(なが)ら、168(やうや)(どて)(うへ)(すく)()げた。169三千彦(みちひこ)如何(いか)なる(けもの)()らね(ども)170自分(じぶん)(たす)けてくれたのは、171(まつた)(かみ)(さま)使(つかひ)(ちが)ひあるまいと、172双手(もろて)(あは)せて、173(くろ)(けもの)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(をが)み、174(どろ)だらけの着物(きもの)()けたまま(かは)浅瀬(あさせ)飛入(とびい)り、175ソロソロ洗濯(せんたく)(はじ)()した。176(くろ)(かげ)(けだもの)(また)川中(かはなか)にバサバサと飛込(とびこ)み、177自分(じぶん)(からだ)(あら)つてゐる。
178 三千彦(みちひこ)はザツと衣類(いるゐ)洗濯(せんたく)をなし、179(なつ)(こと)とて、180(しろ)()けた河原(かはら)砂利(じやり)(うへ)着物(きもの)()し、181自分(じぶん)()(ふせ)(ため)に、182全身(ぜんしん)(みづ)()けて()()かすこととなつた。183(けだもの)(かげ)何時(いつ)しか()えなくなつてゐる。184(なつ)一夜(ひとよ)(やうや)()かし、185()()自分(じぶん)衣類(いるゐ)()れば、186着物(きもの)一面(いちめん)()()えた(ごと)く、187(いや)らしい(ひる)喰付(くつつ)いて()る。188粘着性(ねんちやくせい)(つよ)(ひる)容易(ようい)におちない、189()(もつ)()とさうとすれば()喰付(くひつ)き、190どこ(まで)(はな)れてくれぬ。191『エー一層(いつそう)(こと)192(この)着物(きもの)(かは)()て、193(はだか)道中(だうちう)で、194()(ところ)(まで)()つてやらうか』と思案(しあん)(さだ)めてみたり、195『いやいや()()て、196夜分(やぶん)になれば、197(また)()襲撃(しふげき)(ふせ)(こと)出来(でき)ぬ、198ぢやと()つてこれ(だけ)沢山(たくさん)(ひる)のついた着物(きもの)()につけば(また)()()はれる、199ハテどうしたらよからうか』と()不遇(ふぐう)(なげ)き、200(ふたた)(どて)(のぼ)つて、201(なみだ)にくれてゐた。
202 (はるか)向方(むかふ)(かた)より夜前(やぜん)()(くろ)(けもの)()()(ごと)此方(こちら)(むか)つて(はし)つてくる。203これは初稚姫(はつわかひめ)三千彦(みちひこ)難儀(なんぎ)前知(ぜんち)して、204スマートに()(ふく)め、205救援(きうゑん)(むか)はしめ(たま)うたのである。206スマートは、207立派(りつぱ)なバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(ふく)()わへて()た。208そして三千彦(みちひこ)(まへ)二声(ふたこゑ)三声(みこゑ)209ワンワンと(ほえ)(なが)ら、210()()つて、211(これ)()よとすすむる(ごと)形容(けいよう)(しめ)した。212三千彦(みちひこ)感涙(かんるゐ)(むせ)(なが)ら、
213三千(みち)『ああお(まへ)畜生(ちくしやう)にも()ず、214(かしこ)(いぬ)だなア、215よう(たす)けてくれた。216キツと(かみ)(さま)のお使(つかひ)(ちが)ひなからう。217ついては(この)(ふく)(わたし)頂戴(ちやうだい)する。218(しか)(なが)らバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(ふく)だ。219(これ)(なに)(かみ)(さま)(ふか)思召(おぼしめし)があるだらう。220(これ)(さいはひ)221バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)()()んで、222(この)テルモン(ざん)向方(むかう)(わた)つてみようかなア』
223(ひとり)ごちつつ、224手早(てばや)(ふく)()(まと)うた。225フツと足許(あしもと)()れば、226最早(もはや)(いぬ)(かげ)はなくなつてゐた。227(はるか)向方(むかう)禿山(はげやま)()(のぼ)(いぬ)(かげ)228(ねこ)ほどに()えてゐる。229三千彦(みちひこ)浅瀬(あさせ)(わた)つて西岸(せいがん)()き、230ワザとバラモンの宣伝使(せんでんし)気取(きどり)になつて、231経文(きやうもん)(とな)(なが)(すす)んで()く。
232 六十(ろくじふ)(ばか)りの白髪交(しらがまじ)りの婆々(ばば)アが二人(ふたり)侍女(じぢよ)(ともな)ひ、233(つゑ)をつき(なが)此方(こちら)(むか)つて(すす)()る。234三千彦(みちひこ)(みち)片方(かたへ)立止(たちと)まり、235『ハテ不思議(ふしぎ)婆々(ばば)アだ。236毘舎(びしや)首陀(しゆだ)とは(ちが)つて、237どこ(とも)なしに気高(けだか)(ところ)がある。238(これ)大方(おほかた)小国別(をくにわけ)奥方(おくがた)ではあるまいか』と(ひとり)ごちつつゐる(ところ)(はや)くも(さん)(にん)(ちか)づき(きた)り、
239(ばば)『お(まへ)さまはバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)()えるが、240(わたし)はテルモン(ざん)(やかた)(まも)小国別(をくにわけ)(つま)小国姫(をくにひめ)(ござ)います。241何卒(どうぞ)むさ(くる)しい(ところ)(ござ)いますが、242一寸(ちよつと)(たち)よつて(くだ)さいますまいか、243そしてお()(なん)(まを)しますか』
244()つぎ(ばや)(たづ)ねられ、245三千彦(みちひこ)(にはか)(かり)()(おも)()(わけ)には()かず、
246三千(みち)『ハイ(わたくし)はお(さつ)しの(とほ)り、247バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(ござ)います。248(この)(たび)249鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)陣中(ぢんちう)(まじ)はり、250宣伝使(せんでんし)専門(せんもん)(やく)(つと)めて(まゐ)りました(ところ)251(きき)(およ)びも(ござ)いませうが、252鬼春別(おにはるわけ)(さま)(てき)(ため)()いたく敗北(はいぼく)(あそ)ばし、253やむを()(わたくし)(ただ)一人(ひとり)此処(ここ)まで(まゐ)つたので(ござ)います。254テルモン(ざん)()旧蹟(きうせき)(はい)したいと(ぞん)じ、255ヤツとのことで()()についで、256霊地(れいち)(あし)()()れたとこで(ござ)います』
257(なが)口上(こうじやう)()つて、258(その)(あひだ)自分(じぶん)()(かんが)()さうとしてゐる。259もしもバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)錚々(さうさう)たる人物(じんぶつ)()匹敵(ひつてき)した(こと)(しやべ)つては(ただち)看破(かんぱ)さるる(おそれ)があると気遣(きづか)ひ、260どう()つたら無難(ぶなん)であらうかと(かんが)へた(すゑ)261(いま)(わた)つて()(かは)()(おも)()し、262(にはか)元気(げんき)よく、
263(わたくし)宣伝使(せんでんし)()つても、264ホンのホヤホヤで(ござ)いますから、265()のあるやうな(もの)では(ござ)いませぬ、266アン・ブラツクと(まを)すヘボ宣伝使(せんでんし)(ござ)いますが、267何卒(どうぞ)一度(いちど)(やかた)参拝(さんぱい)をさして(いただ)きたいもので(ござ)います』
268(ひめ)『あ、269左様(さやう)(ござ)いますか、270貴方(あなた)のお()はアン・ブラツク(さま)でしたか、271(なん)目出(めで)たいお()(ござ)いますなア、272(この)アン・ブラツク(がは)(むかし)から(にご)つた(こと)のない清川(せいせん)(ござ)いますが、273(その)()()はせ(たま)宣伝使(せんでんし)出会(であ)うとは、274(なん)といふ結構(けつこう)(こと)でせう。275(これ)でテルモン(ざん)(やかた)も、276万世(ばんせい)不動(ふどう)基礎(きそ)(かた)まるでせう。277(じつ)(ところ)(ゆめ)のお(つげ)に「アン・ブラツク(がは)岸辺(きしべ)()け、278さうすればお(まへ)(たす)ける真人(しんじん)(あら)はれる」との(こと)(ござ)いましたので、279信頼(たより)ない(ゆめ)(ちから)として(まゐ)りましたが、280矢張(やつぱ)(かみ)(さま)のお()げと()えて、281(たふと)()宣伝使(せんでんし)()(こと)出来(でき)ました。282ああ有難(ありがた)有難(ありがた)い』
283(うれ)(なみだ)をたらし(なが)合掌(がつしやう)する。284三千彦(みちひこ)真面目(まじめ)(かほ)して、
285三千(みち)『ハイ承知(しようち)(いた)しました。286(しか)らばお世話(せわ)(あづか)りませう』
287(ひめ)早速(さつそく)()承知(しようち)288満足(まんぞく)(ぞん)じます。289……コレ、290ケーや、291セミスや、292宣伝使(せんでんし)のお荷物(にもつ)()たして(いただ)きなさい』
293ケー『ハイ(なん)でも()たして(いただ)きますが、294(べつ)(なに)もお(もち)になつてはゐないぢや(ござ)いませぬか』
295(ひめ)『それでもお(せな)沢山(たくさん)荷物(にもつ)()うてゐらつしやるぢやないか』
296ケー『奥様(おくさま)297あれは荷物(にもつ)ぢや(ござ)いませぬ、298宣伝使(せんでんし)(さま)(ねこ)()うてゐらつしやるのですよ。299なア、300セミスさま、301さうぢや(ござ)いませぬか』
302 三千彦(みちひこ)何時(いつ)()にやら背中(せなか)にブクブクとした(こぶ)出来(でき)てゐたが、303背中(せなか)(こと)とて(すこ)しも()がつかなかつた。
304三千(みち)『アハハハハ、305(ねこ)()えますかな、306どうで(いぬ)に……』
307()ひかけて(にはか)(くち)をつぐみ、
308三千(みち)(いぬ)(ねこ)のやうな(みたま)ですから、309仕方(しかた)がありませぬ。310まアさう仰有(おつしや)らずに可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ』
311 小国姫(をくにひめ)は『サア(まゐ)りませう』と(さき)()つて()く。312三千彦(みちひこ)半安(はんあん)半危(はんき)面持(おももち)にて門内(もんない)(ふか)(すす)()り、313小国姫(をくにひめ)(とも)(ただ)ちに神殿(しんでん)(いた)つてバラモン(けう)経文(きやうもん)(とな)へた。314三千彦(みちひこ)(ただ)()(おぼ)へに経文(きやうもん)のそしり(ばし)りを()つてゐる(ばか)りで、315(あま)(おほ)きな(こゑ)()し、316間違(まちが)つた(こと)()つては、317(たちま)看破(かんぱ)さるる(こと)(おそ)れ、318ワザと小声(こごゑ)になり、319教服(けうふく)()へてあつた数珠(じゆず)爪繰(つまぐ)(なが)ら、320一生(いつしやう)懸命(けんめい)(ねん)じてゐる。321何時(いつ)()にやら三千彦(みちひこ)猫背(ねこぜ)(もと)(とほ)りに痕跡(あとかた)もなく(なほ)つてゐた。322これはスマートの(れい)三千彦(みちひこ)無事(ぶじ)館内(くわんない)(おく)()(その)身辺(しんぺん)(まも)らむが(ため)であつた。323スマートは(やかた)床下(ゆかした)(かく)れて(まも)つてゐる。
324大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 松村真澄録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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