霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 猫背(ねこぜ)〔一四四五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第4篇 三五開道 よみ:あなないかいどう
章:第15章 猫背 よみ:ねこぜ 通し章番号:1445
口述日:1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:219頁 八幡書店版:第10輯 227頁 修補版: 校定版:231頁 普及版:104頁 初版: ページ備考:
001三千彦(みちひこ)(いづ)御霊(みたま)()れませる
002高皇産霊(たかみむすび)大御神(おほみかみ)
003(みづ)御霊(みたま)()れませる
004神皇産霊(かむみむすび)大御神(おほみかみ)
005(うづ)御水火(みいき)()れませる
006三五教(あななひけう)大神(おほかみ)
007埴安彦(はにやすひこ)埴安姫(はにやすひめ)
008(かみ)(みこと)()(くだ)
009天地(あめつち)(もも)神人(しんじん)
010(みたま)(きよ)天国(てんごく)
011(きよ)聖場(せいぢやう)(すく)はむと
012(こころ)(くば)らせ(たま)ひつつ
013神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)
014(その)神業(しんげふ)()(たま)
015(ここ)(みづ)大神(おほかみ)
016神漏岐(かむろぎ)神漏美(かむろみ)二柱(ふたはしら)
017(かみ)御言(みこと)天地(あめつち)
018麻柱(あななひ)(まつ)常暗(とこやみ)
019()(たひら)けく(やす)らけく
020(をさ)めて(まつ)御世(みよ)となし
021日出(ひので)守護(しゆご)(かへ)さむと
022(もも)(つかさ)養成(やうせい)
023豊葦原(とよあしはら)中津国(なかつくに)
024(くに)八十国(やそくに)八十(やそ)(しま)
025(のこ)(くま)なく(めぐ)らせて
026天国浄土(てんごくじやうど)福音(ふくいん)
027拡充(かくじゆう)せしめ(たま)ひけり
028天足(あだる)(ひこ)胞場姫(えばひめ)
029(まが)のすさびにつけ()りて
030(この)()(みだ)曲津神(まがつかみ)
031八岐大蛇(やまたをろち)醜狐(しこぎつね)
032曲鬼(まがおに)(ども)(あめ)(した)
033(をさ)むる(くに)司人(つかさびと)
034(その)(ほか)(もも)人々(ひとびと)
035(うつ)りて所在(あらゆる)(まが)わざを
036縦横無尽(じうわうむじん)敢行(かんかう)
037()()世界(せかい)(けが)()
038(しこ)のすさびぞうたてけれ
039斎苑(いそ)(やかた)宣伝使(せんでんし)
040玉国別(たまくにわけ)弟子(でし)となり
041(かみ)(をしへ)四方(よも)(くに)
042(つた)へむものと真心(まごころ)
043(おも)ひは(むね)三千彦(みちひこ)
044ライオン(がは)(わた)りてゆ
045広野(ひろの)(なか)()をくらし
046やむなく(ねむ)(つゆ)宿(やど)
047暗路(やみぢ)辿(たど)折柄(をりから)
048バラモン(けう)落武者(おちむしや)
049幾百人(いくひやくにん)とも(かぎ)りなく
050()()兇器(きやうき)(たづさ)へて
051三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
052鏖殺(あうさつ)せむといきり()
053(わが)一行(いつかう)身辺(しんぺん)
054十重(とへ)二十重(はたへ)取囲(とりかこ)
055(つるぎ)をかざし(いし)()
056(いきほひ)(たけ)()(きた)
057玉国別(たまくにわけ)()(きみ)
058真純(ますみ)(ひこ)言霊(ことたま)
059(ちから)(かぎ)りに打出(うちだ)して
060防戦(ばうせん)したる(をり)もあれ
061(てき)突出(つきだ)槍先(やりさき)
062(もも)をさされて伊太彦(いたひこ)
063(その)()にドツと(たふ)()
064()るより(おどろ)真純彦(ますみひこ)
065伊太彦(いたひこ)小脇(こわき)にかい()んで
066(てき)重囲(ぢうゐ)()りぬけつ
067何処(いづこ)ともなく()()きぬ
068(わが)()(きみ)大勢(おほぜい)
069取囲(とりかこ)まれて何処(どこ)となく
070姿(すがた)(かく)(たま)ひける
071(あと)(のこ)りし三千彦(みちひこ)
072(にはか)言霊(ことたま)(しぶ)りきて
073詮術(せんすべ)もなき(かな)しさに
074(いのち)カラガラ(かこみ)をば
075突破(とつぱ)(なが)(やうや)くに
076(わが)()(あと)(たづ)ねつつ
077此処(ここ)(まで)(すす)(きた)りけり
078ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
079(たふと)(かみ)御守(おんまもり)
080(わが)()(うへ)()れまして
081(かみ)()けたる使命(しめい)をば
082完全(うまら)委曲(つばら)(はた)すべく
083(めぐみ)(つゆ)(たま)へかし
084真純(ますみ)(ひこ)(いま)何処(いづこ)
085伊太彦(いたひこ)(つかさ)槍創(やりきづ)
086最早(もはや)()えしか(あるひ)(また)
087深手(ふかで)(なや)山奥(やまおく)
088(かく)れて(やまひ)(やしな)ふか
089()かまほしやと(おも)へども
090(くも)りし(たま)吾々(われわれ)
091(かみ)(うかが)(よし)もなく
092(みち)行手(ゆくて)気遣(きづか)ひつ
093バラモン(けう)()もりたる
094テルモン(ざん)(ちか)(まで)
095()らず()らずに()きにけり
096油断(ゆだん)のならぬ(てき)(まへ)
097(たく)みの(あな)陥穽(おとしあな)
098数多(あまた)(こしら)三五(あななひ)
099教司(をしへつかさ)(きた)るをば
100手具脛(てぐすね)ひいて()つと()
101ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
102(たふと)(かみ)御前(おんまへ)
103(わが)()(きみ)(はじ)めとし
104吾等(われら)一行(いつかう)幸運(かううん)
105(つつし)(うやま)()ぎまつる』
106密々(ひそびそ)(うた)(なが)ら、107テルモン(ざん)より(なが)()つるアン・ブラツク(がは)川辺(かはべり)()いた。108(ころ)しも(なつ)(なかば)にて半円(はんゑん)(つき)西天(せいてん)にかかり、109利鎌(とがま)のやうな(するど)(ひかり)()げてゐる。110三千彦(みちひこ)()()れたのを(さいはひ)111川堤(かはどて)(こし)をおろし、112小声(こごゑ)になつて天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)し、113(をは)つて(ひと)(ごと)
114三千(みち)『ああ、115(みづ)(なが)れと(ひと)行末(ゆくすゑ)116(かは)れば(かは)るものだなア。117玉国別(たまくにわけ)()(きみ)のお(とも)をなし、118去年(きよねん)(ふゆ)斎苑(いそ)(やかた)立出(たちい)でてより、119(うき)(しづ)みつ、120種々(いろいろ)雑多(ざつた)艱難苦労(かんなんくらう)121(その)(うち)にも(わが)()(きみ)は、122懐谷(ふところだに)(おい)(さる)()(やぶ)られ(たま)ひ、123()むを()(ほこら)(もり)()(こも)り、124御神勅(ごしんちよく)のまにまに、125(ほこら)(みや)建設(けんせつ)(あそ)ばし、126吾等(われら)三人(さんにん)弟子(でし)(とも)(いさぎよ)(つき)(くに)ハルナの(みやこ)へ、127(かみ)()さしのメツセージを()たさむと、128(いさ)(すす)んで(きた)(をり)しも(にはか)(あめ)にライオン(がは)大激流(だいげきりう)129()(とど)かぬ(ばか)りの川巾(かははば)水馬(すゐば)(またが)り、130(いのち)カラガラ此方(こちら)(わた)り、131()()らして、132広野(ひろの)(なか)一夜(いちや)(ねむ)(とき)しも、133バラモン(けう)残党(ざんたう)数多(あまた)(おそ)(きた)り、134(わが)(とも)伊太彦(いたひこ)(てき)(するど)手槍(てやり)()され、135生死(せいし)(ほど)もさだかならず、136()(きみ)(はじ)真純彦(ますみひこ)(いま)何処(どこ)()かれたか、137(なん)便(たよ)りも(なつ)()の、138(つき)(むか)つてなく(なみだ)139(かわ)(よし)なき(そで)(つゆ)140(あは)れみ(たま)月照彦(つきてるひこ)(かみ)
141述懐(じゆつくわい)()べ、142一生懸命(いつしやうけんめい)(いの)つて()る。
143 三千彦(みちひこ)(やうや)くにして、144(かは)(つつみ)青草(あをぐさ)(うへ)(ねむり)()いた。145沢山(たくさん)()人間(にんげん)(にほ)ひを()ぎつけて、146(めづ)らしげに(あつ)まり(きた)り、147ワンワンワンと(いや)らしい(こゑ)()て、148三千彦(みちひこ)(からだ)一面(いちめん)折重(をりかさ)なつて(くら)ひついてゐる。149(この)(とき)(にはか)にレコード(やぶ)りの川風(かはかぜ)()(きた)り、150堤上(ていじやう)(ねむ)つてゐた三千彦(みちひこ)(からだ)(まり)(ごと)(ころ)がして、151あたりの泥田(どろた)(なか)()()んで(しま)つた。152三千彦(みちひこ)(おどろ)いて()(あが)らうとすれ(ども)153(どろ)(ふか)くして(こし)のあたりまで(からだ)がにえこみ、154()うする(こと)出来(でき)ず、155チクチクと()泥田(どろた)(ぼつ)し、156最早(もはや)(くび)(だけ)になつて(しま)つた。157(この)(まま)にしておけば全身(ぜんしん)(どろ)(ぼつ)し、158三千彦(みちひこ)生命(せいめい)(すで)(あらし)(まへ)灯火(ともしび)(ごと)運命(うんめい)(おちい)つて(しま)つた。159三千彦(みちひこ)一生懸命(いつしやうけんめい)天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)し、160せめて肉体(にくたい)泥田(どろた)(なか)(うづ)めて()(とも)161(わが)精霊(せいれい)天国(てんごく)(すく)はせ(たま)へと、162(こゑ)(かぎ)りに(いの)つてゐる。163()かる(ところ)(くろ)()(あし)(かげ)164何処(いづく)ともなく(あら)はれ(きた)り、165三千彦(みちひこ)(からだ)(まわり)泥土(どろ)をかきのけ、166(どろ)のついた着物(きもの)()わへて、167自分(じぶん)(また)(からだ)半分(はんぶん)以上(いじやう)泥土(どろ)(ぼつ)(なが)ら、168(やうや)(どて)(うへ)(すく)()げた。169三千彦(みちひこ)如何(いか)なる(けもの)()らね(ども)170自分(じぶん)(たす)けてくれたのは、171(まつた)神様(かみさま)使(つかひ)(ちが)ひあるまいと、172双手(もろて)(あは)せて、173(くろ)(けもの)一生懸命(いつしやうけんめい)(をが)み、174(どろ)だらけの着物(きもの)()けたまま(かは)浅瀬(あさせ)飛入(とびい)り、175ソロソロ洗濯(せんたく)(はじ)()した。176(くろ)(かげ)(けだもの)(また)川中(かはなか)にバサバサと飛込(とびこ)み、177自分(じぶん)(からだ)(あら)つてゐる。
178 三千彦(みちひこ)はザツと衣類(いるゐ)洗濯(せんたく)をなし、179(なつ)(こと)とて、180(しろ)()けた河原(かはら)砂利(じやり)(うへ)着物(きもの)()し、181自分(じぶん)()(ふせ)(ため)に、182全身(ぜんしん)(みづ)()けて()()かすこととなつた。183(けだもの)(かげ)何時(いつ)しか()えなくなつてゐる。184(なつ)一夜(ひとよ)(やうや)()かし、185()()自分(じぶん)衣類(いるゐ)()れば、186着物(きもの)一面(いちめん)()()えた(ごと)く、187(いや)らしい(ひる)喰付(くつつ)いて()る。188粘着性(ねんちやくせい)(つよ)(ひる)容易(ようい)におちない、189()(もつ)()とさうとすれば()喰付(くひつ)き、190どこ(まで)(はな)れてくれぬ。191『エー一層(いつそう)(こと)192(この)着物(きもの)(かは)()て、193(はだか)道中(だうちう)で、194()(ところ)(まで)()つてやらうか』と思案(しあん)(さだ)めてみたり、195『いやいや()()て、196夜分(やぶん)になれば、197(また)()襲撃(しふげき)(ふせ)(こと)出来(でき)ぬ、198ぢやと()つてこれ(だけ)沢山(たくさん)(ひる)のついた着物(きもの)()につけば(また)()()はれる、199ハテどうしたらよからうか』と()不遇(ふぐう)(なげ)き、200(ふたた)(どて)(のぼ)つて、201(なみだ)にくれてゐた。
202 (はるか)向方(むかふ)(かた)より夜前(やぜん)()(くろ)(けもの)()()(ごと)此方(こちら)(むか)つて(はし)つてくる。203これは初稚姫(はつわかひめ)三千彦(みちひこ)難儀(なんぎ)前知(ぜんち)して、204スマートに()(ふく)め、205救援(きうゑん)(むか)はしめ(たま)うたのである。206スマートは、207立派(りつぱ)なバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(ふく)()わへて()た。208そして三千彦(みちひこ)(まへ)二声(ふたこゑ)三声(みこゑ)209ワンワンと(ほえ)(なが)ら、210()()つて、211(これ)()よとすすむる(ごと)形容(けいよう)(しめ)した。212三千彦(みちひこ)感涙(かんるゐ)(むせ)(なが)ら、
213三千(みち)『ああお(まへ)畜生(ちくしやう)にも()ず、214(かしこ)(いぬ)だなア、215よう(たす)けてくれた。216キツと神様(かみさま)のお使(つかひ)(ちが)ひなからう。217ついては(この)(ふく)(わたし)頂戴(ちやうだい)する。218(しか)(なが)らバラモン(けう)宣伝使服(せんでんしふく)だ。219(これ)(なに)神様(かみさま)(ふか)思召(おぼしめし)があるだらう。220(これ)(さいはひ)221バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)()()んで、222(この)テルモン(ざん)向方(むかう)(わた)つてみようかなア』
223(ひとり)ごちつつ、224手早(てばや)(ふく)()(まと)うた。225フツと足許(あしもと)()れば、226最早(もはや)(いぬ)(かげ)はなくなつてゐた。227(はるか)向方(むかう)禿山(はげやま)()(のぼ)(いぬ)(かげ)228(ねこ)ほどに()えてゐる。229三千彦(みちひこ)浅瀬(あさせ)(わた)つて西岸(せいがん)()き、230ワザとバラモンの宣伝使気取(せんでんしきどり)になつて、231経文(きやうもん)(とな)(なが)(すす)んで()く。
232 六十(ろくじふ)(ばか)りの白髪交(しらがまじ)りの婆々(ばば)アが二人(ふたり)侍女(じぢよ)(ともな)ひ、233(つゑ)をつき(なが)此方(こちら)(むか)つて(すす)()る。234三千彦(みちひこ)(みち)片方(かたへ)立止(たちと)まり、235『ハテ不思議(ふしぎ)婆々(ばば)アだ。236毘舎(びしや)首陀(しゆだ)とは(ちが)つて、237どこ(とも)なしに気高(けだか)(ところ)がある。238(これ)大方(おほかた)小国別(をくにわけ)奥方(おくがた)ではあるまいか』と(ひとり)ごちつつゐる(ところ)(はや)くも三人(さんにん)(ちか)づき(きた)り、
239(ばば)『お(まへ)さまはバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)()えるが、240(わたし)はテルモン(ざん)(やかた)(まも)小国別(をくにわけ)(つま)小国姫(をくにひめ)(ござ)います。241何卒(どうぞ)むさ(くる)しい(ところ)(ござ)いますが、242一寸(ちよつと)(たち)よつて(くだ)さいますまいか、243そしてお()(なん)(まを)しますか』
244()つぎ(ばや)(たづ)ねられ、245三千彦(みちひこ)(にはか)(かり)()(おも)()(わけ)には()かず、
246三千(みち)『ハイ(わたくし)はお(さつ)しの(とほ)り、247バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(ござ)います。248(この)(たび)249鬼春別(おにはるわけ)将軍様(しやうぐんさま)陣中(ぢんちう)(まじ)はり、250宣伝使(せんでんし)専門(せんもん)(やく)(つと)めて(まゐ)りました(ところ)251(きき)(およ)びも(ござ)いませうが、252鬼春別(おにはるわけ)(さま)(てき)(ため)()いたく敗北(はいぼく)(あそ)ばし、253やむを()(わたくし)(ただ)一人(ひとり)此処(ここ)まで(まゐ)つたので(ござ)います。254テルモン(ざん)御旧蹟(ごきうせき)(はい)したいと(ぞん)じ、255ヤツとのことで()()についで、256霊地(れいち)(あし)()()れたとこで(ござ)います』
257(なが)口上(こうじやう)()つて、258(その)(あひだ)自分(じぶん)()(かんが)()さうとしてゐる。259もしもバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)錚々(さうさう)たる人物(じんぶつ)()匹敵(ひつてき)した(こと)(しやべ)つては(ただち)看破(かんぱ)さるる(おそれ)があると気遣(きづか)ひ、260どう()つたら無難(ぶなん)であらうかと(かんが)へた(すゑ)261(いま)(わた)つて()(かは)()(おも)()し、262(にはか)元気(げんき)よく、
263(わたくし)宣伝使(せんでんし)()つても、264ホンのホヤホヤで(ござ)いますから、265()のあるやうな(もの)では(ござ)いませぬ、266アン・ブラツクと(まを)すヘボ宣伝使(せんでんし)(ござ)いますが、267何卒(どうぞ)一度(いちど)(やかた)参拝(さんぱい)をさして(いただ)きたいもので(ござ)います』
268(ひめ)『あ、269左様(さやう)(ござ)いますか、270貴方(あなた)のお()はアン・ブラツク(さま)でしたか、271(なん)目出(めで)たいお()(ござ)いますなア、272(この)アン・ブラツク(がは)(むかし)から(にご)つた(こと)のない清川(せいせん)(ござ)いますが、273(その)()()はせ(たま)宣伝使(せんでんし)出会(であ)うとは、274(なん)といふ結構(けつこう)(こと)でせう。275(これ)でテルモン(ざん)(やかた)も、276万世不動(ばんせいふどう)基礎(きそ)(かた)まるでせう。277(じつ)(ところ)(ゆめ)のお(つげ)に「アン・ブラツク(がは)岸辺(きしべ)()け、278さうすればお(まへ)(たす)ける真人(しんじん)(あら)はれる」との(こと)(ござ)いましたので、279信頼(たより)ない(ゆめ)(ちから)として(まゐ)りましたが、280矢張(やつぱ)神様(かみさま)のお()げと()えて、281(たふと)()宣伝使(せんでんし)()(こと)出来(でき)ました。282ああ有難(ありがた)有難(ありがた)い』
283(うれ)(なみだ)をたらし(なが)合掌(がつしやう)する。284三千彦(みちひこ)真面目(まじめ)(かほ)して、
285三千(みち)『ハイ承知(しようち)(いた)しました。286(しか)らばお世話(せわ)(あづか)りませう』
287(ひめ)早速(さつそく)御承知(ごしようち)288満足(まんぞく)(ぞん)じます。289……コレ、290ケーや、291セミスや、292宣伝使(せんでんし)のお荷物(にもつ)()たして(いただ)きなさい』
293ケー『ハイ(なん)でも()たして(いただ)きますが、294(べつ)(なに)もお(もち)になつてはゐないぢや(ござ)いませぬか』
295(ひめ)『それでもお(せな)沢山(たくさん)荷物(にもつ)()うてゐらつしやるぢやないか』
296ケー『奥様(おくさま)297あれは荷物(にもつ)ぢや(ござ)いませぬ、298宣伝使(せんでんし)(さま)(ねこ)()うてゐらつしやるのですよ。299なア、300セミスさま、301さうぢや(ござ)いませぬか』
302 三千彦(みちひこ)何時(いつ)()にやら背中(せなか)にブクブクとした(こぶ)出来(でき)てゐたが、303背中(せなか)(こと)とて(すこ)しも()がつかなかつた。
304三千(みち)『アハハハハ、305(ねこ)()えますかな、306どうで(いぬ)に……』
307()ひかけて(にはか)(くち)をつぐみ、
308三千(みち)(いぬ)(ねこ)のやうな(みたま)ですから、309仕方(しかた)がありませぬ。310まアさう仰有(おつしや)らずに可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ』
311 小国姫(をくにひめ)は『サア(まゐ)りませう』と(さき)()つて()く。312三千彦(みちひこ)半安半危(はんあんはんき)面持(おももち)にて門内(もんない)(ふか)(すす)()り、313小国姫(をくにひめ)(とも)(ただ)ちに神殿(しんでん)(いた)つてバラモン(けう)経文(きやうもん)(とな)へた。314三千彦(みちひこ)(ただ)()(おぼ)へに経文(きやうもん)のそしり(ばし)りを()つてゐる(ばか)りで、315(あま)(おほ)きな(こゑ)()し、316間違(まちが)つた(こと)()つては、317(たちま)看破(かんぱ)さるる(こと)(おそ)れ、318ワザと小声(こごゑ)になり、319教服(けうふく)()へてあつた数珠(じゆず)爪繰(つまぐ)(なが)ら、320一生懸命(いつしやうけんめい)(ねん)じてゐる。321何時(いつ)()にやら三千彦(みちひこ)猫背(ねこぜ)(もと)(とほ)りに痕跡(あとかた)もなく(なほ)つてゐた。322これはスマートの(れい)三千彦(みちひこ)無事(ぶじ)館内(くわんない)(おく)()(その)身辺(しんぺん)(まも)らむが(ため)であつた。323スマートは(やかた)床下(ゆかした)(かく)れて(まも)つてゐる。
324大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 松村真澄録)