霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 痴漢(ちかん)〔一四四九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第4篇 三五開道 よみ:あなないかいどう
章:第19章 第56巻 よみ:ちかん 通し章番号:1449
口述日:1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5619
愛善世界社版:267頁 八幡書店版:第10輯 245頁 修補版: 校定版:282頁 普及版:128頁 初版: ページ備考:
001 (やかた)主人(あるじ)002小国別(をくにわけ)はソフアーの(うへ)(よこた)はり(いき)()()えに(くる)しんでゐる。003二人(ふたり)看護手(かんごしゆ)寝食(しんしよく)(わす)れて介抱(かいはう)余念(よねん)なかつた。004小国姫(をくにひめ)はオールスチン、005三千彦(みちひこ)006ワツクスを(ともな)()(きた)り、
007(ひめ)旦那様(だんなさま)008(よろこ)んで(くだ)さいませ。009三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)三千彦(みちひこ)(さま)のお(かげ)によりまして如意宝珠(によいほつしゆ)神宝(しんぱう)(かへ)りまして(ござ)います。010(これ)御覧(ごらん)なさいませ』
011(つつ)みを()いて()(まへ)につきつけた。012小国別(をくにわけ)()(つか)れ、013(おとろ)へたる()(ひか)りに(たま)(なが)めてニヤリと(わら)双手(もろて)(あは)せて感涙(かんるゐ)(むせ)んでゐる。014そして(ただ)有難(ありがた)う」と一言(ひとくち)()つたきり(あと)()()(こと)出来(でき)なかつた。015これは衰弱(すゐじやく)(はなは)だしき(うへ)に、016(あま)りの(よろこ)びに()たれたからである。017三千彦(みちひこ)病人(びやうにん)(そば)(ちか)()り、
018三千(みち)『この(とほ)御神宝(ごしんぱう)(かへ)りました(うへ)は、019(また)もや神様(かみさま)御恵(みめぐみ)によりまして、020屹度(きつと)ケリナ(ひめ)(さま)(ちか)(うち)にお(かへ)りになるでせう。021御安心(ごあんしん)なさいませ』
022(ことば)(やさ)しく(なぐさ)むれば小国別(をくにわけ)()(あは)せ、023(むすめ)(ちか)(うち)(かへ)ると()証言(しようげん)()くより、024(やや)元気(げんき)づき、
025小国(をくに)(むすめ)(かへ)りますか。026それは有難(ありがた)(ござ)います。027到底(たうてい)(わたし)今度(こんど)は、028もう旅立(たびだち)をせなくてはなりませぬ。029せめてそれ(まで)紛失(ふんしつ)した如意宝珠(によいほつしゆ)を、030もとに(かへ)し、031(むすめ)(かほ)生前(せいぜん)一目(ひとめ)なりと()(この)()()()いと(おも)うて()りましたが、032()(よわ)りきつては、033もう三日(みつか)(いのち)(つづ)きますまい。034()(こと)ならば一時(ひととき)(はや)引寄(ひきよ)せて(いただ)()(ござ)います』
035三千(みち)『もう()もなくお(かへ)りになりませう。036(わたし)(みみ)(そば)神様(かみさま)がさう(おほ)せになりました。037(しか)(なが)御病気(ごびやうき)(さは)るとなりませぬから、038吾々(われわれ)(ひか)へさして(いただ)きませう』
039小国(をくに)何卒(どうぞ)御自由(ごじいう)にお(やす)(くだ)さいませ』
040(かすか)(こゑ)挨拶(あいさつ)する。041家令(かれい)のオールスチンは病人(びやうにん)(そば)(ちか)くより、
042オールス『旦那様(だんなさま)043何卒(どうぞ)()(しつか)りして(くだ)さいませ。044そして如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)(ぬす)んで(かく)して()つたのは(わたくし)(せがれ)ワツクスで(ござ)りました。045(まこと)(えら)御心配(ごしんぱい)をかけまして申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬ。046(この)皺腹(しわばら)()つて申訳(まをしわけ)(いた)さむと覚悟(かくご)()めた(ところ)奥様(おくさま)(とど)められ、047(をし)からぬ(いのち)少時(しばし)()ばしましたが、048何卒(どうぞ)貴方(あなた)命数(めいすう)()きてお国替(くにがへ)(あそ)ばすやうの(こと)あれば屹度(きつと)(わたくし)もお(とも)(いた)します。049何卒(どうぞ)何処(どこ)(まで)主従(しゆじゆう)(えん)()らぬやうにして(くだ)さいませ』
050 小国別(をくにわけ)(かすか)首肯(うなづ)いた。051三千彦(みちひこ)はワツクスの()()いて自分(じぶん)居間(ゐま)へと(かへ)つて()く。052二人(ふたり)看護人(かんごにん)とオールスチンに小国別(をくにわけ)介抱(かいはう)(たの)()き、053小国姫(をくにひめ)(また)もや三千彦(みちひこ)居間(ゐま)(きた)心配(しんぱい)さうな(かほ)をして、
054(ひめ)三千彦(みちひこ)(さま)055(まこと)御心配(ごしんぱい)(ばか)りかけまして申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬが、056主人(しゆじん)到底(たうてい)あきますまいかな』
057三千(みち)『お()(どく)(なが)到底(たうてい)駄目(だめ)(ござ)いませう。058(しか)(なが)仮令(たとへ)肉体(にくたい)はなくなつても精霊(せいれい)活々(いきいき)として(わか)やぎ、059霊界(れいかい)(おい)神様(かみさま)(ため)大活動(だいくわつどう)()されますから、060御心配(ごしんぱい)なさいますな。061(ひと)(あきら)めが肝腎(かんじん)(ござ)いますからな』
062(ひめ)『ハイ、063有難(ありがた)(ござ)います。064最早(もはや)覚悟(かくご)(いた)して()ります。065(しか)(なが)ら、066(ひと)心配(しんぱい)(こと)(ござ)いますが一寸(ちよつと)(うかが)つて(もら)(わけ)には()きませぬか』
067三千(みち)何事(なにごと)(ぞん)じませぬが一寸(ちよつと)()つて御覧(ごらん)なさいませ』
068(ひめ)(じつ)(ところ)(わたし)(むすめ)デビス(ひめ)(まを)すのが、069今日(けふ)三七二十一日(さんしちにじふいちにち)(あひだ)070(ひる)さへ(ひと)のよう()かぬアンブラツクの(たき)へ、071(たま)所在(ありか)()らして(くだ)さるやう、072(ちち)病気(びやうき)(なほ)るやう、073(ひと)つは(いもうと)所在(ありか)(わか)るやうと、074繊弱(かよわ)(をんな)()(もつ)毎晩(まいばん)二里(にり)(みち)往復(わうふく)(いた)し、075何時(いつ)夜明(よあ)(がた)(かへ)つて(まゐ)りますが、076今日(けふ)如何(どう)したものかまだ(かへ)つて(まゐ)りませぬ。077大方(おほかた)滝壺(たきつぼ)()ちて(いのち)()てたのでは(ござ)いますまいか。078(ただ)しは猛獣(まうじう)(ころ)されたのではありますまいか。079(にはか)胸騒(むなさわ)ぎがして()()ぢやありませぬ』
080三千(みち)(けつ)して御心配(ごしんぱい)なさいますな。081半時(はんとき)()たない(うち)御姉妹(ごきやうだい)打揃(うちそろ)ふて、082一人(ひとり)修験者(しうげんじや)(おく)られて無事(ぶじ)(かへ)られます。083間違(まちが)ひは(ござ)いませぬからな』
084(ひめ)左様(さやう)(ござ)いますかな。085(むすめ)二人(ふたり)(かへ)つて()れたならば、086最早(もはや)心配事(しんぱいごと)(ござ)いませぬ。087ああ南無(なむ)大慈(だいじ)大自在天(だいじざいてん)(さま)088何卒々々(なにとぞなにとぞ)一時(いちじ)(はや)(むすめ)二人(ふたり)(かほ)(をつと)(いのち)のある(うち)()せて(くだ)さいますやうお(ねが)(いた)します』
089(なみだ)(なが)して(いの)()る。
090三千(みち)『これ、091ワツクスさま、092(まへ)(だい)それた(わる)(こと)()さつたが、093これと()ふのもお(まへ)副守護神(ふくしゆごじん)がやつたのだから、094(ここ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)して(いただ)き、095内分(ないぶん)()ます(こと)になつてゐますから、096(これ)から心得(こころえ)(もら)はねばなりませぬぞ』
097ワツクス『ハイ、098有難(ありがた)(ござ)ります。099(まこと)申訳(まをしわけ)のない不調法(ぶてうはふ)(いた)しました。100今度(こんど)(わたし)(つみ)をお(たす)(くだ)さいますならば、101()(いのち)心得(こころえ)如何(いか)(やう)なる(はたら)きも(いた)し、102屹度(きつと)御恩返(ごおんがへ)しを(いた)します。103モシ奥様(おくさま)104屹度(きつと)(ゆる)(くだ)さいますか』
105(ひめ)(ゆる)(がた)罪人(ざいにん)なれど三千彦(みちひこ)(さま)のお(はか)らひにより内証(ないしやう)()ます(こと)にして()げよう。106(これ)からキツと心得(こころえ)たがよいぞや。107年寄(としよ)つた一人(ひとり)(おや)心配(しんぱい)をかけ、108本当(ほんたう)にお(まへ)不孝(ふかう)(もの)だ。109(おや)ばかりか、110吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)(むすめ)(まで)心配(しんぱい)苦労(くらう)をかけて(こま)らしたのだから、111今後(こんご)屹度(きつと)(つつし)んで(もら)はねばならぬぞや』
112ワツクス『ハイ、113有難(ありがた)(ござ)います。114これから貴方様(あなたさま)親様(おやさま)として真心(まごころ)(つく)しお(つか)(まを)します』
115(ひめ)『これ、116ワツクス、117(まへ)(おや)があるぢやないか、118(わし)主人(しゆじん)として(つか)へるべきものだ。119(おや)として(つか)へる(など)とはチツと可笑(をか)しいぢやないか』
120ワツクス『()(おい)ては御主人(ごしゆじん)(ござ)ります。121(しか)(じやう)(おい)ては親様(おやさま)(ぞん)じてツヒ不都合(ふつがふ)(こと)(まを)しました。122(しか)しお(ゆる)(くだ)さつた以上(いじやう)(わたくし)()として(くだ)さいませうな。123(じつ)(ところ)はエキス、124ヘルマンの両人(りやうにん)(ぬす)()したので(ござ)いますが、125(わたくし)種々(いろいろ)苦心(くしん)をして(たま)所在(ありか)白状(はくじやう)させ、126(いへ)(ため)(はたら)いたので(ござ)います。127二人(ふたり)(もの)(たす)けたさに(わたくし)()つたと(ちち)(まを)しましたが、128その(じつ)はヘルマン、129エキスの両人(りやうにん)(ぬす)()したので(ござ)います。130それをば(ちち)(かく)して(かね)をやり、131(さけ)()まして白状(はくじやう)させ、132ヤツとの(こと)如意宝珠(によいほつしゆ)()()れたので(ござ)います。133貴女(あなた)はお(わす)れでも(ござ)いますまいが家中(かちう)一般(いつぱん)如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)所在(ありか)(さが)し、134()つて()たものはデビス(ひめ)養子(やうし)にすると仰有(おつしや)つたぢや(ござ)いませぬか、135さすれば(おほ)せの(とほ)(わたくし)御養子(ごやうし)にして(いただ)くべき資格(しかく)があらうと(ぞん)じます』
136(ひめ)『そりや、137(まへ)()(とほ)り、138如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)(さが)し、139()つて()たものは養子(やうし)にすると()ふて()いた。140(しか)しお(まへ)(おや)一人(ひとり)141()一人(ひとり)142家令(かれい)(いへ)()がねばならぬ()(うへ)だから、143それは出来(でき)ますまい。144先祖(せんぞ)(いへ)(おろそ)かにする(わけ)には()くまいからな』
145ワツクス『いえ、146そんな心配(しんぱい)()りませぬ。147(わたくし)養子(やうし)になり、148デビスさまとの(あひだ)三人(さんにん)五人(ごにん)()出来(でき)ませうから、149(その)(うち)一人(ひとり)(いただ)いて、150(わたくし)(いへ)()がせば(よろ)しいぢやありませぬか』
151(ひめ)『もし三千彦(みちひこ)(さま)152あんな(こと)(まを)しますが如何(いかが)したら(よろ)しう(ござ)いませうかな』
153 三千彦(みちひこ)はワツクスの(かほ)をギユツと(にら)みつけ(くち)をヘの()(むす)んでゐる。154ワツクスは(こは)(さう)(すこ)しばかり(ごゑ)(ふる)はし(なが)ら、
155ワツクス『モシ、156宣伝使(せんでんし)(さま)157何卒(どうぞ)(わたくし)約束通(やくそくどほ)り、158(たま)発見人(はつけんにん)ですから養子(やうし)にして(くだ)さるやう()とり()しを(ねが)ひます』
159三千(みち)『これ、160ワツクス、161(まへ)吾々(われわれ)(めくら)にするのか、162(いや)御夫婦(ごふうふ)(たばか)(つも)りか。163(いま)()つた言葉(ことば)(みな)(いつは)りだらうがな。164(まへ)はお(いへ)重宝(ぢうほう)(かく)し、165御夫婦(ごふうふ)(こま)らし、166往生(わうじやう)づくめでデビス(ひめ)(さま)(をつと)にならうとの計略(けいりやく)をやつたのであらう。167そんな(こと)誤魔化(ごまくわ)される三千彦(みちひこ)ぢやありませぬぞ』
168ワツクス『メメメ滅相(めつさう)な。169さう誤解(ごかい)をされては(こま)ります。170あれ(だけ)苦心(くしん)してお(いへ)()めになる(たから)()()れた(この)忠臣(ちうしん)を、171悪人扱(あくにんあつか)ひにされては()つから勘定(かんぢやう)()ひませぬ。172何卒(どうぞ)一度(いちど)(かんが)(なほ)しを(ねが)ひます』
173三千(みち)『お(だま)りなさい。174左様(さやう)(こと)仰有(おつしや)ると最早(もはや)容赦(ようしや)はしませぬぞ。175高手(たかて)小手(こて)(いまし)唐丸籠(たうまるかご)()せてハルナの(みやこ)(おく)(とど)けませうか。176(また)何程(なにほど)(まへ)がデビス(ひめ)(さま)恋慕(れんぼ)して()つても、177肝腎(かんじん)(ひめ)(さま)がお(きら)(あそ)ばしたら如何(どう)する(つも)りだ。178(あい)なき結婚(けつこん)でもお(まへ)(こころよ)(おも)ふのか。179家令(かれい)(せがれ)にも()ず、180(わけ)(わか)らぬ(こと)仰有(おつしや)るぢやないか』
181ワツクス『吾々(われわれ)威喝(ゐかつ)して二人(ふたり)恋仲(こひなか)(さへぎ)(あと)にヌツケリコとお(まへ)さまが養子(やうし)這入(はい)りこむ(かんが)へだらう。182そんな(こた)あチヤーンと()のワツクスは(はら)(そこ)まで()んで()りますぞ』
183三千(みち)『これはしたり、184迷惑千万(めいわくせんばん)185(なん)()失礼(しつれい)(こと)(おほ)せられるか。186吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)187大切(たいせつ)なるメツセージを()けて(ある)(ところ)まで(すす)まねばならぬ()(うへ)188(をんな)()れるなどとは(おも)ひも()らぬ(こと)189(まへ)(こころ)(もつ)吾々(われわれ)(こころ)測量(そくりやう)するとは(ちつ)失礼(しつれい)では(ござ)らぬか』
190ワツクス『宣伝使(せんでんし)()ふものは、191そんな(こと)をよく()ふものです。192(くち)でこそ立派(りつぱ)女嫌(をんなぎら)ひの(やう)(こと)()つて()ますが(かげ)(まは)ると、193もとが人間(にんげん)ですから駄目(だめ)ですわい。194デビス(ひめ)(さま)()しけりや()しいとハツキリ()ひなさい』
195(ひめ)『これ、196ワツクス、197(なん)()失礼(しつれい)(こと)(まを)すのだ。198玉盗人(たまぬすびと)はお(まへ)(ちが)ひない。199現在(げんざい)(まへ)(おや)証明(しようめい)して()るのぢやないか』
200 ワツクスは自棄糞(やけくそ)になり、201(しり)をクレツと(まく)つて(この)()(あと)に、202一目散(いちもくさん)表門(おもてもん)(くぐ)つて()()した。203小国姫(をくにひめ)()()つてエルを(まね)きワツクスの(あと)追跡(つゐせき)せよと(めい)じた。204狼狽者(あわてもの)のエルは(みな)まで()かず、205『ハイ、206承知(しようち)しました』と(また)もや此処(ここ)()()地響(ぢひび)きさせ(なが)らドンドンドンと門外(もんぐわい)()()し、207(みち)(かぎ)()になつた(とこ)を、208(あたま)(さき)につき()(からだ)(よこ)にして(はし)途端(とたん)に、209あまり(ひろ)くもない道端(みちばた)(かき)()大牛(おほうし)(つな)いであつた。210(その)(うし)(しり)にドンと、211頭突(づつき)をかました。212(うし)(おどろ)いてポンと()つた拍子(ひやうし)にエルはウンと(ばか)(たふ)れた。213(うし)(ふた)()(しり)()つて(ふたた)びエルの睾丸(きんたま)(はし)をグツと()み、214(ちから)()れてグーツと(ねぢ)た。215エルはキヤツキヤツと悲鳴(ひめい)()げてゐる。216(とほ)りかかつた旅人(たびびと)近所(きんじよ)(いへ)からドヤドヤと(あつ)まつて()てエルを(たす)け、217(かたはら)(ある)(いへ)(かつ)()み、218様子(やうす)()けばエルは(かほ)(しか)(なが)ら、
219エル『(みな)さま、220如意宝珠(によいほつしゆ)のお(たから)()()りました。221そして様子(やうす)()けばワツクスが(たま)所在(ありか)(さが)した御褒美(ごほうび)に、222デビス(ひめ)さまの婿(むこ)になると()(こと)ですよ。223それから小国別(をくにわけ)(さま)御危篤(ごきとく)何時(なんどき)(いき)()きとられるか(わか)りませぬ。224大方(おほかた)今頃(いまごろ)絶命(ことぎ)れたかも()れませぬ、225大変(たいへん)(ござ)います。226(どうぞ)(みな)さま、227一時(いつとき)(はや)各自(てんで)町内(ちやうない)()れまはり城内(じやうない)(くや)みに()つて(くだ)さい』
228とまだ()んでも()ないのに、229()まはしよく()んだものと仮定(かてい)して吹聴(ふゐちやう)した。230(これ)()いた老若男女(らうにやくなんによ)(つぎ)から(つぎ)へと、231(しり)はし()駄賃(だちん)とらずの郵便配達(ゆうびんはいたつ)となつて、
232如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)()()つた。233そして小国別(をくにわけ)国替(くにが)へをなさつて、234ワツクスがデビス(ひめ)(さま)婿(むこ)にきまつた』
235一軒(いつけん)(のこ)らず、236御丁寧(ごていねい)布令(ふれ)まはつた。
237 テルモン(ざん)(ふもと)(まち)(にはか)にガヤガヤと(さわ)()し、238衣裳(いしやう)着替(きか)へて(やかた)(くや)みに()くもの()きもきらず、239(にはか)大騒動(おほさうどう)(おこ)つた(やう)になつて()た。240エルは睾丸(きんたま)(はし)(うし)(つめ)むしりとられ、241益々(ますます)体中(からだぢう)(ねつ)(たか)まつて『()んだ()んだ』と囈言(うさごと)ばかり(さへづ)つて()る。
242 (にはか)小国別(をくにわけ)()()いて()老若男女(らうにやくなんによ)もあれば、243馬鹿息子(ばかむすこ)のワツクスがデビス(ひめ)婿(むこ)になるげなと(おどろ)いて()れる(やつ)もあり、244如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)(かへ)つたと(よろこ)ぶものもあり、245テルモン(ざん)(ふもと)宮町(みやまち)(この)(うはさ)()ちきりとなつた。246()(はや)(をとこ)(はや)くも(のぼり)()て「神司(かむつかさ)小国別(をくにわけ)御他界(ごたかい)(とむら)ふ」とか、247如意宝珠(によいほつしゆ)再出現(さいしゆつげん)」とか、248「デビス(ひめ)ワツクスとの御結婚(ごけつこん)(しゆく)す」とか()(なが)(のぼり)()てて、249ワツシヨ ワツシヨと辻々(つじつじ)(まは)(はじ)めた。
250 かかる(ところ)宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(すず)しく町外(まちはづ)れの(はう)から(きこ)えて()た。251(この)(こゑ)求道居士(きうだうこじ)がデビス(ひめ)252ケリナ(ひめ)(たす)けて(かへ)()るにぞありける。
253大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 北村隆光録)