霊国の面影
天恩郷
万寿苑の
松樹
絶頂に
立てる
銀杏の
大木
風にゆすられて
自然の
音楽を
奏し
舞踏を
演ず
タワタワと
鳥の
七八羽
風の
波路を
悠然として
漕ぎ
渡り
春の
初めの
空を
あやなしてゐる
〈序文(初)〉
一茎の
芦にも
涙滲み
出る
自然に
憧憬する
吾心〈総説(初)〉
大地をば
再び
踏まじと
定めてし
いたづきの
身も
神に
蘇生す
〈総説(初)〉
一茎の
草にも
神の
宝体を
観るぞ
嬉しき
大本の
教〈総説(初)〉
一石の
水に
天使の
音楽と
舞踊を
観たり
神に
在る
吾〈総説(初)〉
病める
時悲める
時吾魂は
根底の
鬼声に
慄ひをののく
〈総説(初)〉
土のごと
氷の
如く
冷やかな
無宗教者のあはれ
霊魂〈総説(初)〉
純一に
生ける
神さへ
種々の
相を
顕はし
玉ふ
世の
中〈総説(初)〉
月星も
皆打ち
消され
暁の
空に
憤怒の
太陽輝く
〈総説(初)〉
太陽は
憤るが
如く
憂愁に
沈める
身をば
睨ませたまふ
〈第1章(初)〉
憂愁に
沈み
果てたる
吾魂を
月の
影のみひとり
光らせる
〈第1章(初)〉
闇黒な
嚢のやうな
天地と
思ひ
悩みぬ
神忘れたる
夕〈第1章(初)〉
闇黒の
夜の
戸張に
包まれて
鬼のささやき
聞くぞ
淋しき
〈第3章(初)〉
鈴の
音は
虚空を
歩み
笙の
音は
地上を
流れ
極てなき
国へ
移り
行く
〈第3章(初)〉
行く
水は
光明を
流し
真白なる
水泡と
共にいづれへか
行く
〈第3章(初)〉
耳に
聞きし
神の
御声を
面のあたり
目に
見し
今日の
夕べ
嬉しき
〈第4章(初)〉
時分をば
見出だしたる恐ろしき
姿に
胸の
懺悔火盛かる
〈第4章(初)〉
愚かさと
弱きにをののくその
外に
吾を
教ふる
導師なきかな
〈第4章(初)〉
人中で
説法せよと
攻めらるる
その
惨憺さ
消へも
入りたき
〈第5章(初)〉
円相の
光りに
憧憬れ
来るといふ
人こそ
吾が
身の
導師なりけり
〈第5章(初)〉
吾が
魂のあら
浪風も
和ぎ
初めて
妻子と
共に
神祭りしぬ
〈第5章(初)〉
寂しさに
悩みし
吾も
法悦の
雨にうるほひて
祖霊を
拝む
〈第5章(初)〉
産土の
神に
詣でて
故郷の
母にし
会へば
子供心地す
〈第5章(初)〉
恋しがる汝に送りし文のまた
帰り
来ずとも
恨みも
得せず
〈第5章(初)〉
君まさぬ
淋しき
夜半に
只一人雌猫の
背を
撫でて
眠りぬ
〈第5章(初)〉
窓近く
来鳴く
鶯心あらば
吾が
恋ふ
人に
告げよくはしく
〈第5章(初)〉
陽炎のもえ
立つ
野辺に
一本の
桜の
老木春をうたへる
〈第6章(初)〉
日々に
二円の
金を
恵み
玉ふ
野原の
夕陽棟にかがやく
〈第8章(初)〉
終日の
汗を
搾りし
代を
以て
買ひ
求めたる
米のうまさよ
〈第8章(初)〉
汗しぼり
働きて
喰ふ
麦の
飯に
妻子とともに
舌鼓打つ
〈第12章(初)〉
若き日を偲びて
米かひて
父が
帰るを
待ちわびつ
涙ながらに
眠るいとし
児〈第13章(初)〉
三銭の
稲荷鮓をば
嬉しげに
寝床にて
喰ふ
吾が
児いぢらし
〈第13章(初)〉
森厳と
神秘に
富める
三五教も
詩的仏教も
真髄等しき
〈第14章(初)〉
全心を
頭陀袋とし
人々の
言の
葉貰ひ
歩行くは
文士〈第14章(初)〉
世の
人の
言葉を
胸に
貯へて
まさかの
時に
使へ
宣伝使〈第14章(初)〉
熱の
無き
鋭き
焔の
刃もて
切り
開きゆく
大和魂〈第16章(初)〉
これは
霜雪にやあるとよく
見れば
あしたの
芝生剣かざせり
〈第16章(初)〉
鼻垂男もの
言ふ
花に
鼻毛抜かれ
〈第17章(初)〉
百花壇造る
男の
鼻赤し
〈第17章(初)〉
献労の
腕はシコタマ
飯を
食ひ
亀城趾や
万代不動の
石たたみ
小説は
謀叛人かと
下女は
由井
日にやけて
光照殿の
基礎工事
亀城趾に
亀の
甲型の
石を
積み
宣伝使採用されたと
宣伝し
名物のツツジは
汽車で
久留米籠
天恩の
郷にサツキも
花咲かせ(サツキは光秀の母)
〈第18章(初)〉
[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に作成しました]