霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 焚付(たきつけ)〔一五〇七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第2篇 厄気悋々 よみ:やっきりんりん
章:第7章 焚付 よみ:たきつけ 通し章番号:1507
口述日:1923(大正12)年04月01日(旧02月16日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版: 八幡書店版:第10輯 517頁 修補版: 校定版:96頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 チルナ(ひめ)一間(ひとま)()つて悋気(りんき)(つの)()やしながら、002自分(じぶん)(かみ)をひきむしつたり、003(かうがい)()げたり、004鏡台(きやうだい)()つくり(かへ)したり、005室内(しつない)(にはか)二百十日(にひやくとをか)(あらし)()いたやうになつて()る。006そこへ一杯機嫌(いつぱいきげん)(かへ)つて()たのは、007キャプテンのチルテルであつた。008チルテルは門口(かどぐち)から大声(おほごゑ)()げ、
009チルテル『オーイ女房(にようばう)010(いま)(もど)つたぞや、011(はや)()けないか。012(なん)(なか)から()突張(つつぱり)をこうて()やがると()えて、013()しても()いても()きやしないわ。014あゝこんな(こと)なら、015兵士(へいし)()れて(かへ)つたらよかつたに、016誰奴(どいつ)此奴(こいつ)(みな)(さけ)(くら)()つてドブさつて仕舞(しまひ)よつた。017今日(けふ)(やま)(かみ)面体(めんてい)低気圧(ていきあつ)襲来(しふらい)して()たと()(こと)予期(よき)して()たのだが、018これや(また)どうした(こと)だい。019オーイ()けぬか、020()けぬか』
021()一生懸命(いつしやうけんめい)(にぎ)(こぶし)(たた)いて()る。
022 カンナは(おどろ)(いそ)()()け、
023カンナ『あ、024旦那様(だんなさま)ようお(かへ)りなさいませ』
025チルテル『ウン、026あまり軍務(ぐんむ)(いそが)しいので、027つい(おそ)くなつて、028(おく)()()ねたであらうなア』
029カンナ『ヘエ、030あの(おく)さまですか、031(おほ)きな(こゑ)では(まを)されませぬが、032どうも形勢(けいせい)険悪(けんあく)なので容易(ようい)(ちか)よる(こと)出来(でき)ませぬ。033貴方(あなた)がお(かへ)りになつたら、034一騒動(ひとさうどう)(はじ)まるであらうとビクビクもので()つて()ました。035何卒(どうぞ)(やかま)しう仰有(おつしや)らずに036ソツと寝間(ねま)這入(はい)つて(やす)んで(いただ)きたいものですなア』
037チルテル『(なに)038(おく)(おこ)つて()るのか。039イヤ、040そいつは面白(おもしろ)い。041(ひと)(おこ)らして自分(じぶん)(はう)から()()()れるやうにと()つて()たのだ。042オイ、043カンナ、044貴様(きさま)によい土産(みやげ)()つて(かへ)つた。045第一号(だいいちがう)倉庫(さうこ)()れてある、046(すこぶ)(てき)のナイスだよ。047(ひと)貴様(きさま)女房(かない)焚付(たきつ)048自分(じぶん)から()()すやうにして()れたら、049あのナイスをお(まへ)女房(にようばう)にしてやらうと050ソツと掠奪(りやくだつ)して()たのだ。051随分(ずいぶん)立派(りつぱ)なものだぞ』
052カンナ『(さすが)はキャプテン(さま)053種々(いろいろ)とお()をつけ(くだ)さいまして有難(ありがた)(ござ)います。054到底(たうてい)(うら)のナイスは(わたし)(たち)(てこ)には()ひませぬからな』
055チルテル『(なに)0551(うら)のナイスにお(まへ)056(もの)()つたのか』
057 カンナは(あたま)をガシガシと()(なが)ら、058()(にく)さうに、
059カンナ『ハイ、060一寸(ちよつと)(ついで)にナイスの意向(いかう)(さぐ)つて()ました(ところ)061仲々(なかなか)(えら)いものですな。062テクの(やつ)063(にはか)中尉(ちうゐ)だと威張(ゐば)つて()()ましたが、064一耐(ひとたま)りもなく()()められて、065不減口(へらずぐち)(たた)いて遁走(とんそう)しました。066本当(ほんたう)に、067人間(にんげん)(てこ)()ふナイスでは(ござ)いませぬわ。068そして「キャプテン(さま)にお()にかかつて(くは)しいお(はなし)(うけたま)はりませう」と()まし()んで()るのですもの、069(よろこ)びなさいませ。070屹度(きつと)(みやく)がありますよ』
071チルテル『ナイスの(こと)はお(まへ)(たち)(ちから)ではどうする(こと)出来(でき)ぬ。072(かま)ふて()れるな、073いらいだてをすると074(かへつ)(いち)()らず()()らずになつて仕舞(しま)ふ。075ああして(おれ)(うち)二三日(にさんにち)()いて()れと()ふのだから、076(おれ)思召(おぼしめし)()るのに(ちが)ひない。077(しか)(おれ)には女房(にようばう)があるから、078あのナイスも遠慮(ゑんりよ)して()るのだ。079其処(そこ)それ080()()かさなければ駄目(だめ)だからなア。081女房(にようばう)さへ()ければ、082()つて()いても(おれ)(なび)いて()るのは既定(きてい)事実(じじつ)だ、083ウフヽヽヽ』
084カンナ『(ひと)つそれでは奮闘(ふんとう)して()ませう。085(おく)さまを(おこ)らせうと(おも)へば、086(ちつ)とは旦那(だんな)悪口(わるくち)()ひますから(あらかじ)御承知(ごしようち)(ねが)ひます』
087チルテル『よし、088目的(もくてき)さへ(たつ)すればよいのだ、089手段(しゆだん)(えら)ばない。090そこはお(まへ)(まか)して()く。091(うま)くやつて()れ。092(しか)(あま)(おこ)らして自害(じがい)でもやつて()れると(こま)るよ。093其処(そこ)見計(みはか)らつて、094(いへ)()()程度(ていど)(はか)らつて()れ』
095カンナ『よろしい、096(なん)(むつかし)(こと)(たの)まれたものだが、097(ひと)(はか)らつて()ませう……(おく)さまのお(こころ)がお可憐(いとし)いわい』
098チルテル『オイ、099そんな()(よわ)(こと)でどうしてこの大任(たいにん)(はた)せるか。100もつと(こころ)(おに)にして()かないと駄目(だめ)だぞ』
101カンナ『ハイ、102()(どく)だと()つたのは社交上(しやかうじやう)辞令(じれい)ですよ。103()(どく)ながら、104おつ()()るやうに尽力(じんりよく)して()ませう、105貴方(あなた)離家(はなれ)()つて(ゆつく)りお(たの)しみなさいませ。106さうして(おく)さまの部屋(へや)から障子(しやうじ)(かげ)()えるやうに仕組(しぐ)んで(もら)はなくては駄目(だめ)ですよ。107成可(なるべ)くは抱擁(はうよう)キッス握手(あくしゆ)などの光景(くわうけい)()えるやうに仕組(しぐ)んで(もら)()いものですな。108(わたし)オホン(おほ)きな咳払(せきばら)ひをしたら握手(あくしゆ)するのですよ。109そうして(うま)(うつ)して(もら)ふのですよ』
110チルテル『(まる)幻燈屋(げんとうや)()たやうな(こと)をするのだなア』
111カンナ『そこで現当利益(げんとうりやく)(あら)はれるのですもの、112エヘヽヽヽ』
113 チルテルはヒヨロヒヨロと千鳥足(ちどりあし)にて初稚姫(はつわかひめ)居間(ゐま)(すす)()く。
114チルテル『あゝ(ひめ)(さま)115随分(ずいぶん)退屈(たいくつ)(ござ)いませうなア。116(はや)(かへ)つてお(はなし)相手(あいて)にならねば()まないと(おも)ふて()ましたが、117何分(なにぶん)軍務(ぐんむ)(いそが)しいのでつい(おそ)くなつて()みませぬ』
118初稚(はつわか)『どうも、119いかい御厄介(ごやつかい)になりまして申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬ。120大変(たいへん)御機嫌(ごきげん)(ござ)います。121随分(ずいぶん)(さけ)(あが)つたと()えますな』
122チルテル『イヤ一寸(ちよつと)九一升(くいつしよう)ばかり()つかけたものだから123(ちつ)とばかり酩酊(めいてい)(いた)しました。124どうも()みませぬがお(ちや)なりと一杯(いつぱい)(くだ)さいませぬか、125貴女(あなた)(やはら)かいお手々(てて)()んで(いただ)けば一層(いつそう)美味(おい)しいでせう』
126初稚(はつわか)『オホヽヽヽ。127(なに)御冗談(ごじやうだん)仰有(おつしや)います、128貴方(あなた)129奥様(おくさま)御挨拶(ごあいさつ)なさいましたか。130大変(たいへん)にお()(かね)御様子(ごやうす)(ござ)いましたよ』
131チルテル『(おく)さまと()へば(おく)にすつ()んで()ればよいものです。
132あなた()てから(いへ)(かか)()れば
133千里(せんり)奥山(おくやま)古狸(ふるだぬき)
134アハヽヽヽ、135いやもう()()はない女房(にようばう)ですよ。136(ふた)()には悋気(りんき)(つの)(はや)し、137喉笛(のどぶえ)(くら)()くのですもの、138あんな女房(にようばう)()つた(をつと)(ほど)不幸(ふかう)なものは()りませぬわい。139アハヽヽヽ』
140初稚(はつわか)(なに)仰有(おつしや)います。141あんな貞淑(ていしゆく)奥様(おくさま)何処(どこ)(ござ)いませうか、142悋気(りんき)をなさらないやうな奥様(おくさま)だつたら駄目(だめ)ですよ。143きつと(ほか)(こころ)(うつ)して()るのです。144(てん)にも()にも貴方(あなた)一人(ひとり)思召(おぼしめ)すからこそ145(たま)には悋気(りんき)もなさるのですからな。146サア(はや)奥様(おくさま)のお()(やす)まるやうにお言葉(ことば)をおかけなさいませ。147(その)(うへ)にて(わらは)(そば)にお(いで)(くだ)されば、148(わらは)奥様(おくさま)(たい)大変(たいへん)()(らく)(ござ)いますからな』
149チルテル『()(かく)(あし)()ちませぬ、150(しばら)此処(ここ)(ゆつく)りさして(くだ)さい。151あゝ(くる)しい(くる)しい、152(たれ)(むね)(さす)つて()れるものは()からうかな。153あゝ(くる)しい(くる)しい。154(ひめ)さま(まこと)()みませぬが、155一寸(ちよつと)(わたし)(むね)(さす)つて(いただ)けませぬか』
156初稚(はつわか)『そんなら、157(せな)(さす)らして(いただ)きませう』
158故意(わざ)とに(あと)(まは)(せな)(さす)つて()る。159一方(いつぱう)カンナはチルナ(ひめ)居間(ゐま)(あわ)ただしく()()り、
160カンナ『もし、161奥様(おくさま)
162小声(こごゑ)になつて、
163御用心(ごようじん)なさいませ。164タヽ大変(たいへん)(ござ)いますよ。165貴方(あなた)御主人(ごしゆじん)今日(けふ)二人(ふたり)美人(びじん)()()かれ、166()(ほそ)うしてゐらつしやいました。167さうして(その)(うた)()()はないのです。168(わたし)成可(なるべ)(いへ)(なか)浪風(なみかぜ)()たないやうに、169旦那様(だんなさま)(こと)奥様(おくさま)(みみ)()らないやうにして(いま)(まで)何度(なんど)(つつ)んで()ましたが、170もう(つつ)んで()られぬやうになりました。171奥様(おくさま)がお可哀(かあい)さうで(たま)らないやうになりました。172旦那様(だんなさま)(ばか)りの部下(ぶか)ではない。173奥様(おくさま)(ため)にも部下(ぶか)ですからなア。174奥様(おくさま)から御意見(ごいけん)(あそ)ばすやう、175そつとお()らせ(いた)します』
176チルナ『(なに)177あの(うら)初稚姫(はつわかひめ)とか()(をんな)(ほか)にまだよい(をんな)出来(でき)()るのかい』
178カンナ『ヘエヘエ、179奥様(おくさま)はお()(どく)ですな。180ほんたうに、181可哀(かあい)さうだわい。182()旦那様(だんなさま)(うた)御紹介(ごせうかい)(いた)しませう。183(けつ)して、184(はら)()てて(くだ)さいますなよ。
185(うち)(かか)()れば()(ほど)(はら)()
186(たこ)のお(ばけ)古狸(ふるだぬき)
187()ふやうな(うた)(うた)つていらつしやるのですよ。188貴方(あなた)のやうな美人(びじん)を、189(たこ)のお(ばけ)だの古狸(ふるだぬき)だのと仰有(おつしや)るのですからな。190(をんな)(はう)けると、191蜥蜴(とかげ)のやうな(かほ)した(をんな)でも天女(てんによ)のやうに()えると()えますな』
192 チルナは()(ふる)はし(なが)ら、193キリキリキリと()()み、194(かみ)をパツと逆立(さかだ)てた。
195カンナ『まだまだ奥様(おくさま)こんな(こと)(おこ)つてはいけませぬ。196もつと(すご)文句(もんく)がありますよ。197(なん)でも(をんな)()(わす)れましたが、198彼女(あいつ)はキーチャンの(はて)かも()れませぬが、199旦那様(だんなさま)(つか)まへて(うた)ひやがつたのが()()はぬのです。200(わたし)はその(うた)()くと()がガチガチ()()しました。
201(かか)(たた)()()は○○○○○
202(あと)女房(にようばう)にや(わし)()く。
203てな(こと)(ぬか)しやがるのですよ。204(ごふ)()くの()かぬのと、205(わたし)奥様(おくさま)だつたら矢庭(やには)胸倉(むなぐら)をグツと()り、206(たぶさ)(つか)むで(ひき)ずり(まは)してやるのですけれどな。207(それ)旦那様(だんなさま)は、208エヘヽヽ、209オホヽヽ、210(かほ)相好(さうがう)(くづ)して(わら)つていらつしやるのですもの。
211(うち)(かか)白粉(おしろい)おとした素顔(すがほ)()たら
212(むね)がむかむか嘔吐(へど)()る。
213214ヘヽヽヽ。215こんな(こと)仰有(おつしや)るのですよ。
216どうしても()げて(かへ)らにや女房(にようばう)(やつ)
217(たけ)(ふん)つけ()いて()す。
218あた(きたな)い、219奥様(おくさま)220(たけ)(さき)(ふん)つけて()()してやらうと旦那様(だんなさま)(うた)つていらつしやいましたよ。221(じつ)(わたし)()いてもフンガイ(いた)りですワ』
222チルナ『アヽ口惜(くちをし)い、223残念(ざんねん)残念(ざんねん)や、224どうしてこの(うらみ)()らしてよからうかなア。225旦那様(だんなさま)はそんな(なさ)けない(こと)仰有(おつしや)(ひと)ぢやない、226(をんな)(わる)いのだ。227(その)(をんな)何処(どこ)()る。228(その)(をんな)(さが)()(かたき)()つてやらねばなりませぬ』
229血相(けつさう)()へて()(あが)る。230カンナは大手(おほで)(ひろ)げて()(ふさ)がり、
231カンナ『まアまアお()ちなさいませ。232血相(けつさう)かへて()んの(こと)ですか。233(かたき)なら(わたし)()つて()げます。234そして貴女(あなた)はまだお目出度(めでた)いですな。235旦那様(だんなさま)贔屓(ひいき)して()らつしやるが、236旦那様(だんなさま)(この)(あひだ)(わたし)()んで、237「あんな(かかあ)()るのも(いや)だ。238(なん)とかして()()分別(ふんべつ)()からうか」と仰有(おつしや)いましたが、239「これはしたり、240こんな(こと)をなさつては人道(じんだう)(はづ)れます」とお(いさ)(まを)したら、241旦那様(だんなさま)はプリンと(おこ)つてハツキリ(わたし)には(もの)()うて(くだ)さらぬのですもの、242ホントに(こま)つて(しま)ひますワ。
243チルナ(ひめ)()るな()るなと(いま)(まで)
244可愛(かあい)がつたが馬鹿(ばか)らしや。
245(はや)()(はな)桜木(さくらぎ)(ひと)武士(ぶし)
246(はや)()()れチルナ(ひめ)
247(うち)(かか)なぜにあれ(ほど)強太(しぶと)いか
248(わし)(きら)ふのが(わか)らないか
249 ()てもうるさいボテ(かか)よ。
250奥山(おくやま)(たぬき)(きつね)()けたやうな
251(かほ)()るたびゾツとする。
252(それ)よりも(うら)(はな)れの初稚姫(はつわかひめ)
253(わし)女房(にようばう)にやよく似合(にあ)ふ。
254とか(なん)とか()つて、255それはそれは(えら)権幕(けんまく)ですよ。256(おく)さまよく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。257貴方(あなた)のやうな容色(きりやう)をして258(いや)がられる(ところ)()らなくても()いぢやありませぬか、259オツホン260あれあれ261あの障子(しやうじ)(かげ)御覧(ごらん)なさい。262(せな)(さす)つて()るのは(をんな)でせう。263あんな(ところ)()せつけられて264貴女(あなた)ノメノメとよくこんな(ところ)()られますな』
265チルナ『(わたし)(この)(うち)をどこ(まで)()ませぬよ。266(をつと)(をんな)()れて(わたし)()()さうとすれば尚更(なほさら)のこと、267此処(ここ)頑張(ぐわんば)つて()つて邪魔(じやま)してやるのです。268それが(をんな)意地(いぢ)ですもの。269(この)()()るや(いな)夫婦(ふうふ)気取(きど)りになつて(くら)されては(つま)らないもの。270エヽ()かない阿魔(あま)(ちよ)だな。271(ひと)大事(だいじ)主人(しゆじん)(なん)(おも)つて大胆(だいたん)至極(しごく)にもあんな(こと)をするのだらう。272これお(まへ)273(すこ)退()いてお()れ。274ちと(あば)れますから怪我(けが)をしても()らないよ』
275と、276障子(しやうじ)をバリバリ、277火鉢(ひばち)(まど)(そと)へカンカラカラ。278瀬戸物(せともの)()れる(おと)ケンケラケン、279ガチヤ ガチヤ ガチヤ ガタガタガタ、280四股(しこ)()(おと)ドンドンドン、281ドスンドスンドスン。
282カンナ『もしもし奥様(おくさま)283そんなお乱暴(らんばう)(こと)をして(もら)つては、284(あと)(おく)さまが(ござ)るぢや(ござ)いませぬか』
285チルナ『エヽ(かま)ふてお()れな、286(この)部屋(へや)(わたし)自由(じいう)だ、287(たた)(こは)さうと、2871どうならうと、288(みな)さまのお世話(せわ)にはなりませぬよ』
289 ガタガタ、290ドスンドスン、291バリバリバリ。
292 (この)物音(ものおと)(おどろ)いてチルテルは、
293チルテル『コラ(なに)をさらす』
294血相(けつさう)()へて(はし)(きた)り、295チルナの(たぶさ)をグイと鷲掴(わしづか)み、296(みぎ)()拳骨(げんこつ)(かた)めて(みつ)()(なぐ)りつけた。297チルナは一生懸命(いつしやうけんめい)逆上(のぼせ)あがり、298金切声(きんきりごゑ)()して、
299チルナ『エヽ悪性爺(あくしやうおやぢ)()300チルナが臨終(いまわ)(わか)れ、301死物狂(しにものぐる)ひだ』
302武者振(むしやぶ)りつき、303睾丸(きんたま)をグツと(にぎ)(ちから)(かぎ)りに()()つた。304チルテルはウンと(その)()(たふ)れける。
305大正一二・四・一 旧二・一六 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)