霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 狐穴(こけつ)〔一五一二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第2篇 厄気悋々 よみ(新仮名遣い):やっきりんりん
章:第12章 狐穴 よみ(新仮名遣い):こけつ 通し章番号:1512
口述日:1923(大正12)年04月02日(旧02月17日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
チルテルは、ヘールに命じて初稚姫を呼びにやらせたが、いつまでたっても戻ってこない。耳をすましてみれば、ヘールは初稚姫を横領しようとあからさまに口説いている。怒ってやってきてみれば、ヘールは初稚姫に押さえつけられて苦しんでいる。
その有様を見たチルテルはヘールの有様に吹き出してしまった。チルテルは、妻とはもう別れたから初稚姫を後妻に入れようと言い、横恋慕したヘールを首にすると言い渡した。
初稚姫はヘールを押さえつけながら、この男はあまり憎いとは思わないが、力をためそうとこのようにしているのだと答え、どことなしに益荒男の息が通っているとヘールを誉めた。
いぶかるチルテルに対し、初稚姫は妻を縛って蔵の中へ投げ込むような恐ろしい男にはけっして靡かないと歌で答えた。
初稚姫はぱっとヘールを放した。チルテルとヘールは初稚姫を巡って角突き合わせている。初稚姫は、自分は階級などには頓着しない、ただ男らしい男であればよく、器量が悪くても力の強い夫を持ちたいと二人に答えた。
初稚姫に乗せられた二人は、庭で相撲を取って勝負を決めることになった。二人は落とし穴の側で四股を踏んでいる。そこへテクが走ってやって来た。テクはいぶかったが、二人の行司を買って出た。
初稚姫は、自分が行司をするから、三人で誰が自分の夫になるか力比べをするのがよいと言いだした。さっそくヘールがチルテルに組みついて勝負が始まった。
二人はしばらく闘っていたが、チルテルが勝り、ヘールは押し倒されて深い落とし穴へ投げ込まれてしまった。次いでテクがチルテルに突っかかる。半時ばかりの勝負の後、テクがチルテルを落とし穴に投げ込んだ。
相撲の間に、ワックス、ヘルマン、エキス、エルの四人は関所の門を潜り、裏庭に妙な音が聞こえるので中へ入ってきた。見れば、二人の男が相撲を取っているのでそばに来て勝負を眺めていた。
勝者のテクは起き上がり、自分が初稚姫の夫となってキャプテンの座もいただくのだ、と悦に入っている。ワックス他三人は、初稚姫の美貌に見とれてポカンとしている。
初稚姫は、勝利のお祝いに、やってきた四人のバラモン信者に酒でも振る舞ったらどうか、とテクに勧めた。テクはすっかりキャプテン気取りになって、四人を酒宴に誘う。
初稚姫はテクに手を差し出した。テクは手を伸ばして初稚姫の手を握った。たちまち姫の手から白い毛がモジャモジャと生えだした。驚いてみると、姫は驢馬のような大きな白狐となってしまった。
テクとワックスたちは驚いて逃げ出そうとするとたん、ワックスたち四人は落とし穴に落ち込んでしまった。初稚姫に変化していたのは、三五教を守護する白狐・旭であった。旭は庭園の茂みを潜って、どこともなく姿を隠した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-05-06 15:26:02 OBC :rm5912
愛善世界社版:158頁 八幡書店版:第10輯 541頁 修補版: 校定版:167頁 普及版: 初版: ページ備考:
001(つま)のチルナに茶袋(ちやぶくろ)
002(ちから)(かぎ)りに()められて
003ウンと(ばか)りに気絶(きぜつ)した
004(やかた)主人(あるじ)チルテルは
005(やうや)(いた)みも回復(くわいふく)
006(ふたた)(こひ)(ほのほ)をば
007()やしてヘールのユゥンケルに
008(めい)じて(ひめ)介抱(かいはう)
009(むか)(きた)れと(めい)じおき
010仮病(けびやう)使(つか)つて(おく)()
011ウンウンウンウンと(うめき)つつ
012()てど(くら)せどユゥンケルは
013(なん)音沙汰(おとさた)()きのみか
014(みみ)()まして(うかが)へば
015肝腎要(かんじんかなめ)のナイスをば
016横領(わうりやう)せむと種々(いろいろ)
017ベストを(つく)すと()るよりも
018羅刹(らせつ)(ごと)くに(いか)()
019(かみ)(さか)だててチガチガと
020片手(かたて)茶袋(ちやぶくろ)(おさ)へつつ
021(ひめ)住所(すみか)()()れば
022(あに)(はか)らむやユゥンケルは
023初稚姫(はつわかひめ)細腕(ほそうで)
024取挫(とりひし)がれてハアハアと
025(くる)しみ()たる可笑(をか)しさよ
026チルテル(おも)はず()(いだ)
027嫉妬(しつと)(ねん)もどこへやら
028チルテル『アハヽヽヽお(ひめ)(さま)
029()天晴(あつぱれ)()神力(しんりき)
030キャプテン(かん)()りました
031かく(いさ)ましき女丈夫(ぢよぢやうぶ)
032これの(やかた)()ませしは
033(まつた)(かみ)賜物(たまもの)
034女房(にようばう)(はな)れしキャプテンの
035()(あは)れみて二世(にせ)(つま)
036(とも)千歳(ちとせ)(ちぎ)れよと
037梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
038大国彦(おほくにひこ)(おん)(しめ)
039()有難(ありがた)次第(しだい)なり
040おのれユゥンケル(ひめ)(さま)
041(まへ)をも(おそ)(はばか)らず
042(いくさ)(つかさ)()(もつ)
043無体(むたい)恋慕(れんぼ)(いた)すとは
044乱暴(らんばう)至極(しごく)痴漢(しれもの)
045もう(これ)からはキャプテンが
046(なんぢ)(いとま)()(ほど)
047(はや)(この)()()退()いて
048(かぜ)()野辺(のべ)彷徨(さまよ)ひつ
049(その)()()ては物貰(ものもら)
050袖乞奴(そでごひやつこ)となり(さが)
051天女(てんによ)のやうな(ひめ)(さま)
052(くる)しめまつりし罪咎(つみとが)
053天地(てんち)謝罪(しやざい)するがよい
054サアサア(はや)()()れよ
055これの(やかた)はキャプテンが
056千代(ちよ)住家(すみか)である(ほど)
057(こころ)(けが)れし(なんぢ)()
058身魂(みたま)()まふ場所(ばしよ)でない
059伊吹戸主(いぶきどぬしの)大御神(おほみかみ)
060これの(やかた)(けが)したる
061製糞(せいふん)機械(きかい)一時(ひととき)
062()(すむや)けく科戸辺(しなどべ)
063(かぜ)(はら)はせたまへかし
064嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
065(かみ)使(つかひ)(ひめ)(さま)
066かはりて(ねが)(たてまつ)
067アハヽヽハツハ、アハヽヽヽ
068()にも(あさ)ましい(ざま)ぢやなア
069()(ほど)()らぬユゥンケルが
070()()()てはこの(とほ)
071天罰(てんばつ)(たちま)(めぐ)()
072赤恥(あかはぢ)さらす(あは)れさよ
073イヒヽヽヒツヒ イヒヽヽヽ』
074初稚姫(はつわかひめ)(この)(をとこ)(あま)(にく)しと(おも)はねど
075(ちから)ためさむために()くしぬ。
076さりながらどことはなしに益良夫(ますらを)
077(いき)かようこそ(うれ)しかりけり』
078チルテルは(この)(うた)()いて意外(いぐわい)面持(おももち)しながら、
079チルテル『これはしたり曲津(まがつ)(かみ)容器(いれもの)
080(あは)れみ(たま)ふか(こころ)もとなや』
081初稚姫(はつわかひめ)二世(にせ)(つま)(しば)りて(くら)(くら)(うち)
082()()みたりし(ひと)(にく)らし。
083(われ)(また)女房(にようばう)となりて(くら)(なか)
084(つな)がれむかと(おそ)ろしくなりぬ。
085(こころ)(あら)男子(をのこ)()をば(まか)すより
086(こころ)やさしき(ひと)(もと)めむ』
087 ヘールは初稚姫(はつわかひめ)がパツと(はな)した()(した)から(やうや)(かほ)()げ、
088ヘール『これはしたり初稚姫(はつわかひめ)(おん)(こころ)
089()らず(うら)みし(こと)のくやしさ。
090ユゥンケルの(いくさ)(つかさ)(ぼう)にふり
091(した)しく()はむ(ひめ)御傍(みそば)に』
092初稚姫(はつわかひめ)『ユゥンケルよりも(たふと)きキャプテンを
093いとなつかしく(した)ひけるかな』
094チルテル『初稚姫(はつわかひめ)(かみ)(こころ)(いま)()
095(うら)(かこ)ちし(こと)(くや)しさ。
096ユゥンケル(いま)のお言葉(ことば)(なん)()
097とても(およ)ばぬ(こひ)とあきらめよ』
098ヘール『口先(くちさき)でかく()らすとも村肝(むらきも)
099(こころ)(おく)にヘール(かよ)へる。
100キャプテンが(おに)念仏(ねんぶつ)如何(いか)(ほど)
101(たくみ)なりとも(たれ)()くべき。
102こと(さら)(かみ)(ひと)しき姫君(ひめぎみ)
103(なれ)(こころ)(きたな)きを()る』
104初稚姫(はつわかひめ)(わらは)はキャプテンだのユゥンケルだのと、105そんな人為(じんゐ)(てき)階級(かいきふ)には(すこ)しも(のぞみ)(しよく)して()りませぬ。106(ただ)(をとこ)らしい(をとこ)(のぞ)むで()ます。107(をんな)()ふものは繊弱(かよわ)いもので(ござ)いますから、108仮令(たとへ)(いろ)(くろ)うても109(ちんば)でも片目(めつかち)でも110出歯(でば)でも鳩胸(はとむね)でも111(かま)ひませぬ、112(ちから)(つよ)いお(かた)(をつと)()ちたう(ござ)います』
113ヘール『イヤ、114それで(わか)りました。115(わたし)(この)関所(せきしよ)(なか)でも仁王(にわう)のヘールと()はれた(くらゐ)ですから、116腕力(わんりよく)にかけたら(わたし)(まさ)るものはありませぬ。117成程(なるほど)(ひめ)(さま)先見(せんけん)(めい)(ござ)いますワイ。118(おに)大蛇(をろち)(たけ)(くる)()(なか)119矢張(やつぱり)(つよ)いものでなくては()()(こと)出来(でき)ませぬからなア』
120チルテル『(ひめ)(さま)121この(をとこ)(くち)(ばか)(つよ)いのですよ。122一束(いちわ)(わら)なら力持(ちからもち)123三升(さんじよう)(めし)なら一度饌(ひとかたげ)124その(くせ)夏瘠(なつや)寒細(かんぼそ)り、125偶々(たまたま)肥満(こえ)たら()(やまひ)126(いち)()(みち)なら(とま)りがけ、127雪隠行(せつちんゆき)なら腰弁当(こしべんたう)()厄介者(やくかいもの)です。128(くち)(なに)(ほど)達者(たつしや)でも実力(じつりよく)でなければ駄目(だめ)ですよ』
129初稚(はつわか)『そりやさうで(ござ)います。130(わらは)実際(じつさい)のお(ちから)(ぞん)じませぬから、131何卒(どうぞ)あの陥穽(おとしあな)(そば)角力(すまふ)()つて()(くだ)さい。132そして(つよ)いお(かた)()世話(せわ)になりますから、133(それ)一番(いちばん)不公平(ふこうへい)()くて()いでせう』
134チルテル『イヤ至極(しごく)名案(めいあん)だ、135サ、136ヘール(ひと)勝負(しようぶ)だ、137赤裸々(せきらら)となつての勝負(しようぶ)ぢや。138一文(いちもん)()()きもない。139初稚姫(はつわかひめ)(さま)検査(けんさ)(ねが)つて140()つたものが(ひめ)(さま)(をつと)になるのだから、141その覚悟(かくご)貴様(きさま)十分(じふぶん)(ちから)()したらよからうぞ』
142ヘール『アハヽヽヽ、143面白(おもしろ)面白(おもしろ)し、144天王山(てんのうざん)晴軍(はれいくさ)145勝敗(しようはい)(けつ)146瞬間(しゆんかん)(せま)れり。147(ひめ)(さま)148天晴(あつぱれ)(それがし)(ちから)御覧(ごらん)(くだ)さいませ』
149初稚(はつわか)面白(おもしろ)(ござ)いませう。150()つたお(かた)女房(にようばう)にして(いただ)きます。151何卒(どうぞ)何方(どちら)(まけ)ぬやうにして(くだ)されや』
152 二人(ふたり)真裸(まつぱだか)となり、153ドンドンと四股(しこ)(ふみ)ならし、154陥穽(おとしあな)(そば)(いま)勝負(しようぶ)(はじ)めむとする(とき)155(あわただ)しく(はし)つて()たのは、156スパイのテクであつた。157テクは(この)(てい)()合点(がつてん)ゆかず、158直立(ちよくりつ)不動(ふどう)姿勢(しせい)()つて、
159テク『(ぼく)はバラモン(ぐん)のリゥチナント、160テクであります。161キャプテン(さま)162ユゥンケルの()両人(りやうにん)163奉納(ほうなう)角力(ずもふ)()()まれると()えますが、164行司(ぎやうじ)がなくてはかなはぬ(こと)165サア拙者(せつしや)行司(ぎやうじ)(いた)しませう』
166チルテル『ヨウ、167(まへ)はテクか、168()(ところ)()()れた、169(ひと)行司(ぎやうじ)(ねが)はう』
170テク『ヘエ、171よろしやす、172宜敷(よろし)うあります。173なるべくはキャプテンが(まけ)るといいのだがなア、174イヒヽヽヽ』
175初稚(はつわか)其方(そなた)夜前(やぜん)(わらは)居間(ゐま)へお使(つかひ)()えた、176リゥチナントさまぢやありませぬか。177(なん)とまあ、178四角(しかく)いスタイルだこと、179ホヽヽヽヽ』
180テク『これはこれは(ひめ)(さま)181(ひさ)(ぶり)にお()(かか)ります。182()()壮健(さうけん)でお目出度(めでた)うあります』
183初稚(はつわか)昨日(きのふ)()()(かか)つた(ばか)り、184(ひさ)(ぶり)とは可笑(をか)しいワ。185そして行司(ぎやうじ)(わらは)(いた)します、186貴方(あなた)勝負(しようぶ)をして(くだ)さい。187(かつ)たお(かた)(わらは)女房(にようばう)になる決心(けつしん)(ござ)いますから、188()第一(だいいち)にチルテル(さま)とヘール(さま)との勝負(しようぶ)のついた(うへ)189()つた(かた)貴方(あなた)勝負(しようぶ)をして(いただ)き、190もしもお(かち)なれば(わらは)貴方(あなた)女房(にようばう)にして(もら)ひます。191オヽ()づかしやのう、192オホヽヽヽ』
193テク『これはよい(ところ)へやつて()て、194仲間入(なかまいり)をさして(いただ)くとは(なん)()仕合(しあは)せの(こと)だらう。195(ちから)にかけたら滅多(めつた)(あと)へはひかぬこのテクさまだ。196きつと()つてお()にかけませう』
197チルテル『初稚(はつわか)さま、198さう新手(あらて)()へては(こま)るぢやありませぬか。199約束(やくそく)(ちが)ふでせう』
200ヘール『(なに)201何人(なんにん)なりと新手(あらて)(あら)はれた(はう)面白(おもしろ)い、202()けさへせねばよいのだ。203サア(さん)(にん)()しがかりだ』
204矢庭(やには)にチルテルに(くら)ひつく。205チルテルは『(なに)猪口才(ちよこざい)な』と(たちま)()つに()むで()()()()ふ。206二人(ふたり)裸体(はだか)(たき)(ごと)(あせ)(にじ)()し、207ヌルリヌルリと体辷(たいすべ)りがして、208二人(ふたり)はパツと左右(さいう)(わか)れた。209()す、210()く、211突張(つつぱ)る、212必死(ひつし)活動(くわつどう)213此処(ここ)先途(せんど)(いど)(たたか)(その)(いきほ)214竜虎(りうこ)(あらそ)(ごと)()えたるが、215チルテルの(ちから)(まさ)りけむ、216ヘールはたうとう()(たふ)されて、217(ふか)陥穽(おとしあな)()()まれて仕舞(しま)つた。218(たちま)ちテクは真裸体(まつぱだか)となりチルテルに()つかかる。219チルテルは『(なに)猪口才(ちよこざい)()端武者(ぱむしや)』と(たか)(くく)つて()みついた。220大地(だいち)をドンドンと威喝(ゐかつ)させ(なが)ら、221土佐犬(とさいぬ)()()ひの(ごと)く、222但馬牛(たじまうし)()(あひ)(ごと)く、223千変(せんぺん)万化(ばんくわ)秘術(ひじゆつ)(つく)して汗塗(あせみどろ)となり、224半時(はんとき)(ばか)り、225命辛々(いのちからがら)226いが()うた。227初稚姫(はつわかひめ)は『オホヽヽヽ。228オホヽヽヽ』と愉快気(ゆくわいげ)二人(ふたり)勝負(しようぶ)(なが)めて(わら)つて()る。229たうとうチルテルはテクに捩伏(ねぢふ)せられ230陥穽(おとしあな)(なか)無残(むざん)にも()()まれて仕舞(しま)つた。231この陥穽(おとしあな)四五間(しごけん)(ばか)りの(ふか)さで、232(そこ)には(ふか)地下室(ちかしつ)(きづ)かれてあつた、233さうして()ちても怪我(けが)をしないやうの装置(さうち)がしてあつた。234テクはやれ安心(あんしん)()()めし(こころ)もグツタリと(ゆる)み、235ヘトヘトになつて(その)()(たふ)れた。236これより(さき)237ワックス、238ヘルマン、239エキス、240エルの()(にん)関所(せきしよ)(もん)(くぐ)り、241裏庭(うらには)(めう)(おと)がするので(はし)()()れば、242二人(ふたり)(をとこ)真裸体(まつぱだか)角力(すまふ)()つて()るので、243チクチク(そば)により勝負(しようぶ)如何(いか)にと(なが)めて()た。244テクは(やうや)くにして()(あが)り、245さも(うれ)しさうな顔付(かほつき)にて、
246テク『サア(ひめ)(さま)247約束通(やくそくどほ)り、248リゥチナントのテクが女房(にようばう)になつて(いただ)きませう。249もはやキャプテンはかくの(ごと)失脚(しつきやく)(いた)しました以上(いじやう)は、250リゥチナントが(この)関守(せきもり)(つと)めるのは当然(たうぜん)251(あま)(にく)うは(ござ)いますまいな、252エヘヽヽヽ』
253 ワックス(ほか)(さん)(にん)初稚姫(はつわかひめ)美貌(びばう)見惚(みと)れて、254(くび)(かた)げ、255食指(しよくし)(くわ)へて、256ポカンとして()る。
257初稚(はつわか)『テクさま、258本当(ほんたう)貴方(あなた)259(ちから)(つよ)(かた)ですな。260約束通(やくそくどほ)女房(にようばう)にして(いただ)きませう。261(しか)(なが)らあの(とほ)りバラモン信者(しんじや)のワックスさま(ほか)(さん)(にん)が、262テルモン(ざん)神館(かむやかた)から(たた)(はら)ひに()ふて263玉国別(たまくにわけ)(さま)一行(いつかう)(あと)をつけ(ねら)此処(ここ)()えて()りますから、264貴方(あなた)勝負(しようぶ)にお()ちなさつたお(いはひ)に、265(この)方々(かたがた)をお(まね)(まをし)てお神酒(みき)なとお()げなさいませ。266乞食(こじき)()(いは)ひと()(こと)(ござ)いますからな』
267テク『ウン ヨシ、268女房(にようばう)()(こと)なら、269(なん)でも()いてやる。270女房(にようばう)(たい)して忠実(ちうじつ)な、271親切(しんせつ)な、272慇懃(いんぎん)な、273それはそれは(やさ)しい、274同情(どうじやう)(ふか)い、275(まこと)結構(けつこう)なテクさまだ。276こんな亭主(おやぢ)をもつた女房(にようばう)世界一(せかいいち)幸福(しあわせ)ものだ。277(まへ)幸運(かううん)(かみ)見舞(みま)はれたものだ。278(おれ)(また)(その)(とほ)りだ。279「よい(かか)()つたら一生(いつしやう)(とく)だよ、280近所(きんじよ)(よろこ)ぶ、281テクさまも(よろこ)ぶ、282テクさま(どころ)(せがれ)(よろこ)ぶ」。283オイ、284バラモン信者(しんじや)のワックス以下(いか)(ほか)(さん)(にん)285(こひ)勝利者(しようりしや)のテクさまが(この)(やかた)関守(せきもり)だ。286さうして(この)ナイスが内事(ないじ)一切(いつさい)(かま)ふのだ。287貴様(きさま)もよい(ところ)()()れた。288今日(けふ)から(おれ)家来(けらい)にしてやらう、289サア此方(こちら)()一杯(いつぱい)()め』
290ワックス『有難(ありがた)(ござ)います……エキス、291ヘルマン、292エルどうだ、293矢張(やは)(わし)予言(よげん)(ちが)ふまいがな。294キヨの(みなと)()いたら意外(いぐわい)(よろこ)びが()いて()ると()つたらうがな』
295エル『そりやさうだ。296(しり)(せん)(たた)かれて苦労(くらう)した苦労(くらう)(かたまり)(はな)()いたのだからなア』ワックスは千回、他の3人は五百回の鞭打ち刑を受け、尻を叩かれている。第58巻第4章「銅盥」参照
297ワックス『シー、298(しり)(はなし)はもうやめて()れ、299馬鹿(ばか)だな。300こんな(ところ)まで()(はぢ)(さら)(やつ)があらうかい』
301テク『こりや こりや()(にん)家来(けらい)(ども)302(なに)()つて()るのだ。303新夫婦(しんふうふ)のお(いは)(ざけ)でも()まないか。304この(やかた)には(しつか)仕込(しこ)むであるから305(いく)()みても大丈夫(だいぢやうぶ)だ。306十日(とをか)二十日(はつか)()(つづ)けても(すこ)しも(かま)はぬのだ。307親方(おやかた)大黒主(おほくろぬし)だから(ふと)いものだぞ』
308ワックス『ヤ有難(ありがた)い、309目出(めで)たう、310それなら()言葉(ことば)(あま)へて(いただ)きます』
311初稚(はつわか)『モシ、3111貴方(あなた)312こちの(ひと)313テクさま、314(あたい)のお手々(てて)(にぎ)つて頂戴(ちやうだい)315握手(あくしゆ)しませうか』
316テク『ヨシ、317(いで)た。318握手(あくしゆ)だらうがキッスだらうが319(ちつ)とも遠慮(ゑんりよ)()らぬ』
320猿臂(ゑんぴ)()ばして(やはら)かい初稚姫(はつわかひめ)()(にぎ)つた。321(たちま)(その)()から(しろ)()がモジャモジャと()()した。322ハツと(おどろ)いた途端(とたん)323驢馬(ろば)のやうな(おほ)きな白狐(びやくこ)となつて324竹箒(たけばうき)のやうな(ふと)尻尾(しつぽ)をブラリブラリと()つて()る。325テクは「こいつは(たま)らぬ」と一生(いつしやう)懸命(けんめい)裏門(うらもん)より、326(いのち)辛々(からがら)()()した。327ワックス(ほか)(さん)(にん)呆気(あつけ)()られ、328()()途端(とたん)329以前(いぜん)陥穽(おとしあな)一蓮(いちれん)托生(たくしやう)330()(にん)ともにバサバサと()()むで仕舞(しま)つた。
331 初稚姫(はつわかひめ)変化(へんげ)()怪物(くわいぶつ)は、332三五教(あななひけう)守護(しゆご)する、333(あさひ)白狐(びやくこ)であつた。334(あさひ)はノソリノソリと庭園(ていゑん)()(しげ)みを(くぐ)つて何処(いづこ)ともなく、335(その)姿(すがた)をかくした。
336大正一二・四・二 旧二・一七 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)

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