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第三章 聖地夜(せいちよ)〔一六三二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻上 山河草木 卯の巻上 篇:第1篇 日下開山 よみ(新仮名遣い):ひのしたかいさん
章:第3章 聖地夜 よみ(新仮名遣い):せいちよ 通し章番号:1632
口述日:1923(大正12)年07月10日(旧05月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台:エルサレム市街 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-11-25 18:10:05 OBC :rm64a03
愛善世界社版:37頁 八幡書店版:第11輯 390頁 修補版: 校定版:36頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001 ブラバーサはエルサレムの停車場(ていしやぢやう)でバハーウラーに袂別(けつべつ)し、002プラツトホームを()で、003(やや)(ひろ)街道(かいだう)散歩(さんぽ)(はじ)めた。004(すで)黄昏(たそがれ)(ちか)くなつた近辺(きんぺん)山々(やまやま)背景(はいけい)を、005(うつく)しい夕日(ゆふひ)五色(ごしき)(くも)(せん)()いて色彩(いろど)つて()る。006(しか)(なん)となく(さび)()印象(いんしやう)(きざ)まれて()る。007シオンの(しろ)正面(しやうめん)(ひか)へながら、008(みち)両側(りやうがは)畑丘(はたをか)()えて()落付(おちつ)いた緑色(みどりいろ)()が、009痛々(いたいた)しげに塵埃(ぢんあい)のために灰白色(くわいはくしよく)()つて()橄欖(かんらん)()(なつ)かしみながら、010車馬(しやば)往来(わうらい)(しげ)大通(おほどおり)をエルサレムの市街(しがい)へと(すす)む。
011 (うしろ)(はう)から『モシモシ』と()婦人(をんな)(こゑ)(きこ)える。012ブラバーサは(あと)()(かへ)り、013立止(たちとど)まつてその婦人(ふじん)(ちか)づくのを()つとはなしに()つて()た。014()れば曼陀羅(まんだら)模様(もよう)のある(あつ)いブエールで(かほ)全部(ぜんぶ)(おほ)ふて()るユダヤの婦人(ふじん)で、015()(くに)からでも()げて()(やう)気味(きみ)(わる)姿(すがた)であつた。016ブラバーサは月光(げつくわう)(もと)に、017(はじ)めて(この)市中(しちう)(おい)(こゑ)(かけ)られたユダヤの婦人(ふじん)姿(すがた)()て、018ギヨツとしながら(れい)(まる)(まなこ)(いや)らしく(ひか)らした。
019マリヤ()()らずの(いや)しき婦女(をんな)()として、020(たふと)聖師(せいし)(さま)()()()(いた)しまして()まないことで御座(ござ)いますが、021(わたくし)はアメリカンコロニーの婦女(をんな)で、022マグダラのマリヤと(まを)基督(キリスト)信者(しんじや)御座(ござ)います。023(かみ)(さま)()摂理(せつり)()つて貴師(あなた)(ここ)()(くだ)(あそ)ばす(こと)前知(ぜんち)し、024(いそ)いで聖地(せいち)()案内(あんない)()ね、025(たふと)御教(みをしへ)(うけたま)はり()(まかり)()でました(もの)御座(ござ)います。026(けつ)して(けつ)して(あや)しき婦女(をんな)では御座(ござ)いませぬから、027()うぞ(わたし)聖地(せいち)案内(あんない)()せて(くだ)さいませぬか』
028真心(まごころ)(おもて)(あら)はして(たの)(やう)()ふ。
029 ブラバーサは土地(とち)不案内(ふあんない)のこの市中(しちう)で、030(おも)はぬ親切(しんせつ)婦人(ふじん)言葉(ことば)()いて打喜(うちよろこ)びながら、
031ブラバーサ『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。032(わたし)高砂島(たかさごじま)より遥々(はるばる)神命(しんめい)()つて、033聖地(せいち)参向(さんかう)のために()たものですが、034何分(なにぶん)(はじ)めての(こと)ですから土地(とち)一向(いつかう)不案内(ふあんない)(ところ)へ、035貴婦(あなた)案内(あんない)をして()らふと仰有(おつしや)るのは、036(まつた)(かみ)(さま)()引合(ひきあ)はせで御座(ござ)いませう。037(しか)最早(もはや)今日(こんにち)夜分(やぶん)になりましたから、038何処(どこ)かのホテルへ一泊(いつぱく)(いた)し、039明朝(みやうてう)(ゆつ)くりと橄欖(かんらん)登山(とざん)(いた)()きもので御座(ござ)いますが、040適当(てきたう)なホテルを()(しめ)(くだ)さいますまいか』
041マリヤ貴師(あなた)(さだ)めて()疲労(つかれ)御座(ござ)いませうから、042今晩(こんばん)はホテルに()一泊(いつぱく)なさるが(よろ)しいでせう。043聖地(せいち)巡礼者(じゆんれいしや)のために(まう)けられた大仕掛(おほじかけ)なホスビース・ノートルダム・ド・フランスと()加持力(カトリツク)僧院(そうゐん)御座(ござ)いまして、044(その)設備(せつび)一切(いつさい)ホテルと(すこ)しも(かは)りなく、045()大変(たいへん)親切(しんせつ)宿料(しゆくれう)一宿(いつしゆく)(いつ)ポンド内外(ないぐわい)ですから、046それへ()案内(あんない)(いた)しませうか』
047ブラバーサ『カトリックの僧院(そうゐん)ですか。048()れは(ねが)ふても()結構(けつこう)(ところ)049どうか其処(そこ)案内(あんない)(ねが)ひませう』
050マリヤ『ハア左様(さやう)なさいませ。051(わたし)貴師(あなた)今晩(こんばん)同宿(どうしゆく)して、052種々(いろいろ)(めづ)らしい高砂島(たかさごじま)()(はなし)(うけたま)はりたう御座(ござ)います』
053先導(せんだう)()ち、054カトリックの僧院(そうゐん)ホテルへと案内(あんない)され、055今宵(こよひ)(ここ)一宿(いつしゆく)する(こと)となつた。056両人(りやうにん)二階(にかい)一室(いつしつ)案内(あんない)され、057夕餉(ゆふげ)()ませ、058窓外(そうぐわい)(とほ)()やると、059(をり)しも十六夜(じふろくや)満月(まんげつ)皎々(かうかう)として下界(げかい)(くま)なく()らして()る。060(おほ)きな僧院(そうゐん)にも()宿泊者(しゆくはくしや)(わづ)かに四五(しご)(にん)で、061(いづ)れも各宗(かくしう)僧侶(そうりよ)であつた。062マリヤはブラバーサに()かひ、
063マリヤ聖師(せいし)(さま)064今晩(こんばん)(つき)(また)格別(かくべつ)(うる)はしき(そら)()()つて聖師(せいし)()来着(らいちやく)(しゆく)して()るやうですなア。065斯様(かやう)()(つき)()室内(しつない)()かす(こと)は、066(すこ)(ばか)勿体(もつたい)ないぢや()りませぬか。067()うでせう、068(ひと)月明(つきあ)かりに散歩(さんぽ)でもして()(やす)みになりましたら、069(わたし)もこの(つき)()ては室内(しつない)(ばか)りに蟄居(ちつきよ)する()になりませぬわ』
070ブラバーサ()(ほど)()(つき)です。071高砂島(たかさごじま)()(つき)(いま)この聖地(せいち)()(つき)も、072(あま)(かは)りはありませぬが、073(なん)だか(つき)(なつ)かしくなつて(まゐ)りました。074無為(むゐ)一夜(いちや)()かすのも神界(しんかい)(たい)して()まない(やう)心地(ここち)がします。075()うか案内(あんない)(ねが)ひませうかなア』
076マリヤ『ハイ(よろ)しう御座(ござ)います』
077(はや)くもマリヤは二階(にかい)階段(かいだん)()りかけた。078ブラバーサもマリヤの(あと)からホテルを(しの)(やう)にして門外(もんぐわい)()た。079両人(りやうにん)市街(しがい)外側(そとがは)西(にし)城壁(じやうへき)()ふてダマスカスの(もん)目当(めあて)()(はこ)ぶ。080上部(じやうぶ)凹凸(あふとつ)になつた(いか)めしいこの城壁(じやうへき)(もん)は、081(みな)中世(ちうせい)(つく)られたものだが、082(なん)となく(ふる)市街(しがい)には(ふさ)はしい感覚(かんかく)(あた)へる。083この(もん)からダマスカスへの道路(だうろ)(つう)じて()る。084両人(りやうにん)月光(げつくわう)()びながら、085(もん)(くぐ)つて市街(しがい)北部(ほくぶ)横断(わうだん)し、086(せい)ステフアンの(もん)へと()た。087(あら)敷石(しきいし)道路(だうろ)は、088所々(ところどころ)(ひく)いトンネル(やう)のアルカードで(おほ)はれて()て、089月光(げつくわう)(かがや)(した)では内部(ないぶ)(ふか)(ふか)暗黒面(あんこくめん)殊更(ことさら)(さび)しく(もの)すごく(かん)じられた。090道路(だうろ)両側(りやうがは)所々(ところどころ)に、091(あか)いトルコ(ばう)(かぶ)つたアラブが(ちひ)さい茶碗(ちやわん)()いコーヒーを()んだり、092フラスコ(やう)大仕掛(おほじかけ)装置(さうち)(みづ)通過(つうくわ)させて(なが)いゴム(くわん)吸入(きふにふ)する(つよ)煙草(たばこ)をのん()さうに()(なが)ら、093両人(りやうにん)(はう)迂散(うさん)(やつ)()よつたなアと()つた(やう)顔付(かほつ)きで(にら)んで()た。
094ブラバーサ()(をとこ)吾々(われわれ)姿(すがた)()て、095異様(いやう)(まなこ)(ひか)らして()ましたが、096(なに)かの信仰(しんかう)(もつ)()()るのですか』
097マリヤ()(ひと)()極端(きよくたん)なアセイズムを主唱(しゆしやう)する人々(ひとびと)で、098(わたし)聖地(せいち)巡拝(じゆんぱい)するのを()て、099ボリセイズムだと()つて(あざけ)つて()るのですよ。100物質(ぶつしつ)文明(ぶんめい)にかぶれてアセイズム(しや)()つて()るのですから、101容易(ようい)信仰(しんかう)(みちび)くことは出来難(できがた)(ひと)(たち)ですわ』
102ブラバーサ(かか)聖地(せいち)にも依然(やつぱり)アセイズム(しや)入込(いりこ)んで()るのですか』
103マリヤ『アセイズム(しや)(おろ)か、104ソシアリストもコンミユニストもアナーキストもニヒリストも沢山(たくさん)入込(いりこ)んで()()ります。105そして(この)聖地(せいち)(まう)()信徒(しんと)(たい)して種々(しゆじゆ)嘲罵(てうば)()びせます。106(わたし)(なん)とかして(かみ)(さま)(たふと)()(みち)(すく)ひたいと(おも)つて、107毎日(まいにち)毎夜(まいや)エルサレムの市街(しがい)()つて、108(こゑ)をからして演説(えんぜつ)をいたしましたが、109(かれ)()(かみ)(ちから)(こゑ)()いても立腹(りつぷく)いたします。110そして大変(たいへん)強迫(きやうはく)(てき)態度(たいど)()で、111(つひ)には鉄拳(てつけん)(あめ)()らすのです。112印度(いんど)釈尊(しやくそん)(えん)なき衆生(しゆじやう)()(がた)しと仰有(おつしや)つた(さう)ですが、113現界(げんかい)から(すで)(すで)身魂(みたま)(せき)地獄(ぢごく)()いて()(ひと)(たち)には、114如何(いか)なる(かみ)福音(ふくいん)到底(たうてい)(みみ)には()りませぬ。115()(ゆゑ)(わたし)団体(だんたい)アメリカンコロニーの人々(ひとびと)は、116迷信者(めいしんじや)(あつか)ひを()け、117人間(にんげん)らしく附合(つきあ)つて()れないのです。118モウ(この)(うへ)(せい)メシヤの再臨(さいりん)()つより仕方(しかた)がありませぬわ』
119ブラバーサ高砂島(たかさごじま)でも、120依然(いぜん)(いま)貴女(あなた)()(はなし)同様(どうやう)に、121吾々(われわれ)信奉(しんぽう)するルートバハーの(をしへ)やその信者(しんじや)迷信者(めいしんじや)(あつか)ひをなし、122あらゆる圧迫(あつぱく)妨害(ばうがい)(くは)へ、123大聖主(だいせいしゆ)までも邪神(じやしん)(あつか)ひに(いた)して、124上下(じやうげ)民衆(みんしう)(こぞ)つて反抗(はんかう)(てき)態度(たいど)()ると()有様(ありさま)です。125(しか)(これ)時節(じせつ)(ちから)解決(かいけつ)()くものと(わたし)(かた)(しん)じて()ります。126メシヤが聖地(せいち)(くも)()つて()(くだ)りになる(あかつき)は、127如何(いか)なる智者(ちしや)学者(がくしや)悪人(あくにん)太陽(たいやう)(まへ)(ほし)(ごと)(かげ)(かく)し、128屹度(きつと)メシヤの膝下(しつか)跪付(ひざまづ)くやうになるでせう。129(いま)(しば)らくの辛抱(しんばう)ですよ』
130マリヤ(いち)()(はや)くメシヤの降臨(かうりん)(あふ)()きもので御座(ござ)います。131真正(しんせい)のメシヤは何時(いつ)(ころ)になつたら出現(しゆつげん)されるでせうか』
132ブラバーサ(すで)(すで)にメシヤは、133()聖地(せいち)降誕(かうたん)されて諸種(しよしゆ)準備(じゆんび)(ととの)へて()られますから(あま)(なが)(あひだ)でもありますまい。134(しか)しメシヤは只今(ただいま)(ところ)では十字架(じふじか)責苦(せめく)()つて、135万民(ばんみん)()めに(くる)しみて()られますが、136(やが)(いなづま)東天(とうてん)より西天(せいてん)(ひらめ)(ごと)(あら)はれたまふでせう。137(わたし)はメシヤ再臨(さいりん)先駆(せんく)として(まゐ)つたものです』
138マリヤ『それは(なに)より(みみ)()りの()(はな)(ゆつく)りと橄欖山(かんらんざん)(じやう)(おい)(うけたまは)()いものですなア』
139ブラバーサ是非(ぜひ)()いて(いただ)かねばなりませぬ』
140マリヤ聖師(せいし)(さま)141(これ)有名(いうめい)(せい)ステフアンの(もん)御座(ござ)いますよ』
142ブラバーサ聖者(せいじや)()()され(いし)()(ころ)されたといふ、143伝説(でんせつ)のある(せい)ステフアンの(もん)ですか。144ヘエー』
145(くび)(かたむ)けて少時(しばし)憂愁(いうしう)(しづ)む。
146マリヤ(わたし)(この)(もん)通過(つうくわ)する(ごと)に、147聖者(せいじや)熱烈(ねつれつ)なる信仰力(しんかうりよく)追想(つゐさう)して、148益々(ますます)信仰(しんかう)熱度(ねつど)(くは)へたので御座(ござ)います』
149(やや)傾首(うつむい)(なみだ)ぐむ。
150ブラバーサ『アヽ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)151信仰力(しんかうりよく)(よわ)きこのブラバーサをして、152無限(むげん)(ちから)()(あた)(くだ)さいませ。153()()()()154()()(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)
155(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)し、156(しば)感歎(かんたん)()まなかつた。
157
158 (せい)ステフアンの(もん)(くぐ)ると、159(すこ)しく(くだ)(ざか)になつて()る。160マリヤの(あと)()いてゲツセマネの有名(いうめい)(その)(ちか)づいた。161橄欖山(かんらんざん)()べば(こた)ふる(やう)(ちか)くなつて()た。162()(あつ)()けの(たか)い、163石造(せきざう)(かき)厳重(げんぢう)(かこ)まれて()るのがゲツセマネの(その)である。164処々(ところどころ)にサイブレスの()(あたま)()して()るのが()えるばかりで、165一見(いつけん)して外側(そとがは)からは墓地(ぼち)のやうな(かん)じを(あた)へる。166(よる)(こと)とて門扉(もんぴ)(かた)(とざ)され、167内部(ないぶ)()ることが出来(でき)ない。168そこから団子石(だんごいし)のゴロ()いて()(けは)しい坂路(さかみち)(よぢ)て、169目的(もくてき)橄欖山(かんらんざん)(のぼ)るのである。170反対側(はんたいがは)(やま)(いただき)王座(わうざ)して()月光(げつくわう)()つて(よそは)れたエルサレムの市街(しがい)171(うつく)しい気高(けだか)いシオンの(むすめ)姿(すがた)眼前(がんぜん)(よこ)たはつて()る。172その(うつく)しさは現実(げんじつ)存在(そんざい)して()るのか、173()れともキリストに(ともな)聯想(れんさう)幻影(げんえい)(つく)()したのかと、174ブラバーサの想像(さうざう)瞬間(しゆんかん)世界(せかい)歴史(れきし)全体(ぜんたい)(とほ)つて(はし)る。175丁度(ちやうど)176高砂島(たかさごじま)聖地(せいち)桶伏山(をけふせやま)蓮華台(れんげだい)(じやう)廃墟(はいきよ)(まへ)()つた(とき)同様(どうやう)に、177(しか)しその(ふた)つの感想(かんさう)は、178ブラバーサに()つては名状(めいじやう)しがたきコントラストであつた。179キリスト(けう)とヘレニズムの葛藤(かつとう)180()れは過去(くわこ)二千(にせん)年間(ねんかん)人類(じんるゐ)歴史(れきし)()くための悲哀(ひあい)なる(かぎ)となるのであつた。
181 そして(この)マリア婦人(ふじん)(はじ)め、182コロニーの(ひと)(たち)や、183純真(じゆんしん)なる数多(あまた)奉道者(ほうだうしや)(いま)(いた)るまで(かみ)(もと)め、184真善(しんぜん)(きは)()()がるる(じゆん)(こころ)(いた)めて()(こと)(おも)()かべては、185そぞろに(なみだ)(あふ)るるのも(おぼ)えなくなつて(しま)つた。186アヽこの悲哀(ひあい)なる不調和(ふてうわ)(いち)()(はや)()(のぞ)きたいものだ。187キリスト(けう)何処(どこ)までも現世界(げんせかい)灰色(はひいろ)(そめ)なければ()まないであらうか。188アクロポリスに(きびす)()ける(こと)なしにエルサレムに巡礼(じゆんれい)する(こと)には()らぬのであらうか。189何故(なにゆゑ)(かみ)(さま)は、190()()をモウ(すこ)調和(てうわ)(てき)(つく)(たま)はなかつたのであらうかと、191今更(いまさら)(ごと)愚痴(ぐち)歎息(たんそく)()らさざるを()なかつた。
192 ブラバーサは黙然(もくねん)として追懐(つゐくわい)(ひさし)うして()る。
193マリヤ聖師(せいし)(さま)194(なに)(しき)りに(かんが)()んで()らつしやる(やう)ですが、195(わたし)行動(かうどう)()いて()()()さない(こと)御座(ござ)いますか。196遠慮(ゑんりよ)なく仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。197如何様(いかやう)にも(あし)(てん)(あらた)めますから』
198ブラバーサ『イエイエ、199(けつ)して(けつ)して貴女(あなた)(たい)して()()はない道理(だうり)御座(ござ)いませうか。200只々(ただただ)(わたし)はこの聖地(せいち)状況(じやうきやう)()るに()け、201(いにしへ)歴史(れきし)(むね)()かびて(まゐ)りまして、202感慨(かんがい)無量(むりやう)(なみだ)()れて()たのです』
203 マリヤは(かる)く、
204マリヤ『そりやさうでせう(とも)205(わたし)だつて幾度(いくど)聖地(せいち)()てから、206(いにしへ)歴史(れきし)追懐(つゐくわい)して()いたか(わか)りませぬわ。207(しか)今晩(こんばん)()()けましたから、208ホテルへ一先(ひとま)引返(ひきかへ)し、209(また)明日(みやうにち)はゆるゆる案内(あんない)さして(いただ)きませう』
210(さき)()つていそいそと(あゆ)()した。211(ここ)にブラバーサ、212マリヤの二人(ふたり)月光(げつくわう)(した)をキドロンの(たに)をエルサレムの(がは)(わた)り、213市街(しがい)東南隅(とうなんぐう)城壁(じやうへき)()ふて、214ダング・ゲート(汚物(をぶつ)(もん))へ(すす)んで()た。
215 ダング・ゲートは(むかし)(この)(もん)から汚物(をぶつ)(はこ)()つた(ところ)(つた)へられて()る。216シロアムの(むら)眼下(がんか)展開(てんかい)して()る。217その(もん)這入(はい)つてユダヤ人街(じんがい)とマホメツト教徒(けうと)(がい)との(あひだ)通過(つうくわ)し、218ジヤツフアの(もん)へと()た。
219 現今(げんこん)のエルサレムの市街(しがい)はアラブ、220ユダヤ(じん)221アルメニヤ(じん)()みて()(みつ)ツの区域(くゐき)によつて仕切(しき)られて()る。
222 神殿(しんでん)(あと)(ちか)(くら)いアルカードの(かたはら)に、223二三(にさん)(にん)のアラブが()つて()て、224手真似(てまね)(わけ)(わか)らない言葉(ことば)両人(りやうにん)()()めた。225両人(りやうにん)気味(きみ)()(さう)()かぬ(ふう)(よそほ)ひスタスタと(あし)(はや)めた。
226 ダマスカス、227(せい)ステフアン、228ゲツセマネと()()()熱烈(ねつれつ)信仰者(しんかうしや)(むね)深刻(しんこく)感動(かんどう)(あた)へるものである。229ブラバーサは傾首(うつむ)きながら一足(ひとあし)一足(ひとあし)(ゆび)(さき)(ちから)()れ、230ウンウンと(ひと)(こころ)(ささや)きながら、231マリヤの(あと)について()く。
232 (しか)現代(げんだい)多数(たすう)基督(キリスト)教徒(けうと)233それ()(たい)して宗教(しうけう)無意味(むいみ)形式(けいしき)234()()つた伝統(トラヂシオン)()ぎない。235呑気(のんき)基督(キリスト)教徒(けうと)(ちう)(しん)にダマスカスの(みち)にある使徒(しと)パウロの(こころ)自身(じしん)体験(たいけん)し、236キリストのゲツセマネの(その)における救世主(きうせいしゆ)()(なや)みの一端(いつたん)だに()()信徒(しんと)幾人(いくにん)あるであらうか、237慨歎(がいたん)(なみだ)()れて()らず()らずにマリヤに半町(はんちやう)ばかりも(おく)れてしまつた。
238大正一二・七・一〇 旧五・二七 北村隆光録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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