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第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
01 復活祭
〔1807〕
02 逆襲
〔1808〕
03 草居谷底
〔1809〕
04 誤霊城
〔1810〕
05 横恋慕
〔1811〕
第2篇 鬼薊の花
06 金酒結婚
〔1812〕
07 虎角
〔1813〕
08 擬侠心
〔1814〕
09 狂怪戦
〔1815〕
10 拘淫
〔1816〕
第3篇 開花落花
11 狂擬怪
〔1817〕
12 開狂式
〔1818〕
13 漆別
〔1819〕
14 花曇
〔1820〕
15 騒淫ホテル
〔1821〕
第4篇 清風一過
16 誤辛折
〔1822〕
17 茶粕
〔1823〕
18 誠と偽
〔1824〕
19 笑拙種
〔1825〕
20 猫鞍干
〔1826〕
21 不意の官命
〔1827〕
22 帰国と鬼哭
〔1828〕
余白歌
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第六章
金酒結婚
(
きんしゆけつこん
)
〔一八一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第2篇 鬼薊の花
よみ:
おにあざみのはな
章:
第6章 金酒結婚
よみ:
きんしゅけっこん
通し章番号:
1812
口述日:
1925(大正14)年08月19日(旧06月30日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
カフェー
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物:
守宮別、お花、カフェーの女中、テク、トンク
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-11-26 16:25:56
OBC :
rm64b06
愛善世界社版:
77頁
八幡書店版:
第11輯 524頁
修補版:
校定版:
77頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
守宮別
(
やもりわけ
)
はお
花
(
はな
)
と
共
(
とも
)
に、
002
お
寅
(
とら
)
の
霊城
(
れいじやう
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し
七八町
(
しちはつちやう
)
来
(
き
)
た
横町
(
よこまち
)
のカフエーに
入
(
い
)
り、
003
此処迄
(
ここまで
)
落
(
お
)
ち
延
(
の
)
びれば
先
(
ま
)
づ
安心
(
あんしん
)
と、
004
コツプ
酒
(
さけ
)
をきこし
召
(
め
)
すべく、
005
嫌
(
いや
)
がるお
花
(
はな
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて
無理
(
むり
)
に
奥座敷
(
おくざしき
)
へ
通
(
とほ
)
り、
006
守宮別
『オイ、
007
女房
(
にようばう
)
、
008
イヤお
花
(
はな
)
、
009
肝腎
(
かんじん
)
の
祝言
(
しうげん
)
の
盃
(
さかづき
)
の
最中
(
さいちう
)
に、
010
お
寅
(
とら
)
の
極道
(
ごくだう
)
が
帰
(
かへ
)
つてうせたものだから、
011
恰度
(
ちやうど
)
百花爛漫
(
ひやくくわらんまん
)
と
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
花
(
はな
)
の
林
(
はやし
)
に、
012
嵐
(
あらし
)
が
吹
(
ふ
)
いたやうなものだつた。
013
殺風景
(
さつぷうけい
)
極
(
きは
)
まる。
014
折角
(
せつかく
)
お
前
(
まへ
)
の
注
(
つ
)
いで
呉
(
く
)
れた
酒
(
さけ
)
を
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
澪
(
こぼ
)
して
仕舞
(
しま
)
ひ、
015
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くて
仕様
(
しやう
)
が
無
(
な
)
いから、
016
改
(
あらた
)
めて
此処
(
ここ
)
で
祝言
(
しうげん
)
の
心持
(
こころもち
)
で
一杯
(
いつぱい
)
やらうぢやないか』
017
お花
『
如何
(
いか
)
にも、
018
妾
(
わたし
)
だつて
貴方
(
あなた
)
の
情
(
なさけ
)
のお
汁
(
つゆ
)
のお
神酒
(
みき
)
があまり
慌
(
あわ
)
てたものだから
皆
(
みな
)
口
(
くち
)
の
外
(
そと
)
に
溢
(
こぼ
)
れて
仕舞
(
しま
)
ひ、
019
三分
(
さんぶん
)
の
一
(
いち
)
も
入
(
はい
)
つてをりませぬわ。
020
ここ
迄
(
まで
)
来
(
く
)
れば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です。
021
悠
(
ゆつ
)
くりとやりませうか。
022
一生
(
いつしやう
)
一代
(
いちだい
)
のお
祝
(
いはひ
)
ですからなア。
023
併
(
しか
)
しお
寅
(
とら
)
さまが
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけてでも
来
(
き
)
たら、
024
一寸
(
ちよつと
)
困
(
こま
)
りますがなア』
025
守宮別
『ナアニ、
026
尻餅
(
しりもち
)
ついて
気絶
(
きぜつ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだもの、
027
滅多
(
めつた
)
に
来
(
く
)
る
気遣
(
きづか
)
ひは
無
(
な
)
い。
028
もし
来
(
き
)
たつて
何
(
な
)
んだ。
029
夫婦
(
ふうふ
)
が
盃
(
さかづき
)
をして
居
(
ゐ
)
るのにゴテゴテ
云
(
い
)
ふ
権利
(
けんり
)
もあるまい。
030
そんな
事
(
こと
)
に
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
ゐ
)
ては
悪魔
(
あくま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ、
031
一日
(
いちにち
)
もぢつとして
居
(
ゐ
)
られ
無
(
な
)
い。
032
神様
(
かみさま
)
のお
道
(
みち
)
もお
道
(
みち
)
だが、
033
人間
(
にんげん
)
は
衣食住
(
いしよくぢう
)
の
道
(
みち
)
も
大切
(
たいせつ
)
だから、
034
吾々
(
われわれ
)
も
夫
(
そ
)
れ
相当
(
さうたう
)
にやらねばならぬからなア』
035
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
して
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
へカフエーの
給仕
(
きふじ
)
が
真白
(
まつしろ
)
のエプロンを
掛
(
か
)
け、
036
コーヒーを
運
(
はこ
)
んで
来
(
き
)
て、
037
女中(給仕)
『モシお
客
(
きやく
)
さま、
038
何
(
なに
)
を
致
(
いた
)
しませうかなア』
039
守宮別
『ウン、
040
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
にお
酒
(
さけ
)
を
一本
(
いつぽん
)
つけて
呉
(
く
)
れ。
041
さうして
鰻
(
うなぎ
)
の
蒲焼
(
かばやき
)
に
鯛
(
たひ
)
の
刺身
(
さしみ
)
、
042
淡泊
(
あつさり
)
した
吸物
(
すひもの
)
に
猪口
(
ちよく
)
を
一
(
ひと
)
つ
手軽
(
てがる
)
う
頼
(
たの
)
むよ』
043
女中
『
芸者
(
げいしや
)
はお
呼
(
よ
)
びになりませぬか、
044
何
(
なん
)
なら
旦那
(
だんな
)
さまに
適当
(
てきたう
)
な
別品
(
べつぴん
)
が
厶
(
ござ
)
いますよ』
045
守宮別
『ウーン、
046
さうだなア』
047
女中
『モシお
母
(
かあ
)
さま、
048
粋
(
すゐ
)
を
利
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さいな。
049
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
050
まだお
若
(
わか
)
いのですからな。
051
芸者
(
げいしや
)
が
無
(
な
)
いとお
酒
(
さけ
)
が
甘
(
うま
)
く
進
(
すす
)
みませぬからなア』
052
お花
『ヤ、
053
また
必要
(
ひつえう
)
が
有
(
あ
)
つたらお
願
(
ねが
)
ひしませう。
054
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
お
酒
(
さけ
)
を
願
(
ねが
)
ひませう』
055
と
稍
(
やや
)
プリンとして
居
(
ゐ
)
る。
056
女
(
をんな
)
は
足早
(
あしばや
)
に
表
(
おもて
)
へ
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
つた。
057
お
花
(
はな
)
の
顔
(
かほ
)
には
暗雲
(
あんうん
)
が
漂
(
ただよ
)
ふた。
058
お花
『これ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
059
一本
(
いつぽん
)
だけ
呑
(
の
)
んで
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
りませうか、
060
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
を
)
るぢやないか。
061
奥
(
おく
)
さまとも
云
(
い
)
はず、
062
お
母
(
かあ
)
さまなぞと、
063
馬鹿
(
ばか
)
らしくて
居
(
を
)
られませぬワ』
064
守宮別
『マア
好
(
い
)
いぢやないか、
065
お
母
(
かあ
)
さまと
見
(
み
)
られたなら
尚
(
な
)
ほ
結構
(
けつこう
)
だよ。
066
人
(
ひと
)
は
老人
(
としより
)
に
見
(
み
)
える
程
(
ほど
)
価値
(
ねうち
)
があるのだからなア』
067
お花
『それだと
云
(
い
)
つて
余
(
あま
)
り
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
ますわ』
068
かく
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ
以前
(
いぜん
)
の
女
(
をんな
)
は
酒肴
(
さけさかな
)
の
用意
(
ようい
)
を
調
(
ととの
)
へ
運
(
はこ
)
び
来
(
きた
)
り、
069
女中
『お
客様
(
きやくさま
)
甚
(
えら
)
うお
待
(
ま
)
たせ
致
(
いた
)
しました。
070
御用
(
ごよう
)
が
厶
(
ござ
)
いましたら
何卒
(
どうぞ
)
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
071
守宮別
(
やもりわけ
)
はこの
女
(
をんな
)
の
何処
(
どこ
)
とも
無
(
な
)
しに
色
(
いろ
)
白
(
しろ
)
く、
072
目許
(
めもと
)
涼
(
すず
)
しく、
073
初
(
う
)
い
初
(
う
)
いしい
所
(
ところ
)
があるのに
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られ、
074
口角
(
こうかく
)
から、
075
粘
(
ねば
)
つたものを
二三寸
(
にさんずん
)
許
(
ばか
)
り
落
(
おと
)
しかけた。
076
此
(
この
)
道
(
みち
)
へかけては
勇者
(
ゆうしや
)
のお
花
(
はな
)
、
077
何条
(
なんでう
)
見逃
(
みのが
)
すべき、
078
女
(
をんな
)
の
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
るを
待
(
ま
)
つて
守宮別
(
やもりわけ
)
の
胸倉
(
むなぐら
)
をグツと
取
(
と
)
り、
079
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
揺
(
ゆ
)
すり、
080
お花
『これや、
081
妄
(
わし
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするのかい、
082
見
(
み
)
つともない
目尻
(
めじり
)
を
下
(
さ
)
げたり
涎
(
よだれ
)
を
繰
(
く
)
つたり、
083
アンナ
売女
(
ばいた
)
がそれ
程
(
ほど
)
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るのか、
084
腐
(
くさ
)
つた
霊魂
(
たましひ
)
だなア、
085
サア
此
(
この
)
短刀
(
たんたう
)
で
腹
(
はら
)
を
切
(
き
)
つて
貰
(
もら
)
ひませう』
086
守宮別
『まあまあ
待
(
ま
)
つてくれ、
087
さう
取
(
と
)
り
違
(
ちがひ
)
をしてくれると
困
(
こま
)
るよ。
088
涎
(
よだれ
)
を
繰
(
く
)
つたのは
喉
(
のど
)
の
虫
(
むし
)
が
催足
(
さいそく
)
して
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
つた
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
みたい
為
(
た
)
めだ。
089
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うしたのも
矢張
(
やつぱ
)
り
酒
(
さけ
)
が
呑
(
の
)
みたいからだ。
090
何
(
なん
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
立派
(
りつぱ
)
な、
091
神徳
(
しんとく
)
の
満
(
み
)
ち
充
(
み
)
ちた、
092
何
(
なに
)
ぬけ
目
(
め
)
のないお
花
(
はな
)
さまの
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
て、
093
何
(
ど
)
うして
外
(
ほか
)
に
心
(
こころ
)
が
散
(
ち
)
るものか。
094
お
前
(
まへ
)
は
些
(
ちつ
)
とヒステリツクの
気
(
き
)
があるから
困
(
こま
)
るよ。
095
さう
一々
(
いちいち
)
疑
(
うたが
)
つて
貰
(
もら
)
つては
困
(
こま
)
る。
096
お
寅
(
とら
)
だつて
其処
(
そこ
)
迄
(
まで
)
の
疑惑
(
ぎわく
)
は
廻
(
まは
)
さなかつたよ』
097
お花
『さうでせう、
098
矢張
(
やつぱ
)
りお
寅
(
とら
)
さまがお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るでせう。
099
私
(
わたし
)
は
余程
(
よほど
)
よい
間抜
(
まぬけ
)
だからお
前
(
まへ
)
さまに
欺
(
だま
)
されてこんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
釣
(
つ
)
り
出
(
だ
)
されたのですよ。
100
オヽ
怖
(
こは
)
や
怖
(
こは
)
や、
101
こんな
男
(
をとこ
)
にうつかり
呆
(
はう
)
けて
居
(
を
)
らう
者
(
もの
)
なら、
102
折角
(
せつかく
)
国許
(
くにもと
)
から
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
た
金
(
かね
)
を
皆
(
みな
)
飲
(
の
)
み
倒
(
たふ
)
され、
103
売女
(
ばいた
)
の
買収費
(
ばいしうひ
)
に
取
(
と
)
られて
了
(
しま
)
ふのだつた。
104
あゝいい
所
(
ところ
)
で
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
いた。
105
これも
全
(
まつた
)
く、
106
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
が
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
は
油断
(
ゆだん
)
がならぬぞよ、
107
何程
(
なにほど
)
口
(
くち
)
で
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
申
(
まうし
)
ても
乗
(
の
)
るでないぞよ、
108
後
(
あと
)
の
後悔
(
こうくわい
)
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はぬぞよ、
109
とお
知
(
し
)
らせ
下
(
くだ
)
さつたのだらう。
110
あゝ
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
111
私
(
わたし
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
112
オンオンオン』
113
と
泣
(
な
)
き
沈
(
しづ
)
む。
114
守宮別
『こりやお
花
(
はな
)
、
115
さうぷりぷりと
怒
(
おこ
)
つて
呉
(
く
)
れては
困
(
こま
)
るぢやないか。
116
疑
(
うたがひ
)
もよい
加減
(
かげん
)
に
晴
(
は
)
らしたら
好
(
よ
)
いぢやないか。
117
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
で
云
(
い
)
ふた
事
(
こと
)
を
目
(
め
)
のつぼに
取
(
と
)
つて、
118
さう
攻撃
(
こうげき
)
せられちや、
119
如何
(
いか
)
に
勇猛
(
ゆうまう
)
な
海軍
(
かいぐん
)
中佐
(
ちうさ
)
でも
遣
(
や
)
り
切
(
き
)
れぬぢや
無
(
な
)
いか。
120
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
で
云
(
い
)
ふた
事
(
こと
)
はマアあつさり
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
すのぢやなア』
121
お花
『まだ、
122
一口
(
ひとくち
)
も
呑
(
の
)
みもせぬ
癖
(
くせ
)
に
酒
(
さけ
)
の
上
(
うへ
)
とは
能
(
よ
)
う
云
(
い
)
へたものです
哩
(
わい
)
』
123
守宮別
『「
顔
(
かほ
)
見
(
み
)
た
許
(
ばか
)
りで
気
(
き
)
がいくならば……
酒
(
さけ
)
呑
(
の
)
みや
樽
(
たる
)
見
(
み
)
て
酔
(
よ
)
ふだらう」といふ
文句
(
もんく
)
をお
前
(
まへ
)
が
何時
(
いつ
)
も
唄
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらう。
124
併
(
しか
)
しあの
文句
(
もんく
)
は
実際
(
じつさい
)
とは
正反対
(
せいはんたい
)
だ。
125
私
(
わし
)
はお
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
ると
気
(
き
)
が
変
(
へん
)
になつて
了
(
しま
)
ふのだ。
126
それと
同
(
おな
)
じに
燗徳利
(
かんどくり
)
を
見
(
み
)
ると
恍惚
(
くわうこつ
)
として
微酔気分
(
ほろよひきぶん
)
になつて
了
(
しま
)
ふのだから、
127
如何
(
どう
)
かさう
御承知
(
ごしようち
)
願
(
ねが
)
ひたい。
128
さう
矢釜
(
やかま
)
しく
云
(
い
)
はれると
酒
(
さけ
)
の
味
(
あぢ
)
が
不味
(
まづ
)
くなつて
仕方
(
しかた
)
がない』
129
お花
『それやサウでせうとも、
130
カフエーの
白首
(
しらくび
)
を
見
(
み
)
た
目
(
め
)
で
皺苦茶
(
しわくちや
)
の
妾
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
を
御覧
(
ごらん
)
になつたつて、
131
お
酒
(
さけ
)
の
美味
(
おい
)
しい
筈
(
はず
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬわ。
132
サアサア
貴方
(
あなた
)
悠
(
ゆつ
)
くりとお
酒
(
さけ
)
を
召上
(
めしあが
)
つて
代価
(
だいか
)
を
払
(
はら
)
つてお
帰
(
かへ
)
りなさい。
133
妾
(
わたし
)
はもう
斯
(
こ
)
んな
衒
(
てら
)
される
所
(
ところ
)
で
一時
(
いつとき
)
も
居
(
を
)
るのが
苦痛
(
くつう
)
ですわ。
134
貴方
(
あなた
)
はまるで、
135
妾
(
わたし
)
の
首
(
くび
)
を
裁
(
た
)
ち
割
(
わ
)
るやうな、
136
えぐい
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はして
下
(
くだ
)
さいます。
137
あゝこんな
事
(
こと
)
なら
約束
(
やくそく
)
をせなかつたら
宜
(
よ
)
かつたになア』
138
守宮別
(
やもりわけ
)
は
自暴自棄糞
(
やけくそ
)
になり
一万両
(
いちまんりやう
)
の
金
(
かね
)
を
放
(
ほ
)
る
積
(
つも
)
りで、
139
態
(
わざ
)
と
太
(
ふと
)
う
出
(
で
)
て
見
(
み
)
た。
140
守宮別
『お
花
(
はな
)
さま、
141
夫婦
(
ふうふ
)
約束
(
やくそく
)
を
取
(
と
)
り
消
(
け
)
したいと
仰有
(
おつしや
)
るのですか、
142
何程
(
なんぼ
)
私
(
わし
)
が
可愛
(
かあい
)
と
思
(
おも
)
つても、
143
お
前
(
まへ
)
さまの
方
(
はう
)
から
約束
(
やくそく
)
するぢやなかつたにと
云
(
い
)
ふやうな
愛想尽
(
あいそづ
)
かしが
出
(
で
)
る
以上
(
いじやう
)
は
取
(
と
)
り
消
(
け
)
し
度
(
た
)
いと
云
(
い
)
ふお
考
(
かんが
)
へでせう。
144
守宮別
(
やもりわけ
)
もお
花
(
はな
)
さまに
海洋万里
(
かいやうばんり
)
の
空
(
そら
)
で
見棄
(
みす
)
てられ
愛想
(
あいそ
)
尽
(
つ
)
かされるのも
結句
(
けつく
)
光栄
(
くわうえい
)
です。
145
サアどうぞ
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
146
些
(
ちつ
)
とも
御遠慮
(
ごゑんりよ
)
は
要
(
い
)
りませぬからなア』
147
お花
『これ
気
(
き
)
の
早
(
はや
)
い
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
148
誰
(
たれ
)
が
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
ると
云
(
い
)
ひましたか、
149
今
(
いま
)
となつて
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
るやうな
浅
(
あさ
)
い
考
(
かんが
)
へで
約束
(
やくそく
)
は
致
(
いた
)
しませぬよ。
150
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
貴方
(
あなた
)
は
此
(
この
)
お
花
(
はな
)
が
嫌
(
いや
)
になつたものだから
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうとするのでせう』
151
守宮別
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
152
お
前
(
まへ
)
の
方
(
はう
)
から
此処
(
ここ
)
を
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
つたぢやないか。
153
売女
(
ばいた
)
とお
楽
(
たの
)
しみなさいなぞと
散々
(
さんざん
)
悪口
(
あくこう
)
をつき、
154
此
(
この
)
夫
(
をつと
)
に
対
(
たい
)
し
愛想
(
あいそ
)
尽
(
づか
)
しを
云
(
い
)
つたらう。
155
俺
(
おれ
)
も
軍人
(
ぐんじん
)
だ、
156
女々
(
めめ
)
しい
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
はない。
157
嫌
(
いや
)
なものを
無理
(
むり
)
に
添
(
そ
)
ふてくれとは
要求
(
えうきう
)
せぬ。
158
此
(
この
)
縁
(
えん
)
が
繋
(
つな
)
がると
繋
(
つな
)
がらぬとはお
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
一
(
ひと
)
つぢやないか』
159
お花
『やあ、
160
それで
貴方
(
あなた
)
の
誠意
(
せいい
)
が
分
(
わか
)
りました。
161
何処迄
(
どこまで
)
も
妾
(
わたし
)
と
添
(
そ
)
ふて
下
(
くだ
)
さるでせうなあ、
162
本当
(
ほんたう
)
に
憎
(
にく
)
い
程
(
ほど
)
可愛
(
かあい
)
いわ』
163
と
守宮別
(
やもりわけ
)
の
肩
(
かた
)
にぶら
下
(
さが
)
る。
164
守宮別
『これや
無茶
(
むちや
)
をすな、
165
お
酒
(
さけ
)
がこぼれるぢやないか、
166
余
(
あま
)
り
見
(
み
)
つとも
好
(
よ
)
くないぞ。
167
それそれカフエーの
女中
(
ぢよちう
)
の
足音
(
あしおと
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た』
168
お花
『ヘン、
169
来
(
き
)
たつて
何
(
なん
)
です、
170
天下
(
てんか
)
晴
(
は
)
れての
夫婦
(
ふうふ
)
ぢやありませぬか。
171
カフエーの
女中
(
ぢよちう
)
にこのお
目出
(
めで
)
たいお
安
(
やす
)
うない
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
せつけてやるのが
痛快
(
つうくわい
)
ですわ。
172
ほんとにお
母
(
かあ
)
さまなどと
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にして
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
173
ねえ
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
174
妾
(
わたし
)
と
貴方
(
あなた
)
とは
仮令
(
たとへ
)
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
となり
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
となり、
175
三千世界
(
さんぜんせかい
)
が
跡形
(
あとかた
)
もなく
壊滅
(
くわいめつ
)
しても、
176
心
(
こころ
)
と
心
(
こころ
)
のピツタリ
合
(
あ
)
ふた
恋
(
こひ
)
の
花実
(
はなみ
)
は
永久
(
とこしへ
)
に
絶
(
た
)
えませぬわネエ』
177
守宮別
『ウン、
178
それやさうだ、
179
お
寅
(
とら
)
が
嘸
(
さぞ
)
今頃
(
いまごろ
)
にや
死物狂
(
しにものぐるひ
)
になつて
俺
(
おれ
)
の
後
(
あと
)
を
探
(
さが
)
して
居
(
を
)
るだらうが、
180
実
(
じつ
)
に
痛快
(
つうくわい
)
ぢやないか』
181
お花
『お
寅
(
とら
)
の
事
(
こと
)
は
一生
(
いつしやう
)
云
(
い
)
はぬといつたぢやありませぬか。
182
矢張
(
やつぱ
)
り
未練
(
みれん
)
があると
見
(
み
)
えて、
183
ちよいちよい
言葉
(
ことば
)
の
先
(
さき
)
に
現
(
あら
)
はれますなあ。
184
エヽ
悔
(
く
)
やしい』
185
と
力一
(
ちからいつ
)
ぱい
頬辺
(
ほほべた
)
を
抓
(
つ
)
ねる。
186
守宮別
『これや
無茶
(
むちや
)
をするな、
187
放
(
はな
)
せ
放
(
はな
)
せ
放
(
はな
)
さぬか』
188
お花
『この
頬辺
(
ほほべた
)
がチ
切
(
ぎ
)
れる
所
(
とこ
)
迄
(
まで
)
放
(
はな
)
しませぬよ』
189
と
益々
(
ますます
)
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
る。
190
守宮別
(
やもりわけ
)
は
目
(
め
)
から
鼻
(
はな
)
から
口
(
くち
)
から
液
(
しる
)
を
垂
(
た
)
らして、
191
『アイタヽヽヽ』と
小声
(
こごゑ
)
で
叫
(
さけ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
192
其処
(
そこ
)
へ
女中
(
ぢよちう
)
の
足音
(
あしおと
)
がしたのでお
花
(
はな
)
はパツと
放
(
はな
)
した。
193
守宮別
『あ
怖
(
おそ
)
ろしいお
前
(
まへ
)
は
女
(
をんな
)
だなあ、
194
今迄
(
いままで
)
コンナ
女
(
をんな
)
とは
知
(
し
)
らなかつたよ。
195
本当
(
ほんたう
)
に
猛烈
(
まうれつ
)
なものだなア』
196
お花
『さうですとも、
197
人殺
(
ひとごろ
)
しのお
花
(
はな
)
と
異名
(
あだな
)
を
取
(
と
)
つた
強者
(
したたかもの
)
ですよ。
198
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は
妾
(
わたし
)
のレツテルで
刃物
(
はもの
)
持
(
も
)
たずと
幾人
(
いくにん
)
を
殺
(
ころ
)
したか
分
(
わか
)
りませぬもの』
199
と
意茶
(
いちや
)
づいて
居
(
ゐ
)
る。
200
そこへ
女中
(
ぢよちう
)
が、
201
女中
『お
客様
(
きやくさま
)
、
202
お
代
(
かは
)
りは
如何
(
どう
)
ですか』
203
と
云
(
い
)
ひつつ
入
(
い
)
り
来
(
き
)
たる。
204
守宮別
(
やもりわけ
)
は
慌
(
あわ
)
ててハンカチーフで
顔
(
かほ
)
の
涙
(
なみだ
)
や
鼻液
(
はなじる
)
を
拭
(
ふ
)
きながら、
205
守宮別
『アヽ
何
(
なん
)
でも
宜
(
よ
)
いからどつさり
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
い、
206
兵站部
(
へいたんぶ
)
は
此処
(
ここ
)
に
女房
(
にようばう
)
が
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
るからな……』
207
お花
『どうか
熱燗
(
あつかん
)
で
沢山
(
どつさり
)
淡泊
(
あつさり
)
したものか
何
(
なに
)
か
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
208
お
金
(
かね
)
は
構
(
かま
)
ひませぬから、
209
その
代
(
かは
)
り
芸者
(
げいしや
)
などは
駄目
(
だめ
)
ですよ、
210
女房
(
にようばう
)
の
妾
(
わたし
)
がついて
居
(
ゐ
)
ますから』
211
女中
(
ぢよちう
)
はビツクリして、
212
女中
『あゝこれはこれは
奥
(
おく
)
さまで
厶
(
ござ
)
いましたか。
213
先刻
(
せんこく
)
はお
母
(
かあ
)
さまなぞと
見
(
み
)
そこないしまして
失礼
(
しつれい
)
しました。
214
それでは
芸者
(
げいしや
)
などの
必要
(
ひつえう
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい。
215
ホヽヽヽ』
216
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
出
(
いで
)
て
行
(
ゆ
)
く。
217
守宮別
『これお
花
(
はな
)
、
218
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
事
(
こと
)
夥
(
おびただ
)
しいではないか。
219
お
前
(
まへ
)
と
私
(
わし
)
とは
年
(
とし
)
が
母子
(
おやこ
)
程
(
ほど
)
違
(
ちが
)
ふのだから、
220
女中
(
ぢよちう
)
がさう
云
(
い
)
へば
夫
(
そ
)
れでよいぢやないか。
221
俺
(
おれ
)
の
目
(
め
)
になんぼ
十七八
(
じふしちはち
)
に
見
(
み
)
えても
世間
(
せけん
)
から
見
(
み
)
れば
六十
(
ろくじふ
)
の
尻
(
しり
)
を
作
(
つく
)
つたお
婆
(
ば
)
アさまだからなア』
222
お花
『
母子
(
おやこ
)
だナンテ、
223
そんな
偽
(
いつは
)
りを
云
(
い
)
ふものぢやありませぬ。
224
又
(
また
)
夫婦
(
ふうふ
)
だと
云
(
い
)
ふて
置
(
お
)
けば、
225
芸者
(
げいしや
)
なぞ
煩
(
うる
)
さい
世話
(
せわ
)
をせうと
申
(
まを
)
しませぬからなア』
226
守宮別
『
如何
(
いか
)
にも
御尤
(
ごもつと
)
も、
227
どうしてもお
花
(
はな
)
は
俺
(
おれ
)
とは
一枚
(
いちまい
)
役者
(
やくしや
)
が
上
(
うへ
)
だわい、
228
エヘヽヽヽ』
229
表
(
おもて
)
には
労働者
(
らうどうしや
)
が、
230
コツプ
酒
(
ざけ
)
をあふりながら
四辺
(
あたり
)
かまはず
喋
(
しやべ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
231
労働者(テク)
『オイ、
232
トンク、
233
ぼろい
事
(
こと
)
をやつたぢやないか。
234
あのお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまを
助
(
たす
)
けに
行
(
い
)
つて
大枚
(
たいまい
)
二十円
(
にじふゑん
)
づつ。
235
これで
十日
(
とをか
)
や
廿日
(
はつか
)
は
気楽
(
きらく
)
に
酒
(
さけ
)
が
呑
(
の
)
めると
云
(
い
)
ふものぢや。
236
時
(
とき
)
にあのお
寅
(
とら
)
について
居
(
ゐ
)
る、
237
蠑螈
(
いもり
)
とか
蜥蜴
(
とかげ
)
とか
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
238
あれはテツキリお
寅
(
とら
)
のレコかも
知
(
し
)
れないよ。
239
お
寅
(
とら
)
の
奴
(
やつ
)
、
240
何時
(
いつ
)
も
自分
(
じぶん
)
の
弟子
(
でし
)
だ
弟子
(
でし
)
だと
吐
(
ぬか
)
してけつかるが、
241
あれは
屹度
(
きつと
)
くつついてけつかるのだらう。
242
その
証拠
(
しようこ
)
を
押
(
おさ
)
えて
一
(
ひと
)
つ
強請
(
ゆす
)
つてやつたら
又
(
また
)
二十円
(
にじふゑん
)
や
三十円
(
さんじふゑん
)
は
儲
(
まう
)
かるだらうからなア』
243
トンク
『これテク、
244
ソンナ
勿体
(
もつたい
)
ない
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふな。
245
先方
(
むかふ
)
は
神様
(
かみさま
)
ぢやないか、
246
おまけに
吾等
(
われら
)
三人
(
さんにん
)
はお
寅
(
とら
)
さまの
神力
(
しんりき
)
に
一耐
(
ひとたま
)
りもなく
打
(
ぶ
)
つ
倒
(
たふ
)
され、
247
命
(
いのち
)
の
無
(
な
)
い
所
(
ところ
)
を
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
ひ、
248
其
(
その
)
上
(
うへ
)
重大
(
ぢうだい
)
の
使命
(
しめい
)
迄
(
まで
)
仰
(
おほ
)
せつかつて
居
(
ゐ
)
るのぢやないか。
249
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しかつたらお
寅
(
とら
)
さまに
云
(
い
)
へば
幾何
(
いくら
)
でも
呉
(
く
)
れるよ。
250
あの
時
(
とき
)
も
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しけれや
幾何
(
いくら
)
でもやると
云
(
い
)
つたぢやないか』
251
テク
『それやさうぢや、
252
まあ
悠
(
ゆつ
)
くりとポツポツに
絞
(
しぼ
)
り
取
(
と
)
る
事
(
こと
)
にせうかい。
253
時
(
とき
)
にツーロは
何処
(
どこ
)
に
行
(
ゆ
)
きよつたのだらうかなア』
254
トンク
『
彼奴
(
あいつ
)
は
何
(
なん
)
だか、
255
ヤクの
跡
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふておつかけて
行
(
い
)
つたぢやないか。
256
ヤクを
捉
(
つか
)
まへて、
257
お
寅
(
とら
)
さまの
前
(
まへ
)
に
引
(
ひ
)
きずり
出
(
だ
)
し、
258
褒美
(
ほうび
)
の
金
(
かね
)
に
有
(
あ
)
り
付
(
つ
)
かうと
思
(
おも
)
つて、
259
抜目
(
ぬけめ
)
なく
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
しよつたのだよ』
260
テク
『
併
(
しか
)
し、
261
裏
(
うら
)
の
座敷
(
ざしき
)
に
一寸
(
ちよつと
)
俺
(
おれ
)
が
最前
(
さいぜん
)
小便
(
せうべん
)
しに
行
(
い
)
つた
時
(
とき
)
、
262
チラツと
目
(
め
)
についた
客
(
きやく
)
は、
263
どうも
守宮別
(
やもりわけ
)
とお
花
(
はな
)
さまのやうだつたが、
264
箸
(
はし
)
まめの
守宮別
(
やもりわけ
)
さまの
事
(
こと
)
だから、
265
お
寅
(
とら
)
さまの
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
んで、
266
お
花
(
はな
)
さまと
内証
(
ないしよう
)
で、
267
○○をやつて
居
(
ゐ
)
るのぢやなからうかな』
268
トンク
『
何
(
なに
)
、
269
お
花
(
はな
)
さまと
守宮別
(
やもりわけ
)
が
裏
(
うら
)
に
居
(
を
)
ると
云
(
い
)
ふのか、
270
あゝそいつは
面白
(
おもしろ
)
い。
271
サア
復
(
また
)
二十円
(
にじふゑん
)
だ』
272
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
273
トンク、
274
テクの
両人
(
りやうにん
)
は
裏座敷
(
うらざしき
)
を
指
(
さ
)
して
忍
(
しの
)
び
行
(
ゆ
)
く。
275
(
大正一四・八・一九
旧六・三〇
於由良秋田別荘
加藤明子
録)
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