霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 岩侠(がんけふ)〔一六五九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第1篇 盗風賊雨 よみ:とうふうぞくう
章:第3章 第65巻 よみ:がんきょう 通し章番号:1659
口述日:1923(大正12)年07月15日(旧06月2日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6503
愛善世界社版: 八幡書店版:第11輯 623頁 修補版: 校定版:37頁 普及版:18頁 初版: ページ備考:
001 虎熊山(とらくまやま)岩窟(いはや)()らはれて()二人(ふたり)(をんな)があつた。002(いづ)れも別々(べつべつ)(しつ)幽閉(いうへい)され、003()薄命(はくめい)(かこ)ちつつ、004(ひそか)(うた)をもつて両女(りやうぢよ)(たがひ)意志(いし)(かよ)はして()る。005(この)(をんな)一人(ひとり)はデビス(ひめ)006一人(ひとり)はブラヷーダ(ひめ)であつた。
007 ブラヷーダは(ひそか)(うた)ふ。
008(わたし)(かな)しい(めくら)小鳥(ことり)
009(はる)()れども(はな)()かず
010小鳥(ことり)(こゑ)()こえない
011()けよが()れよが(やみ)ばかり
012(わたし)(さび)しい(めくら)小鳥(ことり)
013(こひ)(なみだ)(ほし)さへ()えず
014()けよが()れよが(やみ)(ばか)
015(こひ)しき(をとこ)(ともな)はれ
016(ちち)(はは)との(ふところ)
017やうやく(はな)れし雛鳥(ひなどり)
018古巣(ふるす)(かへ)るよしもなし
019(こひ)しき(ひと)(いま)いづこ
020一目(ひとめ)()()(おも)へども
021(しこ)(たく)みの岩窟(がんくつ)
022(ふか)(つつ)まれ()(つき)
023(ひかり)()えぬ()(なげ)
024(たれ)(かた)らむ(すべ)もなし
025永遠(とは)(なみだ)(ほとばし)
026いつしか()れて逢坂(おほさか)
027(せき)()(ひら)(うぐひす)
028()()()かむ(こと)もがな
029(おも)へば(おも)へば父母(ちちはは)
030御身(おんみ)(うへ)(あん)じられ
031(むね)にただよふ万斛(ばんこく)
032(なみだ)をいづれに吐却(ときやく)せむ
033あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
034御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましまして
035一日(ひとひ)(はや)三五(あななひ)
036(かみ)(つかさ)玉国別(たまくにわけ)
037(わらは)危難(きなん)(さと)りまし
038(すく)()さむと()()ます
039(うれ)しき便(たよ)りを松虫(まつむし)
040なく()(ほそ)岩窟(いはや)(なか)
041(わが)()(うへ)(かな)しけれ』
042 (となり)岩窟(いはや)牢獄(ひとや)()()まれたデビス(ひめ)は、043(この)(うた)()いて、044隣室(りんしつ)にブラヷーダの(とら)はれて()(こと)(さと)つた。
045デビス(ひめ)『テルモン(ざん)千木(ちぎ)(たか)
046大宮柱(おほみやばしら)太知(ふとし)りて
047(しづ)まり()ます大神(おほかみ)
048(あさ)(ゆふ)なに(つか)へます
049(ちち)(はは)との(ふところ)
050(はな)れて(かみ)三千彦(みちひこ)
051(すく)はれ(やうや)うハルセイの
052(ぬま)(ほとり)()()れば
053(しこ)曲津(まがつ)()(いつ)
054(かすみ)(なか)より(あら)はれて
055有無(うむ)()はさず(ひつ)(とら)
056(くち)には()ます猿轡(さるぐつわ)
057無惨(むざん)責苦(せめく)()(なが)
058(この)岩窟(がんくつ)()()まれ
059(あさ)(ゆふ)なに盗人(ぬすびと)
060セール、ハールの棟梁(とうりやう)
061(こころ)にもなき恋路(こひぢ)をば
062強要(きやうえう)されて()藻掻(もが)
063(なげ)(くる)しむ(われ)こそは
064三千彦(みちひこ)(つま)のデビス(ひめ)
065(いま)()(うた)伊太彦(いたひこ)
066(つま)(みこと)にましますか
067(かな)しき浮世(うきよ)(ためし)にもれず
068(なれ)(みこと)悪漢(わるもの)
069(しこ)(たく)みに(おちい)りて
070此処(ここ)(きた)らせ(たま)ひしか
071あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
072天地(てんち)(かみ)のますならば
073(しこ)(つかさ)(たましひ)
074(やはら)(きよ)(わらは)()
075二人(ふたり)()をば(すく)ひませ
076(かみ)(なんぢ)(とも)にあり
077(ひと)(かみ)()(かみ)(みや)
078(かみ)(ひと)しきものなりと
079(いづ)(をしへ)()きつれど
080かよわき(をんな)如何(いか)にせむ
081果敢(はか)なき浮世(うきよ)夢路(ゆめぢ)をば
082辿(たど)(わが)()(かな)しみは
083(ゆめ)になれよと朝夕(あさゆふ)
084(いの)(つく)せど(おそ)ろしき
085この正夢(まさゆめ)()れやらず
086虎熊山(とらくまやま)(やま)おろし
087(あさ)(ゆふ)なに()(すさ)
088(こころ)(やぶ)()(くだ)
089もはやせむ(すべ)なく(なみだ)
090()()てたるぞ(かな)しけれ
091あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
092御霊(みたま)恩頼(ふゆ)をたまへかし』
093(かす)かに(うた)つて()る。094隣室(りんしつ)にあるブラヷーダは、095(この)(こゑ)()いて(やや)(ちから)づき、096夜中(やちう)(ひと)(しづ)かなる(とき)(かんが)へ、097(かす)かな(こゑ)(うた)をもつて(たがひ)()果敢(はか)なさを(かた)()つて()た。
098デビス(ひめ)『ブラヷーダ(ひめ)(みこと)如何(いか)にして
099(この)岩窟(がんくつ)(とら)はれたまひし』
100ブラヷーダ(ひめ)曲者(くせもの)にかどわかされて伊太彦(いたひこ)
101()はむと(おも)(まよ)()にけり』
102デビス(ひめ)(なれ)(また)浮世(うきよ)(そと)(ひと)ならじ
103(わらは)(とも)(なや)みますかも』
104ブラヷーダ(ひめ)如何(いか)にして(この)(くる)しみを(のが)れなむ
105()けど(せん)なき(いま)()(うへ)
106デビス(ひめ)(わらは)とて(おな)(おも)ひの杜鵑(ほととぎす)
107(しの)()()(こゑ)もかれつつ』
108ブラヷーダ(ひめ)伊太彦(いたひこ)三千彦(みちひこ)(つかさ)(はじ)めとし
109(わが)()(きみ)(あん)(くら)しつ』
110デビス(ひめ)皇神(すめかみ)(まも)らせたまふ()なりせば
111また(すく)はるる(とき)(きた)らむ』
112 かく(たがひ)述懐(じゆつくわい)をのべて()る。113其処(そこ)へスタスタと(しの)(あし)にやつて()たのは、114(この)岩窟(がんくつ)副親分(ふくおやぶん)(きこ)えたる、115(もと)バラモンの少尉(せうゐ)ハールであつた。116ハールは悪人(あくにん)()ず、117眉目(びもく)清秀(せいしう)118白面(はくめん)美男(びなん)である。119(かれ)はブラヷーダの嬋妍(せんけん)窈窕(えうてう)たる姿(すがた)恋慕(れんぼ)し、120如何(いか)にもして(わが)掌中(しやうちう)(たま)となさむと、121(こひ)(なや)みに心胆(しんたん)(くだ)いて()た。122親分(おやぶん)のセールが(さけ)によひ(つぶ)れて()(すき)(かんが)へ、123(こひ)野望(やばう)(たつ)せむと、124足音(あしおと)(しの)ばせて、125この牢獄(らうごく)入口(いりぐち)(まで)やつて()たのである。
126ブラヷーダ『(いぶ)かしや(この)真夜中(まよなか)何者(なにもの)
127とくとく(かへ)(しこ)曲人(まがひと)
128(わらは)こそ(かみ)(つか)ふる(つかさ)ぞや
129如何(いか)でか(まが)(おそ)()べけむ』
130 ハール、131(まど)(そと)より
132(われ)こそは(むね)もハールの(つかさ)ぞや
133(なれ)()はむと(しの)()にけり。
134朝夕(あさゆふ)(なれ)(すく)はむとあせれども
135セール(つかさ)(ゆる)しなければ』
136ブラヷーダ(ひめ)(あめ)(した)男子(をのこ)(うま)()でし()
137盗人(ぬすびと)となる(ひと)ぞをかしき。
138みめかたち如何(いか)(きよ)けく()ますとも
139(しこ)(つかさ)(こと)()はかけじ』
140ハール『表面(うはべ)には(しこ)(つかさ)()ゆるらむ
141(こころ)(はな)(きみ)()ざるや。
142(はな)()もある武士(もののふ)(われ)(いま)
143()(すく)はむと(しの)()にけり』
144ブラヷーダ(ひめ)(いつは)りの(おほ)()なれば()言葉(ことば)
145如何(いか)(まこと)(うべな)はるべき。
146(なれ)(また)盗人(ぬすびと)ならば烏羽玉(うばたま)
147()(うち)()(そと)()でませ。
148益良夫(ますらを)がかよはき(をんな)()(まよ)
149(した)(きた)れるさまぞをかしき』
150 ハールは(くら)がりに佇立(ちよりつ)独言(ひとりごと)
 
151『ハテナ、152こいつは如何(どう)しても(おれ)()(こと)()かないと()えるわい。153まてまて、154(ひと)工夫(くふう)()らして、155(この)(をんな)(うん)()はせなくては、156(をとこ)一旦(いつたん)()()した言葉(ことば)を、157(あと)()(わけ)には()かず、158(また)男子(だんし)面目玉(めんぼくだま)全潰(まるつぶ)れになつて仕舞(しま)ふ。159(なん)()ふても生殺与奪(せいさつよだつ)(けん)(にぎ)つて()(おれ)に、160(こひ)弱身(よわみ)があればこそ、1601柔和(おとな)しく()()るものの、161()うでも()らん(こと)()い。162(ひと)(おど)かして往生(わうじやう)さしてやらう』
163(うち)(うなづ)き、164(わざ)とに(こゑ)(あら)らげ、
165ハール『これや(をんな)166柔和(おとな)しく()ればつけ(あが)り、167七尺(しちしやく)男子(だんし)(はぢ)()かすとは、168不届(ふとど)千万(せんばん)曲者(くせもの)だ。169生殺与奪(せいさつよだつ)(けん)(にぎ)つた(この)(はう)170(いや)なら(いや)でよい。171無理往生(むりわうじやう)にでも、172()(ごと)(なび)かして()せよう。173覚悟(かくご)()めて(いろ)よい返事(へんじ)をしたらどうだ』
174ブラヷーダ『ホヽヽヽ、175青二才(あをにさい)分際(ぶんざい)として、176()れや(なに)()ふのですか。177(ちつ)(はぢ)をお()りなさいませ。178(わらは)のやうな繊弱(かよわ)(をんな)を、179獅子(しし)()()むやうな牢獄(らうごく)にぶち()み、180弱身(よわみ)をつけ()んで(こひ)欲望(よくばう)()げようとは、181見下(みさ)()てたる貴方(あなた)心底(しんてい)182そんな卑怯未練(ひけふみれん)(をとこ)には、183仮令(たとへ)(からだ)(からす)餌食(ゑじき)になるとても、184アタ阿呆(あはう)らしい(なび)(をんな)(ござ)いませうか。185ちと(むね)()をあて(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。186(わらは)(あい)する(をとこ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)伊太彦(いたひこ)(つかさ)より(ほか)には(ござ)いませぬ(わい)
187ハール『(なに)188(その)(はう)伊太彦(いたひこ)()(やつ)女房(にようばう)になつて()るのか。189ても()ても()(どく)なものだのう。190伊太彦(いたひこ)()(やつ)(この)(はう)計略(けいりやく)にかかり、191陥穽(おとしあな)におち()昨日(きのふ)夕暮(ゆふぐれ)寂滅為楽(じやくめつゐらく)となつたぞよ。192何程(なにほど)(こひ)しい(をとこ)でも、193幽霊(いうれい)同棲(どうせい)する(わけ)には()くまい。194人間(にんげん)(おも)()りが肝要(かんえう)だ、195(まへ)終身(しうしん)196独身(どくしん)生活(せいくわつ)をする(わけ)には()くまい。197(いづ)(をつと)()たねばなるまい。198どうだ、199魚心(うをごころ)あれば水心(みづごころ)だ。200(おれ)(かほ)(まつた)見捨(みす)てたものでもあるまい。201(これ)でもハルナの(みやこ)では美男(びなん)()()つたハール少尉(せうゐ)だ。202(おも)(なほ)して(おれ)(なび)()()いか』
203ブラヷーダ『(なに)204伊太彦(いたひこ)さまは貴方方(あなたがた)毒手(どくしゆ)にかかり、205陥穽(おとしあな)()ちて御亡(おな)くなり(あそ)ばしたと()ふのは、206それや真実(しんじつ)(ござ)いますか』
207ハール『アハヽヽヽ、208(まへ)不便(ふびん)なものだわい。209伊太彦(いたひこ)は、210すつかり有金(ありがね)掠奪(ふんだく)られ、211法衣(ころも)()がされ、212真裸(まつぱだか)になつて、213奈落(ならく)(そこ)()()んで()んだのだ。214(まへ)も、215もうよい加減(かげん)(あきら)めたらどうだ』
216ブラヷーダ『ホヽヽヽ、217そんな(うそ)()つても駄目(だめ)ですよ。218伊太彦(いたひこ)(さま)(けつ)して法衣(ころも)()()ませぬ。219(かね)()つて()られませぬ、220師匠様(ししやうさま)()つて()られるので、221ほんの小遣(こづかひ)ばかり……それに夜光(やくわう)(たま)()つて()以上(いじやう)222貴方(あなた)(がた)計略(けいりやく)にかかるやうな(こと)はありませぬ。223ホヽヽ、224ても()ても腑甲斐(ふがひ)ない柔弱男子(にうじやくだんし)だこと、225(あま)りの(こと)愛想(あいさう)がつき()て、226()いた(くち)もすぼまりませぬわい。227生憎(あいにく)さま、228(わたし)(からだ)はまだ伊太彦(いたひこ)(さま)のお()(あは)せなければなりませぬから、229(ひら)にお(ことわ)(まを)します。230どうか(ほか)のお(かた)にお()()ひなさいませ』
231とやけ気味(ぎみ)になつて、232(わか)(やさ)しい(をんな)業託(ごふたく)(たた)()した。233(をんな)(いのち)()()した(とき)は、234(なん)とも()へぬ(つよ)(こと)()ふものである。
235 デビス(ひめ)(いき)(ひそ)めて、236二人(ふたり)問答(もんだふ)一言(ひとこと)()(もら)さじと、237(みみ)(そばだ)てて()る。
238 そこへ239ふと()をさました親分(おやぶん)のセールは、240ハールの姿(すがた)()えぬので不審(ふしん)(おこ)(なが)ら、241便所(べんじよ)()つて()くと、242二人(ふたり)(をんな)()()めた牢屋(らうや)方面(はうめん)(なん)だか(ささや)(こゑ)(きこ)えるので、243()(ゑひ)(のこ)つて()足許(あしもと)で、244(くら)隧道(とんねる)(なか)(さぐ)つて()(なが)ら、245ドンと(ばか)りハールの(かた)()(あた)つた。246ハールは不意(ふい)()たれて(ひつ)くりかへり、247(いささ)岩角(いはかど)頭蓋骨(づがいこつ)(うち)つけ『ウン』と(その)()(たふ)れて仕舞(しま)つた。
248セール『タタ(たれ)だい。249(おれ)未来(みらい)(つま)(めかけ)(まへ)へ、250(うま)(こと)せうと(おも)つて、251何奴(どいつ)()らぬが口説(くどき)()()つたな。252(ばち)覿面(てきめん)ウンと()ふて(たふ)れよつたが、253大方(おほかた)ハールの野郎(やらう)だらう。254あいつが()るとどうも(おれ)(こひ)邪魔(じやま)になつて仕方(しかた)がない。255青白(あをじろ)瓜実顔(うりざねがほ)をしやがつて、256(をんな)にチヤホヤせられる(やつ)だから、257どうかして()らうと(おも)つて()(ところ)だ。258偶然(ぐうぜん)にも(この)(はう)(つき)(あた)られ、259(あたま)()つて寂滅為楽(じやくめつゐらく)となりよつたが、260(いま)(まで)彼奴(あいつ)一寸(ちよつと)小才(こさい)()(やつ)だから、261トランス(だん)組織(そしき)には(あづか)つて(ちから)があつたが、262もう()基礎(きそ)(かた)まつた以上(いじやう)は、263()つて(かへつ)邪魔(じやま)になる代物(しろもの)だ。264ても()ても、265()(とき)には都合(つがふ)のよい(こと)(ばか)()るものだなア』
266 ハールは(あたま)()つて()(とほ)くなり、267『ウンウン』と(うめ)いて()たが、268セールが(おほ)きな(こゑ)(わら)ふたのでフト()がつき、269(くら)がりで『ウンウン』と(うな)りながら様子(やうす)(かんが)へて()る。
270セール『オイ、271二人(ふたり)(をんな)272最前(さいぜん)から(おれ)独言(ひとりごと)()いたであらうのう。273そして、274ハールの野郎(やらう)がお(まへ)(たち)(なに)()つたであらう。275(それ)(ひと)()かして()れ。276(まへ)(たち)二人(ふたり)生命(いのち)は、277このセールが片手(かたて)(うち)(にぎ)つて()るのだ。278素直(すなほ)(いた)さぬと(ため)(わる)いぞエーン。279あゝ()ふた()ふた280(くる)しいわい。281どうやら百貨店(ひやくくわてん)開店(かいてん)しさうだ。282()(かく)今日(けふ)(した)(もつ)れて充分(じゆうぶん)交渉(かけあい)出来(でき)ないから、283明日(あす)(まで)保留(ほりう)して()かう。284ハールが(くたば)つた以上(いじやう)は、285もう(おれ)のものだ286ハヽヽヽ。287かう()えても二人(ふたり)(をんな)288()()(なみだ)()るセール大尉(たいゐ)だ。289(まへ)(たち)()(なみだ)もない悪棘(あくらつ)人間(にんげん)だと(おも)ふであらうが、290義理(ぎり)人情(にんじやう)もよく()つて()る、291(こひ)(あぢ)はつて()れば(あい)(かい)して()る。292まづ今晩(こんばん)(たの)しんで293明日(あす)()つがよからう』
294勝手(かつて)理窟(りくつ)(なら)(なが)(わが)居間(ゐま)(かへ)つて()く。295ハールは相変(あひかは)らず『ウンウン』と(うな)つて()る。296デビス(ひめ)297ブラヷーダの二人(ふたり)は、298(おな)(おも)ひの(まけ)(おと)らず、299(やみ)(さいは)(した)()(あご)をしやくつて嘲笑(てうせう)して()た。
300大正一二・七・一五 旧六・二 於祥雲閣 加藤明子録)