霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 (あかつき)(そら)〔一六八三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第66巻 山河草木 巳の巻 篇:第1篇 月の高原 よみ:つきのこうげん
章:第1章 第66巻 よみ:あかつきのそら 通し章番号:1683
口述日:1924(大正13)年12月15日(旧11月19日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年6月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6601
愛善世界社版: 八幡書店版:第11輯 731頁 修補版: 校定版:7頁 普及版: 初版: ページ備考:
001三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)
002(どろ)にまみれし現世(うつしよ)
003(あら)(きよ)むる瑞御霊(みづみたま)
004神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)
005堅磐常磐(かきはときは)(しづ)まれる
006ウブスナ(やま)大霊場(だいれいぢやう)
007斎苑(いそ)(やかた)神柱(かむばしら)
008八島(やしま)(ぬし)(めい)()
009(この)()運命(うんめい)(つき)(くに)
010ハルナの(みやこ)(わだか)まる
011(しこ)曲津(まがつ)三五(あななひ)
012(まこと)(みち)言向(ことむ)けて
013世界(せかい)平和(へいわ)幸福(かうふく)
014(きた)さむ(ため)宣伝使(せんでんし)
015常夜(とこよ)(やみ)照国(てるくに)
016別命(わけのみこと)国公(くにこう)
017梅公(うめこう)照公(てるこう)(ともな)ひて
018荒風(あらかぜ)すさぶ河鹿山(かじかやま)
019(しも)にふるへる冬木立(ふゆこだち)
020(かみ)使命(しめい)(かしこ)みて
021スタスタ(のぼ)(くだ)りつつ
022数多(あまた)(てき)(たむろ)せる
023難所(なんしよ)(やうや)突破(とつぱ)して
024水底(みなそこ)までも()(わた)
025(あふひ)(ぬま)月影(つきかげ)
026清照姫(きよてるひめ)黄金姫(わうごんひめ)
027教司(をしへつかさ)(めぐ)()
028(ここ)(たもと)(わか)ちつつ
029(かみ)()さしの宣伝歌(せんでんか)
030(こゑ)(すず)しく(うた)ひつつ
031(ひがし)(みなみ)()して()
032月日(つきひ)(かさ)ねて(やうや)くに
033デカタン(こく)高原地(かうげんち)
034タライの(むら)棒鼻(ぼうばな)
035茶屋(ちやや)(おもて)()きにけり。
036梅公(うめこう)先生(せんせい)037(あふひ)(ぬま)随分(ずいぶん)(ひろ)いものですな。038清照姫(きよてるひめ)(さま)039黄金姫(わうごんひめ)(さま)にお(わか)れしてから、040一瀉千里(いつしやせんり)(いきほひ)で、041人造(じんざう)テクシーに()つて、042随分(ずいぶん)()()した(つもり)ですが、043たうとう()()けたぢやありませぬか。044速力(そくりよく)といひ、045時間(じかん)から(かんが)へて()れば、046()二十里(にじふり)(たしか)突破(とつぱ)したでせう。047(その)(あひだ)一方(いつぱう)湖面(こめん)(つき)048一方(いつぱう)茫々(ばうばう)たる原野(げんや)049人家(じんか)()く、050時々(ときどき)怪獣(くわいじう)(にげ)()(おと)(おどろ)かされ、051やツと此処(ここ)人家(じんか)()つけ、052休息(きうそく)しようとすれば、053どの(いへ)(この)(いへ)()()めて(しづ)まり(かへ)つてゐるぢやありませぬか』
054照国(てるくに)『ウン、055(あさひ)のガンガンとお()(あそ)ばすのに、056気楽(きらく)(ところ)()える(わい)057茫漠(ばうばく)たる原野(げんや)人口(じんこう)稀薄(きはく)()てゐるのだから、058生存競争(せいぞんきやうそう)だとか、059生活難(せいくわつなん)だとかいふ()まはしい(さわ)ぎも(おこ)らず、060太平(たいへい)(ゆめ)(むさぼ)つてゐる(この)国人(くにびと)は、061(じつ)(うらや)ましいぢやないか』
062梅公(うめこう)(しか)先生(せんせい)063(わたくし)(かんが)へでは各戸(かくこ)戸締(とじ)めをして(しづ)まり(かへ)つてゐるのは、064貴方(あなた)仰有(おつしや)太平(たいへい)(ゆめ)ぢやありますまい。065コレ御覧(ごらん)なさい、066此処(ここ)には血汐(ちしほ)(なが)れて()ります。067(この)()(けつ)して(いぬ)(ぶた)()ぢやありますまい。068大足別(おほだるわけ)部下(ぶか)人民(じんみん)殺害(さつがい)したり、069いろいろの凶悪(きやうあく)(こと)()つた記念(きねん)ではありますまいか。070(わたくし)(かんが)へでは、071人民(じんみん)(おそ)れて()をしめて、072(いき)(ころ)してゐるのだらうと(おも)ひますがな』
073照国(てるくに)大足別(おほだるわけ)将軍(しやうぐん)がどうやら此処(ここ)通過(つうくわ)したらしいから、074(あるひ)掠奪(りやくだつ)075強盗(がうたう)076強姦(がうかん)077殺戮(さつりく)など、078所在(あらゆる)悪業(あくごふ)をやりよつたかも()れないなア。079(じつ)にバラモン(ぐん)といふ(やつ)乱暴(らんばう)代物(しろもの)だ、080()(かく)(この)(いへ)(たた)(おこ)して様子(やうす)()いてみようぢやないか』
081梅公(うめこう)(なん)だか(わたくし)体内(たいない)憤怒(ふんぬ)といふ怪物(くわいぶつ)(あたま)(もた)()し、082胸中(きようちう)(いささ)不穏(ふおん)になつて()ました。083ヒヨツとしたら、084(この)(いへ)(なか)にはバラモンの頭株(かしらかぶ)潜伏(せんぷく)してるのではありますまいか。085里人(さとびと)(すで)(すで)(いへ)()てて(にげ)()り、086(その)(あと)へバラモンの(やつ)087ぬつけりこと()()んで、088吾々(われわれ)騙討(だましうち)する計画(けいくわく)かも()れませぬぜ』
089照国(てるくに)『とも(かく)090()(たた)いて(よび)(おこ)し、091内部(ないぶ)秘密(ひみつ)調査(てうさ)してみようぢやないか』
092梅公(うめこう)『オイ、093(てる)さま、094(きみ)(なに)をふさぎ()んでゐるのだ。095こんな(ところ)でへこたれて()うするのだい。096これからが千騎一騎(せんきいつき)性念場(しやうねんば)だぞ。097神軍(しんぐん)勇士(ゆうし)が、098(その)(あを)ざめた(つら)(なん)だい』
099照公(てるこう)(べつ)(ふさ)()んでゐるのぢやない』
100梅公(うめこう)『そんなら(なん)だ。101(こころ)戸締(とじ)めをやつて、102(この)(いへ)主人(しゆじん)(ごと)く、103(いへ)(すま)くたで(ふる)うてゐるのだらう。104何時(いつ)偉相(えらさう)()つてゐる刹那心(せつなしん)はどこで紛失(ふんしつ)して(しま)つたのだ』
105照公(てるこう)()(この)(いへ)()けて見給(みたま)へ、106(たれ)()ないだらう。107人間(にんげん)()んでゐる(いへ)屋根(やね)(むね)()ても活々(いきいき)してゐる。108ここはキツト空家(あきや)だよ』
109梅公(うめこう)馬鹿(ばか)()ふな、110(なに)(ほど)不景気(ふけいき)でも家賃(やちん)(たか)くつても、111かう五軒(ごけん)六軒(ろくけん)空家(あきや)(なら)道理(だうり)がない。112(また)空家(あきや)なれば、113はすかいピシヤンがあり(さう)なものだ。114(はす)かい(がみ)()つてないとこを()れば115(ひと)がゐるに(きま)つてゐるワ』
116照公(てるこう)(はす)かひピシヤンつて117(なん)(こと)だい』
118梅公(うめこう)『ハヽヽヽヽ世情(せじやう)(つう)じない()んさまだなア。119(はす)かいピシヤンといふことは、120(しろ)(かみ)貸家(かしや)()いて、121()をピシヤンと()め、122それを斜交(はすか)ひに()ることだ。123それのしてない(ところ)はキツと(ひと)がゐるのだ。124()(かく)()(たた)いてやらうかい。125三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)126(その)救世主(きうせいしゆ)のお使(つかひ)(かど)()つてゐるのに、127(こころ)(めくら)128(こころ)(つんぼ)(もん)(ひら)いて(むか)()(たてまつ)平和(へいわ)幸福(かうふく)とを(あぢ)はふことを()らないものだ』
129()(なが)ら、130ドンドンドンと(こぶし)(かた)めて、131メツタ矢鱈(やたら)に、132()()れる(ほど)(たた)きつけた。133(いく)()つても(たた)いても、134(ねずみ)(こゑ)(ひと)(きこ)えて()ない。
135梅公(うめこう)『どうも不思議(ふしぎ)だなア。136不在(るす)(うち)無理(むり)這入(はい)れば空巣(あきす)(ねら)ひと誤解(ごかい)されるなり、137(また)仮令(たとへ)(ひと)()つてもお(はい)りなさいと()はない(かぎ)りは、138家宅侵入罪(かたくしんにふざい)となるなり、139コリヤ断念(だんねん)して、140どつか(ほか)(うち)()つて休息(きうそく)することにしよう。141先生(せんせい)142さう(ねが)つたら()うでせうか』
143照国(てるくに)『ウン、144(まへ)()ふのも一応(いちおう)(もつと)もだが、145(おも)()つて()(たた)()つてでも這入(はい)らうぢやないか』
146梅公(うめこう)先生(せんせい)御命令(ごめいれい)とあればやつつけませう』
147無理(むり)()(ひき)()け、148屋内(をくない)三人(さんにん)(すす)()つた。149()れば(あま)(ひろ)からぬ座敷(ざしき)(すみ)に、150雁字(がんじ)がらめに(くく)られ、151額口(ひたひぐち)から()()して、152(むし)(いき)になつた老婆(らうば)一人(ひとり)(よこ)たはつてゐる。
153梅公(うめこう)先生(せんせい)154ヤツパリ空家(あきや)ではありませぬワ。155可哀相(かあいさう)にこんな老人(としより)が、156しかも眉間(みけん)(きず)をうけ、157雁字(がんじ)(がら)めにくくられて()るではありませぬか。158(この)(ばあ)さまを(たす)けて、159事情(じじやう)()きませうか』
160照国(てるくに)『あゝ()(かく)神様(かみさま)御願(おねがひ)しよう。161サアお(まへ)(たち)(わたし)一緒(いつしよ)神言(かみごと)奏上(そうじやう)しよう』
162 『ハイ(かしこ)まりました』と(うめ)163(てる)両人(りやうにん)音吐(おんと)朗々(らうらう)として神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、164(あま)数歌(かずうた)数回(すうくわい)(くり)(かへ)した。165老婆(らうば)(はじ)めて()のついたかの(ごと)く、166(あき)(むし)(しも)(なや)みし(ごと)(ほそ)(こゑ)(はり)(あげ)て、
167老婆(らうば)(いづ)れの(かた)かは()りませぬが、168よくマアお(たす)(くだ)さいました。169どうぞ、170慈悲(じひ)(この)(なは)()いて(くだ)さいませ』
171梅公(うめこう)『お(まへ)(たの)まなくても(たす)けに()たのだ』
172()(なが)ら、173短刀(たんたう)(とり)()縄目(なはめ)をプツと()つて、
174梅公(うめこう)『サアサアお(ばあ)さま、175安心(あんしん)なさい。176モウ吾々(われわれ)(あら)はれた以上(いじやう)は、177(とら)でも(おほかみ)でも獅子(しし)でも(おそ)るるに()らない。178ここにゐられる先生(せんせい)照国別(てるくにわけ)といつて、179神力無双(しんりきむそう)勇士(ゆうし)だよ。180これには(なに)(ふか)理由(わけ)があるだらう。181一度(いちど)(はなし)(くだ)さらぬか』
182老婆(らうば)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。183(のど)(かわ)いてをりますから、184(おそ)れながら(みづ)一杯(いつぱい)(いただ)けますまいか』
185梅公(うめこう)『ヨシヨシ(みづ)無代(ただ)だ。186(まへ)青息(あをいき)吐息(といき)をついてる九死一生(きうしいつしやう)場合(ばあひ)を、187(あふひ)(ぬま)無料(むれう)購入(こうにふ)して()水筒(すいとう)(みづ)188サアサア遠慮(ゑんりよ)はいらぬ、189(いく)らなつと()みなさい。190一杯(いつぱい)()りなけりや、191(わか)(もの)(あし)だ、192(いく)らでも()んで()てやらう』
193水筒(すいとう)老婆(らうば)(くち)にあてた。194老婆(らうば)()(かわ)いた餓鬼(がき)(ごと)く、195クツクツと(のど)()らし、196(またた)()水筒(すいとう)(から)にして(しま)つた。
197梅公(うめこう)『これが所謂(いはゆる)(いのち)清水(しみづ)だ、198(みづ)(みたま)御利益(ごりやく)だ。199(ばあ)さま200しつかりしなさいや』
201老婆(らうば)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。202貴方(あなた)(いただ)いた(この)清水(しみづ)203五臓六腑(ござうろつぷ)()(わた)り、204体中(からだぢう)活々(いきいき)として(まゐ)りました。205そして(にはか)(あたた)かくなつて(まゐ)りました。206有難(ありがた)(ござ)います』
207照公(てるこう)(とき)梅公(うめこう)208(この)御婆(おばあ)さまの額口(ひたひぐち)にはエライ(きず)出来(でき)てるぢやないか。209(この)(きず)をば(なほ)してやらなくちやならうまい』
210梅公(うめこう)『オイ(てる)さま、211(つち)だ お(つち)だ』
212 照公(てるこう)は『成程(なるほど)』とうなづき(なが)ら、213(おもて)(かけ)()し、214一握(ひとにぎ)りの黄色(きいろ)真土(まつち)()つて()て、215(ばあ)さまの疵口(きづぐち)()り、216繃帯(ほうたい)鉢巻(はちまき)をさせ、217二三回(にさんくわい)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)し、
218照公(てるこう)『サアお(ばあ)さま、219これですぐ平癒(へいゆ)するよ』
220老婆(らうば)『ハイ、221おかげ(さま)最早(もはや)(いた)みがとまりました。222(ひと)(なや)める(かみ)もあれば、223(ひと)(たす)ける(かみ)もあるとは、224よく()つたことで(ござ)います。225貴方(あなた)本当(ほんたう)救世主(きうせいしゆ)(ござ)います。226(この)御恩(ごおん)(けつ)して(わす)れは(いた)しませぬ。227(わたくし)はサンヨと(まを)(もの)228(わか)(とき)から(をつと)(はな)れ、229二人(ふたり)(むすめ)(ほそ)(けぶり)()てて(くら)して()りましたが、230(あね)(はう)性質(せいしつ)(わる)く、231十八(じふはち)(はる)232(わたし)(うち)(とま)つた修験者(しゆげんじや)(かどわ)かされ、233行衛(ゆくゑ)()れず、234あとに(のこ)つた一人(ひとり)(いもうと)(ちから)として、235余命(よめい)をつないで()りました(ところ)236バラモン(ぐん)大足別(おほだるわけ)将軍(しやうぐん)部下(ぶか)がやつて(まゐ)りまして、237(わたし)(むすめ)掠奪(りやくだつ)しようと(いた)しますので238(いのち)()へても(わた)されないと(こば)みました(ところ)239(なん)()つても老人(としより)非力(ひりき)240一方(いつぱう)血気(けつき)(ざか)りの命知(いのちし)らずの軍人(いくさびと)241五六人(ごろくにん)(やつ)に、242貴方(あなた)御覧(ごらん)(とほ)り、243手足(てあし)雁字(がんじ)(まき)(しば)られ、244(かたな)むね(ひたひ)()たれ、245致死期(ちしご)(さい)に、246貴方(あなた)(たす)けられたので(ござ)いますが、247()うか貴方(あなた)(がた)御神力(ごしんりき)によりまして、248(まこと)につけ(あが)りのした(ねがひ)なれど、249一度(いちど)(むすめ)()はせて(くだ)さることは出来(でき)ますまいかなア』
250(おい)(なみだ)(ひざ)をぬらしてゐる。251照国別(てるくにわけ)()(どく)さに()へず『ウン』と()つた()り、252両眼(りやうがん)(ふさ)いで、253何事(なにごと)祈願(きぐわん)をこらしてゐる。254照公(てるこう)両眼(りやうがん)(なみだ)()かべ、255老婆(らうば)(やせ)こけた(あは)れな(かほ)()つめてゐた。256老婆(らうば)一行(いつかう)(かほ)(うち)(あふ)(なが)ら、257宣伝使(せんでんし)返答(へんたふ)いかにと()(わび)(がほ)である。258少時(しばし)沈黙(ちんもく)(まく)四人(よにん)(あひだ)におりた。
259梅公(うめこう)(ばあ)アさま、260(その)さらはれた(むすめ)といふのは年頃(としごろ)(いく)つだな』
261サンヨ『(かぞ)(どし)十八歳(じふはちさい)(ござ)います』
262梅公(うめこう)(とし)二八(にはち)二九(にく)からぬ、263(はな)(つぼみ)真娘(まなむすめ)264(ひと)もあらうに、265バラモン(ぐん)にさらはれるとは因果(いんぐわ)母娘(おやこ)だなア。266ヨーシ、267(わたし)(ひと)(すく)宣伝使(せんでんし)(たまご)だ。268男子(だんし)一旦(いつたん)こんなことを()いた以上(いじやう)269()うして見逃(みのが)すことが出来(でき)よう。270義侠心(ぎけふしん)とかいふ(やつ)271(わたし)(はら)(なか)でソロソロ動員令(どうゐんれい)発布(はつぷ)しさうだ。272(ばあ)さま273安心(あんしん)なさい。274キツト(わたし)(とり)(かへ)してみよう、275男子(だんし)言葉(ことば)二言(にごん)はありませぬぞや』
276サンヨ『有難(ありがた)(ござ)います。277枯木(かれき)(はな)()いたやうな気分(きぶん)になりました。278(わたし)生命(いのち)()うなつても(をし)みませぬから、279どうかあの(むすめ)をお(すく)(くだ)さいませ。280そして(わたし)最早(もはや)老齢(らうれい)281(この)()(すこ)しも未練(みれん)(ござ)いませぬが、282(あね)といひ(いもうと)といひ、283行衛(ゆくえ)()れないので(ござ)います。284どうぞ貴方(あなた)がどちらかにお()(くだ)さらば、285(むすめ)()(うへ)をお(まか)(いた)します』
286梅公(うめこう)『お(ばあ)さま、287(まへ)(むすめ)とあらば随分(ずいぶん)別嬪(べつぴん)だらうな。288(まへ)面立(おもだ)ちも(ひと)しほ気品(きひん)(たか)く、289(むかし)(はな)にウソつく美人(びじん)であつたらう。290(その)(おもかげ)がまだ(のこ)つてゐるよ』
291サンヨ『ホヽヽヽ御冗談(ごじようだん)(ばか)仰有(おつしや)いまして……(わたし)(この)(とほ)皺苦茶(しわくちや)だらけの狸婆(たぬきばば)(ござ)いますが、292(おや)(くち)から(まを)すと(なん)だか自慢(じまん)のやうに(ござ)いませうが、293(この)(さと)きつての美人(びじん)だと、294(むすめ)()はれて()りました』
295梅公(うめこう)『さうだらう、296美人(びじん)()けば猶更(なほさら)(あは)れを一層(いつそう)()すやうだ。297(ばあ)さま、298心配(しんぱい)なさいますな。299キツト(この)梅公(うめこう)(たす)けて()せませう』
300サンヨ『何分(なにぶん)(よろ)しう(ねが)ひます』
301照公(てるこう)『オイ梅公(うめこう)302美人(びじん)()いて、303(にはか)貴様(きさま)顔色(かほいろ)がよくなつたぢやないか、304ハツハヽヽ』
305梅公(うめこう)一度(いちど)(ひら)梅公(うめこう)花嫁(はなよめ)だ。306キツと(おれ)のムニヤ ムニヤ ムニヤ』
307照公(てるこう)『ハヽヽヽヽ、308たうとうあとをボカして(しま)ひよつたな。309(しか)先生(せんせい)310梅公(うめこう)軽率(けいそつ)にも、311美人(びじん)()いて安請合(やすうけあひ)請合(うけあひ)ましたが、312()うでせう、313ここの(むすめ)()(どく)だが、314大足別(おほだるわけ)部下(ぶか)()先々(さきざき)所在(あらゆる)悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)をやつてゐると(おも)へば、315ここの(むすめ)一人(ひとり)全力(ぜんりよく)(つく)(わけ)にも()きますまい。316あなたと(わたし)一時(いちじ)(はや)(この)()(たち)()り、317ここの(むすめ)一件(いつけん)梅公(うめこう)一任(いちにん)しておこうぢやありませぬか』
318照国(てるくに)『いや、319心配(しんぱい)はいらぬ。320何事(なにごと)吾々(われわれ)(みみ)()つた以上(いじやう)は、321キツト神様(かみさま)御引合(おひきあは)せだから、322(むすめ)さまの所在(ありか)(わか)るだらう。323(また)(ばあ)さまも益々(ますます)壮健(さうけん)になり、324千歳(ちとせ)(いのち)(たも)つであらう。325()(かく)三人(さんにん)(はら)(あは)せ、326御神業(ごしんげふ)(ため)(すす)まうぢやないか。327コレコレお(ばあ)さま、328照国別(てるくにわけ)()()んだ、329キツト二人(ふたり)(むすめ)(たす)けて()げませう』
330サンヨ『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。331何分(なにぶん)(よろ)しくお慈悲(じひ)(ねが)ひます』
332と、333とめどもなく(なみだ)にひたつてゐる。
334 かかる(ところ)門口(かどぐち)のあいたのを(さいはひ)335二人(ふたり)(をとこ)(あわ)ただしく()(きた)り、
336(かふ)『オイ(ばあ)さま、337(まへ)(うち)別状(べつじやう)ないかなア』
338(おつ)(じつ)ア、339(ばあ)さま一人(ひとり)340(むすめ)一人(ひとり)341バラモン(ぐん)襲来(しふらい)(こま)つて()るだらうから、342(たす)けに()たいと(おも)うたが、343何分(なにぶん)(おれ)女房(にようばう)(まで)(とり)さらへられて取返(とりかへ)すことの出来(でき)ないやうな場合(ばあひ)で、344残念(ざんねん)だつた。345どうぢや、346花香(はなか)さまは、347御無事(ごぶじ)だつたかなア』
348サンヨ『あゝお(まへ)は、349タクソン、350エルソンのお二人(ふたり)さまか、351ようマア親切(しんせつ)()(くだ)さつた。352残念(ざんねん)(なが)(むすめ)花香(はなか)はバラモン(ぐん)にかつさらはれました。353オンオンオン』
354村人(むらびと)親切(しんせつ)言葉(ことば)()いて(はぢ)外聞(ぐわいぶん)(わす)れて()(たふ)れる。
355タクソン『お(ばあ)さま、356心配(しんぱい)するな。357キツト、358バラモンの神様(かみさま)御守護(ごしゆご)で、359時節(じせつ)をまつてをれば、360親子(おやこ)対面(たいめん)をさして(くだ)さるだらう。361(わたし)だつて女房(にようばう)()られ、362財産(ざいさん)をボツたくられ、363(じつ)(かな)しい()()うたけれど、364日頃(ひごろ)信仰(しんかう)のおかげで何事(なにごと)神様(かみさま)(まか)せ、365(なぐさ)めてゐるのだ。366あーあ』
367吐息(といき)をつく。
368サンヨ『(わたし)(むすめ)()られ、369(わが)()雁字(がんじ)(がら)みにしばられ、370(つるぎ)むねにて眉間(みけん)()たれ、371(むし)(いき)になつてゐた(ところ)を、372(この)先生方(せんせいがた)御親切(ごしんせつ)にお(たづ)(くだ)さつて、373いろいろと介抱(かいはう)なし(くだ)さつたおかげで、374(よみがへ)つたのだよ。375どうか、376(この)方々(かたがた)御礼(おれい)(まを)して(くだ)さい』
377タクソン『ヤ、378(あま)りあわててゐるので、379三人(さんにん)のお(かた)御挨拶(ごあいさつ)(わす)れてゐた。380……コレハコレハお三人(さんにん)さま、381(まこと)失礼(しつれい)(いた)しました。382そして貴師(あなた)はバラモンの宣伝使(せんでんし)(ござ)いますか』
383梅公(うめこう)『イヤ、384吾々(われわれ)はバラモンではない。385斎苑(いそ)(やかた)(みづ)御霊大神(みたまのおほかみ)神勅(しんちよく)(ほう)じ、386天下(てんか)救済(きうさい)(めぐ)つてゐる三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)だ』
387 タクソン、388エルソンの二人(ふたり)は『ハツ』と(おどろ)両手(りやうて)をついて、389落涙(らくるい)(なが)感謝(かんしや)()(へう)してゐる。390高原(かうげん)(ふき)(わた)名物(めいぶつ)大風(おほかぜ)(まど)()をガタつかせ(なが)ら、391ヒユーヒユーと(あや)しき(こゑ)()てて(きた)から(みなみ)(わた)つて()く。
392大正一三・一二・一五 旧一一・一九 於祥雲閣 松村真澄録)