霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第七章 武力鞘(ぶりきざや)〔一七〇九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻 篇:第2篇 春湖波紋 よみ(新仮名遣い):しゅんこはもん
章:第7章 武力鞘 よみ(新仮名遣い):ぶりきざや 通し章番号:1709
口述日:1924(大正13)年12月27日(旧12月2日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年8月19日
概要: 舞台:波切丸 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6707
愛善世界社版:90頁 八幡書店版:第12輯 63頁 修補版: 校定版:90頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 ヨリコ(ひめ)甲板(かんばん)()つて、002平和(へいわ)湖面(こめん)(うち)(なが)め、003(こゑ)(すず)しく(うた)ふ。
004久方(ひさかた)大空(おほぞら)(たか)(そび)えたる
005オーラの(やま)(かすみ)けり
006常夜(とこよ)(やみ)もハルの(うみ)
007うつ小波(さざなみ)()(きよ)
008(わが)船舷(ふなばた)(つづみ)うつ
009千波(せんぱ)万波(ばんぱ)(しわ)(うみ)
010()()波切丸(なみきりまる)(うへ)
011(てん)より(たか)()(はな)
012(きよ)御教(みのり)()(なが)
013彼方(あなた)(きし)(すす)()
014(こころ)(くも)りしヨリコ(ひめ)
015村雲(むらくも)はらす時津風(ときつかぜ)
016(こころ)(やみ)(はら)はれて
017(すみ)わたりたる(うみ)(うへ)
018小鳥(ことり)千代(ちよ)(うた)ひつつ
019(つばさ)(ひろ)げてアンボイナ
020(かみ)(かがや)頭上(づじやう)をば
021前後(ぜんご)左右(さいう)()びかへて
022(わが)行手(ゆくて)をば(まも)(ごと)
023()ゆるも(ゆか)(なみ)(うへ)
024(おほ)(ちひ)さき島々(しまじま)
025パインの木蔭(こかげ)宿(やど)しつつ
026彼方(あなた)此方(こなた)(ただよ)ひて
027(なが)めも(きよ)今日(けふ)(たび)
028(たちま)(きた)夜嵐(よあらし)
029(たけ)びに(ふね)中天(ちうてん)
030()()げられて暗礁(あんせう)
031苦難(くなん)(のが)(たま)()
032(いのち)無事(ぶじ)(たも)ちしも
033三五教(あななひけう)(つか)へたる
034梅公(うめこう)(きみ)(おん)(めぐみ)
035(かみ)稜威(みいづ)()のあたり
036(あら)はれませし(たふと)さよ
037(ふね)()(なみ)(しづか)(たち)(なら)
038魚鱗(ぎよりん)(しづ)かにまたたきて
039天津(あまつ)日影(ひかげ)宿(やど)しつつ
040()太平(たいへい)(うた)ふなり
041(たぐひ)(まれ)なる()(きみ)
042(やさ)しき言葉(ことば)(みちび)かれ
043根底(ねそこ)(くに)(あと)にして
044常磐(とは)(はな)()天津(あまつ)(かみ)
045(しづ)まりゐます(おん)(くに)
046(すす)みて()かむ心地(ここち)こそ
047(わが)()(この)()(うま)れてゆ
048まだ(ためし)なき(よろこ)びの
049(なみだ)(そで)はうるほひぬ
050あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
051(かみ)(まも)らす(この)(ふね)
052スガの(みなと)(わた)るてふ
053げにスガスガし(あが)(こころ)
054(なに)(たとへ)(もの)もなし
055二八(にはち)(はる)花盛(はなざか)
056(こころ)(あらし)()きすさび
057よからぬ(ひと)()()いて
058(まが)醜業(しこわざ)(たく)らみつ
059オーラの(やま)(とりで)をば
060千代(ちよ)住家(すみか)(さだ)めつつ
061(つみ)(かさ)ねし(くや)しさよ
062(かみ)(めぐみ)(あさ)からず
063(わが)()(うん)()きずして
064かくも目出(めで)たき神教(みをしへ)
065(すす)()りしは天地(あめつち)
066(かみ)(めぐみ)(かしこ)みて
067(あさ)(ゆふ)なに(おこた)らず
068(その)(おん)(とく)感謝(かんしや)しつ
069(はれ)(わた)りたる(むね)(そら)
070大日(おほひ)(きよ)()(わた)
071月影(つきかげ)(きよ)()みきりて
072(ほし)(またた)きいと(たへ)
073(かぜ)不断(ふだん)音楽(おんがく)
074(かな)でまつりて神々(かみがみ)
075(ふか)稜威(みいづ)(あら)はせり
076(とき)しもあれや大高島(おほたかじま)
077如何(いか)なる(かみ)(はか)らひか
078下津(したつ)岩根(いはね)(そこ)(ふか)
079つき()ちたりと(きこ)えしが
080(なん)()もなく()るうちに
081水泡(みなわ)()えて(あと)もなく
082(その)(いただ)きに永久(とこしへ)
083(たち)(なら)びたる夫婦岩(めうといは)
084(にはか)(けもの)()(へん)
085(たか)岩座(いはくら)相放(あひはな)
086屠所(としよ)()かるる(ひつじ)なす
087(あはれ)姿(すがた)トボトボと
088(いは)虚隙(きよげき)(つた)ひつつ
089猿捕荊(さるとりいばら)()(やぶ)
090(あるひ)(ころ)(また)(たふ)
091(かしら)(した)()(うへ)
092(やうや)磯辺(いそべ)(くだ)りつき
093(なみ)(わた)つて(にげ)()せぬ
094あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
095オーラの(やま)永久(とこしへ)
096(かみ)(いつは)()(ひと)
097(あざむ)(なや)(わが)威勢(ゐせい)
098四方(よも)()らむと(おも)ひしを
099(おも)(かへ)せば(おろか)なる
100(たく)みとこそは()られけり
101(とほ)神代(かみよ)(むかし)より
102常磐(ときは)堅磐(かきは)(この)(うみ)
103(ひかり)ともなり(はな)となり
104湖中(こちう)(わう)(うやま)はれ
105万民(ばんみん)憧憬(どうけい)(まと)となり
106(とき)めき(わた)りし岩島(いはじま)
107(たちま)(てん)(とき)(いた)らば
108かくも無残(むざん)()せにける
109(これ)(おも)へば(ひと)()
110(なほ)(さら)果敢(はか)なきものならむ
111大黒主(おほくろぬし)(いきほひ)
112天地(てんち)(つらぬ)()あり(とも)
113(かみ)(いまし)(くだ)りなば
114(あさひ)(しも)()ゆる(ごと)
115(なつ)(こほり)()くる(ごと)
116はかなく()えむ惟神(かむながら)
117(かみ)(ちから)(おそ)ろしや
118シーゴーの(つかさ)(さいは)ひに
119(かみ)大道(おほぢ)(すす)()
120(まが)関所(せきしよ)(のり)()えて
121(いま)高天(たかま)花苑(はなぞの)
122(かよ)旅路(たびぢ)となりにけり
123(わが)(いもうと)花香姫(はなかひめ)
124(をしへ)(きみ)(ともな)はれ
125(せん)()波濤(はたう)(うち)(わた)
126万里(ばんり)広野(くわうや)跋渉(ばつせう)して
127(かみ)(おん)(ため)()(ため)
128(つく)さむ()とはなりにけり
129()れも(いもうと)惟神(かむながら)
130(たふと)(かみ)(すく)はれて
131(あさひ)のただ()神国(かみくに)
132(いさ)()くこそ(うれ)しけれ
133あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
134(かみ)御前(みまへ)(つつし)みて
135(われ)()前途(ぜんと)(さち)あれと
136天地(てんち)(むか)つて()(まつ)
137(かしこ)(ゐやま)(ねぎ)(まつ)る』
138花香姫(はなかひめ)(うみ)(おも)()()(とり)(つばさ)こそ
139(はな)(てふ)かと()まがひにける。
140大高島(おほたかじま)(おと)さへ()てず湖底(うなそこ)
141(しづ)みしを()()(うつ)るをさとる。
142うつり()御代(みよ)(あふぎ)(すゑ)(ひろ)
143(さか)ゆる(はる)花香(はなか)をぞ()つ』
144シーゴー『島々(しまじま)泰然(たいぜん)自若(じじやく)(なみ)()くを
145大高島(おほたかじま)(あはれ)はかなさ。
146(ゆき)かひの(ふね)(なや)めし岩島(いはじま)
147あへなく()せて水泡(みなわ)となりぬ。
148(わが)(むね)()ぐひし(まが)岩島(いはじま)
149あはれを()ては水泡(みなわ)ときえぬ。
150天地(あめつち)(なか)はら(わた)(この)(ふね)
151(かみ)(すく)ひの御梯(みはし)とぞ(おも)ふ。
152常世(とこよ)()(やみ)(てら)せし島山(しまやま)
153(いま)根底(ねそこ)(しづ)みけるかな。
154(たか)きより(ひく)きにおつる()のならひ
155(われ)もオーラの(やま)(くだ)りつ。
156水平(すいへい)(なみ)()(わた)(この)(ふね)
157(すめ)大神(おほかみ)御姿(みすがた)なるらむ。
158惟神(かむながら)水平線(すいへいせん)(すべ)()
159波切丸(なみきりまる)姿(すがた)(いさ)まし』
160梅公(うめこう)()わたせば波間(なみま)にきらめく御光(みひかり)
161千々(ちぢ)(くだ)くる神影(みかげ)なるらむ。
162四海(しかい)(なみ)いとも(しづか)におさまりて
163大高山(おほたかやま)(かげ)だにもなし。
164大高山(おほたかやま)雲間(くもま)(たか)(なみ)()
165うかびて(ひと)(なや)ませにける。
166()(つき)大高山(おほたかやま)(いただ)きに
167(おほ)はる(なや)みなきぞ(うれ)しき』
168 梅公(うめこう)169ヨリコ(ひめ)170花香姫(はなかひめ)171シーゴーは階段(かいだん)(くだ)り、172各自(かくじ)船室(せんしつ)()つて(ひぢ)(まくら)(よこ)たはつた。173デッキの(うへ)には色々(いろいろ)雑談(ざつだん)(はじ)まつてゐる。174()るからに()のくるりとした(いろ)(くろ)い、175一癖(ひとくせ)(あり)さうな大男(おほをとこ)176十数(じふすう)(にん)船客(せんきやく)(なか)胡坐(あぐら)をかき177傍若(ばうじやく)無人(ぶじん)(てき)武術(ぶじゆつ)自慢話(じまんばなし)をやつてゐる。
178バラック『もし、179(まへ)さまは一見(いつけん)した(ところ)180中々(なかなか)豪勇(がうゆう)()えるが、181角力(すまう)さまですか、182(ただ)しは武術家(ぶじゆつか)ですか』
183ドラック『(おれ)かい、184(おれ)(わか)(とき)や、185角力(すまう)随分(ずいぶん)()つたものだ。186そして日下(ひのした)開山(かいさん)横綱(よこづな)を、187一度(いちど)()つたものだよ。188ハルナの(みやこ)大相撲(おほずまう)(とき)にや随分(ずいぶん)面白(おもしろ)かつたね。189十日(とをか)角力(すまう)十日(とをか)(まで)(つち)つかずで、190大変(たいへん)人気(にんき)だつたよ。191数万(すうまん)見物人(けんぶつにん)()(をど)らせた(こと)といつたら、192前古(ぜんこ)未曽有(みぞう)といふ評判(ひやうばん)だつた。193(まへ)()いて()るだらうが、194日下(ひのした)開山(かいさん)ドラック(やま)といふのは(おれ)(こと)だ。195(これ)()(たま)へ、196(おれ)(かひな)(まる)(てつ)のやうだ。197何程(なにほど)(つよ)(をとこ)でも、198グツと(ひと)(にぎ)るが最後(さいご)199(いき)がつまり(むね)がつかへ、200(あを)くなつて(しま)ふのだ。201そして(もの)()へなくなるのだ。202(あま)(ちから)(つよ)いので、203どの力士(りきし)(この)力士(りきし)もドラック(やま)にかかつちや勝目(かちめ)がないといふので、204(しま)ひの(はて)にや相手(あひて)がなくなつたのだ。205相手(あひて)なしに一人(ひとり)角力(ずまう)とる(わけ)にもゆかず、206(やむ)()力士(りきし)廃業(はいげふ)して、207(いま)剣道(けんだう)師範(しはん)(けん)柔術(じうじゆつ)師範(しはん)になつたのだよ』
208バラ『成程(なるほど)209いかにも(つよ)さうな(うで)(ぷし)ですなア。210(しか)(なが)(それ)(ほど)(つよ)いお(まへ)さまが、211海賊(かいぞく)親分(おやぶん)コーズが襲来(しふらい)した(とき)に、212なぜ彼奴(あいつ)をとつつめて(くだ)さらなかつたのですか。213所謂(いはゆる)(たから)(もち)ぐさりぢやありませぬか』
214ドラ『(その)(とき)にや、215自分(じぶん)船室(せんしつ)安楽(あんらく)(ゆめ)()てゐたものだから、216チツとも()らなかつたよ。217(うで)がなつて、218()()いて、219相手(あひて)がほしくつて、220脾肉(ひにく)(たん)にたえない(おれ)だもの、221海賊(かいぞく)親玉(おやだま)(おそ)うて()たと()きや、222どうして(おれ)見逃(みのが)すものか。223あとから、224本当(ほんたう)(ひと)(うはさ)()いて、225取返(とりかへ)しのつかない末代(まつだい)(そん)をしたものだと、226(こころ)(ひそ)かに(くや)んでゐたのだよ』
227バラ『貴方(あなた)(やう)豪勇(がうゆう)同船(どうせん)して()れば、228(わたし)も、229(この)航海(かうかい)安心(あんしん)(いた)しますワ。230(これ)(まつた)(かみ)(さま)()(めぐみ)だと感謝(かんしや)せざるを()ませぬ』
231ドラ『ウン、232(なに)心配(しんぱい)はいらぬ。233剣術(けんじゆつ)世界中(せかいぢう)(おれ)()(もの)は、234マア、235現代(げんだい)では一人(ひとり)もなからうよ。236角力(すまう)では、237雷電(らいでん)為右衛門(ためうゑもん)238小野川(をのがは)239谷風(たにかぜ)240梅ケ谷(うめがたに)241常陸山(ひたちやま)(ぐらゐ)(そく)にゆふて()ても、242てんで、243角力(すまう)にならぬのだからな。244(また)剣道(けんだう)柔術(じうじゆつ)にかけたら、245ゴライヤスに宮本(みやもと)武蔵(むさし)246塚原(つかはら)卜伝(ぼくでん)247野見(のみ)宿弥(すくね)(ばん)団右衛門(だんうゑもん)248岩見(いはみ)重太郎(ぢうたらう)249荒木(あらき)又右衛門(またうゑもん)などが(そく)(ゆふ)()ても足許(あしもと)へもよりつけぬのだから(たい)したものだよ。250(しか)(なが)(あま)(つよ)すぎて相手(あひて)のないのも(さび)しいものだ。251(なん)とかして(つよ)相手(あひて)にブツつかりたいものだが、252タカが海賊(かいぞく)親分(おやぶん)(ぐらゐ)では、253実際(じつさい)(こと)いふと、254()ごたえがしないのだからな』
255 バラックは呆気(あつけ)にとられ、256怪訝(けげん)(かほ)して(した)をまいてゐる。257大勢(おほぜい)船客(せんきやく)はドラックの大法螺(おほぼら)()にうけ、258(かた)をいからし(なが)豪勇談(がうゆうだん)興味(きようみ)()ち、259チクリチクリと(ひざ)をにじりよせ、260何時(いつ)()にか、261ドラックを(とり)()いて貝細工(かひざいく)(つく)つた洋菊(やうぎく)(はな)のやうにして(しま)つた。
262 チエックといふ一人(ひとり)商人風(せうにんふう)(をとこ)(おそ)(おそ)る、263ドラックに(むか)つて、
264『モシ、265先生(せんせい)それ(ほど)(つよ)いお(かた)なら、266()(なか)(おそ)るべき(もの)(ひと)つもないでせうな』
267ドラ『そらさうだ。268(ゆみ)でも鉄砲(てつぱう)でも、269大砲(たいはう)でも(なん)でも(かん)でも、270(おれ)にかかつちや駄目(だめ)だ。271(この)拳骨(げんこつ)で、272(ひと)つグワンと、273(この)帆柱(ほばしら)でもなぐらうものなら、274根元(ねもと)からポクリと()れて(しま)ふよ。275それだから、276天下(てんか)(てき)なしといふのだ。277マア(きみ)(たち)安心(あんしん)(たま)へ。278(おれ)(この)(ふね)()つてゐる以上(いじやう)は、279仮令(たとへ)(せん)(にん)(まん)(にん)海賊(かいぞく)()たつて、280()(ひと)つひつたらしまひだ。281ドラックの()()いてさへも(ちぢ)(あが)つて(しま)ふからな』
282チエック『(なん)とマア、283(わたし)(たち)仕合(しあは)せなものでせう。284それ(ほど)(ちから)(つよ)い、285武術(ぶじゆつ)達者(たつしや)なお(きやく)さまと同船(どうせん)するとは、286(まつた)先祖(せんぞ)(さま)のお手引(てびき)でせう。287安心(あんしん)して国許(くにもと)(かへ)らして(いただ)きます。288本当(ほんたう)貴方(あなた)活神(いきがみ)さまのやうなお(かた)ですな。289(しか)夜前(やぜん)コーズの頭目(とうもく)(この)(ふね)(あが)つて()(とき)290うす(くら)がりの(なか)から、291繊弱(かよわ)(をんな)(あら)はれて、292(おそ)ろしい海賊(かいぞく)を、293(みな)湖中(こちう)投込(なげこ)んで(しま)ひ、294吾々(われわれ)着物(きもの)(とり)(かへ)して(くだ)さつたのは、295本当(ほんたう)有難(ありがた)(こと)でした。296あの(かた)貴方(あなた)のお弟子(でし)ぢや(ござ)いませぬか』
297ドラ『ウン、298(すべ)(すこ)()()いた(やつ)ア、299(みな)(おれ)教育(けういく)をうけてるのだ。300(あま)沢山(たくさん)弟子(でし)だから、301スツカリ、302(かほ)()(おぼ)えてゐないが、303(つき)(くに)七千(しちせん)余国(よこく)武術家(ぶじゆつか)(みな)(おれ)部下(ぶか)()つても差支(さしつかへ)なからうよ。304(かく)取締所(とりしまりしよ)捕手(とりて)(れん)全部(ぜんぶ)(おれ)剣術(けんじゆつ)柔術(じうじゆつ)(まな)んだのだからな。305そして(その)(をんな)といふのは何者(なにもの)だか、306(まへ)(たち)()つてゐるだらうな。307()()いておいたか』
308バラック『(なん)でも(てん)から(にはか)(くだ)つて()女神(めがみ)さまが309吾々(われわれ)危難(きなん)(すく)つて(くだ)さつたのだらうと、310一般(いつぱん)(うはさ)だ。311何程(なにほど)武術(ぶじゆつ)達者(たつしや)だと()つても、312人間(にんげん)なれば、313(をんな)分際(ぶんざい)として、314あんな(はな)(わざ)出来(でき)ないからな』
315チエ『それでも、316バラックさま、317(しばら)くすると(やみ)(なか)(あら)はれた美人(びじん)(おな)じやうなスタイルの(をんな)が、318甲板(かんばん)(うへ)へあがつて()て、319ヨリコ(ひめ)だとか(なん)とか()つて、320自分(じぶん)(たす)けたやうな(こと)(うた)つてゐましたよ』
321バラ『ナアニ、322(ひと)手柄(てがら)横取(よこどり)せうと(おも)(やつ)(おほ)時節(じせつ)だから、323あんな(こと)()つて、324(われ)信用(しんよう)をつながうとしよつた奸策(かんさく)だよ。325(いま)()(なか)(やつ)ア、326(くち)では立派(りつぱ)(つよ)さうな(こと)(ぬか)(やつ)(ばか)りで、327サア鎌倉(かまくら)となつたら、328手足(てあし)はガタガタ(むね)はドキドキ(くちびる)ビルビル、329ヘコタレ(ごし)になつて、330()げまわすといふ代物(しろもの)(ばか)りだからな。331()(かく)大言(たいげん)壮語(さうご)のはやる時節(じせつ)だ。332そして今日(こんにち)(むかし)(ちが)ひ、333……桃季(たうり)(もの)いはざれ(ども)334(おのづか)小径(せうけい)をなす……といふやうな、335まどろしい(こと)(たれ)(かんが)へてゐない。336自家(じか)広告(くわうこく)(さか)んにやる時節(じせつ)だから、337手際(てぎは)拝見(はいけん)しなくちや、338(たれ)だつて信用(しんよう)するこた出来(でき)やしないワ、339アツハヽヽヽ』
340ドラ『コレコレ、341バラックさま、342(おれ)(まへ)で、343そんな悪口(あくこう)をつくといふ(こと)があるものか。344(まへ)(おれ)最前(さいぜん)いつた(こと)大言(たいげん)壮語(さうご)だと(おも)つてゐるのだなア。345(おれ)(たち)は、346言心行(げんしんかう)一致(いつち)だから、347(けつ)して(うそ)()はないよ。348(うそ)(おも)ふなら、349一寸(ちよつと)(その)(うで)()(たま)へ、350(ひと)(にぎ)つて()せてやらう』
351バラ『イヤもう、352(おそ)()りました。353(けつ)して(けつ)して、354(まへ)さまを信用(しんよう)せないのぢやありませぬ。355言心行(げんしんかう)一致(いつち)のお(まへ)さまとは(じつ)見上(みあ)げたものだ。356今日(こんにち)()(なか)(くち)(こころ)がスツカリ反対(はんたい)になつて()(もの)(ばか)りだから、357せめて言心(げんしん)一致(いつち)ならまだしもだが、358(いつはり)高慢(かうまん)との流行(りうかう)する悪社会(あくしやくわい)ですからな』
359ドラ『(おれ)豪勇(がうゆう)たる(こと)がお(まへ)(たち)合点(がつてん)がいつたとあらば(ゆる)してやる。360毛筋(けすぢ)横巾(よこはば)(ほど)でも、361疑惑(ぎわく)をさし(はさ)むのなら、362(ろん)より証拠(しようこ)言心行(げんしんかう)一致(いつち)()かけて、363(うで)なり(かた)なり、364一握(ひとにぎ)(にぎ)つてみせてやる(つもり)だつたが、365()(ほね)(くだ)けるのが(たす)かつて、366(まへ)仕合(しあは)せだつたよ、367アツハヽヽヽ』
368傍若(ばうじやく)無人(ぶじん)(わら)ふ。
369 かく(はな)(をり)しも数隻(すうせき)海賊船(かいぞくせん)370島影(しまかげ)より(あら)はれ(きた)り、371波切丸(なみきりまる)前後(ぜんご)左右(さいう)より取囲(とりかこ)縄梯子(なはばしご)()げかけ、372兇器(きようき)(たづさ)(なが)ら、373コーズが指揮(しき)(もと)に、374数十(すうじふ)(にん)375バラバラと甲板(デッキ)(のぼ)つて()た。
376チエ『ヤ、377先生(せんせい)378海賊(かいぞく)がやつて()ました。379どうか天下(てんか)無双(むさう)豪力(がうりき)()して、380海賊(かいぞく)(こら)しめて(くだ)さい』
381バラ『サア、382先生(せんせい)383(いま)先生(せんせい)のお(ちから)(あら)はれ(どき)です。384(わたし)もお手伝(てつだ)ひしますから、385やつて(くだ)さいな』
386ドラ『アイタヽヽヽヽ。387あ、388(にはか)腹痛(ふくつう)(いた)し、389(こし)()たなくなつたワイ。390(うん)(わる)(とき)(わる)いものだ。391エ、392残念(ざんねん)だな。393(はら)さへ(いた)くなくば、394海賊(かいぞく)百疋(ひやつぴき)千疋(せんびき)ひねりつぶしてやるのだけどなア』
395とガタガタと(くちびる)紫色(むらさきいろ)(そめ)(ふる)(をのの)いてゐる。
396 コーズは数十(すうじふ)(にん)手下(てした)指揮(しき)(なが)ら、397()甲板(デッキ)より()(まど)船客(せんきやく)()つつかまへて赤裸(まつぱだか)となし、398ドラックも(また)同様(どうやう)に、399持物(もちもの)一切(いつさい)掠奪(りやくだつ)され、400赤裸(まつぱだか)にむかれて(しま)つた。401コーズは(いきほひ)(じやう)じ、402階段(かいだん)(くだ)つて、403船室(せんしつ)(すす)()つた。404デッキの(うへ)老若(らうにやく)男女(なんによ)右往(うわう)左往(さわう)()けまわり405阿鼻(あび)叫喚(けうくわん)地獄道(ぢごくだう)現出(げんしゆつ)してゐた。
406大正一三・一二・二 新一二・二七 於祥雲閣 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→