霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 獣念気(じゆうねんき)〔一七一六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻 篇:第3篇 多羅煩獄 よみ:たらはんごく
章:第14章 第67巻 よみ:じゅうねんき 通し章番号:1716
口述日:1924(大正13)年12月28日(旧12月3日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年8月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
場面は変わって、タラハン城市の西北十里の地点にあるタニグク山。周りを険峻な山に囲まれ、山麓には天然の大岩窟がある。タラハン国の元の左守シャカンナは、娘のスバール姫と共にこの岩窟に潜み、遠近の無頼漢を集め、山賊の頭目となっていた。ガンヂーとその一派を討伐せんと、密かに力を蓄えていた。
バラモン軍の横行で、最近は山賊の見入りも少なくなってきている。ちょうどシャカンナの妻の命日にあたり、供養の宴をせんと酒食を揃えた。妻の回向の読経をさせるため、修験者を探しに行った子分のコルトンを待ちながら、子分のバルギーと語り合っている。
そこへ、コルトンが、美女を連れた怪しげな修験者を連れて帰る。
修験者は自分は天帝の化身であり、一緒にいる美女は棚機姫であると大見得を切る。
シャカンナは一目で偽修験者を見破る。修験者は玄真坊の正体をあらわす(前巻にて、オーラ山にたてこもっていた3悪人の一人。他の二人は梅公によって三五教に改心し宣伝使となるが、玄真坊だけは再び悪化して、行方をくらましていた)。
山賊となり現政権の転覆を企てるシャカンナは玄真坊と心を通じ、参謀として招き入れようとする。シャカンナは玄真坊の新しい偽名として、「天真坊」と名づける。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6714
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 95頁 修補版: 校定版:178頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 タラハン城市(じやうし)()正北(せいほく)十里(じふり)地点(ちてん)に、002タニグク(やま)といふ高山(かうざん)(そび)えてゐる。003南西北(なんせいほく)三方(さんぱう)嶮峻(けんしゆん)なる高山(かうざん)(つつ)まれ、004(わづか)(ひがし)一方(いつぱう)(ほそ)入口(いりぐち)があつて、005淙々(そうそう)たる谷水(たにみづ)(この)東口(ひがしぐち)より流出(りうしゆつ)するやうになつてゐる。006タニグク(やま)山麓(さんろく)には天然(てんねん)大岩窟(だいがんくつ)穿(うが)たれてゐる。007カラピン(わう)(いさ)めて(わが)(つま)(ころ)され、008自分(じぶん)(また)(やいば)(さび)とならむとせし危機一髪(ききいつぱつ)(なん)(のが)れ、009太子(たいし)スダルマンの(きさき)(まで)内定(ないてい)してゐた当時(たうじ)六才(ろくさい)(むすめ)スバール(ひめ)(せな)()ひ、010(みやこ)(あと)(この)岩窟(がんくつ)(ひそ)んで、011遠近(ゑんきん)無頼漢(ぶらいかん)(あつ)め、012(みづか)山賊(さんぞく)張本(ちやうほん)となり、013右守(うもり)(かみ)たりしガンヂー(ならび)(かれ)部下(ぶか)のサクレンスの奸者(かんじや)(はら)ひ、014君側(くんそく)(きよ)めむと、015日夜(にちや)肺肝(はいかん)(くだ)いてゐた(かれ)016カラピン(わう)(つか)へてゐた左守(さもり)のシャカンナであつた。017(いにしへ)より獅子(しし)棲処(すみか)(とな)へられ、018誰一人(たれひとり)(この)山奥(やまおく)(あし)()るる(もの)がなかつた。019シャカンナは(とし)(とも)沢山(たくさん)部下(ぶか)()えて()た。020そして(その)部下(ぶか)(よる)(ひそ)かにタラハンの城下(じやうか)(はじ)各地(かくち)派遣(はけん)し、021富者(ふうしや)(いへ)(ねら)つて財物(ざいぶつ)(うば)ひ、022ガンヂー討伐(たうばつ)準備(じゆんび)(ととの)へてゐた。023六才(ろくさい)(とき)(ともな)ふて()(むすめ)のスバールは今年(ことし)(やうや)十五才(じふごさい)(はる)(むか)へた。024シャカンナは岩窟(がんくつ)(おく)()大胡坐(おほあぐら)をかき脇息(けうそく)にもたれ(なが)ら、025数多(あまた)乾児(こぶん)(ども)報告(はうこく)()いてゐた。
026シャカンナ『オイ、027バルギー、028(この)(ごろ)()つからお(まへ)(くみ)(はたら)きが()らぬぢやないか。029チツと(しつか)りしてくれないと、030折角(せつかく)(たくは)へた軍需品(ぐんじゆひん)(まで)()くなつて(しま)ひ、031何時(いつ)になつたら目的(もくてき)(たつ)するやら(ほと)んど見当(けんたう)がつかぬぢやないか』
032バルギー『ハイ、033(おほせ)では(ござ)いますが、034(この)(ごろ)はバラモン(ぐん)横行(わうかう)濶歩(くわつぽ)(いた)しますので、035(おも)はしい仕事(しごと)出来(でき)ませず、036チツと(もの)のあり(さう)(いへ)(みな)バラモン(ぐん)にしてやられ、037(わづか)二十(にじふ)三十(さんじふ)手下(てした)()れて、038あの大軍隊(だいぐんたい)(むか)ふにまはし(たたか)(わけ)にも()きませず、039残念(ざんねん)(なが)軍隊(ぐんたい)退却(たいきやく)する(まで)時機(じき)(かんが)へてゐるので(ござ)います。040(すこ)(ばか)り、041(この)(ごろ)()()みになるやうで(ござ)いますが、042(すこ)しお()(くだ)さいますれば、043屹度(きつと)(おほ)きな活動(はたらき)をしてお()にかけます。044(わたし)精々(せいぜい)部下(ぶか)督励(とくれい)して()りますなれど、045(なん)()つても(よる)(ばか)りの仕事(しごと)で、046(おも)(やう)(はかど)りませぬ。047(この)十里(じふり)山路(やまみち)(しの)変装(へんさう)して、048バルガン()()で、0481(また)(よる)(うち)(かへ)つて()なくちやならないので(ござ)いますから、049肝腎(かんじん)(はたら)(あひだ)は、050ホンの半時(はんとき)四半時(しはんとき)(ばか)りで(ござ)いますから、051乾児(こぶん)(ども)大変(たいへん)(こま)つて()ります』
052シャ『エー仕方(しかた)がないなア。053マア()(かく)054精々(せいぜい)(はたら)くやうにいつてくれ。055そしてガンヂーの屋敷(やしき)様子(やうす)()うぢや、056判然(はつきり)(わか)つたか』
057バル『ハイ、058(この)(ごろ)はバラモン(ぐん)襲来(しふらい)するとか()つて、059(へい)(たか)くし、060不寝番(ねずのばん)兵士(へいし)七八十人(しちはちじふにん)(ばか)り、061裏表(うらおもて)(もん)警護(けいご)して()りますので、062(ちか)よる(こと)出来(でき)ませぬ』
063シャ『さうか、064それも仕方(しかた)がない。065もう(しばら)計画(けいくわく)()ばさうかな』
066バル『どうか、067さう(ねが)へますれば結構(けつこう)(ござ)います』
068シャ『今日(けふ)(わが)女房(にようばう)城中(じやうちう)(おい)て、069大王(だいわう)()にかかり、070(いのち)をすてた命日(めいにち)だから、071コルトンに()()け、072いい修験者(しゆげんじや)を、073どつかで(もと)めて()て、074回向(ゑかう)をして(もら)ひたいと(おも)ひ、075二三日前(にさんにちまへ)から派遣(はけん)したのだが、076今日(けふ)(かへ)つて()ぬやうな(こと)では、077到底(たうてい)()()はない。078(こま)つた(こと)だワイ。079(しか)(なが)らコルトンは()(かた)(やつ)だから、080屹度(きつと)どつかで修験者(しゆげんじや)(さが)して()るだらう。081それについては、082馴走(ちそう)用意(ようい)をしておけ。083それから今日(けふ)二百(にひやく)乾児(こぶん)(はら)一杯(いつぱい)馳走(ちそう)()はせ084(さけ)鱈腹(たらふく)振舞(ふるま)つてやるが()からうぞ』
085バル『ハイ、086今朝来(こんてうらい)部下(ぶか)督励(とくれい)し、087馳走(ちそう)準備(じゆんび)やお(まつり)用意(ようい)はチヤンと(ととの)つてをります。088どうぞ(その)(てん)(だけ)御安心(ごあんしん)(くだ)さいませ。089さり(なが)らコルトンが(かへ)つて()ないとすれば、090折角(せつかく)馳走(ちそう)無駄(むだ)になる道理(だうり)(ござ)います。091()(かへ)つて()なかつたら、092どう(いた)しませうか』
093シャ『そんな心配(しんぱい)()らぬ。094()(かれ)(かへ)つて()なかつたならば、095()むを()(おれ)霊前(れいぜん)(おい)経文(きやうもん)(とな)へ、096十年忌(じふねんき)()ます(かんが)へだ。097売僧(まいす)坊主(ばうず)読経(どくきやう)よりも、098(をつと)(おれ)直接(ちよくせつ)読経(どくきやう)(かへつ)故人(こじん)(ため)には()いかも()れぬ。099()(うち)(かれ)(かへ)るのを(はばか)るだらう。100(いづ)(よる)(こと)だらう』
101バル『今晩(こんばん)()(どき)(まで)()(こと)(いた)しませう。102それで(かへ)らねば、103最早(もはや)断念(だんねん)(あそ)ばして、104御大(おんたい)(みづか)比丘(びく)のお(つと)めをなさいませ。105(およ)ばず(なが)(この)バルギーも子供(こども)(とき)はウラル(けう)小僧(こぞう)(つと)めて()りました経験(けいけん)(ござ)いますから、106経文(きやうもん)素知(そし)(ばし)(ぐらゐ)(おぼ)えてをりますから……』
107シャ『(おれ)今日(けふ)(なん)だか(からだ)(つか)れたやうだ。108コルトンが(かへ)つて()(まで)1081休息(きうそく)するから109(まへ)部下(ぶか)(やつ)によく()をつけ、110監督(かんとく)(おこた)らない(やう)にしてくれ』
111()ひのこし、112(わが)寝室(しんしつ)なる岩窟(がんくつ)()して()(かく)した。
113 黄昏(たそがれ)()ぐる(ころ)コルトンは114威風堂々(ゐふうだうだう)たる一人(ひとり)修験者(しゆげんじや)(かれ)(つま)(むすめ)()らね(ども)115天女(てんによ)()うな十七八(じふしちはち)美人(びじん)(ともな)ひ、116二三(にさん)部下(ぶか)(とも)に、117(かた)をそびやかし、1171凱旋(がいせん)将軍(しやうぐん)のやうな意気(いき)()みで、118悠々(いういう)(かへ)つて()た。119バルギーはコルトンの姿(すがた)()るより、120あわてて出迎(でむか)ひ、
121バル『ヤ、122兄弟(きやうだい)123手柄(てがら)手柄(てがら)124(なん)とマア立派(りつぱ)比丘(びく)をつれて()たものだなア。125親分(おやぶん)さまが大変(たいへん)なお待兼(まちかね)だ。126用意(ようい)万端(ばんたん)チンと(ととの)つてゐるのだ。127()奥様(おくさま)(さぞ)(よろこ)(あそ)ばすだらう。128かういふ(こと)はお(まへ)(かぎ)(わい)
129コルトン『ヤア、130サウ()めて()れちや、131(もの)()へなくなる。132(しか)(なが)彼方(あちら)此方(こちら)とかけまはり、133名僧(めいそう)知識(ちしき)(たづ)(まは)つた(ところ)134(この)(ごろ)はバラモン(ぐん)襲来(しふらい)で、135比丘(びく)修験者(しゆげんじや)もどつかへ(かげ)をかくし、136容易(ようい)見当(みあた)らなかつたのだ。137そして(てら)()つてゐる坊主(ばうず)(たの)んぢや、138(この)かくれ()()(なか)発覚(はつかく)する(おそれ)があるものだから、139風来者(ふうらいもの)神力(しんりき)(つよ)い、140(とく)(たか)比丘(びく)をと(おも)つたものだから、141今日(けふ)三日(みつか)捜索(そうさく)にかかり、142(やうや)今朝(けさ)143こんな立派(りつぱ)修験者(しゆげんじや)(いな)天帝(てんてい)化身様(けしんさま)出会(でつくは)し、144事情(じじやう)(まをし)()げた(ところ)145(こころよ)承諾(しようだく)して(くだ)さつたものだから、146(とも)して()たのだよ』
147バルギー『あ、148それは好都合(かうつがふ)だつた。149マ、150(おく)()つて(やす)んでくれ。151……これはこれは天帝(てんてい)化身(けしん)(さま)152(はじ)めてお()にかかります。153(わたし)当館(たうやかた)番頭(ばんとう)(いた)(もの)でバルギーと(まを)します。154何分(なにぶん)斯様(かやう)山中(さんちう)(ござ)いますから、155充分(じゆうぶん)御待遇(ごたいぐう)出来(でき)ませず、156不都合(ふつがふ)(ばかり)(ござ)いますけれど、157そこは(なに)とぞ寛大(くわんだい)なるお(こころ)見直(みなほ)し、158聞直(ききなほ)(くだ)さいまして、159()奥様(おくさま)御回向(ごゑかう)(ねが)ひたう(ござ)います。160失礼(しつれい)(なが)御姓名(ごせいめい)(なん)(まを)されますか。161主人(しゆじん)報告(ほうこく)都合(つがふ)(ござ)いますから(うけたま)はりたいもので(ござ)います』
162 修験者(しゆげんじや)はさも鷹揚(おうやう)にそり()になり、
163修験者(しゆげんじや)『ヤ、164其方(そなた)当家(たうけ)番頭(ばんとう)バルギー殿(どの)(ござ)つたかのう。165コルトン殿(どの)其方(そなた)才子(さいし)たる(こと)()()いてゐる。166(しか)(なが)当家(たうけ)普通(ふつう)(いへ)ではあるまい。167コルトン殿(どの)(うま)(くち)()せられ、168(この)山奥(やまおく)()()まれ、169四辺(あたり)様子(やうす)()れば、170どうやら山賊(さんぞく)住家(すみか)()える。171其方(そなた)親玉(おやだま)(つか)へてゐる小頭(こがらし)であらうがな』
172バル『ハイ、173(おそ)()ります。174いかにも貴方(あなた)御明察(ごめいさつ)には感服(かんぷく)(つかまつ)りました。175最早(もはや)(いま)となつては(かく)しても駄目(だめ)(ござ)います。176吾々(われわれ)山賊(さんぞく)小頭(こがしら)(いた)して()ります。177大親分(おほおやぶん)はシャカンナと(まを)し、178大変(たいへん)豪傑(がうけつ)(ござ)います。179失礼(しつれい)(なが)ら、180(かさ)ねて御名(おな)をお(きき)(まを)したう(ござ)いますが……』
181(しゆ)『アハヽヽヽ、182(わが)()()いて(なん)(いた)すか。183人間(にんげん)ならば()もある、184苗字(めうじ)もある。185拙僧(せつそう)こそは(てん)(ちち)となし()(はは)(いた)し、186天帝(てんてい)精気(せいき)()つて、187(ここ)人体(じんたい)(あら)はし、188衆生済度(しゆじやうさいど)(いた)(もの)189たつて(わが)()()はば天帝(てんてい)化身(けしん)とでも()づけておかうかい、190アツハヽヽヽ』
191バル『いかにも、192(たて)から()ても(よこ)から()ても、193威厳(ゐげん)(そな)はつた御神格(ごしんかく)194天帝(てんてい)御化身様(ごけしんさま)(ござ)いませう。195あゝ、196奥様(おくさま)(なん)たる幸福(かうふく)(かた)だらう。197そして其処(そこ)にゐらつしやる御婦人(ごふじん)奥様(おくさま)(ござ)いますか、198(あるひ)はお娘子(むすめご)(ござ)いますか』
199(しゆ)『アハヽヽヽ、200(つま)もなければ(むすめ)もない、201(この)御方(おんかた)天極(てんごく)紫微宮(しびきう)より、202万民済度(ばんみんさいど)(ため)203(この)(たび)御降臨(ごかうりん)(あそ)ばした棚機姫(たなばたひめ)(さま)(ござ)るぞや』
204『いかにも、205さう(うけたま)はりますれば、206()(うへ)(へそ)()()つた御人(ごじん)とは()えませぬ。207いふに()はれぬ御気品(ごきひん)(たか)い、208御綺麗(おきれい)なお姿(すがた)209(わたし)一目(ひとめ)(をが)んで()がくらむやうで(ござ)います。210サア、211どうか、212主人(しゆじん)待兼(まちか)ねて()りますから、213(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ』
214(しゆ)(しか)らば案内(あんない)めされ。215主人(しゆじん)()うて、216とくと天地(てんち)道理(だうり)()かしてやらう』
217 バルギーは……天地(てんち)道理(だうり)泥棒(どろばう)親分(おやぶん)()かされちや大変(たいへん)だ。218愛善(あいぜん)(もつ)(むね)とする神様(かみさま)化身(けしん)と、219(ひと)(おど)かし、2191金銭(きんせん)物品(ぶつぴん)()大親分(おほおやぶん)とはそりが()ふまい。220コルトンも()()かねい、221何故(なぜ)こんな神様(かみさま)化身(けしん)などを(ひつ)ぱつて()やがつたらう……と(くち)(うち)(つぶや)(なが)ら、222シャカンナの()ごもつてゐる立派(りつぱ)岩窟(がんくつ)(なか)案内(あんない)した。
223バル『旦那様(だんなさま)224只今(ただいま)コルトンが修験者(しゆげんじや)(いな)モツト モツト モツト、225(たふと)(たふと)(えら)御方様(おかたさま)をお(とも)(いた)して(かへ)つて(まゐ)りました。226(この)(かた)人間(にんげん)ぢやない(さう)です。227天帝(てんてい)御化身(ごけしん)228(また)一人(ひとり)御方(おんかた)棚機姫(たなばたひめ)(さま)ぢやといふ(こと)(ござ)います。229どうぞ不都合(ふつがふ)のないやう、230御無礼(ごぶれい)のない(やう)231御注意(ごちうい)(くだ)さいませ』
232シャ『(なに)233コルトンが、234(かみ)化身(けしん)をつれて()たといふのか、235ヤ、236それは重畳(ちようぢやう)々々(ちようぢやう)237()(その)(かみ)化身(けしん)とやらに()ふてみやう』
238バル『只今(ただいま)此処(ここ)へお(とも)して(まゐ)りました。239どうか()きて(くだ)さい。240失礼(しつれい)(ござ)いますぞ』
241 シャカンナはガハとはね()き、242()ずまいを(なほ)天帝(てんてい)化身(けしん)(しよう)する(をとこ)(かほ)熟視(じゆくし)(なが)ら、243ニヤリと打笑(うちわら)ひ、
244シャ『イヨー、245()()けたものだなア。246売僧(まいす)もそれ(だけ)立派(りつぱ)衣服(いふく)をつけ、247尊大(そんだい)ぶつて()れば、248天帝(てんてい)化身(けしん)とも、249素人(しろうと)()には()えるだらう。250(しか)(おれ)()では山子(やまこ)坊主(ばうず)とより()えないワ、251アハヽヽヽ。252オイ、253狸坊主(たぬきばうず)254(きさま)一体(いつたい)何処(どこ)(もの)だい』
255(しゆ)『これは()しからぬ。256天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)257天帝(てんてい)化身(けしん)たる拙僧(せつそう)(むか)つて、258狸坊主(たぬきばうず)とは(あま)りの暴言(ばうげん)ではないか。259左様(さやう)挨拶(あいさつ)(うけたま)はるべく、260はるばるかやうな山奥(やまおく)へは(まゐ)(まを)さぬ。261()()らぬとあれば、262拙僧(せつそう)(この)(まま)(かへ)るで(ござ)らう』
263シャ『アハヽヽヽ、264オイ坊主(ばうず)265さう(おこ)るものぢやないよ。266糞尿(ふんねう)()(にしき)(つつ)み、267夜叉(やしや)(こころ)菩薩(ぼさつ)仮衣(かりぎぬ)(よそほ)うて、268天下(てんか)万民(ばんみん)困惑(こんわく)せしめむとする大野心(だいやしん)(いう)する(もの)が、269(この)(はう)一言(いちごん)(おそ)れ、270(はや)(にげ)仕度(じたく)(いた)すとは、2701(なん)(こと)だ。271オイ坊主(ばうず)272(なんぢ)虚勢(きよせい)()つて(つよ)(さう)(えら)(さう)(かま)へてゐるが、273(こころ)(うち)はビクビクものだらう。274(うま)(とり)()つかつたと(おも)つて、275コルトンの野郎(やらう)にマンマと(だま)()まれ、276()てみれば意外(いぐわい)硬骨(こうこつ)(おやぢ)277さぞ(おどろ)いたであらう』
278(しゆ)益々(ますます)(もつ)()しからぬお言葉(ことば)279拙者(せつしや)愛善(あいぜん)(とく)(ぢう)し、280信真(しんしん)(ひかり)()ち、281智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(かがや)(わた)天帝(てんてい)化身(けしん)間違(まちがひ)(ござ)らぬぞや。282(とし)をとられて、283其方(そなた)眼力(がんりき)がうすくなり、284拙僧(せつそう)神格(しんかく)容貌(ようばう)(ならび)威光(ゐくわう)(わか)らぬので(ござ)らう。285チツと(ばか)手洗(てうず)使(つか)つて()なさい。286()とぼけ(まなこ)神人(しんじん)()ようとは、287身分(みぶん)不相応(ふさうおう)(ござ)らうぞ』
288シャ『アハヽヽヽ、289ても(さて)面白(おもしろ)狸坊主(たぬきばうず)だ。290オイ売僧(まいす)291(その)格好(かくかう)(なん)だ、292(かた)四角(しかく)にしよつて、293チツと(けづ)りおとしてやらうか。294棚機姫(たなばたひめ)(さま)天降(あまくだ)りだとか(なん)とか(まを)して、295良家(りやうか)(むすめ)をチヨロまかして()たのだらう。296どうだ、297(おれ)眼力(がんりき)が、298これでも(おとろ)へて()ると(まを)すか。299()いかげんに()()り、300正体(しやうたい)(あら)はせ』
301(しゆ)『アハヽヽヽ、302そこ(まで)看破(かんぱ)されちや、303モウ仕方(しかた)がない。304オイ(おやぢ)305しつかり()け、306(おれ)こそはトルマン(ごく)有名(いうめい)なオーラ(さん)(たて)こもり、307天帝(てんてい)化身(けしん)308天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)名乗(なの)つてゐた玄真坊(げんしんばう)()れの(はて)だ。309(わる)(こと)にかけては、310(けつ)して人後(じんご)()ちない(つも)りだ。311悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)も、312大蛇(をろち)(おほかみ)313(おれ)(こゑ)()いたら、3131(はだし)(にげ)()すといふ、314天下無双(てんかむさう)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)だぞ。315オイ(おやぢ)316(きさま)山賊(さんぞく)張本(ちやうほん)とはいひ(なが)ら、317(なに)()からぬ目的(もくてき)(かか)へて()山砦(さんさい)立籠(たてこ)もり、318天下(てんか)(ねら)つてゐる曲者(くせもの)であらうがな。319(いな)国盗人(くにぬすびと)であらうがな。320(おやぢ)計画(けいくわく)(じつ)天下(てんか)壮図(さうと)だ。321(しか)(なが)()しい(こと)には、322(おやぢ)には棟梁(とうりやう)真価(かち)がない。323(いな)立派(りつぱ)参謀(さんぼう)がない。324痩山(やせやま)(わらび)のやうな代物(しろもの)(ばか)り、325(いく)(あつ)めた(ところ)で、326(なん)(やく)にも()つものか。327こんなヒヨロヒヨロ部下(ぶか)(あつ)めて、328そんな大望(たいまう)成就(じやうじゆ)すると(おも)うてゐるのか、329てもさても迂愚(うぐ)骨頂(こつちやう)だな、330アハヽヽヽ。331(おやぢ)心根(こころね)がおいとしいワイ、332イツヒヽヽヽ』
333シャ『ヤア、334此奴(こいつ)面白(おもしろ)糞坊主(くそばうず)だ、335(はな)せるワイ。336オイ(たぬき)337(うで)まくりでもして、338胡坐(あぐら)をかけ。339そんな業々(げふげふ)しいコケおどしの法服(ほふふく)(まと)うてゐると、340(なん)だか(おれ)(こころ)から(うち)とけられない()がするワ。341(おに)(じや)との会合(くわいがふ)だ。342今夜(こんや)はゆつくり(かた)()かし、343(さいは)ひに肝胆(かんたん)(あひ)()らすを()ば、344どうだ(ひと)つ、345天下(てんか)()りの(おほ)バクチを()つてみようぢやないか』
346玄真(げんしん)『ヤア、347其奴(そいつ)アしやれてる。348ワリとは()()いた(おやぢ)だ。349(しか)(おれ)狸坊主(たぬきばうず)といつたが、350(たぬき)称号(しやうがう)(だけ)(まさ)返上(へんじやう)する、351受取(うけと)つてくれ。352(ついで)売僧坊主(まいすばうず)尊称(そんしよう)返上(へんじやう)しておかう、353糞坊主(くそばうず)など()はれるのは沙汰(さた)(かぎ)りだ、354無礼(ぶれい)(きよく)だ。355コラ(おやぢ)356(これ)からきめておかないと本当(ほんたう)(はなし)出来(でき)ないワ。357そして(おやぢ)女房(にようばう)十年忌(じふねんき)だと()つて、358(おれ)をコルトンが引張(ひつぱ)つて()よつたのだが、359(きやう)なんか邪魔(じやま)(くさ)いからやめたら()うだい。360(こころ)豺狼(さいらう)(よく)(たくま)しうし、361(おに)(けん)(ふく)んで毒気(どくき)()いた(ところ)(ほとけ)(よろこ)ぶまいぞ』
362シャ『ウン、363(きさま)()(とほり)だ。364女房(にようばう)回向(ゑかう)をしてやつた(ところ)で、365有難(ありがた)いとも(うれ)しいともいふぢやないし、366(また)(そなた)(やう)売僧坊主(まいすばうず)読経(どくきやう)()いた(ところ)(なん)(やく)にも()つまい。367英雄(えいゆう)英雄(えいゆう)が、368女房(にようばう)十年忌(じふねんき)命日(めいにち)会合(くわいがふ)したのは、369女房(にようばう)(れい)(のこ)つて()れば(さぞ)(よろこ)ぶだらう。370これが(なに)よりの回向(ゑかう)だ。371(さいは)今日(けふ)沢山(たくさん)馳走(ちそう)(こしら)へてある。372坊主(ばうず)鉢巻(はちまき)でもして、373(おほい)鯨飲馬食(げいいんばしよく)でもやつたらどうだ』
374(げん)『そら面白(おもしろ)からう、375(おほい)(わが)()()てゐる。376(しか)(なが)(いま)(おれ)売僧坊主(まいすばうず)といつたね、377どうか()(だけ)御免(ごめん)(かうむ)りたいものだよ』
378シャ『狸坊主(たぬきばうず)379糞坊主(くそばうず)称号(しやうがう)返還(へんくわん)()けたが、380まだ売僧坊主(まいすばうず)返上(へんじやう)はなかつたやうだね。381売僧坊主(まいすばうず)(いや)なら山子坊主(やまこばうず)といはうか、382一層(いつそう)383鞘坊主(たこばうず)()うだ、384アツハヽヽヽヽヽ』
385(げん)『エー、386どこ(まで)(おれ)馬鹿(ばか)にするのか、387天帝(てんてい)化身様(けしんさま)(なん)心得(こころえ)てゐるのだい』
388シャ『(いたち)化身(けしん)(てん)化身(けしん)(さる)化身(けしん)()らぬけれど、389随分(ずいぶん)(えら)馬力(ばりき)だな。390メートルもそこ(まで)()げたら天下無敵(てんかむてき)だらうよ、391ウツフヽヽヽ』
392(げん)『オイ(おやぢ)393(まへ)(おれ)との(なか)だから、394(たぬき)といはうが、395(きさま)()はうが差支(さしつかへ)ないやうなものだが、396ここで(ひと)大芝居(おほしばゐ)()たうと(おも)へば、397(おれ)をヤツパリ天帝(てんてい)化身(けしん)にしておかねば、398(うま)大望(たいまう)成功(せいこう)しないよ。399(その)称号(しやうがう)から(ひと)()めておかうぢやないか』
400シャ『(じつ)にシャカンナ(いきほひ)だのう。401よしよし、402それでは(きさま)天帝(てんてい)化身(けしん)403玄真坊(げんしんばう)だから頭字(かしらじ)(しり)()()つて、404天真坊様(てんしんばうさま)()つたら()うだ、405(あま)天真燗漫(てんしんらんまん)身魂(みたま)でもないけれどな。406()(なか)(あざむ)くには格好(かくかう)名称(めいしよう)だらう』
407(げん)『ヤ、408流石(さすが)山賊(さんぞく)親分(おやぶん)(だけ)あつて、409()(ところ)()がつくワイ。410天真(てんしん)なる(かな)天真(てんしん)なる(かな)411只今(ただいま)から天真坊(てんしんぼう)さまだぞ、412()いか』
413シャ『そんなら、4131天真坊様(てんしんぼうさま)414何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)415天下経綸(てんかけいりん)(ため)にやつがれが謀師(ぼうし)となり、416機略縦横(きりやくじうわう)神策(しんさく)(をし)へて(くだ)さい。417そして現界(げんかい)()ふも(さら)なり、418死後(しご)世界(せかい)(まで)(わが)()幸福(かうふく)ならむ(こと)御守護(ごしゆご)(くだ)さいませ。419(ひとへ)懇願(こんぐわん)(たてまつ)ります。420帰命頂礼(きみやうちやうらい)421謹請再拝(ごんじやうさいはい)
422(げん)『コリヤコリヤ(おやぢ)423さう(にはか)(あらた)まつちや、424(おれ)(なん)だか、425ウーン……馬鹿(ばか)にされてるやうな()がしてならないワ。426(しか)丁寧(ていねい)言葉(ことば)使(つか)はれると、427からかはれてるとは()(なが)ら、428(あま)気分(きぶん)(わる)くないものだ。429言霊(ことたま)(かみ)(なり)430とは(じつ)()()つたものだな、431アハヽヽヽ』
432シャ『天真坊様(てんしんぼうさま)433御意(ぎよい)()しましたかな。434ヤ、435やつがれも無上(むじやう)光栄(くわうえい)(ござ)います。436壮健(さうけん)なる御尊顔(ごそんがん)(はい)し、437やつがれ()にとり欣喜雀躍(きんきじやくやく)(いた)りに()へませぬ、438アツハヽヽヽ』
439(げん)『オイ、440(その)アツハヽヽヽ(だけ)をのけてくれないか』
441シャ『ハイ承知(しようち)(いた)しました。442アツハヽヽヽ、443ヤ、444(この)アツハヽヽヽは撤回(てつくわい)(いた)します、445アツハヽヽ。446エー、447どこ(まで)もアツハヽヽの(やつ)448追撃(つゐげき)しやがる。449コリヤ(けつ)して、450(この)シャカンナが()つたのぢやない。451(あし)からず御勘弁(ごかんべん)(ねが)ひたい。452イツヒヽヽ、453エー、454(また)イツヒヽヽヽの(やつ)455尾行(びかう)()したな、456イツヒヽヽヽ』
457大正一三・一二・三 新一二・二八 於祥雲閣 松村真澄録)
   
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