霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 絵姿(ゑすがた)〔一七二一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻 篇:第4篇 山色連天 よみ:さんしょくれんてん
章:第19章 第67巻 よみ:えすがた 通し章番号:1721
口述日:1924(大正13)年12月29日(旧12月4日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年8月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
旧主人の太子に出会うことができ、シャカンナの現政権に対する敵愾心も消えてしまった。
密かにスバール姫の夫になろうとしていたコルトンは、太子の出現で、とうてい恋の敵としてかなわないことを悟り、出奔する。
太子、アリナは再びシャカンナに政界復帰を要請するが、かたくなに断られる。
太子はシャカンナの小屋を去る前に、スバール姫の姿を絵に写す。
絵の出来具合のすばらしさにシャカンナは感嘆し、太子・アリナは絵を携えてシャカンナとスバール姫に別れを告げる。
帰途、コルトンが太子を狙うが、逆に二人に諭される。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6719
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 122頁 修補版: 校定版:251頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 十八年(じふはちねん)のお慈悲(じひ)(らう)(やうや)脱出(だつしゆつ)し、002寵臣(ちようしん)のアリナと(とも)に、003(こころ)ゆく(まで)山野(さんや)清遊(せいいう)(こころ)み、004(その)(うれ)しさと愉快(ゆくわい)さに帰路(きろ)(わす)れ、005一切(いつさい)忘却(ばうきやく)し、006(こころ)(こま)()(まか)せて、007(おも)はぬ深山(みやま)(おく)(まよ)()んだタラハン(じやう)太子(たいし)も、008(また)太子(たいし)()(むか)へて山野(さんや)案内(あんない)し、009方向(はうかう)(まよ)ひ、010帰路(きろ)(たづ)ねて連山(れんざん)重畳(ちようでふ)たる谷川(たにがは)瞰下(みおろ)山腹(さんぷく)月光(げつくわう)()(なが)ら、011ライオンの(こゑ)心胆(しんたん)(うば)はれ、012(たちま)恐怖心(きようふしん)にかられ、013顔色(がんしよく)(あを)ざめ、014()きたる心地(ここち)もなく、015体内(たいない)地震(ぢしん)勃発(ぼつぱつ)したる左守(さもり)(せがれ)アリナも、016山麓(さんろく)(やうや)一炷(いつしゆう)火光(くわくわう)(みと)めて死線(しせん)()つて(すく)ひの(かみ)出会(でつくは)したるが(ごと)く、017(にはか)勇気(ゆうき)百倍(ひやくばい)し、018太子(たいし)(みちび)いて、0181小柴(こしば)()け、019(やうや)(ひと)つの(かく)()辿(たど)りつき、020主人(あるじ)(なさけ)()つて、021(かたち)(ばか)りの萱葺(かやぶき)掘込建(ほりこみだて)一夜(いちや)宿泊(しゆくはく)(ゆる)され、022いろいろと物語(ものがたり)(すゑ)023十年(じふねん)以前(いぜん)カラピン(わう)(つか)へたる重臣(ぢうしん)なりし(こと)(さと)り、024(あるひ)(よろこ)(あるひ)(おどろ)きつつも、025ヤツと(こころ)落着(おちつ)き、026綿(わた)(ごと)(つか)()つたる()(よこ)たへて、027(ここ)(つゆ)(したた)(ごと)美青年(びせいねん)前後(ぜんご)()らず(つゆ)宿(やど)りについた。028あゝ(この)主従(しゆじゆう)()青年(せいねん)029(その)()如何(いか)なる夢路(ゆめぢ)辿(たど)つたであらうか。030数奇(すうき)運命(うんめい)見舞(みま)はれて、031喜怒哀楽(きどあいらく)(かぜ)翻弄(ほんろう)され、032天人(てんにん)(たちま)()(くだ)り、033土中(どちう)(ひそ)地虫(ぢむし)羽翼(うよく)(しやう)じて、034喬木(けうぼく)(えだ)(はる)(うた)ふ。0341人生(じんせい)七変化(ななへんげ)035口述者(こうじゆつしや)筆者(ひつしや)読者(どくしや)興味(きようみ)(もつ)て、036主従(しゆじゆう)二人(ふたり)(ゆめ)成行(なりゆき)()かむと(ほつ)する(ところ)である。
037 雲上(うんじやう)(たか)(つばさ)をうつ鳳凰(ほうわう)も、038(かすみ)天海(てんかい)浮游(ふいう)する丹頂(たんちやう)(つる)も、039土中(どちう)(ひそ)(むし)けらも、040(こひ)には(なん)区別(くべつ)もなく、041(なさけ)(ふち)七度(ななたび)八度(やたび)042浮沈(ふちん)するは()(なら)ひ、043(はな)にも(つき)にも(たと)(がた)きタラハン城内(じやうない)太子(たいし)と、044()(すこ)しく(ひく)く、045(いろ)(すこ)しく(あか)みを(おび)たれど、046(その)容貌(ようばう)()まがふ(ばか)酷似(こくじ)せる左守(さもり)(せがれ)アリナが047死力(しりよく)(つく)しての(めづら)しきローマンス。048大正(たいしやう)甲子(きのえね)霜月(しもつき)(そら)049祥雲閣(しやううんかく)(れい)(ごと)横臥(わうぐわ)(なが)ら、050()(かた)り、051()(うつ)し、052山色(さんしよく)(くも)(つら)なる黎明(あけがた)(そら)(なが)めつつ、053言霊車(ことたまくるま)万年筆(まんねんひつ)機関銃(きくわんじう)(そな)へつけ(なが)ら、054出口(でぐち)055松村(まつむら)056北村(きたむら)057加藤(かとう)四魂(しこん)(そろ)うて058丹波(たんば)名物(めいぶつ)(きり)海原(うなばら)()けてゆく。
059 シャカンナは(めづら)しき(きやく)060(ただ)(そら)月日(つきひ)(とも)となし、061松籟(しようらい)()(おと)づれとして、062最愛(さいあい)(むすめ)(とも)に、063一切(いつさい)計画(けいくわく)放擲(はうてき)し、064年来(ねんらい)志望(しばう)断念(だんねん)して、065(むすめ)(ちから)深山(みやま)(おく)()ちはてむものと覚悟(かくご)折柄(をりから)066三代相恩(さんだいさうおん)主君(しゆくん)寵子(ちようし)が、067(わが)()(つら)(あた)りし左守(さもり)(せがれ)(とも)(ゆめ)(いほり)()はれ、068()(よろこ)(かつ)(おどろ)き、069太子(たいし)()うた(うれ)しさに、070十年(じふねん)以前(いぜん)左守(さもり)ガンヂーが(わが)()(たい)せし冷酷(れいこく)なる振舞(ふるまひ)()でしを(むく)ゐむとせし敵愾心(てきがいしん)071忠義(ちうぎ)(ため)にスラリと(わす)れ、072(おも)ひもよらぬ珍客(ちんきやく)と、073()()(ろく)(ねむ)()ず、074(あさ)まだき篝火(かがりび)(えう)する刻限(こくげん)より、075スバール(ひめ)(とも)に、076まめまめしく朝餉(あさげ)用意(ようい)(とり)かかり、077せめては旧恩(きうおん)万分一(まんぶんいち)(むく)ゐむと、078貧弱(ひんじやく)なる材料(ざいれう)(もつ)(ちから)(かぎ)りの馳走(ちそう)を、079(しもべ)のコルトンにも()ひつけず、080(みづか)調理(てうり)して(たてまつ)らむものと、081(こころ)(かぎ)りを(つく)し、082朝餉(あさげ)調理(てうり)全力(ぜんりよく)(つく)してゐた。083コルトンは今朝(けさ)(かぎ)つて、084炊事(すゐじ)(わざ)(めん)ぜられ、085()(えだ)(つく)つた(はうき)(もつ)て、086茅屋(ばうをく)のまはりや庭先(にはさき)()(きよ)め、087(あたか)氏神(うぢがみ)祭礼(さいれい)前日(ぜんじつ)か、088大晦日(おほつもごり)田舎(いなか)庭先(にはさき)(やう)に、089掃目(はきめ)(ただ)しく、090(やぶ)草鞋(わらぢ)(ごと)くに(すみ)から(すみ)(まで)()きちぎつてゐる。
091コルトン『あーあ、092(なん)といふ不思議(ふしぎ)(こと)出来(でき)たのだらう。093一ケ月(いつかげつ)以前(いぜん)玄真坊(げんしんばう)とか天真坊(てんしんばう)とかいふ糞蛸坊主(くそたこばうず)が、094女神様(めがみさま)(やう)(をんな)(とも)に、095タニグク(やま)岩窟(がんくつ)(のり)()んで()て、096大酒(おほざけ)(くら)ひ、097(ゑひ)つぶれた(その)(すき)に、098(おれ)(やさ)しい言葉(ことば)をかけ、099チツと(ばか)秋波(しうは)(おく)つてくれた美人(びじん)のナイスのシャンに、100イヌだの、101サルだの、102カヘルだの、103ネンネコだのと、104仕様(しやう)もない悪戯(いたづら)をされ、105すつぱぬきを()はされた(とき)三人(さんにん)面付(つらつき)が、106(いま)(おれ)()にや()()りと(のこ)つてゐる。107あの桃色縮緬(ももいろちりめん)(しろ)薄絹(うすぎぬ)(とほ)して(なが)める(やう)美人(びじん)顔色(かんばせ)108白玉(しらたま)(こしら)へた(やう)(ほそ)(うるは)しい肌理(きめ)のこまかい美人(びじん)()から、109鹿(しか)巻筆(まきふで)ではないが、110棕梠(しゆろ)()(つく)つた手製(てせい)(ふで)に、111(すみ)をすらせ、112(おれ)(ひたひ)にサル、113カヘルと記念(きねん)文字(もじ)(のこ)して(かへ)りよつた。114(おれ)はいつ(まで)(この)記念(きねん)(わが)(ひたひ)(とど)まれかし、115一層(いつそう)(こと)(にく)()()つて、116美人(びじん)(なさけ)(ふで)(あと)117仮令(たとへ)サルといはれやうが、118カヘルと()はれやうが、119そんな(こと)頓着(とんちやく)はない。120どうぞ何時(いつ)(まで)()えずにあれと(いの)つた甲斐(かひ)もなく、121いつの()にやら、122スツカリと(あし)がはへて、123サル、124カヘルといふつれなき羽目(はめ)()はされ、125有情(いうじやう)男子(だんし)(おれ)(いささ)(つみ)(つく)つたが、126()(かさ)ぬると(とも)に、127煩悩(ぼんなう)(いぬ)はどつかへ(にげ)()せ、128本心(ほんしん)(たち)カヘル(やう)になつた(ところ)だ。129それに又々(またまた)(おな)十五夜(じふごや)に、130天女(てんによ)にも(まが)(やう)なる白面郎(はくめんらう)が、131二人(ふたり)(そろ)ふて(この)門口(かどぐち)()つて()(とき)(おどろ)きといつたら、132()(うま)れてから経験(けいけん)をつんだ(こと)がない。133(あま)りの吃驚(びつくり)で、134天狗(てんぐ)(まご)ではあるまいかと、135いろいろ言葉(ことば)(かま)へ、136(かへ)らしめむと、137死力(しりよく)(つく)して(こば)んでみた。138それが(なん)ぞや、139親分(おやぶん)御大(おんたい)旧主人(きうしゆじん)だとか、140タラハン(じやう)太子様(たいしさま)だとか、141左守(さもり)(せがれ)だとか、142()くに(およ)んで二度(にど)吃驚(びつくり)143三度(さんど)吃驚(びつくり)144五臓六腑(ござうろくぷ)はデングリ(がへ)り、145(なん)とはなく(おそ)ろしさ勿体(もつたい)なさに、146昨夜(ゆうべ)(ゆか)(うへ)(やす)むのも勿体(もつたい)なくなり、147土間(どま)四這(よつばひ)となつて、148イヌ、149カヘルの境遇(きやうぐう)(あま)んじ、150ヤツと一夜(ひとよ)()かし、151御大(おんたい)小言(こごと)頂戴(ちやうだい)するかと(あん)じてゐたが、152()(なか)(あんず)よりも(もも)(やす)いとか()つて、153(さいはひ)御大(おんたい)(ひか)目玉(めだま)一睨(ひとにら)みも、154秋霜烈日(しうさうれつじつ)(ごと)言霊(ことたま)も、155()うやら()うやら(ゆる)されたらしい。156(しか)(なが)(うち)のお(ぢやう)さまも、157子供(こども)とはいひ、158モウ十五(じふご)(はる)(むか)へてゐらつしやるのだ。159そして(ゆふべ)(はなし)()れば、160御大(おんたい)十年(じふねん)以前(いぜん)(まで)161カラピン(わう)左守(さもり)(かみ)だつた(やう)だ。162流石(さすが)(ぢやう)さまも由緒(ゆいしよ)ある(いへ)(うま)れとて、163()れば()(ほど)気品(きひん)(たか)い、164そして絶世(ぜつせい)美人(びじん)だ。165太子(たいし)(ぢやう)さまとの(なか)に、166(なん)だか(めう)経緯(いきさつ)出来(でき)はせまいかな、167どうも(あや)しく(おも)はれる。168法界恪気(ほふかいりんき)ぢやなけれ(ども)169(なん)だか腹立(はらだ)たしいやうな、170可怪(をか)しい気分(きぶん)がして()()した(わい)171(おれ)(いま)(まで)172御大(おんたい)()()り、173(なん)とかして養子(やうし)にならうと、174(ぢやう)さまの成人(せいじん)()つて()たのだが、175最早(もはや)今日(けふ)となつては、176どうやら(あや)しくなつて()た。177(おれ)日頃(ひごろ)忠勤(ちうきん)()りも、178(ぢやう)さまに(たい)する親切(しんせつ)も、179サツパリ(みね)薄雲(うすぐも)()()(さう)だ。180百日(ひやくにち)説法(せつぽふ)()(ひと)つの効果(かうくわ)(あが)らないのか、181エー残念(ざんねん)至極(しごく)だ。182(あめ)(あした)(かぜ)(ゆうべ)183(ぢやう)さまお(ぢやう)さまと()つて、184(その)成人(せいじん)()ち、185タニグク(やま)名花(めいくわ)手折(たを)らむものと(たのし)(くら)した(こと)もサツパリ(ゆめ)となつたか。186あゝ残念(ざんねん)腹立(はらだ)たしや、187(なに)(ほど)(おれ)悧巧(りかう)でも、188一方(いつぱう)(わう)太子(たいし)189(しか)旧御主人(きうごしゆじん)190(その)(うへ)(たま)()うな美青年(びせいねん)()てるから、191到底(たうてい)(おれ)(てき)ではない。192地位(ちゐ)名望(めいぼう)から()つても、193最早(もはや)駄目(だめ)だ。194エー、195テレ(くさ)い、196こんな(ところ)(なに)(くるし)んで、197不便(ふべん)生活(せいくわつ)(つづ)ける必要(ひつえう)があるか。198()()(はうき)さへも自然(しぜん)()がだるくなつて(はな)(さう)だ。199エー、200小鳥(ことり)(こゑ)(まで)が、201(おれ)馬鹿(ばか)にしてる(やう)に、202今朝(けさ)(きこ)えて()る。203微風(びふう)をうけて(さわ)いでゐる()()204今朝(けさ)(おれ)失恋(しつれん)嘲笑(あざわら)つてゐるやうにみえる。205潺湲(せんくわん)たる谷川(たにがは)(なが)れの(おと)も、206昨日(きのふ)(まで)天女(てんによ)音楽(おんがく)(ごと)(たの)しく(きこ)えたが、207今朝(けさ)(なん)だか亡国(ばうこく)哀音(あいおん)(きこ)えて()た。208希望(きばう)にみちた(おれ)平生(へいぜい)(くら)べて、209失望(しつばう)落胆(らくたん)(ふち)におち()んだ今日(けふ)(おれ)は、210最早(もはや)(てん)()も、211大親分(おほおやぶん)も、212可憐(かれん)なお(ぢやう)さまも、213(おれ)()すてたやうな()がする。214エー馬鹿(ばか)らしい。215(いま)(うち)密林(みつりん)姿(すがた)(かく)し、216どつかの(そら)随徳寺(ずいとくじ)をきめ()んでやらう。217オヽさうぢや さうぢや、218エヽけつたいの(わる)い』
219(つぶや)(なが)ら、220満腔(まんこう)不平(ふへい)(はうき)(てん)じ、221『エーこん畜生(ちくしやう)ツ』といひ(なが)ら、222谷川(たにがは)めがけて(ちから)をこめて()げやり、223(くろ)(しり)をひきまくり、224(ふた)()(うち)(たた)(なが)ら、225(からだ)()()げ、226(あご)(まへ)(はう)(つき)()し、227田螺(たにし)のやうな()()して、228二三回(にさんくわい)イン イン インとしやくり(なが)ら、229(はや)くも(この)()より姿(すがた)(かく)した。
230 太陽(たいやう)(たか)頭上(づじやう)(かがや)(ころ)231太子(たいし)232アリナの主従(しゆじゆう)(やうや)()()ました。
233太子(たいし)『あゝ(ぢい)234(かげ)昨夜(さくや)気楽(きらく)(やす)まして(もら)つた。235どうやら(これ)元気(げんき)回復(くわいふく)し、236人間心地(にんげんごこち)になつた(やう)だ。237白湯(さゆ)一杯(いつぱい)くれないか』
238シャ『若君様(わかぎみさま)239最早(もはや)目醒(めざめ)(ござ)いますか。240どうぞゆつくりとお(やす)(くだ)さいませ』
241(たい)『や、242もう(これ)充分(じゆうぶん)だ』
243アリナ『昨夜(さくや)はお(かげ)で、244太子様(たいしさま)のお招伴(せうばん)(いた)し、245気楽(きらく)(やす)まして(いただ)きました。246(この)御恩(ごおん)はどこ(まで)(わす)れませぬ』
247シャ『オイ、248コルトン、249客様(きやくさま)にお()()んで()い。250コルトンは(なに)をしてゐる』
251 幾度(いくたび)()んでもコルトンの返詞(へんじ)がせぬ。252干瓢頭(かんぺうあたま)()せない。253そこへスバール(ひめ)(やや)小綺麗(こぎれい)衣服(いふく)着替(きか)へ、254(かみ)(みだ)れを()()げ、255(はな)のやうな(うるは)しい(かほ)(ゑみ)(ふく)んで、
256スバール『若君様(わかぎみさま)257(はや)(ござ)います。258御家来(ごけらい)のお方様(かたさま)259夜前(やぜん)(やす)まれましたか。260御存(ごぞん)じの(とほ)りの茅屋(あばらや)(ござ)いますから、261嘸々(さぞさぞ)二人様(ふたりさま)(とも)262(やす)(にく)からうかと、263(あん)(まゐ)らせて()りました。264サアどうか渋茶(しぶちや)をあがつて(くだ)さいませ』
265()(なが)ら、266手元(てもと)をふるはせ、267(やや)(かほ)をそむけ気味(ぎみ)に、268(うやうや)しく太子(たいし)(ちや)()んでささげた。269太子(たいし)は……(ゆか)しき(もの)よ、270(うるは)しいものよ……と(おも)(なが)ら、271(しづか)()()べて、272スバールが(さし)()(ちや)()()り、273二三回(にさんくわい)フーフーと()(なが)ら、274(しづ)かに()()した。
275スバ『若君様(わかぎみさま)276(ひと)()うで(ござ)いますか』
277太子(たいし)『ヤ、278(かま)うてくれな、279()勝手(かつて)(いただ)くから』
280シャ『コラコラ、281コルトン、282何処(どこ)()つたのだ。283(はや)太子様(たいしさま)御挨拶(ごあいさつ)(まをし)()げぬか』
284スバ『お(とう)さま、285コルトンは一時(いつとき)ばかし(まへ)()()しましたよ。286最早(もはや)(かへ)つて()気遣(きづかひ)(ござ)いませぬ』
287シャ『ナニ、288コルトンが()げたといふのか、289なぜお(まへ)(その)(とき)とめないのだ』
290スバ『お(とう)さま、291(あたし)292()蚰蜒(げぢげぢ)(にげ)たと(おも)つて、293とめなかつたのですよ。294いつも(めう)(こと)をいつたり、295(いや)らしい目付(めつき)をして(わたし)()るのですもの。296(なん)だか(その)(たび)(ごと)悪魔(あくま)(おそ)はれるやうな()(いた)しまして、297何時(いつ)(むね)(をのの)いてゐたのです。298(これ)でモウ(おや)()との(みづ)()らずで、299こんな気楽(きらく)(こと)(ござ)いませぬ。300(とう)さま、301コルトンがゐなくても(わたし)炊事(すゐじ)万端(ばんたん)(いた)しますから安心(あんしん)して(くだ)さい』
302シャ『アハヽヽヽ、303到頭(たうとう)304コルトンも山中(さんちう)生活(せいくわつ)()いて逃亡(たうばう)したかなア、305無理(むり)もない。306(わか)(やつ)(なに)(たのし)みもなく、307こんな髭武者爺(ひげむしやぢい)辛抱(しんばう)してゐたのは、308(じつ)感心(かんしん)(もの)だつた。309(にげ)たとあらば追跡(つゐせき)必要(ひつえう)もない。310(かれ)自由(じいう)(まか)しておいてやらう。311アハヽヽヽ』
312スバ『お(とう)さま、313コルトンは何時(いつ)も、314こんな(こと)()つてゐましたよ、315……こんな山奥(やまおく)不自由(ふじいう)生活(せいくわつ)をしてゐるのは、316(わか)(をとこ)として本当(ほんたう)(つま)らないのだけれど、317(わし)(かへ)れば(たちま)ちお(とう)さまが(こま)らつしやるだらう。318(しか)(なが)一日(いちにち)も、319こんな山住居(やまずまゐ)はしたくないのだけれど、320スバールさまの(その)(うつく)しい(かほ)を、321朝夕(あさゆふ)()るのが、322唯一(ゆゐいつ)慰安(ゐあん)だ、323(いのち)(たね)だ。324それだから(さび)しい山奥(やまおく)も、325(さび)しいと(おも)はず(よろこ)んで親方(おやかた)さまの御用(ごよう)をしてゐるのだ……と、326何時(いつ)(まを)しましたよ』
327シャ『アハヽヽヽ、328(をんな)()といふ(もの)油断(ゆだん)のならぬものだな。329(うつく)しい(はな)には害虫(がいちう)がつき(やす)(なら)ひ、330(むすめ)()つた(おや)中々(なかなか)油断(ゆだん)出来(でき)(わい)
331スバ『お(とう)さま、332そんな御心配(ごしんぱい)()りませぬ。333何程(なにほど)初心(うぶ)こい(むすめ)だつて、334子供(こども)(あが)りだつて、335あんな(をとこ)()(こと)()(もの)(ござ)いますか。336太子様(たいしさま)の……』
337シャ『アハヽヽヽ、338蔭裏(かげうら)(まめ)時節(じせつ)()れば(はな)()くとやら、339不思議(ふしぎ)なものだなア』
340アリ『モシ、341(ぜん)左守(さもり)(さま)342()うして太子様(たいしさま)のお(とも)をして、343一夜(いちや)雨宿(あまやど)りをさして(いただ)いたのも、344(ふか)(えにし)(むす)ばれた(こと)(ござ)いませう。345タラハン(ごく)窮状(きうじやう)(すく)(ため)346太子様(たいしさま)のお(とも)をして、347(いま)一度(いちど)(みやこ)()で、348国家(こくか)(ため)一肌(ひとはだ)ぬいで(くだ)さる(わけ)には(まゐ)りますまいか。349嬢様(ぢやうさま)(みやこ)見物(けんぶつ)(あそ)ばしたら、350(また)()(あたら)しくなつて(さぞ)(よろこ)びで(ござ)いませうから』
351シャ『イヤ御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)いが、352仮令(たとへ)太子様(たいしさま)のお慈悲(じひ)言葉(ことば)(あま)え、353(みやこ)()(ところ)で、354最早(もはや)一切(いつさい)権利(けんり)其方(そなた)(ちち)掌握(しやうあく)してゐる。355十年(じふねん)山住居(やまずまゐ)をして、356()開明(かいめい)(かぜ)(おく)れた骨董品(こつとうひん)357到底(たうてい)国政(こくせい)(しよう)(あた)るなどとは、358(おも)ひもよらぬ(こと)だ。359(かへつ)大王様(だいわうさま)のお(こころ)()ませる(やう)なものだから、360御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)いが、361(わたし)はモウ(この)山奥(やまおく)で、362(むすめ)(とも)()ちはてる(つも)りだ。363(だん)じて都入(みやこいり)(いた)しませぬ』
364アリ『それはさうと、365()かる名花(めいくわ)山奥(やまおく)()いさせるのは(じつ)勿体(もつたい)ないぢやありませぬか。366貴方(あなた)(むすめ)出世(しゆつせ)(のぞ)まれるでせう。367何時(いつ)(まで)(この)山奥(やまおく)(ござ)つては、368貴方(あなた)老後(らうご)(たのし)んで花鳥風月(くわてうふうげつ)(とも)とし369(この)山奥(やまおく)簡易生活(かんいせいくわつ)(たのし)(くら)されるとした(ところ)で、370(つぼみ)(はな)のスバールさまを、371(この)(まま)此処(ここ)一生(いつしやう)(をは)らせるのは、372()(おも)うても勿体(もつたい)ない。373そんな(こと)(おほ)せられずに、374太子様(たいしさま)(かげ)(なが)(まも)(ため)(みやこ)()(くだ)さい。375そして政治(せいぢ)がお(いや)なれば、376どつかの(いへ)()(しの)び、377(ぢやう)さまを(もり)(たて)て、378立派(りつぱ)(はな)になさつたら()うですか』
379シャ『(なん)(おほ)せられても、380元来(ぐわんらい)頑固(ぐわんこ)(うま)(つき)381一度(いちど)(いや)(まを)せば何処(どこ)(まで)(いや)(ござ)る』
382(たい)左守(さもり)383()(たの)みだから、384()(とも)にタラハン(じやう)(かへ)つてくれる()はないか』
385シャ『ハイ、386(なん)(おほ)せられましても、387(これ)(ばか)りは(ひら)御免(ごめん)(かうむ)りたう(ござ)ります』
388(たい)『ウン、389さうか、390それ(ほど)(いや)がる(もの)を、391無理(むり)()(かへ)るのは、392(かへつ)無慈悲(むじひ)かも()れない。393そんなら其方(そなた)意志(いし)(まか)す。394(かへ)つたら(この)アリナに(めづ)らしい(もの)でも()たして、395御礼(おれい)(まゐ)らすから……(なが)らくお世話(せわ)になつた。396(をし)いけれども、397(かへ)らねばなるまい。398(しか)しシャカンナ、399(その)(はう)(ひと)つの(たの)みがある。400()いては()れまいかなア』
401シャ『ハイ、402如何(いか)なる(こと)でも、403最前(さいぜん)(ことわ)(まを)した(ほか)(こと)ならば、404(ちから)(およ)(かぎ)り、405御恩(ごおん)(ほう)じの(ため)(うけたま)はりませう』
406(たい)『ヤ、407早速(さつそく)承引(しよういん)408満足(まんぞく)々々(まんぞく)409(ほか)でもないが、410スバール(ぢやう)姿(すがた)()(うつ)したい』
411シャ『ナニ、412スバールの姿(すがた)()ると(おほ)せられるのですか、413金枝玉葉(きんしぎよくえふ)御身(おんみ)(もつ)414(いや)しき(わたし)(ども)(むすめ)姿(すがた)をお(ゑが)(あそ)ばすとは、415(あま)勿体(もつたい)ないお言葉(ことば)416(これ)(ばか)りは(ひら)にお(ことわ)(まを)()げませう。417冥加(みやうが)()きますから』
418(たい)(なに)419さう遠慮(ゑんりよ)するには(およ)ばぬ。420どうか()(たの)みぢや、421絵姿(ゑすがた)()かしてくれ』
422スバ『お(とう)さま、423若君様(わかぎみさま)のお言葉(ことば)424(いな)みなさるのは(かへつ)御無礼(ごぶれい)(ござ)いませう。425(わたし)若君様(わかぎみさま)御筆(おふで)(ゑが)かれたう(ござ)いますワ』
426アリ『ヤ、427(ぢやう)さま、428天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)429()かされました。430御本人(ごほんにん)承諾(しようだく)ある(かぎ)りは、431モウこつちの(もの)だ。432サア若君様(わかぎみさま)433日頃(ひごろ)妙筆(めうひつ)をお(ふる)(あそ)ばせ。434(わたし)(すみ)をすりませう』
435シャ『アハヽヽ、436到頭(たうとう)(むすめ)太子様(たいしさま)のお眼鏡(めがね)(かな)ひ、437絵姿(ゑすがた)()つて(いただ)くのか。438ても(さて)幸福(かうふく)(やつ)だなア』
439 スバールはいそいそとして、440一張羅(いつちやうら)美服(びふく)着替(きか)へ、441(かど)()で、442面白(おもしろ)(かたち)をした(いは)(そば)(もた)(かか)つて、443太子(たいし)描写(べうしや)(まか)せた。444太子(たいし)はせつせと(ふで)(はこ)ばせ、445(ほと)んど一時(ひととき)(ばか)りにして、446実物(じつぶつ)()まがふ(やう)立派(りつぱ)絵姿(ゑすがた)()()げた。
447(たい)『ヤア、448(これ)国許(くにもと)への土産(みやげ)出来(でき)た。449(これ)(とこ)()にかけて、450朝夕(あさゆふ)(たのし)まう。451ヤ、452(ぢい)453一寸(ちよつと)()てくれ、454スバールに()てゐるかな』
455 シャカンナは『ハイ』と(こた)へて、456屋内(をくない)から()()し、
457シャ『ヤ、458若君様(わかぎみさま)459最早(もはや)()()げになりましたか。460……(なん)とマア立派(りつぱ)御腕前(おうでまへ)461(かん)()りまして(ござ)います』
462(たい)『ハヽヽヽ、463スバールに()てゐるかな』
464シャ『どちらが実物(じつぶつ)だか、465(おや)(わたし)でさへ見分(みわ)けがつかない(くらゐ)466よく()けて()ります。467太子様(たいしさま)大変(たいへん)美術家(びじゆつか)(ござ)いますなア』
468(たい)『ハヽヽヽヽ』
469アリ『学問(がくもん)()ひ、470芸術(げいじゆつ)()ひ、471文才(ぶんさい)()ひ、472博愛(はくあい)慈善(じぜん)御心(みこころ)といひ、473勇壮(ゆうさう)活溌(くわつぱつ)御気象(ごきしやう)といひ、474(また)一人(ひとり)天下(てんか)(かた)(なら)ぶる(もの)はありませぬよ。475(なに)から(なに)(まで)完全無欠(くわんぜんむけつ)御人格(ごじんかく)(そな)へてゐられます』
476 シャカンナは(くび)(かたむ)けて、477絵画(くわいぐわ)とスバールとを見比(みくら)(なが)ら、478感歎(かんたん)(ひさ)しうして(した)()いてゐる。479主従(しゆじゆう)午後(ごご)()(どき)480パンを用意(ようい)し、481(をし)(わか)れを()げて、482一先(ひとま)(この)(いほり)()(こと)となつた。483太子(たいし)(あと)振返(ふりかへ)振返(ふりかへ)り、484名残(なごり)惜気(をしげ)父娘(おやこ)姿(すがた)(なが)めてゐる。485シャカンナの父娘(おやこ)(また)太子(たいし)486アリナの後姿(うしろすがた)(くび)()ばして見送(みおく)つてゐた。487シャカンナは(おも)はず()らず十間(じつけん)(ばか)(あと)()うてゐた。488二人(ふたり)姿(すがた)山裾(やますそ)(つき)()小丘(せうきう)(へだ)てられ、489(つひ)(たがひ)視線(しせん)(まつた)(はな)れて(しま)つた。
490 主従(しゆじゆう)元気(げんき)よく坂路(さかみち)(ひがし)(ひがし)へと谷川(たにがは)(なが)れに沿()(くだ)つて()くと、491途中(とちう)()はズツポリと()れた。492()むを()ず、493路端(みちばた)(つき)()(いし)(こし)(うち)かけ、494(いき)(やす)めてゐると、495何者(なにもの)(とも)()れず、496突然(とつぜん)後方(こうはう)より(あら)はれて太子(たいし)頭上(づじやう)目当(めあて)に、497(かた)沙羅双樹(さらさうじゆ)(みき)(つく)つた(つゑ)(もつ)て、498(ほね)(くだ)けと()(おろ)す。499太子(たいし)惟神的(かむながらてき)(たい)をかわした。500(その)途端(とたん)(まと)(はづ)れて、501曲者(くせもの)二人(ふたり)(まへ)(つゑ)(にぎ)つたまま()(たた)いて、502ひつくり(かへ)り、503(かしら)()つて悲鳴(ひめい)をあげた。504()()()れば豈計(あにはか)らむや、505シャカンナの(しもべ)コルトンであつた。506主従(しゆじゆう)はコルトンを(いた)はり(おこ)し、507いろいろと(みち)()(さと)し、508将来(しやうらい)(いまし)めて、509(また)(よる)(みち)をトボトボと帰途(きと)()いた。
510大正一三・一二・四 新一二・二九 於祥雲閣 松村真澄録)