霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 信夫恋(しのぶこひ)〔一七三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第2篇 恋火狼火 よみ:れんかろうか
章:第6章 第68巻 よみ:しのぶこい 通し章番号:1730
口述日:1925(大正14)年01月29日(旧01月6日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
そこへ、奥女中のシノブが、太子の話し相手になろうとやってくる。アリナは断るが、シノブは引き下がらない。
シノブは太子とアリナの話を聞いており、アリナの変装を見破っていた。シノブはアリナに思いを寄せていたのだが、秘密を知ったのを幸い、アリナに恋の強談判に来たのであった。
アリナはとっさに決心して、シノブを受け入れることにする。シノブはあろうことか、アリナが太子と成り代わり、シノブを王妃としてタラハン国を乗っ取ろうと持ちかける。アリナはシノブの大胆不敵さにかえって意気投合する。
シノブは一度女中部屋へ帰るが、深夜になって、アリナのところへ忍んでくる。アリナとシノブがいちゃついている最中、警鐘が乱打され、二人は左守の館方面に、大火災が起こっているのを認める。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6806
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 181頁 修補版: 校定版:84頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 夕陽(せきやう)(やま)()(かたむ)いて、002遠寺(ゑんじ)(かね)ボーンボーンと()(ひび)き、003諸行無常(しよぎやうむじやう)()有様(ありさま)警告(けいこく)してゐる。004間毎(まごと)々々(まごと)()(かがや)銀燭(ぎんしよく)(ひかり)に、005変装太子(へんさうたいし)面貌(めんばう)益々(ますます)(きよ)(うるは)しく、006錦衣(きんい)着用(ちやくよう)したる(その)姿(すがた)は、007スダルマン太子(たいし)にも一層(いつそう)(まさ)りて威風(ゐふう)(そな)はり()えた。008アリナはどことはなしに(こころ)()かれ、009咳払(せきばら)ひさへも(しの)(やう)()になつてゐた。010そこへ衣摺(きぬずれ)(おと)しとやかに(みす)(そと)(あたま)()げ、011二拍手(にはくしゆ)(なが)ら、
012(をんな)(おそ)(なが)殿下(でんか)(まをし)()げます。013今晩(こんばん)はお(うかが)(まを)(ところ)0131御寵臣(ごちようしん)のアリナ(さま)はお(たく)御帰(おかへ)(あそ)ばし、014殿下(でんか)御一人(おひとり)015御淋(おさび)しさうな御面持(おんおももち)016御話(おはなし)相手(あひて)にでもならして(いただ)きませうと(ぞん)じ、017(をんな)()(もつ)て、018(おそ)()もなく、019(ひそ)かに(しの)んで(まゐ)りました』
020 (この)奥女中(おくぢよちう)はタラハン城市(じやうし)豪商(がうしやう)(むすめ)で、021行儀(ぎやうぎ)見習(みなら)ひとして、022殿中(でんちう)女中勤(ぢよちうづと)めをしてゐる(もの)である。023そして(その)()をシノブといふ。024アリナは言葉(ことば)荘重(さうちよう)に、
025『アイヤ、026其方(そなた)奥女中(おくぢよちう)のシノブではないか。027()(をんな)用向(ようむき)はない。028すぐ(さま)(まか)りさがつたが()からう』
029シノブ『イエイエ、030どう(おほ)せられましても、031今晩(こんばん)はアリナ(さま)御不在(ごふざい)(さいは)ひ、032殿下(でんか)(した)しくお()にかかつて、033(まをし)(あげ)たい(こと)(ござ)いますので、034(なん)(おほ)せられましても、035一歩(いつぽ)もここは(ひき)()がりませぬ』
036アリナ『不届千万(ふとどきせんばん)な、037其方(そなた)()言葉(ことば)(もち)ひないのか』
038シ『ホヽヽ、039どうして殿下(でんか)のお言葉(ことば)(もち)ひられませう。040(わらは)(この)殿中(でんちう)女中奉公(ぢよちうぼうこう)(まゐ)りましたのは(なん)(ため)だと思召(おぼしめ)しますか。041貴方(あなた)()ひたさ、042(かほ)()たさに』
043ア『これは()しからぬ。044(いやし)くも神聖(しんせい)なる殿中(でんちう)(おい)て、045なまめかしい(その)言葉(ことば)046不貞腐(ふてくさ)(をんな)()047淫奔者(いんぽんもの)()048(その)(はう)身分(みぶん)心得(こころえ)ぬか、049さがり()れツ』
050 シノブは、051『ホヽヽヽ』と(わら)(なが)ら、052(おし)(づよ)くも(みす)をポツとはね()げ、053アリナの(ひざ)(ちか)(すす)みより、054(あな)のあく(ほど)アリナの(かほ)()て、055ニタニタ(わら)(なが)ら、
056『オツホヽヽヽ、057(なん)とマア、058()御似合(おにあひ)(あそ)ばすこと、059なア変装太子(へんさうたいし)(さま)060(わたし)本真者(ほんまもの)(やう)(おも)ひましたよ。061(きつね)七化(ななばけ)(たぬき)八化(やばけ)よりも上手(じやうず)ですワ』
062ア『コリヤ シノブ、063見違(みちが)ひを(いた)すな。064()(けつ)して偽者(にせもの)ではない。065正真正銘(しやうしんしやうめい)のスダルマン太子(たいし)だ。066(をんな)分際(ぶんざい)として、067玉座(ぎよくざ)(まへ)(おそ)れぬか』
068 シノブは横目(よこめ)をし(なが)ら、069アリナの(ひざ)をグツとつめり、
070シ『モシ、071アリナさま、072駄目(だめ)ですよ。073サアどうか(わたし)()(こと)()いて(くだ)さいますか、074()いて(くだ)さらな、075(なに)もかも大王様(だいわうさま)御前(ごぜん)素破(すつぱ)()きますよ』
076ア『アツハヽヽ、077たうとう尻尾(しつぼ)をつかまれたか、078エー仕方(しかた)がない。079(これ)(ほど)よく()けてゐるのに、080なぜお(まへ)(おれ)変装太子(へんさうたいし)たる(こと)(わか)つたのだ。081コリヤうつかり油断(ゆだん)出来(でき)ぬワイ』
082シ『大王様(だいわうさま)御覧(ごらん)になつても、083現在(げんざい)のお父上(ちちうへ)御覧(ごらん)になつても、084本当(ほんたう)太子様(たいしさま)とより御見(おみ)えにならないのですから、085(たれ)だつて偽太子(にせたいし)(おも)ふものはありませぬワ。086(しか)し、087(わたし)殿中(でんちう)御奉公(ごほうこう)(まゐ)りましたのは088(じつ)貴方(あなた)御近(おちか)づき(まを)したい(ばか)りで(ござ)います。089何時(いつ)ぞや園遊会(ゑんいうくわい)(とき)右守司(うもりのかみ)御屋敷(おやしき)でお()にかかつてから、090(こひ)とかいふ曲者(くせもの)(たましひ)()りひしがれ、091()ても()めても貴方(あなた)のお姿(すがた)(わす)れられないので、092父母(ちちはは)にいろいろと無理(むり)()うてねだり、093右守(うもり)沢山(たくさん)賄賂(わいろ)(おく)り、094ヤツとの(こと)奥女中(おくぢよちう)になつたので(ござ)います。095一度(いちど)(した)しくお()にかかつて、096(わが)(おも)ひの(たけ)申上(まをしあ)げたいと、097()がな(すき)がな(うかが)つて()りましたが、098何時(いつ)貴方(あなた)太子様(たいしさま)のお側付(そばづき)099一人(ひとり)になられた(こと)がないので、100ここ一年(いちねん)(ばか)りはお(はなし)する機会(きくわい)もなく、101煩悶苦悩(はんもんくなう)結果(けつくわ)102(この)(とほ)身体(からだ)がゲツソリと()せました。103今日(けふ)貴方(あなた)のお(あと)(した)ひ、104一間(ひとま)(しの)んで様子(やうす)(かんが)へてゐれば太子様(たいしさま)との秘密話(ひみつばなし)105(まさ)しく太子様(たいしさま)身代(みがは)りとなつて、106貴方(あなた)はゐられることと(かた)(しん)じ、107簾越(みすごし)によくよく(うかが)へばまがふ(かた)なきアリナ(さま)108サアもう()うなつた以上(いじやう)(いや)でも(おう)でも(わらは)(こひ)()げさして(くだ)さいませ。109スバール(ひめ)(さま)とかいふ天成(てんせい)美人(びじん)を、110貴方(あなた)はお(むか)へにゐらつしやつたやうですが、111(なに)(ほど)美人(びじん)だつて、112(からだ)(きん)(こしら)へても(ござ)いますまい。113(わらは)だつて、114まんざら()てた(をんな)ぢやあるまいと自信(じしん)して()ります。115アリナ(さま)116()うで(ござ)いますか、117()()(ばや)くお返詞(へんじ)(ねが)ひます』
118 アリナは(こころ)(うち)にて、
119『ヤア失敗(しま)つた。120コリヤ一大事(いちだいじ)突発(とつぱつ)した。121(しか)(なが)ら、122のつ(ぴき)ならぬシノブの強談判(こはだんぱん)123ムゲに排斥(はいせき)する(わけ)にもゆこまい。124(いな)(これ)排斥(はいせき)せうものなら、125(こひ)(あだ)126()怨敵(をんてき)となつて(わが)()(せま)(きた)り、127(しま)ひには()破滅(はめつ)になるかも()れぬ。128そして(また)(この)シノブはスバール(ひめ)(くら)べては、129容色(ようしよく)(すこ)しく(おと)つてゐるやうにもあるが、130(たて)から()ても(よこ)から()ても十人(じふにん)(なみ)以上(いじやう)(をんな)だ。131一歩(いつぽ)(すす)んで此奴(こいつ)恋女(こひをんな)にした(ところ)で、132(あま)りアリナの沽券(こけん)()がるでもあるまい』
133咄嗟(とつさ)(あひだ)決心(けつしん)(さだ)め、134ワザと言葉(ことば)やさしく、
135ア『ヤア、136シノブ殿(どの)137人目(ひとめ)(しの)二人(ふたり)(なか)138あたりに()をつけめされ。139(この)アリナも木石(ぼくせき)ならぬ()の、140一目(ひとめ)其方(そなた)姿(すがた)見染(みそめ)てより、141煩悩(ぼんなう)(いぬ)()りつかれ、142心猿意馬(しんゑんいば)(くる)()し、143()(たて)もたまらなくなつて、144今日(けふ)()までも(こら)(こら)えし(こひ)(ふち)145(なみだ)(しづ)むアリナが(むね)146(なん)として其方(そなた)()ひよらうか、147(をんな)にかけては初心(うぶ)(われ)148(こひ)てふものの(こころ)()(いだ)してより、149其方(そなた)()ふも(うら)(はづ)かしく、150(ふみ)便(たより)さへも、151躊躇(ちうちよ)してゐたのだ。152今日(けふ)(はじ)めて其方(そなた)のやさしい(こころ)()いて、153()満足(まんぞく)(おも)ふぞや』
154シ『ホヽヽヽ、155()満足(まんぞく)とはよく出来(でき)ました。156そんなら(わたし)(こひ)はキツと(かな)へて(くだ)さるでせうな』
157ア『シノブどの、158()(こひ)を、159其方(そなた)(かな)へてくれるであらうなア』
160シ『ハイ、161殿下(でんか)思召(おぼしめし)162(なに)しに(そむ)きは(いた)しませう。163どうかエターナルに(あい)して(くだ)さいませ』
164ア『(しか)しシノブどの、165かうなつた以上(いじやう)太子(たいし)のお身代(みがは)りになつて、166高麗犬然(こまいぬぜん)とこんな窮屈(きうくつ)()をしてゐる(わけ)には()かない。167(いま)(ごろ)太子様(たいしさま)もスバール(ひめ)(あま)(ささや)きを交換(かうくわん)してゐられるだらう。168アーア、169それを(おも)へば、170本当(ほんたう)馬鹿(ばか)らしくなつて()た。171一層(いつそう)(こと)172(まへ)()()()つて九尺(くしやく)二間(にけん)裏店住居(うらだなずまゐ)173世話女房(せわにようばう)とお(まへ)はなつて、174簡易(かんい)平民生活(へいみんせいくわつ)(おく)らうぢやないか。175(まへ)(ため)なら、176(わし)乞食(こじき)をしても満足(まんぞく)だから』
177シ『ホヽヽヽ、178スダルマン太子(たいし)(おな)じやうな(こと)仰有(おつしや)いますな。179モシ、180アリナ(さま)181(もの)相談(さうだん)ですが、182太子様(たいしさま)平民生活(へいみんせいくわつ)()きだと()つてゐらつしやつたぢやありませぬか。183(これ)(さいは)ひに、184貴方(あなた)はどこ(まで)太子(たいし)となりすまし、185タラハン(ごく)王者(わうじや)となり、186そして(わらは)王妃(わうひ)にお(えら)(くだ)さいませぬか、187こんな(うれ)しい(こと)はないぢやありませぬか』
188ア『(なん)(きも)(ふと)(こと)をいふぢやないか。189流石(さすが)(おれ)(きも)をつぶしたよ』
190シ『ホヽヽヽ、191()うそんな(こと)仰有(おつしや)られますワイ。192貴方(あなた)最前(さいぜん)から、193一層(いつそう)(こと)194太子(たいし)になりすまして、195天一坊(てんいちばう)跣足(はだし)(にげ)るやうな陰謀(いんぼう)遂行(すゐかう)してやらうか」と、196独語(どくご)して(ござ)つたぢやありませぬか。197(その)言葉(ことば)()いて、198益々(ますます)貴方(あなた)偉大(ゐだい)人物(じんぶつ)たる(こと)()り、199恋慕(れんぼ)(ねん)一層(いつそう)(たか)まつて()たのですよ。200どうか(こころ)(そこ)から(うち)とけて(なに)()仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。201(わらは)町人(ちやうにん)(むすめ)だつて天下(てんか)(ねら)うてゐる大化物(おほばけもの)ですよ。202女子大学(ぢよしだいがく)卒業(そつげふ)して、203才媛(さいえん)(ほまれ)()つたシノブ(ひめ)ですもの。204(ただ)(たん)なる恋愛(れんあい)のみに(たましひ)(うば)はれませうか。205現在(げんざい)のタラハン(ごく)根本的(こんぽんてき)救済(きうさい)せむとする大人物(だいじんぶつ)はなきやと、206平常(いつ)()()いたらしい(をとこ)性行(せいかう)調査(てうさ)して()りましたが、207(その)適当(てきたう)人物(じんぶつ)貴方(あなた)()いて(ほか)にない(こと)(さと)りました。208(はじ)めは貴方(あなた)大人物(だいじんぶつ)()り、209将来(しやうらい)大事(だいじ)()すべき大人格者(だいじんかくしや)(しん)じ、210接近(せつきん)機会(きくわい)()むと、211種々(いろいろ)()だてを(もつ)て、212(この)殿中(でんちう)女中勤(ぢよちうづと)めと(まで)()りおうせ、213太子様(たいしさま)貴方(あなた)御行動(ごかうどう)監視(かんし)して()りましたが、214(あま)立派(りつぱ)御心掛(おこころがけ)(さと)り、215貴方(あなた)(たい)する(しん)恋愛心(れんあいしん)(もえ)()つて()たのですよ、216ホヽヽヽ。217どうか永久(えいきう)可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ。218そして(わらは)(とも)国家改造(こくかかいざう)(ちから)(つく)して(くだ)さいますでせうね』
219ア『足許(あしもと)から(とり)()つとは(この)(こと)だ。220(この)殿中(でんちう)奉仕(ほうし)してゐる老若男女(らうにやくだんぢよ)は、221何奴(どいつ)此奴(こいつ)(むし)()つた(ふる)(あたま)のガラクタ(ばか)りだと(おも)つてゐたのに、222(まへ)のやうな新知識(しんちしき)()きた天才(てんさい)(ひそ)んでゐるとは、223流石(さすが)(おれ)も、224(いま)(いま)(まで)()がつかなんだ。225(たの)もしい、226(ねが)つてもない(こと)だ。227では()()(まで)もスダルマン太子(たいし)となりすまし、228(まへ)はここ(しばら)くの(あひだ)奥女中(おくぢよちう)となつて、229時々(ときどき)(かほ)()せて()れ。230そして看破(かんぱ)されないやう、231(かげ)になり日向(ひなた)になり、232()身辺(しんぺん)保護(ほご)するのだよ』
233シ『冥加(みやうが)(あま)太子殿下(たいしでんか)のお言葉(ことば)234(つつし)んでお(うけ)(つかまつ)ります。235(かなら)(かなら)御心配(ごしんぱい)(あそ)ばしますな』
236ア『ヤ、237()かした()かした、238(なんぢ)一言(いちごん)239()満足(まんぞく)(おも)ふぞよ』
240(はや)くも太子(たいし)になつた心持(こころもち)で、241言葉使(ことばつかひ)(まで)(あらた)めて(しま)つた。
242シ『モシ、243殿下様(でんかさま)244(あま)(なが)らくなりますと、245(うたが)はれる(おそれ)(ござ)いますから、246今晩(こんばん)(これ)にて(まか)()がりませう。247何分(なにぶん)(よろ)しく(ねが)ひます』
248ア『ヤ、249満足(まんぞく)々々(まんぞく)250(なんぢ)居間(ゐま)(かへ)つて安眠(あんみん)したが()からう』
251シ『左様(さやう)ならば、252殿下(でんか)にもお(やす)(あそ)ばしませ。253(わらは)女中部屋(ぢよちうべや)へまかり(さが)りませう』
254とソロリソロリと(こころ)(あと)(のこ)して、255ニタツと微笑(ほほゑみ)(なが)(わが)居間(ゐま)さして(かへ)()く。
256 アリナはシノブが(かへ)()姿(すがた)見送(みおく)り、
257ア『アヽ、258(なん)()いスタイルだらう。259ああして(すそ)()きずり、260シヨナリ シヨナリと(ある)いて()姿(すがた)(おれ)欲目(よくめ)()らね(ども)261スバール(ひめ)以上(いじやう)だ。262ヤツパリ(おれ)色男(いろをとこ)だなア。263今晩(こんばん)太子様(たいしさま)があの若々(わかわか)しい、264淡雪(あはゆき)のやうなスバール(ひめ)(むね)(いだ)いてお(やす)みになるのに、265自分(じぶん)(ひと)膝坊主(ひざばうず)()いて、266けなり(さう)()()もロクに(ねむ)られず、267こがれ(あか)すかと(おも)つたに不思議(ふしぎ)なものだ。268ヤツパリ(ひと)つある(こと)(ふた)つある。269太子様(たいしさま)満足(まんぞく)なら、270(おれ)満足(まんぞく)だ。271(しか)しあのシノブ、272()()かない。273人目(ひとめ)(おそ)れて女中部屋(ぢよちうべや)(かへ)つて(しま)ひよつた。274(おれ)(はう)から(ひそ)かに(かよ)(わけ)にも()かず、275さうすれば太子(たいし)権威(けんゐ)はゼロになる。276もし彼奴(あいつ)にして(おれ)をどこ(まで)熱愛(ねつあい)してゐるならば、277今夜(こんや)一睡(いつすゐ)もようしまい。278キツと恋愛(れんあい)といふ曲者(くせもの)(ひき)つけられて、279のそりのそりと(わが)居間(ゐま)(しの)んで()るかも()れない。
280もえさかる(むね)(ほのほ)(うち)()して
281しばし(しの)ばむしのぶ恋路(こひぢ)を。
282(ひと)()をしのぶ二人(ふたり)(なか)ならば
283しばし(しの)ばむ(こひ)暗路(やみぢ)を。
284あーあ、285(なん)だか(めう)気分(きぶん)になつて()たワイ。286モ、287()()けた(やう)だし、288夜分(やぶん)御機嫌(ごきげん)(うかが)ひもあるまい。289サアゆつくりと今日(けふ)(この)太子(たいし)(やす)んでやらうかい』
290()(なが)ら、291寝所(しんしよ)()り、292ソファーの(うへ)(よこ)たはり、293疲労(くたび)()てて、294鼾声(かんせい)(らい)(ごと)(ねむり)についた。
295 ()森々(しんしん)()けわたり、296(みづ)さへ(ねむ)丑満(うしみつ)刻限(こくげん)となつた。297満天(まんてん)雨雲(あまぐも)(つつみ)()つて、298土砂(どしや)ぶりの(あめ)(やかた)(むね)(おと)(たか)(たた)(はじ)めた。299(こひ)曲者(くせもの)(とら)はれて、300まどろみ()ざりし女中頭(ぢよちうがしら)のシノブは301(あめ)(おと)(さいは)ひに()女中(ぢよちう)寝息(ねいき)(かんが)へ、302足音(あしおと)(しの)ばせ(なが)ら、303ソロリソロリとアリナが寝所(しんしよ)(しの)()つた。304アリナは何事(なにごと)白河(しらかは)夜舟(よぶね)305荒波(あらなみ)のほえたけるやうな(いびき)()てて熟睡(じゆくすゐ)()つてゐる。306シノブはソファーの(そば)()り、307ソツとアリナが(むね)()()て、308小声(こごゑ)になつて……
309シ『モシ……モシ、310アリナさま アリナさま』
311とゆすり(おこ)した。312アリナは(おどろ)いて、313アツとはね()き、314()をこすり(なが)ら、
315ア『ナヽ(なん)だ、316何事(なにごと)(おこ)つたのだ』
317(はや)くも()()さうとするのを、318シノブは(そで)をひき()(なが)ら、
319シ『()()づおちつき(あそ)ばしませ、320(べつ)(あや)しい(もの)では(ござ)いませぬ。321(わらは)貴方(あなた)のお(きら)ひなシノブで(ござ)います。322(わらは)(こゑ)()いて、323倉皇(さうくわう)として(にげ)()さうとは(あま)りぢや(ござ)いませぬか。324貴方(あなた)(ゆふべ)325(わたし)(いつは)つたので(ござ)いますか。326エー(くや)しい、327残念(ざんねん)(ござ)います。328モウ(この)(うへ)(なに)()()ちあけて(しま)ひますから、329(その)覚悟(かくご)なさいませ』
330(はや)くも泣声(なきごゑ)になる。331アリナは吃驚(びつくり)して、
332ア『ヤア、333(まへ)はシノブだつたか、334ヤ、335それで安心(あんしん)だ。336(けつ)してお(まへ)(きら)(どころ)か、337(まへ)(こと)(ばか)(おも)つて(やす)んでゐた(ところ)338(ちち)左守(さもり)がやつて()て、339(おれ)(ばけ)(かは)(あら)はし、340ふん(じば)らうとした(ゆめ)()吃驚(びつくり)したのだ。341どうしてお(まへ)(きら)ふものか、342そして殿中(でんちう)何事(なにごと)もないのか』
343 (この)言葉(ことば)()いてシノブも(やや)安心(あんしん)せしものの(ごと)く、
344シ『あゝそれ()いて、345貴方(あなた)のお(こころ)(わか)りました。346御安心(ごあんしん)なされませ。347殿中(でんちう)(きは)めて平穏(へいおん)無事(ぶじ)(ござ)います。348(わらは)寝所(しんしよ)這入(はい)りましても、349貴方(あなた)のお姿(すがた)()にちらつき、350一目(ひとめ)(ねむ)られず、351()()けるのを()ちかね、352(かほ)()たさに人目(ひとめ)(しの)んでここ(まで)(うかが)つたので(ござ)います』
353ア『ウン、354さうか、355それで(おれ)もヤツと安心(あんしん)した。356()()(くだ)さつた。357(おれ)(ろく)()()(ねむ)られなかつたよ。358(まへ)(こと)()になつて………』
359シ『ホヽヽヽ、360(なん)とマア調法(てうはふ)なお(くち)(こと)361(わらは)(しの)んで()るのも()らずに、362夜中(よなか)(ゆめ)()てゐらしたくせに363どこを(おさ)へたらそんな上手(じやうず)(こと)()へますか。364本当(ほんたう)(にく)らしい殿御(とのご)だワ』
365()(なが)ら、366(ひざ)のあたりを(ちから)()れて、367継子(ままこ)(つめ)りに(つめ)つた。
368ア『アイタヽヽヽ、369ひどい(こと)するぢやないか、370さう(をとこ)虐待(ぎやくたい)するものぢやないワ。371ヤツパリお(まへ)(わたし)(くる)しめるのだな。372(ひと)(いた)()にあはして、373(まへ)心持(こころもち)()いのか』
374シ『そらさうです(とも)375(にく)らしい(ほど)可愛(かあい)いですもの……可愛(かあい)けりやこそ(ひと)つも(たた)く、376(にく)うて(ひと)つも(つめ)られうか……といふ俗謡(ぞくえう)があるでせう。377モツトモツト(つめ)つて()げませうか』
378今度(こんど)()(うで)(ちから)一杯(いつぱい)継子(ままこ)(つめ)りで(ねぢ)た。
379ア『アイタヽヽヽ、380コラコラひどい(こと)するな。381可愛(かあい)いがつて(もら)ふのも結構(けつこう)だが、382(いた)いのは御免(ごめん)だ』
383シ『(をんな)(つめ)られて閉口(へいこう)するやうな(こし)(よわ)男子(だんし)は、384(こひ)(かた)るの資格(しかく)はありませぬよ。385本当(ほんたう)(こひ)(こひ)とがピツタリ()つた男女(だんぢよ)は、386何時(いつ)生疵(なまきず)()()のないのが親密(しんみつ)証拠(しようこ)ですよ』
387といひ(なが)ら、388(ほほ)べたをガシリとかいた。
389ア『チヨツ、390(いた)いワイ。391何程(なにほど)(ほれ)たというても、392そんな毒性(どくしやう)()()はされちや やり()れないワ。393(つら)蚯蚓(みみづ)()れが出来(でき)るぢやないか』
394シ『ホヽヽヽ蚯蚓腫(みみづばれ)(ぐらゐ)(なん)ですか、395(をとこ)()ふものは大事(だいじ)(たから)まで、396(つき)(やぶ)るだありませぬか、397その(はう)何程(なにほど)(いた)いか()れませぬよ』
398ア『エー、399(なん)とマア、400()いお転婆(てんば)だなア。401今時(いまどき)女子(ぢよし)(これ)だから(きら)はれるのだ……イヤ()かれるのだ、402エヘヽヽヽ』
403 ()くいちやついてゐる(をり)しも、404ヂヤンヂヤンヂヤンヂヤンと警鐘乱打(けいしようらんだ)(こゑ)405ハツと(おどろ)(まど)(ひら)いて()れば、406左守(さもり)(やかた)方面(はうめん)(あた)つて、407(ほのほ)(てん)をこがし大火災(だいくわさい)(おこ)つてゐる。
408大正一四・一・六 新一・二九 於月光閣 松村真澄録)
   
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