霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 会者浄離(ゑしやじやうり)〔一七三八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第4篇 月光徹雲 よみ:げっこうてつうん
章:第14章 第68巻 よみ:えしゃじょうり 通し章番号:1738
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
太子とスバール姫は、山奥の古寺に隠れ住み、国家を打ち捨て、恋愛至上主義の生活をしていた。
そこへ、みすぼらしい比丘姿のアリナが通りかかり、三人は再会する。
太子はアリナに、城に戻り、自分に代わって将来のタラハン国を担うよう勧めるが、アリナは政治欲・情欲から離れ、一生を雲水として過ごす覚悟を決めたと、太子に決心を伝える。
アリナはタラハン国の罪穢れの清めを歌い願いつつ、太子とスバール姫のもとを去っていく。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6814
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 221頁 修補版: 校定版:191頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 青春(せいしゆん)()()ゆる(わか)男女(だんぢよ)()つては002恋愛(れんあい)なるものは(じつ)生命(せいめい)源泉(げんせん)である。003恋愛熱(れんあいねつ)高潮(かうてう)した(とき)は、004倫理(りんり)道徳(だうとく)覊絆(きはん)(だつ)理智(りち)()て、005富貴(ふうき)何物(なにもの)ぞ、006名誉(めいよ)何物(なにもの)ぞ、007(なほ)(すす)んでは(おや)兄弟(きやうだい)(わす)れ、008朋友(ほういう)知己(ちき)(わす)るるに(いた)る。009(しか)(なが)恋愛(れんあい)(その)ものより()(とき)は、010理智(りち)道徳(だうとく)範囲内(はんゐない)()(こと)出来(でき)ぬ。011どこ(まで)拡大性(くわくだいせい)()び、012()流通性(りうつうせい)(そな)へて()る。013もし理智(りち)加味(かみ)した恋愛(れんあい)ならば、014恋愛(れんあい)(その)(もの)生命(せいめい)(すで)(すで)滅亡(めつぼう)して()るのである。015()にやタラハン(ごく)のスダルマン太子(たいし)は、016尊貴(そんき)(いへ)(うま)九五(きうご)(くらゐ)(のぼ)るべき()でありながら、017今年(ことし)十五(じふご)(はる)(むか)へた山奥(やまおく)(そだ)ちの乙女(をとめ)満身(まんしん)心血(しんけつ)(そそ)ぎ、018十二分(じふにぶん)(こひ)(あぢ)ははむとして国家(こくか)危急(ききふ)(わす)れ、019(ちち)瀕死(ひんし)状態(じやうたい)(おちい)りつつ()(こと)見捨(みす)てて、020大原山(おほはらやま)谷間(たにあひ)(ふる)くより()てる(やぶ)(でら)()()び、021(ひそ)かに(こひ)(あぢ)はつて()る。022左守(さもり)(せがれ)アリナは太子(たいし)品行(ひんかう)(みだ)したる大罪人(だいざいにん)として、023逮捕(たいほ)命令(めいれい)()されたる蔭裡(かげうら)()024(さすが)繁華(はんくわ)都大路(みやこおほぢ)にも()()比丘(びく)姿(すがた)()(やつ)し、025(ひる)山林(さんりん)()し、026()はトボトボと野路(のぢ)(つた)うて、027(ひろ)世界(せかい)(わが)()(ひと)つの()(どころ)もなく彷徨(さまよ)(まは)りしが、028(から)うじて大原山(おほはらやま)谷間(たにあひ)(ふる)ぼけた(やぶ)(でら)一夜(いちや)宿(やど)(すご)さむと()()()れば、029本堂(ほんだう)須弥壇(しゆみだん)(うしろ)(わか)男女(だんぢよ)(ささや)(ごゑ)030(きず)もつ(あし)のアリナは(しば)(たたず)(いき)()らして(うち)様子(やうす)(かんが)へてゐた。031(ちなみ)()ふ、032(かれ)アリナは殿中(でんちう)(にげ)()(とき)033最愛(さいあい)のシノブに(ささや)いて()ふ、
034()(これ)より少時(しばし)(あひだ)大宮山(おほみややま)盤古神王(ばんこしんのう)(やしろ)(なか)潜伏(せんぷく)し、035()(なか)(やや)(をさ)まるをまつて(かへ)(きた)るべければ、036(なんぢ)はどこ(まで)もこの殿中(でんちう)(はな)れな』
037()げておいた。038シノブはそれ(ゆゑ)アリナは依然(いぜん)として、039大宮山(おほみややま)社殿(しやでん)(なか)()るものとのみ(しん)じて()たのである。040(かれ)右守(うもり)(みみ)(ささや)いたのも矢張(やはり)これである。
041
042スバール『太子様(たいしさま)043貴方(あなた)どこ(まで)(わらは)見捨(みす)てず(あい)して(くだ)さるでせうなア』
044太子(たいし)『ハヽヽヽ。045そんな心配(しんぱい)はして()れな。046(まへ)との恋愛(れんあい)()げむが()めに、047太子(たいし)(くらゐ)(まで)()ててこんな(ところ)(かく)れてゐるのぢやないか。048父様(とうさま)御大病(ごたいびやう)049何時(いつ)御昇天(ごしようてん)(あそ)ばすかも()れない、050(この)場合(ばあひ)にも(こひ)にはかへられず、051()(なか)(すゐ)()らぬ人間(にんげん)(さだ)めて()を「不孝(ふかう)ものだ、052馬鹿者(ばかもの)だ、053腰抜(こしぬ)(をとこ)だ」と(わら)つて()るだらう。054(なに)(ほど)(わら)はれてもお(まへ)(あい)には()へられないのだ』
055ス『殿下(でんか)(その)(こころ)なら(わらは)はどこ(まで)貴方(あなた)貞操(ていさう)(ささ)げます。056仮令(たとへ)()(すゑ)深山(みやま)(おく)057猛獣(まうじう)毒蛇(どくじや)棲処(すみか)でも殿下(でんか)(とも)苦労(くらう)をするのなら(すこ)しも(いと)ひませぬ。058山奥(やまおく)生活(せいくわつ)()れた(わらは)(ござ)いますれば、059()()(あさ)(いも)()つてでもきつと殿下(でんか)(やしな)ひまする。060どうぞ御安心(ごあんしん)して(くだ)さいませ』
061 太子(たいし)はスバールの(やさ)しき言葉(ことば)(ほだ)されて(おも)はず()らず落涙(らくるゐ)した。
062ス『いや殿下(でんか)()いていらつしやいますの。063(わらは)()つた言葉(ことば)がお()(さは)りましたか。064もし(さは)りましたら065どうか御容赦(ごようしや)(くだ)さいませ』
066(たい)『いやいや、067()(さは)(どころ)068(まへ)(こころ)(うれ)しうて(おも)はず()らず感謝(かんしや)(なみだ)(ほとばし)つたのだよ』
069ス『エヽ勿体(もつたい)ない(こと)(おほせ)られますな。070殿下(でんか)()めならば(いのち)(ささ)げても満足(まんぞく)(ござ)います。071それにつけても浅倉山(あさくらやま)谷間(たにあひ)(のこ)しておいた父上(ちちうへ)はどうしていらつしやるでせうか。072(さだ)めて(みやこ)大変(たいへん)()き、073(わが)()はどうして()るかと、074御心配(ごしんぱい)(あそ)ばして(ござ)るでせう。075どうか一度(いちど)(ちち)(めぐ)()うて076二人(ふたり)無事(ぶじ)(ところ)()せたいもので(ござ)いますわ』
077(たい)『お(まへ)がさう(おも)ふのも無理(むり)もない。078()だつて(その)(とほ)りだ。079(こと)病気(びやうき)(ちち)を、080あの混乱状態(こんらんじやうたい)(あやふ)(なか)(のこ)して、081(まへ)此処(ここ)(しの)んで()(こころ)はどれだけ(くる)しいか。082スバール、083(わし)(こころ)推量(すゐりやう)して()れ』
084ス『(おや)大切(たいせつ)なり085(また)恋愛(れんあい)(なほ)大切(たいせつ)なり、086(この)()(なか)(おも)ふやうには()かないもので(ござ)いますなア』
087(たい)(やま)はさけ(うみ)はあせなむ()ありとも
088()()()ふる(こころ)()らじ』
089ス『有難(ありがた)太子(よつぎ)(きみ)のみことのり
090わが胸板(むないた)射抜(いぬ)くやうなる』
091(たい)父君(ちちぎみ)()(おも)はぬに()らねども
092(こひ)覊絆(きづな)()かれてぞ()む』
093ス『恋衣(こひごろも)よしや(やぶ)るる()ありとも
094(きみ)赤心(まごころ)如何(いか)(わす)れむ』
095(たい)『よしやよし(わが)()野辺(のべ)()つるとも
096()らして()かむ(こひ)暗路(やみぢ)は』
097ス『(わが)(きみ)(なさけ)(つゆ)(うるほ)ひて
098(ひら)()めけり(うめ)初花(はつはな)
099(たい)()()ける白梅(しらうめ)(はな)手折(たを)りつつ
100今日(けふ)山奥(やまおく)()けて()るかな』
101ス『手折(たを)られて()けたる(はな)はいつの()
102(しほ)れむためしあるぞ(かな)しき』
103(たい)山奥(やまおく)(にほ)へる(うめ)()こぎして
104都大路(みやこおほぢ)(うゑ)つけて()む』
105ス『土埃(つちぼこ)()都路(みやこぢ)(うめ)(はな)
106(にほ)ひのあするためしあるべし。
107いつまでも(この)山奥(やまおく)(うゑ)られて
108()(むす)ぶなる(はる)()ひたし』
109(たい)(こひ)()ふものの(つら)きを(いま)()
110(うれ)(かな)しの(なか)(へだ)てて』
111ス『(なげ)きつつ(また)(たの)しみつ(よろこ)びつ
112(こひ)淵瀬(ふちせ)()きつ(しづ)みつ』
113(たい)(こひ)()ふものに(なみだ)のなかりせば
114枯木(かれき)(ごと)(さび)しかるらむ』
115ス『()()ての(のち)(こころ)猶更(なほさら)
116(むかし)にまさる恋衣(こひごろも)かな』
117(たい)()(なか)(ひと)(なん)とも()はば()
118不思議(ふしぎ)(きは)まる(こひ)路芝(みちしば)
119ス『(こひ)(やみ)わけ()二人(ふたり)()(はて)
120天津御国(あまつみくに)(すま)ゐなるらむ』
121(たい)()(あた)天津御国(あまつみくに)(あそ)ぶなる
122(こひ)広道(ひろみち)(すす)(われ)なり』
123 アリナは(そと)より、
124()(した)太子(よつぎ)(きみ)はこの(てら)
125たしかありな(たづ)()しかな。
126都路(みやこぢ)(もも)(さわ)ぎを余所(よそ)にして
127深山(みやま)(おく)()ます(きみ)かな。
128スバールの(ひめ)諸共(もろとも)ましますか
129(やさ)しき(こゑ)(わが)(みみ)()る』
130(たい)夢現(ゆめうつつ)あこがれ()たりし(なれ)(こゑ)
131(みみ)()るこそ(うれ)しかりけり。
132村肝(むらきも)(こころ)(うれ)しく(わが)(むね)
133高鳴(たかな)如何(いか)()むるよしなし』
134 太子(たいし)はスバールと(とも)須弥壇(しゆみだん)(うら)より(おもて)()で、135すつくと()てる比丘(びく)姿(すがた)のアリナを()るより、136(われ)(わす)れて()けより、137(かた)(その)()(にぎ)(なみだ)腮辺(しへん)()らし(なが)ら、
138太子(たいし)『ヤア、139アリナ、140よく(たづ)ねて()()れた。141()ひたかつた、142()たかつたぞや』
143アリナ『ヤ殿下(でんか)144()くまア無事(ぶじ)()(くだ)さいました。145(いま)殿下(でんか)安全(あんぜん)なる御様子(ごやうす)()て、146(わたし)最早(もはや)()()(おも)ひの(のこ)(こと)(ござ)いませぬ。147御覧(ごらん)(ごと)(わたくし)修験者(しゆげんじや)となり、148()(なか)一切(いつさい)()ち、149(やま)()()()ね、150一生(いつしやう)念仏三昧(ねんぶつざんまい)(おく)(かんが)へで(ござ)います。151一笠(いつりふ)一蓑(いつさ)一杖(いちぢやう)雲水(うんすい)()(うへ)152何処(どこ)並木(なみき)(こえ)にならうやら、153(ふたた)殿下(でんか)御壮健(ごさうけん)のお(かほ)()(こと)出来(でき)ますやら、154味気(あぢき)なき浮世(うきよ)(ござ)いますれば、155何事(なにごと)因縁(いんねん)づくだと(あきら)156どうか(わたし)にお(ひま)(くだ)さいませ。157そして殿下(でんか)はスバール(ひめ)(さま)末永(すゑなが)(こひ)(あぢ)はつて(いただ)きたう(ござ)います』
158 太子(たいし)はほつと一息(ひといき)()(なが)ら、159(あを)()めたる(かほ)にて(ちから)なげにアリナの()()すり(なが)ら、
160(たい)『オイ、161アリナ、162一度(いちど)(おも)(なほ)して(みやこ)(かへ)つて()れる(こと)出来(でき)ないか。163()最早(もはや)王位(わうゐ)()てて(つま)(とも)乞食生活(こじきせいくわつ)(おく)決心(けつしん)ではあるが、164其方(そなた)時勢(じせい)(かい)した前途有望(ぜんというばう)青年(せいねん)165(いま)から修験者(しゆげんじや)となつて()()つるは国家(こくか)()()しい(こと)だ。166どうか(ちち)(たす)けて(ふたた)びタラハン(じやう)柱石(ちうせき)となり、167()意志(いし)()いでは()れまいか』
168 アリナは(こゑ)湿(うる)ませ(なが)ら、169(なみだ)両眼(りやうがん)にしたたらして、
170殿下(でんか)思召(おぼしめし)(じつ)有難(ありがた)(ぞん)じます。171(しか)(なが)最早(もはや)今日(こんにち)(わたくし)刑状(けいじやう)(もち)(ござ)います。172仮令(たとへ)大赦(たいしや)(かうむ)つて(ふたた)(みやこ)()無事(ぶじ)(かへ)りませうとも、173民心(みんしん)(うしな)つた(ちち)左守(さもり)(せがれ)(ござ)いますれば、174どうして国民(こくみん)(わたくし)赤心(まごころ)(みと)めて()れませう。175最早(もはや)(わたくし)政治欲(せいぢよく)(はな)れました。176そして情欲(じようよく)()ちました。177雲水(うんすい)(とも)として天下(てんか)民情(みんじやう)視察(しさつ)一生(いつしやう)(おく)(かんが)へで(ござ)いますから、178どうか(この)(こと)(ばか)りは(おほ)せられないやうにお(ねが)(いた)します』
179 太子(たいし)(ふと)吐息(といき)をつき(なが)ら、
180『あゝ是非(ぜひ)もない。181タラハンの国家(こくか)最早(もはや)滅亡(めつぼう)したのかなア』
182 スバールはアリナの(まへ)(すす)()で、183悲嘆(ひたん)(なみだ)にくれながら、
184『アリナ(さま)185貴方(あなた)はまア(なん)()すぼらしいお姿(すがた)におなり(あそ)ばしたのですか、186おいとしう(ござ)います』
187アリナ『いや、188(これ)(これ)(ひめ)(さま)189(かなら)(かなら)御心配(ごしんぱい)(くだ)さいますな。190(わたくし)(こころ)から斯様(かやう)零落(おちぶれ)たので(ござ)います。191(いま)境遇(きやうぐう)(わたくし)()にとつて結局(けつきよく)幸福(かうふく)(ござ)います。192一箪(いつたん)(しい)一瓢(いつぺう)(いん)193山水(さんすい)(とも)として天下(てんか)遍歴(へんれき)するのも(また)一興(いつきよう)(ござ)います。194どうぞ(わたくし)()については御懸念(ごけねん)(くだ)さいますな』
195ス『()(わび)(した)しき(とも)(めぐ)()
196またも(なげ)きの(たね)をまくかな。
197如何(いか)にせむ(はや)(をのこ)敏心(とごころ)
198(とど)めむ(ちから)()けし(わが)()は』
199ア『何事(なにごと)(かみ)(まも)らす()(なか)
200(ひと)(おも)ひの(とほ)るべしやは。
201()(くも)(そら)(なが)めて折々(をりをり)
202(わが)()(すゑ)(しの)()にけり』
203(たい)(みぎ)(ひだり)(たがひ)(たもと)(わか)つとも
204(たま)(たがひ)()ひてありけむ』
205ア『有難(ありがた)(かたじけ)なしと(をが)むより
206(ほか)(すべ)なき今日(けふ)(われ)かな。
207(わが)(きみ)(うづ)御心(みこころ)いつもながら
208()()(わた)(なみだ)こぼるる』
209(たい)()(なか)(なれ)とスバール(ひめ)おきて
210(ほか)(ちから)(たの)むものなし。
211片腕(かたうで)をもがれし(ごと)心地(ここち)して
212(いま)(わか)()(むね)(くる)しさ』
213ス『如何(いか)にしてアリナの(きみ)御心(みこころ)
214(ひるがへ)さむか果敢(はか)なきの()や』
215ア『姫君(ひめぎみ)(こころ)やすけく思召(おぼしめ)
216(なれ)には(かみ)(まも)りありせば。
217(わが)(きみ)(なれ)(わが)()(かみ)御子(みこ)
218(かみ)()てさせたまふべしやは。
219いざさらば太子(よつぎ)御子(みこ)姫君(ひめぎみ)
220()しき(たもと)(わか)()かなむ。
221いつ(まで)(やす)健在(まさきく)おはしませ
222(かみ)(めぐみ)(つゆ)()れつつ』
223 ()(わか)れの(うた)(のこ)してアリナは(また)もや法螺貝(ほらがひ)()き、224山野(さんや)邪気(じやき)(きよ)(なが)ら、225何処(どこ)(あて)ともなく山奥(やまおく)さして(すす)()る。226(あと)見送(みおく)つて太子(たいし)227スバールは大地(だいち)(ころ)()し、
228『オーイオーイ、229アリナよアリナよ、230一度(いちど)(かほ)()せてたべ』
231()べど(さけ)べど法螺(ほら)()(ひびき)(さへぎ)られて、232二人(ふたり)(こゑ)(かれ)(みみ)()らぬものの(ごと)く、233(あと)をも()(かへ)らず、234足早(あしばや)密樹(みつじゆ)(かげ)姿(すがた)(ぼつ)した。235アリナは道々(みちみち)(うた)ふ、
236雲霧(くもきり)四方(よも)にふさがりて
237黒白(あやめ)()かぬ常暗(とこやみ)
238(けもの)()とはなりにけり
239朝日(あさひ)(そら)(のぼ)れども
240下界(げかい)()らすよしもなく
241(つき)地中(ちちう)(ひそ)めども
242()をあかすべき(すべ)もなし
243雲井(くもゐ)(そら)()(つき)
244(あや)しき(ほし)出没(しゆつぼつ)
245妖邪(えうじや)空気(くうき)()(うへ)
246散布(さんぷ)しながら()(あめ)
247(つるぎ)(あめ)()きおろす
248(かぜ)(ひび)きも(なん)となく
249(ほろ)びの(こゑ)(きこ)ゆなり
250(とら)(おほかみ)獅子(しし)(くま)
251(ほえ)(たけ)()(すす)()
252(わが)()(かみ)(まも)られて
253いや永久(とこしへ)臥床(ふしど)をば
254(もと)めて(すす)修験者(しうげんじや)
255(かみ)(この)()にましまさば
256(くも)()てたる()(なか)
257一度(いちど)()らさせたまふべし
258如何(いか)権威(けんゐ)があればとて
259(かみ)ならぬ()人草(ひとぐさ)
260如何(いか)でか(この)()(をさ)まらむ
261(そも)人間(にんげん)(かみ)()
262(ほこ)りまつれど実際(じつさい)
263(なつ)草葉(くさば)宿(やど)りたる
264(あさひ)(まへ)(つゆ)()
265永遠無窮(えいゑんむきう)神業(しんげふ)
266如何(いか)でか(つか)へまつるべき
267あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
268(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ
269(わが)()(あと)のタラハンの
270(かみ)(つく)りし御国(おんくに)
271いとも(たひら)(やす)らかに
272(まも)らせたまひて大王(だいわう)
273万機(ばんき)(まつり)(たす)けませ
274(こころ)(きたな)(わが)(ちち)
275(ふか)(つみ)をば(ゆる)しませ
276右守(うもり)(かみ)逆心(ぎやくしん)
277(いまし)めたまひて御代(みよ)()
278(あめ)(した)なる人草(ひとぐさ)
279(いたは)(たす)けタラハンの
280(くに)(つかさ)(うた)はれて
281()万世(ばんせい)(のこ)すべく
282(むちう)ちたまへ大御神(おほみかみ)
283(ひとへ)(いの)(たてまつ)
284()第一(だいいち)にタラハンの
285(きみ)太子(よつぎ)とましませる
286若君様(わかぎみさま)御身(おみ)(うへ)
287(まも)らせたまひて永久(とこしへ)
288(くに)(はしら)()ちたまひ
289(わが)国民(くにたみ)幸福(かうふく)
290(きた)させたまふ名君(めいくん)
291ならしめたまへ大御神(おほみかみ)
292(ふか)(つつ)みし恋雲(こひぐも)
293科戸(しなど)(かぜ)()(はら)
294(あめ)(つち)とは(きよ)らけく
295()(わた)りたる御心(みこころ)
296かへし(たま)へよ惟神(かむながら)
297(ひとへ)(いの)(たてまつ)
298(ひとへ)(ねが)(たてまつ)る』
299大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 加藤明子録)