霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 破滅(はめつ)〔一七四四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第5篇 神風駘蕩 よみ:しんぷうたいとう
章:第20章 第68巻 よみ:はめつ 通し章番号:1744
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方右守のサクレンスは、太子・アリナを亡き者にしたと思い、妻のサクラン姫と酒盛りをやっていた。
ところが、自分たちの計画をシノブに聞かれてしまう。シノブは、悪事を公にされたくなければ自分を女帝にすえるよう、サクレンス夫妻を脅す。
そこへカーク・サーマンが、陰謀の露見を知らせに来る。太子・スバール姫は助け出され、右守の弟のエールがすでに成敗されたと3人に告げる。
三人は身の破滅を悟る。折りしも、捕り手が館を取り囲み、3人は縛り上げられてしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6820
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 251頁 修補版: 校定版:272頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 蓄財(ちくざい)名望欲(めいばうよく)政治欲(せいぢよく)002(その)(ほか)自己愛(じこあい)(みち)にかけては()()のない右守(うもり)(かみ)サクレンスは、003日頃(ひごろ)願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)(とき)(いた)れりとなし、004(つま)のサクラン(ひめ)(とも)に、005都下(とか)大騒擾(だいさうぜう)跡仕末(あとしまつ)もつけず、006民衆怨嗟(みんしうゑんさ)(こゑ)空吹(そらふ)(かぜ)()(なが)し、007珍味(ちんみ)佳肴(かかう)(さけ)くみ()はし得意(とくい)となつて008(こころ)埃芥(ごもく)平気(へいき)平左(へいざ)()()らしてゐる。009得意(とくい)(とき)010()()るは小人(せうじん)(つね)とは()(なが)ら、011あまりに智慧(ちゑ)()らぬ(をとこ)である。012人心(じんしん)恟々(きようきよう)として物騒至極(ぶつさうしごく)今日(けふ)(この)(ごろ)013(しか)玄関口(げんくわんぐち)(あら)はれ訪問客(はうもんきやく)相手(あひて)にし(なが)ら、014(すで)国務総監(こくむそうかん)になりすましたやうな()(さかん)にメートルを()げ、015いきりきつて()る。
016 右守(うもり)女房(にようばう)(しやく)でヘトヘトになり、017(へこ)んだ()をボツとさせ(なが)018眼鏡(めがね)()しに女房(にようばう)蜥蜴面(とかげづら)(うち)(なが)め、019出来損(できそこ)ねた今戸焼(いまどやき)(たぬき)人形(にんぎやう)のやうな不可解千万(ふかかいせんばん)(つら)をさらし020舌皷(したつづみ)()(なが)ら、
021右守(うもり)『オイ、022(おく)さま(いな)023女房(にようばう)024(かか)んつ殿(どの)025(なん)(おれ)劃策(くわくさく)(みづ)()らさぬ注意(ちうい)(とど)いたものだらう、026エーン』
027サク『旦那様(だんなさま)028(なん)ですか、029車夫(しやふ)馬丁(ばてい)(なん)ぞのやうに(かかあ)だの、030(かか)んつだの嬶村屋(かかむらや)だのと、031こんな玄関口(げんくわんぐち)()つともないぢやありませぬか。032警固(けいご)兵士(へいし)()しもこんな(こと)()きましたらキツト馬鹿(ばか)にしますよ。033何卒(どうぞ)(これ)から(わらは)()ぶには(おく)とか、034後室(こうしつ)とか()つて(くだ)さい。035(ねがひ)ですから』
036()『イヤ、037(これ)失敬千万(しつけいせんばん)038(おそ)入谷(いりや)鬼子母神(きしぼしん)殿(どの)039(かま)(した)燃杭左衛門(もえくひざゑもん)040閻魔大王之介(えんまだいわうのすけ)041嬶左衛門尉挽臼(かかざゑもんのじやうひきうす)殿(どの)042サクレンスが(さけ)(うへ)暴言(ばうげん)043真平(まつぴら)々々(まつぴら)御免(ごめん)(さふら)へ、044何分(なにぶん)(おく)さまのお名前(なまへ)がサクラン(ひめ)だから、045チツト(ばか)(この)右守(うもり)精神(せいしん)がサクラン(いた)し、046(なん)となくボツと(いた)したやうだ。047サクラン……ではない、048サフランでも(せん)じて一服(いつぷく)()まして(もら)ひたいものだな。049サフランが()ければ朝鮮人参(てうせんにんじん)でも結構(けつこう)だ。050(しか)(なが)(ことわざ)にも()(とほ)り……人参(にんじん)()うて(くび)()る……と()(こと)もある。051右守(うもり)貧乏(びんばふ)世帯(じよたい)では到底(たうてい)左様(さやう)高価(かうか)医薬品(いやくひん)(てこ)には()(まを)さぬ。052それよりも奥方殿(おくがたどの)御麗(おうるは)しきおん(かんばせ)(はい)(たてまつ)り、053恐悦至極(きようえつしごく)(ぞん)(たてまつ)つておいた(はう)が、054(なに)(ほど)愉快(ゆくわい)だか()れないわ、055アツハヽヽヽ』
056サク『旦那様(だんなさま)057いい加減(かげん)(つま)嘲弄(てうろう)しておきなさいませ。058(くち)関所(せきしよ)がないと()つても、059あまりぢや(ござ)いませぬか。060(とき)旦那様(だんなさま)061太子殿下(たいしでんか)やスバール(ひめ)大丈夫(だいぢやうぶ)(ござ)いませうかな』
062サクレ『ウンウン、063大丈夫(だいぢやうぶ)大丈夫(だいぢやうぶ)064不要緊(プヤオチン)不要緊(プヤオチン)065あゝしておけば自然(しぜん)餓死(がし)()るだらう、066さうすりやこつちの幸福(しあはせ)だ。067(なに)(ほど)辛抱(しんばう)()いと()つても、068十日(とをか)二十日(はつか)飲食(おんじき)()たれたならば、069到底(たうてい)生命(いのち)(たも)()い、070寂滅為楽(じやくめつゐらく)とおいで(あそ)ばすは、071()まりきつたる天地(てんち)道理(だうり)だ。072エー、073(おれ)子供(こども)があればバンナ(ひめ)(めあわ)して、074うまく国政(こくせい)自由自在(じいうじざい)(あやつ)るのだが、075(をし)(こと)にはお(まへ)石女(うまずめ)だから、076(をし)(なが)らも他人(たにん)にやるよりマシだと(おも)つて、077父違(ててちが)ひの(おとうと)顕要(けんえう)地位(ちゐ)(ゆづ)り、078(おとうと)はやがて大王殿下(だいわうでんか)となり、079肝心(かんじん)兄貴(あにき)臣下(しんか)となつて、080アタ阿呆(あはう)らしい、081神妙(しんめう)(つか)へねばならぬのだ。082(しか)(なが)(おとうと)(ただ)(たん)看板(かんばん)()てておくのみだ。083その実権(じつけん)はヤツパリ(この)サクレンスの()(にぎ)つておくのだから、084()芝居(しばゐ)だと(おも)へば辛抱(しんばう)出来(でき)やうかい、085エツヘヽヽヽ。086ても(さて)愉快(ゆくわい)(こと)だわい』
087サクラ『旦那様(だんなさま)088そしてあのアリナはシノブの()つた(とほ)大宮山(おほみややま)神殿(しんでん)()つたでせうか』
089サクレ『イヤ、090彼奴(あいつ)到頭(たうとう)(かぜ)(くら)つて(にげ)()せ、091比丘(びく)姿(すがた)となつて法螺貝(ほらがひ)()き、092そこら(ぢう)深網笠(ふかあみがさ)(めぐ)つて()ると()報告(はうこく)()たので093千円(せんゑん)懸賞付(けんしやうづき)(いま)捜索(そうさく)してる(ところ)だ。094彼奴(あいつ)(つかま)へたら、095否応(いやおう)()はさず秋野ケ原(あきのがはら)水車(すいしや)小屋(ごや)地底(ちてい)牢獄(らうごく)()()み、096人知(ひとし)れず()(ころ)してやる計画(けいくわく)がチヤンと(ととの)つてゐるのだ。097あんな(やつ)(こと)は、098さう()(かい)するに()らないよ。099(なん)()つても肝腎要(かんじんかなめ)太子(たいし)を、100あゝ()()いて○○して(しま)へば最早(もはや)(おれ)天下(てんか)だ。101エツヘヽヽヽ、102(なん)妙案(めうあん)奇策(きさく)だらう』
103サクラ『そりや本当(ほんたう)心地(ここち)のよい(こと)(ござ)いますな。104流石(さすが)右守様(うもりさま)105いや大名総監(だいみやうそうかん)(さま)106天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)107貴方(あなた)御出世(ごしゆつせ)なされたならば、108(あさ)につれる(よもぎ)同然(どうぜん)109(わらは)地位(ちゐ)(たか)まる道理(だうり)110(しか)女中頭(ぢよちうがしら)のシノブが()いたら、111さぞ失望(しつばう)落胆(らくたん)する(こと)でせうね』
112サクレ『どうで彼奴(あいつ)は、113ドテンバの淫乱(いんらん)両屏風(りやうびやうぶ)()てゐるのだからいい気味(きみ)だ。114いつもいつも大王様(だいわうさま)のお(そば)(ちか)(はべ)りよつて115耳嗅(みみか)(ばか)得意(とくい)にしてゐる曲者(くせもの)だから、116あんな(やつ)(へそ)でも()んで()んだ(はう)が、117(なに)(ほど)国家(こくか)(ため)になるか()れないわ、118エツヘヽヽヽ』
119サクラ『(しか)(なが)旦那様(だんなさま)120(はかりごと)(みつ)なるを(えう)すとか(まを)しまして、121どこ(まで)注意(ちうい)注意(ちうい)(くは)へねばなりませぬ。122ヒヨツとすればあの(をんな)右守家(うもりけ)にとつて爆裂弾(ばくれつだん)かも()れませぬから、123そこは、124うまく()つて、125(あやつ)つておいて(くだ)されや』
126サクレ『エー、127そんな(こと)抜目(ぬけめ)のあるサクレンスと(おも)つてゐるか、128()()野暮(やぼ)だよ。129サア一杯(いつぱい)ゆかう。130今日(けふ)土堤(どて)()らして充分(じゆうぶん)()うて()れ。131目的(もくてき)成就(じやうじゆ)前祝(まへいはひ)だからのう』
132 ()かる(ところ)玄関(げんくわん)障子(しやうじ)(そと)からかん(ばし)つた(をんな)(こゑ)
133右守様(うもりさま)134(わらは)はシノブで(ござ)います。135這入(はい)りましてもお差支(さしつかへ)(ござ)いませぬかな』
136 右守(うもり)はギヨツとし(なが)顔色(かほいろ)をサツと()へ、137女房(にようばう)(たぬき)蜥蜴(とかげ)面合(つらあは)せをし(なが)ら、138(くちびる)(した)()()()(あご)をしやくり、139二人(ふたり)一時(いちじ)に、
140『ハイ、141差支(さしつかへ)(ござ)いませぬ。142サアサアお這入(はい)(くだ)さい』
143シノブ『左様(さやう)なれば御免(ごめん)(かうむ)ります。144(へそ)でも()んで()ねばいいのに、145(にく)まれ()()覇張(はば)ると(まを)しまして、146(この)(とほ)りピンピンしてゐます。147(けつ)して爆裂弾(ばくれつだん)ではありませぬから御安心(ごあんしん)なさいませ。148(なん)()つても太子様(たいしさま)水車(すいしや)小屋(ごや)地底(ちてい)岩窟(いはや)()れて、149(ほし)(ころ)さうと()さる(すご)御腕前(おうでまへ)150(じつ)感心(かんしん)(いた)しましたよ。151もしもし御夫婦(ごふうふ)(さま)152(べつ)(あを)(かほ)して、153(ふる)(あそ)ばすには、154(あた)らぬぢやありませぬか。155アリナさま(まで)引捕(ひつと)らまへて地底(ちてい)牢獄(らうごく)()()み、156(ほし)(ころ)さうとして(ござ)るのですもの、157本当(ほんたう)(あき)れて(しま)ひますわ。158如何(いかが)(ござ)います。159(ふくろ)宵企(よひだく)み、160うまく計劃(けいくわく)成就(じやうじゆ)(いた)見込(みこみ)(ござ)いますかな』
161()『これはこれは(おも)ひがけなきシノブ殿(どの)のお言葉(ことば)162どうして、163さやうな無道(ぶだう)(こと)出来(でき)るものですか。164人間(にんげん)として、1641(おそ)(おほ)くも太子様(たいしさま)(ほし)(ころ)さうなんて、165人間(にんげん)(つら)(かぶ)つたものがする(こと)ぢや(ござ)いませぬ。166(じつ)(さけ)()うたまぎれに、167嬶左ヱ門(かかざえもん)(むか)つて揶揄(からか)つてゐたのですよ。168もとより()なし(ぐさ)(たはむ)(ごと)169()にかけて(くだ)さつては(こま)ります』
170シ『人間(にんげん)として出来(でき)ないやうな、171(だい)それた(おそ)(おほ)(こと)平気(へいき)でおやり(あそ)ばす右守様(うもりさま)だもの、172到底(たうてい)(わらは)(ごと)耳嗅(みみかぎ)のお転婆女(てんばをんな)では(そば)へも()れませぬわ。173どうか(つめ)(あか)でも(いただ)いて(せん)じて()みたいもので(ござ)いますわ』
174()『こりや()しからぬ、175さう(うたが)つて(もら)つちや、176右守(うもり)一切(いつさい)事情(じじやう)逐一(ちくいち)弁明(べんめい)せなくちやなりますまい。177マアゆつくりと()落付(おちつ)けて、178忠臣(ちうしん)義士(ぎし)たる拙者(せつしや)言葉(ことば)をお()(くだ)さい』
179シ『貴方(あなた)はもうお(わす)れになりましたか。180先日(せんじつ)(わらは)がお直使(ちよくし)()けて(まゐ)りました(とき)181太子様(たいしさま)を○○せうとお約束(やくそく)なさつたぢや(ござ)りませぬか。182そしてアリナさまを王位(わうゐ)(のぼ)らせ、183(わらは)王妃(わうひ)にしてやらうと、184うまく誤魔化(ごまくわ)しましたね。185貴方(あなた)(はら)(なか)はエールさまを王位(わうゐ)(のぼ)らせ、186王女(わうぢよ)のバンナさまを王妃(わうひ)とし、187勝手(かつて)気儘(きまま)国政(こくせい)料理(れうり)せうと()ふ、188(たい)した陰謀(いんぼう)劃策(くわくさく)してゐらしたのでせう。189(なに)もかも一伍一什(いちぶしじふ)190只今(ただいま)1901玄関先(げんくわんさき)にて(うけたま)はりました。191(しか)(わたし)が、192かう()つたと(まを)して(おどろ)きには(およ)びませぬ。193(もの)相談(さうだん)ですが194どうです。195一層(いつさう)(こと)(わらは)女帝(によてい)にして(くだ)さつては。196()しゴテゴテ仰有(おつしや)るなら(なに)もかも(かみ)大王様(だいわうさま)へ、197(しも)国民(こくみん)一般(いつぱん)へ、198貴方(あなた)陰謀(いんぼう)次第(しだい)吹聴(ふいちやう)(いた)しますが、199それでも貴方(あなた)にとつてお差支(さしつかへ)(ござ)いますまいか。200()しそんな(こと)出来(でき)ないと仰有(おつしや)るなら、201サア(この)()でキツパリと言明(げんめい)して(くだ)さい。202一寸(いつすん)(むし)五分(ごぶ)(たましひ)とやら、203(わらは)にも(かんが)へが(ござ)いますからな』
204 夫婦(ふうふ)はシノブの言葉(ことば)(ひと)(ひと)(きり)胸先(むなさき)を、205()まるる(ごと)(くるし)みを(かん)(なが)ら、
206()『イヤ、207(おそ)()りました。208明日(あす)とも()はず今日(けふ)只今(ただいま)より貴女(あなた)主君(しゆくん)(あが)(まつ)209女帝様(によていさま)(まをし)()げますから、210何卒(なにとぞ)さう(はら)()てず落付(おちつ)いて(くだ)さいませ』
211サクラ『(をつと)(まをし)()げました(とほ)(わたくし)女帝殿下(によていでんか)尊敬(そんけい)し、212今日(けふ)(ただ)(いま)より臣下(しんか)(れい)(もつ)(つか)へませう』
213シノブ『ホヽヽヽヽうまい(こと)仰有(おつしや)いますな。214そんな(こと)()つて(わらは)安心(あんしん)させ、215暗打(やみうち)でも(あそ)ばす御計画(ごけいくわく)でせう。216今日(こんにち)(まで)貴方(あなた)(がた)のやり(かた)から推定(すいてい)しても、217その(くらゐ)(こと)は、218貴方(あなた)にとつては(よひ)(くち)ですからね』
219 かかる(ところ)へカーク、220サーマンの二人(ふたり)(あわただ)しく(かへ)()て、
221右守様(うもりさま)(まをし)()げます。222タヽヽ大変(たいへん)(こと)突発(とつぱつ)(いた)しました』
223 右守(うもり)(この)言葉(ことば)二度(にど)ビツクリし(なが)ら、224(にはか)(さけ)(よひ)()め、225片膝(かたひざ)立直(たてなほ)して、
226(なに)227大変(たいへん)(おこ)つたとは、228何処(どこ)にだ。229サア(はや)()はないか』
230カ『ハイ(まをし)()げるつもりで吾々(われわれ)両人(りやうにん)がスタスタと(あわ)てて(かへ)つて(まゐ)つたのです。231(まをし)()げなくて(なん)(いた)しませう。232太子殿下(たいしでんか)(はじ)めスバール(ひめ)は、233三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(たす)けられ、234(こま)(またが)つて堂々(だうだう)城内(じやうない)にお(かへ)(あそ)ばす(こと)になりました。235そしてエールの君様(きみさま)岩山(いはやま)(かみ)(もり)(おい)て、236大女(おほをんな)のバランスに、237首筋(くびすぢ)をつまんでインデス(がは)()()まれ、238川中(かはなか)岩石(がんせき)(あたま)(うち)()られ、239川水(かはみづ)(あけ)()めて、240ブカンブカンと(なが)れて(しま)はれました。241グヅグヅしとる(とき)ぢや(ござ)いますまい。242右守様(うもりさま)243貴方(あなた)のお(くび)(あやふ)(ござ)いますよ』
244サクレ『(うそ)ぢやないか、245そんな(こと)のあらう(はず)がない』
246サ『(けつ)して(けつ)して、247(たれ)(うそ)なんか(まを)しませうぞ。248正真正銘(しやうしんしやうめい)249ありのままの事実(じじつ)注進(ちうしん)(ござ)います』
250サクラ『それだから、251いつも貴方(あなた)()をつけなさいませと御意見(ごいけん)(まを)したではありませぬか。252一体(いつたい)貴方(あなた)頭脳(づなう)は、253(あま)粗末(そまつ)()ぎますから、254こんな失敗(しつぱい)出来(でき)るのですよ、255エー口惜(くやし)い、256どうしたら(よろ)しいのかな』
257シ『イツヒヽヽヽヽ右守(うもり)さま、258もう()うなりや(わらは)女帝(によてい)も、259貴方(あなた)大名総監(だいみやうそうかん)もサツパリ駄目(だめ)です。260(をとこ)らしく覚悟(かくご)なさいませ。261(いな)自決(じけつ)(あそ)ばせ。262(じつ)(ところ)王女(わうぢよ)のバンナ(ひめ)(さま)(わたし)が、263うまくちよろまかして、264城内(じやうない)からおびき()し、265インデス(がは)(ほとり)(くび)()め、266川中(かはなか)()()んでおきましたから、267エールさまと一緒(いつしよ)(おな)じインデス(かは)水盃(みづさかづき)でもしてゐらつしやるでせうよ。268もう()うなつた以上(いじやう)()(どく)(なが)ら、269貴方(あなた)のお(いへ)断絶(だんぜつ)270(つみ)(かる)うて切腹(せつぷく)271まさか(ちが)へば逆磔刑(さかはりつけ)ですよ。272(わらは)だつて、273最早(もはや)安閑(あんかん)としては()られませぬ。274サア右守(うもり)さま、275介錯(かいしやく)をして()げますから(はら)をお()りなさいませ。276そして奥様(おくさま)(くび)でも()るか、277溜池(ためいけ)にでも()()げて、278(はや)くその製糞器(せいふんき)片付(かたづ)けなさいませ。279グヅグヅしてゐると死後(しご)(まで)(はぢ)をさらされますよ。280(わたくし)冥土(めいど)のお(とも)(いた)します。281(すで)(すで)懐剣(くわいけん)用意(ようい)して(まゐ)りました。282この鋭利(えいり)短刀(たんたう)喉笛(のどぶえ)()るが最後(さいご)283結構(けつこう)結構(けつこう)天国(てんごく)国替(くにがへ)()段取(だんどり)ですわ』
284 かく(たがひ)()(をは)りの相談(さうだん)をやつてゐる(ところ)門前(もんぜん)(にはか)(さわ)がしく、285目付頭(めつけがしら)数百(すうひやく)部下(ぶか)(したが)へ、286右守(うもり)(やかた)十重(とへ)二十重(はたへ)取巻(とりま)き、2861頭役(かしらやく)(みづか)数名(すうめい)目付(めつけ)(とも)()(きた)り、
287『サクレンス、288サクラン、289シノブ三人(さんにん)とも御用(ごよう)だ。290神妙(しんめう)()(まは)せ』
291呶鳴(どな)(なが)292(ふところ)より捕縄(とりなは)()無雑作(むざふさ)三人(さんにん)(きび)しく(かた)(しば)()げてしまつた。
293大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 北村隆光録)