霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第六章 背水会(はいすいくわい)〔一七五一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻 篇:第1篇 清風涼雨 よみ:せいふうりょうう
章:第6章 第69巻 よみ:はいすいかい 通し章番号:1751
口述日:1924(大正13)年01月22日(旧12月17日) 口述場所:伊予 山口氏邸 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1927(昭和2)年10月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
珍の城下に愛州(国愛別)は数百人の子分を集め、賭場を開帳しています。賭場の表看板には、世の風潮・施政を風刺した文句を金文字で大きく掲げてあります。
その看板を見て、一人の取締りが親分に会いたいとやってきます。取締りは、役頭の命令で風刺看板を取り下げさせにやってきたのでした。
応対に出た愛州の子分、照公は逆に、今の政治を批判し、取締り(佐吉)を仲間にしようと口説きます。佐吉は照公の言霊に打たれ、看板を取り下げさせに来たのがあべこべに侠客になってしまいます。
一方、大親分の愛州は二三人の幹部と共に、都の街頭に立って大演説を始めます。偽善・虚偽の生活を捨て、新しい思想に目覚めよ、と呼びかける愛州を、数十人の取締りが取り囲み、しょっ引かれます。愛州は城の牢獄に投げ込まれてしまいました。
大親分が囚われたと聞いた子分たちは手に手に武器を持って牢獄へ押しかけ、付近はたいへんな混乱・闘争が繰り広げられます。
そこへ現れたのは、馬に乗った春乃姫でした。春乃姫はまず、取締りたちを退散させ、侠客たちにも声をかけます。
子分の源州は、親分・愛州を返して欲しいと自分たちの願いを申し上げます。春乃姫は、十日の間にきっと愛州を開放すると約束します。子分たちはそれを聞いて春乃姫に感謝し、帰っていきますが、果たしてこの結果はどうなるでしょうか。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6906
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 305頁 修補版: 校定版:94頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001 (うづ)城下(じやうか)深溝町(ふかみぞちやう)俥帳場(くるまちやうば)に、002車夫(しやふ)()()んでゐた国愛別(くにちかわけ)愛州(あいしう)は、003取締(とりしまり)(あが)りの幾公(いくこう)(とも)に、004横小路(よここうぢ)()なり(ひろ)邸宅(ていたく)(かり)()け、005賭場(とば)開帳(かいちやう)してゐた。006数百人(すうひやくにん)乾児(こぶん)(たちま)(あつ)まり(きた)り、007親分(おやぶん)々々(おやぶん)尊敬(そんけい)し、008親分(おやぶん)命令(めいれい)とあらば生命(せいめい)鴻毛(こうまう)よりも(かろ)んじ、009如何(いか)なる(こと)にも善悪(ぜんあく)(とも)(その)頤使(いし)(あま)んじ、010(なん)(じゆん)ずるを(もつ)て、011乾児(こぶん)たる(もの)光栄(くわうえい)としてゐた。012愛州(あいしう)普通(ふつう)侠客(けふかく)とは(ちが)つて、013(もと)がヒルの(くに)楓別(かへでわけ)国司(こくし)(せがれ)(だけ)あつて、014何処(どこ)とも()気品(きひん)(たか)く、015(かつ)豪胆(がうたん)にして(すこ)しも(もの)(どう)ぜず、016一旦(いつたん)(たの)まれた(こと)(けつ)して(いや)()はなかつた侠客(をとこだて)である。017()(なか)一般(いつぱん)()(かた)(しやく)(さは)つて(たま)らぬので、018遙々(はるばる)(とほ)山阪(やまさか)()え、019尊貴(そんき)()()てて、020(うづ)(みやこ)(まで)やつて()たのである。
021 (うま)れついての皮肉家(ひにくや)で、022()(なか)革正(かくせい)する(ため)とて、023内面(ないめん)には博奕(ばくち)渡世(とせい)となし、024表看板(おもてかんばん)には万案内所(よろづあんないしよ)()看板(かんばん)金文字(きんもじ)(あら)はしてゐた。
 
025『一、026因循姑息(いんじゆんこそく)(のぞみ)(かた)027最寄(もより)取締所(とりしまりしよ)へお()(くだ)され(たく)(さふらふ)
028一、029頑迷(ぐわんめい)無恥(むち)(のぞみ)(かた)は、030()(ことごと)(にご)(われ)(ひと)()むと自惚(うぬぼ)れてゐる梨田(なしだ)ドラック()へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
031一、032喧嘩(けんくわ)乱暴(らんぼう)(のぞみ)(かた)033惑酔会(わくすゐくわい)へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)034(また)口先(くちさき)(ばか)りの自称(じしよう)対命舎(たいめいしや)(および)政党屋(せいたうや)をお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
035一、036不親切(ふしんせつ)(のぞみ)(かた)037口実職業紹介所(こうじつしよくげふせうかいしよ)へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
038一、039多角関係(たかくくわんけい)(のぞみ)(かた)040妃向国(ひむかのくに)(あたら)しき(むら)へお()相成(あひなり)(たく)(さふらふ)
041一、042偽善生活(ぎぜんせいくわつ)(のぞみ)(かた)043一度(いちど)(はな)(みやこ)一灯園(いつとうゑん)東田(ひがしだ)地香(ちかう)()(かた)をお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)044(しか)(なが)同氏(どうし)(たい)し、045(すこ)しにても利益(りえき)(あた)ふる掛合(かけあひ)ならば(きは)めて親切(しんせつ)取扱(とりあつか)ひくれ(さふらふ)
046一、047山子(やまこ)(だまし)(のぞみ)(かた)048変態愛国者(へんたいあいこくしや)苦糟(にがかす)大異(たいい)へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)049(ただ)畸形的(きけいてき)愛国者(あいこくしや)(かぎ)申候事(まうしさふらふこと)
050一、051没常識(ぼつじやうしき)(のぞみ)(かた)052(うづ)(みやこ)()(つじ)便所(べんじよ)へお()(くだ)され(たく)(さふらふ)
053一、054金儲(かねまうけ)(のぞみ)(かた)055富人世界雑誌社(ふじんせかいざつししや)(ならび)心零犬灸会(しんれいけんきうくわい)同人(どうにん)へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
056一、057厚顔(こうがん)無恥(むち)(のぞみ)(かた)058新聞(しんぶん)ゴロ(および)労働(らうどう)ブローカーへお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
059一、060時代錯誤(じだいさくご)(のぞみ)(かた)061石火暴死団(せきくわばうしだん)へお(たづ)有之(これあり)(たく)(さふらふ)
062一、063(その)()何事(なにごと)()らず矛盾(むじゆん)誤解(ごかい)虚偽(きよぎ)偽善(ぎぜん)とお(のぞみ)(かた)064嘔吐白住持社(へどはくぢうぢしや)へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
065一、066公平社(こうへいしや)争論(さうろん)希望(きばう)(かた)067惑酔会(わくすゐくわい)へお(たづ)(くだ)され(たく)(さふらふ)
 
068()(やう)(おほ)きな看板(かんばん)(かか)げて、069往来(わうらい)(ひと)(あし)()めてゐた。070其処(そこ)(かほ)(しか)めて、071十手(じつて)()げてやつて()一人(ひとり)取締(とりしまり)がある。
072取締(とりしまり)『コリヤコリヤ073当家(たうけ)主人(しゆじん)()るか』
074 門口(かどぐち)()いて()乾児(こぶん)八公(はちこう)取締(とりしまり)姿(すがた)()て、
075『ハイ、076親分(おやぶん)(おく)()られますが、077滅多(めつた)博奕(ばくち)()つて()りやせぬから、078何卒(どうぞ)(かへ)つて(くだ)つせい』
079取締(とりしまり)『イヤ、080博奕(ばくち)(いま)()つて()なくても、081拘引(こういん)せうと(おも)へば何時(いつ)でも拘引(こういん)出来(でき)るのだ。082新刑法(しんけいはふ)()つて賭博常習犯人(とばくじやうしふはんにん)とブラツクリストについて()るのだから、083非現行犯(ひげんかうはん)引張(ひつぱ)つてやらうかな』
084『ヘーン、085そんな(ほそ)(からだ)をして、086キラキラ(ひか)(もの)をブラつかせ威喝(ゐかつ)したつて駄目(だめ)でい。087そんなことに(おどろ)親分(おやぶん)(ござ)いやせぬ(わい)088わつち(たち)仲間(なかま)一遍(いつぺん)でも余計(よけい)芸務所(げいむしよ)(もん)(くぐ)つたら(かほ)()()るのでげすから、089マア(おく)這入(はい)りなさい。090卑怯未練(ひけうみれん)()げる(やう)侠客(けふかく)一人(ひとり)()りませぬよ。091横町(よこちやう)蜈蚣(むかで)権太(ごんた)親分(おやぶん)(やう)に、092取締(とりしまり)()たと()ふて二階(にかい)から(とび)()し、093(すね)()つたり、094(うで)()つたりして、095()(つか)まる(やう)なヘマなこたア(いた)しやせぬ』
096取締(とりしまり)(きさま)では(わけ)(わか)らぬ、097親分(おやぶん)此処(ここ)()んで()い』
098(はち)『ヘン、099吾々(われわれ)()つては神様(かみさま)同様(どうやう)に、100(いのち)(まで)(ささ)げて(つか)へてる親分(おやぶん)101さう易々(やすやす)(うご)かす(わけ)には()きやせぬ(わい)102愚図(ぐづ)ぐづして()ると、103(まへ)さま、104(かさ)(だい)()くなりますよ。105(はや)御帰(おかへ)りなさい』
106 ()(はな)して()(ところ)へ、107(おく)から兄貴分(あにきぶん)照公(てるこう)二三人(にさんにん)兄弟分(きやうだいぶん)(とも)(あら)はれ(きた)り、
108(てる)『ナヽ(なん)(なん)だ』
109(はち)兄貴(あにき)110(いま)(この)取締先生(とりしまりせんせい)が、111ゲン(くそ)(わる)112(あさ)つぱらからやつて()て、113グヅグヅ()つてるのだ。114(おら)昨晩(ゆうべ)()けて()て、115今日(けふ)はムカついて(たま)らないのに、116グヅグヅ()かすんだもの、117(しやく)(さは)つて仕方(しかた)がねいんだ。118(はや)くボツ(かへ)して()れないかね』
119(てる)『ヘー、120わつちや、121愛州(あいしう)乾児(こぶん)でげして、122照公(てるこう)(まを)し、123チツタア、124(うづ)(みやこ)()()られた、125ケチな野郎(やらう)でげす。126どうかお見知(みし)りおかれまして、127可愛(かあい)がつて(くだ)せい。128侠客渡世(けふかくとせい)はして()りましても、129(つら)にも似合(にあ)はねえ(やさ)しい(をとこ)でげすよ。130八公(はちこう)がどんな無礼(ぶれい)なことを(まを)しやしたか()りやせぬが、131如何(どう)かわつちの(つら)(めん)じて(ゆる)してやつて(くだ)つせえ。132そして今日(けふ)(いで)になつたのは(なん)御用(ごよう)でげすかなア』
133取締(とりしまり)(ほか)でもない、134役頭(やくがしら)命令(めいれい)()つて、135当家(たうけ)看板(かんばん)撤回(てつくわい)させに()たのだ。136不穏文書(ふおんぶんしよ)張出(はりだ)し、137()しからぬと()ふので、138(たれ)(わけ)(わか)(をとこ)屯所(とんしよ)(まで)()(もら)ひたいのだ。139そして一時(いちじ)(はや)本漢(ほんかん)()(まへ)引落(ひきおと)し、140片付(かたづ)けて(しま)ひ、141人心悪化(じんしんあくくわ)(きよく)(たつ)した今日(こんにち)142斯様(かやう)看板(かんばん)掲載(けいさい)されたら、143取締所(とりしまりしよ)として黙過(もくくわ)する(わけ)にや()かない。144サ、145(はや)くお(かみ)命令(めいれい)だ、146撤回(てつくわい)しろ』
147(てる)(なん)御用(ごよう)かと(おも)へば、148わつちの商売(しやうばい)看板(かんばん)()れと仰有(おつしや)るのですか、149ソリヤなりませぬ』
150取締(とりしまり)『お(かみ)許可(きよか)()けた(うへ)で、151掲揚(けいやう)するならしても()からう。152()(かく)(すみやか)()ろしたが()からう』
153(てる)『あゝ、154コリヤわつちんとこの親分(おやぶん)商売(しやうばい)でげすから、155商売(しやうばい)妨害(ばうがい)(まで)は、156(なに)(ほど)取締権(とりしまりけん)絶対(ぜつたい)だと()つても、157其処(そこ)(まで)干渉(かんせう)出来(でき)ますまい。158(だん)じて撤廃(てつぱい)(いた)しませぬ。159(そもそ)(この)案内(あんない)看板(かんばん)()いてあることは(すこ)しも虚偽(きよぎ)はありませぬ。160事実(じじつ)()りの(まま)(こと)(しる)してあるのですから、161(べつ)詐欺(さぎ)でもなければ悪事(あくじ)でもありますまい。162事実(じじつ)のことをやつて()るのが(わる)いのですか。163こんな(ちひ)さいことを(とが)めるよりも、164モツト(おほ)きい泥棒(どろばう)をお調(しら)べなさいやせ。165何十万円(なんじふまんゑん)166何百万円(なんびやくまんゑん)()大泥棒(おほどろばう)が、167玩具(おもちや)をピカつかせて、168都大路(みやこおほぢ)横行(わうかう)濶歩(くわつぽ)してるのが、169貴方(あなた)(がた)のお()につきませぬか。170自分(じぶん)(かね)自分(じぶん)勝負(しようぶ)してるのに、171賭博犯(とばくはん)だと()つて、172拘引(こういん)したり、173(らう)()()んだり、174そんな(すゑ)(すゑ)問題(もんだい)(あたま)(なや)ますより、175(はふ)権威(けんゐ)極端(きよくたん)発揮(はつき)し、176天下(てんか)大道(だいだう)白昼(はくちう)横行(わうかう)してる大泥棒(おほどろばう)()げなさい。177(なに)(ほど)(その)(はう)国家(こくか)(ため)だか()れやせぬよ。178(まへ)さまも(わづ)かな月給(げつきふ)でチボの(あと)()ひかけたり、179(かど)片肌(かたはだ)()いだり小便(せうべん)こいてる人間(にんげん)(しか)()ばしてるよりも、180どうだい、181(おれ)(たち)仲間(なかま)這入(はい)つて、182一生(いつしやう)面白(おもしろ)可笑(をか)しく快活(くわいくわつ)(くら)したら、183()いでせう、184どうでげす』
185取締(とりしまり)生活(せいくわつ)(みち)保証(ほしよう)して()れるだらうな』
186(てる)(うち)親分(おやぶん)(たの)むと()はれて、187(あと)()(やう)(やす)つぽい腰抜男(こしぬけをとこ)とは(ちが)ひやす。188サアサア合羽(かつぱ)()いだり()いだり、189ヤ、190(をとこ)決心(けつしん)第一(だいいち)だ。191()うやつて()()取締(とりしまり)(かた)(ぱし)から乾児(こぶん)にし、192(うづ)(みやこ)取締(とりしまり)一人(ひとり)()(とこ)(まで)やつてやらうと()ふ、193背水会(はいすいくわい)主義(しゆぎ)綱領(かうりやう)だ』
194取締(とりしまり)『イヤ、195モウ(きみ)(たち)(かか)つたら命武者(いのちむしや)だから仕方(しかた)がない。196そんなら(ぼく)も、197女房(にようばう)があるでなし、198何時(いつ)(おん)とか(めん)とかを(もら)ふか(わか)らぬのだから、199安全地帯(あんぜんちたい)親分(おやぶん)膝下(しつか)(ひざまづ)くことにせうかな』
200(てる)『ヨーシ、201(のみ)()んだ。202直接(ちよくせつ)親分(おやぶん)乾児(こぶん)にはなれぬぞ。203(おれ)直参(ぢきさん)だ。204(おれ)(うへ)には(また)兄貴(あにき)がある。205(その)兄貴(あにき)兄貴(あにき)兄貴(あにき)親分(おやぶん)大親分(おほおやぶん)だ。206()軍隊(ぐんたい)()へば、207(おれ)少佐(せうさ)(ぐらゐ)(もの)だから、208さう(おも)うて(おれ)()ふことを()くのだぞ。209(その)(かは)りに三日(みつか)(めし)()はぬと()らうとママだし、210(かん)(うち)(はだか)(ふる)はうとママだし、211アイサに拳骨(げんこつ)(ふた)つや()()はされようとママだから、212マアさうして胆力(たんりよく)()るのだなア、213アツハヽヽヽ』
214取締(とりしまり)『ウツフツフヽ』
215 取締(とりしまり)()佐吉(さきち)()つた。216到頭(たうとう)照公(てるこう)言霊(ことたま)(うち)(まく)られて、217取締(とりしまり)から侠客社会(けふかくしやくわい)背進(はいしん)して(しま)つた。
218 大親分(おほおやぶん)愛州(あいしう)二三(にさん)幹部(かんぶ)(ともな)ひ、219裏口(うらぐち)からソツと()()(うづ)(みやこ)十字街頭(じふじがいとう)()ちつつ呶鳴(どな)(はじ)めた。220群衆(ぐんしう)喧嘩(けんくわ)だ、221狂人(きやうじん)だ、222大事件(だいじけん)突発(とつぱつ)だと口々(くちぐち)(よば)はり(なが)ら、223(あり)(ごと)くに愛州(あいしう)周囲(しうゐ)取捲(とりま)いた。224愛州(あいしう)手近(てぢか)にあつた饂飩屋(うどんや)牀几(しやうぎ)無断(むだん)道路(だうろ)真中(まんなか)()(ぱり)()し、225(その)(うへ)直立(ちよくりつ)して雷声(らいせい)()()げ、
226(うづ)(くに)(まも)ると()武士(ぶし)(たち)よ。227(なんぢ)自己愛的(じこあいてき)なる(いか)めしき鎧甲(よろひかぶと)()げ。228排他(はいた)猜疑(さいぎ)狡猾(かうくわつ)無恥(むち)とに(かざ)られた宗教家(しうけうか)よ、229(なんぢ)(ちやく)する法衣(はふい)()げ。230政治家(せいぢか)教育家(けういくか)一般衆生(いつぱんしゆじやう)も、231(なんぢ)朝夕(てうせき)()(まと)へる虚偽(きよぎ)虚礼(きよれい)虚飾(きよしよく)衣服(いふく)()げ。232更始(かうし)革新(かくしん)今日(こんにち)233一切(いつさい)旧衣(きうい)()て、234(あた)らしき(あい)(しん)との浄衣(じやうい)着替(きか)へよ。235(なんぢ)()(まと)へる旧衣(きうい)に、236(ふる)思想(しさう)矛盾(むじゆん)(のみ)()ぐつて()る。237偽善的(ぎぜんてき)精神(せいしん)奴隷的(どれいてき)根性(こんじやう)蛆虫(うじむし)(はびこ)つて()るぞ。238汝等(なんぢら)(かく)(ごと)弊衣(へいい)()がない(かぎ)り、239(なんぢ)()生活(せいくわつ)虚偽(きよぎ)生活(せいくわつ)だ、240(まこと)人間生活(にんげんせいくわつ)では()いぞ。241人間(にんげん)として242人間(にんげん)生活(せいくわつ)出来(でき)ない(くらゐ)(つま)らぬものは()からうぞ。243一時(いちじ)(はや)()(さま)せよ。244一時(いちじ)(はや)(あた)らしき浄衣(じやうい)()かへて真実(しんじつ)人間生活(にんげんせいくわつ)()れよ。245この浄衣(じやうい)には人間生活(にんげんせいくわつ)必要(ひつえう)なる新思想(しんしさう)光明(くわうみやう)燦然(さんぜん)として(かがや)いて()るぞ。246(かん)ばしき蘭麝(らんじや)()()ちて()るぞ。247(なに)愚図(ぐづ)々々(ぐづ)躊躇(ちうちよ)するか。248万々一(まんまんいち)この更衣(かうい)神業(しんげふ)妨害(ばうがい)するものあらば、249汝等(なんぢら)仇敵(きうてき)として其奴(そいつ)(たふ)せ。250(しか)らずんば汝等(なんぢら)(みづか)(ちやく)せる旧衣(きうい)(ため)自滅(じめつ)厄難(やくなん)()ふであらう。251(この)目的(もくてき)貫徹(くわんてつ)するには、252何人(なにびと)背水(はいすい)(ぢん)()つてかかれ。253(これ)(くらゐ)(こと)出来(でき)(やう)では、254人間(にんげん)としての価値(かち)絶無(ぜつむ)だ。255(てい)()人間(にんげん)廃業(はいげふ)したが()からう。256(ぼく)背水会(はいすいくわい)会長(くわいちやう)泥池(どろいけ)蓮公(はすこう)さまだ。257権門勢家(けんもんせいか)()()るな。258金銀(きんぎん)(こし)(くつ)するな。259時代(じだい)浸々乎(しんしんこ)として(うしほ)(ごと)急速(きふそく)(なが)れて()るぞ。260(うづ)(くに)衆生(しゆじやう)文明(ぶんめい)世界(せかい)()ける落伍者(らくごしや)(もつ)(あま)んずるものでは()からう。261(かしこ)くも神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)子孫(しそん)神臨(しんりん)(たま)光輝(くわうき)ある歴史(れきし)()つた国民(こくみん)では()いか。262豪毅(がうき)果断(くわだん)とは汝等(なんぢら)祖先(そせん)以来(いらい)特性(とくせい)ではないか。263(とき)(いま)なり、264(とき)(いま)なり、265三千万(さんぜんまん)同胞(どうはう)266背水会(はいすいくわい)宣言(せんげん)綱領(かうりやう)()()ませ』
267滔々(たうたう)として傍若無人的(ばうじやくぶじんてき)演説(えんぜつ)する(とき)しも、268数十人(すうじふにん)取締(とりしまり)前後左右(ぜんごさいう)より襲来(しふらい)して愛州(あいしう)引摺(ひきず)()とした。269群衆(ぐんしう)はワアイワアイと動揺(どよ)めき()ち、270衆生(しゆじやう)取締(とりしまり)との血迷(ちまよ)(さわ)ぎが各所(かくしよ)(えん)ぜられた。
271 愛州(あいしう)(かう)不幸(ふかう)か、272数十人(すうじふにん)取締(とりしまり)取巻(とりま)かれ、273高手(たかて)小手(こて)(しば)()げられ、274ボロ自動車(じどうしや)()せられて、275(うづ)城下(じやうか)(くら)牢獄(らうごく)投込(なげこ)まれて(しま)つた。276数多(あまた)乾児(こぶん)(ども)(この)(はなし)()くより、277躍気(やくき)となり、278(れつ)(つく)つて赤襷(あかだすき)赤鉢巻(あかはちまき)をし(なが)ら、279棍棒(こんぼう)280竹槍(たけやり)281薙刀(なぎなた)282水鉄砲(みづてつぱう)(など)(たづさ)へ、283牢獄(らうごく)めがけて(うしほ)(ごと)(おし)()せ、284(たちま)附近(ふきん)修羅(しゆら)(ちまた)(くわ)して(しま)つた。285取締(とりしまり)逐々(おひおひ)繰出(くりだ)す。286時々刻々(じじこくこく)侠客(けふかく)連中(れんちう)得物(えもの)()つて蝟集(ゐしふ)(きた)る。287一方(いつぱう)百人(ひやくにん)()ゆれば一方(いつぱう)百人(ひやくにん)()ゆるといふ有様(ありさま)で、288(ひと)(もつ)附近(ふきん)広場(ひろば)(うづ)めらめた。289そこへ弥次馬(やじうま)侠客(けふかく)声援(せいゑん)をなすべく、290面白半分(おもしろはんぶん)にやつて()て、291(うしろ)(はう)から(いし)()げる。292(たちま)大混乱(だいこんらん)大争闘(だいそうとう)(まく)がおりた。293そこへ(あに)在所(ありか)(たづ)ねてゐた春乃姫(はるのひめ)は、294葦毛(あしげ)(うま)(むちう)ち、295(この)()にかけ(きた)群集(ぐんしふ)(さわ)ぐのを()て、296まつしぐらにかけ()り、297馬上(ばじやう)につつ()(なが)ら、
298春乃(はるの)双方(さうはう)(とも)299解散(かいさん)せよ』
300(やさ)しい(すず)しいカン(ごゑ)(よば)はつた。301数多(あまた)取締(とりしまり)春乃姫(はるのひめ)姿(すがた)()て、302抗弁(かうべん)する(わけ)にもゆかず、303唯々諾々(いいだくだく)として一人(ひとり)(のこ)らず根拠地(こんきよち)引上(ひきあ)げて(しま)つた。304(あと)にワイワイと(とき)(こゑ)をあげて、305侠客(けふかく)乾児連(こぶんれん)弥次馬(やじうま)がドヨメキ()つてゐる。306春乃姫(はるのひめ)一同(いちどう)(むか)ひ、
307如何(いか)なる間違(まちがひ)()らぬが、308(わらは)がキツとあとを()いてあげるから、309一先(ひとま)づお退()きなさい』
310 乾児(こぶん)源州(げんしう)(おそ)(おそ)(まへ)(あら)はれ、
311今日(こんにち)場合(ばあひ)となつては、312(あと)へひくことは出来(でき)ませぬが、313国司(こくし)(さま)のお()(さま)のお言葉(ことば)(かしこ)み、314一先(ひとま)()()退却(たいきやく)(いた)します。315(わたし)(うづ)(みやこ)侠客(けふかく)愛州(あいしう)身内(みうち)(もの)316親分(おやぶん)愛州(あいしう)取締(とりしまり)(ため)(とら)へられ牢獄(らうごく)(とう)ぜられましたので、317(これ)取返(とりかへ)さむと乾児(こぶん)(ども)押寄(おしよ)せました(ところ)(ござ)います。318何分(なにぶん)(よろ)しくお(ねがひ)(まを)しやす』
319春乃(はるの)『あゝさうであつたか。320親分(おやぶん)一人(ひとり)(ため)に、321数多(あまた)乾児(こぶん)(いのち)をすてて(すくひ)()たのか、322感心(かんしん)だ。323人間(にんげん)はさうなくてはならぬ。324(しか)(なが)窮屈(きうくつ)法規(はふき)()かれてある法治国(はふちこく)だから、325(わらは)自由(じいう)にさう着々(ちやくちやく)解放(かいはう)する(わけ)にはゆかぬ。326(しか)(なが)(わらは)仲裁(ちうさい)這入(はい)つた以上(いじやう)は、327キツト汝等(なんぢら)親分(おやぶん)(すく)()無事(ぶじ)(わた)すであらう。328()安心(あんしん)して引取(ひきと)つて(くだ)さい。329(いま)すぐといふ(わけ)にもゆくまいが、330今後(こんご)十日(とをか)(あひだ)にはキツト(たす)けてやる(ほど)に、331(わらは)言葉(ことば)信用(しんよう)して(はや)くお退()きなさい』
332 源州(げんしう)有難涙(ありがたなみだ)にくれ(なが)ら、
333何分(なにぶん)(よろ)しくお(ねがひ)(まをし)ます』
334幾度(いくど)(あたま)()げ、335数多(あまた)乾児(こぶん)(ひき)つれて、336横小路(よここうぢ)親分館(おやぶんやかた)へと(かへ)つて()く。337あゝ(この)結果(けつくわ)如何(いか)落着(らくちやく)するであらうか。
338大正一三・一・二二 旧一二・一二・一七 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)