霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一七章 琴玉(ことたま)〔一七六二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻 篇:第4篇 新政復興 よみ(新仮名遣い):しんせいふっこう
章:第17章 琴玉 よみ(新仮名遣い):ことたま 通し章番号:1762
口述日:1924(大正13)年01月24日(旧12月19日) 口述場所:伊予 山口氏邸 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1927(昭和2)年10月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
国愛別の祖国、ヒルの国(=インカ国=日の神の子孫の国)もまた、珍の国と同様、常世国より来た悪思想により人心動揺し、社会は不穏な形勢となっていた。
折りしも国司・楓別命の長子・国愛別が逐電したというので、長老秋山別・モリスは国内をくまなく捜索したが行方を得られなかった(実は珍の国で侠客として活躍していたことは、これまでの物語に述べられている)。
そこで、やむなく妹の清香姫を世継として立てていた。
清香姫は、兄がこの国家の危機を立て替えなおそうと、まずは世情の調査の為に城を抜け出したことを知っていた。城に居ては、昔かたぎの両親や長老たちが、新しい考え方をさえぎるばかりであったからである。
清香姫の意見も常に入れられず、国家の刷新を神明に祈って、ただ身はやせ衰えるばかりであった。
ところが、秋山別、モリスの両老は姫の様子を見て、恋の病と勘違いし、婿選びの準備をはじめてしまう。これに愛想をつかした清香姫はついに、兄と同じように城を出て国の改革に身を投じようと決心するに至る。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-11-20 15:29:34 OBC :rm6917
愛善世界社版:239頁 八幡書店版:第12輯 360頁 修補版: 校定版:251頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001 (かみ)(めぐみ)(かげ)もなき、002()さへ目出(めで)たきヒルの(くに)高倉山(たかくらやま)本城(ほんじやう)003堅磐(かきは)常磐(ときは)(みやこ)中央(ちうあう)下津(したつ)岩根(いはね)厳然(げんぜん)(たち)(なら)び、004三五(あななひ)(うず)(をしへ)(とも)国家(こくか)益々(ますます)隆昌(りうしやう)(おもむ)き、005日暮河(ひぐらしがは)清流(せいりう)(きよ)(みやこ)中心(ちうしん)(なが)れて、006交通(かうつう)運輸(うんゆ)便宜(べんぎ)よく、007げに地上(ちじやう)天国(てんごく)(たた)へらるるに(いた)つた。
008 楓別(かへでわけの)(みこと)009清子姫(きよこひめ)二人(ふたり)(あひだ)国愛別(くにちかわけ)010清香姫(きよかひめ)一男(いちなん)一女(いちぢよ)があつた。011祖先(そせん)清彦(きよひこ)日出(ひのでの)(かみ)神徳(しんとく)()けて、012(ここ)にインカ(こく)なるものを()て(()(かみ)子孫(しそん)()013衆生(しゆじやう)崇敬(すうけい)(まと)となつてゐた。014衆生(しゆじやう)楓別(かえでわけの)(みこと)国司(こくし)(あふ)ぎ、015大師(だいし)(あが)め、016(おや)(した)しみ、017上下(しやうか)一致(いつち)(あま)(わづら)はしき法規(はふき)もなく、018(きは)めて平穏(へいおん)無事(ぶじ)(さか)えてゐた。019(しか)るに常世国(とこよのくに)より交通(かうつう)機関(きくわん)発達(はつたつ)につれて、020種々(しゆじゆ)悪思想(あくしさう)往来(わうらい)し、021比類(ひるゐ)なき天国(てんごく)瑞祥(ずゐしやう)(あら)はしたる(この)神国(しんこく)も、022(いま)(やうや)人心(じんしん)動揺(どうえう)し、023個人(こじん)主義(しゆぎ)(をしへ)発達(はつたつ)して、024遊惰(いうだ)(もの)(おほ)(あら)はれ、025不良(ふりやう)老年(らうねん)026不良(ふりやう)中年(ちうねん)少年(せうねん)上下(しやうか)()ち、027()(わす)()(はし)り、028(あたか)常世(とこよ)(くに)状態(じやうたい)となり、029国司(こくし)(かる)んじ、030役人(やくにん)(いや)しめ、031民心(みんしん)悪化(あくくわ)して不安(ふあん)空気(くうき)国内(こくない)にみちて()た。032楓別(かへでわけの)(みこと)033清子姫(きよこひめ)朝夕(てうせき)(かみ)(いの)り、034国家(こくか)隆昌(りうしやう)衆生(しゆじやう)安寧(あんねい)(あさ)(ゆふ)なに国魂(くにたま)(みや)祈願(きぐわん)しつつあつた。035何時(いつ)()にやら世子(せいし)たるべき国愛別(くにちかわけの)(みこと)姿(すがた)(かく)し、036行衛(ゆくへ)不明(ふめい)となつて(しま)つた。037楓別(かへでわけ)夫婦(ふうふ)(はじ)め、038秋山別(あきやまわけ)039モリスの両老(りやうらう)(ひたひ)青筋(あをすぢ)をたて、040部下(ぶか)役人(やくにん)(とく)して国内(こくない)(くま)なく捜索(そうさく)すれ(ども)041(なん)手掛(てがか)りもなかつた。042(ここ)(おい)てか()むを()ず、043大会議(だいくわいぎ)(ひら)いた結果(けつくわ)044(いもうと)清香姫(きよかひめ)をしてヒルの(くに)世子(せいし)とする(こと)となつた。
045 清香姫(きよかひめ)(あに)(みこと)同様(どうやう)046時勢(じせい)()()にブル階級(かいきふ)()なるを()り、047如何(いか)にもして(わが)国家(こくか)(すく)はむと肝胆(かんたん)(くだ)きつつあつた。048されども昔気質(むかしかたぎ)両親(りやうしん)(はじ)め、049時勢(じせい)(まなこ)(くら)老臣(らうしん)()一々(いちいち)清香姫(きよかひめ)意見(いけん)反対(はんたい)し、050いつも(もち)ひられなかつた。051清香姫(きよかひめ)国家(こくか)前途(ぜんと)(おも)(うか)べて()もロクに(ねむ)られず、052神明(しんめい)(いの)つて、053国家(こくか)(わだか)まる妖雲(えううん)一掃(いつさう)し、054(あたら)しき天地(てんち)(ひら)かむと、055それのみに(こころ)(くだ)いて、056()()()(やせ)(おとろ)ふる(ばか)りであつた。
057 モリス、058秋山別(あきやまわけ)老臣(らうしん)城内(じやうない)評議所(ひやうぎしよ)(くび)(あつ)めて、059心配気(しんぱいげ)何事(なにごと)(ささや)()つてゐる。
060秋山(あきやま)『モリス殿(どの)061(この)(ごろ)(ごと)(ひめ)(さま)()様子(やうす)062(おん)()()(おも)はるるかな』
063モリス『左様(さやう)(ござ)る、064(さつ)する(ところ)065()(やまひ)ではあるまいかと()(あん)(まを)してゐるのだ。066貴殿(きでん)()(かんが)へもヤハリ気病(きやまひ)(おも)はれるだらうな』
067秋山(あきやま)『いーかにも、068左様(さやう)(ござ)らう。069(いま)から(おも)(いだ)せば、070拙者(せつしや)貴殿(きでん)も、071紅井姫(くれなゐひめ)(さま)072エリナ(さま)について(こひ)におち、073(つひ)にはシーズン(がは)(なん)()つたと()歴史(れきし)(ござ)れば、074まして妙齢(めうれい)美人(びじん)075恋病(こひやまひ)(わづら)(たま)ふは当然(たうぜん)(ござ)らう。076(いち)()(はや)適当(てきたう)()養子(やうし)(むか)へて(ひめ)(さま)御心(みこころ)(なぐさ)めねばならうまい。077いつも(ひめ)(さま)が、078吾々(われわれ)(たい)し、079()()かぬ(ぢい)だ、080()()かぬ(ぢい)だと仰有(おつしや)るが、081(いま)(かんが)へてみれば、082(はや)(わらは)(をつと)()たせ、083()()かぬ(やつ)だ……との(なぞ)であつたかも()れぬ、084(こひ)苦労(くらう)した吾々(われわれ)()(じつ)迂闊(うくわつ)(こと)(ござ)つたワイ』
085両人(りやうにん)(いち)()もなく、086そんな(めう)(ところ)()(まは)して(しま)つたのである。
087秋山(あきやま)『それにしても、088適当(てきたう)()養子(やうし)(えら)まねばなるまいが、089露骨(ろこつ)(ひめ)(さま)(うかがつ)てみたら()うだらうかな』
090モリス『マサカ、091貴女(あなた)(をつと)(たれ)(いた)しませうか……などと、092(あま)失礼(しつれい)で、093いふ(わけ)にもゆかず、094(こま)つたぢやないか』
095秋山(あきやま)『しかし、096候補者(こうほしや)二三(にさん)(にん)物色(ぶつしよく)して、097写真(しやしん)でも()り、098(ひめ)(さま)居間(ゐま)にソツト()らしておき、099(ひめ)(さま)がお()()したら、100ソツト(つくゑ)引出(ひきだし)(をさ)めておかれるだらうし、101()のくはぬ写真(しやしん)は、102あの()気象(きしやう)だから、103屹度(きつと)引裂(ひきさ)くか(すみ)をぬらつしやるに(ちが)ひない。104そして(ひめ)(さま)(こころ)瀬踏(せぶみ)した(うへ)105遠廻(とほまは)しにかけて(さぐ)つてみようでないか、106(これ)老臣(らうしん)たる(もの)肝腎要(かんじんかなめ)御用(ごよう)だらうと(おも)ふ』
107モリス『成程(なるほど)108それでは拙者(せつしや)が、109部下(ぶか)相当(さうたう)家庭(かてい)(そだ)つた清家(せいか)(れん)(せがれ)写真(しやしん)(あつ)めることに(いた)さう。110てもさても()(ところ)()がついたものだ。111惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
112(いさ)()ち、113両老(りやうらう)()(やうや)(さが)つたので(わが)()(かへ)りゆく。
114 (はなし)(かは)つて清香姫(きよかひめ)城内(じやうない)庭園(ていえん)侍女(じぢよ)(とも)逍遥(せうえう)(なが)ら、115ダリヤの(はな)(ふた)()つちぎつて()()(なが)ら、116(わが)居間(ゐま)へと(かへ)つて()た。117()れば(つくゑ)(うへ)に、118なまめかしいハイカラ(をとこ)写真(しやしん)四五(しご)(まい)ズラリと(なら)んでゐる。119清香姫(きよかひめ)一目(ひとめ)()るより侍女(じぢよ)(とほ)ざけ、120(ふすま)密閉(みつぺい)してよくよく()れば、121頑迷(ぐわんめい)固陋(ころう)()清家(せいか)(せがれ)小照(せうせう)であつた。122清香姫(きよかひめ)一々(いちいち)(その)写真(しやしん)点検(てんけん)123写真(しやしん)(うへ)から(すみ)黒々(くろぐろ)一首(いつしゆ)(うた)書添(かきそ)へておいた。
124(この)姿(すがた)()れば()(ほど)(いや)らしき
125根底(ねそこ)(くに)亡者(まうじや)なるらむ』
126 (また)(いち)(まい)写真(しやしん)に、
127『さいこ(づち)目鼻(めはな)をつけたやうな(つら)
128(いま)(うち)たたき(やぶ)()てたし』
129 (また)(いち)(まい)写真(しやしん)(むか)ひ、
130折角(せつかく)()()姿(すがた)(うま)()
131(をんな)()たるあさましさかな』
132 (また)(ひと)つの写真(しやしん)に、
133『どれ()ても(まこと)(たま)(ひと)つだに
134なしと(おも)へば(かな)しくなりぬ』
135 最後(さいご)写真(しやしん)に、
136『チト(ばか)(をとこ)らしくは(おも)へども
137わが()(きみ)となる(たま)でなし』
138楽書(らくがき)をして状袋(じやうぶくろ)()れ、139秋山別(あきやまわけ)140モリス両老殿(りやうらうどの)」と表面(へうめん)(しる)し、141()()つて侍女(じぢよ)()んだ。142侍女(じぢよ)春子(はるこ)(ふすま)(しづ)かに(おし)()け、
143(ひめ)(さま)144(まね)きになりましたのは(なに)御用(ごよう)(ござ)りますか』
145清香(きよか)(はる)146(まへ)()苦労(くらう)だが、147(これ)()つて秋山別(あきやまわけ)148モリスの(ところ)(とど)けて(くだ)さい。149そして返事(へんじ)()くに(およ)ばないから、150(わた)してさへおけばトツトと(かへ)つて()るのだよ』
151 春子(はるこ)は「ハイ、152(かしこ)まりました」と足早(あしばや)()つて()でてゆく。153(あと)清香姫(きよかひめ)一間(ひとま)密閉(みつぺい)し、154二絃琴(にげんきん)取出(とりだ)して(こころ)(しづ)かに述懐(じゆつくわい)(うた)つてゐる。
155(わらは)(よる)なきヒルの(くに)
156高倉城(たかくらじやう)国司(こくし)(むすめ)
157清香(きよか)(ひめ)(うま)()
158(あに)(みこと)諸共(もろとも)
159(つき)(はな)よと(はぐ)くまれ
160(なん)不自由(ふじゆう)(なつ)(よひ)
161(すず)しき浴衣(ゆかた)()にまとひ
162時雨(しぐれ)(かは)船遊(ふなあそ)
163(なに)不自由(ふじゆう)なき上流(じやうりう)
164社会(しやくわい)(そだ)ちし()因果(いんぐわ)
165()有様(ありさま)(あきら)かに
166(さと)(あた)はぬ目無鳥(めなしどり)
167ヒルの御国(みくに)(すゑ)(つひ)
168(よる)暗路(やみぢ)とならむかと
169(おも)へば(かな)足乳根(たらちね)
170(ちち)行末(ゆくすゑ)(はは)()(うへ)
171(すく)はむ(ため)兄妹(おとどい)
172(たがひ)(こころ)(てら)()
173()潮流(てうりう)(したが)ひて
174(あやふ)国家(こくか)(すく)ふべく
175(かみ)(いの)りて()(うち)
176(うれ)しや(とき)(めぐ)()
177(あに)(みこと)逸早(いちはや)
178これの(やかた)()(たま)
179(あさ)(ゆふ)なに(しも)をふみ
180つぶさに世情(せじやう)()(たま)
181(われ)孱弱(かよわ)女子(をみなご)
182(あに)(かは)りて(ただ)一人(ひとり)
183(この)神国(かみくに)(まも)らむと
184(こころ)千々(ちぢ)(くだ)けども
185昔心(むかしごころ)()れやらぬ
186(ちち)(はは)との心意気(こころいき)
187秋山別(あきやまわけ)老臣(らうしん)
188頑迷(ぐわんめい)固陋(ころう)のモリス()
189清家(せいか)とか()無機物(むきぶつ)
190此上(こよ)なき(もの)珍重(ちんちよう)
191(くに)政治(せいぢ)()(つき)
192日向(ひなた)(こほり)(おとろ)へて
193(かみ)()さしのヒルの(くに)
194(うづ)もりゆくこそ(かな)しけれ
195(また)何者(なにもの)悪戯(あくぎ)にや
196(わが)心根(こころね)白雲(しらくも)
197(みたま)(くら)仇男(あだをとこ)
198()しき姿(すがた)(うつ)()
199わが文机(ふづくゑ)(なら)べおく
200(しこ)(たくみ)(おそ)ろしさ
201(さつ)する(ところ)秋山別(あきやまわけ)
202モリスの(たく)みし(わざ)ならめ
203()くなる(うへ)片時(かたとき)
204これの(やかた)()むを()
205(また)誘惑(いうわく)魔神(まがみ)()
206(とら)へられては一大事(いちだいじ)
207(あに)(ちか)ひし神業(かむわざ)
208いつの()にかは()りとげむ
209今宵(こよひ)(やみ)(さいはひ)
210用意(ようい)万端(ばんたん)ととのへて
211侍女(じぢよ)をもつれず(ただ)一女(ひとり)
212(すす)()かなむ(うづ)(くに)
213(やま)(けは)しく(かは)(ふか)
214(あらし)(つよ)(あめ)しげく
215魔神(まがみ)(やから)(おほ)くとも
216(この)()(おも)真心(まごころ)
217(わが)三五(あななひ)大神(おほかみ)
218(かなら)(めで)させ(たま)ひつつ
219(わが)兄妹(おとどい)(のぞ)みをば
220(かなら)()てさせ(たま)ふべし
221今宵(こよひ)(かぎ)りに(この)(やかた)
222()でゆく(わが)()果敢(はか)なさよ
223あゝ足乳根(たらちね)父上(ちちうへ)
224母上(ははうへ)()無事(ぶじ)にましまして
225(わが)兄妹(おとどい)神業(しんげふ)
226完成(くわんせい)するのを()たせませ
227(わが)ゆく(あと)(さぞ)やさぞ
228頑迷(ぐわんめい)固陋(ころう)老臣(らうしん)
229狼狽(うろた)(さわ)(こと)だらう
230(その)有様(ありさま)()のあたり
231()にちらついて(あは)れさも
232一入(ひとしほ)(ふか)(あき)(そら)
233常夜(とこよ)(やみ)(つつ)まれし
234(かな)しき(おも)ひの(うか)ぶかな
235あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
236御霊(みたま)(さち)はひましまして
237清香(きよか)(ひめ)()(ごと)
238いと(たひら)けく(やす)らけく
239()げさせ(たま)へと()(まつ)
240(あさひ)()るとも(くも)るとも
241(つき)()つとも()くるとも
242(うご)かざらましヒルの(くに)
243(つち)()(やま)()(かは)(あふ)
244海嘯(つなみ)(たか)(おそ)ふとも
245(した)岩根(いはね)永久(とことは)
246(きづ)()げたる(この)(しろ)
247千代(ちよ)八千代(やちよ)(くだ)けまじ
248あゝさり(なが)らさり(なが)
249()衆生(しゆじやう)をば如何(いか)にせむ
250思想(しさう)洪水(こうずい)氾濫(はんらん)
251日暮河(ひぐらしがは)堤防(ていばう)
252(まさ)崩壊(ほうくわい)せむとする
253(この)惨状(さんじやう)()(なが)らも
254(なほ)泰然(たいぜん)(ひか)へゐる
255老臣(らうしん)たちの(おろ)かさよ
256(わらは)兄妹(おとどい)()かりせば
257ヒルの(みやこ)衆生(しゆじやう)
258(たちま)修羅(しゆら)畜生(ちくしやう)
259地獄(ぢごく)(ふち)(おちい)らむ
260(まも)らせ(たま)惟神(かむながら)
261(かみ)かけ(ねん)(たてまつ)る』
262一生(いつしやう)懸命(けんめい)(うた)つてゐる。263其処(そこ)(ふすま)(そと)から秋山別(あきやまわけ)264モリスの両人(りやうにん)一度(いちど)に『(ひめ)(さま)々々(ひめさま)』と()ばはつた。265(ひめ)はあわてて(こと)()をやめ、266()らぬ(かほ)にて、
267(その)(こゑ)秋山別(あきやまわけ)268モリス殿(どの)ではないか、269何用(なによう)()らないが、270(ふすま)()けてお這入(はい)りなさい』
271 両人(りやうにん)(ひめ)言葉(ことば)に、2711(わた)りに(ふね)(うち)(よろこ)び、272もみ()(なが)ら、273(ふすま)をあけて()(きた)り、274丁寧(ていねい)辞儀(じぎ)(なが)ら、275何事(なにごと)()()さむとしてモヂモヂしてゐる。
276清香(きよか)最前(さいぜん)277春子(はるこ)()たしてやつた品物(しなもの)は、278(まへ)279受取(うけと)つて()れただらうな』
280秋山(あきやま)『ハイ、281(たしか)拝見(はいけん)(いた)しました。282それに(つい)(ひめ)(さま)()(うかが)(いた)したいので(ござ)いますが、283あの()(まい)写真(しやしん)はヒルの(くに)(おい)ては、284地位(ちゐ)といひ門閥(もんばつ)()ひ、285学問(がくもん)といひ器量(きりやう)といひ、286(もつと)選抜(せんばつ)された、287ヒルの(くに)五人(ごにん)(をとこ)といはれてゐる賢明(けんめい)()()つた名物(めいぶつ)(をとこ)(ござ)ります。288(ひめ)(さま)()年頃(としごろ)289(あま)露骨(ろこつ)(まをし)()げるも如何(いかが)(ぞん)じ、290モリスと相談(さうだん)(うへ)ソツト写真(しやしん)(あつ)めて御意(ぎよい)(うかが)つた次第(しだい)(ござ)います。291(しか)るに(ひめ)(さま)無造作(むざうさ)に、292写真(しやしん)(おもて)(すみ)くろぐろと(うた)をお()きになりましたが、293一向(いつかう)(その)()()ませぬので、294どうぞ御心(みこころ)()(ところ)忌憚(きたん)なく(おほ)()(くだ)さらば、295吾々(われわれ)両人(りやうにん)如何(いか)(やう)とも取計(とりはか)らふで(ござ)りませう』
296 清香姫(きよかひめ)297(なん)()つても今晩(こんばん)都合(つがふ)よく(この)()(にげ)()さねばならぬのだから、298(あま)(おこ)らして警戒(けいかい)(げん)にさせては(かへつ)不利益(ふりえき)(はや)くも合点(がてん)し、299ワザと空呆(そらとぼ)けて、
300清香(きよか)『ホツホヽヽヽ、301(はづか)しいワ、302どうかゆつくり(かんが)へさして頂戴(ちやうだい)303ねえ』
304秋山(あきやま)()(かんが)へなさるも結構(けつこう)(ござ)いませうが、305一時(いつとき)(はや)結婚(けつこん)問題(もんだい)をきめなくては、306吾々(われわれ)老臣(らうしん)(やく)()みませぬ。307(わたくし)(うら)一号(いちがう)二号(にがう)番号(ばんがう)をつけておきましたから、308(ひめ)(さま)のお(くち)から、309一寸(ちよつと)何号(なんがう)だといふ(こと)仰有(おつしや)つて(くだ)さいませぬか』
310清香(きよか)『さうだなア、311一号(いちがう)でもよし、312二号(にがう)でもよし、313三号(さんがう)でも四号(しがう)でも五号(ごがう)でもよしだ、314どうでもよしだ、315ホヽヽヽヽ』
316モ『モシ(ひめ)(さま)317そんなアヤフヤの()返辞(へんじ)をされちや(こま)るぢやありませぬか。318何号(なんがう)なら何号(なんがう)とハツキリ()つて(くだ)さいませ』
319清香(きよか)『ホヽヽ、320一生(いつしやう)(しよう))の(こと)()めるのに、321五号(ごがう)(がふ))では()らぬぢやないか、322モウ五合(ごがふ)(ばか)(あつ)めて()(くだ)さい、323そしたら返辞(へんじ)をするからねえ』
324モ『(ひめ)(さま)325(これ)でまだ()らないと仰有(おつしや)るのですか、326(これ)はモウ第一流(だいいちりう)ですよ。327(あと)はモウ第二流(だいにりう)になりますから、328(とて)もお()()りませぬワ』
329と、330(まる)小間物(こまもの)()店出(みせだ)しをしてるやうな(こと)()つてゐる。
331清香(きよか)『とも(かく)332今日(けふ)(あま)咄嗟(とつさ)(こと)()まらないから、333明日中(あすぢう)に、334(これ)といふのをきめて()返事(へんじ)をする。335両人(りやうにん)(とも)336(とう)さまお(かあ)さまの手前(てまへ)337(よろ)しく(たの)んだぞや』
338 秋山別(あきやまわけ)339モリスの両人(りやうにん)は、340ヤレ(うれ)しや、341(これ)一安心(ひとあんしん)笑顔(ゑがほ)をつくり追従(つゐしよう)タラタラ機嫌(きげん)()(なが)ら、342(あたま)(ふた)()()いて、
343両人(りやうにん)(ひめ)(さま)344左様(さやう)ならば、345一時(いつとき)(はや)()返事(へんじ)をお()(まをし)()げます』
346言葉(ことば)(のこ)してスタスタと(この)()()つて(しま)つた。347清香姫(きよかひめ)はニタリと(わら)ひ、348(また)もや(こと)(とり)よせて(おも)ひの(たけ)(うた)(はじ)めけり。
349大正一三・一・二四 旧一二・一二・一九 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→