霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 折衝戦(せつしようせん)〔一七六九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻 篇:第1篇 花鳥山月 よみ:かちょうさんげつ
章:第2章 第70巻 よみ:せっしょうせん 通し章番号:1769
口述日:1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
キューバーは、大足別の使者と称してトルマン城にやってきて、スコブツエン宗に国を挙げて改宗しなければ、軍隊を差し向ける、と脅す。
王をはじめ左守フーラン・右守スマンヂーら重臣が集まり、善後策を協議していた。
王妃千草姫・右守は慎重派であったが、主戦派の王と左守は慎重論を受け入れない。右守はかえって王妃と不義の疑いを受けてしまう。そして王と左守は戦の準備を始めてしまったのであった。
キューバーは護衛を引き連れて城の奥に入り来たり、返答を強要する。千草姫はキューバーをなだめ置いて時間を稼ぎ、一方右守は再び王と左守に慎重論を採るよう、説得に走る。
しかし、右守は王の逆鱗に触れ、手打ちとなり絶命してしまう。
千草姫は形成不穏を感じ、キューバーを釘付けにするためにキューバーを密室に伴った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7002
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 397頁 修補版: 校定版:22頁 普及版:11頁 初版: ページ備考:
001 トルマン(じやう)会議室(くわいぎしつ)には、002(わう)のガーデンを(はじ)め、003王妃(わうひ)千草(ちぐさ)004左守司(さもりのかみ)フーラン、005右守司(うもりのかみ)スマンヂーの首脳部(しゆなうぶ)(くび)(あつ)めてヒソビソ重要会議(ぢうえうくわいぎ)(ひら)いてゐる。
006ガーデン『エー、007左守(さもり)008右守(うもり)両人(りやうにん)009突然(とつぜん)重大問題(ぢうだいもんだい)勃発(ぼつぱつ)したので、010汝等(なんぢら)両人(りやうにん)急使(きふし)(もつ)引寄(ひきよ)せたのだが、011(その)(はう)智慧(ちゑ)()して(もら)ひたい。012トルマン(ごく)にとつては国家(こくか)興亡(こうばう)一大事(いちだいじ)だから……』
013 左守(さもり)右守(うもり)一度(いちど)にハツと(かうべ)()げ、014(かしこ)まつて、015(わう)第二(だいに)発言(はつげん)()つてゐる。016(わう)()をしばたたき(なが)ら、
017(ほか)でもないが、018昨夜(さくよ)(なか)(ごろ)(しき)りに門戸(もんこ)(たた)(もの)あり。019門番(もんばん)のタマ、020タルの両人(りやうにん)よりの急使(きふし)()り、021寝所(しんじよ)立出(たちい)で、022応接間(おうせつま)(いた)()れば、023大足別(おほだるわけ)将軍(しやうぐん)使者(ししや)(しよう)し、024(この)(ごろ)淫祠邪教(いんしじやけう)を、025(わが)国内(こくない)布教(ふけう)宣伝(せんでん)(いた)()るスコブツエン(しう)のキユーバーと(まを)妖僧(えうそう)026(わが)面前(めんぜん)をも(はばか)らず威丈高(ゐだけだか)となり、027……貴国(きこく)従来(じゆうらい)ウラル(けう)(ほう)じ、028国政(こくせい)補助(ほじよ)となし()らるる(よし)029最早(もはや)命脈(めいみやく)()えたるウラル(けう)(もつ)て、030人心(じんしん)(をさ)めむとするは危険(きけん)(この)(うへ)なかるべし。031(この)(たび)大足別(おほだるわけ)将軍(しやうぐん)032大黒主(おほくろぬし)大命(たいめい)(ほう)じ、033印度(いんど)七千余国(しちせんよこく)をスコブツエン(しう)改宗(かいしう)せしむとの御上意(ごじやうい)034天下(てんか)万民(ばんみん)塗炭(とたん)()より(すく)ひ、035安養浄土(あんやうじやうど)蘇生(そせい)せしめむとの有難(ありがた)御心(みこころ)なれば、036(つつし)んでお()けなされ。037万一(まんいち)違背(ゐはい)(およ)ばば、038仁義(じんぎ)(ぐん)(たちま)虎狼(こらう)爪牙(さうが)(あら)はし、039トルマン(じやう)(ほふ)り、040(わう)(はじ)め、041一般(いつぱん)民衆(みんしう)()をさまし()れむ。042(わう)御答弁(ごたふべん)如何(いかん)()つて、043国家(こくか)安危(あんき)(わか)るる(ところ)044(すみやか)返答(へんたふ)()され……との強談(がうだん)045(その)暴状(ばうじやう)言語(げんご)(ぜつ)し、046立腹(りつぷく)(あま)卒倒(そつたう)せむ(ばか)りに(ぞん)じたが、047いや()少時(しばし)0471(なん)とか()とか(この)()言葉(ことば)(にご)し、048(なんぢ)重臣(ぢうしん)(ども)(した)しく協議(けふぎ)()げ、049(その)(うへ)諾否(だくひ)(けつ)せむと、050キユーバーに(むか)ひ、051三日間(みつかかん)猶予(いうよ)(あた)ふべく(まをし)(わた)せし(ところ)052(かれ)妖僧(えうそう)(いきほひ)053仲々(なかなか)猛烈(まうれつ)にして、054(くび)左右(さいう)()り、055……只今(ただいま)返答(へんたふ)(うけたま)はらむ……との厳談(げんだん)056(かり)にも一国(いつこく)主権者(しゆけんしや)が、057(わづか)一人(ひとり)妖僧(えうそう)圧迫(あつぱく)さるべき理由(りいう)なし。058さり(なが)ら、059(ただ)一言(いちごん)(もと)叱咤(しつた)せむか、060(かれ)(とき)(うつ)さず、061大足別(おほだるわけ)(ぐん)(ひき)ゐて当城(たうじやう)十重(とへ)二十重(はたへ)取囲(とりかこ)まむず鼻息(はないき)062残念(ざんねん)(なが)ら、0621千言万語(せんげんばんご)(つひや)し、063一日(いちにち)猶予(いうよ)()ひ、064返答(へんたふ)すべき(こと)(いた)しておいた。065左守(さもり)066右守(うもり)殿(どの)067如何(いかが)(いた)さば()からうかな』
068左守(さもり)何事(なにごと)かと(ぞん)じ、069()(もの)()(あへ)ず、070登城(とじやう)(いた)し、071(うけたま)はれば容易(ようい)ならざる出来事(できごと)御座(ござ)ります。072(かり)にも一天万乗(いつてんばんじやう)国王殿下(こくわうでんか)(たい)し、073素性(すじやう)(わか)らぬ怪僧(くわいそう)暴言(ばうげん)074聞捨(ききすて)なり(まを)さぬ。075最早(もはや)(この)(うへ)折衝(せつしやう)答弁(たふべん)無用(むよう)御座(ござ)ります。076(すみやか)国内(こくない)(へい)(あつ)め、077大足別(おほだるわけ)軍勢(ぐんぜい)殲滅(せんめつ)(いた)し、078国家(こくか)(わざはひ)艾除(がいぢよ)(いた)したく(ぞん)じます』
079(わう)成程(なるほど)080(なんぢ)(げん)081()()(かな)へたり。082サア、083一刻(いつこく)(はや)募兵(ぼへい)用意(ようい)(いた)せ。084城内(じやうない)兵士(へいし)にも厳命(げんめい)(くだ)し、085防備(ばうび)用意(ようい)(とり)かからしめよ』
086左守(さもり)『ハイ、087殿下(でんか)御上意(ごじやうい)088(つつし)んで御受(おう)(いた)します。089右守(うもり)殿(どの)090貴殿(きでん)一刻(いつこく)(はや)国内(こくない)伝令使(でんれいし)()し、091国家(こくか)危急(ききふ)(すく)ふべく軍隊(ぐんたい)をお(あつ)めなさい』
092右守(うもり)『これはこれは左守(さもり)殿(どの)のお言葉(ことば)とも(おぼ)えぬ。093左様(さやう)無謀(むぼう)(たたかひ)(いた)して、094天壤無窮(てんじやうむきう)のトルマン(ごく)(ほろ)ぼす左守(さもり)殿(どの)拙策(せつさく)095最早(もはや)かくなる(うへ)は、096暫時(ざんじ)キユーバーの意見(いけん)(したが)ひ、097王家(わうけ)(はじ)め、098国民(こくみん)一般(いつぱん)099(かれ)(とな)ふる宗旨(しうし)帰順(きじゆん)せば、100天下(てんか)無事泰平(ぶじたいへい)101国民(こくみん)塗炭(とたん)()より(まぬが)れ、102仁君(じんくん)(あふ)がれ(たま)ふで御座(ござ)らう。103万々一(まんまんいち)雲霞(うんか)(ごと)大軍(たいぐん)向方(むかふ)(まは)し、104全敗(ぜんぱい)憂目(うきめ)()はば105万劫末代(まんごまつだい)取返(とりかへ)しのつかざる大失敗(だいしつぱい)御座(ござ)らう。106殿下(でんか)(はじ)左守(さもり)殿(どの)107此所(ここ)をトクとお(かんが)(くだ)され。108王家(わうけ)(ため)109国家(こくか)(ため)110右守(うもり)身命(しんめい)()して諫言(かんげん)(つかまつ)ります』
111(わう)(この)()(およ)んで、112卑怯未練(ひけふみれん)右守(うもり)言条(いひでう)113国帑(こくど)消費(せうひ)して、114平素(へいそ)軍隊(ぐんたい)(やしな)ひおきしは(なん)(ため)だ。115かかる国難(こくなん)(さい)し、116挙国(きよこく)一致的(いつちてき)活動(くわつどう)をなし、117外敵(ぐわいてき)(ふせ)ぐべき用意(ようい)(ため)ではないか。118かかる卑怯未練(ひけふみれん)(たましひ)(もつ)て、119優勝劣敗(いうしようれつぱい)現代(げんだい)120(こと)七千余国(しちせんよこく)国王(こくわう)(おのおの)軍備(ぐんび)(ととの)へ、121虎視耽々(こしたんたん)として、122国防(こくばう)余念(よねん)なき(この)(さい)123祖先伝来(そせんでんらい)のウラルの(かみ)(をしへ)放擲(はうてき)する(ごと)きは124(かみ)威厳(ゐげん)(そこな)(やぶ)り、125御無礼(ごぶれい)(この)(うへ)なく、126(かへつ)国家(こくか)滅亡(めつぼう)(はや)めるであらう。127(この)トルマン(ごく)はウラルの(かみ)(あつ)守護(しゆご)あり、128(なに)(くるし)んで、129かかる妖教(えうけう)(こし)()げむ。130しつかりと性根(しやうね)()えて、131所存(しよぞん)(ほぞ)(かた)めよ』
132()(きみ)(あふ)せでは御座(ござ)いまするが、133(この)(さい)余程(よほど)冷静(れいせい)にお(かんが)へを(ねが)はねばなりませぬ。134取返(とりかへ)しのつかぬ(こと)御座(ござ)いますから』
135(わう)(しか)らば(なんぢ)意見(いけん)は、136()うせうと()ふのだ、137腹蔵(ふくざう)なく(まを)して()よ』
138()『ハイ、139(おそ)(なが)(まをし)()げます。140(てき)()(あま)大軍(たいぐん)141城下(じやうか)(ちか)押寄(おしよ)(きた)(この)(さい)142(おく)()せに軍隊(ぐんたい)召集(せうしふ)すればとて、143(なん)(やく)()ちませうぞ。144城内(じやうない)守兵(しゆへい)(わづか)五百人(ごひやくにん)145(てき)総勢(そうぜい)三千騎(さんぜんき)146国内(こくない)全部(ぜんぶ)兵員(へいゐん)(あつ)めた(ところ)で、147(やうや)二千五百人(にせんごひやくにん)では御座(ござ)らぬか。148五百人(ごひやくにん)(へい)(もつ)三千人(さんぜんにん)精鋭(せいえい)(あた)るは、149(あたか)蟷螂(たうらう)(をの)(ふる)つて竜車(りうしや)(むか)ふがごときもので御座(ござ)ります。150国内(こくない)総動員(そうどうゐん)(おこな)ひ、151いよいよ戦闘準備(せんとうじゆんび)(ととの)(まで)には、152何程(なにほど)(はや)(とも)三日間(みつかかん)時日(じじつ)(えう)します。153さすれば、154(すで)(すで)戦争(せんそう)()んだ(あと)155六菖十菊(ろくしやうじつきく)無駄(むだ)仕業(しわざ)(ぞん)じます。156かかる見易(みやす)道理(だうり)無視(むし)(たたか)ふに(おい)ては、157国家(こくか)滅亡(めつぼう)158風前(ふうぜん)灯火(ともしび)よりも(あやふ)御座(ござ)います。159何卒(なにとぞ)(この)(さい)右守(うもり)進言(しんげん)御採用(ごさいよう)(くだ)さらば、160国家(こくか)(ため)161(じつ)幸福(かうふく)(ぞん)じます』
162千草姫(ちぐさひめ)王様(わうさま)(はじ)左守(さもり)右守(うもり)殿(どの)御意見(ごいけん)(うけたま)はれば、163(いづ)れも御尤(ごもつと)千万(せんばん)164(しか)(なが)(わらは)右守(うもり)(せつ)(もつ)て、165(もつと)時宜(じぎ)(てき)した方法(はうはふ)(かんが)へまする。166殿下(でんか)何卒(なにとぞ)167右守(うもり)(せつ)御採用(ごさいよう)あらむ(こと)御願(おねが)(いた)しまする』
168(わう)馬鹿(ばか)(まを)せ、169其方(そち)(まで)(をつと)(せつ)抹殺(まつさつ)せむと(いた)すか。170其方(そち)平素(へいそ)挙動(きよどう)()()ちぬと(おも)つてゐた。171国家(こくか)滅亡(めつぼう)原因(げんいん)女性(ぢよせい)にありといふ(こと)だ。172(いん)紂王(ちゆうわう)(くに)(うしな)ふたのも矢張(やはり)女性(ぢよせい)横暴(わうばう)からだ。173女童(をんなわらべ)()(こと)でない、174()がり()らうツ』
175百雷(ひやくらい)一時(いちじ)落下(らくか)したる(ごと)怒声(どせい)176千草姫(ちぐさひめ)(ちぢ)(あが)つて顔色(がんしよく)蒼白(さうはく)となり、177(その)()(ふる)ひつつ(たふ)れて(しま)つた。178(わう)(この)有様(ありさま)()にもかけず、179(なほ)言葉(ことば)(つづ)けて、
180『ヤ、181左守(さもり)182最早(もはや)かうなる(うへ)は、183()(なんぢ)両人(りやうにん)(ちから)(あは)せ、184外敵(ぐわいてき)殲滅(せんめつ)(いた)さう。185()(これ)より陣頭(ぢんとう)()ち、186三軍(さんぐん)指揮(しき)するであらう。187サ、188左守(さもり)189(その)準備(じゆんび)(とり)かかれよ』
190()(とし)()つても、191武術(ぶじゆつ)(もつ)(きた)へた(この)(うで)(ぷし)192仮令(たとへ)大足別(おほだるわけ)軍勢(ぐんぜい)193百万騎(ひやくまんき)(もつ)(おし)()(きた)(とも)1931(なに)かあらむ、194盤古神王(ばんこしんのう)御神力(ごしんりき)(かしら)(いただ)き、195八岐大蛇(やまたをろち)悪魔(あくま)(まも)大足別(おほだるわけ)軍勢(ぐんぜい)を、196千変万化(せんぺんばんくわ)秘術(ひじゆつ)(もつ)()(なや)まし、197奇兵(きへい)(はな)つて殲滅(せんめつ)()れむ。198いざ右守(うもり)殿(どの)199用意(ようい)()され』
200()『これは心得(こころえ)ぬ、2001御両所(ごりやうしよ)のお言葉(ことば)201(たきぎ)(あぶら)(そそ)ぎ、202(これ)(いだ)いて火中(くわちう)(とう)ずる(ごと)危険(きけん)(きは)まる無謀(むぼう)抗戦(かうせん)203いかでか(こう)(そう)せむ。204()()(おも)(とど)まらせ(たま)へ』
205(わう)左守(さもり)206右守(うもり)(ごと)逆臣(ぎやくしん)相手(あひて)(いた)すな。207千草姫(ちぐさひめ)平素(へいそ)()()をぬすみ、208右守(うもり)と……を(むす)んでゐるといふ(こと)は、209某々等(ぼうぼうら)注進(ちうしん)によつて、210一年(いちねん)以前(いぜん)より()承知(しようち)してゐる。211かかる逆賊(ぎやくぞく)城内(じやうない)放養(はうやう)するは、212(あたか)(とら)()(やしな)ふに(ひと)しからむ。213一時(いちじ)(はや)(しば)()げよ』
214千草(ちぐさ)王様(わうさま)のお(なさけ)ないお言葉(ことば)215(けつ)して(けつ)して(わらは)左様(さやう)(うたがひ)()けやうとは(ゆめ)にも(ぞん)じませぬ。216良薬(りやうやく)(くち)(にが)く、217忠言(ちうげん)(みみ)(さから)ふとかや。218右守(うもり)殿(どの)王家(わうけ)(ため)国家(こくか)(ため)219(いのち)(ささ)げて()りまする。220時代(じだい)推移(すいい)明知(めいち)し、221政治(せいぢ)大本(たいほん)(わきま)()(もの)は、222右守(うもり)をおいて(ほか)には御座(ござ)いませぬ。223今日(こんにち)()(なか)は、224余程(よほど)(かは)つて()りまする。225(いたづら)旧套(きうたう)墨守(ぼくしゆ)し、2251国家(こくか)()てむとするは()骨頂(こつちやう)御座(ござ)います。226何者(なにもの)誣言(ぶげん)かは(ぞん)じませぬが、227(わらは)(たい)して不義(ふぎ)行為(かうゐ)あるが(ごと)内奏(ないそう)(いた)すとは、228言語道断(ごんごだうだん)229不忠不義(ふちうふぎ)曲者(くせもの)230かかる乱臣賊子(らんしんぞくし)(げん)御耳(おみみ)(かたむ)(たま)はず、231(わらは)進言(しんげん)冷静(れいせい)御考(おかんが)(くだ)さいませ。232最早(もはや)かくなる(うへ)周章狼狽(しうしやうらうばい)(なん)効果(かうくわ)もありますまい。233()ちついた(うへ)にも(おち)ついて、234国家(こくか)百年(ひやくねん)大計(たいけい)をめぐらさねばなりますまい』
235(わう)(なんぢ)こそ、236金毛九尾(きんまうきうび)(れい)()せられたる亡国(ばうこく)張本人(ちやうほんにん)だ。237綸言(りんげん)(あせ)(ごと)し、238一度(ひとたび)()でては(ふたた)(かへ)らず。239(なんぢ)(ごと)亡国(ばうこく)世迷言(よまひごと)240()(みみ)()たぬ』
241(たち)(あが)り、242弓矢(ゆみや)()つて、243左守(さもり)(とも)立出(たちい)でむとする。244()かる(ところ)へ、245スコブツエン(しう)妖僧(えうそう)キユーバーは数十人(すうじふにん)武装(ぶさう)せる兵士(へいし)(まも)られ(なが)ら、246悠々(いういう)(あら)はれ(きた)り、
247『スコブツエン(しう)大棟梁(だいとうりやう)キユーバー、248大黒主(おほくろぬし)(めい)により、249大足別(おほだるわけ)(ぐん)(ひき)ゐて(むか)ふたり、250(すみやか)返答(へんたふ)(いた)せツ』
251(よば)はつてゐる。252千草姫(ちぐさひめ)253右守司(うもりのかみ)矢庭(やには)玄関(げんくわん)(はし)()で、
254千草(ちぐさ)『これはこれは、255御神徳(ごしんとく)(たか)救世主様(きうせいしゆさま)256よくこそお()(くだ)さいました。257仁慈無限(じんじむげん)大黒主(おほくろぬし)思召(おぼしめし)258何条(なんでう)(もつ)(そむ)きませう。259祖先(そせん)以来(いらい)のウラル(けう)を、2591放擲(はうてき)し、260貴僧(きそう)のお言葉(ことば)(したが)ひ、261スコブツエン(しう)国内(こくない)(こぞ)つてなりませう。262どうか軍隊(ぐんたい)(もつ)(むか)はせらるるは(おだや)かならぬ御仕打(おしうち)263(へい)引上(ひきあ)(くだ)さいませ。264(わらは)身命(しんめい)()して、265御請合(おうけあひ)(まをし)()げます』
266キユ『アハヽヽヽヽヽ、267流石(さすが)頑強(ぐわんきやう)なガーデン(わう)往生(わうじやう)(いた)したか、268左守(さもり)はどうだ。269異存(いぞん)()からうか、270両人(りやうにん)(たしか)なる降服状(かうふくじやう)(わた)して(もら)ひたい。271さもなくば大黒主(おほくろぬし)(さま)272大足別(おほだるわけ)(たい)しても、273愚僧(ぐそう)言訳(いひわけ)()(まを)さぬ。274サ、275(はや)屈服状(くつぷくじやう)御渡(おわた)()され』
276 ()(はな)してゐる(うち)に、277ガーデン(わう)278左守(さもり)兵営(へいえい)(はし)()き、2781数多(あまた)将士(しやうし)厳命(げんめい)(つた)へ、279(てき)撃退(げきたい)すべく準備(じゆんび)(とり)かかつてゐた。280キユーバーは(わう)(はじ)左守(さもり)奥殿(おくでん)戦慄(せんりつ)し、281(のみ)(ごと)(しらみ)(ごと)寝所(しんじよ)(しの)んでゐるものとのみ慢心(まんしん)して()(ゆる)し、282降服状(かうふくじやう)受取(うけと)らむと応接(おうせつ)()にどつかと(しり)(おろ)し、283椅子(いす)にかかり(ちや)(すす)りつつ、
284『アハヽヽヽ、285これこれ千草姫(ちぐさひめ)殿(どの)286右守(うもり)殿(どの)287大黒主(おほくろぬし)御威勢(ごゐせい)(たい)したもので御座(ござ)らうがな。288其方(そなた)(はか)らひ(ひと)つによつて、289(この)トルマン(じやう)無事(ぶじ)(たす)かり、290耄碌爺(まうろくぢぢ)のガーデン(わう)も、291左守(さもり)のフーランも()(これ)(くび)がつなげると()ふもの、292まづまづお目出(めで)たう(ぞん)ずる』
293 千草姫(ちぐさひめ)(わう)左守(さもり)主戦論者(しゆせんろんしや)たる(こと)(さと)られては一大事(いちだいじ)294(なん)とかして二人(ふたり)()()れる(やう)と、295心中(しんちう)(ふか)(いの)りつつ、296素知(そし)らぬ(かほ)にて、
297『キユーバー(さま)298貴方(あなた)はトルマン(ごく)(たい)し、299救世(きうせい)恩人(おんじん)300億万年(おくまんねん)(のち)(まで)(この)御恩(ごおん)(けつ)して(わす)れませぬ。301これこれ右守(うもり)殿(どの)302王様(わうさま)(はじ)左守(さもり)(その)()重臣(ぢうしん)に、303(この)(よし)御伝(おつた)(くだ)さい。304キユーバー(さま)(わらは)御接待(ごせつたい)(まを)して()るから……』
305 右守(うもり)千草姫(ちぐさひめ)(こころ)推知(すいち)し、306(この)(あひだ)(わう)(および)左守(さもり)(こころ)(やは)らげ、307(あと)()(かく)(この)場合(ばあひ)キユーバーを(あざむ)いて、308帰順(きじゆん)した(ごと)くに()せかけ、309(おもむろ)(さく)をめぐらさむと、310(わう)居間(ゐま)()つて()れば藻脱(もぬ)けの(から)311コラ大変(たいへん)と、3111軍務署(ぐんむしよ)へかけつけて()れば、312(すで)城内(じやうない)兵士(へいし)武装(ぶさう)(ととの)へ、313(わう)(また)甲冑(かつちう)をよろひ、314(やり)(つゑ)について、315(いま)や、316一斉(いつせい)総攻撃(そうこうげき)()でむとする間際(まぎは)であつた。
317右守(うもり)()()殿下(でんか)318(はなし)(うま)(まと)まりました。319どうか(しばら)御待(おま)(くだ)さいませ』
320(わう)『キユーバーが降服(かうふく)(いた)したのか、321如何(どう)(まと)まつたのだ』
322右守(うもり)『ハイ、323キユーバーは数十(すうじふ)精兵(せいへい)引連(ひきつ)れ、324厳然(げんぜん)(ひか)へて()りまする。325それにも(かかは)らず、326大足別(おほだるわけ)大軍(たいぐん)(いま)返答(へんたふ)次第(しだい)によつて、327本城(ほんじやう)(ほふ)らむとして()りまする。328一時(いちじ)(てき)(あざむ)いて、329油断(ゆだん)させ、330(その)()国内(こくない)総動員(そうどうゐん)(おこな)ひ、331(しろ)内外(ないぐわい)より(はさみ)(うち)にするのが、332軍術(ぐんじゆつ)(おく)()(ぞん)じ、333(いつは)つてスコブツエン(しう)降伏(かうふく)(いた)しておきました。334何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)武装(ぶさう)()き、335左守(さもり)殿(どの)(とも)にキユーバーにお()(くだ)さいませ』
336 (わう)はクワツと(いか)り、
337不忠(ふちう)不義(ふぎ)曲者(くせもの)右守(うもり)()338(わが)(ゆる)しも()勝手(かつて)左様(さやう)国辱的(こくじよくてき)行動(かうどう)をなすとは、339鬼畜(きちく)(ひと)しき(その)(はう)340最早(もはや)勘忍(かんにん)ならぬ、341覚悟(かくご)せよ』
342()ふより(はや)く、343(やり)をしごいて、344右守(うもり)脇腹(わきばら)(ほね)(とほ)れとつつ()めば、345何条(なんでう)(もつ)(たま)るべき、346右守(うもり)(その)()にドツと(たふ)()し、347虚空(こくう)(つか)んで(いき)()えて(しま)つた。
348(わう)『アハヽヽヽヽ、349首途(かどで)血祭(ちまつり)国賊(こくぞく)(ちう)したのは幸先(さいさき)よし。350サ、351(これ)より千草姫(ちぐさひめ)352キユーバーの両人(りやうにん)血祭(ちまつり)にせむ』
353()(なが)ら、354左守(さもり)軍隊(ぐんたい)監督(かんとく)させおき、355(みづか)数十名(すうじふめい)精兵(せいへい)(したが)へ、356応接間(おうせつま)()して(いきほひ)(たけ)()でて()く。
357 千草姫(ちぐさひめ)(なん)となく、358形勢(けいせい)不穏(ふおん)()がしたので、359キユーバーに(たい)し、3591秋波(しうは)(おく)(なが)ら、360密室(みつしつ)(ともな)ひ、361ドアの(ぢやう)(なか)から(おろ)し、362(こゑ)(しの)ばせ(なが)ら、363(わう)(はじ)左守(さもり)強硬(きやうかう)なる意思(いし)(つた)へ、364キユーバーの()危険(きけん)なる(こと)()げた。365千草姫(ちぐさひめ)(けつ)して右守司(うもりのかみ)醜関係(しうくわんけい)(むす)んでゐなかつた。366(ただ)国家(こくか)(おも)一念(いちねん)より、367時代(じだい)(かい)する(かれ)(あつ)(しん)じてゐたのみである。368智慧(ちゑ)(ふか)千草姫(ちぐさひめ)369仮令(たとへ)一時(いちじ)キユーバーを(ほろ)ぼす(とも)370(あと)には大足別(おほだるわけ)(ひか)()れば、371最後(さいご)勝利(しようり)覚束(おぼつか)なし。372()かず373キユーバーの歓心(くわんしん)()ひおき、374国家(こくか)安泰(あんたい)(まも)らむには……と、375自分(じぶん)国内(こくない)()つての絶世(ぜつせい)美人(びじん)たるを(さいは)ひ、376(かれ)薬籠中(やくろうちう)(もの)として(しま)つたのである。377暴悪無道(ばうあくぶだう)のキユーバーも千草姫(ちぐさひめ)一瞥(いちべつ)()ふて(ほね)(まで)(やは)らぎ、378まんまと(ひめ)術中(じゆつちう)(おちい)つたのは(かう)不幸(ふかう)か、379(かみ)審判(さばき)(もつ)処決(しよけつ)さるるであらう。
380大正一四・八・二三 旧七・四 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)