霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 共倒(ともだふ)れ〔一七七一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻 篇:第1篇 花鳥山月 よみ:かちょうさんげつ
章:第4章 第70巻 よみ:ともだおれ 通し章番号:1771
口述日:1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方、太子チウインは妹チンレイ、右守の娘ハリスと共に、キューバーが談判にきた当初から様子を察知し、王と左守には内密で、全国から兵を招集すべく密かに動いていた。
一方、大足別はキューバーが戻ってこないので、城を攻めるわけにもいかず、こう着状態に陥っていた。
千草姫に一度は気絶させられたキューバーは正気を取り戻し、今度は自分が姫を気絶させようと躍起になっている。
その間に、王は密書により、太子が国内より兵を集めて合流することを知る。またそれは、千草姫・右守の先見の明による計略であったことを知る。王と左守は、はじめて右守の心を知り、その死を悼んだ。
一方、千草姫は気絶したふりをしたりしてキューバーをからかっていたが、最後に双方同時に手を握り合うということになった。キューバーも千草姫も厳しく相手の手を握り合い、二人とも気絶してその場に倒れてしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7004
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 407頁 修補版: 校定版:47頁 普及版:25頁 初版: ページ備考:
001 太子(たいし)のチウインは(いもうと)のチンレイ(およ)び、0011右守(うもり)(むすめ)ハリスと(とも)002(はじ)めてキユーバーが談判(だんぱん)()(とき)0021ソツと物蔭(ものかげ)より様子(やうす)()き、003容易(ようい)ならざる大事件(だいじけん)となし、004ガーデン(わう)左守(さもり)には内密(ないみつ)にて、005(いもうと)のチンレイ(およ)右守(うもり)(むすめ)ハリスと夜中(やちう)(しめ)(あは)せ、006王命(わうめい)(いつは)全国(ぜんこく)兵員(へいゐん)召集(せうしふ)すべく、007腹心(ふくしん)部下(ぶか)(めい)(くだ)した。
008 一方(いつぱう)ガーデン(わう)009左守(さもり)010城内(じやうない)五百(ごひやく)(へい)武装(ぶさう)をさせ(なが)ら、011敵軍(てきぐん)()()(きた)らば、012(ただ)一戦(いつせん)粉砕(ふんさい)()れむと部下(ぶか)督励(とくれい)して、013士気(しき)皷舞(こぶ)全力(ぜんりよく)(そそ)いで()た。014大足別(おほだるわけ)将軍(しやうぐん)三千(さんぜん)(へい)(ひき)ゐて、015城下(じやうか)(まで)()()せて()たが、016キユーバーを(まも)りたる数十騎(すうじつき)注進(ちうしん)により、017殿内(でんない)(ふか)くキユーバーの()()みし(こと)()り、018(いたづら)戦端(せんたん)(ひら)き、019キユーバーの生命(せいめい)(うしな)つては大変(たいへん)だ、020大黒主(おほくろぬし)如何(いか)なるお目玉(めだま)頂戴(ちやうだい)するかも()れない。021古今無双(ここんむさう)英雄豪傑(えいゆうがうけつ)キユーバーには、022(なに)(ふか)策略(さくりやく)があつて、023(ただ)一人(ひとり)城内(じやうない)()()み、024樽爼折衝(そんそせつしよう)(あひだ)円満解決(ゑんまんかいけつ)曙光(しよくわう)(みと)むべく活動(くわつどう)して()るのだらう。025()づキユーバーの命令(めいれい)()(まで)026総攻撃(そうこうげき)をしてはならぬ、027……と部下(ぶか)厳重(げんぢう)(いまし)め、028キユーバー警護(けいご)意味(いみ)にて三日三夜(みつかみや)滞陣(たいぢん)して()た。029ガーデン(わう)030左守(さもり)は、031千草姫(ちぐさひめ)姿(すがた)()()くなつたのは、032右守(うもり)最後(さいご)()き、033(わざはひ)()(およ)ばむ(こと)(おそ)れて()()したのだらう……(くらゐ)(かんが)へ、034軍備(ぐんび)(はう)全心(ぜんしん)集注(しふちう)し、035千草姫(ちぐさひめ)秘術(ひじゆつ)(つく)しての善戦善闘(ぜんせんぜんとう)()がつかなかつた。036()てキユーバーは半時(はんとき)(ばか)りして(いき)()(かへ)し、037団栗眼(どんぐりまなこ)ぎろつかせ千草姫(ちぐさひめ)(かほ)()て、
038『ヤア、039(まへ)千草姫(ちぐさひめ)ぢやないか。040かよわい(うで)をしながら(おれ)脈処(みやくどころ)(をり)(あし)(つか)みよつて、041(えら)()(あは)したぢやないか。042(おれ)(しばら)くの(あひだ)043幽冥旅行(いうめいりよかう)をやつて()たよ。044(つか)むと()つても(あま)りひどいぢやないか』
045千草姫(ちぐさひめ)『ハイ、046(わらは)どんなに心配(しんぱい)したか()れませぬわ。047貴方(あなた)御命令(ごめいれい)遵奉(じゆんぽう)し、048(ちから)一杯(いつぱい)(にぎ)りましたら、049貴方(あなた)はウンといつた()り、050(なん)()つても返事(へんじ)して(くだ)さらないのですもの。051大変(たいへん)(おこ)つて返事(へんじ)して(くだ)さらないと(おも)ひ、052早速(さつそく)バラモンの神様(かみさま)水垢離(みづごり)()つて御祈願(ごきぐわん)した(ところ)053やつと(もの)()つて(くだ)さつたのですもの。054幽冥旅行(いうめいりよかう)したのなんのと本当(ほんたう)(はら)(わる)いお(かた)よ。055半時(はんとき)(ばか)りも(わらは)(おこ)つて(もの)()ふて(くだ)さらないのですもの』
056キユ『いや、057本当(ほんたう)気絶(きぜつ)して()たに(ちが)ひない。058(けつ)して(うそ)()はない。059これから()(にぎ)るのなら(ゆび)(さき)(にぎ)つてくれ。060脈処(みやくどころ)(にぎ)られると(こま)るからな』
061千草(ちぐさ)世界(せかい)救世主様(きうせいしゆさま)(わらは)細腕(ほそうで)(にぎ)られて気絶(きぜつ)なさると()ふやうな道理(だうり)がどこに御座(ござ)います。062(うそ)(ばか)仰有(おつしや)います。063ホヽヽヽヽヽ』
064キユ『本当(ほんたう)にそれやさうぢや。065(じつ)気絶(きぜつ)したのぢやないよ。066(まへ)心底(しんてい)(かんが)へる(ため)にあんな真似(まね)をして()たのぢや。067(なに)()つても三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)だ。068そんなへどろい(こと)でどうならう』
069千草(ちぐさ)『ホヽヽヽヽヽ、070ほんとに(ひど)いお(かた)071(ひと)()()ましてひどいわ』
072(また)手首(てくび)(にぎ)らうとする。
073 キユーバーは吃驚(びつくり)して()()き、
074『ヤ、075もう()一度(いちど)(にぎ)つたらよいものだ。076それよりも今度(こんど)(おれ)(にぎ)つてやらう、077サア()()したり()()したり』
078千草(ちぐさ)『どうか(いき)()れる(ところ)(まで)(にぎ)つて頂戴(ちやうだい)な。079(いつ)ぺん八衢(やちまた)状況(じやうきやう)()()(ところ)(まで)……。080さうして冥官(めいくわん)()081貴方(あなた)(わらは)永久(えいきう)(くら)すべき蓮座(れんざ)(をし)へて(もら)つて()たう御座(ござ)いますわ。082天国(てんごく)満員(まんゐん)にならない(うち)に、083特等席(とくとうせき)予約(よやく)して()きたう御座(ござ)いますから』
084キユ『ハヽヽヽヽヽ、085おい(ひめ)さま、086このキユーバーの()がお(まへ)()(さは)るな(いな)本当(ほんたう)気絶(きぜつ)して(しま)ふよ。087それでもよいか』
088千草(ちぐさ)『よろしう御座(ござ)いますとも、089仮令(たとへ)(ころ)されても(わたし)(からだ)ぢや御座(ござ)いませぬ。090貴方(あなた)(ささ)げたもので御座(ござ)いますもの、091貴方(あなた)(いのち)同様(どうやう)ですわ』
092 キユーバーは(こころ)(うち)にて……この(をんな)仲々(なかなか)()がよく()いて()る。093柔術(じうじゆつ)極意(ごくい)(たつ)して()るらしい。094(おれ)(ちから)一杯(いつぱい)(にぎ)つて気絶(きぜつ)させ、095八衢(やちまた)(のぞ)いて()(ところ)(まで)やつておかねば、096将来(しやうらい)威張(ゐば)られちや(たま)らない。097(をつと)権式(けんしき)がさつぱりゼロになつて(しま)ふ。098よし、099また(ちから)一杯(いつぱい)急所(きふしよ)(にぎ)100(おれ)腕前(うでまへ)()せておかねば将来(しやうらい)嬶天下(かかてんか)になり、101(いまき)底本では湯巻(ゆまき)(ひも)(しば)られるやうになるかも()れない。102ここが千騎一騎(せんきいつき)(こひ)かけひきだ……と、103()だらけの()ぬつ(つき)()し、104(ひめ)真白(まつしろ)なま(たけ)のやうな()(ほね)(くだ)けとヒン(にぎ)つた。105千草姫(ちぐさひめ)はキユーバーの(こころ)(そこ)(まで)直覚(ちよくかく)して()るので、106(なに)(ほど)キユーバーが(ちから)をこめて(にぎ)つても(いた)くも(なん)ともない、107真綿(まわた)(さは)つたやうな()がして()る、108()かけによらぬ(がう)(もの)であつた。109(しか)しわざと気絶(きぜつ)した(てい)(よそほ)(にぎ)られた刹那(せつな)110ウーンと(かほ)(しか)めて(その)()(たふ)れて(しま)つた。
111キユーバー『ハヽヽヽヽヽ、112(さすが)(をんな)だな。113たうとう屁古垂(へこた)れて(しま)ひよつた。114かうして半時(はんとき)(ばか)幽冥界(いうめいかい)(のぞ)かしておけば、115()がついてから(おれ)神力(しんりき)感服(かんぷく)し、116ぞつこん()()むだらう。117エヘヽヽヽヽヽ、118これだけ(おれ)()()んで()るのだから、119大足別(おほだるわけ)軍勢(ぐんぜい)一時(いちじ)この(しろ)(ほふ)らせ、120ガーデン(わう)や、121左守(さもり)122右守(うもり)征伐(せいばつ)し、123太子(たいし)(その)()重臣(ぢうしん)重刑(ぢうけい)(しよ)し、124このキユーバーが()つて(かは)つてトルマン(ごく)浄行(じやうぎやう)(けん)刹帝利(せつていり)となり、125天下無双(てんかむさう)(ひめ)女房(にようばう)となし、126数千万(すうせんまん)財産(ざいさん)横奪(わうだつ)して天晴(あつぱれ)城主(じやうしゆ)となり、127大黒主(おほくろぬし)(むか)ふを()つて、128七千余国(しちせんよこく)覇者(はしや)となつてやらう。129あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、130開運(かいうん)時節(じせつ)到来(たうらい)131智謀絶倫(ちぼうぜつりん)にして(その)胆力(たんりよく)(かみ)(ごと)く、132(おに)(ごと)しとは(おれ)(こと)だわい、133エヘヽヽヽヽヽ。134(なん)135大変(たいへん)物音(ものおと)ぢや、136どうれ(ひと)(そと)()様子(やうす)(かんが)へよう』
137と、138ドアを(はづ)さむとしたが、139秘密(ひみつ)(ぢやう)(おろ)してあるので、140千草姫(ちぐさひめ)でなければ()ける(こと)出来(でき)ない。141(さすが)のキユーバーも当惑(とうわく)して()る。142(そと)には(しばら)城内(じやうない)城外(じやうぐわい)との小糶(こぜり)()ひがあつたが、143用心(ようじん)(ぶか)大足別(おほだるわけ)はキユーバーが城内(じやうない)潜入(せんにふ)()(こと)()き、144(たたかひ)中止(ちうし)して、145キユーバーの様子(やうす)偵察(ていさつ)せむと焦慮(せうりよ)して()た。146それ(ゆゑ)(たたかひ)半時(はんとき)()らずに()んで(しま)つた。147大足別(おほだるわけ)三千(さんぜん)軍隊(ぐんたい)(もつ)てトルマン(じやう)十重(とへ)二十重(はたへ)()りまいて()る。148ガーデン(わう)もこの(てき)大兵(たいへい)(とほ)(なが)めて、149()つて()づる勇気(ゆうき)もなく150援兵(ゑんぺい)(きた)(まで)差控(さしひか)へむと(ほこ)(みが)いて警戒(けいかい)して()た。151()(とき)チウイン太子(たいし)近侍(きんじ)が、152(わう)(かたはら)()たり、153(うやうや)しく敬礼(けいれい)(なが)ら、
154太子様(たいしさま)より殿下(でんか)(たてまつ)れよとの御命令(ごめいれい)にて、155(あづか)(まを)して()りました(この)御書面(ごしよめん)156受取(うけと)(くだ)さいませ』
157差出(さしだ)す。
158(わう)(なに)159太子(たいし)がこの書面(しよめん)()(わた)せたと()つたか。160(あま)周章狼狽(しうしやうらうばい)結果(けつくわ)161太子(たいし)(こと)(わす)れて()た』
162()(なが)(あわただ)しく(ふう)()()りながむれば、163()(ごと)文面(ぶんめん)墨痕(ぼくこん)淋漓(りんり)として(したた)めてあつた。
 
164(ひと)今夕(こんせき)165(ちち)訪問(はうもん)(いた)したるキユーバーなるものは、166大足別(おほだるわけ)将軍(しやうぐん)(しめ)(あは)せ、167本城(ほんじやう)占領(せんりやう)し、168(わが)王家(わうけ)(くつが)へさむと(はか)るものに(さふら)へば、169(この)(さい)一刻(いつこく)猶予(いうよ)相成(あひな)らず(さふらふ)170小子(せうし)(ちち)(およ)左守(さもり)協議(けふぎ)(いた)すも、171到底(たうてい)六ケ敷(むつかし)かしからむと(ぞん)じ、172(いもうと)チンレイ、173(およ)右守(うもり)(むすめ)ハリスと(しめ)(あは)せ、174国内(こくない)総動員(そうどうゐん)をなすべく、175()臣下(しんか)諸方(しよはう)派遣(はけん)し、176小子(せうし)(また)出城(しゆつじやう)して大足別(おほだるわけ)(ぐん)後方(こうはう)より攻撃(こうげき)(いた)すべく準備(じゆんび)(とり)かかり(まを)(さふらふ)177(ゆゑ)小子(せうし)総司令官(そうしれいくわん)となつて軍隊(ぐんたい)編成(へんせい)し、178城下(じやうか)(かへ)(さふらふ)(まで)179(けつ)して(てき)戦端(せんたん)(ひら)(たま)ふべからず。180一時(ひととき)たりとも時間(じかん)()ばし、181(わが)(ぐん)(いた)るを()たせ(たま)ふやう、182(ひとへ)懇願(こんぐわん)(つかまつ)(さふらふ)
183国難救援軍(こくなんきうゑんぐん)総大将(そうだいしやう) トルマン(ごく)太子(たいし) チウイン
184   御父(おんちち)ガーデン王様(わうさま)185左守(さもり)186右守(うもり)殿(どの)
 
187()してあつた。
188 ガーデン(わう)は、189(この)書面(しよめん)()(をは)るや、190さも満足(まんぞく)(いろ)(あら)はし、191左守(さもり)(むか)ひ、192言葉(ことば)(いさ)ましく、
193『アイヤ左守(さもり)殿(どの)194(よろこ)んで()れ。195太子(たいし)(すで)(へい)召集(せうしふ)し、196(ちか)(かへ)つて()様子(やうす)だ。197それ(まで)(たたか)ひを(ひら)くなとの(こと)198(さすが)(おれ)(せがれ)だけあつて、199軍略(ぐんりやく)にかけたら(うま)いものだらうがな』
200左守(さもり)成程(なるほど)允文(いんぶん)允武(いんぶ)(わた)らせらるる太子様(たいしさま)201老臣(らうしん)(おそ)()つて御座(ござ)います。202太子様(たいしさま)神軍(しんぐん)城下(じやうか)(ちか)づくを()ち、203城内(じやうない)より一斉(いつせい)()()し、204大足別(おほだるわけ)(はさみ)(うち)いたせば勝利(しようり)()(こと)磐石(ばんじやく)をもつて、205(たまご)(くだ)くに(ひと)しからむと(ぞん)じます。206あゝ(いさ)ましや(いさ)ましや』
207老臣(らうしん)左守(さもり)(わう)()()つて雄健(をたけ)びし、208部下(ぶか)(また)(この)様子(やうす)()士気(しき)(にはか)(ふる)ふ。209()かる(ところ)千草姫(ちぐさひめ)侍女(じぢよ)一通(いつつう)封書(ふうしよ)(たづさ)へ、210(わう)(まへ)(うやうや)しく(ささ)げた。211(この)密書(みつしよ)千草姫(ちぐさひめ)212キユーバーの()(にぎ)気絶(きぜつ)させおき、213(その)(あひだ)(したた)めたものである。214(わう)(いぶ)かり(なが)ら、
215(なに)216千草姫(ちぐさひめ)手紙(てがみ)とな、217(かれ)(すで)右守(うもり)(なん)()城内(じやうない)脱出(だつしゆつ)せしものと(おも)ひしに、218ハテ不思議(ふしぎ)
219手早(てばや)(ふう)()()つて()れば、220()(ごと)文面(ぶんめん)水茎(みづくき)(あと)(うるは)しく(しる)されてあつた。
 
221重大(ぢうだい)なる御疑(おうたがひ)()けし千草姫(ちぐさひめ)より一大事(いちだいじ)(まをし)()げます。222何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)(こころ)落着(おちつ)けてお()(くだ)さいませ。223スコブツエンのキユーバーなる(もの)224一ケ月前(いつかげつまへ)より本城(ほんじやう)(ほふ)らむと大足別(おほだるわけ)(しめ)(あは)せ、225種々(しゆじゆ)劃策(くわくさく)(めぐ)らして()りました(こと)は、226右守(うもり)のスマンヂー軍事探偵(ぐんじたんてい)報告(はうこく)により(これ)前知(ぜんち)し、227太子(たいし)チウイン、228王女(わうぢよ)チンレイ、229右守(うもり)(むすめ)ハリスと(とも)千草姫(ちぐさひめ)(くは)はり、230応戦(おうせん)準備(じゆんび)(とり)かかるべく国内(こくない)調査(てうさ)密々(ひそびそ)(はじ)めて()りました(ところ)231兵役(へいえき)()()べきものは(やうや)二千五百名(にせんごひやくめい)232万一(まんいち)(とき)用意(ようい)にと国内(こくない)一般(いつぱん)(わう)(めい)(しよう)し、233軍隊(ぐんたい)教育(けういく)(ほどこ)()きました(ところ)234弥々(いよいよ)(たたか)はねばならなくなつて(まゐ)りました。235(しか)(なが)大足別(おほだるわけ)大軍(たいぐん)(すで)城下(じやうか)(せま)()りますれば、236今日(こんにち)(かれ)(たたか)ふは不利(ふり)(もつと)(はなは)だしきものと(ぞん)じ、237大黒主(おほくろぬし)信任(しんにん)(もつと)(あつ)く、238大足別(おほだるわけ)謀主(ぼうしゆ)(あふ)ぐキユーバーを(ある)手段(しゆだん)(もつ)(とら)へおきました。239やがて太子(たいし)全軍(ぜんぐん)(ひき)ゐて城下(じやうか)(せま)(こと)(ぞん)じます。240それ(まで)キユーバーを(わたし)にお(まか)せおき(くだ)さいませ。241大足別(おほだるわけ)(いま)砲火(はうくわ)(ひら)かざるも、242(えう)するにキユーバーの消息(せうそく)(あん)じての(こと)御座(ござ)いますれば、243(かれ)さへ(わが)城内(じやうない)()()みおけば、244短兵(たんぺい)(きふ)(せめ)()せて()(うれ)ひはありますまい。245この(ところ)賢明(けんめい)なる王様(わうさま)246左守(さもり)殿(どの)247よくお(かんが)(くだ)さるやう(ひとへ)懇願(こんぐわん)(たてまつ)ります。
248 軍務所(ぐんむしよ)(おい)て   トルマン(ごく)王妃(わうひ) 千草姫(ちぐさひめ)
249   ガーデン王様(わうさま)
250御机下(ごきか)
 
251(わう)『ヤ、252左守(さもり)殿(どの)253右守(うもり)可哀(かあい)さうな(こと)をしたわい。254可惜(あたら)忠臣(ちうしん)(みづか)(ころ)すとは残念(ざんねん)至極(しごく)だ。255千草姫(ちぐさひめ)矢張(やはり)天下(てんか)国家(こくか)(おも)純良(じゆんりやう)なる(つま)であつた。256ヤ、257(うたが)つて()まなかつた。258ヤ、259千草姫(ちぐさひめ)(ゆる)して()れい』
260落涙(らくるい)(さし)俯向(うつむ)く。
261左守(さもり)(まつた)老臣(らうしん)不明(ふめい)(いた)(ところ)262千草姫(ちぐさひめ)(さま)(たい)(まをし)(わけ)御座(ござ)いませぬ。263(また)右守(うもり)(たい)しても()(どく)御座(ござ)います』
264流涕(りうてい)しつつ(おそ)()る。265(なん)となく城内(じやうない)士気(しき)(おほい)(ふる)ひ、266(すで)大足別(おほだるわけ)()(ほろ)ぼしたるが(ごと)戦勝気分(せんしようきぶん)(ただよ)ふて()た。
267
268 (はなし)(もと)(かへ)る。269千草姫(ちぐさひめ)はキユーバーの独語(ひとりごと)をすつかり()(をは)り、270ウンと一声(ひとこゑ)(よみがへ)つたやうな(かほ)をして息苦(いきぐる)しさうに、
271『ヤ貴方(あなた)(こひ)しき(こひ)しきキユーバー(さま)御座(ござ)いましたか。272(わたし)(めう)(ところ)旅行(りよかう)して()るやうな(ゆめ)()()りました。273(しか)(なが)貴方(あなた)二人(ふたり)()()いて274愉快(ゆくわい)愉快(ゆくわい)天国(てんごく)(たび)をしたやうに(おも)ひます。275百花爛漫(ひやくくわらんまん)()(みだ)馥郁(ふくいく)たる香気(かうき)四辺(しへん)()ち、276何処(どこ)彼処(かしこ)()(とほ)り、277(なん)とも()とも()へぬ(うるは)しさで御座(ござ)いましたよ』
278キユーバー『ハヽヽヽヽヽ。279それやお(まへ)280(おれ)()手首(てくび)(にぎ)られ、281気絶(きぜつ)してお(まへ)精霊(せいれい)霊界(れいかい)()()して()たのだ。282ほんの一寸(ちよつと)(ばか)(さは)つたやうに(おも)つたが、283何分(なにぶん)(おれ)(うで)(ちから)(あま)つて()るものだから、284(まへ)気絶(きぜつ)さして(しま)ひ、285大変(たいへん)心配(しんぱい)(いた)したが、286バラモン自在天(じざいてん)御加護(ごかご)によつて、287やつと(いき)()(かへ)したのだ。288もうこれからは握手(あくしゆ)だけはやらない(こと)にせうかい』
289 千草姫(ちぐさひめ)可笑(をか)しくて(たま)らず、290()()(ばか)(おも)はるるを()(しの)んで、291(わざ)とに吃驚(びつくり)した(やう)(かほ)をし(なが)ら、
292千草(ちぐさ)『まあまあ(いや)だわ、293キユーバーさまとした(こと)が、294(わたし)()かしたり、295(ころ)したり296丸切(まるきり)手品師(てじなし)(やう)(こと)をなさるのだもの。297本当(ほんたう)(ひど)いわ。298何程(なにほど)(いのち)()げますと()つたつて、299一夜(いちや)(まくら)(かは)さぬ(さき)(はうむ)られて仕舞(しま)つては(たま)りませぬからね。300本当(ほんたう)貴方(あなた)(にく)らしい(ひと)だわ。301もう(これ)から握手(あくしゆ)交換(かうくわん)()めて()れなんて、302そんな(こと)(いや)ですよ。303気絶(きぜつ)しない程度(ていど)にそつと握手(あくしゆ)させて(くだ)さいな』
304キユ『よし、305そんならお(まへ)(おれ)(ひだり)()(にぎ)れ。306(おれ)もお(まへ)(ひだり)()(にぎ)つてやらう』
307()(なが)両方(りやうはう)から一度(いちど)にグツと(にぎ)()めた。308キユーバーは(ひめ)(きび)しく(ひだり)手首(てくび)(にぎ)られ、309()()ひさうになつたので死物狂(しにものぐるひ)になつて、3091(ひめ)()をグツと(にぎ)つた。310途端(とたん)311双方(さうはう)(とも)一時(いちじ)気絶(きぜつ)(その)()(たふ)れて仕舞(しま)つた。
312 デカタン高原(かうげん)名物風(めいぶつかぜ)313四辺(あたり)樹木(じゆもく)(こずゑ)(たた)いて(なん)となく物騒(ものさわ)がしい。
314大正一四・八・二三 旧七・四 於由良海岸秋田別荘 加藤明子録)