霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 大魅勒(おほみろく)〔一七七九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻 篇:第2篇 千種蛮態 よみ:せんしゅばんたい
章:第12章 第70巻 よみ:おおみろく 通し章番号:1779
口述日:1925(大正14)年08月24日(旧07月5日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一方、ハリマの森には、覆面頭巾の大男が二人、ひそひそと何かを話し合ってる。これは、向上主義運動家のレールとマークであった。
レールとマークは、自分たちを迫害していたキューバーが太子の命によって獄につながれたことを喜ぶ。
一方でこのままにしておけば、再び釈放となったときにまた悪事を画策するだろうと考え、今のうちにキューバーを獄から奪い取り、拘束してしまおうと、牢獄の裏門にやってくる。
そこへ、同じくキューバー出獄後の成り行きを案じていた太子がやってくる。太子は物陰よりレールとマークの会話を聞き、二人の志に賛成し、今後の援助を誓う。
レール・マークはまんまと牢番の目を盗んでキューバーをかどわかし、荒井ヶ嶽の岩窟にキューバーを放り込んでしまった。
夜が明けて、ジャンクは昨日の取り決めどおりキューバーを釈放しようと牢獄にやってきたが、破獄騒動ですでに大騒ぎとなっていた。
ジャンクはあわてて王に注進にくるが、王と太子は平然としていた。千草姫は太子の態度があやしいとにらんで詰問するが、太子は知らぬ振りをして答えない。
千草姫はその尋問の間に、自分は大みろくの生宮であると口走り始める。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7012
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 443頁 修補版: 校定版:151頁 普及版:74頁 初版: ページ備考:
001 ハリマの(もり)木蔭(こかげ)覆面(ふくめん)頭巾(づきん)大男(おほをとこ)二人(ふたり)002ロハ(だい)(こし)をかけ、003ヒソビソと何事(なにごと)(しめ)()はしてゐる。
004レール『オイ、005マーク、006スコブツエン(しう)のキユーバーの(やつ)007チウイン太子(たいし)さまの英断(えいだん)()つて、008小気味(こぎみ)よくも、009あゝして牢獄(らうごく)(なげ)()まれよつたが、010(しか)吾々(われわれ)(これ)()いて安心(あんしん)するこた出来(でき)ぬぢやないか。011(うはさ)()けば、012彼奴(あいつ)はラスプチンの()うな代物(しろもの)で、013千草姫(ちぐさひめ)歓心(くわんしん)()ひ、014(なん)でも()しからぬ(こと)をやつてゐやがるといふ(こと)だ。015()うしても()うしても牡鶏(めんどり)のコケコーを(うた)時節(じせつ)だから、016刹帝利(せつていり)権威(けんゐ)も、017賢明(けんめい)なる太子(たいし)権威(けんゐ)蹂躙(じうりん)して、018屹度(きつと)千草姫(ちぐさひめ)彼奴(あいつ)(すく)()すに(ちが)ひない。019さうなつたが最後(さいご)020益々(ますます)資本主義(しほんしゆぎ)制度(せいど)()き、021吾々(われわれ)下層階級(かそうかいきふ)(たい)し、022圧迫(あつぱく)搾取(さくしゆ)(もつ)(のぞ)み、023()()てない(やう)悪政(あくせい)()くに(ちが)ひない。024さうだから吾々(われわれ)向上運動(かうじやううんどう)代表者(だいへうしや)たる立場(たちば)から、025一時(いちじ)(はや)彼奴(あいつ)(なん)とかしなくちや、026(まくら)(たか)くして()ることが出来(でき)ぬぢやないか。027かうして覆面(ふくめん)頭巾(づきん)扮装(いでたち)でお(まへ)をすすめて()()たが、028(けつ)して強盗(がうたう)をやる(かんが)へぢやない。029()れラスプチンを(いま)(うち)(ほふ)つておかうとの(かんが)へから、030(まへ)をボロイ銭儲(ぜにもうけ)があると()つて、031(うま)くここ(まで)おびき()したのだ』
032マーク『なアんだい、033(おれ)(また)二進(につち)三進(さつち)生活難(せいくわつなん)()はれて立行(たちゆ)かないものだから、034たうとう(なんぢ)生地(きぢ)(あら)はし、035今晩(こんばん)泥棒(どろばう)初旅(はつたび)()ようと(おも)ひ、036(おれ)応援(おうゑん)(たの)みに()よつたのだと早合点(はやがつてん)してゐたのだ。037(おれ)だつて(こは)()をして、038人家(じんか)(しの)()り、039(あるひ)行人(かうじん)(かす)めて、040(おも)つた(だけ)(かね)()レールか、041()れぬか(わか)らないが、042生死(せいし)(とも)にしようと(やく)した友人(いうじん)言葉(ことば)でもあり、043(ことわ)(わけ)にも()かず、044今日(けふ)からいよいよ(ふと)(みじか)(この)()(くら)泥棒様(どろばうさま)になるのかなア……と因果腰(いんぐわごし)()めてやつて()たのだ。045(しか)しお(まへ)(はら)()いて(おれ)安心(あんしん)した。046国家(こくか)毒虫(どくむし)駆除(くぢよ)するは(まさ)国士(こくし)たる(もの)任務(にんむ)だ。047ベツトの(おこな)はれない()(なか)改革(かいかく)善政(ぜんせい)もあつたものぢやない。048どうか(ひと)つラスプチンを血祭(ちまつり)にしてブル宗教(しうけう)心胆(しんたん)(さむ)からしめ、049偽宗教家(にせしうけうか)腸綿(はらわた)をデングリ(がへ)してやらなけりや駄目(だめ)だよ。050(おれ)(たち)(べつ)乱暴(らんばう)(こと)をせなくても、051ラマ階級(かいきふ)奴等(やつら)乱暴者(らんばうもの)として、052(こわ)がられてゐるのだから、053何時(いつ)どんな計画(けいくわく)(もつ)(その)(あな)(おとしい)れられ、054宰相(さいしやう)ベツト未遂(みすゐ)嫌疑者(けんぎしや)として○○本山(ほんざん)拘引(こういん)されるか()れたものぢやない。055(おな)(こと)なら(いま)(うち)彼奴(あいつ)(ほふ)つておかねば、056彼奴(あいつ)擡頭(たいとう)した(とき)や、057(おれ)(たち)向上会(かうじやうくわい)撲滅令(ぼくめつれい)とか、058暴力団取締令(ばうりよくだんとりしまりれい)とか、059(なん)とか(かん)とか(くだ)らぬ法律(はふりつ)発布(はつぷ)して、060益々(ますます)(おれ)(たち)仲間(なかま)(くる)しめ(ころ)さうとするに(ちが)ひない。061本当(ほんたう)彼奴(あいつ)投獄(とうごく)されてゐるのを(さいは)ひ、062今晩(こんばん)(なん)とかして彼奴(あいつ)(うば)()り、063(くら)がりでシヤモを()める(やう)にやつつけ(やう)ぢやないか』
064レ『ヤ、065面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、066サアもう牢番(らうばん)寝静(ねしづ)まる時分(じぶん)だ。067サア、068()かう』
069二人(ふたり)木蔭(こかげ)(やみ)(つた)ふて、070トルマン城外(じやうぐわい)牢獄(らうごく)裏門(うらもん)へと(すす)んだ。
071レ『オイ、072仲々(なかなか)此奴(こいつ)ア、073ちよつと、074(かべ)(たか)うて飛越(とびこ)える(わけ)にも()かず、075(こま)つたなア』
076マ『どつかの軒下(のきした)梯子(はしご)でも(さが)して()て、077(はい)らうでないか。078そして(なか)(はい)つたら最後(さいご)079()第一(だいいち)(もん)(かんぬき)(はづ)し、080何時(いつ)でも逃出(にげだ)せるようにしとくのだぞ。081(これ)から(おれ)がそこらの町家(ちやうか)(のき)(さが)して梯子(はしご)(ぬす)んで()るから、082(まへ)はキユーバーの在所(ありか)(かんが)へといて()れ。083彼奴(あいつ)魔法使(まはふづか)ひだから、084何時(いつ)(あを)()空中(くうちう)()やす(こと)得意(とくい)としてる(やつ)だ。085(その)魔術(まじゆつ)(もつ)布教(ふけう)手段(しゆだん)としてゐるのだ。086(また)彼奴(あいつ)ア、087屹度(きつと)(その)魔法(まはふ)使(つか)ひ、088牢番(らうばん)(ども)(おどろ)かし、089……此奴(こいつ)矢張(やつぱ)生神(いきがみ)さまだ……といふ評判(へうばん)()てさして、090一日(いちにち)(はや)出獄(しゆつごく)手段(しゆだん)(めぐ)らしてゐるのに(ちが)ひないからのう』
091レ『ウンそらさうだ。092()(かんが)へて()かう』
093 ()くしてマークは(やみ)をぬふて(しばら)姿(すがた)(かく)した。094レールは(あと)独言(ひとりごと)
095『あーあ、096本当(ほんたう)(つま)らないワ。097(おれ)(たち)向上会(かうじやうくわい)代表者(だいへうしや)となつてラマ階級(かいきふ)(うち)(ほろ)ぼし、098本当(ほんたう)平和(へいわ)世界(せかい)(つく)らうと、099今年(ことし)十年(じふねん)(あひだ)100一日(いちにち)(ごと)寝食(しんしよく)(わす)れ、101妻子(さいし)(さむ)さと(うゑ)とに()いてるに(かかは)らず、102昼夜(ちうや)孜々(しし)として活動(くわつどう)して()たが、103(なん)()つても(つよ)(もの)(つよ)い、104(よわ)(もの)(よわ)()(なか)だ。105三人(さんにん)()つて(はなし)をしても直様(すぐさま)番僧(ばんそう)取捉(とつつか)まれ、106牢獄(らうごく)打込(ぶちこ)まれるやうな険難(けんのん)()(なか)だから、107()(あし)()せないワ。108それにも(かかは)らず、109大黒主(おほくろぬし)(まは)(もの)たるキユーバーの(やつ)110(この)トルマン(ごく)()うしやがつて、111トルマン王家(わうけ)国民(こくみん)土芥(どかい)(ごと)くこき(おろ)し、112大黒主(おほくろぬし)神徳(しんとく)賞揚(しやうやう)し、113邪教(じやけう)(ひら)いて益々(ますます)吾々(われわれ)(くる)しめようとしてゐやがつたが、114賢明(けんめい)なるチウイン太子(たいし)英断(えいだん)によつて、115国民(こくみん)環視(くわんし)(まへ)でふん(じば)られやがつた(とき)愉快(ゆくわい)116痛快(つうくわい)さ。117彼奴(あいつ)(しば)つた(とき)や、118(けつ)して彼奴(きやつ)一人(ひとり)ぢやない。119彼奴(きやつ)買収(ばいしう)されてる番僧(ばんそう)120ラマ(そう)などは頭上(づじやう)鉄槌(てつつい)(おろ)されたやうなものだ。121それにも(かかは)らず、122()妖僧(えうそう)大奥方(おほおくがた)寵愛(ちようあい)してると()いちや、123吾々(われわれ)最早(もはや)黙過(もくくわ)する(わけ)には()かぬ。124国家(こくか)(ため)(この)逆賊(ぎやくぞく)今夜(こんや)(うち)誅伐(ちうばつ)しなくちや取返(とりかへ)しがつかぬ。125(また)国難(こくなん)勃発(ぼつぱつ)し、126吾々(われわれ)国民(こくみん)(くる)しめるに(ちが)ひない。127あーあマークの(やつ)128どうしたのだらう。129(はや)()ないかな。130(なん)となく、131()がせいて仕方(しかた)ない。132愚図(ぐづ)々々(ぐづ)してると牢番(らうばん)()()まし、133あべこべに自分(じぶん)(たち)牢獄(らうごく)(うち)()まれるやうな(こと)になつちや大変(たいへん)だがな』
134(つぶや)いてゐる。135チウイン太子(たいし)はジヤンクの進言(しんげん)()つて、136明早朝(みやうそうてう)キユーバーは放免(はうめん)されば(ふたた)城内(じやうない)(かへ)(きた)り、137(また)もや(はは)心胆(しんたん)をとろかし、138城内(じやうない)攪乱(かくらん)するに相違(さうゐ)ない。139彼奴(あいつ)今夜(こんや)(うち)引張(ひつぱ)()し、140荒井ケ嶽(あらゐがだけ)岩窟(がんくつ)牢番(らうばん)をつけて()()()かむものと微行(びかう)(きた)り、141沙羅双樹(さらさうじゆ)木蔭(こかげ)()(ひそ)めて(かんが)へてゐたが、142覆面(ふくめん)頭巾(づきん)曲者(くせもの)二人(ふたり)()るので、143千草姫(ちぐさひめ)(まは)(もの)ではないかと(みみ)(そばた)て、144いよいよさうでない(こと)(わか)つたので、145(やや)安心(あんしん)(むね)()木蔭(こかげ)をツと立出(たちい)で、146言葉(ことば)(しづか)に、
147チウイン『お(まへ)何人(なにびと)ぢや。148最前(さいぜん)からの(はなし)()けば(じつ)()(こころざし)149()大賛成(だいさんせい)だ。150(まへ)向上会員(かうじやうくわいゐん)()えるが、151到底(たうてい)一人(ひとり)二人(ふたり)(かれ)キユーバーを(うば)()(わけ)にはゆくまい。152()はチウイン太子(たいし)だが、153(これ)から門番(もんばん)(たた)(おこ)し、154()権威(けんゐ)(もつ)(もん)(ひら)かせ、155キユーバーを(ひき)ずり()(かんが)へだからお(まへ)手伝(てつだ)つてくれ』
156レ『ハイ、157(わたし)はレールと(まを)しまして、158向上運動(かうじやううんどう)代表者(だいへうしや)御座(ござ)いますが、159(いま)太子様(たいしさま)のお言葉(ことば)()いて、160(じつ)万民(ばんみん)(ため)欣喜(きんき)()へませぬ。161如何(いか)なる御用(ごよう)なり(とも)御申(おんまを)()(くだ)さいませ』
162 ()(はな)(ところ)へ、163マークは(なが)梯子(はしご)(かた)げて、164ハアハアと(いき)はづませ(なが)らやつて()た。
165マ『オイ、166レール、167到頭(たうとう)梯子(はしご)一本(いつぽん)(ぬす)んで()た、168サ、169(はや)(はや)く』
170レ『ヤ、171そりや御苦労(ごくらう)だつた。172(しか)しな、173ここにチウイン太子様(たいしさま)()みえになつてゐるのだ』
174マ『エ、175エー』
176()つた()り、177吃驚(びつくり)して地上(ちじやう)尻餅(しりもち)をつく。
178チウ『ハヽヽヽヽ、179ヤ、180(まへ)向上会員(かうじやうくわいゐん)か、181(けつ)して心配(しんぱい)()らぬ。182(いま)(この)(をとこ)相談(さうだん)(うへ)183キユーバーを(うば)()るべく(かんが)へてゐる(ところ)だ、184安心(あんしん)せ』
185マ『ヤ、186賢明(けんめい)なる太子様(たいしさま)187有難(ありがた)御座(ござ)います』
188レ『もし太子様(たいしさま)189斯様(かやう)梯子(はしご)(まゐ)りました以上(いじやう)門番(もんばん)(たた)(おこ)すにも(およ)びますまい。190左様(さやう)(こと)をなさいますと、191貴方(あなた)がキユーバーを(とり)()がし(あそ)ばした(こと)が、192千草姫(ちぐさひめ)(さま)(みみ)(はい)るは当然(たうぜん)193(あと)御迷惑(ごめいわく)(おも)()られますから、194どうぞ太子様(たいしさま)此処(ここ)()つてゐて(くだ)さりませ。195吾々(われわれ)両人(りやうにん)196牢番(らうばん)万一(まんいち)抵抗(ていかう)すれば(なぐ)(たふ)しておいてでも、197()悪魔(あくま)(ひき)ずり()して(まゐ)ります』
198太子(たいし)成程(なるほど)199それも一策(いつさく)だ、200(ひと)(ほね)()つて()てくれ。201(その)(かは)りに(この)(こと)成功(せいこう)したら、202屹度(きつと)(まへ)褒美(ほうび)をやる』
203レ『イヤ、204滅相(めつさう)な、205万民(ばんみん)(ため)(いのち)()ててる(わたし)206褒美(ほうび)()しさにこんな(あぶな)(こと)出来(でき)ませうか。207それよりも万民(ばんみん)(さけび)(ごゑ)を、208(こころ)をとめてお()(くだ)さいませ』
209(たい)『イヤ、210()平素(へいそ)から(たみ)(こゑ)()かむとし、211いろいろと変装(へんさう)して市井(しせい)(ちまた)出入(しゆつにふ)し、212前等(まへら)活動振(くわつどうぶり)もよく()つてゐるのだ。213精々(せいぜい)活動(くわつどう)してくれ。214(いま)非常(ひじやう)妨害(ばうがい)(つよ)うて(こま)るであらうが、215(やが)勝利(しようり)(みやこ)(ちか)づくだらう』
216 二人(ふたり)梯子(はしご)(つた)うて(ましら)(ごと)(へい)(のり)()え、217(なか)より(もん)()をソツと()けおき、218どの牢獄(らうごく)にキユーバーがゐるかとよくよく(うかが)へば、219パツパツと(あを)()(たま)(ごと)きものが窓口(まどぐち)から、220()えたりとぼつたりしてゐる……ヤ、221的切(てつき)りここ……と(ちか)より()れば、222二人(ふたり)牢番(らうばん)高鼾(たかいびき)をかいて椅子(いす)にもたれてゐる。223二人(ふたり)牢番(らうばん)(こし)()げてゐる(かぎ)をソツと()り、224(ぢやう)(はづ)し、225一人(ひとり)(なか)()り、226一人(ひとり)牢番(らうばん)監視(かんし)(なが)ら、227キユーバーを引出(ひきだ)(きた)り、228ソツと門外(もんぐわい)首尾(しゆび)よく()()した。229牢番(らうばん)はフツと()(さま)せば、230(らう)()()いてゐる。231自分(じぶん)(こし)(かぎ)(ぬす)まれて(あと)かたもない。232(にはか)に『牢破(らうやぶ)牢破(らうやぶ)り』と呶鳴(どな)()した。233(この)(こゑ)聞付(ききつ)けて、234牢屋(らうや)番人(ばんにん)一斉(いつせい)()()まし、235提灯(ちやうちん)松火(たいまつ)をさげて前後左右(ぜんごさいう)にかけ(まは)る。236チウイン太子(たいし)二人(ふたり)(とく)()()かせ、237荒井ケ嶽(あらゐがだけ)岩窟(がんくつ)にキユーバーを()()み、238レール、239マークの両人(りやうにん)沢山(たくさん)(かね)(あた)へて、240(ある)時機(じき)まで(これ)警護(けいご)せしむる(こと)とした。241二人(ふたり)太子(たいし)(むね)(ほう)じ、242秘密(ひみつ)(まも)り、243(わが)妻子(さいし)にも(これ)打明(うちあ)けなかつた。
244 夜中(やちう)()ぐれば翌日(よくじつ)である……と()ふので、245ジヤンクは四五(しご)役人(やくにん)(めい)じキユーバーを放免(はうめん)すべく(つか)はし()れば、246破獄(はごく)大騒動(おほさうどう)247是非(ぜひ)(とも)(わう)(および)千草姫(ちぐさひめ)報告(はうこく)せねばなるまいと、248(わう)居間(ゐま)(おとづ)()れば、249(すで)にチウイン太子(たいし)(わう)(とも)何事(なにごと)(くび)(あつ)めて(ささや)いてゐる。
250ジヤンク『(まを)()げます。251昨日(さくじつ)御許(おゆるし)(かうむ)りまして、252()のキユーバーを放免(はうめん)せむと、253小役人(こやくにん)(つか)はし調(しら)()れば、254何人(なにびと)かに(ぬす)()られ、255牢屋(らうや)番人(ばんにん)(ども)周章狼狽(しうしやうらうばい)(いた)して()りまする。256万一(まんいち)()れ、257ハルナの(みやこ)(にげ)(かへ)り、258大黒主(おほくろぬし)(まへ)()で、259数万(すうまん)兵士(へいし)拝借(はいしやく)し、260(ふたた)捲土重来(けんどぢうらい)(いた)せば忌々(ゆゆ)しき大事(だいじ)御座(ござ)いますれば、261(ひと)(いま)(うち)八方(はつぱう)()し、262(かれ)在所(ありか)捜索(さうさく)(いた)()(ぞん)じます』
263 (わう)(およ)太子(たいし)平然(へいぜん)として(べつ)(おどろ)きもせず、
264(わう)『ナニ、265キユーバーが破獄(はごく)逃走(たうそう)したと()ふのか。266()てとけ()てとけ、267(べつ)心配(しんぱい)するには(およ)ぶまい』
268ジヤ『(おほ)せでは御座(ござ)いまするが、269(いま)(うち)(かれ)在処(ありか)(つき)()め、270ハルナの(みやこ)()(かへ)らないやうの手段(しゆだん)(めぐ)らさねばなりますまい。271どうか(この)()老臣(らうしん)にお(めい)(くだ)さいます(やう)……』
272(たい)『ヤ、273ジヤンク殿(どの)274(かなら)御心配(ごしんぱい)なさるな。275()心当(こころあた)りがある。276(けつ)して(けつ)してハルナの(みやこ)()(かへ)るやうな(こと)はさせぬ。277()(かく)()(しん)じてくれ』
278ジヤ『(ほか)ならぬ太子様(たいしさま)のお言葉(ことば)279万々(ばんばん)抜目(ぬけめ)御座(ござ)いますまい。280(しか)らば老臣(らうしん)(これ)にて(さが)りませう』
281 千草姫(ちぐさひめ)()()つて一目(ひとめ)(ねむ)られず、282(かつ)(また)聴覚(ちやうかく)非常(ひじやう)鋭敏(えいびん)()り、283()(ささや)きでさへも、284(みみ)()るやうになつてゐた。285ドアを(はい)して(わう)(しつ)()(きた)り、
286『コレ(せがれ)チウイン、287(いま)其方(そなた)言葉(ことば)()けば、288キユーバーの()(うへ)につき、289(なに)確信(かくしん)あるものの(ごと)()つて()つたぢやないか。290サ、291(はは)権威(けんゐ)(もつ)()(まで)詮索(せんさく)する。292何処(どこ)(かく)したのだ。293有体(ありてい)白状(はくじやう)しなさい』
294(たい)母上様(ははうへさま)295(わたし)がそんな(こと)()らう道理(だうり)御座(ござ)いますか。296(いま)ジヤンクの注進(ちうしん)()つてキユーバーの姿(すがた)()えなくなつた(こと)()り、297大変(たいへん)心配(しんぱい)をしてゐた(ところ)御座(ござ)いますよ』
298千草(ちぐさ)『いやいやさうは()はせませぬぞや。299(まへ)言葉(ことば)(はし)にチヤンと(あら)はれてゐる。300キユーバーを(かく)した張本人(ちやうほんにん)はお(まへ)だらうがな』
301(たい)(これ)()しからぬ。302(いやし)くも太子(たいし)()(もつ)夜夜中(よるよなか)303牢獄(らうごく)などへ(まゐ)れますか』
304千草(ちぐさ)『ホヽヽヽヽヽ(まゐ)れないお(かた)がお()(あそ)ばすのだから(めう)だよ。305其方(そなた)太子(たいし)()()(なが)ら、306何時(いつ)王様(わうさま)()(しの)び、307市井(しせい)(ちまた)出没(しゆつぼつ)し、308下層階級(かそうかいきふ)交際(かうさい)をしたり、309(いや)しい(をんな)(たはむ)れてると()(うはさ)だから、310牢獄(らうごく)などへ()くのは朝飯前(あさめしまへ)だよ。311そんな(こと)()つて、312(この)千草姫(ちぐさひめ)313(おほ)みろく生宮(いきみや)胡麻化(ごまくわ)さうとしても駄目(だめ)御座(ござ)んすぞえ』
314(たい)母上様(ははうへさま)315貴女(あなた)(めう)(こと)(おほ)せられますな。316(いま)(まで)一度(いちど)()いた(こと)のない、317(おほ)みろく生宮(いきみや)とは、318(たれ)左様(さやう)(こと)をお()きなさいました』
319千草(ちぐさ)『ヘン、320(まへ)()青二才(あをにさい)(わか)つて(たま)りますかい。321(この)(はは)はな、322神様(かみさま)から()いたのだよ。323(この)肉体(にくたい)今日(けふ)より(あらた)めて、324下津岩根(したついはね)(おほ)みろく(さま)325三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)326()出神(でのかみ)生宮(いきみや)御座(ござ)んすぞや。327チツポけなトルマン(ごく)王妃(わうひ)だなんて(おも)つて(もら)つちや、328(この)神柱(かむばしら)もチツと(ばか)(こま)りますよ。329ホヽヽヽヽヽあのマア、330王様(わうさま)()ひ、331ジヤンクと()ひ、332太子(たいし)()ひ、333(つま)らなさ(さう)なお(かほ)わいの。334それ(ほど)(この)千草姫(ちぐさひめ)が、335(にはか)神柱(かむばしら)になつたのが不思議(ふしぎ)御座(ござ)いますか。336三千世界(さんぜんせかい)一度(いちど)()えすく()出神(でのかみ)生宮(いきみや)御座(ござ)いますぞや』
337(たい)『あ、338左様(さやう)御座(ござ)いますか。339ソラ(まこと)結構(けつこう)340照国別(てるくにわけ)(さま)当城(たうじやう)御越(おこし)(くだ)さいました(その)神徳(しんとく)()つて、341母上様(ははうへさま)(にはか)御神懸(おかむがかり)におなり(あそ)ばし、342()出神(でのかみ)(さま)()ふやうな、343立派(りつぱ)なエンゼルの肉宮(にくみや)御出世(ごしゆつせ)(あそ)ばしたので御座(ござ)いませう。344()いては屹度(きつと)キユーバーの在処(ありか)(ぐらゐ)はお(わか)りになるで御座(ござ)いませうな』
345千草(ちぐさ)『きまつた(こと)だよ。346第一霊国(だいいちれいごく)天人(てんにん)347底津岩根(そこついはね)(おほ)みろく太柱(ふとばしら)348三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)349()出神(でのかみ)肉宮(にくみや)だもの』
350(たい)成程(なるほど)351それは結構(けつこう)神様(かみさま)御座(ござ)います。352(しか)らばどうかキユーバーの在所(ありか)をお()らせ(くだ)さいませ。353それさへお(わか)りになりますれば、354母上(ははうへ)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(たてまつ)り、355父上様(ちちうへさま)(よろこ)んで、356政治(せいぢ)万端(ばんたん)をお(まか)せになるで御座(ござ)いませう』
357千草(ちぐさ)『ホヽヽヽヽヽ、358小賢(こざか)しい、359コレ(せがれ)360(まへ)(はは)をやり()める(つもり)だな。361()(この)(はは)(うたが)つてゐらつしやるのか、362()出神(でのかみ)間違(まちが)ひは御座(ござ)らぬぞや。363(かみ)(けつ)して(うそ)(まを)さぬぞや。364底津岩根(そこついはね)(おほ)みろく(さま)太柱(ふとばしら)(たい)し、365易見(えきみ)(なん)ぞのやうにキユーバーの在所(ありか)(わか)つたら、366()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(しん)じます……などと、367ヘン馬鹿(ばか)にして(くだ)さるな。368相応(さうおう)()によつて、369(この)千草姫(ちぐさひめ)第一霊国(だいいちれいごく)感応(かんおう)し、370()(くに)(そこ)(くに)()すべき牢獄(らうごく)などは(けつ)して(のぞ)きませぬぞや。371左様(さやう)(ところ)天眼通(てんがんつう)使(つか)はふものなら、372折角(せつかく)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(にぶ)り、373悪魔(あくま)巣窟(さうくつ)とならねばなりませぬ。374(だい)それた第一霊国(だいいちれいごく)天人(てんにん)(みたま)に、375牢獄(らうごく)(とう)じてあつた(もの)在所(ありか)()らせ……などとは、376(もの)道理(だうり)()らぬのにも(ほど)があるぢやないか、377ホヽヽヽヽヽ。378(なに)(ほど)(かしこ)いと()つても、379現界(げんかい)(こと)()(かく)380霊界(れいかい)消息(せうそく)到底(たうてい)(わか)りますまいがな。381サア(これ)から(この)トルマン(ごく)底津岩根(そこついはね)(おほ)みろく太柱(ふとばしら)(あら)はれ、382国政(こくせい)(にぎ)り、383三千世界(さんぜんせかい)五六七(みろく)()(いた)根源地(こんげんち)(さだ)めるから、384左様(さやう)心得(こころえ)なされ。385肉体(にくたい)(うへ)からは、386王様(わうさま)千草姫(ちぐさひめ)(をつと)なれど、387(かみ)から()へば(やつこ)同然(どうぜん)388天地霄壤(てんちせうじやう)差異(さい)御座(ござ)いますぞや。389(これ)からの政治(せいぢ)(かみ)(いた)します。390善悪邪正(ぜんあくじやせい)(この)生宮(いきみや)(さば)かねば駄目(だめ)ですよ。391昨日(きのふ)照国別(てるくにわけ)宣伝使(せんでんし)(うた)つてゐたぢやありませぬか。392(かみ)(おもて)(あら)はれて善悪邪正(ぜんあくじやせい)立分(たてわ)ける……と。393いよいよ千草姫(ちぐさひめ)肉体(にくたい)機関(きくわん)とし、394第一霊国(だいいちれいごく)天人(てんにん)(みたま)(おほ)みろく(さま)精霊(せいれい)宿(やど)し、395()出神(でのかみ)となつて(あら)はれ(たま)うた、396三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)だぞえ。397ホツホヽヽヽヽあのマア刹帝利殿(せつていりどの)(むつ)かしい(つら)わいの、398チウインの(なさけ)なさ(さう)面付(つらつき)399ウツフヽヽヽヽヽ』
400(わら)ひこけて(しま)つた。
401大正一四・八・二四 旧七・五 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)