霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 踏違(ふみちが)ひ〔一七九八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第2篇 迷想痴色 よみ:めいそうちしき
章:第9章 第71巻 よみ:ふみちがい 通し章番号:1798
口述日:1926(大正15)年01月31日(旧12月18日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
春山峠の南に、春山村という小部落があった。その一軒家にカンコという男が、名前も知れぬ病にかかって臥せっていた。
友人のキンスが見舞いにやってくる。キンスは病の原因を尋ねる。
カンコは、去年の夏にタラハン市の呉服屋に行き、そこで買い物をした時、呉服屋の娘インジンに恋焦がれてしまった。その後、インジンがカンコの家までわざわざやってきて、何か書き物をくれたのだが、それが恋文じゃないかと思ったとたん、病に臥せってしまったのだと言う。
キンスは、字の読めないカンコに代わって、その書き物を読んでやる。それは、カンコが買った木綿の請求書であった。
キンスは気の病を治すためには申の年・申の月・申の日・申の刻に生まれた女の生胆が効くという噂を信じて、友の恋の病を治すために、自分の妹の生胆をとろうとする。
妹のリンジャンを呼んでくるが、そこへ玄真坊一行が暴れこんできて金銭を要求する。
玄真坊はリンジャンの美貌を見て、気を引こうと、にわかに僧侶となり、自分は二人の泥棒からリンジャンを守ろうとしたのだ、と格好をつける。
しかしリンジャンは玄真坊の顔を見て、自分の妹をだまして汚したオーラ山の偽救世主だと見破り、役人を呼ぼうと外へ駆け出してしまった。
玄真坊らは役人が来る前にさっさと逃げ出してしまう。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7109
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 542頁 修補版: 校定版:122頁 普及版:56頁 初版: ページ備考:
001 春山峠(はるやまたうげ)南麓(なんろく)春山村(はるやまむら)()全戸数(ぜんこすう)七八戸(しちはちこ)小部落(せうぶらく)彼方(あなた)此方(こなた)()らばつてゐる。002(いづ)れの(いへ)(のき)(かたむ)き、003(かべ)はおち、004(べつ)煙突(えんとつ)はなくとも(かべ)()ちた碁盤形(ごばんがた)壁下地(かべしたぢ)(あな)から、005赤黒(あかぐろ)(けむり)朝晩(あさばん)立上(たちのぼ)つてゐる。006(この)(むら)一番(いちばん)(たか)景勝(けいしよう)位置(ゐち)()めた一軒家(いつけんや)にはカンコと()一人(ひとり)(をとこ)()のつかぬ(やまひ)にかかつて007日々(ひび)なす(こと)もなく(やぶ)蒲団(ぶとん)(うへ)(いき)づいてゐる。008太陽(たいやう)(なな)(さが)りと(おぼ)しき(ころ)009カンコの友人(いうじん)キンスがやつて()て、010(はすかひ)になつた()をガラリと()(なが)ら、
011キンス『オイ、012兄貴(あにき)013エー、014(ひと)(うはさ)()けば(この)(ごろ)は、015(まへ)(なん)だかブラブラと(からだ)(すぐ)れぬやうだが、016一体(いつたい)どうしたと()ふのだい。017(おれ)昨日(きのふ)タラハン()から(かへ)つて()たのでチツともお(まへ)(こと)()らず訪問(はうもん)にも()ないで、018本当(ほんたう)にすまなかつたよ』
019カンコ(元気(げんき)ナイ(こゑ)で)『オー、020(まへ)友達(ともだち)のキンスだな、021そらよう()てくれた。022マアマアマア(ちや)でも()かして()んでくれ。023そして(ついで)(おれ)にも、024一杯(いつぱい)025うまさうな(ところ)()まして()しいものだな』
026キ『ヨシ、027(まへ)(こと)なら(ちや)()かしてやらう、028鰥暮(やもめぐら)しでは、029飯焚(めしたき)にも(こま)つてゐるだらう、030(はや)う、031いい(かか)でも(もら)つたがよからう。032独身生活(どくしんせいくわつ)もよいやうなものの、033人間(にんげん)()ふものは、034何時(なんどき)(からだ)変化(へんくわ)()るか(わか)つたものぢやないからのう。035乞食(こじき)()でもいいから(をんな)()のついたものを(さが)して()てお(まへ)世話(せわ)してやらうと(おも)ふがな、036今時(いまどき)(をんな)は、037何奴(どいつ)此奴(こいつ)生意気(なまいき)になつてゐやがつてな、038(かぜ)がふいた(くらゐ)ぢや、039其処(そこ)らあたりには()ちては()りくさらぬのだ。040(おれ)親父(おやぢ)(はなし)によると、041(むかし)(をんな)()(やつ)三界(さんかい)(いへ)なしとか()つて042本当(ほんたう)(をとこ)(たい)しては(あたま)(あが)らないものだつたさうな、043(ほとん)奴隷(どれい)(あつか)玩具(おもちや)(あつか)ひをされて()つたさうだが、044今時(いまどき)(をんな)(からだ)達者(たつしや)(やつ)工女(こうぢよ)になつて大会社(だいくわいしや)(かか)へられよる、045電話(でんわ)交換手(かうくわんしゆ)から自動車(じどうしや)運転手(うんてんしゆ)046役場(やくば)書記(しよき)から巡査(じゆんさ)(まで)採用(さいよう)され、047一人前(いちにんまへ)(をとこ)(かた)(なら)べて(ある)くのみか、048自分(じぶん)人間(にんげん)としての一番(いちばん)快楽(くわいらく)(こと)をするにしても、049男子(だんし)から(かね)をとり、050高等(かうとう)内侍(ないじ)になつたり、051辻君(つじぎみ)になつたり、052それはそれは(をんな)職業(しよくげふ)()ふものは、053あり(あま)つて()るのだから、054仲々(なかなか)(をんな)廃物(すたりもの)がないので、055(おれ)もヤツパリ独身生活(どくしんせいくわつ)(つづ)けてゐるのだ。056(この)(ごろ)男子(だんし)()ふものは、057それを(おも)ふと、058(をんな)にはチツトも(あたま)(あが)りはせないワ。059まるつきり(をんな)世界(せかい)だ。060(この)(あひだ)愛国婦人会(あいこくふじんくわい)(のぞ)いて()たが、061何奴(どいつ)此奴(こいつ)(をんな)(ばか)りだつたよ』
062カ『そら、063さうだらうのう、064(おれ)は、065もう、066(なん)だか、067バーツとしてしまつたのだ』
068キ『バーツとしたつて、069何処(どこ)がバーツとしたのだい、070病気(びやうき)(おこ)つたと()ふのか』
071カ『ウン、072トツト、073モウ、074(なん)(こと)アない、075バーツとして、076ネツから気分(きぶん)(すぐ)れぬのだ』
077キ『フン、078さうすると、079病気(びやうき)だな』
080カ『病気(びやうき)(なに)()らぬが、081(おれ)(やまひ)だ』
082キ『(やまひ)病気(びやうき)(おな)(こと)ぢやないか』
083カ『それが、084バーツとした(やまひ)だ』
085キ『バーツとした(はじ)まりは如何(どう)ぢやつたのだい』
086カ『バーツとした(やまひ)(はじ)まりは健康体(けんかうたい)だ』
087キ『健康体(けんかうたい)(きま)つてるぢやないか、088バーツとした原因(げんいん)()かせと()ふのだよ』
089カ『原因(げんいん)か、090ウン、091ヤツパリ、092(いん)だ、093淫欲(いんよく)から(おこ)つてバーツとしたのだ』
094キ『淫欲(いんよく)から(おこ)つてバーツとした、095ねつからバーツとしないぢやないか、096(まへ)(おれ)との(あひだ)だから、097(なに)(かく)(こと)はない、098(まへ)(ため)には、099どんな(こと)でもする覚悟(かくご)だ、100竹馬(ちくば)(とも)ぢやないか、101大方(おほかた)(こころ)煩悶病(はんもんびやう)だらう、102(つつ)まず(かく)さず(おれ)()つて()かせろ』
103カ『(わら)はへんか、104大方(おほかた)(わら)ふだらう、105ヤツパリ、106やめとこか、107あーア、108バーツとした』
109キ『(なに)110(わら)ふものかい、111しつかり()(たま)へ』
112カ『そんなら、113どこ(まで)(わら)はせんな』
114キ『ウン、115(だん)じて(わら)はぬ、116サアサア()ふたり()ふたり』
117カ『そんなら、118()ふがな、119(わし)去年(きよねん)(なつ)だつたか、120タラハン()()丸屋(まるや)(まはし)一丈(いちぢやう)()ひに()つたのだ、121そした(ところ)が、122そこの()(まる)呉服屋(ごふくや)(むすめ)さまに、123インジンと()別嬪(べつぴん)があつたのだ。124それから……バーツとしたのやな』
125キ『アツハヽヽヽ、126何故(なぜ)(また)一丈褌(いちぢやうまはし)()ひに()つたのだい』
127カ『七尺(しちしやく)(まはし)にして、128(のこ)りの三尺(さんじやく)手拭(てぬぐひ)にしようと(おも)つてな、129一丈(いちぢやう)(まはし)()つて(くだ)さいと()つたら、130インジンさまが、131(おれ)()を、132(こま)こう()いてな、133春山村(はるやまむら)のカンコさまですか、134(かね)はいいから、135まア()つて(かへ)つて(くだ)さい」と()つてな、136キレイな白魚(しらうを)のやうな()でな、137(まはし)御丁寧(ごていねい)(つつ)んでな、138(おれ)(ふところ)突込(つつこ)んで(くだ)さつたのだ。139それからやさしい、140(なん)とも()へぬ目付(めつき)をしてな、141(また)()(くだ)さいよ」と仰有(おつしや)つたのだ。142その(かほ)()るなり、143(わし)はな、144バーツとして()がまひさうになつたのだ。145それからヤツトの(こと)(うち)(かへ)つて()て、146(この)(まはし)自分(じぶん)(また)にするのは勿体(もつたい)ない、147手拭(てぬぐひ)にするのも勿体(もつたい)ないと148(とこ)()にブラ()げて毎日(まいにち)日日(ひにち)(をが)んでゐたのだ。149さうすると、150(その)(まはし)(なか)からインジンさまの、151やさしい姿(すがた)がボーツと(あら)はれて()る、152その(たび)(ごと)(おれ)(からだ)がバーツとするのだ。153それから月末(げつまつ)になると、154カランコロン カランコロンと駒下駄(こまげた)(おと)がしたと(おも)へば、155やさしい(こゑ)で「あのカンコさまのお(たく)はここで御座(ござ)いますか、156(わたし)はタラハン()()丸屋(まるや)のインジンで御座(ござ)います。157一寸(ちよつと)ここあけて(くだ)さい」と()(こゑ)がするので、158(ゆめ)(うつつ)(まぼろし)ぢやないかと(おも)(なが)(かど)()()けて()ると、159(おに)でも(つか)むやうな男衆(をとこしう)つれて、160やさしい(こゑ)で「ア、161カンコさま、162毎度(まいど)御贔屓(ごひいき)に」と()つて、163(なん)だか()いたものを(くだ)さつたのだ。164(なん)だかあまり(なが)くない、165(ひと)()三行(みくだ)(はん)(くらゐ)だから、166(これ)不思議(ふしぎ)167まだ結婚(けつこん)してゐないのだから、168(これ)離縁状(りえんじやう)ぢやあるまいし、169結婚(けつこん)申込(まをしこみ)ぢやないかと(おも)つた途端(とたん)に、170バーツとして、171そこへ(たふ)れて(しま)つた。172やつとの(こと)で、173()がついて()ればインジンさまの姿(すがた)()えず、174隣村(となりむら)薮井竹庵(やぶゐちくあん)さまが()えて、175介抱(かいはう)してくれておつた。176それから毎日(まいにち)日々(ひにち)(からだ)はやせる(ばか)りで、177コレ、178(この)(とほ)(からだ)(ほね)(かは)(ばか)りになり179竹細工(たけざいく)濡紙(ぬれがみ)()つたやうに(すぢ)(ばか)りになつて(しま)つたのだ』
180キ『オイ、181その書物(かきもの)()せて()よ、182(おれ)()んでやらう、183(まへ)無学(むがく)だからのう』
184カ『竹庵(ちくあん)さまに()んで(もら)はふと何遍(なんべん)(おも)つたかしれないが、185あんまり(はづか)しいから(かく)してゐたのだ。186(わら)はんでくれ、187そして秘密(ひみつ)(まも)つてくれよ』
188大切(たいせつ)さうに(ふところ)から書物(かきもの)()()す。189キンスは手早(てばや)く、190書物(かきもの)をとつて
 
191   (おぼえ)
192 一、193白木綿(しろもめん)一丈(いちぢやう)
194 (みぎ)代金(だいきん)四拾八銭(しじふはつせん)(なり)   ()丸屋(まるや)
195  春山村(はるやまむら)のカンコ(さま)
 
196()()げ、
197キ『ハヽア、198此奴(こいつ)(まはし)妄念(まうねん)だ、199四十八銭(しじふはつせん)(かね)受取(うけと)りに()たのだ。200恋文(こひぶみ)でも結婚申込書(けつこんまをしこみしよ)でも(なん)でもないワ、201チツと(ゆめ)(さま)さないか、202(なん)だ、203恋病(こひわづらひ)をしやがつて、204あまりバツとせないぢやないか』
205カ『掛金(かけ)掛金(かけ)206(こひ)(こひ)だ。207仮令(たとへ)インジンさまが(ほれ)()なくても(おれ)(はう)十分(じふぶん)(ほれ)てゐるのだ。208それだから、209どうでも、2091かうでも、210インジンさまと()はなくちや、211バーツとした(やまひ)病気(びやうき)(なほ)らぬのだ』
212キ『エー、213(こま)つた(やつ)だ。214(しか)(おれ)もお(まへ)のお(とう)さまには(いのち)のない(ところ)(たす)けて(もら)つたのだから、215(たす)けねばなるまい。216()(やまひ)(なほ)すには(さる)(とし)(さる)(つき)(さる)()(さる)(こく)(うま)れた(をんな)生肝(いきぎも)()つて()ましたら(すぐ)(なほ)ると()(こと)だ。217(おれ)(いもうと)丁度(ちやうど)それだ。218()つとれ、219(まへ)病気(びやうき)(なほ)(ため)に、220(これ)から()んで221(いもうと)生肝(いきぎも)をとつて()る』
222()(なが)らスタスタと駆出(かけだ)し、223(わが)()(かへ)つて()ると、224(いもうと)のリンジヤンは(うれ)しさうに(おもて)()(むか)へ、
225『お(あに)さま、226どこへ()つてゐらしたの、227大変(たいへん)心配(しんぱい)してゐましたよ』
228キンス『ヤア一寸(ちよつと)229あんまり景色(けしき)がいいので春山峠(はるやまたうげ)中途(ちうと)(まで)(のぼ)つてそこらの眺望(てうばう)()てゐたのだ、230アー、231いい気持(きもち)だつたよ。232(しか)しな、233今日(けふ)はお(まへ)(おれ)一杯(いつぱい)()みたいのだが、234(さけ)一本(いつぽん)つけてくれないか』
235リンジヤン『(あに)さま、236今日(けふ)(かぎ)つて兄妹(きやうだい)(さかづき)をするとは、237(へん)ぢやありませぬか。238(なん)(また)そんな(こと)仰有(おつしや)るのです、239(これ)には(なに)(ふか)様子(やうす)がありさうに(おも)はれます。240どうぞハツキリ()つて(くだ)さいな』
241キ『(じつ)(ところ)(おれ)友人(いうじん)のカンコがタラハン()()丸屋(まるや)(むすめ)さまに恋慕(れんぼ)恋病(こひやまひ)(わづら)つてゐるのだ。242(これ)(なほ)すにはお(まへ)(ちから)をかるより(ほか)にないのだ。243どうだ(あに)一生(いつしやう)(ねがひ)だから()いてくれまいか。244(おれ)もカンコの父親(てておや)(おん)になつて()るのだから、245御恩報(ごおんはう)じをするのは(この)(とき)だからのう』
246リン『(わたし)が、247どうすれば、2471いいのですか』
248キ『(いもうと)249(こら)へてくれ、250(じつ)はお(まへ)(きも)251イヤイヤイヤ肝煎(きもい)りで(ひと)つ、252カンコの病気(びやうき)(なほ)して(もら)()いのだ』
253リン『()(かく)254(あに)さまの友達(ともだち)(わる)いのだから255(わたし)がお見舞(みまひ)(あが)りませう』
256キ『ヤア、257そりや有難(ありがた)い、258(ぜん)(いそ)げだ、259サア()かう』
260(ここ)兄妹(きやうだい)二人(ふたり)はカンコの破家(あばらや)さして(いそ)いで()つて()れば、261カンコは(やぶ)(たたみ)(うへ)(だい)()になつて(たふ)れてゐる。262キンスは友達(ともだち)危急(ききふ)()躊躇(ちうちよ)するに(しの)びず、263(おも)()つて(いもうと)(むか)(なみだ)(なが)らに、
264キ『オイ、265(いもうと)リンジヤンよ、266(まへ)(はは)()いてゐたが、267(さる)(とし)268(さる)(つき)269(さる)()270(さる)(こく)(うま)れた(をんな)ださうだな。271(まへ)生肝(いきぎも)をとつてカンコに(すぐ)のませばカンコの病気(びやうき)本復(ほんぷく)すると()(こと)だから、272どうぞ、273(あに)(かほ)()てて生命(いのち)()れないか』
274リン『そら、275(あに)さま無理(むり)ぢや御座(ござ)いませぬか、276何程(なんぼ)(なん)でも肝玉(きもだま)(まで)とらいでも病気(びやうき)本復(ほんぷく)方法(はうはふ)御座(ござ)いませう、277どうぞ(わたし)(いのち)(だけ)(たす)けて(くだ)さい』
278キ『イヤ(おれ)(をとこ)だ、279友達(ともだち)病気(びやうき)(たす)けてやらうと()つた(かぎ)りは、280(あと)にはひかれぬ。281(あに)がお(まへ)(きも)をとり()してカンコに()ましてやらねばおかぬのだ』
282リン『そら、283(あに)さま、284あまりで御座(ござ)います。285どうぞお(ゆる)(くだ)さいませ』
286 かく(はな)してゐる(ところ)玄真坊(げんしんばう)287コブライ、288コオロの三人(さんにん)が、289何処(どこ)でぼつたくつて()たか三尺(さんじやく)秋水(しうすい)()(はな)ち、290粗末(そまつ)一枚戸(いちまいど)()(やぶ)()()んで()た。291リンジヤンは(この)姿(すがた)()るよりアツと(おどろ)き、
292リン『(あに)さま、293(たす)けて(くだ)さい、294(こは)い、295(きも)(つぶ)れましたワ』
296キ『エー腑甲斐(ふがひ)ない(やつ)だ、297(きも)(つぶ)れたなら、298もうお(まへ)(よう)はないわい。299エー、300何処(どこ)泥棒(どろばう)()らぬが、301()らぬ(とき)に、302()やがつて……コラ泥棒(どろばう)303ケツタイな(つら)しやがつて(ことわ)りもなしに(ひと)(いへ)()ると()(こと)があるものか、304エー、305()()()()け』
306コブライ『(ひと)(いへ)抜刀(ばつたう)這入(はい)るは(おれ)(たち)商売(しやうばい)だ。307ゴテゴテ()かすと、308(かさ)(だい)()()すぞ。309こんなチツポケな(いへ)()て、310(かね)があらうとは(おも)はない、311御飯(ごはん)()いて()せ、312(この)盗公(どろこう)は、313チツト小盗児(せうとる)(ちが)ふのだ、314(けつ)して貧乏人(びんばふにん)(いじ)めない。315(めし)五六升(ごろくしよう)(ばか)()いてくれ、316代金(だいきん)(はら)つてやるから』
317キ『どうかお(まへ)勝手(かつて)()いてくれないか、318(じつ)(おれ)は、319此家(ここ)(もの)ぢやない、320ここの主人(しゆじん)人事不省(じんじふせい)(おちい)つてゐるのだから、321介抱(かいはう)()てゐるのだからのう』
322コブ『さうすると、323貴様(きさま)此家(ここ)主人(しゆじん)ぢやないのか、324ウン、325(わり)とは親切(しんせつ)(やつ)ぢやのう。326それではお泥棒様(どろぼうさま)がお()づから御飯(ごはん)をお()(あそ)ばしてやらうかのう、327どつこへも()てはいけないぞ。328(また)どつかへ密告(みつこく)でもすると、329面倒(めんだう)いからのう』
330キ『ヨシヨシ()げも(かく)れも(いた)さぬわい、331マア 332ユツクリと(めし)でも()いて()つてくれ、333その(かは)(この)(むら)(ばか)りは、334(おびや)かさぬやうにしてくれ』
335コブ『ヘン、336あまり見損(みそこな)ひをして(もら)ふまいかい。337未来(みらい)のタラハン(じやう)左守司様(さもりのかみさま)だぞ』
338()(なが)らコオロと(とも)(きび)()いたのを二升(にしよう)(ばか)(をけ)(かし)ぎ、339(かま)をかけて夕飯(ゆふはん)用意(ようい)(はじ)めかけた。340カンコはヤツパリ(むし)(いき)(たふ)れてゐる。341玄真坊(げんしんばう)はリンジヤンの(うつく)しい(かほ)をツラツラ(なが)(よだれ)をたらし、342()(ほそ)うし、343心猿意馬(しんゑんいば)にかられて(また)もや持病(ぢびやう)(おこ)しかけてゐる。344カンコはキンスの手厚(てあつ)介抱(かいはう)によつて(やうや)回復(くわいふく)(たたみ)(うへ)()(あが)り、345見馴(みな)れぬ(をとこ)()てゐるのに、346(また)もや(きも)(つぶ)し、
347『オイ、348キンス、349どこの(ひと)ぢやか()らぬが、350(また)どうやら、351バーツとしさうだわい』
352(げん)『コレコレお女中(ぢよちう)353(なに)(ふる)ふてゐるのか、354(けつ)して御心配(ごしんぱい)なさるな、355此奴(こいつ)()両人(りやうにん)はお見掛(みかけ)(どほ)りの泥棒(どろばう)御座(ござ)る。356当家(たうけ)(あば)()み、357(めし)()はせと()つて()るのは(じつ)(いつは)りだ。358本当(ほんたう)(はら)をたたくと、359(まへ)さまがこの(いへ)()たのを()ぎつけ、360否応(いやおう)なしに手込(てご)みにせむと、361拙者(せつしや)木陰(こかげ)(やす)んでゐるのを()らず(はな)しあつて()るのを()いて、362(まへ)さまの危急(ききふ)(すく)ふためにやつて()たが、363此奴(こいつ)()凶器(きやうき)(もつ)(むか)つて()たから364(わたくし)(けん)()いて応戦(おうせん)したのだ。365此奴(こいつ)()二人(ふたり)金箔(きんぱく)()きの泥棒(どろばう)だが、366(おれ)天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)天帝(てんてい)化身(けしん)天真坊(てんしんばう)()名僧知識(めいそうちしき)だ。367(この)天真坊(てんしんばう)()(たま)もお(まか)せなさい。368さうなれば神仏(しんぶつ)御加護(おかご)により、369福徳円満(ふくとくゑんまん)寿命長久(じゆみやうちやうきう)(うたが)ひなしだ』
370リン『ハイ、371何分(なにぶん)よろしく御保護(ごほご)(ねが)()げまする、372()(なか)泥棒(どろばう)(くらゐ)(おそろ)しいものは御座(ござ)いますせぬからな。373地震(ぢしん)374(かみなり)375火事(くわじ)376親爺(おやぢ)よりも(おそろ)しいのは泥棒(どろばう)御座(ござ)いますワ』
377 コブライは(きび)()(なが)玄真坊(げんしんばう)(かほ)をチラリと(なが)め、
378『チエツ、379玄真坊(げんしんばう)さま、380あまりひどいぢやありませぬか』
381 玄真坊(げんしんばう)大喝(たいかつ)一声(いつせい)
382『バカ、383()()かねい野郎(やらう)だな』
384コオ『拙者(せつしや)命令(めいれい)する。385玄真坊(げんしんばう)(むすめ)世話(せわ)するがよい、386コブライは御飯(ごはん)用意(ようい)をせつせと(いた)せ』
387コブ『チエツ、388馬鹿(ばか)にしやがる』
389()(なが)襷十字(たすきじふじ)にあやどり、390鉢巻(はちまき)(よこ)にねぢ、391せつせと飯焚(めした)きの用意(ようい)にかかつてゐる。
392 リンジヤンはマジマジと玄真坊(げんしんばう)(かほ)見守(みまも)り、393ハツと(あき)れて()りかへり、
394『ヤア、395(まへ)はオーラ(さん)立籠(たてこも)り、396星下(ほしくだ)しの芸当(げいたう)をやり、397(わたし)(いもうと)手込(てご)めにした売僧(まいす)だな』
398(げん)『ハツハヽヽヽ手込(てご)めにしても、399生命(いのち)(けつ)して()らないよ。400(いのち)(まで)(うち)()んで(ほれ)()たのは、401(これ)神様(かみさま)(むす)んだ(えん)だらう。402つながるお(まへ)(おれ)女房(にようばう)となつて(しか)るべき神様(かみさま)からの(えん)(むす)ばれてあるのだ』
403 リンジヤンは、
404『エー、405けがらはしい売僧坊主(まいすばうず)406これからお役所(やくしよ)(うつた)へて、407(いもうと)(かたき)()たねばおかぬ、408覚悟(かくご)しや』
409裏口(うらぐち)より()()し、410勝手(かつて)(おぼ)えし田圃道(たんぼみち)を、411何処(いづこ)ともなく()()して(しま)つた。
412 玄真坊(げんしんばう)413コブライ、414コオロの三人(さんにん)は、
415『こりや、416かうしては()られぬ』
417(また)もや裏口(うらぐち)より月夜(つきよ)野原(のはら)を、418空腹(くうふく)(かか)へて何処(どこ)ともなく()()して(しま)つた。
419大正一五・一・三一 旧一四・一二・一八 於月光閣 北村隆光録)
   
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