霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 泥壁(どろかべ)〔一八〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第2篇 迷想痴色 よみ:めいそうちしき
章:第12章 泥壁 よみ:どろかべ 通し章番号:1801
口述日:1926(大正15)年01月31日(旧12月18日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玄真坊、コブライ、コオロの3名は、左守館に詰めていた衛兵たちに、苦もなく取り押さえられてしまう。
市中の火事も始末がついたところで、3人の泥棒を右守のアリナが取り調べることになった。
コブライ・コオロは火事の夜、左守の屋敷に泥棒に入ったと白状するが、玄真坊は、自分の兄弟分である左守の家を火事から守るために加勢に来た、と強弁して譲らない。
アリナは扱いに困ってとりあえず牢に戻すが、玄真坊は平気の平左で、左守・右守を茶化す歌を歌う。
また、左守・右守を無道の野心家とののしり、天意を行う自分は助からねばならない、などという経を読み、まったく罪の意識がない。
様子を見にアリナが牢へやってきても、反省の色も見せず、あべこべにアリナとシャカンナをののしる有様である。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 557頁 修補版: 校定版:163頁 普及版:77頁 初版: ページ備考:
001乱麻(らんま)(ごと)(みだ)れたる
002タラハン(ごく)内政(ないせい)
003スダルマン太子(たいし)即位(そくゐ)より
004施政方針(しせいはうしん)一変(いつぺん)
005左守(さもり)右守(うもり)朝夕(あさゆふ)
006治国(ちこく)安民(あんみん)国富(こくふう)
007(つちか)(やしな)民心(みんしん)
008()たれば(ここ)国内(こくない)
009(やうや)塗炭(とたん)()(のが)
010万事万端(ばんじばんたん)(ちよ)について
011みろくの御世(みよ)(たた)へられ
012(しも)国民(こくみん)一様(いちやう)
013新王殿下(しんわうでんか)(おや)(ごと)
014主人(しゆじん)(ごと)()(ごと)
015尊敬(そんけい)愛慕(あいぼ)しながらも
016(なが)春日(はるひ)()けて()
017山野(さんや)(はな)()()てて
018新緑(しんりよく)(したた)()(ひかり)
019彼方(あなた)此方(こなた)時鳥(ほととぎす)
020()太平(たいへい)(うた)()
021好事(かうじ)()(おほ)しの()(たとへ)
022タラハン城市(じやうし)目貫(めぬき)()
023()(みち)さへも広小路(ひろこうぢ)
024大廈高楼(たいかかうろう)(たちま)ちに
025火焔(くわえん)(した)(つつ)まれて
026()()(うち)倒壊(たうくわい)
027数十軒(すうじつけん)豪商(がうしやう)
028将棋倒(しやうぎだふ)しとなりにける
029この(きよ)(じやう)じて玄真坊(げんしんばう)
030コブライ、コオロの両人(りやうにん)
031(しめ)(あは)せて左守司(さもりがみ)
032シヤカンナ(やかた)(しの)()
033金銀財宝(きんぎんざいほう)(うば)ひとり
034日頃(ひごろ)大望(たいまう)(たつ)せむと
035(かみ)ならぬ()(かな)しさに
036(わが)()危難(きなん)のかかるをば
037つゆ白煙(しらけむり)くぐりつつ
038左守(さもり)(やかた)裏門(うらもん)
039くぐりを(おし)()(しの)()
040(とほ)市中(しちう)見渡(みわた)せば
041(をり)から(かがや)月光(つきかげ)
042火焔(くわえん)(つつ)まれ(すみ)(ごと)
043(ひかり)(うしな)(ふる)ひゐる
044その光景(くわうけい)(すさま)じき
045この()(じやう)じて三人(さんにん)
046(おく)()(ふか)(しの)()
047宝庫(ほうこ)錠前(ぢやうまへ)()()つて
048(をど)()まむとする(とき)しも
049衛兵(ゑいへい)(ども)見付(みつ)けられ
050一網打尽(いちまうだじん)三人(さんにん)
051高手(たかて)小手(こて)(しば)られて
052本城内(ほんじやうない)牢獄(らうごく)
053()()まれたるぞ浅間(あさま)しき。
054 玄真坊(げんしんばう)(ほか)二人(ふたり)火事(くわじ)(さわ)ぎを(さいは)ひに左守(さもり)(やかた)(しの)()み、055宝庫(ほうこ)(おし)(やぶ)つてシコタマ財宝(ざいほう)(うば)はむと(はたら)(をり)しも、056物蔭(ものかげ)(かく)れてゐた十数(じふすう)衛兵(ゑいへい)()もなく取押(とりおさ)へられ、057タラハン城内(じやうない)営倉(えいさう)護送(ごそう)されて一人々々(ひとりひとり)独房(どくばう)()()まれて(しま)つた。
058 火事(くわじ)(やうや)くにして(をさ)まり、059四方(しはう)より(あつ)まる義捐金(ぎゑんきん)同情金(どうじやうきん)によつて(ふたた)(もと)大商店(だいしやうてん)経営(けいえい)するの(はこ)びが(まと)まり、060復興気分(ふくこうきぶん)(ただよ)ふて()たので、061そろそろ三人(さんにん)泥棒(どろばう)調(しら)べに()りかかつた。062()第一(だいいち)玄真坊(げんしんばう)()()し、063右守(うもり)(かみ)のアリナが調(しら)ぶる(こと)となつた。
064 アリナは厳然(げんぜん)として高座(かうざ)(ひか)へてゐる。065玄真坊(げんしんばう)後手(うしろで)(くく)られた(まま)白洲(しらす)引出(ひきだ)され豪然(がうぜん)椅子(いす)(こし)()ちかけ、066やや()()となつて右守(うもり)(にら)みつけ、067(こころ)(なか)で「この青二才(あをにさい)()068(なに)猪口才(チヨコザイ)な、069まだ(くち)(あた)りに(ちち)がついてゐる。070(なに)(ほど)(こと)があらう」と071(くち)をへの()(むす)んでアリナの訊問(じんもん)()つてゐる。
072アリナ『その(はう)姓名(せいめい)(なん)(まを)すか』
073(げん)『ヽヽヽヽヽ』
074アリ『その(はう)住所(ぢうしよ)姓名(せいめい)(あきら)かに(まを)せ』
075(げん)拙者(せつしや)現住所(げんぢうしよ)はタラハン城内(じやうない)第一牢獄(だいいちらうごく)だ』
076アリ『姓名(せいめい)(なん)()ふか』
077(げん)(この)(はう)姓名(せいめい)()いて(なん)(いた)す。078たつて()名乗(なの)れとならば()はぬ(こと)もない、079(わが)()()いて(おどろ)くな。080(そもそ)(われ)こそは第一霊国(だいいちれいごく)天人(てんにん)081天帝(てんてい)化身(けしん)082天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)083天真坊様(てんしんばうさま)()つて左守(さもり)のシヤカンナが兄弟分(きやうだいぶん)だ。084火事見舞(くわじみまひ)(ため)にシヤカンナの(やかた)()()類焼(るゐせう)(なん)(おそ)れ、085宝庫(ほうこ)宝物(ほうもつ)安全地帯(あんぜんちたい)(はこ)びやらむと、086()るものも取敢(とりあへ)(ぢやう)()()らむとする(をり)しも、087(わけ)(わか)らぬ木端武者(こつぱむしや)(ども)横合(よこあひ)より()()し、088盲滅法界(めくらめつぱふかい)天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)科人(とがにん)(あつかひ)をなし、089斯様(かやう)(ところ)(おし)()みよつたのだ。090その(はう)(ごと)青二才(あをにさい)には、091仮令(たとへ)右守司(うもりのかみ)でも相手(あひて)にはならない。092不審(ふしん)があればシヤカンナを()んで()い、093トツクリと天地(てんち)道理(だうり)()いて()かせる(ほど)に、094アーン……。095こりや青二才(あをにさい)096(おれ)(ばく)()かぬか、097煙草(たばこ)一服(いつぷく)()ませ、098左守司(さもりのかみ)兄弟分(きやうだいぶん)斯様(かやう)虐待(ぎやくたい)(いた)すものがあるものか、099不心得千万(ふこころえせんばん)にも(ほど)がある。100火事見舞(くわじみまひ)(きやく)泥棒(どろばう)(わか)らぬ(くらゐ)(こと)101どうして一国(いつこく)右守(うもり)(つと)まると(おも)ふか、102チト(しつか)(いた)したがよからうぞ』
103アリ『(しか)らばその(はう)(たづ)ねるが、104(なに)(ゆゑ)火事見舞(くわじみまひ)()()るのに覆面(ふくめん)頭巾(づきん)()たのか、105(なに)(ゆゑ)兇器(きようき)()つて()()んで()たのか』
106(げん)『ハツハヽヽヽ、107(さて)(さて)(わか)らぬ右守(うもり)だな、108(そら)からは一面(いちめん)()()(あめ)109火事場(くわじば)()(はたら)かうと(おも)へば覆面(ふくめん)頭巾(づきん)当然(あたりまへ)(こと)だ。110かの消防隊(せうばうたい)()よ、111一人(ひとり)(のこ)らず覆面(ふくめん)頭巾(づきん)装束(いでたち)ぢやないか』
112アリ『(しか)らば(なに)(ゆゑ)三尺(さんじやく)秋水(しうすゐ)(ひらめ)かして這入(はい)つたか、113()理由(りいう)(わか)らぬぢやないか、114てつきり泥棒(どろばう)目的(もくてき)ぢやらう』
115(げん)『アツハヽヽヽ、116(わけ)(わか)らぬにも(ほど)があるわい。117(にはか)火消(ひけし)(こと)とて(とび)もなし、118(まとひ)もなし、119()むを()丸太旅館(まるたりよくわん)火事羽織(くわじばおり)()につけ、120武士(ぶし)(たましひ)たる(かたな)(ひつさ)万一(まんいち)警戒(けいかい)(そな)ふる(ため)だ。121()左守(さもり)屋敷(やしき)には数十人(すうじふにん)衛兵(ゑいへい)(おのおの)武器(ぶき)携帯(けいたい)し、122三尺(さんじやく)秋水(しうすゐ)()いて警固(けいご)(きび)しく(ひか)へてゐるぢやないか。123火事(くわじ)混雑(こんざつ)によつて衛兵(ゑいへい)七八分(しちはちぶ)(まで)消防(せうばう)応援(おうゑん)出掛(でか)け、124左守(さもり)(やかた)(じつ)不安(ふあん)(きは)まる無防備(むばうび)同様(どうやう)125兄弟分(きやうだいぶん)(よしみ)(もつ)二人(ふたり)部下(ぶか)引率(ひきつ)応援(おうゑん)(むか)つたのだ。126かかる親切(しんせつ)なる吾々(われわれ)行動(かうどう)(たい)し、127青二才(あをにさい)分際(ぶんざい)として訊問(じんもん)するとは片腹痛(かたはらいた)いわい。128(なんぢ)(ごと)木端武者(こつぱむしや)(はな)した(ところ)(わけ)(わか)らうまい、129一刻(いつこく)(はや)左守(さもり)(この)()()んで()い、130キツト黒白(こくびやく)(わか)るだらう』
131アリ『その(はう)(ともな)ふてゐた両人(りやうにん)調(しら)べて()れば132(いづ)れも泥棒(どろばう)目的(もくてき)這入(はい)つたと(まを)()ててゐるぢやないか。133(なに)(ほど)(なんぢ)小利口(こりこう)抗弁(かうべん)するとも、134(すで)(すで)両人(りやうにん)自白(じはく)によつて強盗(がうたう)(しの)()つたのは明白(めいはく)事実(じじつ)だ。135仮令(たとへ)左守司(さもりのかみ)兄弟分(きやうだいぶん)だと()つても136国法(こくはふ)()げる(わけ)には()かぬ、137どうぢや両人(りやうにん)自白(じはく)(うち)()勇気(ゆうき)があるか』
138(げん)『アツハヽヽヽ、139左様(さやう)愚問(ぐもん)(はつ)する(やつ)があるか、140斯様(かやう)(こと)はいい加減(かげん)片付(かたづ)けたがよからう。141よく(かんが)へて()よ、142コブライ、143コオロの両人(りやうにん)は、144もとよりシヤカンナ泥棒(どろばう)親分(おやぶん)輩下(はいか)ぢやないか。145タニグク(やま)岩窟(がんくつ)立籠(たてこも)り、146民家(みんか)(くるし)財物(ざいもつ)(うば)()つた鬼畜生(おにちくしやう)片割(かたわれ)だ。147彼等(かれら)二人(ふたり)(もと)よりシヤカンナ泥棒(どろばう)輩下(はいか)だから、148(ひと)(いへ)(しの)()めば泥棒(どろばう)(はい)つたと早合点(はやがつてん)するのは()えすいた道理(だうり)だ、149(われ)天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)だ、150天帝(てんてい)化身(けしん)だ。151(なに)(くるし)んで目腐(めくさ)(がね)()をくれ、152左守(さもり)屋敷(やしき)(しの)びこむ道理(だうり)があらうぞ。153()()えぬにも(ほど)があるわい』
154何処(どこ)までも押強(おしづよ)く、155流石(さすが)右守(うもり)(こま)()て、
156()今日(けふ)調(しら)べは、157(これ)()いておく、158(また)明日(あす)トツクリと調(しら)べるであらう』
159()(なが)白洲(しらす)(おく)へと姿(すがた)をかくした。
160 玄真坊(げんしんばう)二人(ふたり)小役人(こやくにん)引立(ひきた)てられ、161もとの牢獄(らうごく)へと(かへ)()く。
162 玄真坊(げんしんばう)牢獄(らうごく)()()まれ(なが)ら、163平気(へいき)平左(へいざ)鼻唄(はなうた)(うた)つてゐる。
164楽焼(らくやき)()たやうな此方(こなた)(かほ)
165 ()れるダリヤさまは茶人(ちやじん)さま……と。
166何程(なにほど)左守(さもり)威張(ゐば)つて()ても
167 もとを(あら)へば泥棒(どろばう)さま……か。
168泥棒(どろばう)々々(どろばう)(えら)さうに()ふな
169 左守(さもり)泥棒(どろばう)張本(ちやうほん)ぢやないか。
170左守(さもり)シヤカンナの泥棒(どろばう)でさへも
171 (むすめ)のおかげで()(ひか)る……と。
172子供(こども)()つなら(むすめ)()ちやれ
173 (おや)諸共(もろとも)(たま)輿(こし)……と。
174タニグク谷間(たにま)泥棒(どろばう)さまも
175 (いま)はタラハンの左守(さもり)となつた。
176左守(さもり)々々(さもり)(えら)(さう)()ふな
177 井戸(ゐど)(そこ)にも()蠑螈(いもり)
178右守(うもり)左守(さもり)(わし)()らねども
179 井中(ゐなか)蠑螈(いもり)によく()てる。
180井中(ゐなか)蠑螈(いもり)大海(たいかい)()らぬ
181 どうして天帝(てんてい)(しん)(わか)らう』
182 かかる(ところ)守衛(しゆゑい)靴音(くつおと)(たか)くやつて()て、
183『こりやこりや坊主(ばうず)184(しづか)にせぬかい185(なに)()つてゐるのだ』
186(げん)守衛(しゆゑい)々々(しゆゑい)(えら)(さう)にさらす
187 貴様(きさま)乞食(こじき)(あに)ぢやないか。
188乞食(こじき)番太(ばんた)坊主(ばうず)兵士(へいし)
189 まだも(わる)いのは下駄直(げたなほ)し』
190(しゆ)『こりや坊主(ばうず)191貴様(きさま)自分(じぶん)(こと)()つてるぢやないか』
192(げん)(おれ)天帝(てんてい)化身(けしん)身魂(みたま)
193 (あたま)坊主(ばうず)()けてゐる
194仮令(たとへ)(あたま)(ばう)さまぢやとて
195 (おれ)(たましひ)天帝(てんてい)さまだ』
196(しゆ)『エー、197仕方(しかた)のない坊主(ばうず)だな、198(しづか)にしろ、199右守(うもり)さまに報告(はうこく)するぞ』
200(げん)『オイ、201守衛(しゆゑい)202左守(さもり)203右守(うもり)(おれ)がことづけしたと()つてくれ、204……(おれ)泥棒(どろばう)なら貴様等(きさまら)もヤツパリ泥棒(どろばう)だ……と()つて()つたと、205(これ)(だけ)でいい、206()(ほか)(こと)()ふな 207貴様(きさま)()破滅(はめつ)になるといけぬからのう』
208 守衛(しゆゑい)はプリンと(からだ)をふり、209(つら)をふくらし一言(ひとこと)(こた)へず、210(くつ)(さき)牢獄(らうや)()(ふた)()()(なが)211足早(あしば)やに何処(どつか)()つて(しま)つた。
212 玄真坊(げんしんばう)退屈(たいくつ)(たま)らず213獄中(ごくちう)(しば)られた(まま)(にはか)(づく)りの経文(きやうもん)(よみ)()した。
 
214摩訶(まか)般若波羅蜜多心経(はんにやはらみたしんぎやう)
215無限無量(むげんむりやう)絶対力(ぜつたいりよく)権威(けんゐ)具備(ぐび)する天帝(てんてい)御化身(ごけしん)216最高第一天国(さいかうだいいちてんごく)天人(てんにん)(なら)びに最奥霊国(さいあうれいごく)天人(てんにん)217天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)218天真坊様(てんしんばうさま)不慮(ふりよ)災難(さいなん)によつて、219(いま)やタラハン城内(じやうない)狭隘(けふあい)なる牢獄(らうごく)日夜(にちや)(おく)()となりぬ。220(そもそ)(ひと)万物(ばんぶつ)霊長(れいちやう)221天地(てんち)(はな)222天人(てんにん)住所(すみか)なるにも(かかは)らず極悪無道(ごくあくぶだう)泥棒(どろばう)親分(おやぶん)223左守司(さもりのかみ)()けすましたるシヤカンナが今日(こんにち)暴状(ばうじやう)224(かなら)ずや天地(てんち)(かみ)(いか)らせ(たま)ひ、225地震(ぢしん)(かみなり)()(あめ)はまだ(おろ)か、226大海嘯(おほつなみ)大襲来(だいしふらい)によつて左守(さもり)右守(うもり)()ふに(およ)ばず、227大災害(だいさいがい)突発(とつぱつ)せむは明瞭(めいれう)なり。228あゝ(あはれ)むべし盲滅法(めくらめつぱふ)()(なか)229(てん)日月(じつげつ)(かがや)(とも) 230中空(ちうくう)黒雲(くろくも)(ふさ)がりあれば、231天日(てんじつ)()(たつ)せざる道理(だうり)(なり)232あゝバラモン帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)大国彦命(おほくにひこのみこと)233一時(いちじ)(はや)く、234天変地妖(てんぺんちえう)奇瑞(きずゐ)(しめ)し、235(この)城内(じやうない)(はじ)めとし全国(ぜんこく)民衆(みんしう)()をさまさせ(たま)へ。236(われ)はもとより泥棒(どろばう)にも(あら)ず、237(また)左守(さもり)右守(うもり)(ごと)野心家(やしんか)にも(あら)ず、238(ただ)(てん)(めい)ずるままに天意(てんい)(おこな)ふのみ、239帰命頂礼(きみやうちやうらい)謹請再拝(ごんじやうさいはい)240南無(なむ)バラモン天王(てんわう)自在天(じざいてん)241(わが)願望(ぐわんまう)納受(なふじゆ)ましませ』
242 かかる(ところ)右守司(うもりのかみ)玄真坊(げんしんばう)様子(やうす)如何(いか)にと只一人(ただひとり)243偵察(ていさつ)がてらやつて()たが(この)経文(きやうもん)()いて()()し、
244アリ『オイ、245天帝(てんてい)化身殿(けしんどの)246大変(たいへん)雄猛(をたけ)びで御座(ござ)るな、247一時(いちじ)(はや)天変地妖(てんぺんちえう)奇瑞(きずゐ)()せて(もら)ひたいものだなア』
248(げん)『ヤア、249よい(ところ)へやつて()た、250その(はう)右守(うもり)のアリナじやないか、251どうだ、252左守(さもり)相談(さうだん)して()たか』
253()(だま)れ、254罪人(とがにん)分際(ぶんざい)として(なに)業託(ごうたく)(ほざ)くのだ。255(なん)()つても泥棒(どろばう)目的(もくてき)(しの)()(なが)ら、256千言万語(せんげんばんご)(つひや)しての弁解(べんかい)も、257吾々(われわれ)聰明(そうめい)(おほ)(こと)出来(でき)ないぞ。258ここ二三日(にさんにち)(あひだ)(いのち)だ、259()()いものがあるなら(なん)なりと()へ。260(いま)刑場(けいぢやう)(つゆ)()ゆる()(うへ)だから、261(この)()名残(なごり)(なん)なりと(ほざ)いておくがよからう。262その(はう)(つみ)(すで)死罪(しざい)(きま)つて()るのだ』
263(げん)『ハツハヽヽヽ、264その(はう)(なに)(ほど)死罪(しざい)ときめても(かみ)(はう)265(この)(はう)さまから()れば無罪(むざい)御座(ござ)いだ。266()(かく)左守(さもり)此処(ここ)へようやつて()(こと)(おも)へば、267ヤツパリ(おれ)(こは)いのだ。268そらさうだ、269(つら)(かは)(ひき)むかれるのが(いや)さに菎蒻(こんにやく)幽霊(いうれい)のやうに(ふる)ふてゐるのだらう。270(あは)れな老骨(らうこつ)だな、271イツヒヽヽヽ。272(なに)(ほど)自身(じしん)(むすめ)別嬪(べつぴん)で、273王妃殿下(わうひでんか)になつたと()つても、274その父親(てておや)たる自分(じぶん)泥棒(どろばう)親方(おやかた)では、275到底(たうてい)一国(いつこく)政治(せいぢ)(おこな)はれまい。276泥棒(どろばう)親分(おやぶん)になればキツト天下(てんか)()れると277国民(こくみん)国民教育(こくみんけういく)手本(てほん)()せるやうなものだ。278そんな(こと)でタラハンの国家(こくか)(つづ)くと(おも)ふか。279オイ右守(うもり)280タラハン(ごく)(こと)(おも)へば、281さう(おれ)()つたと左守(さもり)()つてくれ。282(おれ)(すで)(すで)覚悟(かくご)はしてゐる、283(しか)左守(さもり)一度(いちど)()はねばならぬ。284死罪(しざい)なつと五罪(ござい)なつと勝手(かつて)にしたがよいわ。285それ(まで)是非(ぜひ)とも左守(さもり)()つておく(こと)がある。286左守(さもり)だつて(この)()名残(なごり)()はぬと()(こと)もあるまい』
287アリ『左様(さやう)世迷言(よまいごと)()(みみ)()たない。288一度(いちど)白洲(しらす)調(しら)べてやらう、289適確(てきかく)証拠(しようこ)(あが)つてゐるのだから』
290()(なが)靴音(くつおと)(たか)(この)()()つた。291玄真坊(げんしんばう)(また)もや(おほ)きな(くち)をあけ292無恰好(ぶかつかう)目鼻(めはな)一緒(いつしよ)によせ、293やけ(くそ)になつて都々逸(どどいつ)をやり(はじ)めた。
294()げた()げたよ(また)()げた
295玄真(げんしん)さまの御威光(ごゐくわう)(おそ)
296右守(うもり)のアリナが(けつ)()かけて
297スタコラヨイヤサと()()せた
298()ても(あは)れな代物(しろもの)
299左守(さもり)シヤカンナはさぞ(いま)ごろは
300吐息(といき)つくづく(つくゑ)(むか)
301(むかし)(きづ)(おも)()
302頭痛(づつう)鉢巻(はちまき)(あせ)タラタラと
303薬鑵(やかん)もらしてゐるだらう
304ア、コラシヨ コラシヨと
305(いへ)()てるのは大工(だいく)さま
306(かべ)()るのはシヤカンナだ
307(むかし)古疵(ふるきづ)ゴテゴテゴテと
308(どろ)()(かく)すシヤカンナだ
309(むすめ)(ひかり)でピカピカピカと
310(ほたる)のやうな(ひかり)()
311自分(じぶん)泥棒(どろばう)して(ひと)(くるし)めて
312(おれ)泥棒(どろばう)(くるし)める
313泥棒(どろばう)するならしつかりやれよ
314七千余国(しちせんよこく)(つき)(くに)
315大黒主(おほくろぬし)領分(りやうぶん)
316片手(かたて)(にぎ)つて()つやうな
317(わづ)かタラハン一国(いつこく)
318番頭(ばんとう)さまでは()()かぬ
319左守(さもり)いもり()らねども
320世間(せけん)(せま)親爺(おやぢ)どの
321ア、コラサ コラサ』
322と、323精神錯乱者(せいしんさくらんしや)のやうに(しやべ)()ててゐる。324格子窓(かうしまど)(あひだ)から遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく蚊軍(ぶんぐん)襲撃(しふげき)する。
325大正一五・一・三一 旧一四・一二・一八 於月光閣 北村隆光録)