霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 障路(しようろ)〔一八〇三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第2篇 迷想痴色 よみ(新仮名遣い):めいそうちしき
章:第14章 障路 よみ(新仮名遣い):しょうろ 通し章番号:1803
口述日:1926(大正15)年01月31日(旧12月18日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台:タラハン国の森林、中有界 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玄真坊、コブライ、コオロはシャカンナから奪った黄金を胴に巻きつけ、山野を歩いてタラハン国を抜けようとする。
しかしそこで十数人の捕り手に囲まれ、行く手を失った三人は進退窮まり、思い切って断崖絶壁の谷底に身を投げてしまった。
場面は変わって、だだっ広い原野を、切腹して果てたはずのシャカンナが一人、来し方の事を歌いながら歩いている。
すると、土の中から頭だけを出している玄真坊と出会う。玄真坊は、たくさんの黄金をゆすり取った罪で、幽冥主宰の神から罰をくらっているのだ、と答える。そして、シャカンナに許しを請う。
そこへ今度はコブライ・コオロが濡れ鼠でやってくる。彼らは谷底に飛び込んだとたん、黄金をすっかり捨ててしまっていた。
玄真坊もあまりの苦しさに、ついに黄金を捨てると宣言する。と、とたんに地面から抜け出すことができるようになった。
一同は気を取り直し、幽冥界の道を行ける所まで行こうと、歌を歌いながら行進する。
玄真坊が先に立って行くが、辻の立石に頭をぶつけてその場にふん伸びてしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7114
愛善世界社版:181頁 八幡書店版:第12輯 567頁 修補版: 校定版:189頁 普及版:90頁 初版: ページ備考:
001 玄真坊(げんしんばう)002コブライ、003コオロの(さん)(にん)左守(さもり)(なさ)けに()つて、004(やうや)くに死罪(しざい)(まぬが)れ、005()てる(だけ)黄金(わうごん)胴巻(どうまき)()()み、006(おも)たい(こし)をゆすり(なが)ら、007人跡(じんせき)(まれ)なる森林(しんりん)(さぐ)りて、008一日(いちにち)一夜(いちや)西(にし)西(にし)へと()()して()く。009(さん)(にん)(とも)身体(しんたい)(なは)(ごと)くに(つか)()て、010最早(もはや)一歩(いつぽ)(あゆ)めなくなつて(しま)つた。
011コブライ『モシ玄真(げんしん)さま、012何程(なにほど)黄金(わうごん)沢山(たくさん)(もら)つても(からだ)達者(たつしや)になるといふでもなし、013(はら)(ふく)れると()ふでもなし、014()うなつて()ると黄金(わうごん)(なに)(やく)()たないものですな。015(おも)たい(ばか)りで016こんな(こと)三日(みつか)(つづ)けやうものなら、017到底(たうてい)(いのち)はありませぬワ』
018玄真坊(げんしんぼう)馬鹿(ばか)()ふな、019(かね)さへ()れば、020どんな(うま)(もの)でも(たべ)られるし、021どんな別嬪(べつぴん)でも()はふと(まま)だ。022今日(こんにち)黄金(わうごん)万能(ばんのう)()(なか)だからのう、023着炭(ちやくたん)議員(ぎゐん)()らうとしても五万(ごまん)十万(じふまん)(かね)()る。024短命(たんめい)内閣(ないかく)総理(そうり)大臣(だいじん)()らうて(おも)つても、025二千万(にせんまん)(りやう)三千万(さんぜんまん)(りやう)(かね)()るのだ』
026コ『さうかも()れませぬが、027()山林(さんりん)(ばか)跋渉(ばつせう)してゐては、028別嬪(べつぴん)見付(みつ)からず、029(うま)いもの()はうにも、030(あぢ)()いもの()はうにも、031テンで店屋(みせや)()いぢやありませぬか。032一千(いつせん)(まん)(ゑん)(つつみ)より一升米(いつしやうごめ)(たふと)いやうに(わたし)(おも)ひますわ。033アーア(なん)とかして食料(しよくれう)(あり)()()いものだなア』
034(げん)『そんな弱音(よわね)()くな。035もう(いち)(にち)(ばか)(はし)れば安全(あんぜん)地帯(ちたい)がある。036其処(そこ)()けば女郎(ぢよらう)()るし、037どんな綺麗(きれい)着物(きもの)でも()つてゐる。038百味(ひやくみ)飲食(おんじき)()つてゐる。039マ、040其処(そこ)(まで)辛抱(しんばう)したが()からう、041(はら)()つて仕方(しかた)なければ拇指(おやゆび)(つめ)なつと(ねぶ)つて()れ。042さうすりや(ちつ)(ばか)(うゑ)(しの)(こと)出来(でき)やうも()れぬ。043()章魚(たこ)()い、044章魚(たこ)()(もの)()くなると、045自分(じぶん)(あし)(みな)()つて(しま)ふものだ』
046コ『人間(にんげん)章魚(たこ)(たとへ)られちや(たま)りませぬがな。047前様(まへさま)こそタコ坊主(ばうず)だから(あし)なつと(ねぶ)つて()りなさい。048コブライは(やせ)ても()れても一人前(いちにんまへ)人間(にんげん)(さま)だ。049タコの真似(まね)出来(でき)ませぬ(わい)050()うコオロ。051()一足(ひとあし)(ある)けぬぢやないか』
052コオ『(おれ)(くる)しうて(たま)らぬが、053何処(どつか)(この)(かね)(もつ)(うま)いものを()ひ、054別嬪(べつぴん)()いて()ようと(おも)へば、055(また)元気(げんき)()()て、056(ちつ)(ばか)(ある)ける(やう)になるのだ。057(なん)()つても人間(にんげん)心次第(こころしだい)だ。058()暫時(しばらく)だから玄真坊(げんしんばう)(さま)仰有(おつしや)(とほ)り、059辛抱(しんばう)して()いて()かうぢやないか。060こんな(ところ)野垂死(のたれじに)しても(つま)らぬからの』
061コ『エー、062仕方(しかた)がない。063(また)コンパスに()苦労(くらう)をかけやうかな』
064渋々(しぶしぶ)(なが)一二丁(いちにちやう)(ばか)(すす)んで()くと、065十手(じつて)指叉(さすまた)()つた十数(じふすう)(にん)捕手(とりて)066()(ぼつ)する(ばか)りの萱草(かやぐさ)(なか)から(あら)はれ()で、067(さん)(にん)(とり)まいて(しま)つた。068(みぎ)(はう)千仭(せんじん)谷間(たにあひ)069三方(さんぱう)捕手(とりて)(かこ)まれ進退(しんたい)これ(きは)まり最早(もはや)これ(まで)と、070(さん)(にん)一度(いちど)青淵(あをぶち)めがけて、071九死(きうし)一生(いつしやう)僥倖(げうかう)せむものと、072(いのち)安売(やすうり)をやつてみた。073捕手(とりて)はアレヨアレヨと(なが)めて()れど、074()()断岩(だんがん)絶壁(ぜつぺき)(ちか)よることも出来(でき)ず、075みすみす(てき)見捨(みす)てて076ブツブツ小言(こごと)()(なが)(かへ)()く。
077
078 渺茫(べうばう)として際限(さいげん)もなき大原野(だいげんや)真中(まんなか)079(ただ)一人(ひとり)老人(らうじん)()()くやうな(こゑ)(うた)(うた)(なが)(とほ)つてゐる。
080(かは)(なが)れと(ひと)()
081行末(ゆくすゑ)こそは不思議(ふしぎ)なれ
082タラハン(じやう)(つか)へたる
083(われ)左守(さもり)(かみ)なるぞ
084いつの()にかは()らね(ども)
085(かぎり)()らぬ大野原(おほのはら)
086さまよひ(きた)(いぶ)かしさ
087(みち)ゆく(ひと)()きままに
088言問(ことと)(よし)もなく(ばか)
089あゝいかにせむ千秋(せんしう)
090(うらみ)野辺(のべ)(のこ)しつつ
091あへなき最後(さいご)()ぐるのか
092あゝ(あさ)ましや(あさ)ましや
093タラハン(じやう)方面(はうめん)
094何処(いづこ)(そら)(あた)るやら
095百里(ひやくり)夢中(むちう)にさまよひし
096(わが)()(うへ)こそ(かな)しけれ
097原野(げんや)千草(ちぐさ)()えぬれど
098(はな)()もなき枯野原(かれのはら)
099()()(かぜ)さへ(おと)もなく
100(からす)(こゑ)さへ(きこ)()
101寂光(じやくくわう)浄土(じやうど)()らね(ども)
102天地(てんち)一度(いちど)(ねむ)りたる
103(ごと)(この)()光景(くわうけい)
104(さび)しさたとふる(もの)もなし
105あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
106三五教(あななひけう)大御神(おほみかみ)
107(みちび)(たま)永久(とこしへ)
108棲処(すみか)(さだ)めしタラハンの
109城下(じやうか)()ちし左守家(さもりけ)
110(おも)へば(おも)へば(ひと)()
111行末(ゆくすゑ)こそは果敢(はか)なけれ
112(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
113(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
114(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
115直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
116()(あやまち)宣直(のりなほ)
117三五教(あななひけう)御教(みをしへ)
118梅公別(うめこうわけ)()(きみ)
119完全(うまら)詳細(つばら)()きつれど
120見直(みなほ)(すべ)()きままに
121()さへ(わか)らぬ荒野原(あれのはら)
122(われ)()(なん)(つみ)あつて
123かかる(ところ)()ちたのか
124合点(がてん)のゆかぬ()(なか)
125(あはれ)(たま)大御神(おほみかみ)
126(みちび)(たま)(わが)宿(やど)
127あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
128御霊(みたま)(さちは)ひましませよ
129(あさひ)()(とも)(くも)(とも)
130(つき)()(とも)()くる(とも)
131仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)(とも)
132(まこと)(ちから)()(すく)
133(かみ)(おもて)(あら)はれて
134(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
135(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
136(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
137(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
138直日(なほひ)見直(みなほ)(みち)ぢやげな
139(まこと)(ちから)といふ(こと)
140(この)()(つく)(たま)ひたる
141(まこと)(かみ)(ちから)だろ
142人間界(にんげんかい)()をおいて
143どうして(まこと)()るものか
144(まこと)(ちから)(かみ)さまよ
145(われ)()(さび)しき境遇(きやうぐう)
146何卒(なにとぞ)(すく)(たま)へかし
147(ひとへ)(ねが)(たてまつ)
148三千(さんぜん)世界(せかい)(うめ)(はな)
149一度(いちど)(ひら)(かみ)(くに)
150(ひら)いて()りて()(むす)
151月日(つきひ)(つち)(おん)()
152(この)()(すく)活神(いきがみ)
153高天原(たかあまはら)神集(かむつど)
154などと(たふと)宣伝歌(せんでんか)
155(きも)(めい)じて(わす)れねど
156(ただ)一輪(いちりん)(うめ)さへも
157(ひら)いて()らぬ(この)野辺(のべ)
158地獄(ぢごく)(みち)八丁目(はつちやうめ)
159八衢(やちまた)街道(かいだう)(つづき)だろ
160かかる(さび)しき大野原(おほのはら)
161さまよひ(きた)(わが)()こそ
162前世(ぜんせ)現界(げんかい)相共(あひとも)
163無限(むげん)(つみ)(かさ)()
164(かみ)懲戒(いましめ)うけ(なが)
165身魂(みたま)(みが)いて()るのだろ
166()んだ(おぼえ)のない()れは
167幽冥界(いうめいかい)とも(おも)へない
168あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
169(かみ)(この)()にあるならば
170何卒(なにとぞ)(わが)()(みちび)いて
171(こひ)しき(わが)()にかやせかし
172(ひとへ)(ねが)(たてまつ)る』
173 ()(うた)(なが)ら、174大野原(おほのはら)蚯蚓(みみづ)()ふたやうについた細路(ほそみち)辿(たど)()くと、175(つち)(なか)からムクムクと(あたま)(だけ)(うご)いてゐる。176シヤカンナは(この)(さび)しい原野(げんや)正中(まんなか)松露(しようろ)のやうな(あたま)(うご)いてゐるのは合点(がてん)()かぬと、177()()つた(つゑ)(ふた)()つこついてみると「アイタタ アイタタ」と()(なが)ら、178(つき)(やま)()(のぼ)るやうに、179チクリ チクリと(つち)から()()で、180(かた)まで(あら)はして()た。181よくよく()れば玄真坊(げんしんばう)姿(すがた)そつくりである。182シヤカンナは(おどろ)いて、
183『オイ、184コラ、185(きさま)玄真坊(げんしんばう)ぢやないか。186こんな(ところ)(なに)をしてゐるのだ』
187(げん)『ヤ、188(わし)はお(まへ)にお(わび)をせにやならぬ(こと)があるのだ、189(たしか)には(おぼ)えてをらぬが、190(まへ)(やかた)()つて無理(むり)難題(なんだい)()きかけ、191ドツサリ(かね)をぼつたくつて(かへ)つた天罰(てんばつ)で、192幽冥(いうめい)主宰(しゆさい)(かみ)から沢山(たくさん)黄金(わうごん)罰則(ばつそく)として(からだ)(しば)りつけられ、193(その)(おも)みで(からだ)()(なか)へにえ()んで(しま)ひ、194(いま)ヤツとの(こと)(くび)(だけ)地上(ちじやう)(あら)はした(ところ)だ。195どうか「(ゆる)す」と一言(ひとこと)()つてくれ。196さうすりや(おれ)(つみ)(かる)うなるだらうから……』
197シヤ『(なん)だか(おれ)(あし)がヒヨロヒヨロするけれど、198(からだ)(かる)くて(あし)地上(ちじやう)(はな)(さう)危険(きけん)(たま)らないが、199(まへ)(また)(からだ)(おも)いとは不思議(ふしぎ)(こと)だのう。200それぢやお(まへ)(くび)千切(ちぎ)つてやるから201胴柄(どうがら)(ぐらゐ)(つち)(たく)しておいたらどうだ。202(いづ)(おそ)かれ(はや)かれ(つち)(なか)這入(はい)(からだ)だからのう』
203(げん)『オイ兄貴(あにき)204そんな無茶(むちや)(こと)()ふてくれない。205天一(てんいち)手品師(てじなし)なら、206(くび)をチヨン()つても(また)つげるだらうが、207(おれ)のはさうはいけないよ。208どうか兄貴(あにき)209金剛力(こんがうりき)()して(おれ)(からだ)をグツと()()げて(もら)へまいかの』
210シヤ『(からだ)()()げと()つたつて、211(くび)から(した)(うづも)つてゐるのだから、212()をかける(ところ)もないぢやないか、213それでも()つて()()げと()ふのなら、214両方(りやうはう)(みみ)(つか)んで(ためし)にやつてみようかな』
215(げん)『どうでも()いから、216()(かく)一寸(いつすん)でも(からだ)地上(ちじやう)()してくれ、217(くる)しくて(たま)らぬ、218どうやら()(そこ)地獄(ぢごく)(ひつ)ぱり()まれ(さう)だ』
219 「ヨーシ」と()(なが)らシヤカンナは220一生(いつしやう)懸命(けんめい)(つめ)たい()(つめ)たい(みみ)(つか)んでみたが、221磐石(ばんじやく)(ごと)くビクとも(うご)かない。222さう()うしてる(ところ)へ、223(また)もや二人(ふたり)(をとこ)が、224濡衣(ぬれぎぬ)(まと)(なが)ら、225(ちから)なげにトボトボとやつて()る。226シヤカンナは(あと)ふり()いて、
227『ヤ、228(まへ)はコブライにコオロの両人(りやうにん)229どして(また)こんな(さび)しい(ところ)へやつて()たのだい』
230コブ『ヤ、231親方(おやかた)御座(ござ)いますか、232まづ()壮健(さうけん)でお芽出度(めでた)う。233(じつ)アはつきり(おぼ)えませぬが、234(まへ)さま(ところ)(かね)(もら)つて(かへ)途中(とちう)追手(おつて)出会(であ)ひ、235谷川(たにがは)()()んだと(おも)や、236何時(いつ)()にか()んな(ところ)()てゐます。237(しか)()()んだ(さい)折角(せつかく)(もら)つた山吹色(やまぶきいろ)(みんな)谷底(たにぞこ)()てて(しま)ひ、238(いま)ぢや()けたかんつ御座(ござ)いませぬが、239どうか親方(おやかた)240チツと(ばか)りお(かね)(めぐ)んで(もら)へますまいかな』
241シヤ『(おれ)だとて(その)(とほ)りだ。242一文(いちもん)生中(きなか)()につけてゐないのだ。243こんな(ところ)旅行(りよかう)するのに(いへ)もなし(みせ)もなし、244(かね)()るものかい。245(はら)()つたら(くさ)でも千切(ちぎ)つて()つて()くより仕様(しやう)がないぢやないか』
246コブ『ヤ、247其処(そこ)にゐるのは玄真(げんしん)さまぢやないか、248(なん)ぢやい、249(くび)(ばか)()しやがつて、250……サ、251()きたり()きたり』
252 玄真(げんしん)()無性(むしやう)矢鱈(やたら)にジヤイロコンパスのやうに廻転(くわいてん)(はじ)め、253(くち)()(はな)一所(ひとところ)集中(しふちう)254顔面(がんめん)筋肉(きんにく)(しきり)活動(くわつどう)させ()した。
255シヤ『ヤ、256此奴(こいつ)アどうやら地獄(ぢごく)()ちらしいぞ。257まだ黄金(わうごん)執着心(しふちやくしん)()つてるらしいぞ、258オイ、259玄真(げんしん)260すつぱりその(かね)(おも)()つて(しま)へ。261そすりや(たす)かるだらう』
262玄真(げんしん)『ヤア、263(なに)(ほど)(かね)()しうても、264かう(くる)しうては(よく)にも(とく)にもかへられないワ、265モウ(かね)はコリコリだ。266一文(いちもん)()らない。267オイ黄金(わうごん)(やつ)268今日(けふ)から(ひま)をやるから勝手(かつて)何処(どつか)()つてくれ』
269()ふが(いな)や、270子供(こども)玩具(おもちや)(さる)弓弾(ゆみはぢ)きに(はぢ)かれたやうな(いきほひ)で、271ポンと地上(ちじやう)三間(さんげん)(ばか)りも()(あが)り、272ドスンと(また)(もと)(ところ)()ちて()た。
273シヤ『オイ、274玄真坊(げんしんばう)275(よく)といふ(やつ)(こわ)いものぢやのう』
276(げん)本当(ほんたう)にさうだ、277おらモウ(かね)にはコリコリしたよ。278(しか)しお(まへ)結構(けつこう)なタラハン(じやう)(やかた)()てて、279何故(なぜ)(また)こんな(ところ)()たのだ。280チツと合点(がてん)()かぬぢやないか、281……ハハー、282大方(おほかた)(おれ)(かね)()しうなつて、283追駆(おつかけ)()たのだな。284それで(おれ)器械(きかい)仕掛(じかけ)()(なか)電気(でんき)ででも引張(ひつぱ)つてゐやがつたのだなア』
285シヤ『馬鹿(ばか)()ふない。286(おれ)はモウ(かね)なんか()るのも(いや)だ。287(しか)(おれ)は、288(いま)フツと(おも)()したがお(まへ)()がした(あと)で、289(たしか)(かみ)(さま)(まへ)切腹(せつぷく)をして()てた(つもり)だが、290何故(なぜ)(また)こんな(ところ)へやつて()()きてゐるのだろ。291(まる)(きつね)につままれたやうで、292現界(げんかい)幽界(いうかい)かチツとも(わけ)(わか)らないのだ。293一体(いつたい)此処(ここ)何処(どこ)だと(おも)つてゐるか』
294(げん)『サ、295どうも不思議(ふしぎ)(たま)らぬのだ。296(まへ)(はなし)()くと、297(まへ)(おれ)より(さき)()んだ(もの)とすれば、298(さき)此所(ここ)()()らにやならぬ(はず)だ。299(おれ)(たち)(さん)(にん)一日(いちにち)一夜(いちや)(やま)(たに)(はし)つて谷川(たにがは)()()んだやうな()がする。300それが()此処(ここ)()てる(はず)がない。301てもさても合点(がてん)()かぬ(こと)だのう』
302コブ『コリヤ()うしても、303玄真(げんしん)さま、304幽界(いうかい)旅行(りよかう)をやつてゐるのに(ちがひ)ありませぬよ。305吾々(われわれ)はかうして()きてると(おも)つてるが肉体(にくたい)はとうに()んで(しま)ひ、306精霊体(せいれいたい)(ばか)りが此所(ここ)(まよ)ふて()たのでせう。307霊界(れいかい)には時間(じかん)空間(くうかん)区別(くべつ)()く、308(とほ)(ちか)いもない(さう)だから、309(さき)()んだ(もの)(あと)へなる(とも)310(あと)から()んだ(もの)(さき)へなる(とも)311そんなこた(わか)りませぬワイ。312マア()んだ(もの)としておけや、313(あと)(おどろ)かいで(よろ)しかろ』
314コオ『オイ、315コブライ、316どうやらこりや地獄(ぢごく)街道(かいだう)八丁目(はつちやうめ)らしいぞ。317(こま)つた(こと)になつたものぢやないか』
318(げん)『さうだ、319一寸(ちよつと)面食(めんくら)つたな、320(しか)(なが)らかうして()(にん)道伴(みちづ)れが出来(でき)以上(いじやう)は、321(さび)しさも(やや)(うす)らいで()たやうだ。322()(かく)323地獄(ぢごく)でも何処(どこ)でもかまはぬ、324()ける(とこ)(まで)()かうぢやないか。325(おれ)(たち)(もと)より極楽(ごくらく)()つて無聊(むれう)(くるし)むよりも、326地獄(ぢごく)()つて車輪(しやりん)活動(くわつどう)をやるが(のぞみ)だからのう』
327コブ『(その)(せつ)はハル山峠(やまたうげ)岩上(がんじやう)(うけたま)はりましたね、328サ、329()きませう。330(あま)(さび)しいから(ひと)行進歌(かうしんか)でも(うた)はふぢやありませぬか』
331(げん)『そら面白(おもしろ)からう、332()(おれ)から(うた)ふてやる。
333(かぎり)()らぬ大野原(おほのはら)
334此所(ここ)地獄(ぢごく)八丁目(はつちやうめ)
335八衢(やちまた)街道(かいだう)()らね(ども)
336三人(みたり)家来(けらい)()きつれて
337()さへ(わか)らぬ荒野原(あらのはら)
338(すす)みゆくこそ(いさ)ましき
339もしも(この)()天国(てんごく)
340あるものとすりや()つてみよう
341()ければ是非(ぜひ)なく地獄道(ぢごくだう)
342肩肱(かたひぢ)いからし(すす)まうか
343(しか)(この)()地獄(ぢごく)とか
344極楽(ごくらく)などがあるものか
345どこ(まで)()つても(この)(とほ)
346(つめた)(かぜ)がピユーピユーと
347(くさ)葉末(はずゑ)をなで(なが)
348遠慮(ゑんりよ)もなしに(とほ)つてゐる
349これがヤツパリ地獄(ぢごく)だろ
350(なに)(ほど)地獄(ぢごく)(こは)(とも)
351こんな(こと)なら()のお(ちや)
352ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ
353コラコラ三人(みたり)家来(けらい)(ども)
354しつかり(あと)からついて()
355落伍(らくご)をしても()らないぞ
356アレアレ不思議(ふしぎ)アレ不思議(ふしぎ)
357向方(むかふ)(めう)建物(たてもの)
358チラチラ(わが)()につき()した
359此奴(こいつあ)ヤツパリ現界(げんかい)
360現界(げんかい)ならば(なほ)(こと)
361一生(いつしやう)懸命(けんめい)にはしやいで
362元気(げんき)をつけて()かうかい
363タラハン(じやう)占領(せんりやう)
364天晴(あつぱれ)国王(こくわう)(なり)すまし
365羽振(はぶり)()かそと(おも)ふたに
366いつの()にかは()らね(ども)
367こんな(ところ)彷徨(さまよ)ふて
368東西(とうざい)南北(なんぼく)方位(はうゐ)さへ
369(わか)らぬ今日(けふ)不思議(ふしぎ)さよ
370向方(むかふ)()ゆる建物(たてもの)
371(おに)悪魔(あくま)住処(すみか)だろ
372サアサア()かうサア()かう
373(なに)をビリビリしとるのだ
374もしも地獄(ぢごく)があるならば
375地獄(ぢごく)(おに)引捉(ひつとら)
376(いなご)のやうに竹串(たけぐし)
377(なら)べて()して()(あぶ)
378(かた)(ぱし)から()てやろか
379あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
380地獄(ぢごく)(わう)()出立(しゆつたつ)
381(おに)でも(じや)でもやつて()
382ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ』
383 などと一生(いつしやう)懸命(けんめい)(うた)(なが)ら、384(あたま)前方(ぜんぱう)突出(とつしゆつ)し、385チヨコチヨコ(ばし)りに(すす)んでゆく。386(さん)(にん)四五丁(しごちやう)(ばか)()(のこ)され、387ヨボヨボと(ほそ)(こゑ)行進歌(かうしんか)(うた)(なが)らついて()く。
388 玄真坊(げんしんばう)足許(あしもと)ばかり見詰(みつ)めて突進(とつしん)した途端(とたん)四辻(よつつじ)立石(たていし)(あたま)をぶつつけ、389キヤア、390ウーンと()つたきり、391(その)()(かへる)をぶつつけたやうにふん()びて(しま)つた。
392大正一五・一・三一 旧一四・一二・一八 於月光閣 松村真澄録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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