霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一九章 (かく)兵衛(べゑ)獅子(じし)〔一八〇八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第3篇 惨嫁僧目 よみ(新仮名遣い):さんかそうもく
章:第19章 角兵衛獅子 よみ(新仮名遣い):かくべえじし 通し章番号:1808
口述日:1926(大正15)年02月01日(旧12月19日) 口述場所:月光閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
入江の里の浜屋旅館に、玄真坊と高姫は、もう十日も滞在することとなった。
玄真坊はなんとかして高姫を自分のものにしようと口説くが、高姫は頑として玄真坊をはねのけている。
そこへ、表の街道に角兵衛獅子がやってきた。玄真坊と千草姫は、獅子を呼んで舞わせたが、それはコブライとコオロだった。
コオロはすぐさま玄真坊を捕まえようと役所へ駆けていく。コブライは役人を迎えに行くが、その隙に高姫は玄真坊を気絶させ、黄金をすっかり奪い取って二階の間へ引っ込んでしまう。
役人は玄真坊がこときれたと思い、戸板に乗せて担がせて行ってしまった。
高姫はその様子を見ていたが、そこへ妖幻坊の杢助が現れて、高姫に合流する。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7119
愛善世界社版:255頁 八幡書店版:第12輯 593頁 修補版: 校定版:266頁 普及版:125頁 初版: ページ備考:
001 入江(いりえ)(さと)浜屋(はまや)旅館(りよかん)(おく)()には(れい)玄真坊(げんしんばう)002千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)二人(ふたり)()(こと)()く、003意茶(いちや)々々(いちや)()(なが)十日(とをか)(ばか)逗留(とうりう)して()る。
004()『モシ玄真(げんしん)さま、005この宿(やど)(とま)つてから今日(けふ)十日(とをか)(ばか)りにもなりますが、006(あま)退屈(たいくつ)仕方(しかた)がないぢやありませぬか。007ハルの(みづうみ)有名(いうめい)日高山(ひだかやま)はモウ()えなくなりましたし、008真帆(まほ)片帆(かたほ)(ゆき)()ひも(むかし)とは余程(よほど)(さみ)しくなつたやうです。009(なん)とか(ひと)(うた)でも()んで(たの)しまうぢやありませぬか』
010(げん)(べつ)無聊(ぶれう)(くるし)まなくても、011(まへ)(おれ)二人(ふたり)()りさへすれば、012如何(どん)快楽(くわいらく)でも出来(でき)るのだが、013客様(きやくさま)だとか、014月様(つきさま)だとか文句(もんく)()つて(おう)じないものだから、015(もと)いらずの快楽(くわいらく)(ぼう)()つて自分(じぶん)自分(じぶん)(くるし)んでゐるのだ。016(おれ)やモウ、017オチコがコテノでやりきれないワ』
018()『ホヽヽヽヽヽ、019(なん)とした、020玄真(げんしん)さまは(すゐ)(かた)だらう、021本当(ほんたう)(うら)めしいのはお(きやく)さまだワ。022(きやく)さまさへなけりや、023玄真(げんしん)さまの()機嫌(きげん)十分(じふぶん)()れるのだけれどなア』
024(げん)一体(いつたい)025(つき)さまといふものは(なが)くて(いつ)週間(しうかん)(はや)くて三日(みつか)(ぐらゐ)なものだと()いてゐるに、026(まへ)はモウ十日(とをか)にもなるぢやないか、027チと可笑(をか)しい容態(ようたい)だなア』
028()『そらさうです(とも)029第一(だいいち)霊国(れいごく)天人(てんにん)ですもの。030当然(あたりまへ)人間(にんげん)なら(つき)七日(なぬか)(けが)れですみますが、031(わらは)一年中(いちねんぢう)のを一遍(いつぺん)片付(かたづ)けるものですから、032十二(じふに)月分(げつぶん)(あは)せて八十四(はちじふよつ)日間(かかん)月経(げつけい)があるのですもの』
033(げん)『さう(なが)らくの(あひだ)034(おれ)()()れないワ。035どうだ、036(ひと)(おも)()つて奸淫(かんいん)をやらうでないか、037所謂(いはゆる)それが月経奸(げつけいかん)だ、038アヽーン』
039()『ホヽヽヽヽ、040助平(すけべい)野郎(やらう)だこと。041竜女(りうぢよ)(をか)してさへも七生(しちしやう)(うか)ばれないと()ふのに、042()して天人(てんにん)月経奸(げつけいかん)(をか)すやうな馬鹿(ばか)(ひと)世間(せけん)()りますか、043七生(しちしやう)八生(はつしやう)はおろか、044百万生(ひやくまんじやう)まで(ばち)をうけますぞや』
045(げん)(なん)とか(ねが)()げして(もら)へぬものかいナ、046八十四(はちじふよつ)()二分(にぶん)(いち)(くらゐ)(こら)へて(もら)へさうなものだナ。047()まじないといふから、048それでも差支(さしつかへ)あるまい。049(かみ)さまだつて050そんな野暮(やぼ)なこた仰有(おつしや)るまいからのう』
051()玄真(げんしん)さま、052モウそんな(はなし)はやめて(くだ)さい。053(わたし)地獄(ぢごく)()(さう)気分(きぶん)(いた)しますワ。054それより(うた)でもアツサリ()まうぢやありませぬか……
055()はまほし(きみ)手枕(たまくら)ほりすれど
056(つき)(さはり)にせむすべもなし。
057ほしほしと(ほし)御空(みそら)(かがや)けど
058(つき)(さはり)(かげ)うすれ()く。
059玄真(げんしん)(きみ)(かしら)(つき)()りて
060(かげ)さしにけり御山(みやま)(たに)は』
061(げん)『オイ(ひや)かすない、062御山(みやま)(たに)真赤(まつか)けだろ。063紅葉(もみぢ)()つてるだろ、064どうか(ひと)紅葉狩(もみぢがり)をさして(もら)ひたいなア』
065()玄真(げんしん)さま、066イヤですよ、067スカンたらしい』
068といひ(なが)ら、069蛸禿頭(たこはげあたま)をピシヤピシヤツと(ほそ)()でやつた。070玄真(げんしん)()(はな)(くち)一所(ひとところ)巾着(きんちやく)をすぼめたやうに(あつ)めて(しま)ひ、
071(げん)『エツヘヽヽヽ、072コリヤ、073千草(ちぐさ)074無茶(むちや)するないヤイ、075(おれ)(あたま)にもヤツパリ()(かよ)ふてゐるぞよ』
076()(あま)薬鑵(やくわん)がたぎつて()つたので、077()のひらをやけどしましたよ。078どうか玄真(げんしん)さま079(みづ)()んで()(くだ)さい、080()(ひや)しますから……』
081(げん)(をつと)(あたま)(ぬく)みがお(まへ)()(のこ)つとるのも()かろ、082まア(たの)しんで()つて()れ、083さう(なが)(ぬく)みが(とま)つて()るものではないからの』
084()自惚(うぬぼれ)()加減(かげん)になさいませ。085薬鑵頭(やくわんあたま)汗脂(あせあぶら)()について、086気味(きみ)(わる)うてならぬから(みづ)()んで()(くだ)さいと()ふのですよ』
087(げん)『エー仕方(しかた)のない(やま)(かみ)だなア』
088()(なが)自分(じぶん)()つて井戸水(ゐどみづ)()(きた)り、
089(げん)『サ、090(やま)(かみ)さま、091否々(いやいや)ミロクの太柱(ふとばしら)さま、092どうぞお()をお(あら)(くだ)さいませ』
093()善哉(ぜんざい)々々(ぜんざい)
094()(なが)ら、095金盥(かなだらひ)(みづ)()(あら)ひ、
096()『ヤ、097玄真坊(げんしんばう)098()苦労(くらう)であつた、099褒美(ほうび)には(この)(みづ)(つか)はすによつて、100一滴(いつてき)(のこ)らず(わらは)(まへ)()んだが()からうぞや。101(けつ)して千草姫(ちぐさひめ)手垢(てあか)ではない、102其方(そなた)薬鑵頭(やくわんあたま)汗脂(あせあぶら)だによつて、103(よろこ)んで頂戴(ちやうだい)()されよ』
104(げん)『オイ、105(かか)106女房(にようばう)イヤ……千草(ちぐさ)太柱(ふとばしら)107馬鹿(ばか)にすない、108(おれ)一体(いつたい)何方(どなた)心得(こころえ)てるのだ。109(これ)でもお(まへ)(をつと)ぢやないか』
110()『オツト(まか)せで(くは)()んだ(をつと)ですもの、111(たて)から()ても(よこ)から()ても、112オツトましいスタイルだワ』
113 ()くいちやついてる(ところ)へ、114(おもて)街道(かいだう)(さわ)がしく、115太皷(たいこ)打鳴(うちな)らし(なが)ら、116角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)がやつて()た。
117 宿屋(やどや)亭主(ていしゆ)二人(ふたり)居間(ゐま)(おそ)(おそ)()(きた)り、
118『モシお客様(きやくさま)119大変(たいへん)()退屈(たいくつ)()えますが、120(いま)あの(とほ)り、121門口(かどぐち)角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)がやつて()ました。122(ひと)つお()はしになつたら如何(どう)ですか。123気晴(きばら)しには大変(たいへん)面白(おもしろ)御座(ござ)いますよ』
124(げん)『やア、125それは有難(ありがた)い、126どうか姫神(ひめがみ)さまの()上覧(じやうらん)()れてくれ、127……()しミロクの太柱(ふとばしら)(さま)128角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)如何(いかが)御座(ござ)いますかナ』
129 千草姫(ちぐさひめ)はワザとすました(かほ)で、
130善哉(ぜんざい)々々(ぜんざい)131所望(しよまう)所望(しよまう)だ』
132亭主(ていしゆ)『ハイ(かしこ)まりまして御座(ござ)います、133直様(すぐさま)此処(これ)()(まゐ)ります』
134()(なが)(おもて)(いで)()く。135少時(しばらく)すると(ちひ)さい獅子舞(ししまひ)(かぶ)つた(をとこ)と、136深編笠(ふかあみがさ)(かぶ)つた太皷打(たいこうち)がやつて()た。
137(げん)『ヤア、138()苦労(くらう)々々々(ごくらう)139遠慮(ゑんりよ)()らぬ。140(この)座敷(ざしき)(あが)つて(ひと)()つてくれ、141(この)(ごろ)はミロク(さま)()機嫌(きげん)(わる)くて(こま)つてる(ところ)だ。142どうか神楽舞(かぐらま)ひでもやつて岩戸(いはと)(びらき)をやらなくちや、143(おれ)(じつ)紅葉(もみぢ)(さか)りで(こま)つてゐるのだ』
144 角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)(かる)目礼(もくれい)(なが)ら、145座敷(ざしき)()(あが)り、146一方(いつぱう)(うた)ひ、147一方(いつぱう)()()した。
148『テテンコテン テテンコテン
149テテンコ テテンコ テテンコ テンテン
150テテンコ テンテン テテンコテン
151角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)
152(いち)(ぐわつ)元旦(ぐわんたん)()()けりや
153(あに)十一(じふいち)(おとうと)(なな)
154去年(きよねん)()ふた(この)(まち)
155今年(ことし)もやつぱり角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)
156テテンコテン テテンコテン
157テテンコ テテンコ テテンコ テンテン
158テテンコ テンテン テテンコテン
159角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)
160(いつ)(ぐわつ)元旦(ぐわんたん)()()けた
161(あに)太皷(たいこ)(おとうと)(をど)
162(くに)(こひ)しや角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)
163太皷(たいこ)(おと)()()れる
164テテンコテン テテンコテン
165テテンコ テテンコ テテンコ テンテン
166テテンコ テンテン テテンコテン
167角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)
168(げん)『あア妙々(めうめう)169サ、170褒美(ほうび)(これ)をやろ』
171()(なが)ら、172小判(こばん)(いち)(まい)おつ()()した。173角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)二人(ふたり)(よろこ)んで、174(あたま)(かぶ)つてゐた獅子(しし)編笠(あみがさ)()つて()ると、175豈計(あにはか)らむや176玄真坊(げんしんばう)千草姫(ちぐさひめ)二人(ふたり)177沢山(たくさん)座布団(ざぶとん)(うへ)にバイの化物然(ばけものぜん)(ひか)へてゐる。
178角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)『ヤ、179(きさま)玄真坊(げんしんばう)だな、180よい(ところ)見付(みつ)けた。181(おれ)()二人(ふたり)計略(けいりやく)にかけ、182生埋(いきうめ)にしやがつた悪人輩(あくにんばら)だ。183(おれ)(ゆめ)(なか)(かみ)(さま)(をしへ)(いただ)いて、184最早(もはや)(きさま)復讐(ふくしう)(ねん)()つてゐたが、185かうして二人(ふたり)夫婦然(ふうふぜん)とすましてゐる(ところ)()ると了見(れうけん)がならない。186オイ、187コオロ、188(きさま)(はや)役所(やくしよ)(うつた)へて()い。189(おれ)()げない(やう)(ばん)をしてゐるから……』
190コオ『ヨーシ()191合点(がつてん)だ』
192193コオロは逸早(いちはや)(おもて)()()して(しま)つた。194玄真坊(げんしんばう)はガタガタ(ふる)()し、
195『ヤ、1951千草姫(ちぐさひめ)196如何(どう)せうかナ、197かうしてはをれまい、198(おれ)(きさま)(くび)()んで(しま)ふがナ……』
199コ『コラ当然(あたりまへ)だ、200玄真坊(げんしんばう)(おも)()つたか、201(いま)捕手(とりて)役人(やくにん)にフン(じば)られ(かさ)(だい)()ぶのだ。202それを()(なが)ら、203(おれ)一杯(いつぱい)()むのがせめてもの(はら)いせだ、204イツヒヽヽウツフヽヽ205ても(さて)心地(ここち)よいこつたワイ』
206(げん)『オイ、207コブライ、208一万(いちまん)(りやう)(かね)をやるから、209(ねがひ)()げしてくれまいか、210角兵衛(かくべゑ)獅子(じし)(ある)いても一万(いちまん)(りやう)仲々(なかなか)(もう)からないぞよ』
211コ『馬鹿(ばか)()ふない、212そんな(こと)出来(でき)るものか。213(すで)(すで)にコオロが(うつた)()てるぢやないか、214モウ観念(くわんねん)せい、215仕方(しかた)がないワ』
216()『ホヽヽヽヽ、217あの玄真(げんしん)さまの胴震(どうぶる)ひの可笑(をか)しさ、218(その)(ざま)一体(いつたい)(なん)ぢやいな。219コレコレ(やつこ)さま、220(まへ)生埋(いきうめ)にしたのは(この)玄真(げんしん)さまだぞえ、221千草姫(ちぐさひめ)(すこ)しも(あづか)()らない(ところ)だからさう(おも)つて(くだ)さいや』
222コ『(いのち)(おや)(ひめ)(さま)(たい)し、223毛頭(まうとう)(うらみ)()つて()りませぬ。224そして(また)貴女(あなた)(さま)(うつた)へるやうな(こと)(けつ)して(いた)しませぬから、225どうか()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
226 玄真坊(げんしんばう)(いろ)(あを)ざめ、227ガタガタ(ぶるひ)をやつてゐる。228千草姫(ちぐさひめ)(そば)(ちか)()りそひ、
229()『コレ玄真(げんしん)さま、230(しつか)りしなさらぬかいナ、231(つき)(くに)()(にぎ)らうと()()うな大胆(だいたん)計画(けいくわく)をするお(まへ)さまが、232捕手(とりて)(ぐらゐ)(ふる)ふと()(こと)があるものか、233神力(しんりき)(もつ)(ふき)()ばしてしまへば()いぢやありませぬか』
234()(なが)ら、235オチコの(した)にブラ(さが)つてゐる(ひかり)のない(ふた)つの(たま)(ちから)(かぎ)りに(にぎ)りしめた。236玄真坊(げんしんばう)虚空(こくう)(つか)んで(その)()に「ウーン」と()つたきり(たふ)れて(しま)つた。237(おもて)(はう)には捕手(とりて)役人(やくにん)()えて、238ザワザワと足音(あしおと)(きこ)えて()た。239コブライは役人(やくにん)出迎(でむか)への心持(こころもち)にて、240(あわ)てて(おもて)へぬけ()す。241(その)(あひだ)千草姫(ちぐさひめ)玄真坊(げんしんばう)胴巻(どうまき)をすつかりと(はづ)し、242自分(じぶん)(こし)()表二階(おもてにかい)()素知(そし)らぬ(かほ)して(をさ)まり(かへ)つてゐた。243十二三(じふにさん)(にん)捕手(とりて)役人(やくにん)244コオロ、245コブライ(および)亭主(ていしゆ)案内(あんない)にて(この)()()(きた)り、246玄真坊(げんしんばう)(たふ)れてゐるのを()て、
247捕手(とりて)『ヤ、248此奴(こいつ)249モウ(した)でもかんで自害(じがい)したと()縡切(ことぎ)れてゐる。250こんな(もの)はモウ仕方(しかた)がない。251亭主(ていしゆ)252(その)(はう)(この)死骸(しがい)(わた)して()くから、253何処(どつか)野辺(のべ)へでも()てて()くがよからう』
254()(のこ)し、255逸早(いちはや)()でて()く。
256 千草姫(ちぐさひめ)一間(ひとま)()つて二階(にかい)障子(しやうじ)(やぶ)(あな)から離棟(はなれ)座敷(ざしき)(なが)めて()ると、257亭主(ていしゆ)出入(でいり)(もの)玄真坊(げんしんばう)死体(したい)戸板(といた)()せてワイワイと()(なが)ら、258何処(どつか)(かつ)()姿(すがた)()える。259千草姫(ちぐさひめ)(むね)をヤツと()でおろし、
260南無(なむ)頓生(とんしよう)玄真坊(げんしんばう)菩提(ぼだい)(ため)261帰命(きみやう)頂礼(ちやうらい)謹請(ごんじやう)再拝(さいはい)262ホヽヽヽヽ、263これでも(わらは)寸志(すんし)手向(たむけ)264玄真坊(げんしんばう)亡霊殿(ばうれいどの)265安楽(あんらく)成仏(じやうぶつ)(いた)したがよからうぞや。266到頭(たうとう)三万(さんまん)(りやう)(かね)()ぬらさずで、267ぼつたくつてやつた。268サ、269(これ)さへあれば大丈夫(だいぢやうぶ)270(ひと)つどつか景勝(けいしよう)()(えら)んで大建築(だいけんちく)をなし、271人目(ひとめ)(おどろ)かし、272ウラナイ(けう)本山(ほんざん)()て、273三五教(あななひけう)根底(こんてい)から(くつが)へし、274ミロクの太柱(ふとばしら)名声(めいせい)天下(てんか)(かがや)かしませう。275てもさても都合(つがふ)()(とき)には都合(つがふ)()いものだなア』
276とホクソ()んでゐる。277障子(しやうじ)(そと)から破鐘(われがね)のやうな(こゑ)で、
278杢助(もくすけ)『ワツハヽヽウツフヽヽ天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)279千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)()腕前(うでまへ)杢助(もくすけ)(たしか)見届(みとど)けたぞや』
280 千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)杢助(もくすけ)(こゑ)(うち)(おどろ)き、281日頃(ひごろ)(こひ)(した)杢助(もくすけ)(さま)(この)宿(やど)(とま)つて御座(ござ)つたか。282おゝ(はづか)しや、283白粉(おしろい)()けねばならうまい、284(べに)もささねばなるまい、285(かみ)()(なほ)し、286身繕(みづくろ)ひせにやならぬと、
287()『モシモシ杢助(もくすけ)さま、288(さつ)しの(とほ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)御座(ござ)います。289どうぞ少時(しばし)ここを()けない()うにして(くだ)さいませ。290一寸(ちよつと)()だしなみをして、291それからお()にかかりますから』
292 妖幻坊(えうげんばう)杢助(もくすけ)はワザとに、293すねた()うな口振(くちぶり)で、
294『あ、295左様(さやう)御座(ござ)るか、296()つてやらぬと仰有(おつしや)れば、297たつて()つて(もら)ひたいとは(おも)はぬ。298さよなら。299拙者(せつしや)曲輪城(まがわじやう)(くも)()()(かへ)るで御座(ござ)らう』
300()『モシ、301杢助(もくすけ)さま、302(なさけ)ない、303こがれ(した)ふて()女房(にようばう)一目(ひとめ)()ずに304()てて(かへ)らうとは(あんま)りぢや御座(ござ)いませぬか。305貴方(あなた)(わか)れて(この)(かた)306()ても(さめ)ても()ひたい()ひたいと(おも)(くら)して()りました。307何卒(どうぞ)(ただ)(いま)()不礼(ぶれい)はお(ゆる)(くだ)さいまして、308一目(ひとめ)()ふて(くだ)さいませ』
309妖幻坊(えうげんばう)左様(さやう)ならば、310御免(ごめん)(かうむ)つて、311(ひさ)()りで(たか)チヤンの綺麗(きれい)なお(かほ)拝見(はいけん)しようかな』
312()(なが)313二階(にかい)(ゆか)をメキメキいはせ(なが)無雑作(むざふさ)障子(しやうじ)引開(ひきあ)け、314ノソリノソリと(いり)(きた)り、315千草(ちぐさ)(まへ)にドツカと()()め、316どんぐり()()()して、317ニコニコ(わら)(なが)ら、
318(えう)『ヤア、319(たか)チヤン、320余程(よほど)(わか)くなつたぢやないか、321高宮姫(たかみやひめ)時代(じだい)とはまだ(みつ)つも(よつ)つも(わか)()えるよ、322()()壮健(さうけん)でお目出度(めでた)う』
323()『モシ、324杢助(もくすけ)さま、325貴下(あなた)何処(どこ)をどう彷徨(うろつ)いてゐらつしやつたの。326(わたし)どれ(だけ)(たづ)ねて()たか()れませぬよ。327今年(ことし)(さん)(ねん)(ばか)()はぬじやありませぬか』
328(えう)(おれ)だとてお(まへ)在処(ありか)(さが)(もと)めて、329こんな(ところ)(まで)やつて()たのだ。330ウラナイの(かみ)(さま)のお(かげ)()つて、331(はか)らずも(この)宿屋(やどや)でお(まへ)()ふたのは(なに)よりの仕合(しあは)せ。332ヤ、333(おれ)(うれ)しい、334サ、335今夜(こんや)はシツポリと昔語(むかしがたり)でもして(やす)まうぢやないか』
336()『こんな(うれ)しい(こと)はメツタに御座(ござ)いませぬ。337貴方(あなた)(なに)がお()きで御座(ござ)いましたいナ、338(なに)差上(さしあ)げたいと(ぞん)じますが…』
339(えう)『ヤ、340(おれ)(べつ)(なに)(すき)といふ(こと)もない。341(すき)なのはお(まへ)(かほ)(ばか)りだよ、342アツハヽヽヽ』
343()『さうさう貴方(あなた)は、344一番(いちばん)(すき)なは(わたし)(かほ)345一番(いちばん)(きら)ひなのは(いぬ)だと仰有(おつしや)いましたね』
346(えう)『コーリヤ、347高宮姫(たかみやひめ)348モウ(いぬ)(こと)()つてくれな。349(じつ)(ところ)入江(いりえ)(さと)(まで)やつて()(ところ)350沢山(たくさん)(いぬ)(ほえ)つかれ、351気分(きぶん)(わる)くて(たま)らず、352今日(けふ)三日(みつか)(ばか)(この)宿屋(やどや)(とま)つてゐるのだ。353(まへ)(うら)座敷(ざしき)で、354(なに)かいい(をとこ)()()んで()つたやうだが、355それを(おも)ふと、356(なん)だか()けて仕方(しかた)がないワ』
357()『ホヽヽヽ、358彼奴(あいつ)ア、359オーラ(さん)()(やま)(とりで)(かま)へて、360泥棒(どろばう)張本人(ちやうほんにん)をやつて()玄真坊(げんしんばう)()売僧(まいす)ですよ。361彼奴(あいつ)(ふところ)沢山(たくさん)(かね)()つてると()り、362(うま)()ひくるめて(この)宿屋(やどや)()()み、363ウマウマと三万(さんまん)(りやう)をフン(だく)つてやつたのです。364(こひ)(いろ)のと(たれ)があんな禿蛸(はげたこ)土瓶(どびん)相手(あひて)になるものですか、365よう(かんが)へて(くだ)さいナ』
366(えう)『そらさうだらう、367(もく)チヤンといふ色男(いろをとこ)(をつと)()(なが)ら、368あの()うなヒヨツトコに相手(あひて)になるお(まへ)では()い……とは承知(しようち)して()るものの、369(さん)(ねん)(わか)れて()ると、370(こころ)がひがんで(めう)()になるものだ。371ヤ、372無実(むじつ)(つみ)をお(まへ)()せて()まなかつた、373これ(この)(とほ)りだ』
374両手(りやうて)(あは)せて(ゆか)(あたま)をすりつける。375千草姫(ちぐさひめ)は、
376『モシ(もく)チヤン、377(いや)ですよ、378揶揄(からかひ)()加減(かげん)にして()いて(くだ)さい。379(わたし)380貴方(あなた)仕打(しうち)(あま)水臭(みづくさ)くつて(にく)らしいワ』
381(えう)(いく)らお(まへ)(にく)らしいと()つても(つなが)(えん)ぢや仕方(しかた)がないワ。382(おれ)()れた弱味(よわみ)383(まへ)にや百歩(ひやつぽ)(ゆづ)らざるを()ないワ、384ハヽヽヽ385(をとこ)()(やつ)386(をんな)にかけたら(もろ)いものだワ、387アハヽヽ』
388()『ヨウまア(にく)たらしい、389そんな冗談(じようだん)()へますこと。390(わたし)(かへつ)(うら)めしう御座(ござ)います。391サ、392(ひさ)()りで今晩(こんばん)はゆつくり(やす)まうぢや御座(ござ)いませぬか』
393(えう)『お(まへ)第一(だいいち)霊国(れいごく)天人(てんにん)394底津(そこつ)岩根(いはね)(おほ)ミロクさまの(みたま)八十四(はちじふよつ)日間(かかん)月経(つきやく)があると()ふぢやないか、395一緒(いつしよ)()るこた、396真平(まつぴら)御免(ごめん)(かうむ)つて()かうかい』
397()『エー(にく)たらしい、398貴方(あなた)はあの売僧(まいす)坊主(ばうず)との(はなし)をどつからか()いてゐらつしやつたのでせう。399(はら)(わる)(かた)ですね、400何処(どこ)()いてゐたのです』
401(えう)『ウン、402雪隠(せんち)(なか)で、403……ウン、404イヤイヤ雪隠(せんち)()かうと(おも)つて一寸(ちよつと)(よこ)(とほ)つた(ところ)405(あま)りお(まへ)によう()(こゑ)がするので、406()(ぎき)をすると、407そんな(こと)()つて()たよ。408ヨモヤお(まへ)とは()()かぬものだから、409自分(じぶん)居間(ゐま)(かへ)つて……あんな美人(びじん)があつたらなア……と羨望(せんばう)()へなかつたのだ。410まアまアお(まへ)結構(けつこう)だつた』
411()月経(つきやく)なんかあらしませぬよ、412安心(あんしん)して(やす)んで(くだ)さいな』
413(えう)『ヨーシ、414面白(おもしろ)い。415そんなら(ひさ)()りで(たか)チヤンの、416寝間(ねま)(とぎ)でもさして(いただ)きませうか』
417 千草姫(ちぐさひめ)はプリンと()()け、
418()りませぬ、419勝手(かつて)になさいませ』
420子供(こども)()うなスタイルで(やや)すね気味(ぎみ)になつてゐる。421猛犬(まうけん)(こゑ)はワンワンワンと四方(しはう)八方(はつぱう)より(きこ)(きた)る。
422大正一五・二・一 旧一四・一二・一九 於月光閣 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→