霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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希臘(ギリシヤ)天地開闢説(てんちかいびやくせつ)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻 篇:前付 よみ:
章:希臘の天地開闢説 よみ:ぎりしゃのてんちかいびゃくせつ 通し章番号:
口述日:1933(昭和8)年12月06日(旧10月19日) 口述場所:水明閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年3月23日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 430頁 修補版: 校定版:25頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 ギリシヤの天地開闢説(てんちかいびやくせつ)古来(こらい)種々(しゆじゆ)伝承(でんしよう)があつて、002人々(ひとびと)によつて区々(くく)である。003(しか)大体(だいたい)から()へばユダヤの神話(しんわ)にある(ごと)世界創造説(せかいさうざうせつ)ではなく、004支那(しな)神話(しんわ)()ゆる(ごと)天地開闢説(てんちかいびやくせつ)である。005(すなは)()世界(せかい)(つく)られたものでなく、006幾万年(いくまんねん)世代(せだい)変化(へんくわ)()て、007次第(しだい)現在(げんざい)状態(じやうたい)になつたものである。008(したが)つて神々(かみがみ)世界(せかい)よりさきに存在(そんざい)したのではなくて、009神々(かみがみ)自身(じしん)(また)()世界(せかい)()一家族(いつかぞく)のうちに(うま)れて()たものである。
010 天地(てんち)開闢(かいびやく)神話(しんわ)は、011それを(かた)(つた)へた詩人(しじん)によつて区々(くく)である。012ホメロスによれば、013(くち)()をくはへた(へび)のやうに(うみ)(りく)とを()りまいてゐる広大無辺(くわうだいむへん)大河(たいが)オケアノスが万物(ばんぶつ)本源(ほんげん)で、014また(すべ)ての神々(かみがみ)(ちち)であつた。015また()伝説(でんせつ)によると、016(よる)」と「(やみ)」が世界(せかい)根源(こんげん)で、017そのうちから(ひかり)(うま)れたといつてゐる。018(さら)詩人(しじん)オルフェウスが(つた)へたと()はれてゐる(せつ)によると、019世界(せかい)(はじ)めには無始(むし)無終(むしう)の「(クロノス)」があつて、020これから「カオス」と()(そこ)なしの(ふち)(うま)れ、021()深淵(しんえん)(なか)で「(よる)」と「(きり)」と「精気(アイテル)」が(はぐ)くまれた。022その(うち)に「(クロノス)」は「(きり)」を(うご)かして中心(ちうしん)なる「精気(アイテル)」のまはりを、023独楽(こま)のやうに廻転(くわいてん)させたので、024世界(せかい)(おほ)きな(たまご)のやうな塊団(かたまり)になり、025それがまた廻転(くわいてん)速力(そくりよく)でまづ(ふた)つに()れて、026(ひと)つは(のぼ)つて(てん)となり、027(ひと)つは(くだ)つて()()つた。028そして(その)(たまご)(なか)からは「(エロス)」をはじめ、029いろいろな不思議(ふしぎ)なものが(うま)れたと()ふのである。
030 (しか)世界(せかい)神々(かみがみ)起源(きげん)()べたものの(うち)で、031一番(いちばん)(まと)まつてゐるのはヘシオドスの「テオゴニヤ」(神統記(しんとうき))であつた。032「テオゴニヤ」によると、033万物(ばんぶつ)(はじ)めには「カオス」があつた。034(つぎ)(ひろ)(むね)()つた「ガイヤ」(())と()(そこ)なる暗黒(あんこく)の「タルタロス」と不死(ふし)神々(かみがみ)(うち)一番(いちばん)(うつく)しいエロス((あい))が出来(でき)た。035「カオス」は((くち)をあいた場所(ばしよ))といふ意味(いみ)で、036(その)内部(ないぶ)真黒(まつくろ)(きり)(みた)されてゐた。037「カオス」の(つぎ)には()出来(でき)て、038(ゆき)をいただくオリムポスの絶頂(ぜつちやう)()むべき神々(かみがみ)安全(あんぜん)座位(ざゐ)となつた。039けれどもまだ(そら)(うみ)山々(やまやま)もなければ、040(ひる)(よる)もなかつた。041(かた)()(ほか)には何物(なにもの)もなかつた。042その(つぎ)(あら)はれたのが「エロス」であつた。043エロスは男性(だんせい)女性(ぢよせい)とを(むす)びつけて(あた)らしい世代(せだい)()()ださせる(あい)(ちから)であつた。
044 (つぎ)に「カオス」からは、045地下(ちか)(やみ)なる「エレボス」と(とほ)日没(にちぼつ)(くに)()んでゐる地上(ちじやう)(やみ)なる「(ニツクス)」が(うま)れた。046「エロス」は「(ニツクス)」と「エレボス」とを(むす)()けて(その)(あひだ)二人(ふたり)()()ませた。047(てん)(ひかり)なる「精気(アイテル)」と()(ひかり)なる「(ヘメラ)」である。048(つぎ)に「ガイヤ」(すなは)(はは)なる()は「エロス」と接触(せつしよく)して「ウラノス」((ほし)(おほ)(てん))と広大(くわうだい)山々(やまやま)と「ボントス」((あら)(うみ))を()む。049「ウラノス」と「ガイヤ」((てん)())はこの世界(せかい)最初(さいしよ)主宰者(しゆさいしや)として、050(つぎ)世代(せだい)神々(かみがみ)父母(ふぼ)となつた。
051 ヘシオドスの記事(きじ)()くの(ごと)幼稚(えうち)なものであるが、052(しか)しギリシヤの開闢神話(かいびやくしんわ)(なか)では、053これらが代表的(だいへうてき)なものである。054勿論(もちろん)この開闢説(かいびやくせつ)(なか)に、055どれほど(ふか)哲学的(てつがくてき)思想(しさう)()(つつ)まれてゐるかは、056問題(もんだい)ではないのである。
 
057   神々(かみがみ)世代(せだい)
 
058 ギリシヤの神話(しんわ)は、059この世界(せかい)支配(しはい)する神々(かみがみ)世代(せだい)をほぼ()つに(わか)つてゐる。060天地万物(てんちばんぶつ)(しやう)じて、061第一(だいいち)()世界(せかい)主宰者(しゆさいしや)となつた(かみ)は「ウラノス」と「ガイヤ」であつたが、062それに(つい)て「クロノス」と「レア」の治世(ちせい)(なが)(あひだ)(つづ)いた(のち)063最後(さいご)に「ゼウス」と「ヘラ」が()天地(てんち)主宰者(しゆさいしや)となつた。064「ウラノス」と「ガイヤ」の系統(けいとう)には「チタン」と「キクローベ」と「ケンチマネ」と()()つの神族(しんぞく)があつた。065このうち「チタン」(ぞく)(のち)神族(しんぞく)(てき)となつて、066この世界(せかい)大動乱(だいどうらん)(おこ)したもので、067ギリシヤの神代史(じんだいし)(うち)で、068いつも争闘(さうとう)渦中(くわちう)()()んで、069増悪(ぞうを)争闘(さうとう)とを(あふ)るものはこの一族(いちぞく)であつた。070神話(しんわ)学者(がくしや)(あひだ)には、071火山(くわざん)爆発(ばくはつ)とか、072地震(ぢしん)とか()地球上(ちきうじやう)大変動(だいへんどう)人格化(じんかくくわ)したものと解釈(かいしやく)されてゐる。073「ホメロス」の()(あら)はれる「チタン」(ぞく)は「イアベトス」と「クロノス」の(ふた)つだけであるが、074ヘシオドスは十三(じふさん)の「チタン」(ぞく)()()げてゐる。075(すなは)ち「オケアノス」と「テチス」「ヒペリオス」と「テイヤ」「コイオス」と「フオイベ」「クレイオス」と「エウリビヤ」と「イヤベトス」「テミス」と「ムネモシネ」「クロノス」と「レア」である。
076 (つぎ)に「キクローベ」(ぞく)雙眼(せきがん)大怪物(だいくわいぶつ)で、077その()を「プロンテス」「ステロペス」「アルゲス」と()ひ、078雷鳴(らいめい)電光(でんくわう)落雷(らくらい)人格化(じんかくくわ)であつた。
079 最後(さいご)に「ケンチマネ」(ぞく)は、080百本(ひやつぽん)()()つた怪物(くわいぶつ)で、081「プリアレオス」「ギエス」「コツトス」と()ひ、082大地(だいち)(ふる)はす(うみ)激動(げきどう)怒号(どがう)や、083(やま)のやうな波濤(はたう)恐怖(きようふ)人格化(じんかくくわ)したものである。
084 「ウラノス」は()三神族(さんしんぞく)のうち、085(あと)二族(にぞく)(おそ)ろしいものに(おも)つて、086(うま)れると()(はは)なる大地(だいち)(そこ)の「タルタロス」へ()()んで、087そこへ(ふう)()めて(しま)つた。088(はは)の「ガイヤ」は、089この無情(むじやう)行動(かうどう)(ふか)(いきどほ)つて、090「ウラノス」に(たい)して復讐(ふくしゆう)(くはだ)て、091「チタン」(ぞく)(たす)けを(もと)めたが、092「クロノス」の(ほか)は、093たれも(はは)味方(みかた)をするものはなかつた。094「ガイヤ」はそこで、095「クロノス」に(ひと)つの鋭利(えいり)(かま)(あた)へて、096「ウラノス」を()()せに(おそ)つて深傷(ふかで)()はせた。097そのとき「ウラノス」の(たい)から(なが)れた()化生(くわせい)して、098(へび)(かみ)をもつた復讐(ふくしゆう)三女神(さんめがみ)「エリニエス」や(あたら)しい大怪物(だいくわいぶつ)巨人族(きよじんぞく)となり、099また(うみ)()ちたものは、100()女神(めがみ)「アフロヂテ」となつた。101「ウラノス」に(つい)ては、102これ以上(いじやう)何事(なにごと)(つた)はつてゐない。103ギリシヤ(じん)は「ウラノス」を(かみ)(まつ)らなかつた、104(したが)つてギリシヤ神話(しんわ)()ける「ウラノス」の地位(ちゐ)は、105(ただ)自然界(しぜんかい)基本的(きほんてき)(ちから)代表(だいへう)する神々(かみがみ)(ちち)()ふだけに()ぎなかつた。
106 かうして「ウラノス」の時代(じだい)()ぎて(あたら)しい「クロノス」の()となつたが、107「クロノス」は(ちち)()つて(かは)つたといふ事情(じじやう)があるので、108(ちち)(たた)りだけでも永続(えいぞく)しないやうな運命(うんめい)()びてゐた。
109 一方(いつぱう)ではまた「ウラノス」の系統(けいとう)()いた神々(かみがみ)から、110自然(しぜん)と「クロノス」とは異系(いけい)(おほ)くの神々(かみがみ)(うま)れた。111「オケアノス」と「テチス」の(あひだ)には無数(むすう)河神(かしん)(いづみ)(もり)少女(せうぢよ)「ニムフェ」が(うま)れ、112(つづ)いて(うみ)の「ニムフェ」だの(うみ)(りく)色々(いろいろ)怪物(くわいぶつ)出来(でき)た。113「ヒベリオン」と「テイヤ」とは「()」と「(つき)」と「(あかつき)」の両親(りやうしん)となり、114(あかつき)女神(めがみ)色々(いろいろ)な「(かぜ)」と「(あけ)明星(みやうじやう)」の(はは)となつた。115また「イヤベトス」の()には広大無辺(くわうだいむへん)(てん)(ささ)へてゐる「アトラス」と人間(にんげん)創造(さうざう)(ちから)(つく)した「プロメテウス」「エピメテウス」の兄弟(きやうだい)があつた。116「クロノス」は(いもうと)の「レア」と(とも)天地(てんち)支配(しはい)して、117その(あひだ)に「ヘスチヤ」「デメテル」「ヘラ」の三女神(さんめがみ)と「ハデス」「ポサイドン」「ゼウス」の三男神(さんをがみ)()んだ。
118 「クロノス」の治世(ちせい)()天地(てんち)(いま)(つみ)(けが)れを()らなかつた、119いはゆる黄金時代(わうごんじだい)で、120疾病(しつぺい)()らず、121()いると()(こと)もなく、122野山(のやま)には種々(しゆじゆ)果実(このみ)が、123一面(いちめん)(みの)つてゐるから、124(はたら)いて()ふと()心配(しんぱい)もなく、125天地間(てんちかん)万物(ばんぶつ)無限(むげん)幸福(かうふく)快楽(くわいらく)とを(あぢ)はつて()時代(じだい)だと(つた)へられる。126この黄金時代(わうごんじだい)(ひさ)しい(あひだ)(つづ)いたが、127その(あひだ)に「クロノス」は自分(じぶん)()んだ()が、128いつか自分(じぶん)(かは)つてこの天地(てんち)主宰者(しゆさいしや)になると()ふことを()つてゐたので、129子供(こども)(うま)れるや(いな)や、130みんな()んで(しま)つたが、131(しか)最後(さいご)に「ゼウス」の(うま)れる(とき)は、132(はは)の「レア」は「クレテ」の(しま)()つて(うま)れた赤子(あかご)(ひと)つの洞窟(どうくつ)(なか)(かく)し、133(おほ)きな(いし)産衣(うぶぎ)(なか)(つつ)んで「クロノス」へ(わた)したので、134「クロノス」は()がつかずに一口(ひとくち)にそれを()()んで(しま)つた。
135 かうして(あやふ)(いのち)(たす)けられた「ゼウス」は、136クレテ(じま)に「ニムフェ」らに保護(ほご)されて、137「アマルテイヤ」と()山羊(やぎ)(ちち)でそだてられたが、138「ニムフェ」らは赤児(あかご)()(たび)(かね)太鼓(たいこ)()らし、139(いくさ)のまねごとをして()(ごゑ)を「クロノス」の(みみ)()れないやうにしたと(つた)へられる。140そのうちに「ゼウス」は生長(せいちやう)すると、141()祖母(そぼ)の「ガイヤ」の(たす)けをかりて「クロノス」の(くち)から()()んだ同胞(はらから)らを()()させた。142その(とき)第一(だいいち)()たのは「ゼウス」の身代(みがは)りになつた大石(おほいし)で、143これは(のち)神託(しんたく)有名(いうめい)になつた「デルフォイ」の神殿(しんでん)保存(ほぞん)された。144それから、145順々(じゆんじゆん)にほかの五人(ごにん)同胞(はらから)らが()()されて、146(はは)の「レア」の()(もど)された。147そこで天上界(てんじやうかい)第二(だいに)革命(かくめい)(おこ)つた。
148 「ゼウス」はその同胞(はらから)神々(かみがみ)(とも)に「オリムポス」の山上(さんじやう)立籠(たてこも)ると、149(おほ)くの「チタン」(ぞく)は「クロノス」を(たす)けて「オトリス」の(やま)()つて十年(じふねん)(あひだ)戦争(せんさう)(つづ)けた。150この戦争(せんさう)自然力(しぜんりよく)全部(ぜんぶ)闘争(とうさう)渦中(くわちう)()()んで、151この世界(せかい)存在(そんざい)をも(おびや)かしたほどに猛烈(まうれつ)なものであつた。152同時(どうじ)()一方(いつぱう)では、153(かみ)悪魔(あくま)154正義(せいぎ)暴力(ばうりよく)との(たたか)ひであつた。155(この)(あひだ)に「チタン」(ぞく)のうちでも「テミス」と「ムネモシネ」(公正(こうせい)記憶(きおく))とは、156暴力(ばうりよく)味方(みかた)になることを()けて、157智力(ちりよく)秩序(ちつじよ)代表(だいへう)たる「ゼウス」の味方(みかた)につき、158また「プロメテウス」(先見(せんけん))も終局(しうきよく)勝利(しようり)が「ゼウス」にあることを予知(よち)して「オリムポス」に(はし)つた。
159 戦争(せんさう)(ほと)んど(はて)しが()かなかつた。160「ゼウス」は(つひ)に「チタン」(ぞく)暴力(ばうりよく)征服(せいふく)するには、161()暴力(ばうりよく)()るほかはないと(さと)つた。162そこで「ゼウス」は(ふたた)祖母(そぼ)「ガイヤ」の(ちから)()りて、163「ウラノス」が地底(ちそこ)の「タルタロス」へ(ふう)()めて()いた「キクローベ」や「ケンチマネ」の一族(いちぞく)解放(かいはう)して味方(みかた)につけ、164「キクローベ」の()から雷電(らいでん)(ゆづ)()けて、165先頭(せんとう)()つて(てき)(むか)ふと、166三箇(さんこ)の「ケンチマネ」は三百本(さんびやつぽん)()(いは)をつかんでは(てき)(むか)つて雨霰(あめあられ)()げつけた。167その(とき)「オリムポス」の山上(さんじやう)から()げかける雷電(らいでん)のために、168周囲(しうゐ)()()けただれ、169河海(かかい)(みづ)沸騰(ふつとう)して、170()(ごと)(きり)は「オトリス」の(やま)(つつ)み、171「チタン」(ぞく)()えず(ひら)めく電光(でんくわう)のために(ことごと)くその視力(しりよく)(うしな)つた。
172 同時(どうじ)に「ケンチマネ」は()(うみ)(ふる)はして突進(とつしん)したので、173さすがに勇猛(ゆうまう)な「チタン」(ぞく)も、174電光(でんくわう)()かれ(いは)(した)(うづ)められて、175たうとう「ゼウス」の(ぐん)降服(かうふく)して(しま)つた。176そこで「ゼウス」は「ケンチマネ」に(めい)じて、177「クロノス」を(はじ)自分(じぶん)刃向(はむか)つた「チタン」(ぞく)を、178「タルタロス」の(そこ)幽閉(いうへい)し、179「ケンチマネ」をして監視(かんし)させた。
180 神々(かみがみ)と「チタン」(ぞく)との戦闘(せんとう)神話(しんわ)は、181世界(せかい)起原(きげん)(くわん)するギリシヤの神話(しんわ)(うち)でも、182(おそ)らく最古(さいこ)伝説(でんせつ)(くわん)するものである。183この戦闘(せんとう)舞台(ぶたい)となつた「テツサリヤ」の地勢(ちせい)()れば何人(なんぴと)にも想像(さうざう)されることではあるが、184そこには自然(しぜん)激変(げきへん)(あと)(いちじる)しく(のこ)つてゐる。185「テツサリヤ」の平原(へいげん)そのものが、186あの山壁(さんぺき)()いて「テンペ」の大谿谷(だいけいこく)(つく)()した大地震(だいぢしん)産物(さんぶつ)であつた。187そして「オリムポス」(さん)と「オトリス」(さん)とは丁度(ちやうど)この大谿谷(だいけいこく)(はさ)んで相対峙(あひたいじ)する大城壁(だいじやうへき)のやうな形勢(けいせい)をして、188その(あひだ)谿谷(けいこく)には処々(しよしよ)巨大(きよだい)漂石(へうせき)が「ゼウス」(ぞく)と「チタン」(ぞく)(あひだ)()げかはされた巌石(がんせき)のやうに()()らされて()るのである。
189 「クロノス」の黄金時代(わうごんじだい)は、190かうして永久(えいきう)()()つた。191「クロノス」の神話(しんわ)については、192(たがひ)矛盾(むじゆん)した(ふた)つの性質(せいしつ)賦与(ふよ)されてゐる。193一方(いつぱう)では、194この時代(じだい)地上(ちじやう)には永久(えいきう)(はる)(つづ)いて人間(にんげん)無限(むげん)幸福(かうふく)享楽(きやうらく)した黄金時代(わうごんじだい)だと()くとともに、195()一方(いつぱう)では、196その治世(ちせい)(すで)(ちち)の「ウラノス」に(たい)する反逆(はんぎやく)(はじ)まつたやうに、197この治世(ちせい)(つう)じて権謀術数(けんぼうじゆつすう)によつて支配(しはい)された時代(じだい)のやうにも()いてゐる。198この第二(だいに)伝説(でんせつ)によると、199「クロノス」は結局(けつきよく)正義(せいぎ)代表者(だいへうしや)たる「ゼウス」に(たい)して、200邪曲(じやきよく)代表者(だいへうしや)()られるのである。201(しか)しさう()道徳的(だうとくてき)矛盾(むじゆん)除外(ぢよぐわい)して()れば、202この時代(じだい)は、203(のち)天地万物(てんちばんぶつ)秩序(ちつじよ)次第(しだい)(ととの)つて()時代(じだい)であつた。
204 「ゼウス」は(つひ)にその強敵(きやうてき)「チタン」(ぞく)征服(せいふく)したけれども、205「ゼウス」の主権(しゆけん)はまだ本当(ほんたう)安定(あんてい)する(ところ)までは()かなかつた。206「ガイヤ」は一旦(いつたん)(まご)の「ゼウス」を(たす)けて「クロノス」と「チタン」(ぞく)征服(せいふく)させたけれども、207いよいよ「ゼウス」が()つて()ると、208さすがに自分(じぶん)()んだ「チタン」(ぞく)没落(ぼつらく)(あはれ)むやうな心持(こころもち)()て、209「ゼウス」に(たい)してまたまた陰謀(いんぼう)(くはだ)てるやうになつた。
210 「ガイヤ」には、211「チタン」(ぞく)のほかに「チフオイオス」といふ()があつた。212「チフオイオス」は同胞(どうはう)の「チタン」(ぞく)よりは一層(いつそう)(おそ)ろしい怪物(くわいぶつ)で、213どうしても全能(ぜんのう)の「ゼウス」に反抗(はんかう)すべき運命(うんめい)()つて()た。214この「チフオイオス」は一百(いつぴやく)(へび)(あたま)()(ごと)(かがや)()真黒(まつくろ)(した)()ち、215(その)一百(いつぴやく)(くち)からは同時(どうじ)(へび)216牡牛(をうし)獅子(しし)(いぬ)(その)()あらゆるものの(こゑ)()てて咆吼(ほうこう)するのであつた。217この怪物(くわいぶつ)(はは)の「ガイヤ」の(めい)()けて「ゼウス」に(むか)つて(たたか)ひを(いど)んで()たが、218「ゼウス」は()ぐにその雷電(らいでん)をあびせかけて()(たふ)し、219「チタン」らと一緒(いつしよ)に「タルタロス」の(そこ)()()んで(しま)つた。
220 (しか)しこの戦争(せんさう)(てん)()もその(ため)震撼(しんかん)して「タルタロス」の(そこ)までも(ひび)(わた)つた。221そして「ゼウス」の雷光(らいくわ)(つつ)まれながらも、222その怪物(くわいぶつ)()()(いき)がかかつた()は、223まるで白蝋(はくらふ)かなにかのやうに、224どろどろに()けたと(つた)へられてゐる。225この怪物(くわいぶつ)(いま)もなほ「タルタロス」の(そこ)で、226折々(をりをり)(おそ)ろしい(うな)(ごゑ)()(ごゑ)()てる、227その(たび)噴火山(ふんくわざん)(くち)から(おそ)ろしい()(した)()き、228(あるひ)(おそ)ろしい熱風(ねつぷう)(おこ)して、229地上(ちじやう)草木(くさき)()(はら)ふのである。230「チフオイオス」は猛烈(まうれつ)旋風(せんぷう)人格化(じんかくくわ)であつた。
231 「チフオイオス」の反乱(はんらん)(つづ)いて巨人族(きよじんぞく)反乱(はんらん)があつた。232巨人族(きよじんぞく)()ふのは、233「ウラノス」の()から(うま)れた巨大(きよだい)怪物(くわいぶつ)である。234伝説(でんせつ)によると、235キラキラした(よろひ)()()長槍(ながやり)()つた魁偉(くわいゐ)巨人(きよじん)であつた。236巨人族(きよじんぞく)(なか)でも、237(とく)雄強(ゆうきやう)なものは「アルキオネス」「パラス」「エンケラドス」(およ)()(わう)「ボルフィリオン」であつた。238この巨人族(きよじんぞく)との(たたか)ひでは、239「オリムポス」諸神(しよしん)(うち)でも、240「ヘラ」と「アテーネ」の二女神(にぢよしん)首功(しゆこう)()て、241また「ゼウス」の()()けた英雄(えいゆう)「ヘラクレス」がその強弓(がうきう)をひいて(てき)をなやましたと()ふことになつてゐる。
242 この巨人族(きよじんぞく)自然界(しぜんかい)勢力(せいりよく)人格化(じんかくくわ)であつた。243「チタン」(ぞく)とは(ちが)つて、244俗間(ぞくかん)信仰(しんかう)根拠(こんきよ)()つた妖魔(えうま)であつた。245(したが)つて巨人族(きよじんぞく)は「チタン」(ぞく)や「キクローベ」や「チフォイオス」よりは一層(いつそう)人間(にんげん)(ちか)く、246(ふる)彫刻(てうこく)では(けもの)(かは)()(いは)根棒(こんぼう)武器(ぶき)とする蛮族(ばんぞく)姿(すがた)であらはされてゐるが、247(のち)には(どう)から(した)人間(にんげん)形体(けいたい)(うしな)つて、248(あし)のかはりに(あたま)をもつた二匹(にひき)(へび)をつけるやうになつた。249巨人族(きよじんぞく)(おそ)らくある地方(ちはう)特有(とくいう)俗間信仰(ぞくかんしんかう)から()一般(いつぱん)神話(しんわ)領域(りやうゐき)侵入(しんにふ)して()つたものらしく、250その性質(せいしつ)には、251有史前(いうしぜん)獰猛(だうまう)蛮族(ばんぞく)暗示(あんじ)するところがある。252人間(にんげん)同様(どうやう)(つち)から(うま)れたといふ形容詞(けいようし)をつけられてゐるのも、253その(ひと)つの証拠(しようこ)である。254とにかくこの巨人族(きよじんぞく)も、255()二族(にぞく)同様(どうやう)に「ゼウス」の(ため)(まつた)征服(せいふく)されて「タルタロス」の(そこ)(まつた)(はうむ)られて(しま)つた。
256 そこで天地(てんち)秩序(ちつじよ)(はじ)めて(さだ)まり、257「ゼウス」は「クロノス」に(かは)つて天地(てんち)主宰者(しゆさいしや)となつた。
258 この(とき)「ゼウス」は神々(かみがみ)会議(くわいぎ)(ひら)いて、259それぞれにその支配(しはい)(さだ)めた。260「ポサイドン」「オケアノス」に(かは)つて(うみ)支配(しはい)し、261「ハデス」は暗黒(あんこく)地下(ちか)世界(せかい)と「タルタロス」の(わう)となり、262「ヘラ」は「ゼウス」の()として「オリムポス」の女王(ぢよわう)となつた。