霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 五月闇(さつきやみ)〔二〇三八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻 篇:第3篇 木田山城 よみ:きたやまじょう
章:第11章 五月闇 よみ:さつきやみ 通し章番号:2038
口述日:1934(昭和9)年08月14日(旧07月5日) 口述場所:水明閣 筆録者:谷前清子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
サール国王エールスは、イドム城を落としたときに、多くの敵軍を捕虜として捕らえ、牢獄につなぐために、サール国に護送させていた。
サール国には大栄山から流れる、うす濁った木田川という川が流れており、川を越えた東側の丘陵の木田山に城があった。
サール国の太子エームスは、木田山城の師団長として留守を守り、数多の敵軍の捕虜が護送されてくるのを朝夕眺めていた。
ある日、捕虜の中に美しい三人連れの美人を認め、たちまち恋慕の情にとらわれると、敵国の女性であろうとも何とかして妻にしたいと煩悶苦悩するようになってしまった。この三人の美女とは、アヅミ王の娘チンリウ姫、侍女のアララギ、姫の乳母の娘センリウの三人であった。
太子エームスの侍臣、朝月と夕月は、太子の様子がただならないことに気づき、心を痛めてなんとかして太子の気を晴らそうと、さまざま歌や踊り、小鳥や虫の鳴き声などを催してみたが、太子は日に日に憔悴していくばかりであった。
ある日朝月、夕月は太子に花ヶ丘の清遊を進めようと、花咲く丘の美しさを歌に歌った。太子は花鳥風月に心は動かず、花ヶ丘に咲く花ではない花に、今は心を奪われているのだ、とそれとなく自分の思いを歌に歌った。
朝月は太子の心を察し、自分が太子の花への使者となりましょう、と歌うと、太子は、自分が恋焦がれる花は、実は敵国の捕虜の中にいるのだと歌い、高貴な身なりから、間違いなくあれはアヅミ王の王女であろうと明かした。
太子は、王女にとって自分は親の敵であり、どうやって王女の心を掴んだらよいか、朝月、夕月に相談を持ちかけた。朝月、夕月はなんとしても王女に太子の心を伝え心をなびかせてみようと、太子の思いを承った。
かくして、朝月、夕月はひとまず太子の前を下がっていった。太子は一人、木田川の流れを眺めながら、述懐の歌を歌っていた。侍女の滝津瀬、山風がお茶を汲みに参上したが、太子の心は晴れず、茶にも菓子にも手をつけずにうつむいていた。
侍女たちは太子の様子を心配するが、太子もう夜が遅いのでひとまず下がるように言いつけ、侍女たちは下がっていった。かくして、木田山城の夜は更けていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm8111
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 484頁 修補版: 校定版:231頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 サールの国王(こくわう)エールスが、002イドムの(くに)占領(せんりやう)せむとして大兵(たいへい)(つの)り、003イドム(じやう)疾風迅雷的(しつぷうじんらいてき)()()せ、004一挙(いつきよ)にして王城(わうじやう)占領(せんりやう)し、005アヅミ(わう)(はじ)めムラジ()(およ)左守(さもり)006右守(うもり)007軍師(ぐんし)(とも)月光山(つきみつやま)逃走(たうそう)せしめ、008数多(あまた)敵軍(てきぐん)捕虜(ほりよ)としてサールの(くに)牢獄(らうごく)(つな)ぐべく騎士(ナイト)をして護送(ごそう)せしめた。
009 サールの(くに)には大栄山(おほさかやま)より(なが)()つる木田川(きたがは)()薄濁(うすにご)つた(なが)れがある。010ここには橋梁(けうりやう)もなければ(ふね)もないので、011いづれも水馬(すゐば)(じゆつ)(もつ)(わた)ることとなし、012木田川(きたがは)をへだて、013(ひがし)丘陵(きうりよう)木田山(きたやま)にエールスは城壁(じやうへき)(かま)へ、014要害堅固(えうがいけんご)陣地(ぢんち)とたのんでゐる。
015 エールス(わう)太子(たいし)エームスは木田山城(きたやまじやう)留守師団長(るすしだんちやう)として(まも)つてゐたが、016数多(あまた)敵軍(てきぐん)捕虜(ほりよ)(おく)られて()るのを()むと、017城内(じやうない)広場(ひろば)夕月(ゆふづき)018朝月(あさづき)侍臣(じしん)(したが)へ、019その(さま)愉快(ゆくわい)げに(なが)めてゐたるが、020()(なか)気品(きひん)(すぐ)れて(たか)く、021面貌(めんばう)(うるは)しき三人連(さんにんづ)れの美人(びじん)(みと)め、022(ひと)()のエームスはたとへ敵国(てきこく)女性(ぢよせい)にもせよ、023(なん)とかして(わが)(つま)()さむものと、024それより(わが)(やかた)(かへ)り、025(たちま)恋慕(れんぼ)(おに)(とら)はれ、026(よる)(ひる)煩悶苦悩(はんもんくなう)溜息(ためいき)ばかり(つづ)()たりける。
027 この三人(さんにん)美女(びぢよ)()(まで)もなく、028アヅミ(わう)(むすめ)チンリウ(ひめ)にして、029(やや)年老(としお)いたるのは侍女(じぢよ)のアララギ(およ)びチンリウ(ひめ)乳兄弟(ちきやうだい)なる乳母(うば)(むすめ)センリウの三人(さんにん)なりける。
030 朝月(あさづき)031夕月(ゆふづき)はエームスの日夜(にちや)様子(やうす)(ただ)ならざるに(こころ)をいため、032如何(いか)にもして爽快(さうくわい)なる太子(たいし)笑顔(ゑがほ)()むものと、033あらゆる手段(しゆだん)をつくし、034(こゑ)(うるは)しき小鳥(ことり)(あつ)(あるひ)(むし)()かせ、035種々(しゆじゆ)禾本類(くわほんるゐ)太子(たいし)眼近(めぢか)(ところ)陳列(ちんれつ)し、036その(うへ)(うた)(うた)(あるひ)(をど)()ひ、037種々(いろいろ)心力(しんりよく)をつくせども、038太子(たいし)身体(しんたい)日夜(にちや)憔悴(せうすゐ)するばかりなりければ、039或日(あるひ)朝月(あさづき)040夕月(ゆふづき)太子(たいし)花ケ丘(はながをか)清遊(せいいう)(すす)めむと、041(そば)(ちか)参入(さんにふ)して(うた)もて(すす)めける。
042 朝月(あさづき)(うた)ふ。
043朝月(あさづき)(かげ)はおぼろに(しら)けつつ
044(はな)(つぼみ)(つゆ)宿(やど)せり
045花ケ丘(はながをか)百花(ももばな)千花(ちばな)(ことごと)
046若王(きみ)(なさけ)(つゆ)()れつつ
047若王(わかぎみ)(こころ)(つぼみ)(ひら)かむと
048(なみだ)(つゆ)()らす朝月(あさづき)
049 エームスはかすかに朝月(あさづき)(うた)()いて、050(やや)(こころ)(うご)きたる(ごと)く、051二三歩(にさんぽ)(まへ)(すす)(きた)りて(うた)ふ。
052朝月(あさづき)(かげ)(しら)けて大空(おほぞら)
053かすめり(われ)(こころ)にも()
054(わが)(こころ)(あさ)(ゆふ)なに()れやらず
055花鳥風月(くわてふふうげつ)(たの)しみにならず
056百鳥(ももどり)(さへづ)(こゑ)松虫(まつむし)
057共啼(むたな)きさへもかなしき(われ)なり
058(わが)(ちち)生死(せいし)(ちまた)(たたか)へり
059されど(われ)にはかかはりもなし
060(わが)(こころ)(いくさ)()でます垂乳根(たらちね)
061いつか(はな)れて(はな)(なや)めり
062花ケ丘(はながをか)(にほ)へる(もも)のよそほひも
063(われ)にはかなしき便(たよ)りなりけり
064(やま)(かは)(われ)にはかなし木田山(きたやま)
065(やかた)もさびし(おも)ひはれねば』
066 朝月(あさづき)(うた)ふ。
067(わが)若王(きみ)御心(みこころ)かすかに(さと)りたり
068朝月(あさづき)(われ)花便(はなだよ)りせむ』
069 エームスは(うた)ふ。
070『たらちねの(あだ)なる(はな)にあこがれて
071(われ)はくるしき(ゆめ)()るなり
072()くならば(ほまれ)(くらゐ)(たま)()
073(わが)生命(いのち)さへ()しけくはなし
074ままならぬ(ひと)()ひつつままならぬ
075わが()(なげ)きぬ(あした)(ゆふ)べに
076はてしなき(ひろ)きサールの国中(くになか)
077かかる目出度(めでた)(はな)()ざりき』
078 朝月(あさづき)(うた)ふ。
079若王(わかぎみ)()りする(はな)(とら)はれの
080(はな)にあらずや(かた)らせ(たま)へ』
081 エームスは(うた)ふ。
082(はづ)かしと(おも)へど(われ)村肝(むらきも)
083(こころ)(あか)さむ()言葉(ことば)あたれり
084(とら)はれの(をみな)姿(すがた)気高(けだか)ければ
085(まさ)しくアヅミの(むすめ)なりけむ
086(わが)(ちち)はアヅミの(くに)(ほろ)ぼして
087(うら)みを()ひしことのかなしさ
088心安(うらやす)手折(たを)()べけむその(はな)
089(ちち)(あらし)()らされむとすも』
090 朝月(あさづき)(うた)ふ。
091(わが)若王(きみ)のかなしき(こころ)まつぶさに
092牢獄(ひとや)(をみな)(われ)(つた)へむ
093言霊(ことたま)(した)(つるぎ)()りかざし
094若王(きみ)(こころ)をはらし(まつ)らむ
095(うるは)しき三人(みたり)(をみな)のその(なか)
096すぐれてたかきを若王(きみ)(すす)めむ
097どこまでも(わが)真心(まごころ)()()けて
098イドムの(くに)(はな)をなびかせむ』
099 エームスは(やや)面色(かほいろ)をやはらげながら(うれ)しげに(うた)ふ。
100朝月(あさづき)(つゆ)(なさけ)にうるほひて
101(よみがへ)るらむ朝顔(あさがほ)(はな)
102初恋(はつこひ)(わが)初花(はつはな)手折(たを)らむと
103(つゆ)(なみだ)朝夕(あさゆふ)くれけり』
104 朝月(あさづき)(うた)ふ。
105木田川(きたがは)(なが)れはよしや()るるとも
106若王(きみ)()さしを()げずにおくべき
107()くならば(われ)今日(けふ)よりアヅミの(むすめ)
108若王(わかぎみ)(とこ)(はな)()かせむ』
109 エームスは(うた)ふ。
110『たのもしき(なれ)言葉(ことば)朝月(あさづき)
111(かげ)(ちから)(ゆふ)べを()たむ』
112 朝月(あさづき)(うた)ふ。
113朝月(あさづき)(かげ)()ゆるとも夕月(ゆふづき)
114(かげ)(きよ)ければ(こころ)(やす)かれ』
115 夕月(ゆふづき)(うた)ふ。
116(わが)若王(きみ)(なさけ)(つゆ)にほだされて
117アヅミの(はな)御側(みそば)(かを)らむ
118夕月(ゆふづき)(かげ)合図(あひづ)(しの)びよりて
119若王(きみ)真心(まごころ)(つた)(まつ)らむ
120朝月(あさづき)夕月(ゆふづき)(こころ)(ひと)つにし
121(つゆ)(なさけ)になびかせ(まつ)らむ
122三柱(みはしら)(うるは)しき(ひめ)朝夕(あさゆふ)
123うなかぶしつつ(なみだ)にしめれり
124朝夕(あさゆふ)(なみだ)(つゆ)にうなだるる
125(はな)をし()ればあはれもよほす
126若王(わかぎみ)真心(まごころ)つぶさに(つた)へなむ
127物言(ものい)(はな)()みて(さか)えむ
128()(かく)善事(よごと)(いそ)げと(むかし)より
129()のことわざもありしを(おも)
130一時(ひととき)(はや)御心(みこころ)(やす)めむと
131(こころ)(こま)(いさ)()つなり』
132 エームスは欣然(きんぜん)として(うた)ふ。
133朝月(あさづき)(かげ)はさやけし夕月(ゆふづき)
134(ひか)りは(つよ)夕顔(ゆふがほ)(はな)
135夕顔(ゆふがほ)(はな)(しろ)きにあこがれて
136(われ)生命(いのち)をかけて()つなり』
137 朝月(あさづき)(うた)ふ。
138『いざさらば三人(みたり)(ひめ)のこもりたる
139牢獄(ひとや)(すす)みて言霊(ことたま)(ひら)かむ』
140 夕月(ゆふづき)(うた)ふ。
141若王(わかぎみ)生命(いのち)(こひ)をかなへむと
142真心(まごころ)(こま)(むち)うち(すす)まむ』
143 エームスは(うた)ふ。
144(はづ)かしきかなしき(こころ)()しはかり
145()でゆく(なれ)復命(かへりごと)()たむ』
146 ()主従(しうじう)(うた)(かは)しながら(しば)(たもと)(わか)ちける。147朝月(あさづき)148夕月(ゆふづき)立出(たちい)でし(あと)に、149エームスは一時千秋(いつときせんしう)(おも)ひしながら、150高殿(たかどの)より眼下(がんか)(なが)るる木田川(きたがは)薄濁(うすにご)りを瞰下(みおろ)しながら(しづ)かに述懐(じゆつくわい)(うた)ふ。
151木田川(きたがは)(なが)れは如何(いか)(にご)るとも
152(わが)真心(まごころ)のうつらざらめや
153(つき)()(うか)びて(なが)るる木田川(きたがは)
154(みづ)はかなしもかげくだけつつ
155百千々(ももちぢ)(こころ)くだけど(くち)なしの
156(はな)にも()たる(われ)なりにけり
157大栄山(おほさかやま)()えてはるばる(わが)(ちち)
158なやみの(たね)()(たま)ひける
159(ちち)(はは)もとほくイドムの(くに)()
160(われ)さびしくも(こひ)()くなり
161ままならぬ(はな)()ひつつ手折(たを)るべき
162よすがなき()のかなしき(われ)なり
163朝月(あさづき)はいかがなしけむ夕月(ゆふづき)
164いづらにあるか御空(みそら)(くも)らふ
165村肝(むらきも)(こころ)(そら)雲霧(くもきり)
166いかに()らさむ五月雨(さみだれ)()
167五月雨(さみだれ)にしめり(がち)なる(わが)(たもと)
168()(よし)もなくほととぎす()
169百鳥(ももどり)(かなら)(こひ)(さけ)ぶらむ
170(ひと)()(われ)(こころ)にも()
171(つま)()ふる()()鹿(しか)のそれならで
172(わが)(おも)ざしに()紅葉(もみぢ)かな
173朝夕(あさゆふ)青息吐息(あをいきといき)つきながら
174生命(いのち)(こひ)にあこがれにけり
175(わが)(ちち)(うら)みを()ひしアヅミ(わう)
176(むすめ)(おも)へば一入(ひとしほ)かなしき
177()れやらぬ五月(さつき)(そら)(われ)(ただ)
178(そら)(あふ)ぎて吐息(といき)するのみ
179(には)()にあやめ、かきつばた(にほ)へども
180(われ)には(なん)(のぞ)みだになし
181しとしとと()五月雨(さみだれ)(わが)(そで)
182(かわ)()もなき(なみだ)ならずや
183かかる()(うま)れてかかるかなしさを
184今日(けふ)()までも(さと)らざりけり
185木田川(きたがは)(みづ)とこしへに(なが)るとも
186(われ)(なや)みを(あら)ふすべなき
187(とら)はれし(きよ)(をみな)はアヅミ(わう)
188(むすめ)()きて(おどろ)きしはや
189()(かく)朝月(あさづき)夕月(ゆふづき)言霊(ことたま)
190(つゆ)(にほ)はむ朝顔(あさがほ)夕顔(ゆふがほ)
191夕顔(ゆふがほ)(はな)(こころ)(うば)はれて
192(わが)(たましひ)(やみ)となりける
193(こひ)すてふ(こころ)のかなしさ(さと)りけり
194アヅミの(きみ)(むすめ)()ひて
195一目(ひとめ)()(わが)(たましひ)(みだ)れたり
196(こひ)悪魔(あくま)(とら)はれにけむ
197よしやよし(わが)(たま)()()ゆるとも
198一夜(いちや)(かた)らひなさでおくべき
199(くに)(しろ)(わが)()(すべ)てを(わす)れたり
200(ただ)あこがるる夕顔(ゆふがほ)(はな)
201夕暮(ゆふぐれ)にふと(なが)めたる(はな)なれば
202(われ)夕顔(ゆふがほ)()づけてあこがる
203夕顔(ゆふがほ)(こころ)如何(いか)にと(あん)じつつ
204(わが)垂乳根(たらちね)(こころ)(うら)むも
205いたづらに平地(へいち)(なみ)(おこ)したる
206(ちち)のすさびをかなしく(おも)
207父母(ちちはは)(あだ)なる(てき)夕顔(ゆふがほ)
208(きみ)(こころ)をまかさざるべし』
209 ()(ひと)述懐(じゆつくわい)()()たる(をり)もあれ、210侍女(じぢよ)滝津瀬(たきつせ)211山風(やまかぜ)両人(りやうにん)は、212各自(おのもおのも)(ちや)()菓子(くわし)(ささ)げながら(うやうや)しくエームスの(まへ)(すす)(きた)り、213(うれ)ひに(しづ)める太子(わかぎみ)(てい)をいぶかりがら滝津瀬(たきつせ)(うた)ふ。
214滝津瀬(たきつせ)清水(しみづ)()みてわかしたる
215()()(あが)れエームスの(きみ)
216 山風(やまかぜ)(うた)ふ。
217大栄山(おほさかやま)なぞへに(みの)りし果実(くだもの)
218いざ()(あが)生命(いのち)(もも)()
219 エームスは黙然(もくねん)として、220侍女(じぢよ)(ささ)ぐる(ちや)()にも、221果実(このみ)にも、222()()けようともせず(うつむ)いてゐる。
223 滝津瀬(たきつせ)(ふたた)び、
224若王(わかぎみ)御面(おんおも)ざしのすぐれぬは
225()にいたづきのおはしますにや
226若王(わかぎみ)今日(けふ)のよそほひ()るにつけて
227かなしくなりぬ滝津瀬(たきつせ)(われ)
228(つき)()(くま)なく()れる()(なか)
229(なに)(なげ)かすか太子(ひつぎ)(きみ)
230御心(みこころ)のなぐさむるならば(わが)生命(いのち)
231若王(きみ)(ささ)ぐもいとはざるべし
232朝夕(あさゆふ)若王(きみ)(つか)ふる滝津瀬(たきつせ)
233今日(けふ)はさびしき(おも)ひするなり
234若王(わかぎみ)のすぐれ(たま)はぬ(かむばせ)
235(をが)みて(われ)はくだくる(おも)ひす
236一言(ひとこと)のいらへの言葉(ことば)(ねが)はしや
237(われ)()すべきすべもあらねば』
238 山風(やまかぜ)(うた)ふ。
239若王(わかぎみ)御面(おんおも)いたく(くも)らへり
240いかなる(なや)みを()たせ(たま)ふか
241()(にほ)(はな)をつれなく()()らし
242(こずゑ)(すが)しき山風(やまかぜ)(われ)
243いかならむ(なや)みおはすか()らねども
244山風(やまかぜ)(われ)()(はら)ふべし
245大栄(おほさか)(やま)()()黒雲(くろくも)
246()()らすべし小夜(さよ)山風(やまかぜ)
247若王(わかぎみ)(こころ)雲霧(くもきり)(はら)はむと
248山風(やまかぜ)(われ)(こころ)くだきつ』
249 エームスはかすかに(うた)ふ。
250滝津瀬(たきつせ)山風(やまかぜ)(こころ)よみすれど
251(わが)()言葉(ことば)なきがかなしき
252(あさ)されば朝顔(あさがほ)(おも)(ゆふ)されば
253夕顔(ゆうがほ)(おも)ひてしめらふ(われ)なり
254木田川(きたがは)(みづ)とこしへに(なが)るれど
255いつか()れなむ(こころ)(やみ)
256ほととぎす(あした)(ゆふ)べの(わか)ちなく
257()きつる(そら)(わが)(こころ)かも
258(つき)()(かげ)をかくせる五月闇(さつきやみ)
259()くほととぐす(われ)ならなくに
260滝津瀬(たきつせ)(はや)()よかし山風(やまかぜ)
261(わが)(まへ)()小夜(さよ)()けぬれば
262(われ)(ただ)(おも)ひの(ふち)(しづ)みつつ
263(やみ)水音(みなおと)()きて(あか)さむ』
264 滝津瀬(たきつせ)(うた)ふ。
265若王(わかぎみ)御言(みこと)(かしこ)みいざさらば
266まかり退(さが)らむ(うづ)御前(みまへ)を』
267 山風(やまかぜ)(うた)ふ。
268若王(わかぎみ)(かな)しき(こころ)ははかれども
269せむすべもなき(わが)()なりけり』
270 ()(うた)ひて二人(ふたり)侍女(じぢよ)(わが)居間(ゐま)にすごすごと(かへ)りゆく。
271 小夜更(さよふ)けの(そら)()(わた)るほととぎすの(こゑ)272四方(しはう)八方(はつぱう)よりしきりに木田山城(きたやまじやう)(もり)をかすめて(ひび)(きた)る。
273昭和九・八・一四 旧七・五 水明閣 谷前清子謹録)
   
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