霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 安宅(あたか)(せき)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記 篇:第2篇 奉天より洮南へ よみ:ほうてんよりとうなんへ
章:第11章 安宅の関 よみ:あたかのせき 通し章番号:
口述日:1925(大正14)年08月 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年2月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
昌図府の宿に泊まっていると、午後六時過ぎごろにシナの巡警が宿泊人調査にやってきた。一行は岡崎一人が日本人、その他は中国人であるということにしていた。
巡警が岡崎に護照の確認を乞うと、岡崎は、自分は東三省の官吏であり、張作霖の命を受けて視察にきているのだ、と逆に居丈高になって名刺を振り回した。そして、日出雄と守高は南清の豪商であると紹介した。
巡警はいずれも立派な服装であるのを見て取ると、丁寧に挨拶をして帰って行った。岡崎は地元の巡警に不審の念を抱かせずに追い払ったことを自慢気に吹聴した。
すると今度は午後九時ごろになって、官兵がやってきた。日本人が泊まっているというので、調査に来たのである。岡崎はまたもや名刺を出して官兵を煙に巻いて、追い返した。
すると午後十二時も前になって、またもや軍靴とサーベルの音がして、今度は昌図府の日本領事館員が巡査を引き連れて、身元調べにやってきた。またもや岡崎は自分の名刺を出して応対したが、日出雄と守高は水也商会の日本人だ、と紹介した。
領事館員が帰って行った後、日出雄は岡崎に、中国の官憲には南清の豪商だと言い、日本領事館には日本人だと言ったが、後で不審に思われないか、と懸念を表した。
岡崎はあまりしゃべりすぎて余計なことを言ってしまった、と非を認めたが、再度領事館から調べに来たら、自分の舌先三寸で追い払うから、と嘯いた。
いずれにしろ、念のために日出雄と守高は明日早くに、動くほうの自動車で先発することにした。そして一同は横になると、旅の疲れからすっかり熟睡してしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:96頁 八幡書店版:第14輯 582頁 修補版: 校定版:97頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 自動車(じどうしや)破損(はそん)(ため)002代用(だいよう)機械(きかい)奉天(ほうてん)より到着(たうちやく)するまで、003昌図府(しやうとふ)三号店(さんがうてん)()(こと)とし、004午後(ごご)一時(いちじ)から粗末(そまつ)なる一室(いつしつ)(あた)へられ、005(かん)()いて一行(いつかう)四人(よにん)横臥(わうぐわ)し、006前途(ぜんと)光明談(くわうみやうだん)(ふけ)つてゐた。007午後(ごご)六時(ろくじ)()支那(しな)巡警(じゆんけい)二名(にめい)は、008宿泊人(しゆくはくにん)調査(てうさ)(ため)出張(しゆつちやう)した。009岡崎(をかざき)日本人(につぽんじん)010(ほか)三人(さんにん)支那人(しなじん)()()()みで、011支那服(しなふく)(まと)ふて横臥(わうぐわ)してゐた。012巡警(じゆんけい)岡崎(をかざき)(むか)つて()ふ。
013巡警(じゆんけい)貴下(あなた)日本人(につぽんじん)()きましたが、014支那(しな)内地(ないち)旅行(りよかう)するには護照(ごせう)必要(ひつえう)ですが、015失礼(しつれい)ながら、016護照(ごせう)()せて(もら)ひませう』
017岡崎(をかざき)(ぼく)張作霖(ちやうさくりん)命令(めいれい)()けて視察(しさつ)()()たのだ。018支那(しな)官吏(くわんり)支那(しな)旅行(りよかう)するのに護照(ごせう)必要(ひつえう)があるか、019(わか)らねば証拠(しようこ)()せてやらう』
020威丈高(ゐたけだか)になり、021得意然(とくいぜん)として自分(じぶん)(かばん)から……東三省(とうさんしやう)裕東印刷所(ゆうとういんさつしよ)技師長(ぎしちやう)(めい)ず、022月俸(げつぽう)三百六十元(さんびやくろくじふげん)……と()辞令書(じれいしよ)振廻(ふりま)はし、023(その)(うへ)024前河南督軍(ぜんかなんとくぐん)軍事顧問(ぐんじこもん)岡崎(をかざき)鉄首(てつしゆ)()大名刺(だいめいし)(ふり)まはし、025支那巡警(じゆんけい)調査(てうさ)()ける必要(ひつえう)はないと()ねつけた。026巡警(じゆんけい)呆気(あつけ)()られた(やう)(かほ)して、027日出雄(ひでを)028守高(もりたか)029王元祺(わうげんき)(かへり)み、030岡崎(をかざき)(むか)つて、
031巡警(じゆんけい)(この)三人(さんにん)(かた)何用(なによう)あつて、032汽車(きしや)のあるのにも(かかは)らず自動車(じどうしや)旅行(りよかう)をされるのですか』
033(やや)詰問的(きつもんてき)()た。034岡崎(をかざき)平然(へいぜん)として、035『アハヽヽヽ』と他愛(たあい)なく(わら)(なが)ら、
036岡崎(をかざき)『そんなことを(たづ)ねて(なん)にする? (この)方々(かたがた)南清方面(なんしんはうめん)豪商(がうしやう)だ。037一遍(いつぺん)満州(まんしう)旅行(りよかう)して()たいから案内(あんない)して()れぬかと()はれるので、038(ぼく)視察(しさつ)()ねて、039自動車(じどうしや)旅行(りよかう)(こころ)みたのだ』
040 巡警(じゆんけい)三人(さんにん)熟視(じゆくし)(なが)ら、041立派(りつぱ)支那服(しなふく)()けてゐるのに、042ヤツと安心(あんしん)したと()え、
043『ヤアこれはお邪魔(じやま)(いた)しました』
044丁寧(ていねい)挨拶(あいさつ)をして(かへ)つて()く。045(その)(あと)岡崎(をかざき)(また)もや(れい)のメートルを()()した。
046『アハヽヽヽ先生(せんせい)047(わたし)(えら)(もの)でせうがな、048佐々木(ささき)大倉(おほくら)何程(なにほど)(えら)(さう)()かしたつて到底(たうてい)こんな(はな)(げふ)出来(でき)ますまい。049こういふ(とき)には(この)名刺(めいし)護照(ごせう)代理(だいり)をするのですからなア。050支那(しな)巡警(じゆんけい)何程(なにほど)調(しら)べようとしても、051先生(せんせい)一言(ひとこと)言葉(ことば)をかけささなかつた(ところ)(えら)(もの)でせう。052エツヘヽヽ』
053日出雄(ひでを)満蒙旅行(まんもうりよかう)(きみ)(かぎ)るよ。054(きみ)のおかげで、055()安宅(あたか)(せき)無事(ぶじ)通過(つうくわ)することが出来(でき)るのだ。056感謝(かんしや)しますよ』
057岡崎(をかざき)(なん)()つても日露戦争(にちろせんそう)以来(いらい)058支那(しな)各地(かくち)往来(わうらい)して、059支那(しな)満州(まんしう)事情(じじやう)(つう)じて()るのだから……なア先生(せんせい)060安心(あんしん)なものですよ』
061(しき)りに得意(とくい)(おもて)(さら)してゐる。062だんだんと(とき)(うつ)つて、063午後(ごご)九時(くじ)(ごろ)となつた。064三号店(さんがうてん)門口(かどぐち)四五人(しごにん)靴音(くつおと)や、065サーベルの(おと)がチヤラついて(きこ)えて()た。066……と(おも)刹那(せつな)067うす(きたな)板戸(いたど)()けて突然(とつぜん)日出雄(ひでを)居間(ゐま)這入(はい)つて()たのは支那(しな)官兵(くわんぺい)であつた。068一人(ひとり)軍曹(ぐんさう)四名(よめい)兵士(へいし)(したが)へ、069警察署(けいさつしよ)報告(はうこく)()つて日本人(につぽんじん)(とま)つてゐると()ふことを()り、070わざわざ(しら)べに()たのであつた。071日出雄(ひでを)守高(もりたか)支那服(しなふく)()けたまま素知(そし)らぬ(かほ)して(よこ)になり、072岡崎(をかざき)軍曹(ぐんさう)との応接(おうせつ)()いてゐた。
073軍曹(ぐんさう)深夜(しんや)御邪魔(おじやま)(いた)しましたが、074貴下(きか)は、075東三省(とうさんしやう)高等官(かうとうくわん)だと(うけたま)はりましたが、076支那(しな)内地(ないち)旅行(りよかう)されるには護照(ごせう)必要(ひつえう)ですが、077御携帯(ごけいたい)になつてゐますか』
078 岡崎(をかざき)(れい)名刺(めいし)辞令(じれい)(かばん)から()()して()せ、
079『アツハヽヽヽ』
080無造作(むざうさ)(からだ)をゆすつて(わら)ひ、
081『それ、082(この)(とほ)りだ、083(この)(たび)南清地方(なんしんちはう)富豪(ふがう)なる(ぼく)友人(いうじん)が、084一遍(いつぺん)満州(まんしう)自動車(じどうしや)旅行(りよかう)がして()たいから案内(あんない)してくれぬかと()はれるので、085(なん)でも奇抜(きばつ)なことをやつて、086支那(しな)官民(くわんみん)(おどろ)かしてやらうと(おも)ひ、087自動車(じどうしや)(やと)ひ、088やつて()(ところ)089大体(だいたい)支那(しな)道路(だうろ)はなつてゐないものだから、090堅牢(けんらう)自動車(じどうしや)滅茶苦茶(めちやくちや)になり、091運転(うんてん)不能(ふのう)となつたので奉天(ほうてん)から機械(きかい)()(まで)092こんな(きたな)木賃(もくちん)ホテルに宿泊(しゆくはく)してゐるのだ。093アハヽヽヽ、094()らざる(かま)()てをすると、095張作霖(ちやうさくりん)報告(はうこく)するぞ』
096(あたま)から(おさ)へつける。097軍曹(ぐんさう)(きは)めて慇懃(いんぎん)言葉(ことば)もやさしく、098岡崎(をかざき)(むか)つて()ふ。
099貴下(きか)東三省(とうさんしやう)高等官(かうとうくわん)なることは(この)辞令書(じれいしよ)にて判明(はんめい)しました。100(しか)満州(まんしう)旅行(りよかう)馬賊(ばぞく)横行(わうかう)して大変(たいへん)危険(きけん)ですから、101途中(とちう)(おい)ていろいろの障害(しやうがい)(おこ)つては日本(につぽん)政府(せいふ)(たい)しても()みますまいから、102(いで)になる(ところ)まで護衛兵(ごゑいへい)をつけませう』
103岡崎(をかざき)『アツハヽヽヽ、104イヤ(おほ)きに有難(ありがた)う。105(しか)吾々(われわれ)日本男子(につぽんだんし)だ。106乞食(こじき)(やう)支那(しな)雇兵(やとひへい)二十人(にじふにん)三十人(さんじふにん)(おく)つて(もら)つた(ところ)で、107(なん)(やく)にも()ちますまい。108御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)いが、109(ことわ)(まを)しませう。110必要(ひつえう)があれば地方(ちはう)官憲(くわんけん)依頼(いらい)しますから……』
111 軍曹(ぐんさう)王元祺(わうげんき)(むか)つていろいろの質問(しつもん)をした。112王元祺(わうげんき)性来(しやうらい)支那人(しなじん)だから、113(なん)だかピチヤピチヤと得意(とくい)支那語(しなご)応答(おうたふ)してゐた。114軍曹(ぐんさう)日出雄(ひでを)115守高(もりたか)両人(りやうにん)(あや)しげな視線(しせん)()(なが)ら、
116夜中(やちう)(おどろ)かせまして()みませぬ』
117慇懃(いんぎん)挨拶(あいさつ)(のこ)(かへ)つて()く。118岡崎(をかざき)益々(ますます)得意(とくい)になつて(おほ)いに気焔(きえん)()げ、119肇国会(てうこくくわい)(はなし)や、120犬養先生(いぬかひせんせい)無性(むしやう)矢鱈(やたら)()りまはし、121外務省(ぐわいむしやう)(こし)(よわ)(はなし)などを喋々喃々(てふてふなんなん)喋舌(しやべ)()て、
 
122(わが)(まなこ)(かすみ)(せき)(かど)にかけ(くに)行末(ゆくすゑ)みむとぞ(おも)
 
123アハヽヽヽこれは(わたし)(つく)つた(うた)です。124吾々(われわれ)支那(しな)(なに)日本(につぽん)(ため)になることをやらうと(おも)ふと、125弱腰(よわごし)日本(につぽん)外交官(ぐわいかうくわん)()ぐに(あたま)(おさ)へる。126それだから、127支那(しな)開発(かいはつ)満蒙(まんもう)経営(けいえい)何時(いつ)九分九厘(くぶくりん)画餅(ぐわへい)になつて(しま)ふのだ。128今度(こんど)といふ今度(こんど)(おも)()つて満蒙(まんもう)政策(せいさく)実行(じつかう)をやつつけてみる覚悟(かくご)です。129先生(せんせい)支那道院(しなだうゐん)宣伝使(せんでんし)なり、130(わたし)東三省(とうさんしやう)高等官(かうとうくわん)だから、131日本(につぽん)政府(せいふ)がゴテゴテと干渉(かんせう)する権利(けんり)はない(はず)だ。132アハヽヽヽ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、133前途(ぜんと)有望(いうばう)だ』
134(しき)りに顔面(がんめん)筋肉(きんにく)活躍(くわつやく)させ、135車輪(しやりん)(ごと)(した)運転(うんてん)させてゐる。136そこへ(また)もや(くつ)やサーベルの(おと)がして()た。
137御免(ごめん)なさい』
138這入(はい)つて()たのは昌図府(しやうとふ)日本(につぽん)領事館員(りやうじくわんゐん)巡査(じゆんさ)二名(にめい)引連(ひきつ)れて、139身許調(みもとしら)べに()たのである。
140日巡(にちじゆん)岡崎(をかざき)鉄首(てつしゆ)といふ(ひと)貴下(きか)ですか』
141軍服姿(ぐんぷくすがた)岡崎(をかざき)(むか)つて、142(あや)しげな視線(しせん)()(くち)()つた。143岡崎(をかざき)(れい)名刺(めいし)辞令(じれい)()せつけて、144(れい)大口(おほぐち)をあけて『アハヽヽヽ』と(わら)(なが)ら、
145『モウ()()十二時(じふにじ)(まへ)でありませぬか、146今頃(いまごろ)()られちや(じつ)迷惑(めいわく)です。147(なん)御用(ごよう)ですかなア』
148日巡(にちじゆん)『エー、149只今(ただいま)支那(しな)警察(けいさつ)から日本人(につぽんじん)(とま)つてゐるといふ報告(はうこく)()ましたから、150一応(いちおう)(うかが)つてみたいと(おも)出張(しゆつちやう)したのです』
151岡崎(をかざき)『ヤア、152そりや御苦労(ごくらう)でした。153(べつ)心配(しんぱい)して(くだ)さるな、154(わたし)日本人(につぽんじん)でゐながら東三省(とうさんしやう)張作霖(ちやうさくりん)命令(めいれい)支那(しな)内地(ないち)視察(しさつ)をなすべく、155やつて()たのですから、156日本(につぽん)領事館(りやうじくわん)御心配(ごしんぱい)(けつ)して()けませぬ』
157日巡(にちじゆん)(この)三人(さんにん)(かた)はどこの(ひと)ですか、158どうも支那人(しなじん)のやうにありませぬがね』
159 岡崎(をかざき)日出雄(ひでを)()して、
160(この)(かた)奉天(ほうてん)平安通(へいあんどほり)水也商会(みづやしやうくわい)主人(しゆじん)です、161商業(しやうげふ)視察(しさつ)(ため)にお()でになつたのですよ』
162日巡(にちじゆん)『あゝさうですか、163さうすると日本人(につぽんじん)ですな、164何時(いつ)()ちになりますか』
165岡崎(をかざき)『ハイ、166自動車(じどうしや)破損(はそん)しましたので(うご)きが()れないのです。167奉天(ほうてん)まで機械(きかい)()りにやつたから、168使(つかひ)(かへ)つた(うへ)修繕(しうぜん)(ほどこ)出立(しゆつたつ)する(かんが)へです。169()明日(みやうにち)午後(ごご)二時(にじ)(ごろ)です。170それ(まで)()木賃(もくちん)ホテルで(くす)ぼつてゐる(かんが)へです。171アハヽヽヽ』
172日巡(にちじゆん)護照(ごせう)はありますか』
173岡崎(をかざき)護照(ごせう)なんか()るものか、174東三省(とうさんしやう)役人(やくにん)東三省内(とうさんしやうない)旅行(りよかう)するのだからな、175アハヽヽヽ』
176(わら)ひに(まぎ)らす。177日本(につぽん)巡査(じゆんさ)は、
178『ヤ、179御邪魔(おじやま)(いた)しました』
180(かへ)つて()く、181日出雄(ひでを)(やや)心配(しんぱい)(さう)(かほ)して、
182日出雄(ひでを)岡崎(をかざき)さん、183支那(しな)巡警(じゆんけい)軍曹(ぐんさう)(むか)つて、184南清方面(なんしんはうめん)豪商(がうしやう)だといひ、185日本(につぽん)官憲(くわんけん)(むか)つては日本人(につぽんじん)だと()はれましたが、186これは屹度(きつと)領事館(りやうじくわん)不審(ふしん)(おこ)し、187明朝(みやうてう)(あらた)めて調査(てうさ)()るかも()れませぬよ。188(なん)とか(かんが)へねばなりますまい』
189 岡崎(をかざき)(あたま)をかき(なが)ら、
190『あまり喋舌(しやべ)()ぎたものだから、191拙劣(へた)なことをいつてしまつた。192ナアニ(かま)ふものか、193明日(みやうにち)領事館(りやうじくわん)から()よつたら、194三寸(さんずん)舌鋒(ぜつぽう)()()ばせば(よろ)しい。195先生(せんせい)196岡崎(をかざき)(まか)しておいて(くだ)さい、197メツタに御迷惑(ごめいわく)はかけませぬからな。198アハアハヽヽヽ』
199(ちひ)さく(わら)ふ。
200日出雄(ひでを)()(かく)領事館員(りやうじくわんゐん)()ると面倒(めんだう)だから明早朝(みやうさうてう)一台(いちだい)(だけ)(さき)出発(しゆつぱつ)する(こと)としようぢやないか』
201岡崎(をかざき)『それなら先生(せんせい)(わたし)二十(にじふ)支里(しり)(ほど)(きた)大四家子(だいしかし)といふ(ところ)(まで)202先発(せんぱつ)しませう、203守高(もりたか)さまや王君(わうくん)修繕(しうぜん)出来(でき)次第(しだい)204(あと)から()つかけて()るといふことに()めておきませう』
205『それが(よろ)しからう』
206()つたきり、207ゴロリ(よこ)になり(たちま)(かみなり)(ごと)(いびき)をかいて(ねむ)つて(しま)つた。208岡崎(をかざき)(ほか)二人(ふたり)(たび)(つか)れで前後(ぜんご)不覚(ふかく)になつて、209()のホンノリと()くる(まで)他愛(たあい)もなく熟睡(じゆくすゐ)した。
210大正一四・八 筆録)