霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 明暗交々(めいあんこもごも)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記 篇:第3篇 洮南より索倫へ よみ:とうなんよりそーろんへ
章:第17章 明暗交々 よみ:めいあんこもごも 通し章番号:
口述日:1925(大正14)年08月 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年2月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
老印君の隣家を解放して、日出雄一行の宿泊所とされた。遠近の蒙古人は、日の出の国の活き神が来たれりと言って集まり来たり、鎮魂を乞うた。
日出雄は公爺府の王より招待を受け、入蒙のいきさつについてたずねられた。王元祺が内外蒙古救援軍の趣旨を説明すると王は非常に喜び、一同を饗応した。日出雄は蒙古まで来て初めて、為政者より丁重な扱いを受けたことに感慨を覚えた。
岡崎は、日蒙両国民が相携えれば、支那人もロシア人もへこんでしまう、大庫倫の赤軍を追い払って新蒙古王国を作るのだ、などと大言壮語している。この話が公爺府の重役の知るところとなった。
岡崎の大言壮語を知り、たちまち老印君は態度を一変した。そして、『護照がなければ滞在かなわぬ、奉天へ一度お帰り願いたい』、と言ってきた。
盧の部下の温長興は、盧占魁から金をもらっておきながら、今さらこのようなことを言う老印君の態度に激怒したが、ともかく一度奉天に連絡をして窮状を伝え、荷物一切を送ってもらうこととした。
老印君は温長興に攻め立てられて、ついに自分の新宅に日出雄一行を移転させることになった。四月四日にようやく移転がかない、温長興に手紙を持たせて、現状を盧占魁に伝えさせることになった。
温長興が出発してから、その日の午後六時ごろ、やって真澄別一行が荷物や食料を満載して到着した。地獄で仏に会ったような心持に、日出雄も岡崎も非常に喜んだ。たくさんの荷物や食料が到着すると、老印君の日本人に対する態度はまたがらりとよくなった。
真澄別にしたがってやってきたのは、名田彦、猪野敏夫の両人であった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:150頁 八幡書店版:第14輯 602頁 修補版: 校定版:150頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 日出雄(ひでを)公爺府(コンエフ)協理(けふり)老印君(らういんくん)(はう)宿泊(しゆくはく)する(こと)三日(みつか)(のち)002隣家(りんか)丑他那寸止(ウタナスト)()(ひと)(いへ)開放(かいはう)して一行(いつかう)宿泊所(しゆくはくじよ)()てられた。
003 遠近(ゑんきん)淳朴(じゆんぼく)なる蒙古人(もうこじん)は『ナラヌオロスン、004イホエミトポロハナ、005イルヂエー イルヂエー イルヂエー』と()つて(した)つて()(もの)日々(ひび)(その)(すう)増加(ぞうか)するのみである。
006 (みぎ)蒙古語(もうこご)(やく)すれば、007日出国(ひいづるくに)大活神(だいくわつしん)(きた)れり、008との意味(いみ)である。
009 各人(かくじん)(よろこ)んで鎮魂(ちんこん)()ひ、010(この)(くに)にて(もつと)(おほ)眼病(がんびやう)011皮膚病(ひふびやう)(はじ)胃病(ゐびやう)012梅毒(ばいどく)013歯痛(しつう)014脳病(なうびやう)治療(ちれう)()け、015全快(ぜんくわい)して神徳(しんとく)感謝(かんしや)大活神(だいくわつしん)崇敬(すうけい)して()る。016眼病(がんびやう)017皮膚病(ひふびやう)018梅毒(ばいどく)(とう)(とも)不潔(ふけつ)から()たのが(おほ)く、019(また)花柳病(くわりうびやう)伝染(でんせん)するものと()(こと)(すこ)しも(さと)らない。020(たん)乗馬(じやうば)結果(けつくわ)心得(こころえ)021病毒(びやうどく)伝染(でんせん)(まか)せて()るのである。022(こと)喇嘛僧(ラマそう)梅毒(ばいどく)(かか)つて()るものは(こと)(ほか)(おほ)い。023蒙古(もうこ)婦人(ふじん)沢山(たくさん)宝石(ほうせき)(おほ)きな真珠(しんじゆ)(あたま)(かざ)つて()るが、024(いづ)れも遼河(れうが)黒竜江中(こくりうこうちう)蕃殖(はんしよく)した直径(ちよくけい)一尺(いつしやく)(あま)りもある烏貝(からすがひ)(なか)から採取(さいしゆ)したものである。025蒙古人(もうこじん)貝類(かひるゐ)食料(しよくれう)とせないので、026幾百千年(いくひやくせんねん)()烏貝(からすがひ)棲息(せいそく)して()るのである。027蒙古人(もうこじん)食料(しよくれう)支那(しな)内地(ないち)接近(せつきん)した東蒙古(ひがしもうこ)方面(はうめん)では、028高粱(かうりやう)大豆(だいづ)029(あは)030(ぶた)など支那人(しなじん)()食物(しよくもつ)()つて()るが、031奥地(おくち)純蒙古地帯(じゆんもうこちたい)公爺府(コンエフ)あたりでは牛乳(ぎうにう)炒米(チヨオミイ)常食(じやうしよく)にして()る。032(これ)(にく)(くは)雑炊(ざふすゐ)にして(くら)(こと)もあるが、033(にく)()ぜるは(もつと)上等(じやうとう)()である。034普通(ふつう)一般(いつぱん)(いへ)では(にく)なぞの贅沢品(ぜいたくひん)滅多(めつた)()はないのである。035米利堅粉(メリケンコ)でウドンを(こしら)(ひつじ)(にく)()ぜて(くら)ふのが第一番(だいいちばん)馳走(ちさう)である。036牧畜(ぼくちく)祖先(そせん)以来(いらい)唯一(ゆゐいつ)事業(じげふ)で、037(したが)つて(うし)(ひつじ)乳汁(ちち)豊富(ほうふ)であり、038日々(ひび)食料(しよくれう)(きよう)して()(いへ)(おほ)い。039彼等(かれら)日本人(につぽんじん)(ごと)牛乳(ぎうにう)()かしては()まず、040(つめ)たい(まま)()み、041(また)色々(いろいろ)料理(れうり)(つく)()けてゐる。042()牛乳壺(ぎうにうつぼ)上部(じやうぶ)()いた脂肪分(しばうぶん)からバターを()り、043下部(かぶ)沈澱(ちんでん)したものは(これ)(ぬの)(ふくろ)()れて(しる)(つぼ)(おと)し、044(ふくろ)(なか)(たま)つた(かす)(かた)めて牛乳餅(ぎうにうもち)(つく)る。045(これ)奶豆腐(ないとうふ)(とな)へて()る。046保存(ほぞん)便(べん)なる(ところ)から(ある)地方(ちはう)では主食物(しゆしよくぶつ)となり、047菓子(くわし)代用品(だいようひん)ともなり、048(とき)としては貨幣(くわへい)(かは)りとし物々交換(ぶつぶつかうくわん)単位(たんゐ)ともなり、049(じつ)重宝(ちようほう)なものである。050(また)バターと奶豆腐(ないとうふ)とを()つた(のこ)りから酸乳(さんにゆう)()れ、051炒米(チヨオミイ)(そそ)いで(くら)ふべき唯一(ゆゐいつ)調味料(てうみれう)となるのである。052(みぎ)(ほか)牛乳(ぎうにゆう)蒸発(じようはつ)せしめて牛乳酒(ぎうにゆうしゆ)(つく)る。053牛乳(ぎうにゆう)炒米(チヨオミイ)ばかりを年中(ねんぢう)()つて()ながらも蒙古人(もうこじん)体格(たいかく)(すこぶ)立派(りつぱ)である。054(また)蒙古人(もうこじん)支那人(しなじん)(ごと)一切(いつさい)野菜(やさい)()はない、055家畜(かちく)(おほ)いため野菜(やさい)(そだ)たないのが(ひと)つの原因(げんいん)かとも(おも)はれる。056()かも壊血病(くわいけつびやう)(かか)らぬのは(くさ)常食(じやうしよく)とする(うし)(ちち)主食(しゆしよく)としてゐる結果(けつくわ)である。057(かく)(ごと)(うし)蒙古人(もうこじん)()つての生命(せいめい)(はは)であり、058(うま)(すべ)ての交通機関(かうつうきくわん)である。059南船北馬(なんせんほくば)といふ(げん)北大陸(きたたいりく)蒙古(もうこ)()(はじ)めて()らるる言葉(ことば)である。
060 一日(いちにち)蒙古人(もうこじん)丑他那寸止(ウタナスト)王得勝(ワントウシン)など()公爺府(コンエフ)兵士(へいし)や、061副官(ふくくわん)温長興(をんちやうこう)(とも)公爺府(コンエフ)裏山(うらやま)兎狩(うさぎがり)出掛(でか)けた。062兎狩(うさぎがり)道具(だうぐ)一尺(いつしやく)五寸(ごすん)(ばか)りの(さき)(まが)つた(ぼう)で、063その尖端(せんたん)三寸(さんずん)(ばか)りの(ひも)(むす)()(ひも)(さき)一塊(いつくわい)(てつ)(おも)りが()いて()る。064(うさぎ)()()すのを()つて()(ぼう)巧妙(かうめう)()()ける。065さうすると(ぼう)(さき)にブラ(さが)つて()鉄片(てつぺん)が、066グルグル()(なが)(うさぎ)(あた)ると(ひも)()きつく仕組(しくみ)である。067蒙古人(もうこじん)煙管(きせる)火打石(ひうちいし)(とも)(なな)道具(だうぐ)(ひとつ)として(つね)(この)(ぼう)携帯(けいたい)して()るのである。068(しか)蒙古犬(もうこいぬ)四五匹(しごひき)(もつ)(うさぎ)(かこ)(とき)容易(ようい)(とら)へる(こと)出来(でき)るのである。
069 日出雄(ひでを)温長興(をんちやうこう)070岡崎(をかざき)鉄首(てつしゆ)(とも)国見山(くにみやま)(のぼ)らむとした(とき)071シーゴーと(しよう)する蒙古(もうこ)特有(とくいう)猛犬(まうけん)包囲(はうゐ)され、072()()かれようとしたので、073副官(ふくくわん)温長興(をんちやうこう)074岡崎(をかざき)鉄首(てつしゆ)二人(ふたり)が、075洋杖(ステツキ)()()げたり(いし)(ひろ)つて()()けたりなど防戦(ばうせん)(つと)めた。076ワンワンと()ゆる猛犬(まうけん)(こゑ)()()けて(またた)()遠近(をちこち)より数十頭(すうじつとう)猛犬(まうけん)(あつま)(きた)り、077三人(さんにん)十重(とへ)二十重(はたへ)取巻(とりま)(きば)をむき()して()びかかつて()るその(おそ)ろしき(いきほひ)(もの)ともせず、078二人(ふたり)一生懸命(いつしやうけんめい)(たたか)つて()る。079日出雄(ひでを)一生懸命(いつしやうけんめい)になつて祝詞(のりと)大声(おほごゑ)(とな)へると、080(おほ)きな日本人(につぽんじん)声音(せいおん)辟易(へきえき)してか、081さしもの猛犬(まうけん)()()げて四方(しはう)散乱(さんらん)して(しま)つた。082(これ)より当地(たうち)(いぬ)三人(さんにん)()ると()()げて(ちひ)さくなつて()げる(やう)になつて(しま)つた。
083 守高(もりたか)公府(こうふ)役人(やくにん)(いへ)病気(びやうき)鎮魂(ちんこん)(ため)084(やや)遠方(ゑんぱう)(いへ)出掛(でか)けた、085其処(そこ)鎮国公(ちんこくこう)より重役(ぢうやく)()て、086失礼(しつれい)ながら日出国(ひいづるくに)大活仏様(だいくわつぶつさま)来館(らいくわん)(ねが)()いと申込(まをしこ)んで()た。087日出雄(ひでを)通訳(つうやく)(とも)早速(さつそく)公爺府内(コンエフない)()()つた。088鎮国公(ちんこくこう)(おほい)(よろこ)んで通訳(つうやく)(かい)して種々(しゆじゆ)談話(だんわ)(こころ)み、089()今回(こんくわい)入蒙(にふもう)(つい)ての経緯(いきさつ)(たづ)ねるのであつた。090王元祺(わうげんき)内外(ないぐわい)蒙古(もうこ)救援(きうゑん)義軍(ぎぐん)(おこ)(こと)諄々(じゆんじゆん)として()いた。091(わう)非常(ひじやう)(よろこ)(その)好意(かうい)(ふか)感謝(かんしや)した。092そして(ちから)一杯(いつぱい)馳走(ちそう)をして日出雄(ひでを)待遇(たいぐう)したのである。093東西(とうざい)二百里(にひやくり)094南北(なんぽく)八百里(はつぴやくり)地積(ちせき)主管(しゆくわん)する公府(こうふ)王様(わうさま)態々(わざわざ)日出雄(ひでを)住居(すまゐ)()ひ、095(いま)(また)(ふたた)慇懃(いんぎん)日本国(につぽんこく)大宗教家(だいしうけうか)として(かつ)貴人(きじん)として(むか)へられた(こと)は、096日出雄(ひでを)()つて異様(いやう)(かん)()たれた。097内地(ないち)であつたならば地方(ちはう)官吏(くわんり)さへ、098なかなか威張(いば)()らして日出雄(ひでを)馬鹿(ばか)にして()傾向(けいかう)があるのに(くら)べて、099感慨無量(かんがいむりやう)であつた。100蒙古(もうこ)未開国(みかいこく)とは()(なが)ら、101上下(じやうげ)(たみ)()親和(しんわ)し、102(あたか)神代(かみよ)(おもかげ)(しの)ばせる、103その容貌(ようばう)日本人(につぽんじん)酷似(こくじ)日本人(につぽんじん)唯一(ゆゐいつ)(ちから)(たの)(ふう)がある。104日本人(につぽんじん)蒙古人(もうこじん)(その)祖先(そせん)(いつ)にし、105源義経(みなもとよしつね)子孫(しそん)(みな)蒙古(もうこ)一百六人(いつぴやくろくにん)(わう)()つて()るのだと彼等(かれら)(しん)()つてゐるのである。
106
107 岡崎(をかざき)蒙古人(もうこじん)(たい)し、108支那語(しなご)(もつ)て、109(いよいよ)蒙古(もうこ)亡国的(ばうこくてき)運命(うんめい)より(すく)()し、110大庫倫(アルホラ)駐屯(ちうとん)せる赤軍(せきぐん)(うさぎ)()ふやうに()ひまくり、111大庫倫(アルホラ)(おい)新蒙古王国(しんもうこわうこく)建設(けんせつ)し、112支那(しな)113満州(まんしう)114西比利亜(シベリア)席捲(せきけん)して、115日本(につぽん)(および)蒙古男子(もうこだんし)真価(しんか)天下(てんか)発表(はつぺう)する(つも)りだ。116なアに、117大鼻子(タアビイヅ)だつて、118支那人(しなじん)だつて、119日蒙(にちもう)両国民(りやうこくみん)一致(いつち)すれば()ぐに(くぼ)んで(しま)ひますよ、120アハヽヽヽ……。121などと万丈(ばんぢやう)気焔(きえん)()いて(ひと)(えつ)()つてゐる。122(この)(はなし)公爺府(コンエフ)重役(ぢうやく)心配(しんぱい)(さう)(かほ)して(そば)()いてゐたが、123すぐに老印君(らういんくん)(まね)いて、124鎮国公(ちんこくこう)(やかた)にあわただしく()けつけて()つた。125二三時間(にさんじかん)ばかりして、126老印君(らういんくん)六ケ(むつか)しい(かほ)をして(かへ)つて()た。127そして岡崎(をかざき)(むか)ひ、
128日本(につぽん)方々(かたがた)東三省(とうさんしやう)護照(ごせう)()つてゐますか、129護照(ごせう)()(かた)一日(いちにち)此処(ここ)()つて(もら)ふことは出来(でき)ませぬ。130(こと)蒙古(もうこ)独立(どくりつ)などを(くはだ)てる(ひと)世話(せわ)することは出来(でき)ぬ、131王様(わうさま)(はじ)(この)白髪首(しらがくび)(まで)()んで(しま)ひますから……。132蒙古(もうこ)へお()でになるのなら一度(いちど)奉天(ほうてん)(まで)(かへ)つて護照(ごせう)(もら)つて()(くだ)さい』
133態度(たいど)をガラリと()へてしまつた。134温長興(をんちやうこう)(これ)()くや(おほい)(いか)り、
135()しからぬ(こと)をいふ(ぢぢい)だ。136()司令(しれい)から吾々(われわれ)一行(いつかう)世話(せわ)する(ため)沢山(たくさん)(かね)(いただ)いて()(なが)ら、137(いま)となつて斯様(かやう)なことを老爺(おやぢ)(くち)から()くとは不都合千万(ふつがふせんばん)だ。138その(うへ)吾々(われわれ)をこんな陋屋(ろうをく)につツ()み、139南京虫責(なんきんむしぜ)めにあはしよるとは(なん)(こと)だ。140()(かく)一応(いちおう)奉天(ほうてん)まで(かへ)つて、141司令(しれい)談判(だんぱん)して()る』
142息巻(いきま)いてゐる。143老印君(らういんくん)態度(たいど)一変(いつぺん)したのは岡崎(をかざき)大言壮語(だいげんさうご)(たた)つたのである。144鎮国公(ちんこくこう)はじめ重役連(ぢうやくれん)支那政府(しなせいふ)張作霖(ちやうさくりん)(おそ)れたからであつた。145岡崎(をかざき)はまたソロソロ不平(ふへい)()らし()した。
146一体(いつたい)盧占魁(ろせんくわい)といふ餓鬼(がき)や、147(おれ)をこんな(おく)(はう)突込(つつこ)みよつて、148佐々木(ささき)大倉(おほくら)(はら)(あは)せ、149先生(せんせい)はじめ吾々(われわれ)日本人(につぽんじん)をペテンに()けよつたのだらう、150ようしツ、151(おれ)にも(かんが)へがある。152(これ)から奉天(ほうてん)(かへ)つて(なに)()()秘密(ひみつ)をすつぱ()いてきます。153(また)佐々木(ささき)154大倉(おほくら)(やつ)め、155洮南(たうなん)以西(いせい)馬賊(ばぞく)徘徊(はいくわい)するから、156一切(いつさい)荷物(にもつ)金銭(きんせん)などは一銭(いつせん)携帯(けいたい)してはならぬ、157曼陀汗(マンダハン)老印君(らういんくん)金子(かね)(わた)してあるから、158一切万事(いつさいばんじ)不自由(ふじゆう)のない(やう)にしてくれると()かしよつたが、159(この)ザマは(なん)だ。160毛布(もうふ)一枚(いちまい)あるでなし、161南京虫(なんきんむし)巣窟(さうくつ)にアンペラ一枚(いちまい)()いて()られるか、162そして金子(かね)一文(いちもん)()つて()くな、163など(ぬか)しよつたが、164先生(せんせい)がそれでもチツト(ばか)(ふところ)にソツと()れて()つて()(くだ)さつたお(かげ)で、165鶏卵(けいらん)()(また)旅費(りよひ)出来(でき)たのだ。166彼奴等(きやつら)()(とほ)りにして()つたなら、167自分等(じぶんら)蒙古(もうこ)(おく)餓死(がし)するより仕様(しやう)がないのだ』
168とブウブウ()ふて(おこ)()す。169(しか)岡崎(をかざき)(おこ)るのも無理(むり)はない。170温突(をんどる)()いてあつても毛布(もうふ)一枚(いちまい)ないので、171外套(ぐわいたう)をかぶつて、172()()るといふみじめな有様(ありさま)であつた。173日出雄(ひでを)洮南府(たうなんふ)二万円(にまんゑん)旅費(りよひ)懐中(くわいちう)し、174日本人(につぽんじん)一行(いつかう)費用(ひよう)()てむとしたのを佐々木(ささき)175大倉(おほくら)176唐国別(からくにわけ)から色々(いろいろ)()きつけられ、177(つひ)彼等(かれら)(わた)して(しま)つたのであつた。178()(かく)温長興(をんちやうこう)(うま)(はし)らせ、179洮南府(たうなんふ)真澄別(ますみわけ)一行(いつかう)面会(めんくわい)させ、180公爺府(コンエフ)()ける一行(いつかう)現状(げんじやう)報告(はうこく)せしめ、181一日(いちにち)(はや)荷物(にもつ)一切(いつさい)(おく)つて()(もら)はねば、182()うする(こと)出来(でき)ないといふ手紙(てがみ)()たせて出発(しゆつぱつ)せしむる(こと)()めた。
183 王元祺(わうげんき)(あさ)から(ばん)まで蒙古人(もうこじん)(いへ)()つて麻雀(マージヤン)()賭博(とばく)(ふけ)り、184(すこ)しも通訳(つうやく)(よう)をしない、185一言(ひとこと)いつても()ぐに(はら)()て、
186(わたし)はお()()ひませぬから(かへ)らして(もら)ひます』
187など、188足許(あしもと)見込(みこ)んで駄々(だだ)をこねるので、189日出雄(ひでを)(おほい)(こま)り、190筆談(ひつだん)(もつ)白凌閣(パイリンク)(かい)し、191蒙古人(もうこじん)との一切(いつさい)交渉(かうせふ)(あた)らしめてゐた。192守高(もりたか)得意(とくい)柔術(じうじゆつ)蒙古人(もうこじん)(さむ)(かぜ)()戸外(こぐわい)(をし)へてゐた。193一見(いつけん)しても一癖(ひとくせ)あり(さう)武術面(ぶじゆつづら)をしてゐるので、194蒙古人(もうこじん)薄気味(うすきみ)(わる)(かん)じてゐたけれ(ども)195物珍(ものめづ)らしさに一二回(いちにくわい)柔術(じうじゆつ)稽古(けいこ)をやつて()た。196守高(もりたか)は……こんな野蛮国(やばんこく)人間(にんげん)には自分(じぶん)(ちから)()せておかねば軽蔑(けいべつ)されると()(かんが)へから、197蒙古人(もうこじん)手首(てくび)急所(きふしよ)(ちから)一杯(いつぱい)(つか)()めたので、198蒙古人(もうこじん)(あを)くなつてヘタバつた。199それを蒙古人(もうこじん)柔術(じうじゆつ)()といふ(こと)()らず、200()言葉(ことば)(つう)じない(ところ)より非常(ひじやう)守高(もりたか)悪党(あくたう)誤解(ごかい)し、201村中(むらぢう)蒙古男子(もうこだんし)王得勝(ワントウシン)(いへ)(あつ)まつて、202暗夜(あんや)(じやう)守高(もりたか)鉄砲(てつぱう)()(ころ)さうといふ相談(さうだん)()めた。203白凌閣(パイリンク)蒙古人(もうこじん)(こと)でもあり、204(その)相談(さうだん)結果(けつくわ)心配(しんぱい)して日出雄(ひでを)密告(みつこく)した。205そこで日出雄(ひでを)王得勝(ワントウシン)腕時計(うでどけい)若干(じやくかん)金子(かね)(あた)へ、206白凌閣(パイリンク)(かい)して柔道(じうだう)大略(たいりやく)守高(もりたか)好人物(かうじんぶつ)たる(こと)()()かせたので、207蒙古人(もうこじん)(やうや)了解(れうかい)して、208守高(もりたか)(たい)する悪感(あくかん)(やや)(うす)らぎ、209(さいはひ)無事(ぶじ)なるを()たのである。210(この)(とき)日出雄(ひでを)心配(しんぱい)一通(ひととほ)りではなかつたのである。
211 老印君(らういんくん)温長興(をんちやうこう)のきびしき追撃(ついげき)()へかねて、212(にはか)自分(じぶん)所有(しよいう)新宅(しんたく)日出雄(ひでを)一行(いつかう)移転(いてん)させる(こと)とした。213老印君(らういんくん)(たく)から西南(せいなん)(あた)(ほとん)五丁(ごちやう)(ばか)りの距離(きより)がある。214まだ(かべ)十分(じふぶん)(かは)いてゐないので、215(さか)んに(やなぎ)枯枝(かれえだ)()やして室内(しつない)乾燥(かんさう)(はか)つた。216そして牛車(ぎうしや)一台(いちだい)(まき)五十銭(ごじつせん)であつたが、217(かべ)(かわ)かすのに二台(にだい)(ばか)りの(たきぎ)をくすべて(しま)つた。218(やうや)くにして四月(しぐわつ)四日(よつか)(きう)三月(さんぐわつ)二日(ふつか)新宅(しんたく)移転(いてん)し、219ヤツト一安心(ひとあんしん)した。220そして温長興(をんちやうこう)手紙(てがみ)()たせて、221盧占魁(ろせんくわい)日本人側(につぽんじんがは)公爺府(コンエフ)()ける困難(こんなん)事情(じじやう)報告(はうこく)せしめ、222(かつ)真澄別(ますみわけ)一行(いつかう)一日(いちにち)(はや)着府(ちやくふ)するのを()つてゐる(こと)(つた)へしめた。223温長興(をんちやうこう)(こま)(むちう)(いきほ)ひよく洮南(たうなん)()して()()した。224ところが(その)()午後(ごご)六時(ろくじ)(ごろ)望遠鏡(ばうゑんきやう)(もつ)洮南(たうなん)方面(はうめん)原野(げんや)(なが)めてゐると、225四台(よんだい)轎車(けうしや)がまつしぐらに()けて()るのが()についた、226よくよく()れば真澄別(ますみわけ)一行(いつかう)沢山(たくさん)荷物(にもつ)食料(しよくれう)満載(まんさい)して()るのであつた。227(この)(とき)日出雄(ひでを)228岡崎(をかざき)(よろこ)びは一通(ひととほ)りではなかつた。
229 一同(いちどう)地獄(ぢごく)(ほとけ)()ふたやうな心持(こころもち)になつて打喜(うちよろこ)び、230(たがひ)(うれ)(なみだ)()(くも)らした。231沢山(たくさん)荷物(にもつ)食料(しよくれう)()たので老印君(らういんくん)(おどろ)いたと()(には)かに日本人(につぽんじん)(たい)する態度(たいど)がガラリと(かは)つて()た。232(かんが)へて()れば老印君(らういんくん)日本人(につぽんじん)一行(いつかう)(うたが)つたのも無理(むり)はない。233(いづ)れも北国雷(ほつこくかみなり)何一(なにひと)()ぼしい携帯品(けいたいひん)もなく、234どこの落人(おちうど)()()たか(わか)らぬ(やう)体裁(ていさい)だつたからである。235老印君(らういんくん)狡猾(かうくわつ)()らぬ(かほ)をしたのか、236(ただ)しは日本側(につぽんがは)三人組(さんにんぐみ)日出雄(ひでを)一行(いつかう)をだまして(おく)へやつたのか合点(がつてん)()かぬと、237一行(いつかう)(あや)しみに()へなかつた。238そして老印君(らういんくん)(たい)する(わる)感情(かんじやう)次第(しだい)()げて()た。239真澄別(ますみわけ)(したが)つてやつて()日本人(につぽんじん)名田彦(なだひこ)240猪野(ゐの)敏夫(としを)両人(りやうにん)であつた。
241 (これ)より()黒竜江(こくりうこう)方面(はうめん)馬賊団(ばぞくだん)頭目(とうもく)(しよう)する団栗眼(どんぐりまなこ)物騒(ぶつさう)(かほ)した(をとこ)三人(さんにん)岡崎(をかざき)(もと)(たづ)ねて()て、242自治軍(じちぐん)参加(さんか)させてくれないかと掛合(かけあ)つた。243岡崎(をかざき)早速(さつそく)手紙(てがみ)(したた)めて盧占魁(ろせんくわい)佐々木(ささき)()相談(さうだん)(むか)はしめた。
244大正一四・八 筆録)