霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三四章 竜口(たつのくち)(なん)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記 篇:第5篇 雨後月明 よみ(新仮名遣い):うごげつめい
章:第34章 竜口の難 よみ(新仮名遣い):たつのくちのなん 通し章番号:
口述日:1925(大正14)年08月 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年2月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
日出雄は武装解除となった上は、パインタラで武器の授受終了の後、ひとまず日本に帰って再来しようという覚悟で、パインタラに向かったのであった。
途中、パインタラ官兵の将校が、あなたは日本人であるから逃げなさい、と諭したが、他の日本人を置いていくわけにはいかないと、パインタラにそのまま進んで行った。
城門を入って旅団の兵営内に入って挨拶をなすと、盧占魁が来るまで休息するように、と言われた。日出雄も井上も夜中行軍のために疲れていたので、前後も知らずに寝についた。
三四時間も眠ったころ、兵士たちに揺り起こされると、後ろ手に縛り上げられてしまった。やがて盧占魁が到着すると、日出雄らの縛めを解くことになり、また親切に饗応し始めた。
盧占魁はついに武装解除に至ったことを告げ、ただ自分の部下もパインタラには多くいるために、身の安全は心配しないように、と言った。やがて、数千の兵士が盧占魁の残部隊を引き連れて市内に戻ってきた。
真澄別らも一緒にやってきて、鴻賓旅館で合流することになった。その日は一同、官兵たちに饗応を受けたが、日出雄はその日に限って気分が進まず、食事には箸をつけなかった。
その夜、盧占魁が二人の副官とともにやってきて、なんだか雲行きが怪しいようなので、これから熱河、綏遠、チャハルの特別区域に逃れて再起を図るつもりだ、と告げた。そして日本への旅費として一百円を差し出したが、日出雄は固く辞して受け取らなかった。
官兵たちは盧占魁の兵士たちを歓待しておいて安心させ、真夜中に寝ているところを一人ひとり営門外へ引き出し、機関銃で銃殺を始めたのである。
日本人一同も、鴻賓旅館で寝ているところを夜半一時ごろに揺り動かされ、捕縛されてしまった。そして、旅館の庭前に立たされた。井上は支那語がわかるので、「先生、兵士どもが我々を銃殺する、と言っております」と通訳した。
一同は覚悟を決めた。そして、パインタラを引き回されて、刑場に送られていった。白凌閣ら蒙古人、支那人は別に銃殺場へと連れて行かれた。
日出雄、真澄別、萩原、井上、坂本、守高らは並べられて、機関銃の弾が飛んでくるという矢先、射手は銃の反動を受けて倒れたため、数分を要した。真澄別は救世主である日出雄がここで命を落とすことなど決してありえない、と強く主張した。
日出雄は霊魂が中有に迷わないようにと真澄別を諭し、一同の霊魂を救うよう、それのみに心を集中していた。そして辞世の歌を詠んで弾丸が飛来するのを待っていた。
しかしそうするうちに銃殺は中止になり、またもや兵士が一行を引き立てて監獄へ連れて行った。堅固な手かせ足かせをはめ、麻縄にて縛り、厳重な死刑囚の取り扱いをなした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考:2024/2/15出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。 タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-02-16 20:49:31 OBC :rmnm34
愛善世界社版:307頁 八幡書店版:第14輯 660頁 修補版: 校定版:310頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 (これ)より()日出雄(ひでを)井上(ゐのうへ)兼吉(かねきち)従者(じゆうしや)とし、002()占魁(せんくわい)003(ほか)十数(じふすう)(めい)(ともな)ひ、004二十(にじふ)(めい)支那(しな)官兵(くわんぺい)前後(ぜんご)(まも)られ(なが)ら、005五十(ごじふ)支里(しり)(へだ)つる白音太拉(パインタラ)(むか)つたが、006(かれ)(しち)(ぐわつ)二十日(はつか)大本(おほもと)裁判(さいばん)出頭(しゆつとう)する(ため)に、007白音太拉(パインタラ)(おい)武器(ぶき)授受(じゆじゆ)終了(しうれう)(うへ)008一先(ひとま)日本(につぽん)帰国(きこく)(ふたた)出国(しゆつこく)する覚悟(かくご)で、009(いさ)(すす)んで白音太拉(パインタラ)(むか)つたのである。
010 三十(さんじふ)支里(しり)(ばか)()(ところ)通遼県(つうれうけん)兵営(へいえい)分隊(ぶんたい)駐屯所(ちうとんじよ)があつた(通遼(つうれう)白音太拉(パインタラ)支那(しな)(めい)である)011支那(しな)将校(しやうかう)(とも)(この)兵営(へいえい)(しば)休息(きうそく)し、012()兵営長(へいえいちやう)少時(しばらく)談合(だんがふ)(うへ)(ふたた)(ひがし)(むか)つて(すす)んだ。013(ほと)んど()()けむとする(ころ)6月21日の朝014前方(ぜんぱう)より数百(すうひやく)騎兵隊(きへいたい)(すす)(きた)り、015()占魁(せんくわい)(ふたた)何事(なにごと)交渉(かうせふ)(うへ)016もとの軍営(ぐんえい)引帰(ひきかへ)()く。017(この)(とき)()井上(ゐのうへ)(むか)つて、
018盧占魁大先生(だいせんせい)(よろ)しく(たの)む』
019 と幾度(いくど)繰返(くりかへ)繰返(くりかへ)言残(いひのこ)して()く。020日出雄(ひでを)井上(ゐのうへ)(とも)(うま)()(かたはら)青草(あをくさ)()ませてゐたが、021(いち)時間(じかん)(ばか)りすると通遼(つうれう)旅団(りよだん)参謀長(さんぼうちやう)十数(じふすう)(めい)騎兵(きへい)引連(ひきつ)(きた)り、022日出雄(ひでを)(むか)つて日本語(につぽんご)にて、
023参謀長貴方(あなた)日本人(につぽんじん)024(いち)()(はや)くお()げなさい お()げなさい』
025()()つて(みなみ)(はう)()して(をし)ふる。026日出雄(ひでを)は、
027日出雄真澄別(ますみわけ)(その)()日本人(につぽんじん)(あと)(のこ)して遁走(とんそう)するは日本(につぽん)男子(だんし)恥辱(ちじよく)だ、028()(かく)どうなるも(かみ)(さま)()経綸(けいりん)だ、029(むし)自分(じぶん)(はう)より兵営(へいえい)飛込(とびこ)んで武器(ぶき)受取(うけとり)談判(だんぱん)をやらう、030その(うち)()()()るだらうし(また)(あと)(のこ)つた日本人(につぽんじん)消息(せうそく)(わか)るだらう』
031(また)もや(こま)(むちう)ち、032白音太拉(パインタラ)()()()した。033(あと)より(まう)秘書長(ひしよちやう)一人(ひとり)従者(じうしや)(おひ)かけ(きた)り、034一行(いつかう)四騎(よんき)(くつわ)(なら)べて堂々(だうだう)通遼県(つうれうけん)西門(せいもん)(すす)んだ。
035 城門(じやうもん)(まへ)(まで)(すす)んで()くと、036太陽(たいやう)(くさ)(なか)から(あか)(かほ)をして(のぼ)りかけた。037(もん)両方(りやうはう)には(いか)めしく武装(ぶさう)した兵士(へいし)数名(すうめい)立番(たちばん)をして()て、038一人(ひとり)につき五十(ごじつ)(せん)(づつ)通行税(つうかうぜい)徴収(ちようしう)した。039日出雄(ひでを)井上(ゐのうへ)旅団(りよだん)所在地(しよざいち)(たづ)ねると、040衛兵(ゑいへい)(よん)(めい)前後(ぜんご)となつて兵営(へいえい)案内(あんない)した。
041 日出雄(ひでを)営内(えいない)()り、042高等(かうとう)武官(ぶくわん)らしきものに井上(ゐのうへ)通訳(つうやく)(かい)して挨拶(あいさつ)をなし、043()
044日出雄()占魁(せんくわい)(きた)るまで当営(たうえい)休息(きうそく)したし』
045 と申込(まをしこ)んだ。046将校(しやうかう)はいと慇懃(いんぎん)(うつく)しい座敷(ざしき)(あた)へ、047茶菓子(ちやくわし)()して饗応(きようおう)し、048(やはら)かい毛布(まうふ)()いて、
049将校()づお(やす)みなさい』
050 と(すす)めた。051日出雄(ひでを)井上(ゐのうへ)夜中(やちう)強行軍(きやうかうぐん)(ため)身体(からだ)(つか)れてゐるので、052(その)好意(かうい)感謝(かんしや)(なが)ら、053前後(ぜんご)()らず(しん)()いた。054(ほとん)三四(さんよ)時間(じかん)(ねむ)つたと(おも)(ころ)055参謀官(さんぼうくわん)四五(しご)(めい)兵士(へいし)(とも)銃口(つつぐち)()(なが)ら、056井上(ゐのうへ)兼吉(かねきち)()(うご)かし懐中(くわいちう)十連発(じふれんぱつ)のモーゼルや六連発(ろくれんぱつ)のピストルを()()げ、057()所持品(しよぢひん)調(しら)べた(うへ)058後手(うしろで)麻縄(あさなは)(もつ)(しば)()げ、059(つぎ)日出雄(ひでを)()(おこ)した。060日出雄(ひでを)(やす)らかな(ゆめ)(むす)んでゐた(ところ)(おこ)されて、061()(こす)(なが)四辺(あたり)()れば、062井上(ゐのうへ)(すで)(ばく)されてゐた。063参謀官(さんぼうくわん)金盥(かなだらひ)()()みタオルを(ひた)
064参謀官()(これ)にて(かほ)(あら)ひなさい』
065 と日本語(につぽんご)にて親切(しんせつ)()ふ。066日出雄(ひでを)は、
067日出雄『ハイ有難(ありがた)う』
068 と(その)()(ひた)したる手拭(てぬぐひ)にて(かほ)(ぬぐ)ふた。069兵士(へいし)(かは)(がは)()(ひた)しては(しぼ)日出雄(ひでを)(わた)し、070首筋(くびすぢ)()(あら)つて()れた。071さうして日出雄(ひでを)所持品(しよぢひん)調(しら)
072天国(てんごく)
0721 の銘刀(めいたう)如意(によい)宝玉(はうぎよく)(なら)びに白金(プラチナ)時計(とけい)073所持金(しよぢきん)八百(はつぴやく)七十(しちじふ)(えん)()(まへ)調(しら)べて、
074()占魁(せんくわい)()(まで)(あづか)りします』
075 と()つて()つて()つた。076(つぎ)(しつ)()ると、077(まう)秘書長(ひしよちやう)(およ)一人(ひとり)支那兵(しなへい)井上(ゐのうへ)同様(どうやう)(しば)られてゐる。078日出雄(ひでを)意外(いぐわい)出来事(できごと)(いぶ)かり(なが)参謀(さんぼう)(むか)つて、
079日出雄何故(なぜ)井上(ゐのうへ)(しば)りましたか』
080(たづ)ねた(ところ)
081参謀井上(ゐのうへ)武器(ぶき)携帯(けいたい)してゐたから馬賊(ばぞく)(みと)めて(しば)つたのだ。082(かれ)()()(めい)支那人(しなじん)馬賊(ばぞく)だから(いま)しめたのだ。083そして()占魁(せんくわい)()(まで)貴方(あなた)もホンの形式(けいしき)(なが)(しば)ります』
084 と()ふので、085日出雄(ひでを)
086日出雄()自由(じいう)になさい』
087 と()(うしろ)(まは)した。088参謀(さんぼう)形式(けいしき)(てき)(ごく)ゆるやかに()(しば)り、089日人(にちじん)()(めい)支那人(しなじん)()(めい)(とも)兵営(へいえい)(すわ)らせ()き、090いろいろと日出雄(ひでを)(むか)つて日本語(につぽんご)にて(はなし)交換(かうくわん)した。091さうして
092参謀貴方(あなた)武器(ぶき)携帯(けいたい)せず()宗教家(しうけうか)であるから、093貴方(あなた)()ぐに放免(はうめん)されませう』
094 と()つて(なぐさ)めた。095ここで日出雄(ひでを)愛馬(あいば)(なみだ)(とも)(わか)れた。096愛馬(あいば)(また)日出雄(ひでを)心中(しんちう)(かい)するものの(ごと)落涙(らくるい)したと()(こと)である。
097 (その)()午後(ごご)()()(ごろ)098()占魁(せんくわい)二十数(にじふすう)(めい)幹部(かんぶ)(れん)(とも)支那(しな)軍隊(ぐんたい)(おく)られて、099日出雄(ひでを)(つな)がれて()旅団(りよだん)司令部(しれいぶ)到着(たうちやく)した。100そして()占魁(せんくわい)参謀長(さんぼうちやう)交渉(かうせふ)結果(けつくわ)101日出雄(ひでを)(ほか)(さん)(にん)(いましめ)()茶菓(さか)(とう)(はこ)び、102(また)もや親切(しんせつ)饗応(きやうおう)(はじ)めた。103参謀長(さんぼうちやう)は、
104参謀長今晩(こんばん)是非(ぜひ)貴方(あなた)(がた)歓迎(くわんげい)(えん)(もよほ)()いから、105兵営(へいえい)(とま)つて(くだ)さい』
106 と(すす)める。107そこへ()占魁(せんくわい)108()全孝(ぜんかう)がやつて()て、109日出雄(ひでを)旅団長(りよだんちやう)(しつ)(さそ)つて()筆談(ひつだん)(もつ)て、
110盧占魁愈々(いよいよ)武装(ぶさう)解除(かいぢよ)()むなきに立到(たちいた)りました。111乍然(しかしながら)112ここの旅長(りよちやう)自分(じぶん)義兄弟(ぎきやうだい)でもあり、113(また)自分(じぶん)部下(ぶか)もここに沢山(たくさん)ありますから大丈夫(だいぢやうぶ)です。114安心(あんしん)して(くだ)さい。115万一(まんいち)非常(ひじやう)(こと)(おこ)つても(わたし)()生命(せいめい)別条(べつでう)はない、116さうして日本人(につぽんじん)猶更(なほさら)安心(あんしん)して(よろ)しい。117(わたし)(わう)祥義(しやうぎ)変名(へんめい)()占魁(せんくわい)()()今日(けふ)(かぎ)(はうむ)つて(しま)ひます。118もし(わたし)(ころ)されるやうな(こと)があつたら、119(この)(さい)貴方(あなた)生命(せいめい)もないでせう。120()(かく)明日(みやうにち)(わたし)奉天(ほうてん)(まゐ)りませう』
121 と()つた。122日出雄(ひでを)
123日出雄『フンフンフンフン』
124 と(くび)(たて)(ふた)(みつ)()(なが)ら、125(ふたた)参謀長(さんぼうちやう)(しつ)這入(はい)つて
126日出雄今晩(こんばん)はあまり(つか)れたから何処(どこ)()日本(につぽん)のホテルに案内(あんない)して()しい、127そして久振(ひさしぶ)りに日本(につぽん)料理(れうり)()べたいから』
128 と()つた。129さうすると参謀(さんぼう)(こた)へて()ふには
130参謀一昨年(いつさくねん)(ごろ)(まで)日本人(につぽんじん)旅館(りよくわん)がありましたが、131(いま)はもうありませぬ。132鴻賓館(こうひんくわん)()支那(しな)一等(いつとう)旅館(りよくわん)がありますから、133それに案内(あんない)させませう』
134 と日本語(につぽんご)(わか)(わか)兵士(へいし)案内役(あんないやく)として馬車(ばしや)(めい)じ、135日出雄(ひでを)136井上(ゐのうへ)鴻賓(こうひん)旅館(りよくわん)(おく)(とど)けた。137白音太拉(パインタラ)(まち)人山(ひとやま)(きづ)いて138日出雄(ひでを)通行(つうかう)物珍(ものめづ)らしげに(なが)めてゐる。139そこへ数千(すうせん)兵士(へいし)()占魁(せんくわい)残部隊(ざんぶたい)引連(ひきつ)れて、140ラツパの(こゑ)(いさ)ましく(かへ)つて()た。141真澄別(ますみわけ)142守高(もりたか)143坂本(さかもと)(さん)(にん)日出雄(ひでを)荷物(にもつ)()んだ轎車(けうしや)()り、144萩原(はぎはら)騎馬(きば)にて(かへ)つて()るのに途中(とちう)出会(しゆつくわい)した。145日出雄(ひでを)車上(しやじやう)より(こゑ)をかけ
146日出雄今晩(こんばん)鴻賓(こうひん)旅館(りよくわん)(とま)るから白凌閣(パイリンク)(とも)にホテルに()てくれ』
147 と(よば)はりつつ、148()()るる(ころ)旅館(りよくわん)につき一室(いつしつ)(はい)つて休息(きうそく)してゐた。
149 (いち)時間(じかん)(ばか)()つと真澄別(ますみわけ)一行(いつかう)()(にん)蒙古人(もうこじん)一名(いちめい)150支那人(しなじん)一名(いちめい)(とも)旅館(りよくわん)()いた。151(この)蒙古人(もうこじん)(ちやう)貴林(きりん)片腕(かたうで)副団長(ふくだんちやう)であつた。152(かれ)銃弾(じゆうだん)(むね)()けて()たが、153平気(へいき)(かほ)(すわ)つてゐた。154支那(しな)将校(しやうかう)少佐(せうさ)肩章(けんしやう)をつけた軍人(ぐんじん)が、155非常(ひじやう)愛嬌(あいけう)()りまいて日出雄(ひでを)一行(いつかう)歓待(くわんたい)した。156(あぶら)(おほ)支那(しな)料理(れうり)(いづ)れも舌鼓(したづつみ)()つた。157(しか)るに日出雄(ひでを)(その)()(かぎ)りて気分(きぶん)(すす)まず、158食事(しよくじ)(はし)もつけなかつた。159(いま)(しん)()かむとする(とき)160()占魁(せんくわい)二人(ふたり)副官(ふくくわん)(とも)日出雄(ひでを)(たづ)ねて()筆談(ひつだん)(はじ)
161盧占魁今晩(こんばん)(なん)だか(あや)しいやうだ、162乍然(しかしながら)自分(じぶん)先刻(せんこく)申上(まをしあ)げた(とほ)大丈夫(だいぢやうぶ)だと(おも)ふ。163(これ)から(ねつ)164(さつ)165(すゐ)特別(とくべつ)区域(くゐき)部下(ぶか)(とも)()(もつ)(のが)再挙(さいきよ)(はか)(かんがへ)です。166(これ)日本(につぽん)への旅費(りよひ)()しに……』
167 と()つて一百(いつぴやく)(ゑん)差出(さしだ)したが、168日出雄(ひでを)(かた)()して受取(うけと)らなかつた。169そして()占魁(せんくわい)日出雄(ひでを)握手(あくしゆ)交換(かうくわん)(なみだ)(はら)つて(わか)れて()く。170(その)()旅団(りよだん)兵営(へいえい)では数十(すうじふ)(にん)(キイ)チヤンを()んで芝居(しばゐ)をしたり、171いろいろの面白(おもしろ)(こと)をして()以下(いか)歓待(くわんたい)し、172阿片(あへん)をふるまひ、173沢山(たくさん)馳走(ちそう)饗応(きようおう)したのであつた。174大勢(おほぜい)将卒(しやうそつ)
1741一先(ひとま)安心(あんしん)
1742 と(さけ)()み、175馳走(ちそう)()ひ、176(キイ)チヤンの芝居(しばゐ)()て、177十二分(じふにぶん)(くわん)(つく)(しん)についた。
178 (その)真夜中(まよなか)(ごろ)下着(したぎ)(いち)(まい)になつて()てゐる(ところ)を、179一人(ひとり)々々(ひとり)営門外(えいもんぐわい)引出(ひきだ)し、180機関銃(きくわんじゆう)(もつ)て、181小口(こぐち)から射殺(しやさつ)(はじ)めたのである。
182 支那(しな)少佐(せうさ)
183少佐今晩(こんばん)はお()()案内(あんない)(いた)()いのですが、184あまり(おそ)くて(けが)れてゐますから、185明朝(みやうてう)(あたら)しい綺麗(きれい)()案内(あんない)しませう。186散髪(さんぱつ)如何(いかが)ですか、187大分(だいぶん)(かみ)()びてゐますが、188理髪師(りはつし)()びませうか』
189 と親切(しんせつ)()ふ、190そこで萩原(はぎはら)191井上(ゐのうへ)二人(ふたり)理髪師(りはつし)()んで(もら)散髪(さんぱつ)した、192日出雄(ひでを)(その)()
193明日(あす)にする』
194 と()つて(ねむ)つて(しま)つた。195表門(おもてもん)には官兵(くわんぺい)数名(すうめい)196巡警(じゆんけい)数名(すうめい)(かた)警護(けいご)してゐた。197(この)少佐(せうさ)蜜峰(みつばち)()うな(をとこ)(くち)(あま)(しる)(ふく)み、198(しり)(するど)(けん)(かく)してゐた。199夜半(やはん)(いち)()(ごろ)6月22日の午前1時になると、200ドヤドヤと室内(しつない)沢山(たくさん)足音(あしおと)がしたと(おも)ふと矢庭(やには)兵士(へいし)室内(しつない)闖入(ちんにふ)し、201()第一(だいいち)萩原(はぎはら)()(うご)かし、202五六(ごろく)兵士(へいし)がピストルを()けて
203兵士神妙(しんめう)(なは)にかかれ』
204 と()ふ。205(つぎ)守高(もりたか)206井上(ゐのうへ)207坂本(さかもと)208真澄別(ますみわけ)209日出雄(ひでを)()(じゆん)に、210ガタガタ(ふる)へながら(やうや)日本人(につぽんじん)(ろく)(めい)211支蒙人(しもうじん)()(めい)捕縛(ほばく)して(しま)つた。212よくよく()れば(この)宿(やど)一行(いつかう)(とま)つた(とき)213親切(しんせつ)さうにお世辞(せじ)()()はしてゐた少佐(せうさ)指揮(しき)をやつて()た。214日出雄(ひでを)少佐(せうさ)(むか)つて
215日出雄何故(なぜ)こんな(こと)をするか』
216 と詰問(きつもん)すれば
217少佐(おれ)(なに)()らぬ()らぬ』
218 と(くび)左右(さいう)()るばかりだ。219そして十数(じふすう)(めい)(じゆう)()した(へい)身構(みがま)へをして()る。220そして最後(さいご)(この)旅館(りよくわん)庭前(ていぜん)引出(ひきだ)され一列(いちれつ)()たされた。221日出雄(ひでを)真澄別(ますみわけ)222井上(ゐのうへ)萩原(はぎはら)223守高(もりたか)坂本(さかもと)()組合(くみあは)せに、224二人(ふたり)づつ(つな)にかけ、225一行(いつかう)携帯品(けいたいひん)(のこ)らず、226少佐(せうさ)(はじ)部下(ぶか)兵士(へいし)(さき)(あらそ)ふて分捕(わけどり)し、227(ただ)ラマ(ふく)のみを轎車(けうしや)()せ、228何処(どこ)かへ()つて()つた。229(この)(さわ)ぎの(なか)に、230支那語(しなご)(つう)じた井上(ゐのうへ)支那兵(しなへい)(ささや)きや(ののし)(ごゑ)()き、231日出雄(ひでを)(むか)ひ、
232井上先生(せんせい)233只今(ただいま)支那兵(しなへい)吾々(われわれ)一同(いちどう)銃殺(じゆうさつ)すると()つて()りますぞ、234もう仕方(しかた)がありませぬな』
235 と泰然(たいぜん)自若(じじやく)として(さけ)んだ。236(この)(こゑ)(おう)じて日出雄(ひでを)
237日出雄『ウン、238さうだらう。239支那(しな)(やつ)()馳走(ちそう)政策(せいさく)卑怯(ひけふ)にも騙討(だましうち)をせうとするのだらう、240それでは(わたし)愈々(いよいよ)キリストとなつて昇天(しようてん)すべき時期(じき)()たのだらう。241(きみ)(たち)()部下(ぶか)(みな)天国(てんごく)()れて()くから、242(きみ)(たち)(れい)(はな)れないやうにするが()い』
243 と二三(にさん)(くわい)繰返(くりか)へし、244()死後(しご)世界(せかい)壮厳(さうごん)なる(こと)()いた。245井上(ゐのうへ)246坂本(さかもと)(これ)(こた)へて
247井上、坂本『どうか、248(よろ)しくお(ねが)(いた)します。249仮令(たとへ)地獄(ぢごく)(そこ)へでもお(とも)(いた)します』
250 と(こた)へた。251()(よん)(めい)平然(へいぜん)として沈黙(ちんもく)してゐた。252(この)(とき)日出雄(ひでを)
253日出雄惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
254 と三唱(さんしやう)し、255真澄別(ますみわけ)(あま)数歌(かずうた)(おほ)きな(こゑ)(とな)()した。256支那兵(しなへい)はビツクリして
257兵士八釜(やかま)しく()ふな』
258 と(しか)りつけたので、259両人(りやうにん)(さら)中声(ちうせい)になつて、
260『ワイワイ』
2601 と(さわ)いでゐる沢山(たくさん)(へい)(なか)を、261宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、262白音太拉(パインタラ)(なが)(まち)引廻(ひきまは)され(ふたた)兵営(へいえい)門内(もんない)(おく)られた。263(その)(うち)支蒙人(しもうじん)()(めい)日出雄(ひでを)一行(いつかう)(はな)され、264銃殺場(じうさつば)(おく)られる。265日出雄(ひでを)一行(いつかう)(ろく)(にん)(ふたた)営所(えいしよ)(もん)()で、266(きた)(きた)へと()かれて()くと、267(みち)両端(りやうばた)には()部下(ぶか)(だい)()になつて血潮(ちしほ)()まつて(たふ)れてゐるのが沢山(たくさん)にある。268そして大車(だいしや)()つて()兵士(へいし)(はこ)んでゐる。269日出雄(ひでを)一々(いちいち)(その)大車(だいしや)死骸(しがい)電燈(でんとう)(ひかり)(しら)(なが)(すす)んで()くと、270やがて一列(いちれつ)(なら)べられた。
271 真澄別(ますみわけ)272日出雄(ひでを)273萩原(はぎはら)274井上(ゐのうへ)275坂本(さかもと)276守高(もりたか)(じゆん)(なら)べられ、277(いま)機関銃(きくわんじゆう)弾丸(たま)(これ)()日本人(につぽんじん)胸先(むなさき)()んで()ると(おも)矢先(やさき)278射手(しやしゆ)(じゆう)反動(はんどう)()けて後方(こうはう)(たふ)れた(ため)数分(すうふん)(えう)した。279日出雄(ひでを)日本人(につぽんじん)一同(いちどう)(むか)つて()
280日出雄最早(もはや)かくなる(うへ)昇天(しようてん)(とき)()たのだ、281自分(じぶん)(これ)から天国(てんごく)(のぼ)282霊国(れいごく)天人(てんにん)となつて日本(につぽん)()ふに(およ)ばず、283世界(せかい)守護(しゆご)をする(かんが)へだ。284(きみ)(たち)(わし)について()い、285そして(をとこ)らしう()たれて()なうぢやないか。286日本(につぽん)男子(だんし)()(けが)すやうな、287卑怯(ひけふ)真似(まね)はしともないからのう』
288 と(さと)すやうに()つた。289坂本(さかもと)涙声(なみだごゑ)()して
290坂本『どうか、291よろしくお見捨(みす)てなきやう』
292 と()つた。293真澄別(ますみわけ)日出雄(ひでを)言葉(ことば)(さへぎ)つて()
294真澄別先生(せんせい)295(けつ)して貴方(あなた)生命(いのち)()られる気遣(きづかひ)はありませぬよ。296貴方(あなた)(いま)天国(てんごく)()くと()はれましたが、297今度(こんど)()立替(たてかへ)肉体(にくたい)がなくては出来(でき)ないのです。298()貴方(あなた)がここで生命(いのち)()られるやうな(こと)があれば、299(かみ)(さま)人間(にんげん)(だま)したことになります。300(わたし)屹度(きつと)(たす)かりになると(おも)ひますから……』
301 と確信(かくしん)あるものの(ごと)主張(しゆちやう)する。
302日出雄『それでも真澄別(ますみわけ)さん、303何程(なにほど)(かみ)(みち)(つか)へてゐると()つても、304日出雄(ひでを)(からだ)肉体(にくたい)だ。305鉄砲(てつぱう)(あた)れば()ぬのが当然(たうぜん)だ。306あんたも()なないと(おも)つて安心(あんしん)して()途端(とたん)一発(いつぱつ)()つたならば、307あなたの霊魂(れいこん)予想(よさう)(はん)して中有(ちうう)(まよ)ふだらう。308それだから()ぬものと覚悟(かくご)して()ればよいぢやないか』
309 と(さと)す。310真澄別(ますみわけ)(ぐわん)として(その)(せつ)をまげず、
311真澄別『イエイエどうあつても先生(せんせい)()んで(もら)(こと)出来(でき)ませぬ。312もし貴方(あなた)生命(いのち)()くなる(こと)があれば、313(かみ)(さま)(わたし)身代(みがは)りに()てられるでせう。314(わたし)(はじ)めから貴方(あなた)身代(みがは)りと()名義(めいぎ)()()りますから、315そんな心配(しんぱい)()りませぬ』
316 と()ふ。317日出雄(ひでを)
318日出雄(なに)心配(しんぱい)はして()ないよ。319何事(なにごと)惟神(かむながら)(あきら)めてゐるのだ。320(たたみ)(うへ)でも()(とき)()ぬのだ。321日本(につぽん)男子(だんし)蒙古(もうこ)野辺(のべ)(かばね)(さら)すのも愉快(ゆくわい)だ。322(しか)死後(しご)生活(せいくわつ)肝腎(かんじん)だから……』
323 と一同(いちどう)霊魂(れいこん)(すく)ふべく、324それのみに(こころ)集注(しふちう)してゐた。325それから日出雄(ひでを)
 
326 よしや()蒙古(もうこ)のあら()()つるとも日本(やまと)男子(をのこ)(しな)(おと)さじ
 
327 と辞世(じせい)()み、328銃弾(じゆうだん)(わが)(むね)飛来(ひらい)するを()つた。329それから井上(ゐのうへ)兼吉(かねきち)
330井上(はや)()たぬか、331(おれ)(むね)()て、332下手(へた)()ちやうをすると弾丸(たま)余計(よけい)いつて(そん)がいくぞ、333見事(みごと)一発(いつぱつ)(おれ)打殺(うちころ)せ』
334 (など)怒鳴(どな)つてゐる。335日出雄(ひでを)(また)
 
336 いざさらば天津(あまつ)御国(みくに)にかけ(のぼ)()(もと)のみか世界(せかい)(まも)らむ
337 ()(もと)(とほ)(はな)れて(われ)(いま)蒙古(もうこ)(そら)(かみ)となりなむ
 
338 (など)辞世(じせい)七回(しちくわい)(まで)()み、339大日本(だいにつぽん)帝国(ていこく)万歳(ばんざい)340大本(おほもと)万歳(ばんざい)三唱(さんしやう)した。341真澄別(ますみわけ)
342真澄別『どうか(やむ)()ざれば大先生(だいせんせい)井上(ゐのうへ)とを(たす)けて(くだ)さい。343井上(ゐのうへ)屹度(きつと)先生(せんせい)目的地(もくてきち)()れて()(こと)出来(でき)ませう。344(わたし)身代(みがは)りになります』
345 と祈願(きぐわん)してゐた。346さうかうするうち銃殺(じゆうさつ)()めになつて、347(また)もや兵士(へいし)日出雄(ひでを)一行(いつかう)引立(ひきた)てて通遼(つうれう)公署(こうしよ)附属(ふぞく)監獄(かんごく)()れて()つた。348一々(いちいち)堅固(けんご)なる足枷(あしかせ)をはめ、349()には手枷(てかせ)をはめ、350二人(ふたり)づつ(つな)いで(なほ)(その)(うへ)麻縄(あさなは)にて(ろく)(にん)(ひと)つに(しば)り、351(まど)(とほ)して(そと)材木(ざいもく)(くく)りつけ、352厳重(げんぢゆう)死刑囚(しけいしう)取扱(とりあつか)ひをした。
353大正一四、八、筆録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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