霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三六章 (あま)岩戸(いはと)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記 篇:第5篇 雨後月明 よみ:うごげつめい
章:第36章 入蒙記 よみ:あまのいわと 通し章番号:
口述日:1925(大正14)年08月16日(旧06月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年2月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
門司署の三階から街道を見れば、あまたの信徒が大道に列を作って自分らを見上げていた。自分は空前絶後の大業を企てたが、不幸にして中途で帰国するに至ったのも、神界の経綸として止む無きことではあるが、妻子兄弟、役員信者の胸のうちはいかばかりであろう、と思わず万感が胸に満ちた。
続いて下関所に送られ、しばらく休憩の後に自動車で駅に送られた。警察の門口には直霊が待っていた。汽車で大阪に向かい、途中大竹、上郡警察署の拘留所にそれぞれ一泊した。
相生橋署を経て大阪駅に下車すると、見物人が蟻の山のごとく、新聞社の取材班がレンズを向けて待ち構える中を、曽根崎署、続いて天満署の拘留所へ、そして同署の裏門から徒歩で若松支所に向かった。
支所内で書籍の差し入れを受けて、大本役員が債権問題について青くなっていることや、債権者が厳しい催促を始めたことがわかって、歯がゆい思いをしていた。結局九十八日間、入獄することになったが、その間に精神の修養をなし、日出雄の蒙古入りについての記事を読んだりして、あっという間に日々をすごしてしまった。
旧七月十五日の夜、女神が自分に朝日タバコを渡して、莞爾として姿を消したもうた。これは、朝日を渡されたので、やがて岩戸が開くだろうが、一服して時を待て、という意味であると知った。これにより、長期の入獄を覚悟した。
また、新暦十月の中ごろ、母と一緒に本宮山のような丘陵を歩いていると、大本信者が一人、一生懸命に雑木を伐り、土をひきならして道を開いていた。これは保釈を許される前兆であろうと知った。
その次は、自分が非常に高いとがった山の上に登ったが、下り道がどこにもない。すると白馬が二頭現れて、鎖をかけてくれたと見るや、ものすごい勢いで帰ってしまった。自分のために活路を開くべく奮闘している信者のあることを感じたのである。
ある日真澄別が面会に来て、霊眼で「十一」を見せてもらったという。果たして、日出雄の保釈が決定したのが旧暦十月一日であり、若松支所を出たのが新暦十一月一日の午前十一時十一分であった。
聖地では秋季大祭があり、分所支部長会議では財政整理問題について激論が始まっていた。そこへ、保釈の報が届いたので、一同神言を奏上し、大阪へ迎えに来たのであった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rmnm36
愛善世界社版:330頁 八幡書店版:第14輯 668頁 修補版: 校定版:333頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 異境万里(いきやうばんり)(たび)()へ、002不敬(ふけい)(ならび)新聞紙法違反(しんぶんしはふゐはん)責付取消(せきふとりけし)()ふ、003あんまり有難(ありがた)からぬ悪名(あくめい)()ひ、004(やうや)くにして(ふたた)日本(につぽん)風光(ふうくわう)(せつ)し、005純真(じゆんしん)なる役員(やくゐん)信徒(しんと)遥々(はるばる)(むか)へられ、006門司水上警察署(もじすゐじやうけいさつしよ)(おく)られ形式(けいしき)ばかりの質問(しつもん)()け、007門司署(もじしよ)三階(さんかい)風当(かぜあた)りよき北側(きたがは)(まど)にそふて椅子(いす)にかかり煙草(たばこ)をくゆらし(なが)ら、008階下(かいか)街道(かいだう)()れば、009数多(あまた)信徒(しんと)羽織袴(はおりはかま)(また)洋服姿(ようふくすがた)にて大道(だいだう)(れつ)(つく)り、010自分等(じぶんら)見上(みあ)げてゐる。011(なか)には(うれ)しさの(あま)り、012歔欷(きよき)するものさへあつた。013日出雄(ひでを)014(こころ)(なか)にて(おも)ふやう、
015『あゝ、016ああして信徒(しんと)自分(じぶん)(むか)へて()れて()るが、017ゆつくりと蒙古(もうこ)(はなし)をする時間(じかん)(あた)へられず、018諸所(しよしよ)警察(けいさつ)から警察(けいさつ)へと(おく)られ、019二三日(にさんにち)(うち)には、020目出度目出度(めでためでた)若松(わかまつ)さまでは()うて、021よしもあしきも難波江(なにはえ)若松監獄(わかまつかんごく)未決収監(みけつしうかん)()とならねばならぬ。022自分(じぶん)空前絶後(くうぜんぜつご)大業(たいげふ)(くはだ)て、023不幸(ふかう)にして中途(ちうと)帰国(きこく)するの()むを()ざるに立到(たちいた)つたのも、024神界(しんかい)御経綸(ごけいりん)として是非(ぜひ)なき(こと)である。025(また)(べつ)(おほ)きい心配(しんぱい)もしてゐない。026乍然(しかしながら)妻子(さいし)027兄弟(きやうだい)028役員(やくゐん)信者(しんじや)(こころ)(うち)はどんなであらう』
029(など)(おも)へば万感(ばんかん)(むね)()ち、030不思不知(おもはずしらず)両眼(りやうがん)(なみだ)がにじみ()た。031(われ)(わが)()(こころ)を、032とり(なほ)し、
033『エー、034馬鹿々々(ばかばか)しい、035こんな()(よわ)(こと)でどうして天下(てんか)(すく)神業(しんげふ)奉仕(ほうし)する(こと)出来(でき)やうか、036比較的(ひかくてき)……人間(にんげん)()ふものは(つよ)いやうでも(よわ)いものだなア』
037自分(じぶん)(こころ)をたしなめたり(あざけ)つたりもし(なが)ら、038(とき)(うつ)るを()つてゐると、039門司署(もじしよ)(また)()げられては大変(たいへん)だとでも(おも)つたものか、040数多(あまた)信者(しんじや)(えき)(はう)()ひやり、041倉皇(さうくわう)として日出雄(ひでを)042真澄別(ますみわけ)(その)()小蒸汽(こじようき)()せ、043下関署(しものせきしよ)(おく)(とど)けた。044下関署(しものせきしよ)()つて()ると信者(しんじや)らしいものは一人(ひとり)()てゐない。045(しば)らく休憩(きうけい)(のち)046下関署員(しものせきしよいん)三名(さんめい)(おく)られて自動車(じどうしや)(きやく)となると、047直霊(なほひ)警察(けいさつ)門口(かどぐち)()つてゐた。
048 内地(ないち)(かへ)つてから(はじ)めて()青物店屋(あをものや)西瓜(すゐくわ)甜瓜(うり)049バナナ、050林檎(りんご)(とう)が、051うまさうに(かむば)しい(かをり)()てて蒙古(もうこ)荒野(くわうや)をさまようた(はな)非常(ひじやう)刺戟(しげき)する。052久振(ひさしぶ)りで(ひと)西瓜(すゐくわ)()つて()たらなア』と(おも)へど、053そんな気儘(きまま)()ふては(わる)からうと遠慮(ゑんりよ)した。
054 (えき)につくと(あせ)をタラタラ(なが)(なが)柴田(しばた)健次郎(けんじらう)()(ただ)一人(ひとり)055あわてて()んで()た。056護送(ごそう)警官(けいくわん)(とも)三等室(さんとうしつ)()つて()ると、057直霊(なほひ)058井上会長(ゐのうへくわいちやう)059東尾(ひがしを)060湯浅(ゆあさ)(その)()役員(やくゐん)信者(しんじや)満載(まんさい)されてゐた。061()いで大竹(おほたけ)062上郡(かみごほり)(とう)警察(けいさつ)拘留所(かうりうじよ)一泊(いつぱく)(なが)大阪(おほさか)へと(むか)ふのであつた。063大竹警察署(おほたけけいさつしよ)()()かして(もら)ひ、064(たらひ)行水(ぎやうずゐ)をやつた。065体量(たいりやう)(とみ)(げん)じて十五貫(じふごくわん)五百目(ごひやくめ)066(かた)(ほね)(とが)り、067肋骨(ろくこつ)(たか)(あら)はれてゐるのを()て、068背中(せなか)(なが)しに()加藤(かとう)明子(はるこ)が あた外聞(ぐわいぶん)(わる)い──()くのには一寸(ちよつと)面喰(めんく)らはざるを()なかつた。069上郡(かみごほり)では真澄別(ますみわけ)一所(いつしよ)(あたら)しい拘留所(かうりうじよ)一夜(いちや)()かし、070神戸駅(かうべえき)()くと沢山(たくさん)出迎人(でむかへにん)がやつて()一々(いちいち)挨拶(あいさつ)をする。071二代(にだい)072宇知丸(うちまる)上郡駅(かみごほりえき)から一所(いつしよ)であつた。073相生橋署(あひおひばししよ)()大阪駅(おほさかえき)下車(げしや)するや、074見物人(けんぶつにん)(あり)(やま)(ごと)く、075毎日新聞(まいにちしんぶん)活動写真隊(くわつどうしやしんたい)各新聞社(かくしんぶんしや)がレンズを()けて()(かま)へてゐる(なか)を、076人波(ひとなみ)()けて人力車(じんりきしや)()り、077曽根崎署(そねざきしよ)へと(おく)られ、078()いで天満署(てんましよ)拘留所(かうりうじよ)三十分(さんじつぷん)ばかり()()まれ、079同署(どうしよ)裏門(うらもん)から徒歩(とほ)にて若松支所(わかまつししよ)()かむとするや、080大本(おほもと)役員(やくゐん)信者(しんじや)(およ)見物人(けんぶつにん)(やま)(ごと)雑踏(ざつたふ)(きは)めた。081支所(ししよ)入口(いりぐち)には(また)もや沢山(たくさん)新聞社(しんぶんしや)写真班(しやしんはん)()(かま)へてゐて、082(さか)んにシヤツターの(おと)をさせてゐる。083(この)(もん)(くぐ)るや(いな)や、084信愛(しんあい)なる役員(やくゐん)信者(しんじや)(わか)れねばならぬ。085(ほとん)(くら)(あな)へでも、086もぐり()むやうな気分(きぶん)(ただよ)ふてゐた。087(ただち)支所長(ししよちやう)(しつ)(みちび)かれ、088()第一(だいいち)()(たか)さや、089(からだ)目方(めかた)や、090身体(しんたい)特徴(とくちやう)などを調(しら)べた(うへ)091前以(まへもつ)差入(さしい)れてあつた(かる)浴衣(ゆかた)着換(きか)へ、092支所長(ししよちやう)役人気離(やくにんぎはな)れての打解話(うちとけばなし)に、093蒙古(もうこ)()ける奮戦苦闘(ふんせんくたう)状況(じやうきやう)面白(おもしろ)()かせ署長(しよちやう)をアツと()はせ、094(ただ)ちに、095同所(どうしよ)二階(にかい)九十八号(きうじふはちがう)収容(しうよう)されて(しま)つた。096(この)(しつ)(きた)(まど)があけてあり、097さうして建物(たてもの)()つてゐないので風当(かぜあた)りが非常(ひじやう)によい、098そして(まど)からのぞけば梅田(うめだ)停車場(ていしやば)附近(ふきん)まで()られる、099支所内(ししよない)第一(だいいち)上等室(じやうとうしつ)であつた。100どの(しつ)もどの(しつ)独房(どくばう)横巾(よこはば)四尺(よんしやく)101(たて)七尺(しちしやく)(きやう)にて(ほと)んど一坪(ひとつぼ)()らない狭隘(けふあい)なる西洋式(せいやうしき)監房(かんばう)である。102その(なか)布団(ふとん)()き、103手水(てふづ)使(つか)ひ、104荷物(にもつ)()大小便(だいせうべん)もやらねばならぬ。105おきて半畳(はんでふ)106()一畳(いちでふ)といつも(さと)つた(かほ)して()つて()つても、107実際(じつさい)108こんな(ところ)突込(つつこ)まれたのは()なりつらかつた。109渺茫(べうばう)として(てん)につらなる蒙古(もうこ)野辺(のべ)に、110ツツパリのない(そら)屋根(やね)となし際限(さいげん)もない大地(だいち)(しとね)となしてグウグウと()てゐた(こと)(おも)へば、111(にはか)に、112(ざう)黴菌(ばいきん)変化(へんくわ)したやうな気分(きぶん)になつた。113当年(たうねん)特別(とくべつ)暑熱(しよねつ)(はげ)しく、114(ほと)んど()へきれない(ほど)で、115身体(からだ)一面(いちめん)から(あぶら)のやうな(あせ)()じみ()る、116(まど)はあつても六尺(ろくしやく)(うへ)にあいてゐるのだから、117あまり(すず)しくもない。118乍然(しかしながら)パインタラの遭難(さうなん)(こと)(おも)へば、
119『マアマア結構(けつこう)だ、120ここに()れば生命(いのち)大丈夫(だいぢやうぶ)だ、121(いま)こそ、122こんな(せま)(ところ)(かひこ)(さなぎ)のやうに(まゆ)(なか)にすつこんでゐるが、123メツタに熱湯(にえゆ)(なか)(はう)()まれて(ころ)される心配(しんぱい)()らず、124やがて(この)(から)(やぶ)つて(てふ)孵化(ふくわ)し、125沢山(たくさん)()()んで(ふたた)再生(さいせい)(はる)()ふ』
126のを唯一(ゆゐいつ)(たの)しみとなし二日(ふつか)三日(みつか)()(おく)つた。127今迄(いままで)刑務所(けいむしよ)へは法律(はふりつ)(くわん)する書籍(しよせき)宗教(しうけう)(くわん)する書籍(しよせき)(ほか)差入(さしいれ)(ゆる)されなかつたのが、128一ケ月(いつかげつ)以前(いぜん)から(かた)のこらぬ講談(かうだん)雑誌(ざつし)面白倶楽部(おもしろくらぶ)その()時事(じじ)(くわん)するものも差入(さしいれ)(ゆる)(こと)となり、129非常(ひじやう)無聊(ぶれう)(なぐさ)むるに都合(つがふ)よくなつてゐた。130(また)(かみ)(くに)』や『霊界物語(れいかいものがたり)』の差入(さしいれ)(ゆる)されたので、131ゐながらにして大本(おほもと)状況(じやうきやう)()(こと)()た。132(しか)し、133いい(こと)があればその反面(はんめん)(わる)(こと)のあるものだ。134大本(おほもと)役員(やくゐん)債権問題(さいけんもんだい)について(あを)くなつてゐる(こと)や、135(あらた)債権者(さいけんしや)が、136きびしい請求(せいきう)(はじ)めた(こと)(わか)つて非常(ひじやう)()がゆく(おも)つたが、137(なん)()つても(とらは)れの()138自由(じいう)()かぬのに(すこ)しく当惑(たうわく)せざるを()なかつた。139役員(やくゐん)信者(しんじや)面会(めんくわい)140弁護士(べんごし)面会(めんくわい)にて午前中(ごぜんちう)相当(さうたう)(いそが)しく、141隔日(かくじつ)葉書(はがき)()く、142一週間目(いつしうかんめ)散髪(さんぱつ)をする、143四日目(よつかめ)(ぐらゐ)風呂(ふろ)這入(はい)る、144医者(いしや)診察(しんさつ)()ける、145その(あひだ)筆硯(ひつけん)(にぎ)つて詩歌(しいか)()きつける、146面白(おもしろ)小説(せうせつ)()む、147随分(ずゐぶん)()()るに(したが)つて手紙(てがみ)(すう)()えて()るなり、148(いそが)しさを(かん)じて()た。149その()九十八日間(きうじふはちにちかん)収監(しうかん)もあまり(なが)くは(かん)じなかつたのである。150殺人犯(さつじんはん)暴動罪(ばうどうざい)詐欺(さぎ)151泥棒(どろぼう)(とう)未決囚(みけつしう)(とも)に、152日曜(にちえう)(のぞ)(ほか)毎日(まいにち)看守(かんしゆ)(おく)られて(なが)廊下(らうか)(わた)面会所(めんくわいじよ)順番(じゆんばん)()るのを()つてゐた。153その(あひだ)には種々(しゆじゆ)面白(おもしろ)(はなし)()き、154彼等(かれら)心理状態(しんりじやうたい)知悉(ちしつ)する(こと)()た。155足立弁護士(あだちべんごし)がやつて()て、156その(すぢ)諒解(りやうかい)()()いたから、157()ぐに保釈(ほしやく)許可(きよか)になるだらうから安心(あんしん)せよと()つた。158自分(じぶん)是非(ぜひ)一度(いちど)(かへ)つて(はや)蒙古事情(もうこじじやう)役員(やくゐん)信者(しんじや)(はな)して安心(あんしん)させ()いと(おも)つた矢先(やさき)だから、159一日(いちにち)(はや)出監(しゆつかん)()いと(おも)つてゐると、160(はら)(れい)()より大変(たいへん)都合(つがふ)(わる)(なが)たらしい書面(しよめん)日出雄(ひでを)()(あて)()()んで()た、161その結果(けつくわ)はたうとう保釈(ほしやく)もオジヤンになり、162九十八日間(きうじふはちにちかん)入牢(にふろう)せなくてはならぬやうな破目(はめ)になつたのである。163乍然(しかしながら)その(かん)精神(せいしん)修養(しうやう)をなし、164(いま)日蓮(にちれん)予言録(よげんろく)蒙古王国(もうこわうこく)(ゆめ)(など)()日出雄(ひでを)記事(きじ)()み、165沢山(たくさん)信徒(しんと)から(おく)つて()名所(めいしよ)ハガキを()て、166非常(ひじやう)面白(おもしろ)(たの)しく入獄(にふごく)()たる(こと)(わす)れ、167(なつ)(あき)とを()らぬ()(おく)つて(しま)つたのである。168入監中(にふかんちう)沢山(たくさん)面白(おもしろ)(ゆめ)()た。169その一二(いちに)をここに()()めておかう。
170 (きう)七月(しちぐわつ)十五日(じふごにち)()171十七八歳(じふしちはつさい)女神(めがみ)忽然(こつぜん)(あら)はれて自分(じぶん)朝日煙草(あさひたばこ)一ケ(いつこ)手渡(てわた)し……莞爾(くわんじ)として姿(すがた)()(たま)ふた。172自分(じぶん)()()めてから、173やがて岩戸(いはと)(ひら)くだらう、174朝日(あさひ)煙草(たばこ)(たま)はつたから。175(しか)しユツクリ一服(いつぷく)して時節(じせつ)()てとの(こと)だらう、176到底(たうてい)ここ五日(いつか)十日(とをか)(うち)出獄(しゆつごく)する(こと)出来(でき)ないだらうと(かん)じたのであつた。
177 それから四五日(しごにち)すると、178北海道(ほくかいだう)自分(じぶん)巡教(じゆんけう)()くと(おほ)きな南瓜畑(かぼちやばたけ)があり、179南瓜(かぼちや)(つく)(ぬし)自分(じぶん)にその(うち)(もつと)(だい)なるものを、180むしり()り、181二個(にこ)()れた(ゆめ)()た。182出獄(しゆつごく)して綾部(あやべ)(かへ)つて()ると、183四五日(しごにち)してから北海道(ほくかいだう)信者(しんじや)が、184日出雄(ひでを)(ゆめ)()同様(どうやう)南瓜(かぼちや)二個(にこ)()つて()てくれたのには、185(ゆめ)適中(てきちう)した(こと)感歎(かんたん)せずには()られなかつた。
186 (しん)十月(じふぐわつ)中頃(なかごろ)187本宮山(ほんぐうやま)のやうな丘陵(きうりよう)があつて、188その山麓(さんろく)自分(じぶん)(はは)二人(ふたり)(ある)いてゐると、189(はは)姿(すがた)(にはか)()えなくなつた。190自分(じぶん)(やま)(なか)へでも(はは)(かく)れたのではないかと(おも)ひ、191小山(こやま)南麓(なんろく)から青々(あをあを)とした萱草(かやくさ)()けつつ(のぼ)つて()ると、192大本信者(おほもとしんじや)一人(ひとり)一生懸命(いつしやうけんめい)一丁(いつちやう)ばかりの(あひだ)雑木(ざふき)()り、193(つち)()きならして三間(さんげん)(ばか)りの(みち)(ひら)いてゐる。194そこを(ある)いて(あが)つて()くと、195十字形(じふじがた)大道(だいだう)貫通(くわんつう)してゐた。196つまり(ふさ)がつてゐたのは五六十間(ごろくじつけん)(ばか)りの(あひだ)であつた。197こりや屹度(きつと)保釈(ほしやく)(ゆる)されて(ちか)(うち)()られだらうと(かん)じた。
198 その(つぎ)自分(じぶん)非常(ひじやう)(たか)(とが)つた岩山(いはやま)(うへ)に、199いつしか(のぼ)つてゐたが、200何処(どこ)からも(くだ)(みち)がない、201どうしやうかと(おも)つてゐると、202白馬(はくば)二頭(にとう)(あら)はれて、203(てつ)のくさりを(くは)へて自分(じぶん)()(いは)(うへ)にガチリと(おと)をさせて()けおき、204(やま)横腹(よこはら)一瀉千里(いつしやせんり)(いきほひ)(かへ)つて(しま)つた。205()()めてから、206自分(じぶん)(ため)活路(くわつろ)(ひら)くべく獅子(しし)奮迅(ふんじん)活躍(くわつやく)をしてゐる信者(しんじや)のある(こと)(かん)じた。
207 (つぎ)本宮山(ほんぐうやま)東麓(とうろく)傾斜地(けいしやち)を、208中野(なかの)岩太(いはた)()一生懸命(いつしやうけんめい)()きならし、209行儀(ぎやうぎ)よく小松(こまつ)()ゑてゐた(ゆめ)()た。
210 (ある)()真澄別(ますみわけ)面会(めんくわい)()()ふのは、
211先生(せんせい)212(わたし)霊眼(れいがん)十一(じふいち)()(こと)()せて(いただ)きましたが、213どう()(こと)でせうか』
214(たづ)ねたので日出雄(ひでを)は、
215『フン、216大方(おほかた)(じふ)(いち)()(こと)だらう、217十中(じつちう)()まで保釈(ほしやく)(ゆる)されないのかも()れない。218(また)(かんが)へて()れば十中(じつちう)十一(じふいち)(まで)無罪(むざい)になる(こと)かも()れぬ』
219()つて(わら)つて(わか)れた。220(しか)るに日出雄(ひでを)保釈(ほしやく)決定(けつてい)したのは(きう)十月(じふぐわつ)一日(いちにち)であり、221若松支所(わかまつししよ)()たのは新暦(しんれき)十一月(じふいちぐわつ)一日(いちにち)午前(ごぜん)十一時(じふいちじ)十一分(じふいつぷん)であつた。222十五貫(じふごくわん)五百目(ごひやくめ)体量(たいりやう)(げん)じてゐた自分(じぶん)は、223九十八日間(きうじふはちにちかん)監房生活(かんばうせいくわつ)結果(けつくわ)十七貫(じふしちくわん)六百目(ろつぴやくめ)体量(たいりやう)()してゐた。224支所長(ししよちやう)(はじ)所内(しよない)役人(やくにん)全部(ぜんぶ)見送(みおく)られて門内(もんない)()ると、225大本(おほもと)役員(やくゐん)信者(しんじや)数百名(すうひやくめい)226(その)()新聞記者(しんぶんきしや)(およ)大阪市内(おほさかしない)見物人(けんぶつにん)黒山(くろやま)(ごと)くに沿道(えんだう)堵列(とれつ)してゐる。227小雨(こさめ)がシヨボシヨボと()つてゐる(なか)を、228さぬきや旅館(りよくわん)這入(はい)り、229ここにて数多(あまた)信者(しんじや)食卓(しよくたく)(とも)にし、230無事(ぶじ)帰綾(きりよう)する(こと)となつた。
231 これより(さき)232聖地(せいち)では秋季大祭(しうきたいさい)があり、233分所支部長会議(ぶんしよしぶちやうくわいぎ)(はじ)まり財政整理問題(ざいせいせいりもんだい)について、234かなりの激論(げきろん)(はじ)まつてゐた。235そこへ保釈許可(ほしやくきよか)電報(でんぱう)大阪(おほさか)弁護士(べんごし)からついたので、236今迄(いままで)争論(そうろん)(みづ)(あわ)(ごと)()え、237(いづ)れも一斉(いつせい)神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、238それより一同(いちどう)打揃(うちそろ)ふて大阪(おほさか)(むか)へに()たのであつた。
239 これで蒙古入(もうこいり)大芝居(おほしばゐ)一寸(ちよつと)黒幕(くろまく)()りたやうなものである。
240大正一四・八・一六 北村隆光筆録)