二十一二歳の頃
徴兵の検査に召され丈の高さ五尺二寸で乙種にまはさる
穴太より適齢の者四人ありていづれも丙種乙種のみなる
悪戯の太吉は身の丈四尺九寸山椒は小粒でも辛いと威張りぬ
細うても樫の木強いと腕まくり負け惜しみいふ太吉をかしき
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十八になりたる春よりあほら誌といふ月刊に投書始めぬ
狂歌狂句都都逸戯文を作成し月月かかさず投書したりき
あほら誌の刊行日をば待ちかねて唯一の慰安と楽しみ暮しぬ
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偕行社冠句の会に出句して天位をもらひしときの嬉しさ
ひきつづき三年間に冠句巻四十八冊とりたる若き日
度変窟烏峯宗匠朝寝坊閑楽宗匠に冠句まなべり
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百姓の閑散な日は荷車を曳きてかよへり京都と伏見に
京都市や伏見の菓子屋に原料の種粉をいつも配りて行けり
ひと袋種粉の袋やぶれをり土にこぼして弁償させらる