第二九章 言霊解(げんれいかい)三〔四五九〕

001(つぎ)()(まが)(なほ)さむと()()りませる(かみ)御名(みな)は、002神直日(かむなほひの)(かみ)003(つぎ)大直日(おほなほひの)(かみ)004(つぎ)伊都能売(いづのめの)(かみ)
005 神直日(かむなほひの)(かみ)宇宙(うちう)主宰(しゆさい)(かみ)直霊魂(ちよくれいこん)にして、006大直日(おほなほひの)(かみ)天帝(てんてい)霊魂(れいこん)分賦(ぶんぷ)たる吾人(ごじん)霊魂(れいこん)をして完全(くわんぜん)無疵(むし)たらしめむとする直霊(ちよくれい)である。007所謂(いはゆる)罪科(つみとが)未萠(みぼう)(ふせ)至霊(しれい)にして、008大祓(おほはらひ)祝詞(のりと)に、009(これ)気吹戸主(いぶきどぬしの)(かみ)(まを)すのである。010(また)八十(やそ)曲津(まがつ)(ひの)(かみ)011大曲津(おほまがつ)(ひの)(かみ)は、012大祓(おほはらひ)祝詞(のりと)に、013(これ)瀬織津(せおりつ)(ひめの)(かみ)()ひ、014伊都能売(いづのめの)(かみ)(はや)秋津彦(あきつひこの)(かみ)015(はや)秋津姫(あきつひめの)(かみ)()ひ、016(かむ)素盞嗚(すさのをの)(かみ)(はや)佐須良(さすら)(ひめの)(かみ)(まを)すのである。017以上(いじやう)四柱(よはしら)(かみ)(さま)総称(そうしよう)して祓戸(はらひど)大神(おほかみ)()ふのであります。
018 (すなは)伊邪那岐(いざなぎの)(みこと)黄泉津(よもつの)(くに)汚穢(をゑ)混濁(こんだく)払滌(ふつでう)せむとして、019筑紫(つくし)日向(ひむか)(たちばな)小戸(をど)阿波岐(あはぎ)(はら)に、020禊身(みそぎ)(はら)ひの神業(しんげふ)(しう)(たま)ひし(とき)()れませる大神(おほかみ)なるは前陳(ぜんちん)(とほ)りである。
021 大曲津(おほまがつ)(ひの)(かみ)は、022大神(おほかみ)神勅(しんちよく)(ほう)じて邪神(じやしん)誅征(ちうせい)討伐(たうばつ)(たま)大首領(だいしゆりやう)(にん)(あた)(かみ)であつて八十(やそ)曲津(まがつ)(ひの)(かみ)指揮(しき)使役(しえき)(たま)(かみ)である。023(これ)現界(げんかい)移写(いしや)する(とき)は、024大君(おほぎみ)勅命(ちよくめい)(かしこ)みて征途(せいと)(のぼ)(そう)司令官(しれいくわん)役目(やくめ)である。025以下(いか)将卒(しやうそつ)は、026(すなは)八十(やそ)曲津(まがつ)(ひの)(かみ)(さま)であります。027()(さら)直日(なほひ)直霊(ちよくれい))と曲霊(まがひ)について()大要(たいえう)(しめ)して()きます。
 
028   直霊(ちよくれい)
 
029直日(なほひ)(れい)荒魂(あらみたま)(なか)にも、030和魂(にぎみたま)(なか)にも、031奇魂(くしみたま)(なか)にも、032幸魂(さちみたま)(なか)にも含有(がんいう)さる。033四魂中(しこんちう)各自(かくじ)(きは)めて(うる)はしく、034(いた)つて(くは)しき(みたま)名称(めいしよう)にして、035善々(ぜんぜん)美々(びび)なるものを()ふ。
036直霊(なほひ)過失(くわしつ)未萠(みぼう)消滅(せうめつ)せしむるの能力(のうりよく)あり。037四魂(しこん)各自(かくじ)(もち)ゐて(ちよく)(その)(うち)にあり、038()(すなは)直霊(なほひ)なり、039神典(しんてん)(これ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)()ふ。040始祖(しそ)所名(しよめい)なり。
041直霊(なほひ)平時(へいじ)(あらは)れず、042(こと)(あた)つて発動(はつどう)す。
043神直日(かむなほひ)とは、044天帝(てんてい)本霊(ほんれい)たる四魂(しこん)具有(ぐいう)せる直霊魂(ちよくれいこん)()ふ。
045大直日(おほなほひ)とは、046吾人(ごじん)上帝(じやうてい)より賦与(ふよ)せられたる(わが)(みたま)(なか)具有(ぐいう)せる直霊魂(ちよくれいこん)()ふ。
直霊の図表
[#図 直霊の図表]
047   曲霊(きよくれい)
 
048曲霊(きよくれい)神典(しんてん)(これ)八十(やそ)曲津(まがつ)(かみ)049大曲津(おほまがつ)(かみ)()ふ。
050八十(やそ)曲津(まがつ)(かみ)吾人(ごじん)霊魂(れいこん)以外(いぐわい)()りて災禍(わざはひ)()曲霊(きよくれい)なり。051大曲津(おほまがつ)(かみ)吾人(ごじん)霊魂中(れいこんちう)(ひそ)みて災禍(さいくわ)()曲霊(きよくれい)なり。
052曲霊(きよくれい)なるものは(ことごと)罪悪(ざいあく)汚穢(をゑ)より湧出(ゆうしゆつ)するものなり。
053曲霊(きよくれい)054荒魂(あらみたま)(みだ)るときは(あらそ)ひとなり、055和魂(にぎみたま)(みだ)るときは(あく)となり、056幸魂(さちみたま)(みだ)るときは(ぎやく)となり、057奇魂(くしみたま)(みだ)るときは(きやう)となる。
058曲霊(きよくれい)(たい)(おも)んじ(れい)(かろ)んずるに()りて()()づる悪霊(あくれい)なり。
059曲霊(きよくれい)世俗(せぞく)所謂(いはゆる)悪魔(あくま)なり、060邪神(じやしん)なり、061妖魅(えうみ)なり、062探女(さぐめ)なり。
曲霊の図表
[#図 曲霊の図表]
063   神明(しんめい)戒律(かいりつ)
 
064(しやう)065()066(くわい)067()068(かく)五情(ごじやう)霊魂中(れいこんちう)含有(がんいう)す、069(すなは)神明(しんめい)戒律(かいりつ)なり。070末世(まつせ)無識(むしき)071(みだり)戒律(かいりつ)(つく)り、072後学(こうがく)眩惑(げんわく)し、073知識(ちしき)開発(かいはつ)妨害(ばうがい)す、074神府(しんぷ)罪奴(ざいど)()()し。
神明の戒律の図表
[#図 神明の戒律の図表]
075釈迦(しやか)十戒(じつかい)()ひ、076基督(キリスト)十戒(じつかい)()ひ、077(その)()学者(がくしや)神道者(しんだうしや)唱導(しやうだう)する戒律(かいりつ)は、078悉皆(しつかい)浅薄(せんぱく)偏狭(へんけふ)079頑迷(ぐわんめい)固執(こしつ)にして社会(しやくわい)発達(はつたつ)080人智(じんち)開明(かいめい)大害(たいがい)()すものなり。
081(ひと)天帝(てんてい)御子(みこ)なり、082神子(みこ)たるもの、083(しん)(ちち)たり(はは)たる上帝(じやうてい)より賦与(ふよ)せられたる至明(しめい)至聖(しせい)なる戒律(かいりつ)度外視(どぐわいし)し、084(ひと)智慮(ちりよ)()つて作為(さくゐ)したる不完全(ふくわんぜん)なる戒律(かいりつ)(たて)(たの)み、085(もつ)(こころ)(きよ)(とく)(おこな)ひ、086向上(こうじやう)発展(はつてん)し、087立命(りつめい)せむとするは()骨頂(こつちやう)にして、088(あたか)()()つて(うを)(もと)めむとするが(ごと)し。
089(かへりみ)る。090この戒律(かいりつ)(うしな)ひたる(とき)は、091直霊(なほひ)(ただち)曲霊(きよくれい)(へん)ず。
092(はぢ)る。093この戒律(かいりつ)(うしな)ひたる(とき)は、094荒魂(あらみたま)(ただち)争魂(さうこん)(へん)ず。
095(くい)る。096この戒律(かいりつ)(うしな)ひたる(とき)は、097和魂(にぎみたま)(ただち)悪魂(あくこん)(へん)ず。
098(おそ)る。099この戒律(かいりつ)(うしな)ひたる(とき)は、100幸魂(さちみたま)(ただち)逆魂(ぎやくこん)(へん)ず。
101(さと)る。102この戒律(かいりつ)(うしな)ひたる(とき)は、103奇魂(くしみたま)(ただち)狂魂(きやうこん)(へん)ず。
 
104   直霊(ちよくれい)五情(ごじやう)曲霊(きよくれい)(かい)
直霊五情曲霊の図表
[#図 直霊五情曲霊の図表]
105荒魂(あらみたま)(ゆう)なり、106(ゆう)(はたらき)(しん)なり(くわ)なり(ふん)なり(べん)なり(こく)なり。
107和魂(にぎみたま)(しん)なり、108(しん)(はたらき)(へい)なり(しう)なり(さい)なり()なり(かう)なり。
109幸魂(さちみたま)(あい)なり、110(あい)(はたらき)(えき)なり(ざう)なり(せい)なり(くわ)なり(いく)なり。
111奇魂(くしみたま)()なり、112()(はたらき)(かう)なり(かん)なり(さつ)なり(かく)なり()なり。
四魂の体と用の図表
[#図 四魂の体と用の図表]
113   ()
 
114()四魂(しこん)(おのおの)()()り、115(しか)して(さい)116(せい)117(かつ)118(だん)校定版・八幡版では「裁、制、断、割」に修正されている。(つかさど)(なり)
119()れを四魂(しこん)(はい)せば(さい)()なり、120(せい)(しん)なり、121(だん)(ゆう)なり、122(かつ)(あい)なり。
123(さい)弥縫(びほう)補綴(ほてつ)()()ね、124(せい)政令(せいれい)法度(ほふど)()()ね、125(だん)果毅(くわき)敢為(かんゐ)()()ね、126(かつ)忘身(ばうしん)殉難(じゆんなん)()()ぬ。
127 ▲(せい)(せい)なり、128(れい)()なり、129(ほふ)(こう)なり、130()(どう)なり。
131(あやまち)()(あらた)むるは()なり。
義の図表
[#図 義の図表]
132   (よく)
 
133(よく)四魂(しこん)より()でて(しか)して()併立(へいりつ)す。134(ゆゑ)()(さい)(せい)(だん)(かつ)(たい)して、135(めい)136()137寿(じゆ)138(ふう)となる。139(めい)()(ほつ)し、140()(かう)(ほつ)し、141寿(じゆ)(ちやう)(ほつ)し、142(ふう)(だい)(ほつ)す。
欲の図表
[#図 欲の図表]
伊都能売の図表
[#図 伊都能売の図表]
143 経魂(けいこん)たる荒和(くわうわ)二魂(にこん)主宰(しゆさい)する神魂(しんこん)(いづ)御魂(みたま)()ひ、144緯魂(ゐこん)たる奇幸(きかう)二魂(にこん)主宰(しゆさい)する神魂(しんこん)(みづ)御魂(みたま)()ひ、145厳瑞(げんずゐ)合一(がふいつ)したる至霊(しれい)伊都能売(いづのめの)御魂(みたま)()ふのである。
146大正九・一・一五 講演筆録 谷村真友