霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 舗照(ほてる)〔一五一四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第59巻 真善美愛 戌の巻 篇:第3篇 地底の歓声 よみ(新仮名遣い):ちていのかんせい
章:第14章 舗照 よみ(新仮名遣い):ほてる 通し章番号:1514
口述日:1923(大正12)年04月02日(旧02月17日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年7月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三千彦と伊太彦はデビス姫とともにチルテルの館を抜け出そうと、庭先を木蔭に隠れながら進んで行った。すると足元の落とし穴にかかり、滑り落ちてしまった。三人は怪我もなく地底の一間に安着した。そこには思いもよらぬ広い洞があり、燐光がきらめいていた。
辺りには燐鉱があってその光が洞窟内を照らしている。三人が出口を探していると、伊太彦は広い岩室があるのを見つけた。筵が敷き詰めてあったので、三人はそこで休んだ。
地上が明るくなると、どこからともなく光がさしてきて、燐鉱は弱まった。伊太彦は岩室の入り口に宿屋の番頭を気取って頬杖ついて横たわっている。そこへヘールが落ちてきた。
落とし穴の底で声をかけられたヘールは驚いたが、伊太彦は近頃ここで岩窟ホテルを開業したのだとからかう。ヘールは面白がって部屋に入って行く。
次にチルテルが落ち込んできた。チルテルは、ここは自分の館内の落とし穴だと伊太彦にくってかかるが、伊太彦は番頭ぶった滑稽を並べ立て、煙に巻いてしまう。チルテルもいぶかりながら部屋に入って行く。
部屋に入ってきたヘールが、三千彦とデビス姫をホテルの従業員扱いするので、二人はいぶかっている。チルテルがやってきたのを見たヘールは、テクに相撲で負けたことをからかう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-05-06 16:03:34 OBC :rm5914
愛善世界社版:186頁 八幡書店版:第10輯 551頁 修補版: 校定版:197頁 普及版: 初版: ページ備考:
001(かみ)(をしへ)三千彦(みちひこ)第8章#141の後のエピソード
002デビスの(ひめ)(すく)()
003伊太彦(いたひこ)(つかさ)諸共(もろとも)
004チルテル(やかた)庭前(にはさき)
005木蔭(こかげ)()をば(かく)しつつ
006意気(いき)揚々(やうやう)(かへ)()
007(たちま)足元(あしもと)バツサリと
008(おも)()けなき底脱(そこぬ)けの
009(すべ)()ちたる陥穽(おとしあな)
010三人(みたり)(なん)怪我(けが)もなく
011地底(ちてい)一間(ひとま)安着(あんちやく)
012四辺(あたり)()れば摩訶(まか)不思議(ふしぎ)
013(おも)ひもよらぬ(ひろ)(ほら)
014(ひかり)きらめく燐光(りんくわう)
015常磐(ときは)堅磐(かきは)(いは)(あな)
016黒白(あやめ)(わか)(やみ)()
017光明(くわうみやう)世界(せかい)(のぼ)りたる
018心地(ここち)(なが)悠々(いういう)
019三人(みたり)()をばつなぎつつ
020蒲鉾(かまぼこ)なりの大道(だいだう)
021(すす)むが(ごと)くスタスタと
022(あし)(まか)せて(さぐ)()く。
023伊太(いた)(なん)だかバツサリと地底(ちてい)()ちた(やう)()がしたと(おも)へば024四辺(あたり)はキラキラと(ひか)(かがや)光明(くわうみやう)世界(せかい)だ。025(さて)(さて)不思議(ふしぎ)(こと)があるものだな。026三千彦(みちひこ)さま、027吾々(われわれ)(ゆめ)でも()てゐるのぢやありますまいかな』
028三千(みち)『いや(けつ)して(ゆめ)ではありませぬ。029(てき)術中(じゆつちう)(おちい)陥穽(おとしあな)()()むだのですよ。030(すべ)(この)(へん)地中(ちちう)洞穴(ほらあな)沢山(たくさん)ある(ところ)です。031(この)暗夜(あんや)にキラキラ(ひか)るのは全部(ぜんぶ)燐鉱(りんくわう)です。032(しか)(なが)らここは(むかし)033立派(りつぱ)人間(にんげん)住居(すまゐ)して()(ところ)(ちが)ひありませぬ。034何処(どこ)此処辺(ここら)休息(きうそく)(いた)しませう』
035伊太(いた)比較(ひかく)(てき)スベスベしたよく()れた岩窟(いはや)ですな。036これ(くらゐ)だと何処(どこ)(さが)したら、037沢山(たくさん)座敷(ざしき)がとつてあるに(ちが)(ござ)いませぬわ。038(ひと)念入(ねんい)りに(さが)して()て、039座敷(ざしき)でもあればまア貴方(あなた)()夫婦(ふうふ)新所帯(しんしよたい)をなさいませ。040(わたし)はまア臨時(りんじ)番頭(ばんとう)となつて御用(ごよう)(いた)しませう。041ねえ奥様(おくさま)042結構(けつこう)でせう』
043デビス『ホヽヽヽヽ、044伊太彦(いたひこ)(さま)仰有(おつしや)(こと)045ようまアそんな気楽(きらく)(こと)()つて()られますな。046ここは(てき)屋敷(やしき)047何時(なんどき)煙攻(けむりぜ)めに()はされるやら、048徳利攻(とつくりぜめ)にされるやら(わか)りもせぬのに049本当(ほんたう)貴方(あなた)楽天(らくてん)主義(しゆぎ)ですな』
050伊太(いた)陥穽(おとしあな)からバツサリと地底(ちてい)落転(らくてん)主義(しゆぎ)です。051まアまア(よろ)しいわい。052刹那心(せつなしん)(たのし)みませう。053(あと)には玉国別(たまくにわけ)先生(せんせい)もあり真純彦(ますみひこ)(のこ)つて()りますから、054屹度(きつと)(たづ)()して(わたし)(たち)(すく)つて()れるに(ちが)ひありませぬ。055マア取越(とりこし)苦労(くらう)をせずに(この)瞬間(しゆんかん)(たのし)みませう。056(くや)んで()(とこ)で、057どうにもならぬぢやありませぬか。058(しばら)馬鹿(ばか)になつて()れば(なに)(くる)しい(こと)はありませぬわ。059()(なか)馬鹿(ばか)狂人(きちがひ)になる(くらゐ)幸福(かうふく)はありませぬからな。060(かみ)(さま)始終(しじう)馬鹿(ばか)狂人(きちがひ)になれと仰有(おつしや)りますが061本当(ほんたう)馬鹿(ばか)狂人(きちがひ)(ぐらひ)気楽(きらく)なものは(ござ)いませぬわい、062アツハヽヽヽ』
063三千(みち)『もう()加減(かげん)(あと)引返(ひつかへ)しませう。064何程(いくら)()つても際限(さいげん)がありませぬわ。065これからベルヂスタン、066アフガニスタンの(はう)()くと、067()んな岩窟(いはや)沢山(たくさん)あると()(こと)です。068(しこ)岩窟(いはや)()つて随分(ずいぶん)有名(いうめい)なものもあるからな』
069伊太(いた)()(かく)も、070一度(いちど)念入(ねんい)りに(さが)して()ませう』
071(また)(もと)引返(ひつかへ)其処辺(そこら)(ぢう)(さが)して()ると072自分(じぶん)()()むだ(あな)(よこ)(すこ)(へつこ)んだ(ところ)がある、073伊太彦(いたひこ)はグツと()して()ると(ひろ)岩窟(いはや)があつて、074燐鉱(りんくわう)がキラキラと四辺(あたり)(ひか)つて()る。
075伊太(いた)『ヤ、076有難(ありがた)い、077ここで(しば)らく籠城(ろうじやう)ときめやう。078これ()設備(せつび)出来(でき)()ると食糧(しよくりやう)(みづ)何処(どこ)かにあるだらう』
079(さき)()つて(すす)()る。
080 (さん)(にん)はドシドシ(おく)(すす)むで()ると、081(あし)にガシガシと(さは)るものがある。082よくよく()れば芭蕉(ばせう)()()んだ(むしろ)()きつめてある。
083伊太(いた)『や、084此奴(こいつ)意外(いぐわい)珍座敷(ちんざしき)だ。085まアここで(さん)(にん)(ゆつく)りと雑魚寝(ざこね)(いた)しませう。086(しか)()邪魔(じやま)になれば(しばら)(ひか)へて()ませう』
087デビス(ひめ)(おも)ひきや(しこ)岩窟(いはや)(おと)されて
088(たたみ)(うへ)()ぬる(うれ)しさ。
089菅畳(すがだたみ)いやさや()きて三人(みたり)()
090()夢心地(ゆめごこち)してぞ(うれ)しき』
091伊太彦(いたひこ)(また)しても()(こと)(ばか)仰有(おつしや)るな
092(この)伊太彦(いたひこ)はセリバシーぞや』
093デビス(ひめ)(わらは)とて(かみ)御業(みわざ)()(まで)
094(おな)(おも)ひのセリバシーなり』
095伊太彦(いたひこ)千早(ちはや)()神代(かみよ)()かぬ(いも)()
096セリバシーとは(あや)しかりけり』
097三千彦(みちひこ)(こころ)なき(ひと)三千彦(みちひこ)デビス(ひめ)
098(なか)(あや)しく(おも)ふなるらむ』
099伊太彦(いたひこ)人前(ひとまへ)(かざ)ることなく詳細(まつぶさ)
100()げさせ(たま)鴛鴦(をし)(した)しみ』
101デビス(ひめ)(ただ)()れば夫婦(めをと)(むつ)びせしものと
102(おも)ふなるらむ()人々(ひとびと)は。
103さり(なが)(こころ)健気(けなげ)三千彦(みちひこ)
104(あや)しき(ゆめ)(むす)(たま)はず』
105三千彦(みちひこ)伊太彦(いたひこ)やデビスの(ひめ)村肝(むらきも)
106ゆめ(こころ)をな(いた)(たま)ひそ』
107伊太彦(いたひこ)伊太彦(いたひこ)(こころ)(きみ)(した)しみを
108(かみ)御前(みまへ)(いの)(くら)しつ。
109村肝(むらきも)(こころ)(くば)らせ(たま)ふなく
110妹背(いもせ)(みち)(まも)らせ(たま)へ。
111(いも)()(なか)(へだ)つる伊太彦(いたひこ)
112人目(ひとめ)(かき)思召(おぼしめ)すらむ。
113板垣(いたがき)(くぐ)りて()づる門戸(もんこ)あり
114(ひま)()(こま)(ためし)()らずや。
115()(くに)(そこ)(くに)(まで)()ちしかと
116(おも)ひし(こと)(ゆめ)となりぬる。
117(なん)となく(うら)(いさ)ましくなりにけり
118岩窟(いはや)(なか)にあるを(わす)れて。
119栲褥(たくぶすま)いやさや()きて三人(みたり)()
120()()くるをば()ちつつ(いね)む』
121デビス(ひめ)『いざさらば伊太彦(いたひこ)(つかさ)三千彦(みちひこ)
122(こころ)(さだ)めて(ねむり)()かむ』
123三千彦(みちひこ)村肝(むらきも)(こころ)にかかる(くも)もなし
124(はな)(つき)との(きみ)とありせば』
125伊太彦(いたひこ)(はな)(ひめ)伊太彦(いたひこ)(つかさ)三千彦(みちひこ)
126つきの姿(すがた)となりにけるかな』
127三千彦(みちひこ)伊太彦(いたひこ)やデビスの(ひめ)真心(まごころ)
128(かみ)(よみ)して(すく)(たま)はむ。
129何事(なにごと)(かみ)のまにまに(したが)ひて
130(あま)岩戸(いはと)()くを()たなむ』
131 かく(たがひ)三十一(みそひと)文字(もじ)()(かは)(なが)132(その)()他愛(たあい)もなく(ねむ)らひにけり。
133 地上(ちじやう)世界(せかい)(やうや)(あか)るくなつたと()えて134四辺(あたり)燐鉱(りんくわう)次第(しだい)々々(しだい)(うす)らぎ、135(あたら)しき(ひかり)何処(どこ)ともなく()して()た。136伊太彦(いたひこ)入口(いりぐち)()宿屋(やどや)番頭然(ばんとうぜん)として一人(ひとり)頬杖(ほほづえ)をついて(よこた)はつて()る。137そこへバサリと()ちて()一人(ひとり)(をとこ)がある。138よくよく()ればユゥンケルのヘールなりける。
139伊太(いた)『や、140()らつしやい』
141 ユゥンケルは(この)(こゑ)(おどろ)いて、
142ヘール『や、143あ、144貴方(あなた)何人(なにびと)(ござ)いますか、145何時(いつ)()此処(ここ)にお()しになつたのですか』
146伊太(いた)『つい近頃(ちかごろ)旅館(りよくわん)開業(かいげふ)(いた)しまして147まだ設備(せつび)充分(じうぶん)出来(でき)()りませぬが、148何卒(どうぞ)(あし)(あら)つて(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ。149そして上等(じやうとう)一泊(いつぱく)()(ゑん)150(ただ)昼飯(ちうはん)()きに(いた)しましてで(ござ)います。151昼飯(ちうはん)ともに(しち)(ゑん)(ござ)います。152その(かは)茶代(ちやだい)廃止(はいし)広告(くわうこく)をして()きましたから比較(ひかく)(てき)(やす)いものです。153(しか)茶代(ちやだい)としては(いただ)きませぬが、154土産(みやげ)としてならば(ひやく)(ゑん)でも(せん)(ゑん)でも(すこ)しも辞退(じたい)(いた)しませぬ』
155ヘール『アハヽヽヽ、156(はら)さへヘール(やう)(こと)がなければ辛抱(しんばう)(いた)します。157何分(なにぶん)(この)(ごろ)貧乏神(びんばふがみ)見舞(みまは)れて()りますから、158あまり(たか)宿賃(やどちん)()せませぬ。159どうか二等(にとう)(ぐらゐ)(とこ)でお(ねがひ)(いた)します』
160伊太(いた)開業(かいげふ)匆々(さうさう)設備(せつび)出来(でき)()りませぬから、161チツとは辛抱(しんばう)して(いただ)かねばなりませぬ。162そして()つて(いただ)くものは(なに)もありませぬが、163(おに)(わらび)か、164捻餅(ひねりもち)か、165鼻抓(はなつまみ)団子(だんご)ならば無尽蔵(むじんざう)仕込(しこ)んであるから166(うで)のつづく(まで)()つて(もら)はうと(まま)(ござ)いますわ』
167ヘール『いや、168もう結構(けつこう)です。169()めてさへ(いただ)けばそれで(よろ)しい』
170伊太(いた)『それならお(のぞ)みに(まか)せませう。171(しか)宿賃(やどちん)前金(ぜんきん)(ござ)いますから172(その)(つも)りで(ねが)ひます。173茶代(ちやだい)()りませぬがチツと小便(せうべん)(くさ)(ござ)いますが、174大変(たいへん)(あたた)かくつて丁度(ちやうど)()(ごろ)(ござ)いますよ』
175ヘール『折角(せつかく)()めて(いただ)かうと(おも)ひましたが176小便茶(せうべんちや)()まされちや(たま)りませぬから、177此方(こつち)から小便(せうべん)(いた)します。178(おほ)きに有難(ありがた)う。179(また)(つぎ)宿屋(やどや)()厄介(やくかい)になります』
180伊太(いた)(この)岩窟(がんくつ)ホテルは何処(どこ)へおいでになつても181(みな)(この)伊太屋(いたや)屋敷(やしき)(ござ)います。182伊太屋(いたや)主人(しゆじん)承諾(しようだく)なくては、183どこの(はし)くれにも()(こと)出来(でき)ませぬ。184千日前(せんにちまへ)夜店(よみせ)でさへも地代(ぢだい)をとられるのですから、185そんな(こと)をして()つては商売(しやうばい)()()きませぬからな』
186ヘール『アツハヽヽヽ、187それなら極上等(ごくじやうとう)でお(ねが)(いた)しませう』
188伊太(いた)『いや毎度(まいど)()贔屓(ひいき)有難(ありがた)(ござ)います。189さア何卒(どうぞ)(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ。190デビス(ひめ)()仲居(なかゐ)()り、191三千彦(みちひこ)といふ幇間(たいこもち)()りますから、192()退屈(たいくつ)なれば(なん)なりと(おほ)せつけ(くだ)さいませ。193それが岩窟(がんくつ)ホテルの特色(とくしよく)です。194ウツフヽヽヽ』
195ヘール『それなら()厄介(やくかい)になりませう』
196(おく)()()ばたきし(なが)(すす)()る。
197伊太(いた)『アツハヽヽヽ、198宿屋(やどや)ごつこも面白(おもしろ)いものだ。199(しか)(なが)一晩(ひとばん)()(ゑん)では、200どうも算盤(そろばん)()はぬやうだ。201(あさ)から(ばん)まで(たか)炭火(すみ)()いて炬燵(こたつ)(こしら)へてやらねばならず、202一室(ひとま)(ひと)つづつ火鉢(ひばち)には()()やさぬやうにせねばならず、203不心得(ふこころえ)のお(きやく)になると折角(せつかく)畳替(たたみが)へした(たたみ)煙草(たばこ)()(おと)して(こが)すなり、204蒲団(ふとん)(かた)いの、205(やわらか)いの、206(うす)いの、207(あつ)いの、208(おも)たいの、209(みづ)金気(かなけ)があるの、210なんのと叱言(こごと)(ばか)()かされて……一寸(ちよつと)()(ゑん)()ふと、2101(たか)(やう)だが211懐勘定(ふところかんぢやう)して()ると(あんま)り、212ぼろいものぢやないわい。213アタ邪魔(じやま)(くさ)い、214(いち)()一里半(いちりはん)もある警察(けいさつ)宿帳(やどちやう)()つて()かねばならず、215(なつ)()はまだ()いが216(ふゆ)(ゆき)一丈(いちぢやう)(つも)つた(あひだ)217何程(いくら)(もら)つてもやりきれないわ。218開業(かいげふ)匆々(さうさう)一人(ひとり)のお(きやく)はあつたが219(これ)では如何(どう)(つま)らない。220(さん)(にん)家内(かない)一人(ひとり)(ぐらゐ)(きやく)()めたつて、221そのかすりで如何(どう)して世帯(しよたい)()てるものか。222電燈料(でんとうれう)(はら)はねばならず、223戸数割(こすうわり)相当(さうたう)()けられるなり、224おまけに家賃(やちん)地代(ぢだい)225町内(ちやうない)交際(つきあい)226よう物入(ものい)りのする(こと)だ。227(たれ)大金持(おほがねもち)のお(きやく)さまが(とま)つて228(かね)十千万(とちまん)(りやう)雪隠(せつちん)(なか)(おと)しておいて()れると()いけれどな。229何程(なにほど)山吹色(やまぶきいろ)だと()つても、230雪隠(せつちん)()いとる(やつ)では(くそ)(やく)にも()たず、231あゝ仕方(しかた)()いな、232せめて今晩(こんばん)(きやく)(じふ)(にん)(ぐらゐ)()めたいものだな』
233 ()一人(ひとり)(きよう)がつてゐる(ところ)234(うへ)(はう)からズルズルズル ドスンとさくなだりに()()むで()一人(ひとり)大男(おほをとこ)がある。
235伊太(いた)『もしもし、236貴方(あなた)はテルモン(まゐり)(ござ)いますか。237これから(さき)一寸(ちよつと)宿(やど)(ござ)いませぬから238拙者(せつしや)(たく)(とま)つて()つて(くだ)さいませ。239キヨの湖水(こすい)には海賊船(かいぞくせん)横行(わうかう)(いた)して()ります。240海上(かいじやう)(ぞく)()ぎとられるよりも241弊館(へいくわん)でお(とま)(くだ)さつて(はぎ)とられなさつた(はう)安全(あんぜん)(ござ)いませう』
242チルテル『お(まへ)はどこの(やつ)だ。243ここは(おれ)屋敷内(やしきない)岩窟(がんくつ)だが、244(たれ)(ことわ)つて、245こんな(ところ)()るのだ』
246伊太(いた)借地権(しやくちけん)(すで)登記済(とうきずみ)となり247(この)(いへ)賃貸借(ちんたいしやく)(はふ)によつて、248(いつ)(げつ)四十九(しじふく)(ゑん)始終(しじう)()えぬ)の家賃(やちん)(はら)つて()ます以上(いじやう)は、249矢張(やつぱ)伊太屋(いたや)財産(ざいさん)同様(どうやう)(ござ)います。250サア何卒(どうぞ)(とま)(くだ)さい。251千客(せんきやく)万来(ばんらい)開業(かいげふ)匆々(そうそう)目出度(めでた)(こと)だ。252()姓名(せいめい)(なん)(まを)します。253一寸(ちよつと)宿帳(やどちやう)(しる)して(いただ)きたいものです』
254チルテル『エー、255(まへ)(ひと)馬鹿(ばか)にするのか。256(ただし)(はう)けて()るのか。257ここはホテルでも(なん)でもない、258キヨの関所(せきしよ)庭前(にはさき)陥穽(おとしあな)だ。259つまり(おれ)領分内(りやうぶんない)だ。260グヅグヅ(まを)すと承知(しようち)せぬぞ』
261伊太(いた)成程(なるほど)262貴方(あなた)大家(おほや)(さま)(ござ)いましたか。263これはこれは失礼(しつれい)(いた)しました。264(しか)当家(たうけ)(とま)つて(もら)へば265矢張(やつぱ)宿賃(やどちん)(もら)はねばなりませぬ。266阿呆(あはう)(くに)267野留間(ぬるま)(ぐん)頓馬村(とんまむら)大字(おほあざ)腰抜(こしぬけ)小字(こあざ)失恋(しつれん)268(だい)苦百(くひやく)苦集(くじふ)()番地(ばんち)始終(しじう)()269(きつね)(だま)されゑ(もん)270雅名(がめい)落胆(らくたん)()いて()きました。271マア(これ)形式(けいしき)さへ(とほ)ればいいのですからな』
272チルテル『エー、273合点(がてん)のゆかぬ(こと)だわい。274初稚姫(はつわかひめ)のナイス、275テクの(やつ)()()いて、276今頃(いまごろ)にや(よろこ)んで其処辺(そこら)をブラついて()やがるだらう。277此処(ここ)()()んで()ると()いがな、278エー怪体(けつたい)(こと)だわい』
279伊太(いた)(なに)()もあれ、280(おく)賓客室(ひんきやくしつ)(ござ)います。281そこには下女(げぢよ)下男(げなん)()りますから世話(せわ)をさせませう。282初稚姫(はつわかひめ)よりもズツと(すぐ)れたナイスが開業(かいげふ)同時(どうじ)(かか)()むでありますから、283まアそんな(むつかし)(かほ)せずにお(とま)(くだ)さいませ』
284チルテル『(なに)()もあれ、285どんな(をんな)()るか、286(ひと)調(しら)べてやらう』
287()(なが)らスタスタと(おく)()(すす)()る。288ヘールは(おく)()(すす)むだ。289自分(じぶん)伊太彦(いたひこ)揶揄(からか)はれ、290何時(いつ)()にかお(きやく)さま気取(きど)りになり、291横柄(わうへい)(つら)をして(おく)()(とほ)つて()れば、292三千彦(みちひこ)293デビス(ひめ)二人(ふたり)一間(いつけん)(ほど)距離(きより)(へだ)ててキチンと(すわ)つて()る。
294ヘール『おい、295(きやく)さまだ お(きやく)さまだ。296こら、297少女(おちよぼ)298(はや)(ちや)()さないか。299料理人(いたば)昼日中(ひるひなか)(なに)密談(みつだん)をやつてるのだ。300そんな(こと)商売(しやうばい)繁昌(はんぜう)するか。301もう、302これつきりで(とま)つてやらぬぞ』
303三千彦(みちひこ)『お、304(まへ)さま赤裸体(まつぱだか)何処(どこ)から()たのですか』
305ヘール『何処(どこ)からも(なに)もあつたものかい。306其処(そこ)から()たのだ。307(いま)此処(ここ)番頭(ばんとう)掛合(かけあ)つて最上等(さいじやうとう)(とま)(こと)にしたのだ。308さア(はや)(ちや)()むだり()むだり』
309三千彦(みちひこ)(いぶ)かしや(しこ)岩窟(いはや)(たちま)ちに
310(うづ)のホテルとなりにけらしな』
311デビス(ひめ)何国(なにくに)(たび)のお(かた)()らねども
312宿(やど)にはあらじ宿(やど)(つま)ぞや』
313ヘール『(われ)こそはリュウチナントのヘールぞや
314(あは)れみ(たま)(うづ)のよき(ひと)
315初稚(はつわか)(ひめ)(あらそ)角力(すまふ)とり
316(まけ)岩窟(いはや)()()みし(われ)
317デビス(ひめ)(なれ)(また)これの岩窟(いはや)()ちしかと
318(おも)へばいとど(あは)れなりけり。
319(この)(うへ)最早(もはや)ナイスに(あは)れとも
320あはれないとも(わか)らざりけり』
321 かかる(ところ)(また)真裸体(まつぱだか)のチルテルが322(つら)(ふく)らし(なが)らノソリノソリとやつて()た。
323ヘール『アツハヽヽヽ、324おい、325チルテルさま、326(きみ)矢張(やつぱ)(こひ)敗者(はいしや)だな。327や、328賛成(さんせい)々々(さんせい)329(これ)(やうや)溜飲(りういん)(さが)つた。330ウツフヽヽヽ』
331大正一二・四・二 旧二・一七 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)

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