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背輪

インフォメーション
題名：背輪 著者：出口王仁三郎
ページ：51 目次メモ：
概要： 備考：『故山の夢』p87-92 タグ： データ凡例： データ最終更新日：2023-10-30 18:58:28 OBC ：B121808c26
─二十一二歳の頃─
共有の野山に入(い)りて青柿(あをがき)の渋(しぶ)しぼり取り町に売りゆく
柿の渋(しぶ)売りて小銭(こぜに)をまうけしと柴(しば)の友よりいやしまれける
柿の渋(しぶ)売りし金子(きんす)で書籍買ひ仕事の休みに読みふけりけり
○
思はずも山の柴刈る松のしたに松茸(まつたけ)三本見つけてよろこぶ
柴の荷(に)に松茸つるしかへるさに兼(かね)さんが見て盗んだといふ
いかほどに弁解すれど兼(かね)さんは野山に菌(きのこ)は生えぬと頑張る
盗人(ぬすびと)の名をつけられて腹を立て現場に兼(かね)さん連れだちてゆく
松茸を抜きたる跡の穴(あな)示しやつとうたがひはれしうれしさ
○
五月雨(さみだれ)のはげしき日なりき垣の外の竹の皮(かは)拾ひて毒蛇(どくじや)に咬(か)まる
わが足を咬(か)みし毒蛇(どくじや)をひきさきて傷所(きずしよ)につくればすぐに治りぬ
百姓の賤(しづ)のせがれは蜂に刺され蝮(まむし)や蜈蚣(むかで)にいつもなやみぬ
○
夏されば野川(のがは)に篭(かご)を持ちゆきて鰌(どぜう)や鮒(ふな)をあさりたのしむ
沢山の鰌(どぜう)をとりて村びとに漁師の子よとわらはれにける
魚(うを)とりをしても充分生活が出来ると友はあきれゐたりき
如何(どう)したらそれほど沢山漁(すなど)りが出来るか教へてくれと友いふ
背(せな)の輪(わ)をおろせば魚(うを)はいくらでもとれるといつて笑ひ答へぬ
背(せな)の輪(わ)は何だと聞かれ臭いもの嫌ひな仏(ほとけ)よと笑うて答ふ
魚(うを)を食ふよりも捕(と)る趣味多(おほ)かりき殺生するなと祖母は戒(いま)しむ
細溝(ほそみぞ)に鰌(どぜう)つかまむと手さぐりに鰻(うなぎ)とおもひ青蛇(あをへび)つかむ
おどろいてキヤツと一声(ひとこゑ)叫びつつ泥田(どろた)のなかに尻餅(しりもち)をつく
手も顔も泥かけ地蔵となり変(かは)りドブンと池に飛びこみ洗ふ
飛びこみし池の古杭(ふるぐひ)に尻をうちチンバひきひき家路にかへる
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