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青年の使命(出口王仁三郎聖師と出口日出麿師を囲む座談会 第二回)

インフォメーション
題名:青年の使命(出口王仁三郎聖師と出口日出麿師を囲む座談会 第二回) 著者:
ページ:525 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-11-26 15:43:29 OBC :B195502c2202049
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]『昭和青年』昭和6年6月号
出口王仁三郎聖師と出口日出麿師を囲む座談会(第二回)

時……昭和六年四月二十七日夜   所……天恩郷明光殿

林『ぢや次の問題にうつらう』
高見『次は「青年の使命」について話し合ひませう』
林『青年の使命!総べて青年は何事でもハチ切れる元気でやることだね。今の若い奴は頭から元気がない。非常に消極的で日和見的の根性の奴ばかりだ。こまった事だね。どんどんやったらいゝんだがなア』
日出麿師『俺もなア種々(いろいろ)前には上になつたり下になつたりして行(や)つてみたが、上の人の云ふ所も無理のない所があるよ。何でも自然に行るので無いといかんね。神様を御願ひして自然に従つて行つてゆく事は必ず、しばらくすると変つて来る、こいつは自分が、こう思ふからと言つて一遍に理想をやらうと思へば頭を打つたり、石に跪たりして失敗する。自然に、うまく来た時にバットやればよいが……』
中井『然し、そのタイムを見ると云ふ事は青年には先づ出来ない事ですね。……神様でない限り』
林『亦神様論か』
日出麿師『さうだね。どうも若い時には、もどかしくってね。何でこんな事をやらんならんかと思つたりしてね……。げれど、もつと上の事を考へねばならない。後になれば判るが……』
中井『やつぱり若い者は兎に角やれる丈け、やるんだね』
日出麿師『若い時は第一力を養うて置くんだな!』
高見『青年といふ者は争闘力を養ふんだね。絶えずその為に努力をすることだね』
林『青年時代即人生の土台を作る時なんだからな』
日出麿師『土台を作らうと思へば、あらゆる万難を排して行かねばならない』
高見『青年はやらうと思ったらやつたら良いのだね。だが、そのやらうと思ふ事が何をやるのか判らないね』(笑声)
林『結局やつてみれば判るよ。然し今は、大体若い者がやらうとする事を理解してくれないよ』
中井『理解どころか、頭からおさへつけるんだ』
林『大分憤慨するね』
中井『憤慨など、もう通りこしてる。アホらしくなるね』
日出麿師『ハヽヽヽヽヽ』(笑声)
聖師『初めから善いか悪いか判らん……そんな事で仕事と云ふものは成功しやへん。俺は若い時は余程考へてやつた。考へてみて、それで決つたら、うんとやつたらいゝ。何んでもかんでも、やつたらいゝと云ふ事はいかん。嫌な人の意見も聞かなげればならないし、何(ど)うしても年寄にはいろいろな経験がある。だから年寄の意見も参酌をせにやならん。大体世情といふものが判らなければいかん。若い時は生一本で正直過ぎる。年寄はみんな、騙され切つて来てゐるから、世の中の事がよく判るが、若い時には正直過ぎるから騙される……』
林『亀の甲より年の功で、やつぱり年寄はそうなんだらうなア』(笑声)
高見『これからの青年は世の中と戦つて行かんならんなアどうしても』
日出麿師『兎に角、人を得る力が無かったら、どんなに争闘力があつてもいかんね』
聖師『人の心を悟り、又社会の心に通じなければいかん。そして、人が味方となつて自分について来る様にならな仕事は出来ん』
高見『腹を養ふんだね、自分が種々体験してみて……』
日出麿師『体験せねばそりや判らん』
聖師『それも甲の人がやつた経験を乙の人がやつて、うまく行くと云ふ訳のものでもない。その人その人で違ふ甲がやつて失敗しても、乙がその真似をして失敗するとも限らん。それは共の人々の持前で言ふに言はれんやり方がある。
 俺は永いこと種々やつてゐるが、そのズーツと苦しんで来た中にも終始一貫して来た。もう三十余年間の終始一貫である。嫌になつたら止める……それで止めて了ふと、初めに苦心してやつて来た貴重な経験をほかす事になる。兎に角何うしても始めた事は何処迄も継続していかないかん、損や。そして目標と云ふものを定めておかないかん青年は二十八才迄に目標を定めねばいかん。宣伝使やつたら宣伝許(ばか)りやればよい。二十八才の時に商買をやるのやつたら、商売をやる。それから十年で基礎が出来、二十年目に漸く花が咲く。三十年目に、順調に具合よう行つて成功する。
 どんな事でも隠忍自重といふことをやらねば、なんにも出来ぬ。
 俺も三十何年かゝつて居るが二十七年間迫害許りであつた。総て大きな仕事程迫害が多い。まだ中々おもわくが立つてやへん。これからが大事業や……。
 無一文からやつて行く、人間もつくらないかん、力もこしらへねばならぬ。有志も同志も作らないかん。俺の仕事とすれば、これからが愈々といふ処だ。それで大本は今まで総ての人がやつて居ることや会議制にするとか……人は何とか理窟を立てるが、そんな事をとり入れても、成功することはない。
 明治の元勲は一人でやつた。それでこそ仕事が出来るのだ。
 今の大本の信者に対して俺が無茶云ふても、皆が承知して、ついて来るやうになつたらいゝ。指導者は一人あつたらいゝ。二人も大将があつたらいかん。だから俺はいざと云ふ時の為めに『無茶』に慣らさして置くのだ。指導者にゴテゴテ云ふ様では仕事は何にも出来んからなアー。
 普通の人の智慧と、こちらの考へて居る智慧とは違ふ。こちらが考へてそれから向ふが考へてやるやうではそれ丈(だ)け時期が遅れる。
 何でもよいから云ふたら共の時直ぐ動く--それを素直に信じてやつたらこつちの思ふ通りチヤンとゆく。理智が勝つたらいかん。この練習が一番大切だと思つてやつてゐる。もつともっと大きな仕事をやるには、皆んなが、もつともっとこつちの云ふ通りに動かねばならぬ。無条件でやると云ふ事にせねば団体力と云ふものは出来ない。十人寄れば十人十腹と云つてめいめいが違ふ。皆がワイワイ云ふて、絶対服従して行く事を今の人は烏合の衆やと云ふが、それは違ふ。烏がワイワイ云ふ、それが烏合の衆で、烏合と云ふことは『烏鳴いて何んぞ合はんや』と云ふ事なんだ。ワアワア云ふ時にワアワア云ふて、後は沈黙で一つに固まる。これで本当の力が出来る。
 人類がみんな大本を敵にしても、何千万の信徒が一致せんと何にもならん。めいめい考へが違ふから力がない。それより一万の力が固まつたと云ふたら、どんな事でも出来る。天下でも取れる。盲従的に動いて呉れたらどんな事でも出来る。一万の団体と云へば非常なものだ。一万でなくとも、三千でも五千でも、それが固まつたら、何んな事でも出来るが其の中へ支離滅裂な意見が出るといかん。理窟が出て来たら内から崩れる。そうなつたら忽ちで、何も仕事は出来ない。平和な時は団結して居るが、サアとなつたらバラバラになる砂の山の様なものだ。世間では華族さんとか、何とかいふ人をかついで総裁にしてゐるが、皮袋に入れた砂の様で、袋が破れたらバツとなつて何んにもならん。主義者でも同じ事だ。
 固まる程大きな力はない。反宗教運動といふものは──人の心の中にあるものが崩れると思つてやつてゐる。あれはうかつだ。
 宗教の教理がいけないから改めよとか、亦伝道の方針を改めよとか、民衆に解放してやれとか云ふ事は許されるかもしらんが、宗教全体を何うしようなんて事は出来ない。それは人の心の中から生れてるものだから滅びない。地震の時とか雷が鳴つた時には何んな無信仰論者でも手を合はすもんや。
 つまり金の問題やな、手を合はすより金やから……デモ幹、ダラ幹の仕事や。あんなもんはしようがない』
高見『あゝ云ふもんこそ神様の名で大いに弾圧すべきですなア』
中井『つぶれかゝつて、もがいてゐる彼等自身の為にも、弾圧してやる方が功徳だ』
聖師『自然に弾圧される。自然に滅びるよ、そんな事せんでも……』
日出麿師『宗教等は人の力では潰れない。あんなものも神の仕組で出て来て居るのだから──二重にも三重にも神様は使はれてゐられるのだから……』
聖師『……一寸見たら善い様でも亦悪うなるやら判らん。悪い様でも神様がみなこさへておいたのや。蝮にしてもかまれたら命を取られるけれ共酒にしたら長命の薬になるでのう。一概に悪くは云へない』
林『本当に神様の道から云つたら蝮酒は長命だと云つても、飲むのは間違つてゐると思ふな』
高見『それは信仰の問題だね』
林『この間呑んで酔つたんで敗けおしみだな』(笑声)
聖師『そんな事言つたら鰌や鰻を食つても随分いやらしいものだが、あれも昔から食べるもんやと習慣づげられてゐるから何とも思はんのだが、あれを食へもんじやとしてあつたら食へやへん。鯰なども何がなしに食つてゐる。なまこなんてものはまるで蛇の様なものやが、あれも皆喜んで食つてゐる。習慣づげられてゐるからこそ食つてゐるんだ。蛇は畑鰻と云つて、鰻より蛇の方が料理法によつてはうまいんやぞ。うどんでも一番うまいのは蛇の粉が入つてゐる。蛇を蒸してカシヤカシヤにしたその紛が入ってゐる。それでうどんがうまいんや。うどんが無茶にうまいのは蛇を入れてあるのや。○○○にも入つてゐるでよ』
皆『ウエー』
林『そばにも入れてあるんでせうか』
聖師『そりや、あれを入れねば本当にうまいと云ふ味が出んからのう』
林『甘い話はそれ位にして、じやどうだい高見氏次に移らうか』
高見『そうだなア、次は「国家の将来」つて云ふ一寸うるさい問題なんですがね』

(以上次号)
「昭和青年」昭和六年六月号
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