第四七章 二王と観音〔二九七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第6巻 霊主体従 巳の巻
篇:第8篇 五伴緒神
よみ(新仮名遣い):いつとものおのかみ
章:第47章 二王と観音
よみ(新仮名遣い):におうとかんのん
通し章番号:297
口述日:1922(大正11)年01月24日(旧12月27日)
口述場所:
筆録者:外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年5月10日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:広道別天使は、虎公に岩彦という名を与えて、宣伝歌を歌いながらローマの都の中心に進んでいった。今日はローマを治める元照別天使の誕生日祭で、家々に紅、白、青の旗を掲げて祝意を表していた。
群集は祭の出で立ちで、ワッショワッショと鐘やブリキ缶のようなものをたたきながら、練り歩く。そうして、ウラル教の宣伝歌を歌っている。
広道別は三五教の宣伝歌を歌いながら進んでいる。すると、群衆の中の祭頭らしき男が、広道別に拳固を固めて殴りかかった。
岩彦はこの様子に地団駄を踏みつつ、三五教の教えを守り、歯を食いしばって仁王立ちになって我慢している。祭の群集は、岩彦の仁王立ちに行く手をふさがれて、遅れだした。
広道別は、殴られながら小声に宣伝歌、天津祝詞を奏上する。すると殴りかかった男はたちまち、拳を振り上げたまま全身強直してしまった。
ローマの十字街頭には、岩彦とこの殴りかかった男と、二人が仁王のように立ちふさがってしまった。そこへ美しい女宣伝使が宣伝歌を歌いながらやってきた。群衆はこの様に野次馬のように集まってきた。
中には罵詈雑言を浴びせる群集もいたが、女宣伝使が手を左右左に振ると、そうした群集はたちまち強直してしまった。(霊縛をかけられた)
そこへ、ローマの主・元照別の行列がやってきた。誕生祭にあわせて、地中海の一つ島へ参拝に出かけるのである。しかし二人の仁王が十字街頭をふさいで立っており、行列の先触れの男たちは恐々と立ち止まってしまった。
行列の後ろからは、進め進め、と声がする。と、岩彦の仁王は、『通ること罷りならぬ』と怒鳴りつけた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:章題は、御校正本・普及版・愛善世界社版では「二王と観音」と表記されているが、校定版・八幡書店版では「仁王と観音」と表記されている。霊界物語ネットでは2020/5/1より「二王と観音」に変更。
データ最終更新日:2020-05-01 17:59:18
OBC :rm0647
愛善世界社版:283頁
八幡書店版:第1輯 727頁
修補版:
校定版:284頁
普及版:118頁
初版:
ページ備考:
001 広道別天使は、002この大男に岩彦といふ名を与へ、003例の宣伝歌を謡ひながら、004ローマの都の中心に進んで行つた。005今日は元照別天使の誕生祭とかで、006家々に紅や、007白や、008青の旗を掲げ、009祝意を表しゐたりける。
010 而て数千の群集は、011白捩鉢巻に紫の襷を十文字に綾取り、012石や茶碗や、013鉦や錻力鑵のやうなものを叩いて、014ワツシヨワツシヨと列を作つて走つてくる。015さうして一同はウラル彦の宣伝歌を謡ひながら、016勢凄じく海嘯のやうに此方を目がけて突進しきたる。017広道別天使は、
018『神が表に現はれて 善と悪とを立別ける』
019と謡ひながら進まむとするを、020群集の中の頭らしき男は、021この歌を謡つてゐる宣伝使の横面めがけて拳骨を固め、022首も飛べよと言はぬばかりに擲りつけた。023宣伝使は素知らぬ顔して、024又もや歌を謡ひはじめたり。
025男『こいつしぶとい奴。026未だほざくか』
027と蠑螺のやうな拳骨を固めて、028処かまはず打ち伏せた。029岩彦は仁王のやうな体躯を控へ、030握り拳を固めて歯を食ひしばり、031地団太を踏んだ。032されど宣伝歌の「直日に見直せ、033詔り直せ」といふ神言を思ひ出し、034かつ宣伝使の命令が無いので大道に仁王立ちとなりしまま、035歯を食ひしばるのみなりき。
036 群集はこの男の姿を見て驚きしか、037途中に立ち止りて一歩も進まず居る。038後列の弥次馬は、
042と呶鳴りゐる。043宣伝使は打ち据ゑられ叩かれながら、044悠々として宣伝歌を小声で謡ひ、045かつ天津祝詞を奏上した。046たちまち大の男は拳を握り頭上に振り上げた刹那、047全身強直して銅像のやうになつてしまひ、048目ばかりギヨロギヨロと廻転させるのみであつた。049こちらは岩彦の大男が、050眼を怒らし、051面をふくらし、052口をへの字に結んで握り拳を固めて振り上げたまま、053直立不動の態である。054一方は拳骨を固め振り上げたまま、055口を開けたまま強直して、056たちまちローマの十字街頭には、057阿吽の仁王様が現はれたる如くなりき。058群集の中からは、
059『仁王さまぢや仁王さまぢや』
060と叫ぶものあり、061それに続いて群集は又もや口を揃へて、
062『仁王ぢや仁王ぢや、063ようマア似合うた仁王さまぢや』
064と無駄口を叩きはじめたり。
065 このとき横合より美しい女の宣伝使が、066又もや、
067『この世を造りし神直日 御霊も広き大直日
068 ただ何事も人の世は 直日に見直せ聞直せ』
069と謡ひながら、070この場に現はれたり。
072『オーイ、073見よ見よ、074立派な仁王さまができたと思ふたら、075今度は三十三相揃うた大慈大悲の観世音菩薩だ。076拝め拝め』
077と異口同音に叫び出だしたり。
079と数千の群集は、080前後左右を取り巻き、081さしもに広き都大路の十字街頭も、082すし詰となつて、083風の通る隙間も無いやうになつて来た。084女宣伝使は、085宣伝歌を謡ひ出したるに、086群集の中には罵詈雑言を逞しうする弥次馬さえ、087沢山現はれ来たりぬ。
088 女宣伝使は、089細き、090白き手を上げて、091左右左に振つた。092悪口雑言をほざいた群集は、093口を開いたなり、094閉ぢることもできず強直して、095アーアと言ひながら涎を垂らすもの、096彼方此方に現はれたり。
097 このとき前方より、098行列厳めしく立派な乗物に乗り来るものあり。099乗物の前後には、100沢山の伴人が警護して人払ひしながら、101おひおひと十字街頭に向つて進み来るあり。102これはローマの城主元照別天使が、103誕生の祝ひを兼ね、104地中海の一つ島に参拝する途中の行列なりける。
105 群集は四方八方に散つて了つた。106仁王さまは、107依然として十字街頭に二柱相並んで、108阿吽の息を凝らして佇立してゐる。109先払ひは仁王にむかひ、
111と声をかけた。112仁王はウンとも、113スンとも言はず、114十字街頭に鯱虎張つてゐる。115広道別天使は路傍の或家の軒先に立つて、116この光景を眺めゐたり。
117先払『この無礼者。118右へと言つたら、119なぜ右へ行かぬか。120何と心得ゐるか。121勿体なくもローマの城主元照別天使の御通行だ。122速かに右へ寄れ』
123といひつつ、124あまり巨大なる男の握り拳を固めて立つて居るに、125やや驚きしと見え慄ひ声で呶鳴りをる。
126 輿は段々と進んでくる。127仁王はどうしても微躯ともせぬ。128先払ひの甲乙丙は、129恐々前に寄つてこの大男を仰ぎ視た。130見れば動いてゐるものは目ばかりなり。
131甲『ハヽーこいつは造り物だな。132ローマの人民は今日は御城主の御通りだと思つて、133アーチの代りにこんな所に、134仁王立ちを拵へて立てときよつたらしい。135しかしもつと距離を開けとかぬと、136これでは通れはせぬワイ。137気の利かぬ奴だな』
138乙『イヤ、139此奴は人間だぞ。140それ見い、141目を剥いてらア。142ど偉い目玉を剥きよつて俺等を嚇かさうといふ駄洒落だな。143ヤイ、144退かぬか。145どかぬと目を突いてやるぞ』
146丙『無茶するない、147もし神さまが化けとるのぢやつたら、148如何する、149罰が当るぞ』
150甲『神さまなら、151一つ頼んで見ようかい。152モシモシ渋紙さま』
153乙『渋紙さまてあるものかい』
154甲『それでも渋紙見たやうな色してるぢやないかい』
155乙『渋紙さまなら貴様の事だい。156食ひものに渋い、157仕事に鈍い、158そこで死に損なひの合せて六分を除つて、159後の残りの渋紙の貧乏神つたら、160貴様のことだ。161この間も貴様のとこの嬶に貧乏神と、162ぼやかられよつて、163猿が渋柿喰つたやうな顔をさらして、164渋々出て行きよつたぢやないか』
165甲『しぶとい奴ぢや。166こんな大道の真中で、167他人の所の内の棚卸しまで止めて貰はふかい。168そんなこと吐かすと仁王さまに取掴まるぞ。169それそれあのお顔を見い、170御機嫌斜なりだ。171あの振り上げた鉄拳が、172今貴様の頭上にくるぞ』
173乙『馬鹿言へ、174造り物だ、175造り物だ』
179と号令がかかる。180このとき一方の仁王は大手を拡げて、
183丙『オー化物が物を言うた。184ヤイ貴様は昼の白昼に、185こンな所へ出て化けたつてあかぬぞー。186仁王の幽霊奴が』
187 又もや後の方より、
190の声が頻りに聞えきたる。
191(大正一一・一・二四 旧大正一〇・一二・二七 外山豊二録)