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第一一章 日出姫(ひのでひめ)〔八三三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻 篇:第3篇 神鬼一転 よみ(新仮名遣い):しんきいってん
章:第11章 日出姫 よみ(新仮名遣い):ひのでひめ 通し章番号:833
口述日:1922(大正11)年08月12日(旧06月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫が神殿に駆け上って扉に手をかけると、狭依彦命のご神体が現れて高姫を取ると、壇上から下に放り投げた。高姫はまたもや人事不省になって唸っている。
奉仕者たちが慌てて介抱しようとするが、常彦は、神様に戒めを受けたのだから、高姫の改心のためにもしばらくは放って置いてもらうように頼んだ。
一同が別間に入って神徳話に花を咲かせていると、突然神殿の間から高姫の金切り声が聞こえてきた。驚いて皆が駆けつけると、高姫が大男に持ち上げられて放り上げられていた。
一同が駆けつけると、大男は煙のように消えてしまった。高姫は真っ青な顔で懸橋御殿を飛び出してアリナ山の方に駆け上って行った。常彦と春彦は見失っては大変と、慌てて高姫を追いかけていく。国玉依別の命により、竜と玉も一緒に高姫を追いかけた。
高姫は鷹依姫一行が野宿した白楊樹の傍らまでたどり着いた。高姫は身体が非常に重たくなって草原に横たわり、寝てしまった。高姫は目を覚ますと自分がどこにいるかわからず、独り言を言っている。
突然大きな怪物が現れて、高姫を掴んで喰おうとした。高姫は恐ろしさに震えていたが、そこへ喨々と音楽の音が聞こえてきた。すると俄かに力ついた。怪物は高姫をぱっと放した。
高姫が目を開けると、梅の花を片手に持ち、もう片方の手に白扇を持った女神が厳然として現れていた。女神は高姫のこれまでの行いが神界の邪魔をしていたことを叱り、ここで改心すればまた神界の御用を務めることができると諭した。
高姫は女神の光輝に打たれて罪を謝し、改心を約束した。女神は鷹依姫らが持ち出した黄金の玉を白楊樹から下ろすと高姫に授け、後からやってくる懸橋御殿の竜と玉に返すようにと命じた。
女神は高姫に後戻りしないように諭し、先ほどの怪物は高姫の慢心を戒める鬼神であると戒めた。そしてアマゾン河をさかのぼって鷹依姫一行と合流し、そこで修行をなしてから自転倒島に戻って神業に参加するようにと示した。日の出姫神と名乗り、高姫に懸かっているのは金毛九尾であることを気を付けると、五色の雲に乗って天上に昇っていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-12-28 17:58:42 OBC :rm2911
愛善世界社版:165頁 八幡書店版:第5輯 526頁 修補版: 校定版:169頁 普及版:77頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)矢庭(やには)神前(しんぜん)()(のぼ)り、002(とびら)()をかけた。003(たちま)(あたま)(ひか)つた脇立(わきだち)狭依彦(さよりひこの)(かみ)004(けぶり)(ごと)朦朧(まうろう)(あら)はれ、005高姫(たかひめ)首筋(くびすぢ)をグツと(にぎ)つて壇上(だんじやう)より、006(へび)大地(だいち)()げつけた(やう)に、007ポイと()()ばした。008高姫(たかひめ)(しばら)(むし)(いき)にてそこに打倒(うちたふ)れ、009何事(なにごと)(しき)りに囈言(うさごと)()つてゐる。010(くに)011(たま)(おどろ)いて『(みづ)ぢや(みづ)ぢや』と立騒(たちさわ)ぐを、012常彦(つねひこ)(せい)(とど)め、
013常彦『モシモシ(みな)さま、014構立(かまへだて)をせずに、015少時(しばらく)()つといて(くだ)さいませ。016御存(ごぞん)じの(とほり)()神前(しんぜん)(わき)朦朧(もうろう)として()神体(しんたい)(あら)はれ、017こらしめの(ため)高姫(たかひめ)()つて()げられたのですから、018(あま)高姫(たかひめ)(かま)うと、019(また)へらず(ぐち)(たた)慢心(まんしん)(いた)しますから、020十分(じふぶん)改心(かいしん)する(ところ)(まで)()つといてやつて(くだ)さいませ。021高姫(たかひめ)()(ため)ですから……一人前(いちにんまへ)(まこと)宣伝使(せんでんし)にしてやらうと思召(おぼしめ)さば、022十分(じふぶん)(くるし)ましておく(はう)高姫(たかひめ)(たい)する慈悲(じひ)になりまする』
023真心(まごころ)から(かた)()したるを、024一同(いちどう)常彦(つねひこ)(ことば)(したが)ひ、025高姫(たかひめ)自然(しぜん)正気(しやうき)(かへ)(まで)026そこに放任(はうにん)しておき、027各自(めいめい)別間(べつま)()つて、028神徳(しんとく)(いただ)き、029昼飯(ちうはん)などを(きつ)し、030悠々(いういう)として世間話(せけんばなし)(ふけ)つてゐた。031(しばら)くすると神殿(しんでん)(おい)て、032高姫(たかひめ)金切声(かなきりごゑ)(きこ)えて()た。033常彦(つねひこ)034春彦(はるひこ)035(くに)036(たま)()一同(いちどう)(この)(こゑ)(おどろ)いて、037神殿(しんでん)()けつけ()れば、038高姫(たかひめ)(なん)とも()れぬ(おほ)きな(をとこ)に、039(まり)つく(やう)に、040(はう)()げられたり、041おとされたり、042なぶりものに()はされ、043悲鳴(ひめい)()げゐたりける。
044 常彦(つねひこ)045春彦(はるひこ)姿(すがた)()るより、046(だい)(をとこ)(けぶり)(ごと)くに()えて(しま)つた。047(この)(だい)(をとこ)()えしは、048(かがみ)(いけ)(あら)はれました月照彦(つきてるひこの)(みこと)出現(しゆつげん)であつたとの(こと)なり。
049 高姫(たかひめ)真青(まつさを)(かほ)をし(なが)ら、050懸橋(かけはし)御殿(ごてん)(おもて)()()し、051一生(いつしやう)懸命(けんめい)にアリナの(やま)()して(のぼ)つて()く。052常彦(つねひこ)053春彦(はるひこ)見失(みうしな)うては大変(たいへん)と、054高姫(たかひめ)(あと)一生(いつしやう)懸命(けんめい)()つかけて()く。055国玉依別(くにたまよりわけの)(みこと)命令(めいれい)によつて、056(たつ)057(たま)両人(りやうにん)常彦(つねひこ)058春彦(はるひこ)(うしろ)より、059『オーイ オーイ』と()ばはり(なが)ら、060アリナの(みね)()(のぼ)()く。
061 高姫(たかひめ)(やうや)くにして、062鷹依姫(たかよりひめ)一行(いつかう)野宿(のじゆく)したる白楊樹(はくようじゆ)(かたはら)まで()()いた。063(なん)とはなしに身体(しんたい)非常(ひじやう)(おも)たくなり、064疲労(ひらう)(かん)じ、065グタリと(よこ)になつて、066大蜥蜴(おほとかげ)沢山(たくさん)爬行(はかう)して()草原(くさはら)(よこ)たはり、067他愛(たあい)もなく()(しま)つた。
068 夜半(やはん)()()まし、069そこらあたりをキヨロキヨロと見廻(みまは)し、
070高姫(たかひめ)『ハテナア、071ここは何処(どこ)だつたいなア。072(かがみ)(いけ)懸橋(かけはし)御殿(ごてん)(なか)だと(おも)つてゐたのに、073そこら(ぢう)萱野原(かやのはら)074(ひと)()一匹(いつぴき)()りはせぬ。075アハー、076やつぱり(かがみ)(いけ)のスツポン()077(この)野原(のはら)を、078あんな立派(りつぱ)御殿(ごてん)()せて、079(だま)しよつたのだな。080悪神(あくがみ)()ふものは油断(ゆだん)のならぬものだ。081禿頭(はげあたま)(かみ)()()て、082()つて()かしたり、083(おほ)きな(をとこ)(あら)はれて、084(この)高姫(たかひめ)(まり)つくやうにさいなめよつたと(おも)つたが、085ヤツパリ(だま)されて()たのかなア。086(むかし)常世(とこよ)会議(くわいぎ)(とき)にも、087八百(はつぴやく)八十八(はちじふや)(はしら)立派(りつぱ)国魂神(くにたまがみ)が、088泥田(どろた)(なか)(きつね)(つま)まれ、089末代(まつだい)(はぢ)をかいたと()ふことだが、090ヤツパリ(この)高砂島(たかさごじま)常世(とこよ)(くに)(おか)つづきだから、091()ると()えるワイ。092アヽドレドレ眉毛(まゆげ)(つばき)でも()けて、093しつかり(いた)しませう。094……(とき)(つね)(はる)周章者(あわてもの)は、095どこへ沈没(ちんぼつ)しよつたのか、096テンで(かげ)(かたち)()えなくなつて(しま)つた』
097独語(ひとりごと)()つて()る。
098 (にはか)大粒(おほつぶ)(あめ)パラパラパラと()()して()た。099満天(まんてん)黒雲(こくうん)(つつ)まれ、100次第(しだい)々々(しだい)足許(あしもと)さへ()えなくなつて()た。101獅子(しし)102(とら)103(おほかみ)()えたける(やう)(あや)しき(うな)(ごゑ)は、104暴風(ばうふう)(ごと)(みみ)をつんざく。105寂寥(せきれう)刻々(こくこく)(くは)はり、106流石(さすが)高姫(たかひめ)茫々(ばうばう)として際限(さいげん)もなき原野(げんや)(なか)只一人(ただひとり)()()され、107足許(あしもと)さへ()えなくなり、108心細(こころぼそ)さに()(ふさ)ぎ、109(うで)()み、110大地(だいち)胡坐(あぐら)をかき思案(しあん)()れて()る。
111 パツと雷光(いなづま)(ごと)(ひかり)(あら)はれたと(おも)途端(とたん)に、112雲突(くもつ)(ばか)りの白髪(はくはつ)怪物(くわいぶつ)113(みみ)(まで)引裂(ひきさ)けた(くち)から、114()をタラタラと()らし(なが)ら、115高姫(たかひめ)(まへ)にのそりのそりと()いた(やう)(すす)(きた)り、
116怪物(くわいぶつ)『アハヽヽヽ、117人肉(じんにく)(あたた)かいのが一度(いちど)()つて()たいと、118(つね)がね希望(きばう)して()たが、119アヽ時節(じせつ)()たねばならぬものだ。120(すこ)(ふる)うて(しわ)がより、121(にく)(かた)くなり、122(ほね)(あま)(やわら)かくないが、123これでもひだるい(とき)にまづい(もの)なし、124辛抱(しんばう)して()つてやらうかな。125イヒヽヽヽ、126ウフヽヽヽ、127エハヽヽヽ、128オホヽヽヽ。129(うま)いぞ(うま)いぞ』
130とニコニコし(なが)ら、131高姫(たかひめ)(たぶさ)をグツと(にぎ)つた。132高姫(たかひめ)(ねこ)(つか)まつた(ねずみ)()うに、133五体(ごたい)萎縮(ゐしゆく)し、134ビリビリと(ふる)(おのの)いて()る。135(この)(とき)何処(どこ)ともなく、136嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)()(きこ)えて()た。137(この)(こゑ)(みみ)()ると(とも)に、138高姫(たかひめ)(にはか)(こころ)()()れしくなり、139強力(きやうりよく)なる味方(みかた)()たやうな気分(きぶん)(みた)された。140怪物(くわいぶつ)高姫(たかひめ)(たぶさ)(にぎ)つた()をパツと(はな)した。141()をあけて()れば、142容色(ようしよく)(はな)(ごと)く、143(みづ)のしたたる(やう)黒髪(くろかみ)背後(はいご)()らし、144(うめ)(はな)片手(かたて)()ち、145片手(かたて)白扇(はくせん)(ひろ)げて()つた女神(めがみ)146厳然(げんぜん)として(あら)はれ、147言葉(ことば)(しづ)かに()(たま)ふやう、
148女神(めがみ)(その)(はう)高姫(たかひめ)であらうがな。149今迄(いままで)我情(がじやう)我欲(がよく)(くも)(つつ)まれ、150(すこ)しも反省(はんせい)(ねん)なく、151()出神(でのかみ)生宮(いきみや)標榜(へうぼう)し、152随分(ずゐぶん)大神(おほかみ)()神業(しんげふ)(たい)妨害(ばうがい)(くは)(きた)りし(こと)(さと)つて()るか。153(その)(はう)(ちから)一杯(いつぱい)神界(しんかい)御用(ごよう)(つと)めた(つも)りで、154極力(きよくりよく)神界(しんかい)妨害(ばうがい)(いた)し、155(かみ)()さしの教主(けうしゆ)言依別(ことよりわけの)(みこと)(たい)し、156悪言(あくげん)暴語(ぼうご)(もつ)(むか)(たてまつ)り、157黒姫(くろひめ)頤使(いし)して今迄(いままで)聖地(せいち)混乱(こんらん)(いた)した(その)(はう)(つみ)158(やま)よりも(たか)く、159(うみ)よりも(ふか)し。160さり(なが)ら、161(なんぢ)(いま)(ここ)にて()(あらた)めなば、162(いま)一度(いちど)(その)(つみ)(ゆる)し、163身魂(みたま)(みが)きし(うへ)164神界(しんかい)御用(ごよう)使(つか)うてやらう。165高姫(たかひめ)166返答(へんたふ)如何(いかが)であるか』
167()らせ(たま)ひ、168高姫(たかひめ)(かほ)熟視(じゆくし)(たま)ふ。169高姫(たかひめ)女神(めがみ)のどこともなく身体(しんたい)より(はつ)する光輝(くわうき)()たれ、
170高姫『ハイハイ、171今日(こんにち)(かぎ)改心(かいしん)(いた)しまする。172どうぞ今迄(いままで)(つみ)はお(ゆる)(くだ)さいませ。173如何(いか)なる(こと)でも、174(かみ)(さま)(あふ)せとあらば(うけた)まはりませう』
175女神(めがみ)(しか)らば(なんぢ)(まを)()くる(こと)がある。176(この)白楊樹(はくようじゆ)(そら)に、177(にしき)(ふくろ)()まりあり、178(その)(なか)には、179テーナの(さと)酋長(しうちやう)(かがみ)(いけ)(たてまつ)りたる黄金(こがね)宝玉(ほうぎよく)あり。180(いま)これを(なんぢ)()相渡(あひわた)す。181(なんぢ)()より明朝(みやうてう)(ここ)(あら)はれ(きた)懸橋(かけはし)御殿(ごてん)神司(かむづかさ)182(たま)183(たつ)両人(りやうにん)相渡(あひわた)し、184持帰(もちかへ)らしめよ。185金色(きんしよく)燦爛(さんらん)たる(この)(たま)(なが)めて、186(ふたた)執着心(しふちやくしん)(おこ)(ごと)きことあらば、187最早(もはや)(なんぢ)神界(しんかい)御用(ごよう)には()(べか)らず。188()()言葉(ことば)(むね)(たた)みて(わす)るるな』
189高姫(たかひめ)『ハイ、190(けつ)して(けつ)して(わす)れは(いた)しませぬ。191今日(こんにち)(かぎ)り、192(たま)(たい)する執着心(しふちやくしん)放棄(はうき)(いた)します』
193 女神(めがみ)白楊樹(はくようじゆ)(むか)ひ、
194女神(きた)(きた)れ』
195(まね)(たま)へば、196不思議(ふしぎ)や、197白楊樹(はくようじゆ)(やみ)(なか)輪廓(りんくわく)(あか)(あら)はれ、198(にしき)(ふくろ)はフワリフワリと女神(めがみ)(まへ)(くだ)()たりぬ。
199女神(めがみ)高姫(たかひめ)200(この)(にしき)(ふくろ)(なか)には黄金(こがね)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(つつ)まれあり。201披見(ひけん)(ゆる)す。202(はや)(あらた)()よ』
203 高姫(たかひめ)は、
204高姫『ハイ』
205()(なが)ら、206(ふくろ)(ひも)()き、207(なか)(のぞ)()てハツと(ばか)り、208(その)(ひかり)()たれ()る。
209女神(めがみ)『どうぢや、210(その)(たま)()しくはないか』
211高姫(たかひめ)『イエもう(けつ)して、212何程(なにほど)立派(りつぱ)(たま)でも、213(かたち)ある(たから)には(すこ)しの未練(みれん)御座(ござ)いませぬ。214無形(むけい)(こころ)(たま)こそ、215(もつと)大切(たいせつ)だと()神徳(かげ)をとらして(いただ)きました。216(けつ)して(けつ)して今後(こんご)は、217(たま)(たい)して、218(こころ)(なや)ます(やう)なことは(いた)しませぬ』
219女神(めがみ)(また)後戻(あともど)りを(いた)さぬ(やう)()をつけて()く。220()いては、221(なんぢ)これより常彦(つねひこ)222春彦(はるひこ)(とも)(この)原野(げんや)(ひがし)(わた)り、223種々(いろいろ)雑多(ざつた)艱難(かんなん)()め、224アルの(みなと)より海岸線(かいがんせん)(ふね)にて北方(ほくぱう)(わた)り、225ゼムの(みなと)立寄(たちよ)り、226そこに上陸(じやうりく)して、227神業(しんげふ)(しう)し、228(ふたた)(ふね)()り、229チンの(みなと)より(ふたた)上陸(じやうりく)して、230アマゾン(がは)(くち)()で、231(ふね)にて(かは)(さかのぼ)り、232鷹依姫(たかよりひめ)233竜国別(たつくにわけ)一行(いつかう)出会(であ)ひ、234そこにて(ふたた)大修業(だいしうげふ)をなし、235言依別(ことよりわけの)(みこと)236国依別(くによりわけの)(みこと)(めい)(したが)ひ、237直様(すぐさま)自転倒(おのころ)(じま)立帰(たちかへ)り、238沓島(くつじま)239冠島(かむりじま)(かく)されてある、240(あを)241(あか)242(しろ)243()麻邇(まに)(たま)取出(とりいだ)し、244(にしき)(みや)(をさ)めて、245(うま)赤子(あかご)(こころ)となり、246神業(しんげふ)参加(さんか)せよ。247(すこ)しにても慢神心(まんしんごころ)あらば、248最前(さいぜん)(ごと)く、249鬼神(おにがみ)(あら)はれて、250(なんぢ)身魂(みたま)(いまし)めを(いた)すぞよ。251ゆめゆめ(うたが)(なか)れ。252()れこそは言依別(ことよりわけの)(みこと)守護(しゆご)(いた)す、253()出姫(でひめの)(かみ)であるぞよ。254今日迄(こんにちまで)(その)(はう)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(まを)して()たが、255(その)(じつ)金毛(きんまう)九尾(きうび)白面(はくめん)悪狐(あくこ)(れい)256(なんぢ)体内(たいない)(かか)りて、257三五(あななひ)(かみ)経綸(けいりん)妨害(ばうがい)(いた)さむと、258(なんぢ)肉体(にくたい)使用(しよう)してゐたのであるぞや』
259高姫(たかひめ)『ハイあなた(さま)から、260さう(うけたま)はりますと、261(なん)だか、262(その)(やう)心持(こころもち)(いた)して(まゐ)りました。263それに間違(まちがひ)御座(ござ)いますまい』
264女神(めがみ)最早(もはや)夜明(よあ)けにも(ちか)ければ、265(わらは)天教山(てんけうざん)立帰(たちかへ)り、266()出神(でのかみ)267木花姫(このはなひめの)(かみ)(なんぢ)改心(かいしん)次第(しだい)(まを)()げむ。268高姫(たかひめ)さらば……』
269()ふより(はや)く、270五色(ごしき)(くも)()り、271天上(てんじやう)(たか)(のぼ)らせ(たま)うた。272高姫(たかひめ)はホツと一息(ひといき)(なが)ら、273あたりを()れば、274()(すで)()(はな)れ、275(ひがし)(そら)(うるは)しき五色(ごしき)(くも)(たなび)き、276太陽(たいやう)地平線(ちへいせん)(はな)れて、277(きよ)姿(すがた)(あら)はし(たま)間際(まぎわ)なりけり。
278大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
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