霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 神丹(しんたん)〔一二九三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻 篇:第4篇 鷹魅糞倒 よみ(新仮名遣い):ようみふんとう
章:第19章 神丹 よみ(新仮名遣い):しんたん 通し章番号:1293
口述日:1923(大正12)年01月19日(旧12月3日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年11月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
珍彦と静子の娘・楓は、杢助と高姫の企みを聞いてしまい、父母のところへ現れた。楓は夜前、文殊菩薩が夢に現れ、父母の危機を告げ神丹という薬を授けた。楓が目を覚ますと、立派な薬が三粒手に残っていたという。
この話を聞いた珍彦と静子は、楓と共に一粒ずつ神丹をいただいた。そこへ高姫がやってきて珍彦と静子を晩餐に誘った。珍彦たちは承諾し、大神様に無事を祈願してから高姫の居間に現れた。
珍彦夫婦は杢助と高姫にたくさんの御馳走やお酒を勧められたが、いくら食事が進んでも二人の体には何の変化もなかった。高姫が不機嫌になってきたため、珍彦と静子はにわかに気分が悪くなったと言って食事の場を辞した。後に杢助と高姫はほくそ笑んでいた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-06-30 09:14:18 OBC :rm4919
愛善世界社版:280頁 八幡書店版:第9輯 135頁 修補版: 校定版:288頁 普及版:130頁 初版: ページ備考:
001 珍彦(うづひこ)002静子(しづこ)火鉢(ひばち)(なか)(かこ)み、003(はなし)(ふけ)つて()る。
004静子(しづこ)『もし珍彦(うづひこ)さま、005吾々(われわれ)親子(おやこ)はバラモン(けう)(とりこ)となり、006(あやふ)(ところ)治国別(はるくにわけ)(さま)(たす)けられ、007御恩(ごおん)(かへ)しやうもない(その)(うへ)に、008こんな結構(けつこう)宮番(みやばん)(まで)さして(いただ)き、009(なん)とも冥加(みやうが)(あま)つた(こと)ぢやありませぬか』
010珍彦(うづひこ)『さうだ。011(まへ)()(とほ)山海(さんかい)大恩(だいおん)()け、012(その)(うへ)013(かみ)(さま)(こと)(わか)らないのに、014(この)(やかた)主人(しゆじん)(おほ)せつけられ(じつ)()(あま)光栄(くわうえい)だ。015(しか)吾々(われわれ)(かみ)のお(みち)には(まつた)くの素人(しろうと)だから、016(あま)()重過(おもす)ぎて迷惑(めいわく)だな。017()()(かみ)義理(ぎり)天上(てんじやう)とか()つて、018生神(いきがみ)(さま)がお(いで)になり、019主人顔(しゆじんがほ)をして御座(ござ)るが、020(なん)()つても生神(いきがみ)さまだから、021維命(これめい)維従(これしたが)ふより(ほか)はない。022主人(しゆじん)とは()ふものの有名(いうめい)無実(むじつ)吾々(われわれ)(おも)ふやうには一寸(ちよつと)もなりはしない、023(かみ)(さま)のお(みち)()ふものはこんなものかなア』
024静子(しづこ)『それでも、025(ろく)(にん)役員(やくゐん)さまは矢張(やつぱ)(わたし)のやうな(もの)でも主人(しゆじん)()てて(くだ)さるのだから結構(けつこう)ぢやありませぬか。026(かへで)のやうな(なに)()らぬ(むすめ)をお(ぢやう)さまお(ぢやう)さまと尊敬(そんけい)して(くだ)さるのだから有難(ありがた)いものだ、027これと()ふのも(まつた)(かみ)(さま)のお(かげ)だわ』
028 ()(はな)(ところ)(かへで)(ふすま)をそつとあけて()(きた)り、
029(かへで)『お(とう)さまお(かあ)さま、030(いま)高姫(たかひめ)さまが、031貴方(あなた)(がた)()馳走(ちそう)()げたいと()ふて()びに()られたらお(いで)になりますか』
032珍彦(うづひこ)(それ)折角(せつかく)思召(おぼしめし)033()にする(わけ)には()かない。034(また)無下(むげ)(ことわ)ればお(こころ)(わる)くしてはならないからなア』
035(かへで)『お(かあ)さまも()(つも)りですか』
036静子(しづこ)珍彦(うづひこ)さまが()かれるのに、037女房(にようばう)(わたし)()かぬ(わけ)には()きますまい。038()(つよ)(をんな)だと義理(ぎり)天上(てんじやう)(さま)(おも)はれてはなりませぬからな。039杢助(もくすけ)さまと()立派(りつぱ)なお(かた)がお()でになつて()るのだから、040()挨拶(あいさつ)一度(いちど)()かうと(おも)ふて()(ところ)だ』
041(かへで)『それならお(かあ)さま、042(とう)さま、043(いで)なさいませ。044(つい)ては(わたし)夜前(やぜん)(ゆめ)文珠(もんじゆ)菩薩(ぼさつ)がお(いで)になりまして、045神丹(しんたん)()(くすり)(くだ)さいまして、046「お(まへ)両親(りやうしん)(うへ)危急(ききふ)(せま)つて()るから、047これを一粒(ひとつぶ)づつ()ましておけば大丈夫(だいぢやうぶ)」と(わた)して(くだ)さいました。048有難(ありがた)(ござ)いますとお辞儀(じぎ)をしたと(おも)へば(ゆめ)()めました。049()がさめましてもこんな立派(りつぱ)(くすり)三粒(みつぶ)050()(うへ)(のこ)つて()ました。051これを(さん)(にん)一粒(ひとつぶ)づつ(いただ)きませう、052さうすれば食当(しよくあた)りも(なに)もないさうですからなあ』
053珍彦(うづひこ)『それは有難(ありがた)(まつた)(かみ)(さま)のお(めぐみ)だ。054(なに)()もあれ(いただ)いて()かう。055オイ静子(しづこ)(まへ)(いただ)きなさい』
056(かへで)『このお(くすり)(わたし)()から(くち)直接(ちよくせつ)()げなくては()かないと文珠(もんじゆ)菩薩(ぼさつ)仰有(おつしや)いました。057サア(くち)をお()けなさいませ』
058 珍彦(うづひこ)059静子(しづこ)二人(ふたり)(かへで)(めい)ずるままに(くち)をパツと()けた。060(かへで)一粒(ひとつぶ)づつ両親(りやうしん)(くち)(はふ)()んだ。061(たちま)()()はれぬ(にほひ)四辺(あたり)(つつ)(むね)(さはや)かになり、062身体(からだ)から(ひかり)()るやうな心持(こころもち)になつた。063(かへで)(また)押頂(おしいただ)いて(みづか)服用(ふくよう)した。064(さん)(にん)(にはか)面色(めんしよく)(うつく)しく、065(その)()益々(ますます)()(くは)へた。066()かる(ところ)高姫(たかひめ)満面(まんめん)(いや)らしき(ゑみ)(たた)へながら()(きた)り、067(ふすま)をそつと()けて、
068高姫(たかひめ)御免(ごめん)なさいませ。069珍彦(うづひこ)(さま)070静子(しづこ)(さま)071(この)(あひだ)から(まゐ)りまして、072(あんま)()神業(しんげふ)(いそが)しいのでとつくり()挨拶(あいさつ)(いた)しませず、073(まこと)()まない(こと)(ござ)いました。074ついては(おつと)杢助(もくすけ)(こころ)(ばか)りの御飯(ごはん)差上(さしあげ)たいと(まを)しますので、075義理(ぎり)天上(てんじやう)()出神(でのかみ)()づから(こしら)へましたる料理(れうり)076(くち)()ひますまいが、077()夫婦(ふうふ)(そろ)ひなさつて()(いで)(くだ)さるまいか、078()(さけ)(かん)出来(でき)()ますから』
079珍彦(うづひこ)左様(さやう)(ござ)いますかな、080(わたくし)(はう)から一度(いちど)()挨拶(あいさつ)(いた)さねばならぬのに、081貴方(あなた)(はう)から(かへ)つて()馳走(ちそう)をして(いただ)くとは(まこと)()まない(こと)(ござ)います』
082静子(しづこ)()()(かみ)生宮(いきみや)(さま)083左様(さやう)ならば()遠慮(ゑんりよ)なう夫婦(ふうふ)(もの)()馳走(ちそう)(あづ)かりませう』
084 高姫(たかひめ)()()ましたりと内心(ないしん)()(よろこ)び、085(わざ)(つや)つぽい(こゑ)()して、
086高姫(たかひめ)『これはこれは早速(さつそく)()承知(しようち)087()()(かみ)()にとり満足(まんぞく)(ぞん)じます。088杢助殿(もくすけどの)もさぞや(よろこ)(こと)(ござ)いませう。089(これ)にてお(たがひ)親睦(しんぼく)()(くは)()神業(しんげふ)参加(さんか)(いた)しますれば、090()神徳(しんとく)四方(よも)(かがや)き、091(したが)つて(この)(やかた)主人公(しゆじんこう)たる珍彦(うづひこ)(さま)()名誉(めいよ)世界(せかい)(ひび)き、092結構(けつこう)(こと)(ござ)います。093サアどうぞ(わたくし)についてお(いで)(くだ)さいませ』
094珍彦(うづひこ)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。095(しか)(なが)(はかま)もつけなくてはなりませぬから、096何卒(どうぞ)一足(ひとあし)(さき)にお(かへ)(くだ)さいませ。097(すぐ)(まゐ)りますから』
098 高姫(たかひめ)は、
099高姫何卒(どうぞ)(はや)()(くだ)さい、100()(まをし)()ります』
101()()(わが)居間(ゐま)()(かへ)る。102(あと)珍彦(うづひこ)103静子(しづこ)(かへで)(さん)(にん)()(あら)ひ、104(くち)(すす)ぎ、
105珍彦、静子、楓(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)(さま)106何卒(なにとぞ)(この)危難(きなん)をお(すく)(くだ)さいませ』
107祈願(きぐわん)し、108素知(そし)らぬ(かほ)して高姫(たかひめ)居間(ゐま)(あら)はれた。
109珍彦(うづひこ)唯今(ただいま)は、110態々(わざわざ)(たふと)(おん)()をもつて(わたくし)夫婦(ふうふ)(ごと)きものをお(まね)きに(あづ)かり有難(ありがた)(ござ)います。111言葉(ことば)(あま)え、112()辞退(じたい)(いた)すも如何(いかが)(ぞん)夫婦(ふうふ)(もの)(まかり)()まして(ござ)ります』
113高姫(たかひめ)(それ)()苦労(くらう)(さま)(ござ)いましたなア。114(なに)(ござ)いませぬが、115丁度(ちやうど)(かん)がよい加減(かげん)出来(でき)()ます。116サア(ひと)つお(すご)(くだ)さいませ』
117珍彦(うづひこ)有難(ありがた)(ござ)います』
118()ひながら地獄(ぢごく)(かま)一足(いつそく)とび (どく)()りつつ(あふ)(さかづき)……(かむ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)119(まも)りたまへ……と高姫(たかひめ)()(さかづき)をグツと一口(ひとくち)()()した。
120杢助(もくすけ)『ヤア珍彦(うづひこ)(さま)()()(かみ)生宮(いきみや)(しやく)をして(もら)ひました。121(をとこ)(をんな)122よい配合(はいがふ)だ、123それでは(わたくし)静子(しづこ)さまに()がして(いただ)きませう、124アハヽヽヽ、125(をとこ)(をんな)とは(なん)とはなしに配置(はいち)のよいものですわ』
126 静子(しづこ)は『ハイ有難(ありがた)う』と()(ふる)はせながら(さかづき)差出(さしだ)した。127杢助(もくすけ)浪々(なみなみ)()いだ。128静子(しづこ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かみ)(ねん)じ『神丹(しんたん)(かう)(あら)はしたまへ』と小声(こごゑ)(ねん)じながら、129グツト()()した。130それから高姫(たかひめ)(めし)()られ、131種々(いろいろ)煮〆(にしめ)()られ、132夫婦(ふうふ)十二分(じふにぶん)(はら)(ふく)らした。133されど両人(りやうにん)身体(からだ)には(すこ)しの変化(へんくわ)()かつた。134杢助(もくすけ)高姫(たかひめ)は、135(あん)相違(さうゐ)して不機嫌(ふきげん)(かほ)をして()る。136珍彦(うづひこ)(わざ)言葉(ことば)(まう)けて、
137珍彦(うづひこ)()両人(りやうにん)(さま)138(あま)沢山(たくさん)(いただ)きましたので、139(なん)だか(あたま)がグラグラ(いた)し、140()()ひさうで(ござ)います。141そして(はら)(いた)うなりました。142何卒(どうぞ)これで失礼(しつれい)して(わが)居間(ゐま)でとつくりと(やす)まして(いただ)きます』
143静子(しづこ)『アヽ(わたし)(なん)だか(むね)(わる)くなりました。144あまりどつさりお(さけ)(いただ)いたものですから、145失礼(しつれい)ながら御免(ごめん)(かうむ)ります』
146高姫(たかひめ)『ハイお塩梅(あんばい)(わる)(ござ)いますかな。147(それ)はお()毒様(どくさま)148どうぞ()勝手(かつて)にお居間(ゐま)()つてお(やす)(くだ)さいませ』
149 両人(りやうにん)は、
150珍彦、静子『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。151左様(さやう)なればこれにて失礼(しつれい)
152(わざ)とに(あし)をヨロヨロさせながら自分(じぶん)居間(ゐま)()きとり、153布団(ふとん)沢山(たくさん)かぶり、154仮病(けびやう)(よそほ)()たりける。
155 (あと)見送(みおく)高姫(たかひめ)は、156(なが)(した)()し、157(あご)(ふた)()つしやくつて()る。
158杢助(もくすけ)『アハヽヽヽ、159願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)時節(じせつ)到来(たうらい)だ、160南無(なむ)悪魔(あくま)大明神(だいみやうじん)161(まも)(たま)(さち)はひ(たま)へ』
162高姫(たかひめ)『ヱヘヽヽヘン。163ヱヘヽヽヘン。164オホヽヽヽヽ。165オホヽヽヽヽ』
166大正一二・一・一九 旧一一・一二・三 加藤明子録)
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