霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一二章 敵愾心(てきがいしん)〔一三〇六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第3篇 神意と人情 よみ(新仮名遣い):しんいとにんじょう
章:第12章 敵愾心 よみ(新仮名遣い):てきがいしん 通し章番号:1306
口述日:1923(大正12)年01月21日(旧12月5日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
楓の叫び声を聞いて、酔った五人はその場へやってきた。楓の頼みでイルが高姫を引き離そうとしたが、高姫に突かれて倒されてしまった。残りの者は高姫めがけて武者ぶりつこうとしたが、酔っていたので皆高姫に放り出されてしまった。
高姫は一人、座敷の真中で大声で見栄を切っていい気になっている。そのすきに楓が後ろから高姫の両足をすくったので、高姫は転回して五人の上にひっくり返ってしまった。高姫は膝頭とむこうずねをしたたか縁板に打ち付けて呻いている。楓はそのすきに両親にこのことを知らせようと裏口から神殿に駆けて行った。
五人は高姫が上に倒れかかってきたので、それぞれ悪態をついた。高姫は怒って五人に打ってかかろうとしたが、そこにスマートが現れて、高姫が怪我をしないように、しかし怪力にまかせて後ろ向きに森の方へ引きずっていってしまった。
高姫は五人に助けを求めたが、一同はただ高姫を見送るだけであった。そこへ楓が戻ってきて、高姫の行方を尋ねた。イルは、スマートが森に高姫を引きずって行ったので、大方喰われてしまったのだろうと答えた。
楓は呑気なことを言っていないで高姫を助けるように五人に指示した。そこへ初稚姫が、珍彦と静子を連れて現れた。珍彦と静子は、楓が高姫に食って掛かったことを注意するが、楓は、高姫が両親を毒殺しようとした、と抗弁する。
イルたち五人はそれを聞いて憤慨するが、初稚姫がとんちを利かせて、楓が夢を見たことにして五人をなだめた。初稚姫は、五人に高姫の救出に行かせた。
楓は、自分の言うことは夢でも嘘でもないと駄々をこねるが、初稚姫は何事も神様にお任せするようにと楓をなだめた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-07-19 16:06:32 OBC :rm5012
愛善世界社版:162頁 八幡書店版:第9輯 209頁 修補版: 校定版:168頁 普及版:83頁 初版: ページ備考:
001 (かへで)(さけ)(ごゑ)()(もの)()()へず、002ヅブ(ろく)連中(れんちう)(この)()へバラバラツとやつて()た。003高姫(たかひめ)()(にん)(よひ)どれをグツと(にら)み、004(こゑ)(あら)らげて、
005高姫『コリヤ、006老耄(もうろく)()007(さわ)がしい、008ドヤドヤと、009(なに)しにうせたのだ。010不都合(ふつがふ)(こと)(まを)すによつて、011義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)折檻(せつかん)(いた)してをるのだ。012いらざるチヨツカイを()し、013(かま)()てを(いた)すと了簡(れうけん)ならぬぞや』
014『コレ、015イルさま、016イクさま、017(はや)天上(てんじやう)さまを(はな)して(くだ)さいなア』
018イル『ハイ(よろ)しい、019(まへ)さまを(たす)けに()たのだ』
020座敷(ざしき)へかけ(あが)る。021高姫(たかひめ)は、
022高姫『イーイ、023小癪(こしやく)老耄(もうろく)()
024胸倉(むなぐら)をドンと()いた。025イルはヨロヨロとヨロめき、026縁側(えんがは)から(まへ)仰向(あふむ)けにひつくり(かへ)つた。027(この)(てい)()て、028イク、029サール、030ハル、031テルの()(にん)はヒヨロヒヨロしながらも、032()ばかりは()つてゐるので、033高姫(たかひめ)()がけて武者(むしや)()りつかうとする。034高姫(たかひめ)(かへで)(はな)しおき、035両手(りやうて)(ひろ)げて、036()()(やつ)(ちから)(まか)せ、037ウンとつく。038(いづ)れもヘベレケに()うてゐるのだからたまらない、039高姫(たかひめ)非力(ひりき)にも(てき)(がた)く、040将棋倒(しやうぎだふ)しに()()されて(しま)つた。041そして()(にん)()がマクマクとしたと()え、042(あわ)をふいて(くる)しんでゐる。043高姫(たかひめ)座敷(ざしき)中央(まんなか)(だい)字形(じがた)()ちはだかり、044大音声(だいおんじやう)
045高姫日出(ひのでの)(かみ)046義理(ぎり)天上(てんじやう)生宮(いきみや)神力(しんりき)は、047マヅ(この)(とほ)りだ。048仮令(たとへ)(ひやく)(にん)(せん)(にん)一万匹(いちまんびき)たりとも、049(きた)らば(きた)れ、050()神徳(しんとく)(いま)(あら)はれ(どき)
051()にのつてホラを吹立(ふきた)てる。052そして(かへで)(うしろ)にゐることは、053(まへ)()()られて、054スツカリ(わす)れてゐた。055(かへで)はソツと(うしろ)から高姫(たかひめ)両足(りやうあし)(すく)つた。056アツと(さけ)んで、057スツテンドウとひつくり(かへ)り、058(いきほひ)(あま)つて(ふたた)転回(てんくわい)し、059()(にん)(うへ)にドスンと(たふ)れた。060(その)(あひだ)(かへで)(きふ)両親(りやうしん)(ほう)ずべく、061真跣足(まつぱだし)となつて裏口(うらぐち)から神殿(しんでん)へとかけて()く。062高姫(たかひめ)膝頭(ひざがしら)向脛(むかふずね)縁板(えんいた)()ちつけ、063(かほ)をしかめて、064(こゑ)さへえ()げず「ウーンウーン」と(ふか)(いき)をついてうめいてゐる。065()(にん)(よひ)どれは(やうや)くにして起上(おきあが)り、066高姫(たかひめ)のそこに(たふ)れたのを()て、
067イル『コココリヤ、068高姫(たかひめ)069(おれ)をどなたぢやと心得(こころえ)てる、070イルさまだぞ。071貴様(きさま)神罰(しんばつ)(あた)つて、072梟鳥(ふくろどり)(やつ)()をコツかれ、073()からバツサリと()ちて、074難儀(なんぎ)をさらしてゐたぢやないか。075(その)(とき)(この)イルさまが介抱(かいほう)してやつたことを(おぼ)えてゐるか。076(あんま)(あく)がすぎると、077(この)(とほ)りだ。078エエー、079オオ(おれ)意中(いちう)愛人(あいじん)たる(かへで)さまを、080何科(なにとが)があつて、081ぶんなぐりやがつたのだ。082ササ貴様(きさま)083そこに(たふ)れてゐやがるのを(さいは)ひ、084愛人(あいじん)(かたき)をうつてやるのだ。085エエー、086コレ(かへで)さま、087(いま)(まへ)(かたき)をうつから()とりなさいや』
088イク『おい、089イル、090(かへで)さまは()げて()つたぢやないか』
091イル『ウーン、092肝腎(かんじん)()本人(ほんにん)がゐないと、093(なん)だか変哲(へんてつ)がないワイ。094(うま)(さき)功名(こうみやう)でないと、095(えん)(した)力持(ちからもち)ではつまらぬからのう』
096サール『(この)(ばば)は、097(また)しても(また)しても、098乱暴(らんばう)(こと)ばかりしやがる(やつ)だなア。099()からブチヤだれやがつて、100大変(たいへん)(くる)しみ、101(おれ)たちに厄介(やくかい)をかけておきながら、102チツと病気(びやうき)(なほ)つたと(おも)へば、103(また)もや発動(はつどう)しやがつて、104あんな可愛(かあい)(むすめ)打擲(ちやうちやく)するとは()しからぬ(やつ)だ。105(おほ)いに(かへで)さまの(かた)をもつて、106(この)(ばば)をイヤといふ(ほど)(なぐ)りつけてやりたいものだな。107コリヤ、108高姫(たかひめ)109貴様(きさま)110それ(ほど)111キリキリ(あが)つたり、112おりたり、113魔法(まはふ)使(つか)ひよると、114(おれ)だとて一寸(ちよつと)つかまへにくいわ。115チツと(しづか)にせぬかい。116こりや、117おい、118イク、119ハル、120イル、121テルの(やつ)まで、122(うへ)になつたり(した)になつたり、123まいまいこんこしてゐよる、124オヤ(いへ)までまはり()したぞ。125コリヤ大地震(おほぢしん)だ。126(ちひ)さい喧嘩(けんくわ)をやめて、127(みな)非常組(ひじやうぐみ)()かけななるまい、128コリヤ(みな)(やつ)129そんな(ところ)にキリキリ(まひ)しとる(とき)ぢやないぞよ』
130 高姫(たかひめ)打創(うちきず)大痛(おほいたみ)余程(よほど)軽減(けいげん)したので、131ムクムクと起上(おきあが)り、
132高姫『コリヤ、133()(にん)老耄(もうろく)134貴様(きさま)(この)高姫(たかひめ)義理(ぎり)天上(てんじやう)(さま)(なん)心得(こころえ)とる。135(ゆる)しもなしに(さけ)(くら)()うて、136(その)(うへ)生宮(いきみや)(さま)刃向(はむ)かふとは(なん)(こと)だ、137不心得(ふこころえ)にも(ほど)があるぞや』
138テル『ナナナ(なに)(ぬか)しよるのだい、139(あく)張本人(ちやうほんにん)()が。140(おやぢ)行方(ゆくへ)()れぬので、141発狂(はつきやう)しよつたのだな。142オイ、143コラ、144(みな)(やつ)145こんな気違(きちがひ)相手(あひて)になるな』
146高姫『コーリヤ、147モウ了簡(れうけん)せぬぞ、148みせしめの(ため)だ。149日出(ひのでの)(かみ)鉄拳(てつけん)をくらへ』
150(にぎ)(こぶし)(かた)めて、151小口(こぐち)から()つて()かうとする。152(この)(とき)(うしろ)(はう)から、
153(スマート)『ウーツ ウーツ』
154(うな)つてやつて()たのは(れい)のスマートであつた。155そしてスマートは高姫(たかひめ)怪我(けが)せないやうに(すそ)()はへて怪力(くわいりき)(まか)せ、156ドンドンドンと後向(うしろむ)けに()きずつて()く。157高姫(たかひめ)(こし)から(した)丸出(まるだ)しにして、
158高姫『オーイ、159イル、160イク、161サール、162(たす)けに()ぬか、163オーイオーイ』
164()ひながら、165ドンドンドンと(もり)(なか)へと()かれて()く。166()(にん)(この)(おそ)ろしきスマートの(はたら)きに(きも)(つぶ)し、167(さけ)()ひもさめ、168ポカンと(くち)()けて、169高姫(たかひめ)(さけ)びながら引張(ひつぱ)られて()(もり)(はう)背伸(せの)びをしながら、170心地(ここち)よげに見送(みおく)つて()た。
171 (かへで)(あわただ)しく(はし)(かへ)り、
172『ア、173(みな)さま、174よう(たす)けて(くだ)さいました。175(かげ)高姫(たかひめ)毒牙(どくが)(のが)れました。176一番(いちばん)がけに()けつけて(くだ)さいましたのは何方(どなた)(ござ)いましたいなア』
177イル『ヘーエ、178拙者(せつしや)(ござ)います。179吾々(われわれ)()(にん)受付(うけつけ)(おい)(さけ)(よひ)をさます(をり)しも、180芝居(しばゐ)口調(くてう)(たちま)(きこ)ゆる(あや)しの(こゑ)181しかも妙齢(めうれい)美人(びじん)(さけ)(ごゑ)……と()くより、182()狂乱(きやうらん)183(すく)ひ……()さねばなるまいと、184(うしろ)鉢巻(はちまき)リンとしめ、185襷十字(たすきじふじ)にあや()り、186(はかま)股立(ももだち)ヂンと()げ、187此方(こなた)()して、188一目散(いちもくさん)に、189タツタツタツと一散走(いつさんばし)り、190()()れば虎狼(こらう)にも(ひと)しき、191馬鹿(ばか)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)192おのれ、193最愛(さいあい)楓姫(かへでひめ)(さま)打擲(ちやうちやく)いたすとは不埒(ふらち)千万(せんばん)194()つてすてむとかけよる(をり)しも、195(てき)(ちから)やまさりけむ、196グツと(むね)をつかれ、197ヨーロヨロヨロヨロと三間(さんげん)ばかり、198たあちまち、199縁側(えんがは)より仰向(あふむけ)にスツテンドウと顛落(てんらく)し、200頭蓋骨(づがいこつ)をシタタカ(くだ)き、201(こし)(ほね)(いく)らか(いた)めたれど、202(なに)()つても最愛(さいあい)楓姫(かへでひめ)身代(みがは)りと(おも)へば、203()しても(めい)すべし……と覚悟(かくご)をきはめました。204()(いさ)ましき勇士(ゆうし)でげせうがなア』
205『ホホホあのマア()元気(げんき)なこと、206(をとこ)さまはお(さけ)()ふと、207それだから(いや)なのよ』
208サール『アハハハハ、209コリヤ、210イル、211どこに捻鉢巻(ねぢはちまき)をしてるのだい。212(たすき)十文字(じふもんじ)も、213(はかま)股立(ももだち)も、214どこにあるのだ。215あまり馬鹿(ばか)にするない。216そんな(こと)()ふから、217(かへで)さまに(わら)はれるのだ』
218イル『ナアニ、219一寸(ちよつと)芝居(しばゐ)をして()たのだよ。220アツハハハハ』
221(とき)(みな)さま、222高姫(たかひめ)さまは何処(どこ)()かれましたの』
223イル『ナアニ心配(しんぱい)なさいますな。224今頃(いまごろ)にや猛犬(まうけん)()はれて()るに(ちが)ひありませぬワ。225あの(いぬ)だつて、226あんな(おほ)きな(からだ)をスツカリ()うて(しま)(はず)もありますまいから、227(うで)一本(いつぽん)でも(のこ)つて()れば、228其奴(そいつ)(はうむ)つてやればいいのだ。229マア貴女(あなた)強敵(きやうてき)(ほろ)びまして結構(けつこう)ですよ、230()安心(あんしん)なさいませ。231かくの(ごと)万夫(ばんぷ)不当(ふたう)大丈夫(ますらを)(この)(やかた)立籠(たてこも)以上(いじやう)は、232如何(いか)なる(てき)()しよせ(きた)るとも、233何条(なんでう)ひるむべき、234(たちま)木端(こつぱ)微塵(みぢん)()(くだ)き、235蹴倒(けたふ)()(たふ)し、236天晴(あつぱれ)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はし、237勝鬨(かちどき)あぐるは(またた)(うち)238姫君(ひめぎみ)(さま)239(かなら)(かなら)()煩慮(はんりよ)なされますなや』
240芝居(しばゐ)がかりになつてゐる。
241『そんな気楽(きらく)(こと)()つて()らず、242(はや)高姫(たかひめ)さまを(たす)けて()げて(くだ)さいな』
243イル『ハイ、244(わたし)にお(たの)みですか。245(ただし)はイクにですか。246(また)はサール、247ハル、248テル、249(いづ)れに()指定(してい)(くだ)さいますかなア』
250『エーエ、251(さけ)()うて、252(こま)つた(ひと)だなア。253(みな)さま、254(はや)()つて(たす)けて(くだ)さいな。255マゴマゴしてゐちや、256高姫(たかひめ)さまの(いのち)がなくなりますよ』
257イル『ヘヘヘ、258(なに)仰有(おつしや)います。259あんな(やつ)ア、260(いぬ)()はれた(はう)が、261余程(よつぽど)都合(つがふ)(よろ)しいよ。262のう(みな)連中(れんちう)
263サール『それでも女王(ぢよわう)(さま)()命令(めいれい)だから、264ともかく、265()るだけでもいいから()つて()うぢやないか』
266(くだ)らぬクダを()いてゐる。267そこへ初稚姫(はつわかひめ)珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)(ともな)ひ、268(あら)はれ(きた)り、
269初稚姫『あ、270貴女(あなた)(かへで)さま、271怪我(けが)(ござ)いませなんだか、272(あぶ)ない(こと)だつたさうですね』
273『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。274チツとばかり(あたま)(いた)みますけれど、275(たい)した(こと)(ござ)いますまい』
276珍彦(うづひこ)(あま)(かへで)(くち)がいいものですから、277義理(ぎり)天上(てんじやう)さまのお(いか)りに()れたのでせうよ』
278『それだつてお(とう)さま、279毒殺(どくさつ)(たく)んでおいて、280あべこべに(わたし)をとつちめるのですもの、281(わたし)だつて、282(あんま)りで()はぬと()(わけ)には()きませぬワ』
283静子(しづこ)『あの(とほ)りのお転婆(てんば)(ござ)いますから、284本当(ほんたう)(おや)(こま)ります。285初稚姫(はつわかひめ)(さま)286(おや)教育(けういく)(わる)いものですから、287こんな(とき)にアラが()えまして、288(はづか)しう(ござ)います』
289イル『ナーニ、290高姫婆(たかひめばば)()291毒害(どくがい)をしようと(たく)みよつたのか、292其奴(そいつ)()()てならぬ。293オイ家来(けらい)(ども)294悪人(あくにん)征伐(せいばつ)だ、295サア()いツ。296(うで)をねぢ()(また)()きさき、297(くび)をチヨン()つてこらしめてやらう。298いざ()い、299(きた)れ』
300(しり)ひつからげ(はや)くも()()さうとする。301()(にん)も、
302(イク、サール、ハル、テル)『ヨーシ、303合点(がつてん)だ、304突貫(とつくわん)々々(とつくわん)
305()ひながら、306(しり)ひつからげ、307かけ()さうとするのを初稚姫(はつわかひめ)(こゑ)(はげ)まし、
308初稚姫(みな)さま、309()ちなさい』
310制止(せいし)した。
311イル『それぢやと(まを)して、312(かく)(ごと)悪人(あくにん)を、313どうノメノメと()のがす(こと)出来(でき)ませう。314どうぞ(わたし)天上(てんじやう)(いのち)をとらして(くだ)さい。315日頃(ひごろ)(きた)へた武術(ぶじゆつ)手前(てまへ)316二尺(にしやく)八寸(はつすん)伊達(だて)にはささぬ』
317(また)もや()()さうとする。318初稚姫(はつわかひめ)両手(りやうて)(ひろ)げて()(にん)(まへ)立塞(たちふさ)がり、
319初稚姫()つた()つた、320()ちなさいませ。321(かへで)さまが(ゆめ)御覧(ごらん)になつたのですよ。322サツパリ(うそ)ですからな、323メツタな(こと)をしては()けませぬ』
324初稚姫(はつわかひめ)早速(さつそく)頓智(とんち)()(にん)張切(はりき)つた(いきほひ)()け、325(たがひ)(かほ)見合(みあは)せ、
326(五人)『ナーンダ、327馬鹿(ばか)らしい、328(ゆめ)だつたか』
329手持(てもち)無沙汰(ぶさた)に、330(また)もやしやがんで(しま)つた。
331『それだつて、332(わたし)333チツトも(うそ)()はないワ』
334初稚姫(かへで)さま、335(ゆめ)浮世(うきよ)といふ(こと)がありますよ。336(まへ)さまは(ゆめ)をみてゐたのですよ。337(ゆめ)(おも)ひさへすりやすむ(こと)ですからね』
338『だつて(あたま)(いた)みますもの、339(ゆめ)になぐられても矢張(やつぱり)こんなに(いた)いでせうかな』
340(あたま)(かか)へて、341(うら)めしさうにしやがんで(しま)つた。
342珍彦(うづひこ)初稚姫(はつわかひめ)(さま)343仕方(しかた)のない(むすめ)でせうがな。344時々(ときどき)(だい)それた、345あんな(うそ)(まを)しましてな、346両親(りやうしん)(こま)りますの』
347『お(とう)さま、348わたえ、349(うそ)(きら)ひといふのに……そんな(こと)()つて(もら)つちや、350(わたし)立瀬(たつせ)がないワ。351アンアンアンアン』
352静子(しづこ)(なん)でもいいぢやないか。353おとなしくしてゐなさい』
354『それでも(いた)くてたまらないワ』
355初稚(はつわか)『サ、356イルさま、357イクさま、358(ほか)(さん)(にん)さま、359(はや)高姫(たかひめ)さまを(すく)()しに()つて(くだ)さいな』
360イル『ハイ、361承知(しようち)(いた)しました。362サ、363()(にん)(もの)(ども)364天下(てんか)無双(むさう)勇士(ゆうし)365イルに(つづ)けツ、366(まへ)(すす)めツ、367(いち)()(さん)ツ』
368軍隊(ぐんたい)(しき)にチヨクチヨクと地上(ちじやう)(きざ)みながら、369高姫(たかひめ)()きずられて()つた()(しげ)みを(たづ)ねて(はし)()く。370後見送(あとみおく)つて初稚姫(はつわかひめ)両手(りやうて)(あは)せ、371神界(しんかい)高姫(たかひめ)無事(ぶじ)ならむ(こと)(いの)つた。
372(かへで)(ひめ)(さま)373本当(ほんたう)義理(ぎり)天上(てんじやう)といふあの()アさまは、374無茶(むちや)(ひと)ですよ。375(おも)()すと、376(あんま)りの業託(ごふたく)をいふので、377(はら)()つてたまりませぬワ。378貴女(あなた)(さま)がお(たす)(くだ)さらなかつたならば、379モウ今頃(いまごろ)はお(とう)さまもお(かあ)さまも()くなつてゐるのですもの。380(わたし)()として、381()うしてこれが(だま)つてゐられませうかねえ。382チツと(いまし)めておいてやらなければ、383何時(なんどき)384(とう)さまやお(かあ)さまを毒害(どくがい)するか(わか)つたものぢやありませぬ。385(わたし)386ここ(いつ)週間(しうかん)(ほど)といふものは、387夜分(やぶん)もロクに()(こと)はありませぬのよ。388両親(りやうしん)()(うへ)()にかかつて仕方(しかた)がないのですもの』
389初稚姫『ああそれは御尤(ごもつと)もで(ござ)います。390(しか)しながら何事(なにごと)(かみ)(さま)()(まか)せなさいませ。391三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)にも(ござ)いませうがな……(かみ)(おもて)(あら)はれて、392(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける……とお(しめ)しになつてゐますから、393キツと悪人(あくにん)(かみ)(さま)(かたき)()つて(くだ)さいますよ。394人間(にんげん)何事(なにごと)(かみ)(さま)にお(まか)せする(はう)安全(あんぜん)ですからね』
395『ハイ、396有難(ありがた)(ござ)います』
397珍彦(うづひこ)(ひめ)(さま)398よう()うて()かして(くだ)さいました。399吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)もこれでヤツと安心(あんしん)(いた)しました。400(じつ)(ところ)401吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)(この)(あひだ)から一目(ひとめ)()()なかつたのです。402何時(なんどき)(この)(かへで)懐剣(くわいけん)()つて、403(おや)(かたき)だと()つて、404高姫(たかひめ)(さま)()りかけるやら(わか)らない形勢(けいせい)(ござ)いましたので、405(ここ)七八日(ななやうか)といふものは、406夫婦(ふうふ)(もの)夜分(やぶん)になれば一睡(いつすゐ)もせなかつたのです。407どうぞ不調法(ぶてうはふ)がないやうと大神(おほかみ)(さま)(いの)つてゐました。408()()づそのお(かげ)無事(ぶじ)今日(けふ)(まで)()れました。409(まこと)有難(ありがた)(ござ)います。410高姫(たかひめ)(さま)()大病中(たいびやうちう)にも夫婦(ふうふ)(もの)がお(たづ)ねせなくちやなりませぬのだが、411(むすめ)()きませぬので、412(こころ)ならずも、413いかい失礼(しつれい)(いた)しました。414(また)(むすめ)(むすめ)として、415高姫(たかひめ)さまにお見舞(みまひ)にやつてくれと(まを)しましたが、416どうも懐剣(くわいけん)(はな)さないので、417剣呑(けんのん)でたまりませず、418(むすめ)見舞(みまひ)にやらず、419吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)もお見舞(みまひ)にゆかず、420高姫(たかひめ)(さま)がお不足(ふそく)仰有(おつしや)るのも無理(むり)(ござ)いませぬ。421(なん)()つても(おや)(かたき)()つと()つて、422あのイヤらしい山口(やまぐち)(もり)(うし)(とき)(まゐ)りをするといふ(むすめ)(ござ)いますからな。423本当(ほんたう)敵愾心(てきがいしん)(つよ)い、424女子(をなご)だてら仕方(しかた)のない難物(なんぶつ)(ござ)います。425どうぞ貴女(あなた)(さま)のお(ちから)で、426トツクリと()()かしてやつて(くだ)さいませ』
427初稚姫(かへで)さま、428(はら)()ちませうが、429どうぞ(わたし)居間(ゐま)(まで)()(あそ)びに()(くだ)さいませ。430(また)面白(おもしろ)(うた)でも(うた)つて(あそ)びませう。431サ、432()でなさいませ』
433(やさ)しく(かへで)()()いて、434十七(じふしち)(さい)(をんな)同士(どうし)初稚姫(はつわかひめ)居間(ゐま)()して(すす)()く。
435大正一二・一・二一 旧一一・一二・五 松村真澄録)
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki