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霊界物語
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第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
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第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
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第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
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真善美愛
第49巻(子の巻)
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第51巻(寅の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第63巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 妙法山月
01 玉の露
〔1608〕
02 妙法山
〔1609〕
03 伊猛彦
〔1610〕
04 山上訓
〔1611〕
05 宿縁
〔1612〕
06 テルの里
〔1613〕
第2篇 日天子山
07 湖上の影
〔1614〕
08 怪物
〔1615〕
09 超死線
〔1616〕
第3篇 幽迷怪道
10 鷺と鴉
〔1617〕
11 怪道
〔1618〕
12 五託宣
〔1619〕
13 蚊燻
〔1620〕
14 嬉し涙
〔1621〕
第4篇 四鳥の別
15 波の上
〔1622〕
16 諒解
〔1623〕
17 峠の涙
〔1624〕
18 夜の旅
〔1625〕
第5篇 神検霊査
19 仕込杖
〔1626〕
20 道の苦
〔1627〕
21 神判
〔1628〕
22 蚯蚓の声
〔1629〕
余白歌
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第63巻
> 第5篇 神検霊査 > 第19章 仕込杖
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第一九章
仕込杖
(
しこみづゑ
)
〔一六二六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
篇:
第5篇 神検霊査
よみ(新仮名遣い):
しんけんれいさ
章:
第19章 仕込杖
よみ(新仮名遣い):
しこみづえ
通し章番号:
1626
口述日:
1923(大正12)年05月29日(旧04月14日)
口述場所:
天声社
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年2月3日
概要:
舞台:
ハルセイ山
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6319
愛善世界社版:
259頁
八幡書店版:
第11輯 356頁
修補版:
校定版:
269頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
イク、
002
サールの
両人
(
りやうにん
)
は
003
伊太彦
(
いたひこ
)
の
路傍
(
ろばう
)
の
石
(
いし
)
に
腰
(
こし
)
打
(
うち
)
掛
(
かけ
)
、
0031
俯向
(
うつむ
)
いてる
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
004
月影
(
つきかげ
)
にすかし
乍
(
なが
)
ら、
005
イク『
貴方
(
あなた
)
は
旅人
(
たびびと
)
とお
見受
(
みう
)
け
申
(
まを
)
しますが、
006
一寸
(
ちよつと
)
物
(
もの
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
します。
007
天女
(
てんによ
)
のやうな
綺麗
(
きれい
)
な
綺麗
(
きれい
)
な
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
犬
(
いぬ
)
を
連
(
つ
)
れてお
通
(
とほ
)
りになつたのを
御覧
(
ごらん
)
になりませぬか』
008
伊太彦
(
いたひこ
)
はハテ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
を
尋
(
たづ
)
ねるものだと
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
009
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
をツラツラ
眺
(
なが
)
めて、
010
伊太
(
いた
)
『イヤさう
聞
(
き
)
く
声
(
こゑ
)
は
何
(
なん
)
だか
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
えがあるやうだ。
011
拙者
(
せつしや
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
012
伊太彦
(
いたひこ
)
と
申
(
まを
)
すもの、
013
左様
(
さやう
)
なお
方
(
かた
)
はお
通
(
とほ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたのは
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
らぬ』
014
サール『やアお
前
(
まへ
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
さまぢやないか。
015
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
では
随分
(
ずいぶん
)
管
(
くだ
)
を
捲
(
ま
)
いたものだな、
016
其
(
その
)
後
(
ご
)
玉国別
(
たまくにわけ
)
さまに
跟
(
つ
)
いてハルナの
都
(
みやこ
)
へ
進
(
すす
)
まれた
筈
(
はず
)
だが、
017
まだ
斯
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
へ
迂路
(
うろ
)
ついて
厶
(
ござ
)
つたのか』
018
伊太
(
いた
)
『うん、
019
君
(
きみ
)
はイク、
020
サールの
両人
(
りやうにん
)
だな。
021
これはこれは
珍
(
めづ
)
らしい
処
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
ふたものだ。
022
そして
又
(
また
)
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
の
後
(
あと
)
を
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
慕
(
した
)
うて
行
(
ゆ
)
く
考
(
かんが
)
へかな。
023
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
がよくまアお
伴
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
された
事
(
こと
)
だな』
024
サール『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもお
許
(
ゆる
)
しが
無
(
な
)
いものだから、
025
強行
(
きやうかう
)
進軍
(
しんぐん
)
と
出掛
(
でか
)
け、
026
見
(
み
)
えつ
隠
(
かく
)
れつ、
027
後
(
あと
)
になり
前
(
さき
)
になり、
028
ここ
迄
(
まで
)
ついて
来
(
き
)
たのだが、
029
エルの
港
(
みなと
)
からサツパリお
姿
(
すがた
)
を
見失
(
みうしな
)
ひ、
030
前
(
さき
)
になつてるのか、
031
後
(
あと
)
になつてるのか
分
(
わか
)
らぬので
心配
(
しんぱい
)
してるのだ』
032
伊太
(
いた
)
『あ、
033
さうだつたか。
034
拙者
(
せつしや
)
も
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
に
一度
(
いちど
)
会
(
あ
)
つてお
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
し
度
(
た
)
いのだが、
035
あの
方
(
かた
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だから
変幻
(
へんげん
)
出没
(
しゆつぼつ
)
自在
(
じざい
)
、
036
何方
(
どちら
)
へおいでになつたか
皆目
(
かいもく
)
分
(
わか
)
らぬのだ。
037
まアゆつくり
一服
(
いつぷく
)
し
玉
(
たま
)
へ。
038
まだ
此
(
この
)
阪道
(
さかみち
)
は
随分
(
ずいぶん
)
あるさうだから、
039
慌
(
あわて
)
た
処
(
ところ
)
で
仕方
(
しかた
)
がない。
040
チツとは
人間
(
にんげん
)
の
身体
(
からだ
)
も
休養
(
きうやう
)
が
大切
(
たいせつ
)
だ。
041
休
(
やす
)
んでは
歩
(
ある
)
き、
042
休
(
やす
)
んでは
歩
(
ある
)
きする
方
(
はう
)
が、
043
身体
(
からだ
)
の
為
(
ため
)
にも
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
よいか
分
(
わか
)
らないよ』
044
イク『
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
伊太彦
(
いたひこ
)
さまに
面会
(
めんくわい
)
したのだから、
045
先
(
ま
)
づ
此処
(
ここ
)
で、
046
ゆつくりと
話
(
はな
)
して
行
(
ゆ
)
かうぢやないか』
047
サール『
久
(
ひさし
)
振
(
ぶ
)
りだと
云
(
い
)
ふけれど、
048
スマの
関所
(
せきしよ
)
でお
前
(
まへ
)
が
宿屋
(
やどや
)
をやつて
居
(
ゐ
)
た
時
(
とき
)
に
049
入口
(
いりぐち
)
に
守衛然
(
しゆゑいぜん
)
と
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
つたぢやないか。
050
云
(
い
)
はば
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
等
(
たち
)
の
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
さまだ』
051
イク『
成程
(
なるほど
)
、
052
あの
時
(
とき
)
に
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
も
居
(
ゐ
)
られたのかな。
053
あまり
沢山
(
たくさん
)
のバラモン
軍
(
ぐん
)
で
見落
(
みおと
)
して
居
(
ゐ
)
たのだ。
054
そして
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
に
叱
(
しか
)
られるものだから、
055
スマの
里
(
さと
)
を
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
待
(
ま
)
ちつつ、
056
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
とバラモンの
泥棒
(
どろばう
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
して
来
(
き
)
たものだから
今
(
いま
)
になつたのだが、
057
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
058
之
(
これ
)
から
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一緒
(
いつしよ
)
にハルナの
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
かうぢやないか。
059
どうしたものか
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
はハルナへ
行
(
ゆ
)
かずに、
060
エルサレム
街道
(
かいだう
)
の
方
(
はう
)
へ
足
(
あし
)
を
向
(
む
)
けられたものだから、
0601
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
たのだが
061
一体
(
いつたい
)
どうなるのだらうな』
062
伊太
(
いた
)
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のなさる
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
には
分
(
わか
)
らないよ。
063
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
だとて、
064
テームス
峠
(
たうげ
)
を
向
(
むか
)
ふへ
渡
(
わた
)
り、
065
直
(
すぐ
)
にハルナに
行
(
ゆ
)
かれる
都合
(
つがふ
)
だつたが、
066
いろいろ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
たり、
067
事件
(
じけん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
して、
068
何者
(
なにもの
)
にか
引
(
ひ
)
かるる
様
(
やう
)
に
此方
(
こちら
)
へおいでになつたのだ。
069
之
(
これ
)
も
何
(
なに
)
かの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
だらう。
070
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ない。
071
宣伝使
(
せんでんし
)
は
一人
(
ひとり
)
と
定
(
きま
)
つてるさうだから
072
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
も
伴
(
とも
)
をつれないのだ。
073
それで
私
(
わたし
)
も
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
師匠
(
ししやう
)
から
074
途中
(
とちう
)
から、
0741
突放
(
つつぱな
)
されて
一人旅
(
ひとりたび
)
をやつてゐるが、
075
一人旅
(
ひとりたび
)
は
辛
(
つら
)
いものの
又
(
また
)
便利
(
べんり
)
なものの
気楽
(
きらく
)
なものだ。
076
何
(
なに
)
は
扨
(
さ
)
て
置
(
お
)
き、
077
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
だから
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないわ。
078
何
(
いづ
)
れエルサレムで
一緒
(
いつしよ
)
にお
目
(
め
)
にかからうぢやないか』
079
イク『それでも
照国別
(
てるくにわけ
)
、
080
治国別
(
はるくにわけ
)
、
081
黄金姫
(
わうごんひめ
)
様
(
さま
)
等
(
など
)
は
082
一人
(
ひとり
)
でおいでになつたのでは
無
(
な
)
からう。
083
あの
方々
(
かたがた
)
はどうなるのだ』
084
伊太
(
いた
)
『それも
何
(
なに
)
か
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
のある
事
(
こと
)
だらう。
085
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
には
解
(
わか
)
らないわ』
086
サール『おい、
087
イク、
088
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふ
丈
(
だ
)
け
野暮
(
やぼ
)
だよ。
089
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
おいでになつたのも
独立
(
どくりつ
)
独歩
(
どくぽ
)
、
090
一人前
(
いちにんまへ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
になられたからだ。
091
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
092
清照姫
(
きよてるひめ
)
が
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れで
行
(
い
)
つたのは、
093
半人前
(
はんにんまへ
)
づつの
二
(
ふた
)
つ
一
(
いち
)
で
行
(
い
)
つたのだよ。
094
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
皆
(
みな
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
連
(
づ
)
れ
四
(
よ
)
人
(
にん
)
連
(
づ
)
れだからまア
三分
(
さんぶん
)
の
一
(
いち
)
、
095
四分
(
しぶん
)
の
一
(
いち
)
の
人間
(
にんげん
)
位
(
ぐらゐ
)
なものだ、
096
アツハヽヽヽ』
097
イク『さうすると
伊太彦
(
いたひこ
)
さまは
偉
(
えら
)
いぢやないか。
098
到頭
(
たうとう
)
一人前
(
いちにんまへ
)
になられたと
見
(
み
)
えるわい。
099
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
も
二
(
ふた
)
つ
一
(
ひとつ
)
かな』
100
サール『きまつた
事
(
こと
)
だよ。
101
二人
(
ふたり
)
に
一
(
ひと
)
つの
玉
(
たま
)
を
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
るのを
見
(
み
)
ても
分
(
わか
)
るぢやないか』
102
イク『それでも
伊太彦
(
いたひこ
)
さまは
一人
(
ひとり
)
でゐ
乍
(
なが
)
ら
玉
(
たま
)
がないぢやないか。
103
そりや
又
(
また
)
どうなるのだ』
104
サール『
改心
(
かいしん
)
の
出来
(
でき
)
たお
方
(
かた
)
は
心
(
こころ
)
の
玉
(
たま
)
が
光
(
ひか
)
つてるのだから、
105
形
(
かたち
)
の
上
(
うへ
)
の
玉
(
たま
)
は
必要
(
ひつえう
)
ないのだ。
106
玉
(
たま
)
を
持
(
も
)
つて
歩
(
ある
)
かなくちやならぬのは、
107
ヤツパリ
何処
(
どこ
)
かに
足
(
た
)
らぬ
処
(
ところ
)
があるのだ。
108
夜道
(
よみち
)
が
怖
(
こは
)
いと
云
(
い
)
つて
仕込杖
(
しこみづゑ
)
を
持
(
も
)
つて
歩
(
ある
)
くやうなものだ。
109
なア
伊太彦
(
いたひこ
)
さま、
110
さうでせう』
111
伊太
(
いた
)
『さう
聞
(
き
)
かれるとお
恥
(
はづ
)
かしい
話
(
はなし
)
だが、
112
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
はスーラヤ
山
(
さん
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
入
(
い
)
り、
113
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
の
玉
(
たま
)
を
頂
(
いただ
)
いて
此処
(
ここ
)
に
所持
(
しよぢ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
114
ヤツパリ
私
(
わたし
)
も
仕込杖
(
しこみづゑ
)
の
口
(
くち
)
かな』
115
サール『ヤア
其奴
(
そいつ
)
ア
不思議
(
ふしぎ
)
だ。
116
あの
八大
(
はちだい
)
竜王
(
りうわう
)
の
中
(
なか
)
でも
117
最
(
もつと
)
も
険難
(
けんのん
)
な
所
(
ところ
)
に
棲居
(
すまゐ
)
をしてゐる
死
(
し
)
の
山
(
やま
)
と
聞
(
きこ
)
えたスーラヤ
山
(
さん
)
へ
駆
(
か
)
け
上
(
のぼ
)
つて
118
玉
(
たま
)
をとつて
来
(
く
)
るとは
豪気
(
がうき
)
なものだ。
119
そして
其
(
その
)
玉
(
たま
)
は
今
(
いま
)
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
られるのか。
120
一
(
ひと
)
つ
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものだな』
121
伊太
(
いた
)
『ヤア
折角
(
せつかく
)
だが
神器
(
しんき
)
を
私
(
わたくし
)
する
訳
(
わけ
)
には
行
(
い
)
かぬ。
122
丁寧
(
ていねい
)
に
包
(
つつ
)
んで
懐
(
ふところ
)
に
納
(
をさ
)
めてあるのだから、
123
エルサレムに
行
(
い
)
つて
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
渡
(
わた
)
しする
迄
(
まで
)
は
拝
(
をが
)
む
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないのだ。
124
そしてお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
る
玉
(
たま
)
と
云
(
い
)
ふのは
誰
(
たれ
)
から
頂
(
いただ
)
いたのだ』
125
イク『
勿体
(
もつたい
)
無
(
な
)
くも
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
から
直接
(
ちよくせつ
)
に
拝戴
(
はいたい
)
したのだ。
126
此
(
この
)
玉
(
たま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
沢山
(
たくさん
)
な
泥棒
(
どろばう
)
にも
出会
(
であ
)
ひ、
127
色々
(
いろいろ
)
の
猛獣
(
まうじう
)
の
原野
(
げんや
)
を
渡
(
わた
)
り、
128
大河
(
おほかは
)
を
越
(
こ
)
えて
無事
(
ぶじ
)
で
来
(
き
)
たのも、
129
此
(
この
)
水晶玉
(
すいしやうだま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
だ。
130
伊太彦
(
いたひこ
)
さまが
玉
(
たま
)
が
大切
(
たいせつ
)
だと
云
(
い
)
へば、
131
此方
(
こちら
)
も
大切
(
たいせつ
)
だ。
132
絶対
(
ぜつたい
)
的
(
てき
)
に
見
(
み
)
せる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬわい』
133
伊太
(
いた
)
『それでは
仕方
(
しかた
)
がない、
134
売言葉
(
うりことば
)
に
買言葉
(
かひことば
)
だ。
135
自分
(
じぶん
)
の
玉
(
たま
)
を
隠
(
かく
)
しておいて、
136
人
(
ひと
)
の
玉
(
たま
)
を
見
(
み
)
せろと
云
(
い
)
ふのが
此方
(
こちら
)
の
誤謬
(
あやまり
)
だ。
137
さアここで
別
(
わか
)
れませう。
138
エルサレムに
行
(
い
)
つて
何
(
いづ
)
れ
十日
(
とをか
)
や
二十日
(
はつか
)
は
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
も
御
(
ご
)
修業
(
しうげふ
)
遊
(
あそ
)
ばすから、
139
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
には
一緒
(
いつしよ
)
になるであらう。
140
左様
(
さやう
)
なら』
141
と
伊太彦
(
いたひこ
)
はスタスタと
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
142
二人
(
ふたり
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ
後
(
あと
)
をも
追
(
お
)
はず、
143
ゆつくりと
路傍
(
ろばう
)
の
岩
(
いは
)
に
腰
(
こし
)
打
(
うち
)
掛
(
か
)
け
話
(
はなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
144
イク『おい、
145
サール、
146
伊太彦
(
いたひこ
)
が
松彦
(
まつひこ
)
に
捕
(
とら
)
へられ、
147
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
にやつて
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
は
随分
(
ずいぶん
)
面白
(
おもしろ
)
い
奴
(
やつ
)
だつた。
148
滑稽
(
こつけい
)
諧謔
(
かいぎやく
)
口
(
くち
)
を
衝
(
つ
)
いて
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふ
人気
(
にんき
)
男
(
をとこ
)
が、
149
あれ
丈
(
だ
)
けの
神格者
(
しんかくしや
)
にならうとは
予期
(
よき
)
しなかつた。
150
何
(
なん
)
と
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふものは
変
(
かは
)
れば
変
(
かは
)
るものぢやないか。
151
吾々
(
われわれ
)
二人
(
ふたり
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
のお
伴
(
とも
)
も
許
(
ゆる
)
されず、
152
日蔭者
(
ひかげもの
)
となつて、
153
斯
(
か
)
う
春情
(
さかり
)
のついた
牡犬
(
をいぬ
)
が
牝犬
(
めいぬ
)
を
探
(
さが
)
すやうに
後
(
あと
)
を
嗅
(
かぎ
)
つけてやつて
来
(
き
)
たものの
154
公然
(
こうぜん
)
とお
目
(
め
)
にかかる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
い
)
かず、
155
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
行
(
い
)
つてから、
156
「
不届
(
ふとど
)
きな
奴
(
やつ
)
だ、
157
何
(
なに
)
しに
来
(
き
)
た」と
叱
(
しか
)
られでもしたら、
158
それこそ
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
説法
(
せつぽふ
)
屁
(
へ
)
一
(
ひと
)
つにもならない。
159
何
(
なん
)
とか
立場
(
たちば
)
を
明
(
あきら
)
かにせなくては、
160
「
名
(
な
)
正
(
ただ
)
しからざるは
立
(
た
)
たず」とか
云
(
い
)
つて、
161
マゴマゴして
居
(
ゐ
)
ると
其処辺
(
そこら
)
四辺
(
あたり
)
の
奴
(
やつ
)
に
泥棒
(
どろぼう
)
扱
(
あつか
)
ひをされて、
162
其
(
その
)
上
(
うへ
)
163
虻蜂
(
あぶはち
)
とらずになつては
詮
(
つま
)
らぬぢやないか』
164
サール『
何
(
なに
)
、
165
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
心次第
(
こころしだい
)
の
御
(
ご
)
利益
(
りやく
)
を
下
(
くだ
)
さるのだから、
166
吾々
(
われわれ
)
の
真心
(
まごころ
)
が
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
通
(
とほ
)
らぬ
道理
(
だうり
)
が
何処
(
どこ
)
にあらう。
167
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
千
(
せん
)
里
(
り
)
向
(
むか
)
ふの
事
(
こと
)
でも
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
だから、
168
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
が
斯
(
か
)
うして
跟
(
つ
)
いて
来
(
く
)
るのも
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
だ。
169
之
(
これ
)
を
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
られるのは
170
表面
(
うはべ
)
は
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
はれないが、
171
実
(
じつ
)
は
跟
(
つ
)
いて
来
(
こ
)
いと
言
(
い
)
はぬ
許
(
ばか
)
りだ。
172
そんな
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
はするな。
173
さア
行
(
ゆ
)
かうぢやないか』
174
イク『
道
(
みち
)
の
辺
(
べ
)
に
憩
(
いこ
)
ふ
二人
(
ふたり
)
は
尻
(
しり
)
あげて
175
またもや
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
かうぞとする』
176
サール『
此
(
この
)
場
(
ば
)
をばサールの
吾
(
われ
)
は
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
く
177
蓮花
(
はちすばな
)
咲
(
さ
)
くハルナの
都
(
みやこ
)
へ。
178
今
(
いま
)
先
(
さき
)
へ
一人
(
ひとり
)
伊太彦
(
いたひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
179
逃
(
に
)
げるやうにして
玉
(
たま
)
抱
(
かか
)
へ
行
(
ゆ
)
く』
180
イク『
泥棒
(
どろばう
)
のやうな
顔
(
かほ
)
した
吾々
(
われわれ
)
を
181
恐
(
おそ
)
れて
逃
(
に
)
げた
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
』
182
サール『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
住
(
す
)
む
奴
(
やつ
)
は
183
皆
(
みな
)
泥棒
(
どろばう
)
の
未製品
(
みせいひん
)
なる』
184
イク『バラモンの
軍
(
いくさ
)
の
君
(
きみ
)
に
従
(
したが
)
ひて
185
泥棒
(
どろぼう
)
稼
(
かせ
)
ぎし
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
よ』
186
サール『そんな
事
(
こと
)
夢
(
ゆめ
)
にも
云
(
い
)
ふて
呉
(
く
)
れるなよ
187
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
最早
(
もはや
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
。
188
泥濘
(
ぬかるみ
)
の
泥
(
どろ
)
の
中
(
なか
)
より
蓮花
(
はちすばな
)
189
咲
(
さ
)
き
出
(
い
)
づる
例
(
ためし
)
あるを
知
(
し
)
らずや』
190
イク『
蓮花
(
はちすばな
)
如何
(
いか
)
に
清
(
きよ
)
けく
匂
(
にほ
)
ふとも
191
散
(
ち
)
りては
泥
(
どろ
)
の
埋草
(
うめぐさ
)
となる。
192
一度
(
ひとたび
)
は
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
で
咲
(
さ
)
き
充
(
み
)
ちし
193
蓮
(
はちす
)
なれども
今
(
いま
)
は
詮
(
せん
)
なし。
194
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
聞
(
き
)
く
度
(
たび
)
毎
(
ごと
)
に
村肝
(
むらきも
)
の
195
心
(
こころ
)
の
垢
(
あか
)
の
深
(
ふか
)
きをぞ
知
(
し
)
る。
196
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
にさやる
黒雲
(
くろくも
)
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
197
照
(
て
)
らさせ
玉
(
たま
)
へ
水
(
みづ
)
の
光
(
ひかり
)
に。
198
伊太彦
(
いたひこ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
を
規範
(
のり
)
として
199
魂
(
たま
)
研
(
みが
)
かまし
道
(
みち
)
歩
(
あゆ
)
みつつ』
200
二人
(
ふたり
)
は
半時
(
はんとき
)
ばかり
経
(
た
)
つて
201
又
(
また
)
もや
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
足拍子
(
あしびやうし
)
をとり
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
202
『
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
にて
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
203
百
(
もも
)
の
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふなる
204
ハルセイ
山
(
ざん
)
の
大峠
(
おほたうげ
)
205
三日
(
みつか
)
三夜
(
みよさ
)
をてくついて
206
漸
(
やうや
)
くここに
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
207
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
三五
(
あななひ
)
の
208
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
が
道
(
みち
)
の
辺
(
べ
)
に
209
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れを
休
(
やす
)
めつつ
210
眠
(
ねむ
)
らせ
玉
(
たま
)
ふ
不思議
(
ふしぎ
)
さよ
211
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
恥
(
はづ
)
かしや
212
高春山
(
たかはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
213
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
214
酒
(
さけ
)
酌
(
く
)
み
交
(
か
)
はし
夢
(
ゆめ
)
の
世
(
よ
)
を
215
酔
(
よ
)
ふて
暮
(
くら
)
せし
吾々
(
われわれ
)
も
216
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
217
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
屯
(
たむろ
)
して
218
珍
(
うづ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
の
神業
(
かむわざ
)
に
219
仕
(
つか
)
へまつりし
嬉
(
うれ
)
しさよ
220
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御後
(
みあと
)
をば
221
慕
(
した
)
ひてここ
迄
(
まで
)
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
222
姫
(
ひめ
)
の
姿
(
すがた
)
は
雲霞
(
くもかすみ
)
223
行衛
(
ゆくゑ
)
分
(
わか
)
らぬ
旅
(
たび
)
の
空
(
そら
)
224
大空
(
おほぞら
)
渡
(
わた
)
る
月
(
つき
)
見
(
み
)
れば
225
雲
(
くも
)
の
御舟
(
みふね
)
に
乗
(
の
)
らせつつ
226
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
進
(
すす
)
みます
227
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
228
進
(
すす
)
ませ
玉
(
たま
)
ふと
聞
(
き
)
きつれど
229
月
(
つき
)
の
御後
(
みあと
)
を
従
(
したが
)
ひて
230
一旦
(
いつたん
)
珍
(
うづ
)
のエルサレム
231
進
(
すす
)
ませ
玉
(
たま
)
ふが
天地
(
あめつち
)
の
232
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
叶
(
かな
)
ふのか
233
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
234
遊
(
あそ
)
ばす
事
(
こと
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
235
曇
(
くも
)
りきつたる
魂
(
たましひ
)
で
236
測
(
はか
)
り
知
(
し
)
らるる
事
(
こと
)
でない
237
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
惟神
(
かむながら
)
238
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
一筋
(
ひとすぢ
)
に
239
行
(
ゆ
)
く
処
(
とこ
)
までも
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
よ
240
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
と
共
(
とも
)
にあり
241
人
(
ひと
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
242
いかでか
枉
(
まが
)
の
襲
(
おそ
)
はむと
243
教
(
をし
)
へ
玉
(
たま
)
ひし
御宣言
(
みことのり
)
244
頸
(
うなじ
)
に
受
(
う
)
けて
逸早
(
いちはや
)
く
245
水晶
(
すいしやう
)
の
玉
(
たま
)
を
守
(
まも
)
りつつ
246
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
247
いざや
進
(
すす
)
まむエルサレム
248
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
天地
(
あめつち
)
の
249
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
250
慎
(
つつし
)
み
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
251
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
252
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
253
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
254
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
255
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
三五
(
あななひ
)
の
256
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
く
吾
(
われ
)
は
惟神
(
かむながら
)
257
月
(
つき
)
の
御神
(
みかみ
)
の
後
(
あと
)
追
(
お
)
ふて
258
神
(
かみ
)
の
集
(
あつ
)
まるエルサレム
259
黄金
(
こがね
)
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
神
(
かみ
)
の
山
(
やま
)
260
黄金山
(
わうごんざん
)
に
参上
(
まゐのぼ
)
り
261
橄欖
(
かんらん
)
樹下
(
じゆか
)
に
息
(
いき
)
休
(
やす
)
め
262
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
涼風
(
すずかぜ
)
に
263
心
(
こころ
)
の
塵
(
ちり
)
を
払
(
はら
)
ふべし
264
進
(
すす
)
めや
進
(
すす
)
めいざ
進
(
すす
)
め
265
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
は
近
(
ちか
)
づきぬ
266
深
(
ふか
)
き
恵
(
めぐみ
)
にヨルダンの
267
川
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れに
御禊
(
みそぎ
)
して
268
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
となり
変
(
かは
)
り
269
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御許
(
みゆる
)
しを
270
受
(
う
)
けて
尊
(
たふと
)
き
神司
(
かむつかさ
)
271
栄
(
さか
)
えに
充
(
み
)
てる
御
(
おん
)
顔
(
かほ
)
を
272
伏
(
ふ
)
し
拝
(
をが
)
みつつツクヅクと
273
エデンの
川
(
かは
)
を
舟
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
274
フサの
入江
(
いりえ
)
に
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
して
275
何
(
なん
)
のなやみも
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
276
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
進
(
すす
)
むべし
277
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
めよ よく
勇
(
いさ
)
め
278
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
と
共
(
とも
)
にあり
279
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
280
御霊
(
みたま
)
の
恩頼
(
ふゆ
)
を
玉
(
たま
)
へかし』
281
かく
謡
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
282
イク、
283
サールの
両人
(
りやうにん
)
はハルセイ
山
(
ざん
)
の
西阪
(
にしざか
)
を
勢
(
いきほひ
)
込
(
こ
)
んで
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
284
(
大正一二・五・二九
旧四・一四
於天声社楼上
北村隆光
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