霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第64巻(卯の巻)下
序文
総説
第1篇 復活転活
01 復活祭
〔1807〕
02 逆襲
〔1808〕
03 草居谷底
〔1809〕
04 誤霊城
〔1810〕
05 横恋慕
〔1811〕
第2篇 鬼薊の花
06 金酒結婚
〔1812〕
07 虎角
〔1813〕
08 擬侠心
〔1814〕
09 狂怪戦
〔1815〕
10 拘淫
〔1816〕
第3篇 開花落花
11 狂擬怪
〔1817〕
12 開狂式
〔1818〕
13 漆別
〔1819〕
14 花曇
〔1820〕
15 騒淫ホテル
〔1821〕
第4篇 清風一過
16 誤辛折
〔1822〕
17 茶粕
〔1823〕
18 誠と偽
〔1824〕
19 笑拙種
〔1825〕
20 猫鞍干
〔1826〕
21 不意の官命
〔1827〕
22 帰国と鬼哭
〔1828〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第64巻下
> 第2篇 鬼薊の花 > 第7章 虎角
<<< 金酒結婚
(B)
(N)
擬侠心 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第七章
虎角
(
こかく
)
〔一八一三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下
篇:
第2篇 鬼薊の花
よみ(新仮名遣い):
おにあざみのはな
章:
第7章 虎角
よみ(新仮名遣い):
こかく
通し章番号:
1813
口述日:
1925(大正14)年08月19日(旧06月30日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年11月7日
概要:
舞台:
カフェー、御霊城、十字街頭
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-25 09:42:21
OBC :
rm64b07
愛善世界社版:
89頁
八幡書店版:
第11輯 528頁
修補版:
校定版:
89頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
守宮別
(
やもりわけ
)
お
花
(
はな
)
の
二人
(
ふたり
)
は
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
で、
002
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
みかはし
乍
(
なが
)
ら、
003
意茶
(
いちや
)
付
(
つ
)
き
喧嘩
(
げんくわ
)
をやつて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
004
トンク、
005
テク
両人
(
りやうにん
)
は
盗人猫
(
ぬすとねこ
)
が
不在
(
るす
)
の
家
(
いへ
)
を
覗
(
のぞ
)
くやうなスタイルで、
006
ヌーツと
顔
(
かほ
)
をつき
出
(
だ
)
した。
007
お
花
(
はな
)
は
早
(
はや
)
くも
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
てとり、
008
お花
『ヤ、
009
お
前
(
まへ
)
は、
010
お
寅
(
とら
)
さまと
一所
(
いつしよ
)
に
霊城
(
れいじやう
)
へやつて
来
(
き
)
たトンク、
011
テクの
両人
(
りやうにん
)
ぢやないかい、
012
何
(
なん
)
ぞ
御用
(
ごよう
)
があるのかな』
013
トンクは
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
で
額
(
ひたひ
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
つ
叩
(
たた
)
き
乍
(
なが
)
ら、
014
トンク
『イヤ、
015
どうも、
016
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ。
017
些
(
ちつ
)
と
許
(
ばか
)
り
酒代
(
さかて
)
が
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
したいので、
018
……』
019
お花
『お
前
(
まへ
)
はお
寅
(
とら
)
さまの
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
ぢやないか、
020
妾
(
わたし
)
に
些
(
ちつ
)
とも
関係
(
くわんけい
)
はありませぬよ、
021
酒代
(
さかて
)
が
欲
(
ほ
)
しけら、
022
お
寅
(
とら
)
さまに
貰
(
もら
)
つて
来
(
き
)
なさい、
023
ノコノコと
失礼
(
しつれい
)
な、
024
人
(
ひと
)
の
座敷
(
ざしき
)
へ
入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
て、
025
盗猫
(
どろねこ
)
のやうに、
026
黒
(
くろ
)
ん
坊
(
ばう
)
のクセに
何
(
な
)
んぢやいな』
027
トンク
『お
前
(
まへ
)
さまに
直接
(
ちよくせつ
)
の
関係
(
くわんけい
)
はありますまいが、
028
ここに
厶
(
ござ
)
る
守宮別
(
やもりわけ
)
さまには
深
(
ふか
)
い
深
(
ふか
)
い
関係
(
くわんけい
)
があるのです。
029
……これはこれは
守宮別
(
やもりわけ
)
様
(
さま
)
、
030
大変
(
たいへん
)
お
楽
(
たのし
)
みの
所
(
ところ
)
を、
031
不粋
(
ぶすゐ
)
な
黒
(
くろ
)
ん
坊
(
ばう
)
が
二人
(
ふたり
)
もやつて
来
(
き
)
まして、
032
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
でも
厶
(
ござ
)
いませうが、
033
チツと
許
(
ばか
)
り
口薬
(
くちぐすり
)
が
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
したいので
厶
(
ござ
)
いますよ』
034
お花
『
何
(
なに
)
、
035
口薬
(
くちぐすり
)
が
欲
(
ほ
)
しいと
云
(
い
)
ふのかい、
036
守宮別
(
やもりわけ
)
さまの
暗
(
くら
)
い
影
(
かげ
)
でも
掴
(
つか
)
んだといふのかい』
037
トンク
『ハツハヽヽヽ、
038
白々
(
しらじら
)
しい
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますな。
039
大変
(
たいへん
)
なローマンスを
見届
(
みとど
)
けてあればこそ、
040
かうして
口薬
(
くちぐすり
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
に
参
(
まゐ
)
つたのです。
041
ゴテゴテ
云
(
い
)
はずに、
042
ザツと
二十
(
にじふ
)
円
(
ゑん
)
、
043
二人
(
ふたり
)
で
〆
(
しめ
)
て
四十
(
よんじふ
)
円
(
ゑん
)
、
044
アツサリと
下
(
くだ
)
さいな、
045
安
(
やす
)
いものでせう』
046
お
花
(
はな
)
は
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いて、
047
守宮別
(
やもりわけ
)
がお
寅
(
とら
)
以外
(
いぐわい
)
に
女
(
をんな
)
でも
拵
(
こしら
)
へて
居
(
ゐ
)
るのではあるまいか。
048
そこを
此
(
この
)
トンクに
見
(
み
)
つけられて、
049
弱点
(
じやくてん
)
を
握
(
にぎ
)
られてるのだらう、
050
何
(
なん
)
と
気
(
き
)
の
多
(
おほ
)
い
男
(
をとこ
)
だなア。
051
……と
稍
(
やや
)
嫉妬心
(
しつとごころ
)
が
起
(
おこ
)
り
出
(
だ
)
し、
052
お花
『これ、
053
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
054
お
前
(
まへ
)
さまは
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても
箸
(
はし
)
まめな
事
(
こと
)
をして
厶
(
ござ
)
るのだろ、
055
サ、
056
トンクさまとやら、
057
あつさりと
云
(
い
)
ふて
下
(
くだ
)
さい、
058
さうすりや、
059
お
金
(
かね
)
は
二十
(
にじふ
)
円
(
ゑん
)
はさておいて、
060
五十
(
ごじふ
)
円
(
ゑん
)
でも
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
でも
上
(
あ
)
げます』
061
守宮別
『コレお
花
(
はな
)
、
062
コンナ
者
(
もの
)
に、
063
さう
金
(
かね
)
をやる
必要
(
ひつえう
)
がどこにある。
064
相手
(
あひて
)
にしなさるな』
065
お花
『そらさうでせう、
066
妾
(
わたし
)
がトンクさまを
相手
(
あひて
)
にすると、
067
チト、
068
あなたの
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いでせう。
069
コレコレ、
070
トンクさま、
071
遠慮
(
ゑんりよ
)
はいりませぬ、
072
とつとと
守宮別
(
やもりわけ
)
さまのローマンスをスツパリと、
073
此
(
この
)
場
(
ば
)
でさらけ
出
(
だ
)
して
下
(
くだ
)
さい』
074
トンク
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
075
屹度
(
きつと
)
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
くれますな』
076
お花
『
併
(
しか
)
し
二人
(
ふたり
)
に
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
だよ。
077
取違
(
とりちがひ
)
して
貰
(
もら
)
ふと
困
(
こま
)
るからな』
078
トンク
『ハイ
宜
(
よろ
)
しあす、
079
此
(
この
)
守宮別
(
やもりわけ
)
さまは、
080
お
寅
(
とら
)
さまと
何時
(
いつ
)
も
師匠
(
ししやう
)
と
弟子
(
でし
)
のやうな
顔
(
かほ
)
をして、
081
殊勝
(
しゆしよう
)
な
事
(
こと
)
をいふてゐられますが、
082
其
(
その
)
実
(
じつ
)
内証
(
ないしよう
)
でくつついてゐるのですよ。
083
私
(
わたし
)
や、
084
いつやらの
晩
(
ばん
)
、
085
橄欖山
(
かんらんざん
)
の
上
(
のぼ
)
り
口
(
ぐち
)
で、
086
怪体
(
けたい
)
な
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
て
置
(
お
)
きました。
087
なア
守宮別
(
やもりわけ
)
さま、
088
其
(
その
)
時
(
とき
)
あなた、
089
人
(
ひと
)
に
言
(
い
)
つちや
可
(
い
)
けないよ……と
云
(
い
)
つて
私
(
わたし
)
に
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
呉
(
く
)
れましたね』
090
守宮別
『ウン
確
(
たし
)
かにやつた
覚
(
おぼえ
)
がある、
091
併
(
しか
)
しそれをどうしたといふのだ。
092
ソンナこた、
093
お
花
(
はな
)
さまの
前
(
まへ
)
で
言
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で
三文
(
さんもん
)
の
価値
(
かち
)
も
無
(
な
)
いぢやないか。
094
お
花
(
はな
)
さまだつて、
095
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
の
俺
(
おれ
)
とお
寅
(
とら
)
さまとの
関係
(
くわんけい
)
は
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
だからなア』
096
トンク
『それでも、
097
あなた、
098
さういふ
事
(
こと
)
を
世間
(
せけん
)
へ
発表
(
はつぺう
)
せうものなら、
099
貴方
(
あなた
)
もチツトは
困
(
こま
)
るでせう』
100
お花
『
阿呆
(
あはう
)
らしい、
101
トンクさま、
102
そんなことなら
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はいでも
可
(
い
)
いのだよ。
103
此
(
この
)
守宮別
(
やもりわけ
)
さまが、
104
外
(
ほか
)
の
女
(
をんな
)
と
怪
(
あや
)
しい
関係
(
くわんけい
)
があつたか
無
(
な
)
かつたか、
105
それが
聞
(
き
)
かしてほしかつたのだよ。
106
確
(
たしか
)
な
証拠
(
しようこ
)
はなくても、
107
どこの
家
(
うち
)
で
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
んで
居
(
を
)
つたとか、
108
意茶
(
いちや
)
ついて
居
(
を
)
つたとか、
109
夫
(
そ
)
れが
分
(
わか
)
れば
可
(
い
)
いのだからな』
110
トンク
『ヘ、
111
五十
(
ごじふ
)
円
(
ゑん
)
なら
申上
(
まをしあ
)
げます。
112
エルサレムの
横町
(
よこちやう
)
のカフエーの
奥
(
おく
)
で、
113
お
花
(
はな
)
さまと
守宮別
(
やもりわけ
)
さまが
一杯
(
いつぱい
)
やり
乍
(
なが
)
ら、
114
夫婦
(
ふうふ
)
約束
(
やくそく
)
をしたり、
115
頬
(
ほつ
)
ぺたを
抓
(
つめ
)
つたり、
116
肩
(
かた
)
にブラ
下
(
さが
)
つたり、
117
それはそれは
見
(
み
)
るに
見
(
み
)
られぬ
醜体
(
しうたい
)
を
演
(
えん
)
じてをられました、
118
事
(
こと
)
を
私
(
わたし
)
許
(
ばか
)
りぢやなく、
119
ここの
女中
(
じよちう
)
が
証人
(
しようにん
)
ですよ。
120
それも
今月
(
こんげつ
)
今日
(
こんにち
)
、
121
サ
五十
(
ごじふ
)
円
(
ゑん
)
、
122
二人
(
ふたり
)
でシメて
百
(
ひやく
)
円
(
ゑん
)
、
123
如何
(
どう
)
です
安
(
やす
)
いものでせうがな』
124
守宮別
『フツフヽヽヽ、
125
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い。
126
マ
一杯
(
いつぱい
)
やつたらどうだ』
127
とコツプをつき
出
(
だ
)
す、
128
お
花
(
はな
)
は
眉
(
まゆ
)
を
逆立
(
さかだ
)
て、
129
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし
乍
(
なが
)
ら、
130
お花
『ヘン、
131
あほらしい、
132
業々
(
げふげふ
)
し
相
(
さう
)
に、
133
何
(
なん
)
のこつちやいな。
134
五十
(
ごじふ
)
両
(
りやう
)
もお
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
にやるやうな、
135
金
(
かね
)
があつたら、
136
ヨルダン
川
(
がは
)
へでも
放
(
ほ
)
かしますわいな』
137
トンク
『
宜
(
よろ
)
しい、
138
お
前
(
まへ
)
さまが
其
(
その
)
了見
(
れうけん
)
なら、
139
直様
(
すぐさま
)
お
寅
(
とら
)
さまへ
注進
(
ちうしん
)
致
(
いた
)
しますよ』
140
お花
『どうぞ
注進
(
ちうしん
)
して
下
(
くだ
)
さい。
141
そして
守宮別
(
やもりわけ
)
さまと
此
(
この
)
お
花
(
はな
)
との
交情
(
かうじやう
)
のこまやかな
所
(
ところ
)
を、
142
お
寅
(
とら
)
さまにつぶさに
報告
(
はうこく
)
し、
143
忠勤振
(
ちうきんぶり
)
を
発揮
(
はつき
)
なさいませ。
144
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
お
花
(
はな
)
はお
寅
(
とら
)
さまと
手
(
て
)
を
切
(
き
)
り、
145
守宮別
(
やもりわけ
)
さまとは
天下
(
てんか
)
晴
(
は
)
れて、
146
切
(
き
)
つても
切
(
き
)
れぬ
夫婦
(
ふうふ
)
ですよ。
147
どうか、
148
お
寅
(
とら
)
さまに
守宮別
(
やもりわけ
)
さま
夫婦
(
ふうふ
)
が
宜
(
よろ
)
しう
伝
(
つた
)
へたと
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
149
そしてエルサレムの
市中
(
まちぢう
)
へ、
150
妾
(
わたし
)
達
(
たち
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
結婚式
(
けつこんしき
)
を
挙
(
あ
)
げた
事
(
こと
)
を、
151
駄賃
(
だちん
)
をよう
出
(
だ
)
しませぬが、
152
披露
(
ひろう
)
をして
下
(
くだ
)
さい』
153
トンク
『エー、
154
クソ
面白
(
おもしろ
)
くもない。
155
ようし、
156
これから、
157
一
(
ひと
)
つお
寅
(
とら
)
にたきつけてやらう』
158
とテクと
共
(
とも
)
に
千鳥足
(
ちどりあし
)
し
乍
(
なが
)
ら、
159
カフエーを
立出
(
たちい
)
で、
160
お
寅
(
とら
)
の
霊城
(
れいじやう
)
へと
注進
(
ちうしん
)
の
為
(
ため
)
忍
(
しの
)
び
行
(
ゆ
)
く。
161
お
寅
(
とら
)
は
守宮別
(
やもりわけ
)
、
162
お
花
(
はな
)
の
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つた
愛想
(
あいさう
)
づかしと
無情
(
むじやう
)
な
仕打
(
しうち
)
に、
163
憤慨
(
ふんがい
)
の
余
(
あま
)
り
逆上
(
ぎやくじやう
)
し、
164
暫
(
しばらく
)
庭
(
には
)
の
土
(
つち
)
の
上
(
うへ
)
に
倒
(
たふ
)
れてゐたが、
165
漸
(
やうや
)
く
気
(
き
)
がつき、
166
辺
(
あた
)
りを
見
(
み
)
れば、
167
箱火鉢
(
はこひばち
)
は
腹
(
はら
)
を
破
(
やぶ
)
つて
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
となり、
168
そこらは
灰神楽
(
はひかぐら
)
で、
169
一分
(
いちぶ
)
許
(
ばか
)
りの
畳
(
たたみ
)
の
目
(
め
)
もみえぬ
程
(
ほど
)
黒
(
くろ
)
くなつてゐる。
170
ブツブツ
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
171
穂先
(
ほさき
)
の
薙刀
(
なぎなた
)
になつた
箒
(
はうき
)
でヤツトの
事
(
こと
)
、
172
灰
(
はひ
)
を
掃清
(
はききよ
)
め、
173
ドスンと
団尻
(
だんじり
)
を
下
(
お
)
ろした
所
(
ところ
)
へ、
174
ヒヨロヒヨロになつて、
175
一杯
(
いつぱい
)
気嫌
(
きげん
)
の
鼻唄
(
はなうた
)
諸共
(
もろとも
)
、
176
トンク、
177
テクの
両人
(
りやうにん
)
が
入
(
い
)
り
来
(
き
)
たり、
178
トンクは
開口
(
かいこう
)
一番
(
いちばん
)
に、
179
トンク
『これはこれは、
180
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
、
181
お
一人
(
ひとり
)
で
嘸
(
さぞ
)
お
淋
(
さび
)
しいこつて
厶
(
ござ
)
いませう。
182
ヤクの
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかけて、
183
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
がお
駆出
(
かけだ
)
しになつたものですから、
184
人馬
(
じんば
)
の
行通
(
ゆきか
)
ふ
雑踏
(
ざつたふ
)
の
巷
(
ちまた
)
、
185
貴女
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うえ
)
が
険呑
(
けんのん
)
だと
思
(
おも
)
ひ、
186
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
手分
(
てわけ
)
を
致
(
いた
)
しまして、
187
そこら
中
(
ぢう
)
を
捜
(
さが
)
しました
所
(
ところ
)
、
188
お
行方
(
ゆくへ
)
が
分
(
わか
)
らず、
189
一層
(
いつそ
)
の
事
(
こと
)
ヤクを
取
(
と
)
つ
捉
(
つか
)
まへてお
目
(
め
)
にかけたいと
思
(
おも
)
ひ、
190
エルサレムの
裏長屋
(
うらながや
)
迄
(
まで
)
捜
(
さが
)
して
見
(
み
)
ましたが、
191
たうとう
幸
(
かう
)
か
不幸
(
ふかう
)
か、
192
姿
(
すがた
)
を
見失
(
みうしな
)
ひました。
193
それから
横町
(
よこちやう
)
のカフエーに
立寄
(
たちよ
)
り、
194
ブドー
酒
(
しゆ
)
をテクと
二人
(
ふたり
)
引
(
ひ
)
つかけてゐますと、
195
それはそれは
天地
(
てんち
)
転倒
(
てんたう
)
と
云
(
い
)
はふか、
196
地震
(
ぢしん
)
ゴロゴロ
雷
(
かみなり
)
ピカピカ、
197
いやもう、
198
ドテライ、
199
貴女
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
取
(
と
)
つて、
200
大事件
(
だいじけん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
して
居
(
を
)
りましたので、
201
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取敢
(
とりあへ
)
ず、
202
お
弟子
(
でし
)
になつた
御
(
ご
)
奉公
(
ほうこう
)
の
初手柄
(
はつてがら
)
として
御
(
ご
)
報告
(
はうこく
)
に
参
(
まゐ
)
りました』
203
お寅
『それはどうも
有難
(
ありがた
)
う、
204
お
前
(
まへ
)
ならこそ
報告
(
はうこく
)
に
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れたのだ、
205
大方
(
おほかた
)
ブラバーサが
暴力団
(
ばうりよくだん
)
でも
使
(
つか
)
つて、
206
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
を
国
(
くに
)
へ
追返
(
おひかへ
)
さうとでも
企
(
たく
)
んでゐるのぢやないか』
207
トンク
『イエ、
208
滅相
(
めつさう
)
な、
209
ソンナ
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
ですかいな。
210
貴女
(
あなた
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
にとつて、
211
天変
(
てんぺん
)
地異
(
ちい
)
これ
位
(
ぐらゐ
)
大
(
おほ
)
きな
災
(
わざはひ
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい、
212
なあテク、
213
側
(
そば
)
から
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つても、
214
ムカつくぢやないか』
215
テク
『
本当
(
ほんたう
)
にテクも、
216
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて、
217
歯
(
は
)
がギチギチ
云
(
い
)
ひよるわ、
218
あのザマつたら、
219
論
(
ろん
)
にも
杭
(
くひ
)
にも
掛
(
かか
)
らぬわい。
220
お
寅
(
とら
)
さまが
本当
(
ほんたう
)
にお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だ』
221
お寅
『コレ、
222
序文
(
じよぶん
)
許
(
ばか
)
り
並
(
なら
)
べて
居
(
を
)
らずに、
223
短刀
(
たんたう
)
直入
(
ちよくにふ
)
的
(
てき
)
に
実地
(
じつち
)
問題
(
もんだい
)
にかかつて
下
(
くだ
)
さい。
224
一体
(
いつたい
)
大事件
(
だいじけん
)
とは
何事
(
なにごと
)
だいな』
225
トンクは、
226
トンク
『ヘー、
227
これ
程
(
ほど
)
大事
(
だいじ
)
な
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げるのですから、
228
貴女
(
あなた
)
はお
喜
(
よろこ
)
びでせうが、
229
一方
(
いつぱう
)
の
為
(
ため
)
には
大変
(
たいへん
)
な
不利益
(
ふりえき
)
です。
230
さうすれば、
231
貴女
(
あなた
)
に
喜
(
よろこ
)
ばれて、
232
一方
(
いつぱう
)
の
方
(
はう
)
からは
非常
(
ひじやう
)
な
怨恨
(
ゑんこん
)
を
買
(
か
)
ひ、
233
暗
(
やみ
)
の
晩
(
ばん
)
にでもなれば、
234
うつかり
外
(
そと
)
は
歩
(
ある
)
けませぬわ。
235
それだから、
236
ヘヽヽヽ
一寸
(
ちよつと
)
は
容易
(
ようい
)
に
申上
(
まをしあ
)
げたうても
申上
(
まをしあ
)
げられませぬ。
237
なあテク、
238
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も○○だからなア』
239
お寅
『エー
辛気
(
しんき
)
臭
(
くさ
)
い、
240
お
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しいのだらう。
241
お
金
(
かね
)
ならお
金
(
かね
)
と
何故
(
なぜ
)
あつさり
言
(
い
)
はぬのだいな』
242
トンク
『ハイ、
243
仰
(
おほせ
)
に
従
(
したが
)
ひ、
244
あつさりと
申上
(
まをしあ
)
げます。
245
どうか
前金
(
ぜんきん
)
として、
246
二十
(
にじふ
)
円
(
ゑん
)
程
(
ほど
)
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
したう
厶
(
ござ
)
います』
247
お寅
『ヨシヨシ、
248
サ、
249
あらためて
取
(
と
)
つてお
呉
(
く
)
れ』
250
と
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
投出
(
なげだ
)
せば、
251
二人
(
ふたり
)
はガキの
様
(
やう
)
に
引
(
ひ
)
つつかみ、
252
ヤニハにポケツトへ
捻込
(
ねぢこ
)
んで
了
(
しま
)
ひ、
253
トンク
『ヤ、
254
有難
(
ありがた
)
う、
255
流石
(
さすが
)
はウラナイ
教
(
けう
)
のお
寅
(
とら
)
さま、
256
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大
(
おほ
)
ミロクの
生宮
(
いきみや
)
、
257
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
のお
寅
(
とら
)
さま、
258
ウラナイ
教
(
けう
)
の
大教主
(
だいけうしゆ
)
、
259
誠
(
まこと
)
に
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りました』
260
お寅
『コレコレ、
261
ソンナ
事
(
こと
)
聞
(
き
)
かうと
思
(
おも
)
つて、
262
お
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
したのでない。
263
大事件
(
だいじけん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
早
(
はや
)
く
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さい』
264
トンク
『ハイ、
265
これからが
正念場
(
しやうねんば
)
です。
266
どうか
吃驚
(
びつくり
)
せないやうに、
267
胴
(
どう
)
をすゑて
居
(
を
)
つて
下
(
くだ
)
さいや。
268
エー、
269
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
横町
(
よこちやう
)
のカフエー
迄
(
まで
)
一杯
(
いつぱい
)
呑
(
の
)
みに
行
(
ゆ
)
きました
所
(
ところ
)
、
270
裏
(
うら
)
の
離
(
はな
)
れに
男女
(
だんぢよ
)
が
喋々
(
てふてふ
)
喃々
(
なんなん
)
と、
271
甘
(
あま
)
つたるい
口
(
くち
)
で
囁
(
ささや
)
いたり、
272
頬
(
ほほ
)
べたを
抓
(
つめ
)
つたり、
273
金切声
(
かなきりごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
274
意茶
(
いちや
)
ついてる
者
(
もの
)
があるぢやありませぬか』
275
お寅
『
成程
(
なるほど
)
、
276
そら
大方
(
おほかた
)
ブラバーサとマリヤの
風俗
(
ふうぞく
)
壊乱組
(
くわいらんぐみ
)
だらうがな。
277
そんな
事
(
こと
)
がナニ
妾
(
わし
)
に
対
(
たい
)
して
大事件
(
だいじけん
)
だろ、
278
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らヨウ
報告
(
はうこく
)
して
下
(
くだ
)
さつた。
279
之
(
これ
)
から
彼方
(
あいつ
)
等
(
ら
)
を
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
攻撃
(
こうげき
)
して、
280
再
(
ふたた
)
び
世
(
よ
)
に
立
(
た
)
てない
様
(
やう
)
、
281
社会
(
しやくわい
)
的
(
てき
)
に
葬
(
はうむ
)
つてやる
積
(
つもり
)
だから、
282
そら
可
(
よ
)
い
材料
(
ざいれう
)
だ』
283
と
話
(
はなし
)
も
聞
(
き
)
かぬ
内
(
うち
)
から
早呑込
(
はやのみこ
)
みしてゐる。
284
トンクは
言句
(
げんく
)
に
詰
(
つま
)
り、
285
トンク
『もし、
286
お
寅
(
とら
)
さま、
287
さう
早取
(
はやどり
)
して
貰
(
もら
)
ふと、
288
二
(
に
)
の
句
(
く
)
がつげませぬがな。
289
オイ、
290
テク、
291
お
前
(
まへ
)
之
(
これ
)
から
性念場
(
しやうねんば
)
を
些
(
ちつ
)
と
許
(
ばか
)
り
申上
(
まをしあ
)
げて
呉
(
く
)
れ。
292
お
前
(
まへ
)
廿
(
にじふ
)
両
(
りやう
)
貰
(
もら
)
ふた
冥加
(
みやうが
)
もあるからの』
293
テク
『お
寅
(
とら
)
さま、
294
ソンナ
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
ですかいな、
295
お
前
(
まへ
)
さまの
寝
(
ね
)
ても
醒
(
さ
)
めても
忘
(
わす
)
れない、
296
最愛
(
さいあい
)
のレコとあやめのお
花
(
はな
)
さまとが、
297
それはそれは
目
(
め
)
だるい
事
(
こと
)
をやつていましたよ。
298
私
(
わたし
)
が
貴女
(
あなた
)
だつたら、
299
あの
儘
(
まま
)
にはして
置
(
お
)
きませぬがな。
300
生首
(
なまくび
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
いて
烏
(
からす
)
にこつかしてやらねば
虫
(
むし
)
が
癒
(
い
)
えませぬがな』
301
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
くより、
302
お
寅
(
とら
)
は
電気
(
でんき
)
にでも
打
(
う
)
たれた
如
(
ごと
)
く
打驚
(
うちおどろ
)
き、
303
暫
(
しば
)
しは
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし、
304
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いて
言葉
(
ことば
)
も
出
(
で
)
なかつたが、
305
稍
(
やや
)
暫時
(
しばらく
)
して、
306
お寅
『テヽテクさま、
307
トヽトンクさま、
308
そら
本当
(
ほんたう
)
かいな。
309
本当
(
ほんたう
)
とあれば、
310
ジツとしては
居
(
を
)
られない、
311
お
花
(
はな
)
の
奴
(
やつ
)
、
312
本当
(
ほんたう
)
にバカにしてる』
313
と
早
(
はや
)
くも
捻鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をなし、
314
赤襷
(
あかたすき
)
をかけようとする。
315
トンク
『そら、
316
マヽ
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
317
さう
慌
(
あわ
)
てても、
318
話
(
はなし
)
が
分
(
わ
)
かりませぬ、
319
たうとう
二人
(
ふたり
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
約束
(
やくそく
)
を
致
(
いた
)
しました。
320
そして
祝言
(
しうげん
)
の
盃
(
さかづき
)
もやり
直
(
なほ
)
したといふことですよ』
321
お寅
『ナヽナアニ、
322
シユシユ
祝言
(
しうげん
)
の
盃
(
さかづき
)
、
323
そして
又
(
また
)
ドヽ
何処
(
どこ
)
の
内
(
うち
)
で、
324
ソヽそんな
事
(
こと
)
を、
325
ヤヽやつてゐるのだい』
326
トンク
『
横町
(
よこちやう
)
のカフエーの
奥座敷
(
おくざしき
)
ですがな、
327
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らトンクが
言
(
い
)
つたとは、
328
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
へませんで、
329
あとが
恐
(
おそ
)
ろしう
厶
(
ござ
)
いますからな』
330
お寅
『コリヤ、
331
トンク、
332
テク、
333
お
前
(
まへ
)
も
妾
(
わし
)
の
家来
(
けらい
)
に
成
(
な
)
つたのぢやないか、
334
妾
(
わし
)
の
為
(
ため
)
には
何
(
なん
)
でも
聞
(
き
)
くだろ、
335
妾
(
わし
)
が
踏込
(
ふみこ
)
んで
生首
(
なまくび
)
引抜
(
ひきぬ
)
くのも
易
(
やす
)
い
事
(
こと
)
だが、
336
そんな
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
すると、
337
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
沽券
(
こけん
)
にかかはる。
338
妾
(
わし
)
はここで
辛抱
(
しんばう
)
するから、
339
お
前
(
まへ
)
代
(
かは
)
りにお
花
(
はな
)
の
生首
(
なまくび
)
引抜
(
ひきぬ
)
いてヨルダン
川
(
がは
)
へ
投込
(
なげこ
)
みて
下
(
くだ
)
さい。
340
さうすりや、
341
何
(
なん
)
ぼでもお
金
(
かね
)
は
上
(
あ
)
げるからな』
342
トンク
『
何程
(
なにほど
)
お
金
(
かね
)
に
成
(
な
)
りましても、
343
ソンナこたア
私
(
わたし
)
に
出来
(
でき
)
ませぬワ。
344
暴力団
(
ばうりよくだん
)
取締令
(
とりしまりれい
)
が
出
(
で
)
て
居
(
を
)
りますので、
345
二人
(
ふたり
)
寄
(
よ
)
つても、
346
直
(
すぐ
)
にスパイが
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかける
時節
(
じせつ
)
ですもの。
347
そんなこたア、
348
御
(
ご
)
本人
(
ほんにん
)
直接
(
ちよくせつ
)
に
決行
(
けつかう
)
されたが
可
(
よ
)
いでせう。
349
刑務所
(
けいむしよ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれて
臭
(
くさ
)
い
飯
(
めし
)
くはされても
約
(
つ
)
まりませぬからな、
350
それとも
一万
(
いちまん
)
両
(
りやう
)
下
(
くだ
)
さらばやつてみても
宜
(
よろ
)
しい』
351
お寅
『エーエー
腑甲斐
(
ふがひ
)
のない、
352
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
もガラクタ
許
(
ばか
)
りだな。
353
守宮別
(
やもりわけ
)
さまは
決
(
けつ
)
してそんな
無情
(
むじやう
)
な
人
(
ひと
)
ぢやない。
354
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふと、
355
いろいろの
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るが、
356
正直
(
しやうぢき
)
な
親切
(
しんせつ
)
な、
357
誠生粋
(
まこときつすゐ
)
な
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
だ、
358
スレツカラシのお
花
(
はな
)
の
奴
(
やつ
)
、
359
たうとう
地金
(
ぢがね
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
し、
360
男
(
をとこ
)
を
喰
(
く
)
はへて、
361
ヌツケリコと
夫婦
(
ふうふ
)
気取
(
きどり
)
で、
362
そんな
所
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
て
酒
(
さけ
)
をくらうて
居
(
ゐ
)
やがるのだらう。
363
エーまどろしい、
364
暴力団
(
ばうりよくだん
)
取締
(
とりしまり
)
が
何
(
なん
)
だ。
365
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
がお
花
(
はな
)
位
(
ぐらゐ
)
に
敗北
(
ひけ
)
を
取
(
と
)
つてどうなるものか』
366
と
眉毛
(
まゆげ
)
は
逆立
(
さかだ
)
ち
目
(
め
)
は
血走
(
ちばし
)
り
鉢巻
(
はちまき
)
したまま、
367
襷
(
たすき
)
をかけたまま、
368
後先
(
あとさき
)
の
考
(
かんが
)
へも
無
(
な
)
く
腹立紛
(
はらだちまぎ
)
れに
飛出
(
とびだ
)
した。
369
トンク、
370
テクの
両人
(
りやうにん
)
は、
371
『コラ
一大事
(
いちだいじ
)
』とお
寅
(
とら
)
の
後
(
あと
)
を
見
(
み
)
え
隠
(
かく
)
れに
付
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
くと、
372
十字
(
じふじ
)
街頭
(
がいとう
)
を
微酔
(
ほろよひ
)
機嫌
(
きげん
)
で
守宮別
(
やもりわけ
)
がお
花
(
はな
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いてヒヨロリヒヨロリとやつて
来
(
く
)
るのに
出会
(
でつくは
)
した。
373
お
寅
(
とら
)
はアツと
言
(
い
)
つたきり、
374
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
悶絶
(
もんぜつ
)
して
了
(
しま
)
つた。
375
守宮別
(
やもりわけ
)
、
376
お
花
(
はな
)
は
掛
(
かか
)
り
合
(
あひ
)
になつては
一大事
(
いちだいじ
)
と、
377
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
378
橄欖山
(
かんらんざん
)
目
(
め
)
がけて
逃
(
に
)
げてゆく。
379
(
大正一四・八・一九
旧六・三〇
於由良秋田別荘
松村真澄
録)
380
(昭和一〇・三・一〇 於台湾草山別院 王仁校正)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 金酒結婚
(B)
(N)
擬侠心 >>>
霊界物語
>
第64巻下
> 第2篇 鬼薊の花 > 第7章 虎角
Tweet
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【07 虎角|第64巻(卯の巻)下|霊界物語/rm64b07】
合言葉「みろく」を入力して下さい→