霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 虎角(こかく)〔一八一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下 篇:第2篇 鬼薊の花 よみ(新仮名遣い):おにあざみのはな
章:第7章 虎角 よみ(新仮名遣い):こかく 通し章番号:1813
口述日:1925(大正14)年08月19日(旧06月30日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年11月7日
概要: 舞台:カフェー、御霊城、十字街頭 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-25 09:42:21 OBC :rm64b07
愛善世界社版:89頁 八幡書店版:第11輯 528頁 修補版: 校定版:89頁 普及版:63頁 初版: ページ備考:
001 守宮別(やもりわけ)(はな)二人(ふたり)(おく)一間(ひとま)で、002(さけ)()みかはし(なが)ら、003意茶(いちや)()喧嘩(げんくわ)をやつて()(ところ)へ、004トンク、005テク両人(りやうにん)盗人猫(ぬすとねこ)不在(るす)(いへ)(のぞ)くやうなスタイルで、006ヌーツと(かほ)をつき()した。007(はな)(はや)くも二人(ふたり)姿(すがた)()てとり、
008お花『ヤ、009(まへ)は、010(とら)さまと一所(いつしよ)霊城(れいじやう)へやつて()たトンク、011テクの両人(りやうにん)ぢやないかい、012(なん)御用(ごよう)があるのかな』
013トンクは(みぎ)()(ひたひ)(ふた)(みつ)(たた)(なが)ら、
014トンク『イヤ、015どうも、016(まこと)()みませぬ。017(ちつ)(ばか)酒代(さかて)頂戴(ちやうだい)(いた)したいので、018……』
019お花『お(まへ)はお(とら)さまの()家来(けらい)ぢやないか、020(わたし)(ちつ)とも関係(くわんけい)はありませぬよ、021酒代(さかて)()しけら、022(とら)さまに(もら)つて()なさい、023ノコノコと失礼(しつれい)な、024(ひと)座敷(ざしき)(はい)つて()て、025盗猫(どろねこ)のやうに、026(くろ)(ばう)のクセに()んぢやいな』
027トンク『お(まへ)さまに直接(ちよくせつ)関係(くわんけい)はありますまいが、028ここに(ござ)守宮別(やもりわけ)さまには(ふか)(ふか)関係(くわんけい)があるのです。029……これはこれは守宮別(やもりわけ)(さま)030大変(たいへん)(たのし)みの(ところ)を、031不粋(ぶすゐ)(くろ)(ばう)二人(ふたり)もやつて()まして、032(さぞ)()迷惑(めいわく)でも(ござ)いませうが、033チツと(ばか)口薬(くちぐすり)頂戴(ちやうだい)(いた)したいので(ござ)いますよ』
034お花(なに)035口薬(くちぐすり)()しいと()ふのかい、036守宮別(やもりわけ)さまの(くら)(かげ)でも(つか)んだといふのかい』
037トンク『ハツハヽヽヽ、038白々(しらじら)しい(こと)仰有(おつしや)いますな。039大変(たいへん)なローマンスを見届(みとど)けてあればこそ、040かうして口薬(くちぐすり)頂戴(ちやうだい)(まゐ)つたのです。041ゴテゴテ()はずに、042ザツと二十(にじふ)(ゑん)043二人(ふたり)(しめ)四十(よんじふ)(ゑん)044アツサリと(くだ)さいな、045(やす)いものでせう』
046 お(はな)(これ)()いて、047守宮別(やもりわけ)がお(とら)以外(いぐわい)(をんな)でも(こしら)へて()るのではあるまいか。048そこを(この)トンクに()つけられて、049弱点(じやくてん)(にぎ)られてるのだらう、050(なん)()(おほ)(をとこ)だなア。051……と(やや)嫉妬心(しつとごころ)(おこ)()し、
052お花『これ、053守宮別(やもりわけ)さま、054(まへ)さまは(また)しても(また)しても(はし)まめな(こと)をして(ござ)るのだろ、055サ、056トンクさまとやら、057あつさりと()ふて(くだ)さい、058さうすりや、059(かね)二十(にじふ)(ゑん)はさておいて、060五十(ごじふ)(ゑん)でも(ひやく)(ゑん)でも()げます』
061守宮別『コレお(はな)062コンナ(もの)に、063さう(かね)をやる必要(ひつえう)がどこにある。064相手(あひて)にしなさるな』
065お花『そらさうでせう、066(わたし)がトンクさまを相手(あひて)にすると、067チト、068あなたの()都合(つがふ)(わる)いでせう。069コレコレ、070トンクさま、071遠慮(ゑんりよ)はいりませぬ、072とつとと守宮別(やもりわけ)さまのローマンスをスツパリと、073(この)()でさらけ()して(くだ)さい』
074トンク『ハイ有難(ありがた)う、075屹度(きつと)(ひやく)(ゑん)くれますな』
076お花(しか)二人(ふたり)(ひやく)(ゑん)だよ。077取違(とりちがひ)して(もら)ふと(こま)るからな』
078トンク『ハイ(よろ)しあす、079(この)守宮別(やもりわけ)さまは、080(とら)さまと何時(いつ)師匠(ししやう)弟子(でし)のやうな(かほ)をして、081殊勝(しゆしよう)(こと)をいふてゐられますが、082(その)(じつ)内証(ないしよう)でくつついてゐるのですよ。083(わたし)や、084いつやらの(ばん)085橄欖山(かんらんざん)(のぼ)(ぐち)で、086怪体(けたい)(ところ)()()きました。087なア守宮別(やもりわけ)さま、088(その)(とき)あなた、089(ひと)()つちや()けないよ……と()つて(わたし)(じふ)(ゑん)()れましたね』
090守宮別『ウン(たし)かにやつた(おぼえ)がある、091(しか)しそれをどうしたといふのだ。092ソンナこた、093(はな)さまの(まへ)()つた(ところ)三文(さんもん)価値(かち)()いぢやないか。094(はな)さまだつて、095今日(けふ)(まで)(おれ)とお(とら)さまとの関係(くわんけい)()承知(しようち)だからなア』
096トンク『それでも、097あなた、098さういふ(こと)世間(せけん)発表(はつぺう)せうものなら、099貴方(あなた)もチツトは(こま)るでせう』
100お花阿呆(あはう)らしい、101トンクさま、102そんなことなら()かして(もら)はいでも()いのだよ。103(この)守宮別(やもりわけ)さまが、104(ほか)(をんな)(あや)しい関係(くわんけい)があつたか()かつたか、105それが()かしてほしかつたのだよ。106(たしか)証拠(しようこ)はなくても、107どこの(うち)(さけ)()んで()つたとか、108意茶(いちや)ついて()つたとか、109()れが(わか)れば()いのだからな』
110トンク『ヘ、111五十(ごじふ)(ゑん)なら申上(まをしあ)げます。112エルサレムの横町(よこちやう)のカフエーの(おく)で、113(はな)さまと守宮別(やもりわけ)さまが一杯(いつぱい)やり(なが)ら、114夫婦(ふうふ)約束(やくそく)をしたり、115(ほつ)ぺたを(つめ)つたり、116(かた)にブラ(さが)つたり、117それはそれは()るに()られぬ醜体(しうたい)(えん)じてをられました、118(こと)(わたし)(ばか)りぢやなく、119ここの女中(じよちう)証人(しようにん)ですよ。120それも今月(こんげつ)今日(こんにち)121五十(ごじふ)(ゑん)122二人(ふたり)でシメて(ひやく)(ゑん)123如何(どう)です(やす)いものでせうがな』
124守宮別『フツフヽヽヽ、125此奴(こいつ)面白(おもしろ)い。126一杯(いつぱい)やつたらどうだ』
127とコツプをつき()す、128(はな)(まゆ)逆立(さかだ)て、129(こゑ)(とが)らし(なが)ら、
130お花『ヘン、131あほらしい、132業々(げふげふ)(さう)に、133(なん)のこつちやいな。134五十(ごじふ)(りやう)もお(まへ)さま()にやるやうな、135(かね)があつたら、136ヨルダン(がは)へでも()かしますわいな』
137トンク(よろ)しい、138(まへ)さまが(その)了見(れうけん)なら、139直様(すぐさま)(とら)さまへ注進(ちうしん)(いた)しますよ』
140お花『どうぞ注進(ちうしん)して(くだ)さい。141そして守宮別(やもりわけ)さまと(この)(はな)との交情(かうじやう)のこまやかな(ところ)を、142(とら)さまにつぶさに報告(はうこく)し、143忠勤振(ちうきんぶり)発揮(はつき)なさいませ。144最早(もはや)(この)(はな)はお(とら)さまと()()り、145守宮別(やもりわけ)さまとは天下(てんか)()れて、146()つても()れぬ夫婦(ふうふ)ですよ。147どうか、148(とら)さまに守宮別(やもりわけ)さま夫婦(ふうふ)(よろ)しう(つた)へたと仰有(おつしや)つて(くだ)さい。149そしてエルサレムの市中(まちぢう)へ、150(わたし)(たち)夫婦(ふうふ)結婚式(けつこんしき)()げた(こと)を、151駄賃(だちん)をよう()しませぬが、152披露(ひろう)をして(くだ)さい』
153トンク『エー、154クソ面白(おもしろ)くもない。155ようし、156これから、157(ひと)つお(とら)にたきつけてやらう』
158とテクと(とも)千鳥足(ちどりあし)(なが)ら、159カフエーを立出(たちい)で、160(とら)霊城(れいじやう)へと注進(ちうしん)(ため)(しの)()く。
161 お(とら)守宮別(やもりわけ)162(はな)()つて(かは)つた愛想(あいさう)づかしと無情(むじやう)仕打(しうち)に、163憤慨(ふんがい)(あま)逆上(ぎやくじやう)し、164(しばらく)(には)(つち)(うへ)(たふ)れてゐたが、165(やうや)()がつき、166(あた)りを()れば、167箱火鉢(はこひばち)(はら)(やぶ)つて木端(こつぱ)微塵(みぢん)となり、168そこらは灰神楽(はひかぐら)で、169一分(いちぶ)(ばか)りの(たたみ)()もみえぬ(ほど)(くろ)くなつてゐる。170ブツブツ小言(こごと)()(なが)ら、171穂先(ほさき)薙刀(なぎなた)になつた(はうき)でヤツトの(こと)172(はひ)掃清(はききよ)め、173ドスンと団尻(だんじり)()ろした(ところ)へ、174ヒヨロヒヨロになつて、175一杯(いつぱい)気嫌(きげん)鼻唄(はなうた)諸共(もろとも)176トンク、177テクの両人(りやうにん)()()たり、178トンクは開口(かいこう)一番(いちばん)に、
179トンク『これはこれは、180生宮(いきみや)(さま)181一人(ひとり)(さぞ)(さび)しいこつて(ござ)いませう。182ヤクの(あと)()つかけて、183生宮(いきみや)(さま)がお駆出(かけだ)しになつたものですから、184人馬(じんば)行通(ゆきか)雑踏(ざつたふ)(ちまた)185貴女(あなた)のお()(うえ)険呑(けんのん)だと(おも)ひ、186(さん)(にん)手分(てわけ)(いた)しまして、187そこら(ぢう)(さが)しました(ところ)188行方(ゆくへ)(わか)らず、189一層(いつそ)(こと)ヤクを()(つか)まへてお()にかけたいと(おも)ひ、190エルサレムの裏長屋(うらながや)(まで)(さが)して()ましたが、191たうとう(かう)不幸(ふかう)か、192姿(すがた)見失(みうしな)ひました。193それから横町(よこちやう)のカフエーに立寄(たちよ)り、194ブドー(しゆ)をテクと二人(ふたり)()つかけてゐますと、195それはそれは天地(てんち)転倒(てんたう)()はふか、196地震(ぢしん)ゴロゴロ(かみなり)ピカピカ、197いやもう、198ドテライ、199貴女(あなた)のお()(うへ)()つて、200大事件(だいじけん)突発(とつぱつ)して()りましたので、201()(もの)取敢(とりあへ)ず、202弟子(でし)になつた()奉公(ほうこう)初手柄(はつてがら)として()報告(はうこく)(まゐ)りました』
203お寅『それはどうも有難(ありがた)う、204(まへ)ならこそ報告(はうこく)()()れたのだ、205大方(おほかた)ブラバーサが暴力団(ばうりよくだん)でも使(つか)つて、206(この)(とら)(くに)追返(おひかへ)さうとでも(たく)んでゐるのぢやないか』
207トンク『イエ、208滅相(めつさう)な、209ソンナ(ちひ)さい(こと)ですかいな。210貴女(あなた)のお()(うへ)にとつて、211天変(てんぺん)地異(ちい)これ(ぐらゐ)(おほ)きな(わざはひ)(ござ)いますまい、212なあテク、213(そば)から()()つても、214ムカつくぢやないか』
215テク本当(ほんたう)にテクも、216(はら)()つて、217()がギチギチ()ひよるわ、218あのザマつたら、219(ろん)にも(くひ)にも(かか)らぬわい。220(とら)さまが本当(ほんたう)にお()(どく)だ』
221お寅『コレ、222序文(じよぶん)(ばか)(なら)べて()らずに、223短刀(たんたう)直入(ちよくにふ)(てき)実地(じつち)問題(もんだい)にかかつて(くだ)さい。224一体(いつたい)大事件(だいじけん)とは何事(なにごと)だいな』
225 トンクは、
226トンク『ヘー、227これ(ほど)大事(だいじ)(こと)申上(まをしあ)げるのですから、228貴女(あなた)はお(よろこ)びでせうが、229一方(いつぱう)(ため)には大変(たいへん)不利益(ふりえき)です。230さうすれば、231貴女(あなた)(よろこ)ばれて、232一方(いつぱう)(はう)からは非常(ひじやう)怨恨(ゑんこん)()ひ、233(やみ)(ばん)にでもなれば、234うつかり(そと)(ある)けませぬわ。235それだから、236ヘヽヽヽ一寸(ちよつと)容易(ようい)申上(まをしあ)げたうても申上(まをしあ)げられませぬ。237なあテク、238地獄(ぢごく)沙汰(さた)も○○だからなア』
239お寅『エー辛気(しんき)(くさ)い、240(かね)()しいのだらう。241(かね)ならお(かね)何故(なぜ)あつさり()はぬのだいな』
242トンク『ハイ、243(おほせ)(したが)ひ、244あつさりと申上(まをしあ)げます。245どうか前金(ぜんきん)として、246二十(にじふ)(ゑん)(ほど)頂戴(ちやうだい)(いた)したう(ござ)います』
247お寅『ヨシヨシ、248サ、249あらためて()つてお()れ』
250(その)()投出(なげだ)せば、251二人(ふたり)はガキの(やう)()つつかみ、252ヤニハにポケツトへ捻込(ねぢこ)んで(しま)ひ、
253トンク『ヤ、254有難(ありがた)う、255流石(さすが)はウラナイ(けう)のお(とら)さま、256底津(そこつ)岩根(いはね)(おほ)ミロクの生宮(いきみや)257日出(ひのでの)(かみ)のお(とら)さま、258ウラナイ(けう)大教主(だいけうしゆ)259(まこと)(かん)()りました』
260お寅『コレコレ、261ソンナ(こと)()かうと(おも)つて、262(かね)()したのでない。263大事件(だいじけん)秘密(ひみつ)(はや)()かして(くだ)さい』
264トンク『ハイ、265これからが正念場(しやうねんば)です。266どうか吃驚(びつくり)せないやうに、267(どう)をすゑて()つて(くだ)さいや。268エー、269(じつ)(ところ)横町(よこちやう)のカフエー(まで)一杯(いつぱい)()みに()きました(ところ)270(うら)(はな)れに男女(だんぢよ)喋々(てふてふ)喃々(なんなん)と、271(あま)つたるい(くち)(ささや)いたり、272(ほほ)べたを(つめ)つたり、273金切声(かなきりごゑ)()して、274意茶(いちや)ついてる(もの)があるぢやありませぬか』
275お寅成程(なるほど)276そら大方(おほかた)ブラバーサとマリヤの風俗(ふうぞく)壊乱組(くわいらんぐみ)だらうがな。277そんな(こと)がナニ(わし)(たい)して大事件(だいじけん)だろ、278(しか)(なが)らヨウ報告(はうこく)して(くだ)さつた。279(これ)から彼方(あいつ)()(ちから)一杯(いつぱい)攻撃(こうげき)して、280(ふたた)()()てない(やう)281社会(しやくわい)(てき)(はうむ)つてやる(つもり)だから、282そら()材料(ざいれう)だ』
283(はなし)()かぬ(うち)から早呑込(はやのみこ)みしてゐる。284トンクは言句(げんく)(つま)り、
285トンク『もし、286(とら)さま、287さう早取(はやどり)して(もら)ふと、288()()がつげませぬがな。289オイ、290テク、291(まへ)(これ)から性念場(しやうねんば)(ちつ)(ばか)申上(まをしあ)げて()れ。292(まへ)廿(にじふ)(りやう)(もら)ふた冥加(みやうが)もあるからの』
293テク『お(とら)さま、294ソンナ気楽(きらく)(こと)ですかいな、295(まへ)さまの()ても()めても(わす)れない、296最愛(さいあい)のレコとあやめのお(はな)さまとが、297それはそれは()だるい(こと)をやつていましたよ。298(わたし)貴女(あなた)だつたら、299あの(まま)にはして()きませぬがな。300生首(なまくび)引抜(ひきぬ)いて(からす)にこつかしてやらねば(むし)()えませぬがな』
301 (これ)()くより、302(とら)電気(でんき)にでも()たれた(ごと)打驚(うちおどろ)き、303(しば)しは(くち)(とが)らし、304()()いて言葉(ことば)()なかつたが、305(やや)暫時(しばらく)して、
306お寅『テヽテクさま、307トヽトンクさま、308そら本当(ほんたう)かいな。309本当(ほんたう)とあれば、310ジツとしては()られない、311(はな)(やつ)312本当(ほんたう)にバカにしてる』
313(はや)くも捻鉢巻(ねぢはちまき)をなし、314赤襷(あかたすき)をかけようとする。
315トンク『そら、316マヽ()つて(くだ)さい、317さう(あわ)てても、318(はなし)()かりませぬ、319たうとう二人(ふたり)夫婦(ふうふ)約束(やくそく)(いた)しました。320そして祝言(しうげん)(さかづき)もやり(なほ)したといふことですよ』
321お寅『ナヽナアニ、322シユシユ祝言(しうげん)(さかづき)323そして(また)ドヽ何処(どこ)(うち)で、324ソヽそんな(こと)を、325ヤヽやつてゐるのだい』
326トンク横町(よこちやう)のカフエーの奥座敷(おくざしき)ですがな、327(しか)(なが)らトンクが()つたとは、328()つて(もら)へませんで、329あとが(おそ)ろしう(ござ)いますからな』
330お寅『コリヤ、331トンク、332テク、333(まへ)(わし)家来(けらい)()つたのぢやないか、334(わし)(ため)には(なん)でも()くだろ、335(わし)踏込(ふみこ)んで生首(なまくび)引抜(ひきぬ)くのも(やす)(こと)だが、336そんな乱暴(らんばう)(こと)すると、337日出(ひのでの)(かみ)沽券(こけん)にかかはる。338(わし)はここで辛抱(しんばう)するから、339(まへ)(かは)りにお(はな)生首(なまくび)引抜(ひきぬ)いてヨルダン(がは)投込(なげこ)みて(くだ)さい。340さうすりや、341(なん)ぼでもお(かね)()げるからな』
342トンク何程(なにほど)(かね)()りましても、343ソンナこたア(わたし)出来(でき)ませぬワ。344暴力団(ばうりよくだん)取締令(とりしまりれい)()()りますので、345二人(ふたり)()つても、346(すぐ)にスパイが(あと)()つかける時節(じせつ)ですもの。347そんなこたア、348()本人(ほんにん)直接(ちよくせつ)決行(けつかう)されたが()いでせう。349刑務所(けいむしよ)()()まれて(くさ)(めし)くはされても()まりませぬからな、350それとも一万(いちまん)(りやう)(くだ)さらばやつてみても(よろ)しい』
351お寅『エーエー腑甲斐(ふがひ)のない、352何奴(どいつ)此奴(こいつ)もガラクタ(ばか)りだな。353守宮別(やもりわけ)さまは(けつ)してそんな無情(むじやう)(ひと)ぢやない。354(さけ)()ふと、355いろいろの(こと)仰有(おつしや)るが、356正直(しやうぢき)親切(しんせつ)な、357誠生粋(まこときつすゐ)大広木(おほひろき)正宗(まさむね)さまの生宮(いきみや)だ、358スレツカラシのお(はな)(やつ)359たうとう地金(ぢがね)()()し、360(をとこ)()はへて、361ヌツケリコと夫婦(ふうふ)気取(きどり)で、362そんな(ところ)()(さけ)をくらうて()やがるのだらう。363エーまどろしい、364暴力団(ばうりよくだん)取締(とりしまり)(なん)だ。365()出神(でのかみ)生宮(いきみや)がお(はな)(ぐらゐ)敗北(ひけ)()つてどうなるものか』
366眉毛(まゆげ)逆立(さかだ)()血走(ちばし)鉢巻(はちまき)したまま、367(たすき)をかけたまま、368後先(あとさき)(かんが)へも()腹立紛(はらだちまぎ)れに飛出(とびだ)した。369トンク、370テクの両人(りやうにん)は、371『コラ一大事(いちだいじ)』とお(とら)(あと)()(かく)れに()いて()くと、372十字(じふじ)街頭(がいとう)微酔(ほろよひ)機嫌(きげん)守宮別(やもりわけ)がお(はな)()()いてヒヨロリヒヨロリとやつて()るのに出会(でつくは)した。373(とら)はアツと()つたきり、374(その)()悶絶(もんぜつ)して(しま)つた。375守宮別(やもりわけ)376(はな)(かか)(あひ)になつては一大事(いちだいじ)と、377素知(そし)らぬ(かほ)(なが)ら、378橄欖山(かんらんざん)()がけて()げてゆく。
379大正一四・八・一九 旧六・三〇 於由良秋田別荘 松村真澄録)
380(昭和一〇・三・一〇 於台湾草山別院 王仁校正)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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