物語は場所を変えて、デカタン高原西南方のタラハン国へ移る。
人口二十万、地味の肥えた産物の豊かな国。
首都タラハン市、ウラル教を国教とし、王家はすでに十数代を経ている。
国王はカラピン王、王妃モンドル姫、太子スダルマン、王女バンナ。
王妃モンドル姫は悪孤の霊に憑依され、市民を虐待した。王はモンドル姫の容色に迷い、王妃を止めることができなかった。
左守の司、シャカンナはたびたび王・王妃を諌めたが、右守の司ガンヂーは、自分がタラハン国の主権を握ろうと、王・王妃に取り入っていた。
あるとき、モンドル姫は遊覧中に白羽の矢に当たり、絶命してしまった。王はこの事件により狂乱し、暴虐の振る舞いを始める。
左守シャカンナは妻とともに死を決して王に諫言をなすが、王によって妻は斬り殺されてしまう。シャカンナは当年6歳の娘スバールとともに逃げ、身を隠した。
右守のガンヂーはこの事件により、シャカンナに代わって左守の位に就く。シャカンナ家の巨万の財産を没収したガンヂーは、己の声名をあげる為にそれを慈善政策の資金とした。
結果的にタラハン国は小康を得た。カラピン王は政務をすべてガンヂーに預け、自分は風流三昧のみの生活に隠退してしまった。
太子スダルマンは18歳を迎えたが、宮中深く閉じこもり、憂鬱に悩まされていた。いかなる音楽、美女も太子の憂鬱を払うことができなかった。
唯一太子の気に入りは、佐守ガンヂーの一人息子、アリナであった。アリナと共に絵を書くのが、太子の慰めとなっていた。
あるとき太子はアリナに秘密の外出を誘った。アリナは、これで太子の憂鬱が治るかもしれないと思い、心ならずも承諾してしまった。