第三七章 玉手の清宮〔一八六八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):しののめしんこく
章:第37章 玉手の清宮
よみ(新仮名遣い):たまでのきよみや
通し章番号:1868
口述日:1933(昭和8)年10月18日(旧08月29日)
口述場所:水明閣
筆録者:白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一向ははるか南にそびえる三笠山を望むところまでやってきた。一向は清清しい山の姿をたたえる歌を馬上に歌う。
近見男の神は、三笠山には八十比女神のひとり、現世(うつしよ)比女がいます、と歌う。
その日の暮れに、一向は三笠山の聖場、玉手(たまで)の宮に到着した。三笠山に来てみると、山には色とりどりの花が咲き満ちて、その麗しさは天国かと思うほどであった。
近見男の神は、玉手の宮で顕津男の神の到着を呼ばわると、宮を守る三笠比女が一行を出迎えた。一行は三笠比女に導かれ、館の主、現世比女に迎えられる。
顕津男の神は現世比女に導かれて奥の間にとおり、婚ぎの神業を行った。
現世比女には御子が宿り、一行が逗留するうちに姫神が誕生した。顕津男の神は姫を玉手姫と名づけた。そして、圓屋比古を司と定め、三笠比女に姫の養育を頼みおき、現世比女との名残を惜しみつつ、再び西南さして共の神々とともに進んでいった。
その道すがら、天之御中の神に合い、道中を共に進んで行くこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7337
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 149頁
修補版:
校定版:435頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 ここに太元顕津男の神は、002近見男の神、003圓屋比古の神達十一柱を率ゐて、004際限もなき曠原を渡り、005夜を日に次いで、006南の国原さして進ませ給ふ。007遥か南方の空にかすめる高山あり、008顕津男の神は、009駒をとどめて遥かにかすむ山を打ち眺めつつ御歌うたはせ給ふ。
010『南の遠野の奥にぼんやりと
011かすめる山は三笠山かも
012われは今三笠の山に進むなり
013早や近づけり行手の山は
014薄雲の衣をかぶりて泰然と
015立たせる山の雄々しきろかも
016目路の限り荒野の中を分けて行く
017われには珍し三笠の神山
018大蛇棲むと聞くなるこれの曠原も
019わが行く道は影だも見せず
020三笠山麓の貴の神館は
021現世比女のありかなりとふ
022現世の神に御逢ひて御子を生む
023わが神業も近づきにけり』
024 近見男の神は謡ひ給ふ。
025『たづね行く三笠の山も近見男の
027現世の比女神岐美の出でましを
028待たせ給はむ疾く進みませ
029天も地も岐美がみゆきを守らすか
030この曠原にそよ風もなし』
031 圓屋比古の神は又うたひ給ふ。
032『こんもりと天に聳ゆる三笠山の
033ほのけき姿仰げば楽しも
034幾千里荒野を渡り来しわれの
035目にめづらしき三笠山はも
036瑞御霊御供に仕へて遥の野に
037聳ゆる神の山を見しはや
038村肝の心勇まし三笠山
040いざさらば進ませ給へ近見男の
041神に従ひわれも進まむ
042顕津男の神の後前守りつつ
043荒野を分けて進む楽しさ』
044 近見男の神は先頭に立ち、045馬上豊かに謡ひ給ふ。
047瑞の御霊に従ひて
048萱草わけつ来て見れば
050山は正しく三笠山
051現世比女の永久に
054長の年月待ち給ふ
056到りて顕津男の神は
057現世比女に御逢はむと
058出でます今日の佳き日こそ
059主の大神も嘉すらむ
060われ等も尊き神生みの
061神業の供に仕へつつ
062いや先に立ち草を分け
065天津日かげも柔かく
066われ等一行守りまし
067道の隈手も恙なく
068一足一足近づくは
069三笠の山の清どころ
071貴の神業の畏けれ
072貴の御供ぞ畏けれ』
073 圓屋比古の神はまた謡ひ給ふ。
074『行手は遠しいや広し
075限りも知らぬ大空に
077遠き神代の昔より
079高く聳ゆる三笠山
082比女の神言の御舎と
086一日も早く片時も
087疾く速かに聖場に
088進ませ給へと願ぎ奉る』
089 顕津男の神は馬上より豊かに謡ひ給ふ。
090『仰ぎ見る南の空に雲の衣
091着つつわれ待つ三笠山かも
092比女神の貴の姿を三笠山
093月読の露に濡れもこそすれ
094けながくも吾を待ちます比女神の
096一夜さの契に御子を生みおきて
098現世の比女神にまたなげかひを
099与へて別るる思へばうれたき』
100 ここに神々は十二の轡を揃へ、101其日の夕暮、102三笠山の聖場玉手の宮に漸く着かせ給ひける。103遠く眺めし霞の三笠山は、104案に相違し百花千花全山に咲きみちて、105その麗しさ言はむかたなく、106天国のさまを目のあたりにあらはしぬ。107現世比女の神の鎮りいますてふ玉手の宮は、108蜿蜒として延び広がり、109常磐の老松枝を交へて此の清宮をこんもりと囲み、110金砂銀砂は月日の光を浴びて、111目もまばゆきばかり輝き渡り、112鳳凰巣ぐひ、113迦陵頻伽は常世の春を謳ひつつ、114天国浄土の光景を現しつつあり。
115 近見男の神は真つ先に駒を進ませ神苑深く入り給ひて、116馬上より朗らかに謡ひ給ふ。
117『顕津男の神の出でまし今なるぞ
118いむかへ奉れ館の神々
119われは今御供に仕へ奉りつつ
120いや先き立ちて現れしはや』
121 この御歌に、122館を守る三笠比女の神は、123蒼惶として宮の階段を下り、124駒の前に近づき乍ら、
125『近見男の神よ畏し瑞御霊
127現世の比女神これの清宮に
128瑞の御霊を待たせ給へる』
129 かく謡へる折しも、130顕津男の神は諸神を従へ、131馬上ゆたかに進み入り給ひて、
132『われこそは月の御霊よ瑞御霊
133はや出でませよ現世比女神
134はるばると荒野を渡り今此処に
135比女に逢はむとわが来つるかも』
136三笠比女『幾年を数へて待ちし瑞御霊
137 今日のいでまし尊とかりける
138 いざさらば現世比女の神の前に
139 つげ奉りてむ暫しを待ちませ』
140と三笠比女の神は、141御歌うたひ終へて、142奥深く入り給ふ。143顕津男の神は馬背に跨り乍ら、144宮の光景を眺めて、
145『花も香もなき荒野原渡り来て
146百花匂ふ清所に来しはや
147鳳凰は御空に高く舞ひあそび
148迦陵頻伽は春をうたふも
149いや広きこれの清所の青垣は
151きらきらと日光とどめて金銀の
152真砂は庭に照り耀へるも
153主の神の生言霊に生れしてふ
155長旅の疲れも今や忘れけり
156花咲きみつる神苑に来て
157現世比女神の神言はわが来る
158聞きて驚き給ふなるらむ』
159 近見男の神は馬上より謡ひ給ふ。
160『百敷のこれの宮居の常磐木は
161月日宿してみどりの露照る
162千代八千代この神国は変るまじ
163常磐の松の茂らむ限りは』
164 圓屋比古の神は謡ひ給ふ。
165『瑞御霊はるばる御供仕へつつ
167薄原篠の笹原のり越えて
168夢かうつつか清所に来つるも』
169 かく謡ひ終り、170馬をひらりと下り、171辺りの光景を、172各々賞め称へ給ふ折しもあれ、173三笠比女の神に導かれて、174ここに現れ給ひしは、175艶麗にして威厳の備はる貴の女神、176現世比女の神にましき。
177 現世比女の神は御歌もて迎へ給ふ。
178『わが待ちし比古遅の神は出でましぬ
179恋しき神は現れましにける
180岐美待ちてけながくなりぬ吾はしも
182神生みの神業を待ちて幾年を
183夜な夜な涙にむせびたりしよ
184いざさらば比古遅の神よ案内せむ
185岐美の安所は奥にありける
186神々に感謝ごと宣る道さへも
187嬉しさあまりて忘れ居たりし
188近見男の神よ許させ給へかし
190圓屋比古神のみことは瑞御霊
191安く送らせ給ひけるはや
192いざさらば百神たちも奥の間の
193清所に入りて休ませ給へ』
194 かく謡ひ終へ、195太元顕津男の神の御手を引きながら、196蜿蜒と架け渡したる長き廊下を、197踏みしめ踏みしめ奥の一間に導き給ひける。198現世比女の神は、199顕津男の神の御手を静かに握らせ、200やや面ほてりながら、
201『待ちわびし瑞の御霊を三笠山
202匂へる花のかをり床しも
203岐美待ちて幾年月を経たりけるを
204今日の佳き日に迎へけるかな
205八十神を持たせ給ひし岐美ならば
206われは恨まじ今日が日までも』
207 顕津男の神は、208あまりの感激に打たれて暫し茫然とし給ひしが、
209『はしけやし公の言霊きくにつけ
211道もなき荒野ケ原を渡り来て
212今日いとこやの比女に逢ひぬる
213愛恋の比女に逢はむと荒野原
214駒に鞭ちわが来つるかも
215二柱姫の命を生み終へて
216公を三笠の山の花見つ』
217 かく互に述懐歌をうたひつつ、218久美戸におこして、219右り左の神業を行ひ給ひ、220その夜は安く寝ねましぬ。221近見男の神の一行は広き一間に招ぜられ、222三笠比女の神の厚き饗応に旅の疲れを休めつつ、223感謝の御歌うたひ給ふ。
224『天界の春の花咲く三笠山は
225現世比女のみけしなるらむ
226すすき原篠の笹原ふみ分けて
227今宵楽しく花を見るかも
228百鳥の声もすがしく聞ゆなり
229これの清所は国の真秀良場
230幾年を待ち給ひたる現世比女は
231三笠の山の花と笑まさむ』
232 圓屋比古の神は謡ひ給ふ。
233『横河を渡りし心に比ぶれば
235いやはての国にすがしき花の山
237主の神の経綸になりしこの宮は
238緑も深き常磐木茂れる
239金銀の真砂の光る清所に
240やどらせ給ふ月日のかげよ』
241 かく謡ひて、242その夜は安く寝ねましける。243ここに顕津男の神は婚ぎの神業を終へ給ひ、244御子のやどらせ給ふ事をいたく喜び給ひて、245百神たちと共に、246これの館に幾何の日を過させ給ひ、247生れませる御子を、248玉手姫の命と名づけ給ひて、249圓屋比古の神をこれの宮居の神の司と定め給ひ、250三笠比女の神に、251生れませし御子玉手姫の命の養育を頼み置き、252現世比女の神に名残を惜しみつつ、253再び西南の国をさして、254近見男の神その他を伴ひ出でまししが、255その道すがら天之御中の神にあひ給ひて、256相共に神業の為め進ませ給ひぬ。
257(昭和八・一〇・一八 旧八・二九 於水明閣 白石恵子謹録)