第一三章 水上の月〔一八八一〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻
篇:第2篇 真鶴新国
よみ(新仮名遣い):まなづるしんこく
章:第13章 水上の月
よみ(新仮名遣い):すいじょうのつき
通し章番号:1881
口述日:1933(昭和8)年10月23日(旧09月5日)
口述場所:水明閣
筆録者:白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:湖畔にて、玉野比女の館を目前とし、静まり返る玉野湖水と玉野森を前に、神々はそれぞれ思いのたけを歌い、また玉野湖水に潜む、大蛇となった生代比女をなだめ諭す歌を歌った。
しかし、生代比女の恋の炎はあまりに強く、神々の生言霊の光さえ、包みかくすほどであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7413
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 211頁
修補版:
校定版:189頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 顕津男の神一行の白馬隊は、002漸く黄昏れむとする時、003玉野湖畔に着き給へば、004御空を渡る満月の光は、005緩やかに湖面を照し、006縮緬の波穏やかにたゆたふ。
007 玉野森は広き湖水の彼方の岸に、008月光を浴びて森厳そのものの如く、009地上と湖底に描かれて居る。
010 顕津男の神は湖面に向ひ、011心静に御歌詠ませ給ふ。
012『仰ぎ見る夕の月は玉野湖の
013波に浮びて静なるかも
014こんもりと夕の地上に描きたる
015玉野の森は清しきろかも
016吾は今駒に鞭うち大野原
017遠く渡りて今来つるかも
018鏡なすこの湖に浮びたる
019月の面一入広かりにけり
020そよそよと湖を吹く風もなく
022村肝の心静けくなりにけり
023月の浮べる湖の鏡に
024わがい行く玉野の森は波の彼方
026葦蘆の茂らふ荒野を渡り来て
027今ひろびろと波の月見つ
028虫の声岸のあちこち聞えつつ
029わが霊線の清しさを覚ゆ
030真鶴の黒雲を見しわが目には
031一入静けく思はるるかな
032暫しの間駒を休ませ水飼ひて
033彼方の岸に乗りて渡らむ
034波渡る舟さへもなきこの湖は
035駿馬の背こそ力なりけり
036久方の高日の宮を出でしより
037かかる静けき湖を見ざりき
038ままならばこの湖の真寸鏡
039主の大神の土産となさばや
040久方の御空は蒼し湖青し
041月天地に清しく浮ぶも
042雲の蒼湖にうつるか湖の青
043雲にうつるか月の鏡に
044空蒼く水また青き湖の面に
046満天の星を写して輝ける
047湖は千花の匂へるが如し
048星の花水底に浮び湖の青
049天に浮びて清しき宵なり
050見の限り御空は蒼く水青く
051中を流るる月舟のかげ
052月見れば心清しも湖見れば
054玉野比女の姿なるかも青き湖の
055面に浮ぶ満月の光は
056わが心湖水の月と輝きつ
057玉野の比女の住所照らさむ
058麗しも紫微天界のたましひか
059この湖の面に浮ぶ月光は
060高照の山の宮居を立ち出でて
061清しき湖にいむかひ居るかも
062濁り河渡りし時のわが霊も
063月照る湖の青に洗へり
064天高く湖底深し我は今
065神の御稜威を深く悟りぬ
066湖の面いや広々と目路遠み
067わが行くおもひ遥けくもあるか』
068 遠見男の神は御歌詠ませ給ふ。
069『瑞御霊御供に仕へ清しくも
070今宵の月に魂を洗へり
071果しなきこの天地を照します
072月光今宵は湖に浮べり
073白銀の玉と輝く月舟の
075月も日も星も浮ぶなるこの湖の
076あをく清きは神の心か
077如意宝珠玉の月光明らけく
078浮べる湖の清くもあるかな
079小波も立たぬ夕の湖の月は
080玉の宮居を写してさゆるも
081汀辺の千草の虫も月光の
082清きに鳴くか声冴えにけり
083乗りて来し白馬の背に露おきて
084玉とかがよふ今宵の月光
085仰ぎ見る御空の月も湖の底の
086月も太元顕津男の神よ』
087 圓屋比古の神は御歌詠ませ給ふ。
088『月盈ちて今宵のかげは圓屋比古
089神の姿は湖にうかべる
090久方の御空うつして玉野湖の
091底明らけく澄みきらふかな
092黄昏の闇は迫れど天渡る
093月に明るく透きとほるなり
094青雲の色を写して夕暮の
095月澄み湖のあをみたるかも
096ぼんやりと彼方の岸に描きたる
097玉野の森は水に映えたり
098きらきらと輝く波は不知火の
099海原照す如く見ゆめり
100雲の上高く聳ゆる真鶴の
101山ほの見えぬ月の光に
102見の限り雲霧晴れて空蒼み
103星きらめきて清しき宵なり
104国土生みの御供に仕へて珍しく
105冴えたる月を今宵見るかな
106乗りて来し駿馬白く月に浮きて
107水底までも影を写せり
108たのもしき旅なりにけり荒野渡り
109玉野湖水の冴えたる月見つ
110何となくわが魂線の和みたり
111今宵の月の光の清しさに
112主の神の御水火に成りし国土ながら
114月読は光の限りを光りつつ
115波の面に静に浮けるも
116山かげのただ一つなき広野原に
117一つ浮べる月の湖
118ともかくも岐美のみあとに従ひて
119今宵の内に彼岸に渡らむ』
120 多々久美の神は御歌詠ませ給ふ。
121『天清く湖また清き中にして
122われは楽しく歌詠まむかな
123虫の声湖畔に冴えて更け渡る
124今宵の空の長閑なるかも
125大空に輝く月も水底に
126写れる月も瑞の御霊よ
127駿馬もこれの景色に見惚れしか
128嘶く声は清しかりけり
129渡り行く彼方の岸の神森は
131吾は今この水月を駿馬の
132蹄に砕くと思へば惜しきも
133ままならばこの湖の月光を
135月の浮く湖面を渡るこの宵は
136御空の雲の上行く如し』
137 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。
138『歓の天地に充つるこの国土は
139紫微天界の真秀良場なるも
140瑞御霊御供に仕へて天界の
141真秀良場に照る湖の月見つ
142真鶴の稚き国原わかわかしく
143湖水のみどりに潤ひ栄えむ
144久方の天をうつせるこの湖は
145天津月日も永久に宿らす
146この清き水底に遊ぶ魚鱗は
147月を仰ぎて浮び上りつ
148天も地もよみがへりたる心地して
149湖面に浮ぶ宵月を見つ
150夕されど御空の月の底ひまで
151輝く湖畔は明るかりけり
152とこしへの歓び充つる天界に
153生きて歎かふ神は曲なれ
154空高く底深みつつこの湖の
155面にうかぶ蒼空の色
156主の神の言霊清く幸ひて
158澄みきらふ月のしたびに吾立ちて
159湖底の月を下に見るかな
160瑞御霊出でます道の幸ひを
161明して冴ゆる湖上の月光
162千万の悩みにあひて今此処に
163清き御空の下に月見る』
164 美波志比古の神は御歌詠ませ給ふ。
165『近ければ天の神橋をかけ渡し
167紫の雲の神橋を渡りゆく
168月は御空の宝珠なるかも
169久方の御空は蒼く限りなく
170果しも知らに湖に写れる
171名にしおふ紫微天界の真秀良場や
172この湖に月宿るなり
173いや広に月の光はひろごりて
174湖水のあらむ限りを照せり
175そよ風は吹き出でにけり黄金なす
177波の間に浮べる月の光清し
178湖面を見つつ心躍るも
179つぎつぎに科戸の風は強まりぬ
180波間に浮ぶ月を砕きつ
181そよ風に波紋描きて湖の面は
182右と左に月をひろげつ
183百千々に砕けて月は波の面に
184世の移りゆくさまを示せり』
185 産玉の神は御歌詠ませ給ふ。
186『夕凪の湖に忽ち風立ちて
187あたら月光千々に砕けつ
188湖の月は砕けて乱るれど
189御空の月は変らざりける
190冴え渡る月天心に輝きて
192天心にいつきて動かぬ月光は
193雄々しかりけり瑞の御霊か
194虫の音もいよいよ高くなりにけり
195水の面にをどる月をめづるか
196向つ岸に岐美の渡らす今宵なり
198波がしら白々光る湖の面に
199夕を浮ける水鳥白しも
200水鳥の翼かがよふ月光は
202岐美が行く波路静に守れかし
203湖底に潜みて守る神々
204瑞御霊御供に仕へ玉野湖
205渡らむ今宵は静なれかし』
206 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。
207『たまきはる生命うるほす月読の
208神守りませ水の上の旅を
209つぎつぎに風高まりぬ波荒れぬ
210月は砕けぬうれたきの夜や
211水底に潜むは正しく生代比女の
212神の魂とわれ覚ゆなり
213ナノヌネニこの言霊の功績に
214今立つ波をなぎふせて見む
215ナノヌネニこの言霊の功績に
216曲の荒ぶる術なかるらむ
217清き明き心になり出る言霊に
219ほのぼのと湖面に狭霧たちこめて
220波は漸く凪ぎ渡りけり
221この清きさやけき湖に狭霧たちて
222水底の月は光うすらぎぬ
223瑞御霊進ませ給ふ今宵なり
224水底の神よ狭霧晴らさへ』
225 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。
226『つぎつぎに狭霧は立ちてひろびろと
227輝く湖を稍狭めたり
228水底の月は次第にかくれつつ
229御空の海のみ月の浮べる
230写るべき月は狭霧に包まれて
231この湖の面は薄ら暗きも
232生代比女恨みの炎かたまりて
233またもや狭霧の湧き立つならむか
234よしやよし黒雲四方を包むとも
235生言霊に吹きはらひ見む』
236 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。
237『主の神の依さしに国土生み神生みの
238旅に立たせる岐美と知らずや
239湖底の神よ静に聞し召せ
241国土生みの妨げなさむ神あらば
242伊吹き払はむ言霊の水火に
243駒並めて今や渡らむ湖の
244面を晴らして風よしづまれ
245この風は科戸の神の水火ならず
246水底の曲の詛の水火なる
247愛善の国の真秀良場にあらはれし
248これの湖水に曲は無からむ
249曲神の住処とすべき湖ならず
250早く去れ去れただに退け
251言霊の水火も恐れぬ神なれば
252この天地に住まはせじと思ふ』
253 真言厳の神は御歌うたひ給ふ。
254『われこそは真言の厳の神なるぞ
255湖を晴らして岐美を通せよ
256湖の神よわが言霊を聞かずして
257はむかひ来るか生命知らずに
258千早振る神の造りし湖に
259穢あらすな瑞御霊神』
260 かく神々は、261各も各もに御歌うたひて、262湖の神をなだめつ諭しつ時を移し給へども、263生代比女の神の恋の炎は強く猛く、264神々の生言霊の光さへ、265包みかくすぞうたてけれ。
266(昭和八・一〇・二三 旧九・五 於水明閣 白石恵子謹録)